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■■■神経解剖学 2008 年度過去問 解答解説■■■
(2008 年度入学 木下作成) ◆2009/3/4「コメント付き解答例(未完)」として公開 ◆2009/3/8 大問2の内容をいくつか修正。画像を高画質化した。 ★神経解剖学の平成20 年度本試験(平成 20 年 12 月 18 日実施)の解答解説です。 ※現時点では「コメント付き解答例(未完)」です。問6の解答はありません。 ★神経解剖学については、2年先輩の矢野さんのページに、2005 年度過去問の解答解説および資料が ありますから、併せてご覧になるとよいと思います。 ★近年の出題内容について □2008 年度 1、延髄の構造の名称と説明 2、正誤問題×30 3、多肢選択問題×30 4、小脳核とその入出力線維の説明 5、大脳辺縁系と線状体の説明 6、視床核の説明、視床下部の説明 □2007 年度 1、中脳の構造の名称と説明 2、正誤問題×32 3、多肢選択問題×12 4、小脳路、プルキンエ細胞、小脳核、片葉小節葉の説明 5、視床髄板内核、内包の説明 6、大脳正中矢状断の断面図の図示と名称(視床下部と海馬傍回)、側面図の図示と機能局在の説明 □2006 年度 1、視床の核または構造を5つ挙げ、機能と線維連絡する部位を説明 2、正誤問題×32 3、多肢選択式問題×17 4、脊髄小脳路、原小脳、プルキンエ細胞の説明 5、(リッサウェルの)終帯、大脳辺縁系の図示と機能的意義 6-1、延髄の傷害と症状(症状から傷害部位を推定) 6-2、症状から中枢神経系の異常部位を推定 ★参照したテキストについて 1.鳥取大学医学部N 教授『生理学講義ノート』http://www.asahi-net.or.jp/~ev6h-nnmy/ 2.伊藤隆『解剖学講義』、南山堂、2001 年2版。 3.神戸大学 寺島俊雄『第1解剖講義ノート(神経解剖学編 2005 年度版)』※現在は公開中止 1.は学部1年向けかと思われる、非常に親切な講義ノート。最初右も左も分からないときには結構助 かった。2.は極めて図式的なイラストと簡潔な説明が特徴の一般解剖学教科書で、細かいことは載っ ていないが標準的な内容を押さえることができる。予備知識ゼロで通読するのは少し辛い。3.は220 もし間違いがありましたら、ご指摘いただけるとうれしいです。またご要望や質問など もどうぞ。直接知らせていただくか、下記までメールください。 [email protected]2 ページ程度の講義ノートで、明快なカラーイラストを含むため今回多く引用した(引用時は「神経解剖 学講義ノートより」とした)。
1.延髄上部を水平断した図を示す.
① A~E で示す構造の名称を漢字で書き入れよ.(誤字は減点する.)(5点)
② A,C の構造が障害された場合に
出現すると思われる症状について,
左右どちら側に起こるかも含めて
説明せよ.(5点×2)
<解答> ①A.内側毛帯medial lemniscus B.第四脳室the fourth ventricle C.下小脳脚nferior cerebellar peduncle D.オリーブ核olivary nucleus E.錐体pyramis ②Aが障害されたとき、健側(左側)の上 肢・下肢の精細な触圧覚が麻痺する。 Cが障害されたとき、患側(左側)に、小脳性運動失調や筋緊張の低下がみられる。 ★Aの内側毛帯は頭部を除く体の繊細な触圧覚および意識に上る深部知覚の伝導路であり、内側毛帯の 少し下で交叉が起こる。Cの下小脳脚は小脳への入力線維の主要な経路であり、障害されると小脳によ る運動制御や筋緊張の問題が出る。小脳を介する神経回路は非交叉性または2回交叉するため、小脳の 障害に基づく症状は患側に出る。2.下の各文について,以下のいずれかを解答欄に記入せよ.なお,問題の性質上,文中
で言う「障害」は「その部分の機能が完全に損なわれた状態」を意味する.
(15 点) ○
…正しい ×…誤りである △…どちらとも言えない
1 ) 側脳室と第三脳室の脈絡叢は表裏の関係にあり,同じ構造物の両面である.
× ★側脳室と第三脳室は空間的に分離されており、それぞれの内部に脈絡叢がある。よって誤り。 ★側脳室、第三・第四脳室の内部には、周囲の毛細血管と上皮細胞の一部が絡まりあう脈絡叢choroid plexusという構造が見られ、脳脊髄液cerebrospinal fluidを産生している。2 ) 両側の室間孔が閉塞すると第三脳室の内圧が高まり,水頭症になる.
× ★側脳室と第三脳室の連結部を室間孔(モンロー孔)という。脳腫瘍や外傷からくる炎症などにより脳 脊髄液CSFの流れが妨げられると、脳脊髄液圧の亢進が起こって脳室が拡大し、頭痛・不安定歩行・不 安定姿勢・精神異常などの症状が現れる。室間孔は側脳室と第三脳室の接続部分であり、この部分の閉 塞によりCSFの流れが妨げられて、側脳室の内圧が高まり、水頭症になる。よって誤り。 CSFは各脳室脈絡叢で産生され、側脳室→第三脳室→中脳水道→第四脳室の順に流れ、第四脳室から クモ膜下腔へと抜ける…という流れを脳室系の図を確認して押えておこう。3
3
) クモ膜下腔は頭頂後頭溝の深部にも存在し,脳脊髄液で満たされる.
○
★脳は髄膜meningesと総称される結合組織性の膜で覆われており、外側から硬膜dura mater、クモ膜 subarachnoid mater、軟膜pia materの三層からなる。
★軟膜は脳の外表面に密着しており、脳溝では深く入りこんでいる。一方、クモ膜はその外側を袋状に 緩く包んでおり、硬膜はそのさらに外側を包む強靱な膜である。こうして軟膜とクモ膜の間は比較的大 きい隙間があり、クモ膜下腔subarachnoid spaceと呼ばれ、CSFが灌流している。よって正しい。
4 ) クモ膜顆粒は硬膜を貫通して動脈内腔に突出する.
× ★クモ膜下腔にはところどころで、硬膜の内葉を貫通して硬膜静脈洞に突出する部分があり、これをク モ膜顆粒arachnoid granulationと呼ぶ。脳室系から流入しクモ膜下腔を灌流したCSFは、ここで硬膜静 脈洞(静脈に相当)に排出される。よって誤り5 ) 脊髄神経後根には感覚神経の軸索が含まれる.
○ ★脊髄からは左右それぞれに前根と後根が出て、脊椎骨から出る当たりで合流して脊髄神経となる。こ の前根は脊髄神経から出る遠心性線維(運動線維)、後根は脊髄に入る求心性線維(感覚線維)からな り、これをベル-マジャンディーの法則と呼ぶ。 大雑把にいって脊髄は体の背側のかなり体表面近くを通っており、主要な感覚器は体表面近く、また 骨格筋は体内深部にあることを考えると、後根が感覚神経、前根が運動神経であることはなんとなく納 得できるのではないだろうか。6 ) 脊髄神経前枝には樹状突起は含まれない.
