背景
臓器移植分野において免疫抑制療法の発展によりド ナー抗原感作歴のある症例においても十分な減感作療 法にて比較的良好で満足できるものとなってきた。し かし抗体関連拒絶(antibody-mediated rejection:AMR) の制御はいまだ不十分で,抗ドナー特異的 HLA 抗体 (donor specific anti-HLA antibodies:DSA)による急性 期の AMR(acute antibody-mediated rejection:AAMR), また特に移植後遠隔期に生じる AMR による慢性拒絶(chronic active antibody-mediated rejection:CAAMR)は 現行の免疫抑制剤では完全な制御は難しく長期成績は 十分とはいえない。したがって臓器移植分野において DSAはさらなる移植成績向上を行う上で必須の研究 対象である。1960 年代に azathioprine の導入により本 格的に腎移植が始まり,その後血液型抗原,HLA 抗 原の重要性が確認され,当初は DSA によるクロスマッ チ陽性例での腎移植は成績不良とされた。その後半世 紀は T 細胞主体の細胞性拒絶の抑制が注目され,最 終的にはカルシニューリン阻害剤,抗体製剤によるリ
特集「抗ドナー抗体」
腎移植におけるドナー特異的抗 HLA 抗体
中村緑佐
1,原田俊平
1,渡部清子
2,今西
唯
2,牛込秀隆
1,吉村了勇
1 1 京都府立医科大学大学院移植再生外科学,2 京都府立医科大学輸血細胞医療部Donor-specific anti-HLA antibodies in renal transplantation
1
Department of Organ Transplantation and General Surgery, Kyoto Prefectural University of Medicine,
2
Department of Blood Transfusion and Cell Therapy, Kyoto Prefectural University of Medicine
Tsukasa NAKAMURA1 , Shumpei HARADA1 , Kiyoko WATABE2 , Yui IMANISHI2 , Hidetaka USHIGOME1 , Norio YOSHIMURA1 【Summary】
Advances in immunosuppressants, such as rituximab, basiliximab, and others, enable organ transplantation for sensitized patients. In fact, an adequate desensitization protocol would lead to acceptable outcomes in the acute phase. However, it is true that the management of acute or, in particular, chronic antibody-mediated rejection resulting from donor-specific antihuman leukocyte antigens(HLA)antibodies, is still an important issue to improve better long-term graft survival. Thus DSAs seem to be a central research topic in the field of organ transplantation. In the 1960s, the introduction of azathioprine brought the be-ginning of contemporary renal transplantation. Following this, the barrier of AB antigens and anti-HLA antibodies was recognized: incompatibilities were considered as a high risk factor for renal trans-plantation. In the next half-century, the main attention was paid to T cell-mediated rejection. This led to the development of calcineurin inhibitors and several antibody drugs: a depletion of lymphocytes that en-abled the control of T cell-mediated rejection. DSAs have finally received much attention in the 21st
cen-tury because controlling them brings better outcomes in renal transplantations. This manuscript refers to examination, diagnoses, management, treatment, and outcomes in DSA-positive renal transplantation.
Keywords: antibody mediated rejection(AMR), donor specific anti-HLA antibody(DSA), renal
ンパ球消去療法に到達し,細胞性拒絶の制御は良好な 成績を収めた。DSA による AMR は 2000 年代に入り 特に注目されることとなり,その制御,治療が長期成 績の向上に至ると解釈されている。本稿では腎移植に おける DSA に対する検査,診断,対策,治療および 成績について述べる。
抗ドナー抗体検査