× ★脊髄神経前枝には運動神経と感覚神 経が通っており、感覚神経の末端は樹 状突起であるので、間違い。 神経細胞の細胞体にある突起物のう ち、出力を担うものが軸索、入力を担 うものを樹状突起dendriteである。感 覚神経の一次ニューロンは偽単極性で、 末端で感覚を受容する部分は樹状突起 であることに注意する。 ★解剖学的構造の復習。脊髄を通る神 経は、前根と後根に分かれて脊髄を出 た後、椎間孔の近傍で合流して脊髄神 経となる。この付近でさらに白交通枝 と灰白交通枝が分岐し、これらは自律 神経系に連絡するのだが、それは脇に 置こう。脊髄神経はさらに前枝(主に 体の前方向の骨格筋を支配)および後 枝(主に体の後ろ方向の骨格筋を支配)4 に分かれる。合流の際に運動神経と感覚神経が交叉するため、前肢/後肢はこの両方の体性神経を含む。 さて自律神経では中枢を出た後でニューロンのスイッチを行うが、体性神経では末梢でのニューロン の交代はない。下表でまとめるように、運動>感覚>交感>副交感の順で、最後のニューロン交代が中 枢に近い場所で起こっていることがわかる。そして、ニューロン交代が中枢に近い神経ほどすばやい制 御や意識的な作用にかかわる、という傾向が見られる。 運動神経 体性神経 感覚神経 中枢でニューロン交代 ※感覚神経は後根に神経節 がある。 すばやく制御・意識的な作用 ↑ 交感神経 中枢を出てすぐに交代 ↓ 自律神経 副交感神経 効果器の手前で交代 ゆっくり制御・無意識的 不正確なたとえだが、細胞体が神経系における中位の司令官の役割を果たしていると考えてみよう。 すると、短期的で意識的な制御な必要な経路ほど、中枢により近いところに司令官がいるトップダウン 型の構成になっている、というのはなんとなく納得できる(かもしれない)。
7 ) 馬尾は前根と後根の両方を含む.
○ ★脊髄の上部では前根・後根はほぼ水平に出ているが、下部では一度下方に迂回してから脊椎から出て おり、この部分がかなり長くなっている。馬の尻尾に似ていることから、この部分を馬尾cauda equine と呼ぶ。以上を理解していれば、馬尾が前根・後根の両方を含むのはほとんど当たり前である。8 ) 胸髄下部には楔状束が存在しない.
○ ★脊髄後索には体性知覚の 伝導路(薄束と楔状束)が 上行し、延髄下部の薄束核、 楔状束核に接続している。 薄束は脊髄の下部(第七胸 髄~尾髄)から入り、下半 身の知覚を伝える。一方楔 状束は、脊髄の上部(第二 頚髄~第六胸髄)から入り、 上半身の知覚を伝える。よ って薄束は脊髄全体に伸び ているのに対して、楔状束 は第六胸髄より上にしか存 在しないので、題意は正し い。9 ) 副楔状束核を形成する神経細胞の軸索は中小脳脚を通って同側の小脳に到達する.
5 ×
★上半身の意識に上らない深部感覚は、延髄の副楔状束核accessory cuneate nucleusでニューロンを 交代し、下小脳脚を通って小脳に入る(右下図)。よって以下のように修正すれば正しい。 「副楔状束核を形成する神経細胞の軸索は下小脳脚を通って同側の小脳に到達する」 ★小脳は橋のほぼ背面に位置するが、脳幹と小脳の間には三つの連絡があり、下から下小脳脚(延髄か ら入る)、中小脳脚(橋から入る)、上小脳脚(中脳に出て行く)と呼ばれる(左下図)。この問題の 場合は、下から上ってくる下小脳脚から小脳に入る。 ★体性感覚の伝導路は、伝導される感覚の種類によって、以下の三つに大別できる。A、Bの経路では 途中で交叉したあと視床から大脳皮質に投射するが、Cの経路は、交叉せず同側のまま小脳に入る。こ の三つだけをとれば、「高級(意識的、繊細)な感覚ほど上位で交叉が起こる」という関係が見られる (もっと一般的にいえるかどうかは保留)。 <表:体性感覚の神経路> 伝導路の名称 感覚の種類 経路の概要 A、後索・内側毛 帯系 繊細な触圧覚、意識に のぼる深部感覚 脊髄後索→②延髄後索核※→内側毛帯(交叉) →視床VPL 核→1次体性感覚野 ※上半身(T>6)は楔状束核、下半身(T<7)は薄束核 B、脊髄視床路系 (脊髄毛帯系) 粗大な触圧覚、温痛覚 ②脊髄後角→脊髄毛帯(交叉) →視床VPL 核→1次体性感覚野 C、(意識に上ら ない深部感覚の伝 導路) 意識に上らない深部感 覚 下半身:胸髄核~後脊髄小脳路~下小脳脚~小脳皮質 上半身:副楔状束核~楔状束核小脳路~下小脳脚~小脳皮 質
10 ) 足の指先の意識される固有感覚を伝える二次ニューロンの細胞体は脊髄灰白質にあ
り,軸索は視床に到達する.
× ★題意は「意識に上る深部感覚」を問うており、この感覚はすぐ上の表の経路A(後索・内側毛帯系)6 を通る。2次ニューロンの細胞体が脊髄灰白質の後角にあるのは経路Bなので、誤り。 なお経路A~Cは、上半身の知覚と下半身の知覚で、脊髄に入る場所や途中の経路が異なっている。下 図で確認しておこう。問題文で「足の指先」とあるのは、下半身の知覚であることを意識させるためと 思われる。
11 ) 脊髄神経節にある神経細胞の樹状突起が脊髄硬膜外に出ることはない.
○ ★脳と同様に脊髄も3層からなる結合組織性の髄膜 (軟膜、クモ膜、硬膜)で覆われている。神経路が前 根・後根から出て合流して脊髄神経となるところでは、 クモ膜と硬膜が外側に押し出されたような形になり、 脊髄神経の最初の部分はクモ膜と硬膜の鞘で覆われ、 末梢神経を包む神経周膜perineurium、神経上膜 epineuriumにそのまま連続する。右図で確認しておこ う(赤色が硬膜)。 さて脊髄神経節には感覚神経の一次ニューロンの細 胞体が存在し、その樹状突起は末端の感覚受容器に伸 びている。脊髄硬膜は図の赤い部分までで、樹状突起 はその先まで伸びている。だからとうぜん答えは×、 としたくなるが、これでは問題にならないと思う。 脊髄硬膜が上述のように外部に突出して末梢の膜と連続しており、感覚神経一次ニューロンはその内 部を通って(硬膜を突き破るわけではなく)末梢に出て行くという意味で、題意は正しいと捉えた方が、 出題者の意図に沿っていると考えられる。12 ) 薄束核の神経細胞の樹状突起は,脊髄神経節に細胞体がある神経細胞の軸索とシナプ
スを形成する.
○ ★問9)の<表:体性感覚の神経路>で示したように、下半身(T≦7)の繊細な触圧覚、意識にのぼ る深部感覚を伝える神経路は、延髄の薄束核で2次ニューロンに交代する。感覚神経の1次ニューロン の細胞体は必ず後根の脊髄神経節にあるから、題意は正しい。7
13 ) 延髄にある疑核には大脳皮質にある神経細胞の軸索が到達する.
○ ★疑核は運動性の神経核で、大脳 皮質運動野に発するニューロンが 接続する(皮質核路)。よって題 意は正しい。 ★皮質核路は皮質球路 corticobulbarとも呼ばれ(球 bulb=延髄)、大脳皮質の運動野に 発して脳幹の運動性脳神経核に終 止する。延髄の錐体を通るわけで はないが、大脳皮質運動野発で下 位運動ニューロンに終止するとい う点では同じなので、広義の錐体 路に含める。右図で確認しておこ う(中脳と延髄で皮質球路が分岐 していることが分かる)。また疑核 ambiguus nucleus は特殊臓性遠心性 SVEの神経核であり、その上部/中部/下部で次の三つ の神経を出している。 ・上部→舌咽神経(Ⅸ):第3鰓弓に由来する横紋筋(茎突咽頭筋と上部咽頭筋)を支配。 ・中部→迷走神経(Ⅹ):第4鰓弓に由来する横紋筋(輪状甲状筋と下部咽頭筋)を支配。 ・下部→副神経(ⅩⅠ):延髄根に入り、さらに迷走神経に合流して反回神経となる。
14 ) 舌下神経核には運動神経の細胞体が集積し,その軸索は脳神経として末梢に出る.
○ ★舌下神経核はその名の通り舌下神経(ⅩⅡ)の細胞体が集まるところで、舌下神経は舌の運動にはた らくから、題意は正しい。15 ) 延髄上部の左半分に障害があると,下半身の運動麻痺は左側に生じる可能性が高い.
× ★延髄の下部腹側には錐体があり、大脳皮質運動野に発する主要な運動神経路である錐体路(皮質脊髄 路)の多くの神経線維は、主にこの場所(錐体交叉decussation of pyramids)で左右を入れ替える(一8 部は錐体路をそのまま下行し、脊髄から出るときに反対側に移る)。よって延髄上部の障害は、反対側 に麻痺が生じる可能性が高い。13)の図で確認しておこう。
16 ) 皮質橋路は視床での感覚受容を制御する回路の一部である.
× ★大脳と小脳は、 大脳→橋核→小脳→視床VL野→大脳という形 の閉鎖回路で間接的に連絡しており(大脳小脳 連関)、この回路を「大三角形」と呼ぶことが ある。このうち大脳から同側の橋核へと投射す るのが皮質橋覚路である。 この回路は、皮質脊髄路により運動野から全 身の骨格筋に送られる運動指令の一部を小脳 に送り、小脳で情報処理したあと再び運動野に 戻すことで、随意運動を円滑に行う作用がある と考えられている。感覚受容でなく運動の遂行 にかかわる回路なので、題意は誤り。 右図を見ながら、回路の一連の流れを確認し てみよう。大脳皮質から同側の橋核に投射後、 橋核を出た神経線維の大部分は交叉し、反対側 の中小脳脚を通って小脳皮質に終止する(橋核 小脳路)。さらに小脳皮質は同側の小脳核に投 射し、小脳核からは上小脳脚を通って中脳に入 り、中脳の下丘レベルで交叉して視床外側腹側 核(VL野)投射する。そして視床VL野から大 脳皮質に投射することで、結局、大脳皮質から 発して同側の大脳皮質に戻る閉鎖回路を成す ことになる。17 ) 外側毛帯の障害は平衡感覚の異常をもたらす可能性が高い.
× ★「外側毛帯」は、中脳~橋にある聴覚伝導路である。また平衡感覚の受容器である前庭や半規管から 延髄の前庭神経核を経て小脳にいたる経路は、外側毛帯を通らない。よって題意は誤り。 外側毛帯lateral lemniscusは中脳~橋の背側の外側部付近にみられる軸索の束であり、内耳に発し大 脳皮質聴覚野にたどりつく聴覚伝導路の一部である。聴覚受容器は内耳の蝸牛cochleaのコルチ基であ り、一方、平衡感覚の受容器も同じ内耳の前庭vestibuleと半規管semicircular canalsである。前者は 何度もニューロンを交代する複雑な経路で最終的に大脳皮質の聴覚野に入るが、後者は高々2つのニュ ーロンからなり、延髄の前庭神経核に投射した後、小脳や運動性の神経核に投射する。9
18 ) 中脳腹側の左半分が障害されると,
顔面上部では左半分だけに運動麻痺が
生じる.
× ★中脳では背側に眼球運動にかかわる脳神 経が分布する。顔面の運動にかかわる顔面神 経の核は橋にあり、橋の高さで脳幹の外に出 る(右図)。よって誤り。 図のように、橋の顔面神経核は、いったん 背側に大きく迂回して腹外側に抜けるとい う特有の走行を示し、同側の表情筋を支配す る。よって問題文が「橋腹側の…」ならば正 しい。19 ) 咀嚼筋を支配する運動神経の大半は三叉神経節に発する.
× ★「咀嚼筋を支配するのは 三叉神経」、または「三叉 神経のV3(下顎神経)は咀 嚼筋を支配」、これは覚え ておくしかない。問題は運 動性の下顎神経が三叉神経 節に発するかどうかだろう。 結論からいうと、三叉神経 節には感覚神経のみが通っ ており、題意は誤り(右図)。 三叉神経では、知覚根と 運動根が並んで出ており、 知覚根には三叉神経節があ り、一方運動神経は運動根 のすぐ手前の三叉神経運動 核でニューロン交代を行う。 これは、脊髄の後根/前根 の関係とパラレルであると 考えれば理解しやすい。20 ) 三叉神経脊髄路核に存在す
る神経細胞は顔面の温痛覚の情報
を視床の後内側腹側核(
VPM)に
伝える.
○10 ★「三叉神経脊髄路核」というと少し妙な感じがするが(脊髄に行くの!?)、この核は延髄~脊髄上 部に細長く伸びており、三叉神経のV1は知覚根から入って少し下行してからここでニューロンを交代し、 その後交叉してから視床VPM核に向かう。
21 ) 錐体路内の体部位的局在は中脳レベルでは明瞭でない.
× ★左下図にみられるように、脊髄前角の運動ニューロン群のうち、最も内側のニューロンは体幹の運動 を支配し、外側のニューロンは手や腕を支配している。このように、中枢神経内の神経の配置が、その 神経が支配する身体部位の区分と一定の対応がみられるとき、これを体部位局在 somatotopic arrangementという。W.Penfieldが提示した、大脳皮質の運動野・感覚野の体部位局在のイラストは、 何度もみたことがあると思う。 さて錐体路の場合だと、始点である大脳皮質一次運動野と、中枢の終点である脊髄前角には体部位局 在がみられるわけだ。すると途中で混線しているとも考えにくいから、その間の経路でも局在がみられ るのではないかと予想がつく。実際に局在の存在が確認 されている(右下図は1994年の論文より)22 ) 脳幹網様体は大脳,脊髄などからの入力を受け,大脳,脊髄などに出力する.
○ ★脳幹の内部構造には、明確な白質(神経線維からなる)や灰白質(神経細胞体からなる)の他に、両11 者が絡まりあった領域が存在し、これを網様体reticular formationという。網様体は脳幹(中脳、橋、 延髄)にまたがって分布するため、あわせて脳幹網様体と呼ぶ。網様体は中枢神経系の多くの部位から の感覚情報の入力を受け、また多くの部位へと出力することで、主に次のようなはたらきをすると考え られている。 <脳幹網様体の主なはたらき>
23 ) 視覚情報は視神経を通って上
丘に達し,そこから視覚野に伝達さ
れる.
× ★中脳の上丘は視覚性運動反射(視覚刺 激に反応して眼球や頭部の位置を変え る)の中枢であり、いわゆる視覚伝導路 (網膜→視神経→視交叉→視索→外側膝 状体→視放線→1次視覚野)とは別である。右図を参照。24 ) 味覚は視床に伝達されない数少ない感覚の一つである.
× ★感覚神経路の基本パターンは である(○は細胞体の場所)。感覚神経の経路の多くは上の基本パターンに従って視床を通過するが、 この基本パターンから外れる主な例外として次のようなものがある。 ①嗅覚系(全体的にかなり特殊。一部は視床に入る) ②意識に上らない深部感覚の神経路(延髄から小脳皮質に入る) よって題意は誤り。25 ) 扁桃体は間脳の一部であり,情動の形成などに関与する.
× ★扁桃体amygdaloid bodyはかつては大脳基底核に分類されていたが、現在では線維の結合により大脳 辺縁系の一部とみなされている。扁桃体は間脳や大脳皮質と多数の線維連絡を持ち、本能や情動による 行動の中枢とされる。 受容器→○脊髄神経節→○脊髄後角または脳幹の知覚性神経核→(交叉)→○視床→大脳皮質1 次感覚野 ①大脳皮質の賦活化。上行性神経路の側枝から特異的な感覚情報が入力し、一定の処理を経て非特異 的な出力を視床・大脳に送ることで、皮質を覚醒状態におく。 ②網様体脊髄路や小脳、黒質、赤核、線状体などに出力して、骨格筋の緊張維持と調節を行う。 ③自律神経系に出力して、呼吸や心臓の拍動など生命にとって非常に重要な機能の調節を行う。12
26 ) 嗅索は嗅神経細胞の軸索で形成され,嗅脳の一部を形成する.
× ★脳神経の出る箇所を底面図でみると、前方部に触覚のような形ものが2本出ているのがとても印象的 だが、この構造が嗅脳で、先端の丸い部分が嗅球olfactory bulb, そこにいたるまでの軸の部分を嗅 索olfactory tractという。嗅神経細胞=嗅覚受容細胞は鼻腔の嗅上皮にあり、そこで受容された刺激 は、上部にある嗅球に集められ、僧帽細胞mitoral cellにスイッチする。嗅索を走る神経は、この僧帽 細胞の軸索であるから、題意は誤り(下図)。27 ) 前頭葉の連合野は知的活動に関係し,視床内側核からの入力を受ける.
○ ★機能局在が比較的明確な中枢がある運動野や感覚野に対して、それ以外の皮質をまとめて連合野 association areaと呼び、諸中枢のはたらきを総合し、高次の精神活動を営む領域であると考えられて いる。前頭葉連合野はヒトでは特に発達しており、認知・学習・記憶・思考などにかかわるとされる。 下図にあるように、視床の背内側核(DM/MD)は前頭連合野に投射する。13 図に「ロボトミー」とあるが、これは20世紀の中葉に重度のうつ病や統合失調症などの精神病患者 に対して行われた、前頭葉と間脳や視床を切除する手術のことである。この手術は、多くの死者が出た ことや副作用(現在からみれば、重要な連絡を切除したことの当然の帰結!?)の大きさ、向精神病薬 の出現により行われなくなり、現在は禁止されている。
28 ) 感覚性失語症は優位半球の側頭葉にあるウェルニッケ野の障害で起こることが多い.
○★前頭葉の運動性言語野motor speech area(ブローカ 野)は発声に必要な筋の活動の調整にはたらくと考えら れ、この部位に障害があると正常な発声ができなくなる (運動失語motor aphasiaまたは表現失語expressive aphasia)。一方、側頭葉の感覚性言語野sensory speech area(ウェルニッケ野)は音声を言語として理解すると きにはたらくとされ、この部位が障害されると言語音の 意味が理解できなくなる(感覚失語sensory aphasiaま たは受容失語receptive aphasia)。これらの言語野は、 利き腕にもよるが多くは左大脳半球にあり、この場合、 言語野がある左大脳半球を優位半球dominant hemisphereと呼ぶ。
29 ) 大脳半球の大脳鎌に
面した部分の大半は前大
脳動脈で栄養される.
○ ★大脳鎌falx cerebriは、脳 を取り巻く硬膜(髄膜の最も 外側の強靱な膜)が、左右大 脳半球の間の隙間(大脳縦 裂)に入り込んでできた構造 である。脳の内側部には内頚14 動脈から分かれた前大脳動脈が分布するから、題意は正しい。 ★脳を走る主要な動脈について。右上図のように、脳には、前方に内頚動脈、後方に椎骨動脈がそれぞ れ左右に一対、計4本のみが入っていく。内頚動脈からは、前大脳動脈、中大脳動脈が分岐する。一方、 左右の椎骨動脈は 橋下部で合流して 脳底動脈が形成さ れ、橋上部でまた左 右に分かれて後大 脳動脈となる。この 前・中・後の大脳動 脈は右下図のよう に輪状につながる (ウイリス動脈輪)。 この構造は一見し たところ、大脳にお ける血液循環の調 節や局所的な傷害 に対するリスク回避に有効なようにみえる が、実際にはそのような機能はないとされる。 たとえば内頚動脈からの血液供給が滞った とき、椎骨動脈側からの血液供給でカバーで きるかというと、それでは不十分なようだ。 三つの大脳動脈の走行について、右図で確 認しておこう。内頚動脈ICAから分かれた前 大脳動脈ACAは左右半球の間(大脳縦裂)を 走り、大脳内側部の広い範囲に分布する。一 方中大脳動脈MCAは大脳半球の側面を走り、 大脳外側部の広い範囲に分布する。また脳底 動脈BAから分岐する後大脳動脈PCAは、大脳 脚の腹側を後方に走り、側頭葉や後頭葉に分 布する。
30 ) 間脳付近の血液は無対性の大大脳
静脈を経由して海綿静脈洞に流入する.
× ★大大脳静脈は直静脈洞に流入するから、題意は誤り。他は正しい。脳静脈系は外静脈系external veinsと、内静脈系internal veinsに大別されるが、いずれも各所の硬 膜静脈洞に注ぎ、最終的に内頚静脈に合流する。外静脈系には上・下・浅中大静脈などがあり、それぞ れ大脳外側表面の上部、下部、側面を走る。一方、内静脈系は大脳の深部や大脳半球下面を後方に走り、 最終的には大大静脈に集まって、大脳後部で外静脈系と合流する(下図)。
15 ★大
さて、髄膜の最外層をなす強靭な膜である硬膜は発生上2層からなり、通常2層は密着しているが各 所で2層が分離したところがあり、この空洞は総称で硬膜静脈洞sinus of dura materと呼ばれ、静脈が 流れる。上右図のように、大大脳静脈が流れ込むのは直静脈洞である。海綿静脈洞は下垂体の付近にあ り、大大脳静脈には接続していない。内頚動脈や視・動眼・滑車・外転の各脳神経が通る重要な場所だ が、上図には載っていない。
3.下記の問について解答欄に記号で答えよ.(30 点)
1.自律神経節にあって,後根神経節に無いものはどれか.
a. 衛星細胞 b. シナプス c. 偽単極神経細胞 d. リポフスチン顆粒
b ★自律神経節は末梢にありニューロンの交代が行われる。一方後根神経節は知覚神経の1次ニューロン (偽単極性)の細胞体が存在する。後者にはシナプスはないので、答えはb。 a.中枢神経系のグリア細胞は①アストロサイト(ニューロンの支持や栄養)②オリゴデンドロサイト (中枢性髄鞘)③上衣細胞(血液脳関門)④ミクログリア(食細胞)の4種類。一方、末梢神経系でグ リア細胞に相当するのがシュワン細胞shwann cellで、末梢性髄鞘を形成するほか、知覚神経節や自律 神経節の細胞体の周りを取り囲む(衛星細胞)。 c.軸索の途中に細胞体があるニューロンのこと。知覚神経の1次ニューロンはこれ。 d. リポフスチン顆粒は神経細胞を光学顕微鏡で観察したときにみられる色素で、加齢とともに蓄積 される。電子顕微鏡レベルでは細胞内消化を担うリソソームである。2.交感神経節において誤っているものはどれか.
a. 節前神経の軸索は交感神経節内で節後神経にシナプス結合する.
b. 一部の節前神経の軸索は,同じ高さの交感神経節を通過し,それより上下に存在
する交感神経節でシナプス結合をする.
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c. 腹部内臓,骨盤内臓に分布する交感神経の節前神経の軸索は交感神経幹を通過し,
大動脈近傍の神経節でシナプ
ス結合をする.
d. 一部の節前神経節の軸索は
神経節を通過し,直接,平滑筋
を支配する.
d ★自律神経系、主に交感神経につ いて問う問題。自律神経系の構成 を示す定番のチャートをみながら、 各選択枝を検討していこう。 まずb.について、頭頚部の目や 涙腺などを支配する交感神経は、 胸椎から出て交感神経幹を上行し てから上頚神経節でシナプスを形 成するから、正しい。 次にc.について、腹部内臓~骨 盤内臓に分布する交感神経は、交 感神経幹を通過し腹腔神経節・上 腸間膜神経節・下腸間膜神経節で シナプスを形成するから、正しい。 残るa.とd.だが、c.で解説した とおり、a.の選択枝を「必ずそう なる」と解釈すればこれは間違い である。d.について、自律神経で は末梢に神経節が存在するものと されており、例外については聞い たことがないので、これを間違い みなし、a.は「多くの交感神経は そうである」と解釈するのが適当 と思われる。3.
調節反射について誤ってい
るものはどれか.
a. 瞳孔括約筋に分布する副交
感神経が縮瞳を起こす.
b. 毛様体筋に分布する副交感神経が水晶体の厚みを増す.
c. 大脳皮質視覚野が関与する.
d. 内直筋に分布する動眼神経が関与する.
e. 瞳孔散大筋に分布する交感神経が散瞳を起こす.
e ★遠方を見ていて急速に近くの物体を見るとき、①内側直筋を収縮させて寄り目にし、同時に②毛様体 筋を収縮させて屈折力を増す必要がある。①を輻輳反射、②を調節反射といい、両者は必ず一緒にはた らくから、あわせて輻輳・調節反射convergence-accomodatio reflexと呼ぶ。輻輳・調節反射には縮瞳17 が伴う。この輻輳・調節反射が大脳皮質を介する複雑な経路であるのに対し、光の入射に対して両側の 瞳孔収縮を引き起こす対光反射は大脳皮質を介さない単純な経路である(下図で両者の経路を確認しよ う)。 ※なぜ縮瞳で散瞳ではないのか? 瞳孔は光量の調節の他に、視界のうちピントのあう範囲を調節する はたらきがあり、縮瞳のときピントがあう範囲が広くなる。物体が近づいてきたとき、ピンとがあう範 囲を広げる必要があるので、縮瞳が起こると考えられる。
4.分泌に関わる軸索を涙腺に送っている細胞体はどこにあるか.
a. 上唾液核 b. 下唾液核 c. 膝神経節 d. 耳神経節 e. 翼口蓋神経節
e★副交感神経の経路の問題。上唾液核 superior salivatory nucleus (GVE)は橋にある節前神経であり、 また下唾液核inferior salivatory nucleus(GVE)は延髄にある節前神経である。両者の機能と経路を以 下にまとめる。下記のように、涙腺に直接接続する翼口蓋神経節が正解。 名称 機能 経路 橋・ 上唾液核 涙腺、顎下腺、舌下腺 などを副交感性支配 ①上唾液核→中間神経→大錐体神経→翼口蓋神経節→涙腺 ②上唾液核→中間神経→鼓索神経→顎下神経節→顎下腺、 舌下腺 延髄・ 下唾液核 耳下腺を副交感性支配 下唾液核→舌咽神経→耳神経節→耳下腺
5.損傷によってホルネル症候群が起こりうるのはどれか.
a. 三叉神経視床路 b. 毛様体神経節 c. 動眼神経 d. 上頚神経節 e. 視放線
d★ホルネル症候群Horner's syndromeは、交感神経の障害で起こり、ホルネルの3徴 Horner's triad(眼 瞼下垂、縮瞳、眼球陥凹enophthalmos)で特徴づけられる。各徴候は直接には以下の原因による。 ・眼瞼下垂:上瞼板筋(ミューラー筋;交感神経支配)のマヒ ・縮瞳:瞳孔散大筋のマヒ ・眼球陥凹は、瞼下垂による眼裂狭小のために見かけ上のものとされる。 上瞼板筋と瞳孔散大筋は上頚神経節に細胞体を持つ交感神経に支配されており、上頚神経節またはそ の前後の神経路が傷害を受けることにより、上記のような症状が起こる。 たとえば延髄網様体が傷害されると、以下の経路によりホルネル症候群がみられる。 延髄網様体→網様体脊髄路→側角の交感神経節前ニューロン→交感神経幹→上頚神経節→瞳孔 散大筋・上瞼板筋および下瞼板筋
18
6.対光反射に関わっている神経核はどれか.
a. 孤束核
b. 迷走神経背側核
c. 上唾液核
d. 顔面神経核
e. エディンガー・ウェスト
ファール核
e ★対光反射は、一側の眼球に光を 入射すると両側の縮瞳(瞳孔縮 小)が起こる現象で、脳死の判定 の際にも利用される重要な反射 である。反射経路は である。右図で確認しておこう。 なおエディンガー・ウェストファ ール核は、動眼神経副核の別名。7.右目に光が入っても縮瞳しないが,左目に光が入ると両眼の縮瞳が見られた場合,以
下の部位のうち損傷が疑われるのはどれか.
a. 右の視索 b. 右の視神経 c. 右の動眼神経 d. 左の動眼神経
b ★問6の図と経路を引き続き参照する。対光反射では、入射した光と同側の眼球の縮瞳と、反対側の縮 瞳が同程度に見られる。これは①視神経は視交叉で半数が交叉すること、また②視蓋前域からの出力線 維は半数が同側、残り半数は反対側の動眼神経副核に到ることによる。 そこで、実際に経路を追ってみれば、最初の視交叉の前で障害がある場合にのみ、題意の現象がみら れることが分かるだろう。8.料理の匂いで唾液の分泌が促されるが,このとき,関わっていない部位はどれか.
a. 扁桃体 b. 嗅球 c. 視床下部 d. 舌下神経核
d ★舌下神経(ⅩⅡ)は舌の運動にはたらくから、問われている嗅覚~唾液分泌とは関係がない。以下に 嗅覚伝導路を示す。嗅覚は視床に入らない数少ない感覚のひとつで、鼻腔の嗅細胞で受容された刺激は、 嗅球の僧帽細胞mitral cell~嗅索を経て、辺縁系の扁桃体、梨状葉前皮質、中隔野などに終わり、そこ からさらに海馬や視床下部の乳頭体、視床や側頭葉の嗅覚野にも連絡している。 光→網膜→視蓋前域→動眼神経副核→動 眼神経→網様体神経節→瞳孔括約筋19
9.嗅覚について正しいものはどれか.
a. 嗅覚伝導路は同側の嗅覚野のみに投射する.
b. 僧帽細胞は一次嗅覚野に直接シナプス結合する.
c. 嗅神経は扁桃体に直接シナプス結合する.
d. 損傷した嗅神経は再生しない.
e. 嗅索は嗅上皮内の知覚神経細胞からの軸索からなる.
b ★引き続き問8の図を参照。嗅覚系の伝導路を整理すると、 嗅細胞→(嗅神経)→僧帽細胞→(嗅索)→1次嗅覚野のようになる。そこでc,eは明らかに誤り。dに ついては、嗅上皮には神経幹細胞が存在し、嗅細胞~嗅神経はおよぼ40日ごとに置き換えられる。これ は中枢神経系における成熟神経細胞の再生の稀な例なので、神経発生や分化研究のひとつの焦点となっ ている。10.視覚について正しいものはどれか.
20
a. 大脳皮質視覚連合野の損傷で同名
半盲が起きる.
b. 黄斑部の視覚情報は,視覚野の後
方に投射する.
c. 視覚野の細胞は,視索を通ってき
た軸索からシナプス結合を受ける.
d. 鳥距溝の下面の細胞には,反対側
下方の視野からの視覚情報が投射す
る.
e. 片側の視索の損傷で,両耳側半盲
が起きる.
b. ★右図を用いて確認していこう。 a. 右のような経路により結局、右脳には 両眼左視野、左脳には両眼右視野が入る。 連合野はその情報をさらに統合して処理 する上位中枢である。同名半盲とは、右図 Bの損傷で両眼の左視野が見えなくなるよ うな場合であり、これは誤り。 b. 錐体が密に集まり最も鮮明な像を得 る黄斑部の視覚情報は、特別に視覚野後方 に送られ、最も広い皮質面積を持つ。これ が正解。 c. 視索を通ってきた軸索は外側膝状体 でニューロンを交代するので、誤り。 d. 右図では左視野・右視野の区別に着目 しているが、上視野・下視野の区別に着目 しても同じような関係を取り出すことが できる。上視野は網膜で下方に到達し、こ の区別は視覚伝導路でずっと維持され、1 次視覚野に入るときには、上視野は鳥距溝 の下面から入る。a.解説より「反対側」は OKだが「下方」が誤り。 e. 両耳性半盲とは、下垂体腫瘍などで右 図C(視交叉の中央部)が損傷された場合 に、両眼の視野のそれぞれ外側が欠損する ような場合であり、誤り。11.視覚について正しいものはどれか.
21
a. 視神経の髄鞘はシュワン細胞によって作られる.
b. 網膜の黄斑部の視力が最も良いのは,錐体細胞が密在しているからである.
c. 眼房水が過剰になると,うっ血乳頭(乳頭水腫)が起きる.
d. マイヤーのループは後頭葉にある.
e. 網膜右半分からの情報は,左側の視覚野に投射する.
b ★a. 視神経→脳神経→末梢神経→シュワン細胞と考えたくなるが、視神経は脳の延長のような存在で、 中枢神経であり、オリゴデンドロサイトが髄鞘をつくる。 c.脳腫瘍などで頭蓋内圧が上昇すると、眼底にある視神経乳頭が腫れて充血し突出して、頭痛や視野狭 窄、視力低下などの症状がでる。これを乳頭水腫(うっ血乳頭)という。眼房水の過剰により眼圧が上 昇して視神経に障害が起こるのは緑内障glaucomaである。 d. 図11の図では正確に書いていないが、外側膝状体を出たあとの視放線は、いったん大脳の前側方へ 迂回した後で後方に向かう。この迂回路をマイヤーのループという。これは前後でいうと外側膝状体(視 床)と同じ位置なので、誤り。 e. ひっかけ問題。問11の図で、両眼左視野→両網膜右半分→右側の視覚野となることを確認しておこ う。12.内側縦束について正しいものはどれか.
a. 動眼神経,滑車神経,外転神経の神経核を連絡する神経線維を含む.
b. 三叉神経脊髄路核のすぐ外側を通る.
c. 下丘と内側膝状体とを連絡する.
d. 辺縁系を連絡する.
e. 大脳皮質の感覚性言語中枢と運動性言語中枢とを連絡する.
a★内側縦束 medial longitudinal fasciculus (MLF)は名称からすると、「内側を縦方向に走る神経路」 くらいの意味で、脊髄~中脳の内側部にみられる。上行枝と下行枝からなり、上行枝は橋~延髄上部の 前庭神経にはじまり、中脳の外眼筋支配の神経核(動眼神経核、滑車神経核、外転神経核)に終わる。 下行枝は橋網様体、中脳視蓋、中脳カハール間質核などからはじまって、脊髄を下行する。よってa.が 正解。
13.角膜反射に関わっていないものはどれか.
a. 三叉神経脊髄路 b. 三叉神経節 c. 顔面神経核 d. 眼神経 e. 三叉神経視床路
e ★角膜を柔らかい綿で軽く擦ると反射的に閉眼がおこり、これを角膜反射corneal reflexという。角膜反 射は橋の顔面神経核がかかわり、その経路は である。e.の三叉神経視床路は、頭部の繊細な触圧覚と温痛覚を視床VPM核に中継する伝導路である。 たとえ以上のことを知らなくても、視床への連絡は関係なさそうだと考えて正解を選べるのではないか と思う。14.二次知覚ニューロンの細胞体や軸索ではないものはどれか.
a. 三叉神経脊髄路核 b. 三叉神経視床路 c. 内側毛帯 d. 三叉神経主知覚核
三叉神経第一枝(眼神経)→三叉神経節→三叉神経脊髄路核→顔面神経核→顔面神経→眼輪筋(閉眼)22
e. 三叉神経中脳路核
e ★三叉神経毛帯系は頭部の知覚の伝導路であり、三叉神経主知覚路核、三叉神経脊髄路核はその二次ニ ューロンであり、いずれも視床VPM核に投射するので、三叉神経視床路と総称する。また後索・内側毛 帯系は体性感覚(繊細な触圧覚、意識にのぼる深部感覚)の伝導路であり、内側毛体はやはり視床VPM 核に投射する二次ニューロンの軸索である。 三叉神経中脳路核は、顔面領域の筋(咀嚼筋、外眼筋)や歯根膜の深部感覚を伝える一般求心性脳神 経核 GSAであり、これだけ種別が異なる。15.上顎の歯の痛みの伝達に関わっているのはどの視床核か.
a. 前外側腹側核 b. 視床内側核 c. 後内側腹側核 d. 後外側腹側核 e. 視床前核
c ★上顎の歯痛は三叉神経第二枝の上顎神経(後上歯槽枝)が伝える。大問2-28)の図のように、三 叉神経の感覚の中継点はVPM。なおaから順にVA+VL、M(MD or DM)、VPM、VPL、A。16.眉毛が生えている部位の皮膚の痛みを伝える経路はどれか.
a. 三叉神経-三叉神経主知覚核-視床後内側腹側路-大脳皮質一次知覚野
b. 眼神経-三叉神経節-三叉神経運動根-三叉神経毛帯-大脳皮質一次知覚野
c. 眼神経-三叉神経脊髄路核-三叉神経毛帯-視床-大脳皮質一次知覚野
d. 三叉神経-翼口蓋神経節-三叉神経毛帯-視床後外側腹側核-大脳皮質
e. 顔面神経-膝神経節-三叉神経脊髄路核-三叉神経毛帯-視床-大脳皮質
c ★顔面の皮膚感覚は三叉神経が主に支配するが、眉毛 付近から額は第1枝(眼神経)、頬骨付近は第2枝(上 顎神経)、側頭部~下顎は第3枝(下顎神経)が担当 する。 題意は温痛覚だから、右図のように、いったん下行 して脊髄に入り、後に上行して視床VPM核に入る外側 路を通る。17.第 VI 脳神経で支配されるのはどれか.
a. 内側直筋 b. 外側直筋 c. 上斜筋 d. 下斜筋 e. 上眼瞼挙筋
b23 ★第Ⅵ脳神経の外転神経は外側直筋に分布する運動性神経核。眼球運動は他に動眼神経(Ⅲ)、滑車神 経(Ⅳ)がかかわる。対応する眼筋を下図で整理しておこう。 ・動眼神経(Ⅲ):上眼瞼挙筋、上直筋、下直筋、内側直筋 ・滑車神経(Ⅳ):上斜筋 ・外転神経(Ⅵ):外側直筋
18.顔面神経核の軸索が終止するのはどれか.
a. 顔面筋 b. 顔面の皮膚 c. 顎下神経節 d. 涙腺 e. 孤束核
a ★橋背部にある顔面神経核はSVEで、顔面筋(表情筋)支配にはたらく。 顔面神経(Ⅶ)は主に顔面筋(表情筋)を支配する運動神経からなるが、そのほかにも舌の前2/3の味 覚を担う知覚神経と、涙腺・顎下腺・舌下腺などに分布する副交感神経線維も含む。以下の経路もつい でに押さえておこう。 ・上唾液核GVE→(顔面神経)→翼口蓋神経節→涙腺、後鼻枝など ・弧束核外側部SVA→(顔面神経)→顎下神経節→舌下腺、顎下腺19.側頭骨内の顔面神経管の損傷で左の顔面神経
が切断されてしまった場合,どのような
所見がみられるか.
a. 左側の顔面上半分の顔面筋の麻痺が見られる
が,下半分の顔面筋の機能は保たれる.
b. 左側の顔面下半分の顔面筋の麻痺が見られる
が,上半分の顔面筋の機能は保たれる.
c. 左のすべての顔面筋の麻痺が見られる.
d. 両側の顔面下半分の顔面筋の麻痺が見られる
が,上半分の顔面筋の機能は保たれる.
c ★橋の顔面神経核に入る皮質核路は、その少し前で交叉 している。上半分の表情筋を支配する経路はこのとき左 右両側の顔面神経核に入るが、下半分の表情筋を支配す24 る経路は完全に交叉して反対側の顔面神経核に入る。以上より、たとえば右側の大脳皮質の障害が起こ った場合、顔面下半分は左側(健側)のマヒが起こるが、顔面上半分の表情筋は麻痺しない。 ……顔面筋には以上のような臨床的に興味深い、特徴的な神経支配の構成があるのだが、本問題は顔 面神経核を出て末梢へ向かう部分の障害なので、普通に患側の上下表情筋のマヒが起こる。
20.聴覚系について正しいものはどれか.
a. 高音(周波数の高い音)は蝸牛底の近くの有毛細胞によって受容される.
b. コルチ器の基底面によって,前庭階と鼓室階が分けられる.
c. 外有毛細胞は,音情報を受容し,その軸索によって音情報を聴覚中枢へ伝える.
d. 蝸牛神経の中を走る軸索は,下丘に投射する.
c ★ a.蝸牛の入り口(卵円窓)に近い有毛細胞ほど高い音を受容する。 b.コルチ器の基底面ではなく蝸牛管cochlear duct。 d.聴覚系の伝導路は複雑・多段階4~6個のニューロンを経て大脳聴覚野へと伝えられる。2次ニュー ロンである蝸牛神経核と下丘核の間は少なくとも1つのニューロンが介在するため、誤り。21.平衡感覚の一次知覚神経はどの部位で脳幹に入るか.
a. 延髄の尾側
b. 延髄と橋の境界
c. 橋の中央
d. 中脳の脚間窩
e. 乳頭体の基部
b ★聴覚系と比べると平衡感覚の伝導路は単純である。 ①1次ニューロン:有毛細胞の興奮は前庭神経核に入るほか、一部は直接小脳に投射する ②2次ニューロン:前庭神経核から起こり、小脳に投射する。 なお前庭神経核(SSA)は脳幹の橋と延髄をまたぐ位置に存在する。22.頭部の位置の変化や,直進運動を受容する仕組みについて正しいものはどれか.
a. 平衡斑の有毛細胞の興奮によって受容される.
b. 膨大部稜の有毛細胞の興奮によって受容される.
c. 膨大部稜のゼラチン頂の傾きが刺激となる.
d. 外リンパの流れによって有毛細胞が刺激されて興奮する.
a ★平衡感覚(前庭感覚ともいう)は前庭器官で受容される。前庭器官は、頭部の回転加速度を受容する 三半規管と、重力を含む直線的加速度を受容する卵形嚢、球形嚢からなる。卵形嚢、球形嚢はあわせて 平衡斑と呼ぶ。選択枝b,cは半規管の回転感覚、dは聴覚についての記述。23.前庭神経核のニューロンが直接シナプス連絡をしないものはどれか.
a. 動眼神経核
b. 頚部の筋を支配する脊髄前角運動ニューロン
c. 小脳片葉
d. 大脳皮質
25 d ★前庭器官で受容された前庭感覚は、主に橋の前庭神経核に入るほか、一部は小脳に直接入る。前庭神 経核(SSA)は、その情報を小脳のほか、内側縦束(MLF)を通って脊髄運動ニューロン、中脳の外眼筋 支配にかかわる神経核(Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ)などに送る。
24.舌の後ろ 1/3 の味覚を伝える神経線維が通っているのはどれか.
a. 内側縦束
b. 中間神経
c. 孤束
d. 三叉神経脊髄路
e. 迷走神経
c ★味覚の伝導路は受容器と3つのニューロンからなる。 ・舌と喉頭蓋にある味蕾細胞で味覚を受容する。 ・1次ニューロンは、受容器の場所により三つの経路をとる。 ①舌前2/3の味覚:舌神経→鼓索神経→膝神経節→中間神経の根 ②舌後1/3の味覚:舌咽神経→舌咽神経舌枝→舌咽神経下神経節→舌咽神経の根 ③喉頭蓋の味覚:上喉頭神経内枝→迷走神経→迷走神経下神経節→迷走神経の根 これらの根は脳幹に進入して脳幹を下行し、孤束を形成する。 ・2次ニューロン:孤束は延髄の弧束核外側部に終わる。 ・3次ニューロン:弧束核外側部のニューロンは、視床VPM核の小細胞性部(VPMpc)に終わる。 ・VPMpcの軸索は第1次味覚野に終わる。 以上のように、味覚は受容器の場所で分岐するが、どの枝も結局は孤束→弧束核に合流するので、こ れが正解。25.舌咽神経について正しいものはどれか.
a. 舌咽神経に含まれる知覚神経のうち三叉神経脊髄路核へ投射する成分は,頚動脈
小体や頚動脈洞からの情報を伝える.
b. 舌咽神経に含まれる知覚神経のうち孤束核へ投射する成分は下の後ろ 1/3 の味覚
を伝える.
c. 舌咽神経に含まれる知覚神経の細胞体は疑核にある.
d. 脊髄根と延髄根とがある.
b ★舌咽神経(Ⅸ)はその名の通り主に舌と咽頭に分布する神経で、知覚線維のほか運動線維、副交感神 経線維を含む混合性脳神経である。 ・知覚神経:舌後1/3の味覚を延髄の孤束核に伝える ・運動線維:延髄の運動性神経核である疑核から入力を受け、咽頭の一部の筋(茎突咽頭筋)に分布す る。 ・副交感神経線維:主に耳神経節に入り、そこから耳下腺に接続する。 以上より正解はb。 a. 舌咽神経は三叉神経脊髄路核に投射しない。 c. 疑核は運動性神経核で、舌咽神経へ運動線維を伸ばす。舌咽神経に含まれる知覚神経の細胞体は舌咽 神経下神経節にある。 d. 副神経(ⅩⅠ)は脊髄からのびる脊髄根と延髄からのびる延髄根が合流してできる。26
26.右側の声帯麻痺,右側の咽頭反射(催吐反射)の消失,嚥下障害を呈する患者におい
て損傷が見られうる部位はどれか.
a. 右舌下神経核 b. 右疑核 c. 右顔面神経核 d. 左大脳皮質運動野
b ★上記障害はいわゆるワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)の症状のひとつと捉えて整理しておくこ とが有益だろう。ワレンベルグ症候群では、延髄背外側部が障害により、めまい・嘔吐・頭痛などの症 状が出て、同側の温痛覚が失われる(触覚は残る)。以下の表で確認しておこう。 症状 障害箇所 顔面の温痛覚の消失と感覚解離(表在知覚のみ が障害され深部知覚は保たれている) 角膜反射の低下 三叉神経脊髄路および核 Horner症候群(眼瞼下垂、縮瞳、眼球陥凹) 眼振、めまい、悪心、嘔吐 前庭神経核 構音障害(嗄れ声)、嚥下障害 同側の疑核,咽頭神経,迷走神経 小脳性運動失調 小脳半球、下小脳脚、オリーブ核小脳路、脊髄 小脳路 同 側 味覚障害 孤束および孤束核 対 側 体幹,上下肢の温痛覚の障害 脊髄視床路27.内臓感覚を伝える一次知覚神経細胞が存在するのはどこか.
a. 三叉神経節
b. 膝神経節,舌咽神経神経節,迷走神経神経節
c. 腹腔神経節,上腸間膜神経節,下腸間膜神経節
d. 上頚神経節
e. 翼口蓋神経節
b ★「体性感覚」と「内臓感覚」は対をなす用語で、温痛覚や触覚は前者に、味覚や嗅覚は後者に属する。 a. 三叉神経節は頭部の各種体性感覚にはたらく1次ニューロンの細胞体がある。 b.膝神経節は舌前2/3の味覚を伝える神経路の一部。舌咽・迷走神経下神経節は、内臓からの感覚情報を 伝える1次ニューロンの細胞体がある。 cとdは交感神経系の神経節(問2-2のチャートを参照)。 e. 翼口蓋神経節は、橋の上唾液核より出て涙腺、顎下腺、舌下腺などを支配する副交感神経線維の一部。28.内臓の知覚に関わる二次知覚神経が存在するのはどこか.
a. 孤束核 b. 三叉神経脊髄路核 c. 三叉神経主知覚核 d. 三叉神経中脳路核
e. 中間質外側核
a ★aは味覚の伝導路における二次ニューロン。 bとcは頭部の各種体性感覚の伝導路における2次ニューロン。 dは顔面領域の筋(咀嚼筋、外眼筋)や歯根膜の深部感覚を伝える一般求心性脳神経核 GSA。 eについて、「中間質外側」とは脊髄髄質の前角と後角にはさまれた中間の部位で、交感神経の節前ニ ューロンが位置する。27
29.舌下神経が分布しているのはどれか.
a. 舌の後ろ 1/3 の味蕾 b. 舌粘膜の自律神経終末 c. 茎突咽頭筋
d. 顎舌骨筋 e. 舌骨舌筋
e ★舌下神経(ⅩⅡ)は舌筋を支配し舌の運動にかかわる。舌筋は内舌筋と外舌筋に分けられ、舌骨舌筋 は外舌筋のひとつ。顎舌骨筋は下顎下部の筋で、舌筋には含めない。30.片側の舌下神経の損傷が起きた場合,おこりうる障害はどれか.
a. 同側の舌前 2/3 の味覚障害
b. 同側の舌後ろ 1/3 の味覚障害
c. 舌を前に出させると損傷側に偏位して突出する.
d. 舌を前に出させると損傷側と反対側に偏位して突出する.
e. 損傷側の声帯麻痺が起こり,嗄声が起こる.
c ★舌下神経は交叉しないので、舌下神経の障害は同側に症状が出る。 a,b:味覚系伝導路については問24の解説を参照。 e:問26のとおり、疑核などの障害による。4.小脳核にはどのようなものがあるか.各小脳核の入出力線維の特徴を小脳の機能と関
連させて説明せよ.(10 点)
小脳は大脳と同様、外側に皮質(灰白質)、内側に髄体(白質)という構成で、髄体内部にある灰白 質塊(細胞体の集まり)を小脳核cerebellar nucleiという。身体各部のさまざまな感覚情報(とりわ け前庭感覚や深部感覚)は、中・下小脳脚を通って小脳に入り、小脳皮質に投射する。小脳皮質の感覚 情報は小脳核へ送られ、小脳核から再び小脳の外に出て、脳幹の神経核や視床、大脳皮質、脊髄運動核 などに送る。小脳ではこのように感覚の統合や加工を行ってフィードバックを返すことで、筋緊張の調 節、姿勢制御、頭部の動きに応じた眼球の位置制御などの機能を実現している(以下は経路のまとめ)。 各所の感覚神経 → 小脳皮質 → 小脳核 → 脳幹神経核、視床、大脳皮質、脊髄運動核 身体各所からの感覚情報の入力は、次のように、入力の種類により小脳内の特定の部位に入る。小脳 は系統発生的に古い順に原小脳archicerebellum、古小脳paleocerebellum、新小脳neocerebellumに分 かれるが、この区分と前庭小脳、脊髄小脳、橋小脳の区分はおおよそ一致する。さて小脳核には、外側から内側へ向かって歯状核dentate nucleus、栓状核emboliform nucleus、球 状核globosenucleus、室頂核fastigialnucleusがあり、外側の方が系統発生的に新しい構造である。こ れら小脳核は、小脳皮質の特定の部位からの入力を受ける 下図に示すように、前庭小脳からは、小脳核を通さずに橋の前庭神経核に出力する。小脳虫部からは、 室頂核に出力される。小脳半球のうち中部傍部からは、球状核、栓状核に出力される。最後に小脳半球 外側部からは、歯状核に出力される。 入力される感覚 小脳内の部位 前庭器官からの前庭感覚 前庭小脳(片葉小節葉、扁桃、小脳小節) 脊髄からの深部感覚 脊髄小脳(前葉、虫部錐体、虫部垂) 皮質橋核小脳路からの入力 橋小脳(小脳半球外側部)
28 小脳核の後は、次のような経路になる。すなわち、室頂核は上小脳脚を通過せずに小脳を出て、前庭 神経核や網様体に入る。前庭神経核は①中脳の外眼筋を支配する神経核に投射し、眼球運動を調節する。 また②脊髄に投射して筋緊張や身体の平衡を制御する。また網様体は脊髄運動ニューロンに接続して、 四肢の筋緊張にはたらく。 球状核、栓状核は上小脳脚を通過して、中脳下丘の高さで交叉した後、主に赤核に接続する。赤核 からは脊髄の屈筋支配運動ニューロンに接続し、屈筋緊張の調節を行う。 歯状核は上小脳脚で交叉して、反対側に視床VL核に入り、さらに大脳皮質の運動野に到り、運動野か ら出る錐体路のはたらきに影響を及ぼすと考えられている。 ここまでの内容をまとめると次のようになる。 入力する感覚 小脳の皮質の部位 小脳核 出力先 機能 前庭感覚 前庭小脳 橋の前庭神経核 四肢の筋緊張や眼 球の調節 小脳虫部 室頂核 橋の前庭神経核 脳幹の網様体 四肢の筋緊張や眼 球の調節 深部感覚(脊髄か ら) 小脳虫部傍部 球状核、栓状核 赤核 屈筋調節 皮質橋核小脳路か らの入力 小脳半球外側部 歯状核 視床VL核、大脳皮質運 動野 運動制御に影響を 及ぼす なおこの表で下にいくほど系統発生的に新しく、とりわけ小脳半球はヒトで非常に大きく発達している ことは注目に値する。こうして小脳では、単純(自動的)なものから複雑(計画的)なものまで、複数 の運動制御を並列的に処理しているのではないかと考えられる。
5.次の構造を簡単な図に描いて示し,機能的意義について述べよ.(8点×2)
1 ) 大脳辺縁系
2 ) 線条体
29 1)大脳辺縁系limbic systemは発生的に 古い皮質と、その皮質と線維連絡をもつ 皮質下核からなる。大脳辺縁系は本能的 行動(飲食、性行動など)や情動の発現 (怒り、恐れ、快不快など)に深く関与 するとされ、自律神経や内分泌系に影響 を与えることで機能を発揮している。 主な皮質としては海馬、帯状回、海馬 傍回など、皮質下核としては扁桃体や中 隔核などがある。このうち海馬は短期記 憶の形成、帯状回は心臓血管系の調節や 注意プロセスにかかわり、海馬傍回は食 う神記憶に関与するといわれる。また扁 桃体は攻撃性や恐怖など、生命に関連が 深い情動に関与する。 2)線条体striate corpusは、大脳基底核に見 られる構造であり、発生的にもともと一体であ った尾状核と被殻とをあわせて線条体と呼ぶ。 線条体は運動調節にかかわる系の一部として はたらいているが、線条体そのものの機能は何 かと問うとすれば、解答は難しい。しかしこの 周辺で起こる障害が引き起こす症状について の知識は、その機能の推論に非常に役立つ。 中脳黒質は線条体から入力を受け、また線条 体へと出力する。この出力には、神経伝達物質 としてドーパミンが用いられる。パーキンソン 病はこの黒質→線条体のドーパミンによるシ グナルが何らかの理由で阻害されることで発 症する。パーキンソン病の三徴候は固縮、振戦、 無動症であり、ここから逆に、線条体が柔軟な 表情変化や安定した四肢の制御を行う系で重 要な役割を果たしていることが分かる。 ハンチントン病は線条体そのものの障害が 原因で起こるとされるが、パーキンソン病とは 逆に、運動亢進を特徴とする症状が出る。ここ から、線条体は運動を抑制する系と促進する系 の両方に同時にかかわっていることが推測で きる。