当院では臓器移植前のリンパ球交差適合検査(クロ スマッチ)として,リンパ球細胞傷害性試験(lympho-cyte cytotoxic test:LCT)法,フローサイトメトリー ( flow cytometry : FCM ) 法 , immunocomplex capture fluorescence analysis(ICFA)法による 3 種類の交差適 合試験と,抗 HLA 抗体スクリーニング検 査 と し て flow PRAを行っている。抗体スクリーニング検査が 陽性になった場合,またはクロスマッチで陽性となっ た場合は,DSA 検査(抗体同定検査)を行う。検査 結果の判定は,各検査法の長所・短所を踏まえ総合的 に行っている。以下に各検査法の特徴を示す。 1.LCT 法による交差適合試験 抗原抗体反応と補体依存性反応を応用した直接クロ スマッチ法であり,レシピエントの血清にドナーのリ ンパ球を加えて抗原抗体反応を起こさせた後,補体 (ウサギ補体)を添加して補体反応を起こす。レシピ エントの血清中にドナー HLA に対する抗体が存在す る場合は抗原抗体複合体が形成され,補体の活性化に より細胞膜に穴があくことでリンパ球は死滅する[以 上の原理より,complement dependent cytotoxicity(CDC)法]。ここにエオジンなどの染色液を加えることで死 細胞を染色し,倒立位相差顕微鏡を用いて死細胞(陽 性細胞)の割合を観察する。問題点として,感度が低 いこと,ドナーリンパ球(生細胞)の入手や準備が難 しいこと,結果が判定者の主観に左右されることが挙 げられる。また,非特異抗体による陽性反応がしばし ばみられる1) 。 2.FCM 法 に よ る 交 差 適 合 試 験(flow cytometry crossmatch:FCXM) FCM技術を応用したクロスマッチ法である。FCXM は感度が高く,LCT 法では検出できない抗体を検出 できる。ドナーのリンパ球とレシピエントの血清を反 応させ,抗ヒト免疫グロブリンで検出する間接免疫蛍 光法である。さらに蛍光標識 CD3 あるいは CD19 抗 体を用いることで,T リンパ球と B リンパ球を別々 に評価することができる。FCM 機を用いて蛍光分布 のシフトを観測する。高感度の検査であるため,試薬・ 装置の厳密な精度管理および設定が必要となる。感度 が高く HLA 抗原以外のリンパ球表面抗原に対する非 特異抗体なども検出する2) 。 3.ICFA 法 Luminexを用いたクロスマッチ法で,100 色の蛍光 色 調 を 認 識 で き る ポ リ ス チ レ ン ビ ー ズ(Luminex beads)をプラットホームとして使用する。HLA class I(A,B,C 抗 原)ま た は class II(DR,DQ,DP 抗 原)を発現しているドナー由来の血液細胞とレシピエ ントの血清を反応させた後,Lysis 液による細胞の可 溶化を行う。細胞膜から遊離した HLA 抗原・HLA 抗 体免疫複合体と,抗 HLA class I および class II モノク ローナル抗体をそれぞれ固相化したビーズを反応さ せ,ビーズ上に免疫複合体を捕捉する。そこに PE 標 識抗体(PE 標識 goat anti human IgG)を加えると, ビーズに捕捉された免疫複合体に PE 標識が結合す る。ビーズの蛍光および PE 蛍光を Luminex システム にて解析する。モノクローナル抗体を用いるため HLA 抗原抗体複合体に対する特異性が高い3) 。 一方 HLA 抗体検査として以下のスクリーニング法 と DSA の同定を行っている。 4.Flow PRA を用いた抗体スクリーニング FCMを用いてレシピエント血清に含まれる HLA 抗 体を検出するために行う。レシピエントの血清と HLA 抗原を固相化したラテックスビーズを反応させる。こ こに FITC 標識抗ヒトグロブリン抗体を添加して, ビーズ上の HLA 抗原に結合した HLA 抗体を蛍光標 識する。これを FCM 装置で解析し,蛍光強度より HLA 抗体の有無の確認および%PRA の測定を行う。ビー ズには class I,class II それぞれ 30 種類のパネル細胞 から抽出した HLA 抗原を固相化し,ミックスしてい る4) 。日本人が保有する抗原はおおむね網羅している が,低頻度抗原などは含まれていない可能性があり, 陰性の場合は他検査との総合判断が必要となる。陽性 の場合は後述する抗体同定検査(single antigen)を実 施する。患者の感作歴(輸血,移植,妊娠)を考慮し, 当てはまらない場合は自然抗体の可能性が高いと判断
している。
5.HLA 抗体同定検査(single antigen)
抗体スクリーニング検査が陽性になった場合や交差 試験が陽性になった場合は,抗体の特異性を同定する ために行っている。レシピエントの血清と,遺伝子組 み換え細胞から抽出した精製抗原が固相化されたビー ズを反応させる(1 種類のビーズに 1 種類の精製 HLA 分子が付着している)。ここに蛍光標識二次抗体を添 加して,ビーズ上の精製 HLA 抗原に結合した抗体を 蛍光標識する。当院では Luminex システムを用いて 解析し,抗体特異性を同定する。また,ドナーの HLA タイピング結果と併せて DSA の有無を判断する5) 。注 意点として,ビーズに固相化された精製抗原の種類に は限りがあるため,用いるキットの特性を理解して検 査を行う必要がある。 6.Virtual crossmatch 輸血領域においてあらかじめレシピエントおよびド ナーの血液型の入力,レシピエントの不規則抗体のス クリーニングを実施することは日常臨床で行われてい る。不規則抗体が陰性であればクロスマッチ検査の省 略,また陽性の時は特異性を同定する。これを臓器移 植領域で行った場合 virtual crossmatch(VXM)と呼ば れる。すなわちレシピエントとドナーの HLA タイピ ングを実施し,ミスマッチ抗原を同定,レシピエント の HLA 抗体をスクリーニングして陰性の場合はクロ スマッチ適合とし,スクリーニング陽性の場合は特異 性を評価してクロスマッチの判定を行う。近年,技術 の向上とともに VXM の正確性も改善し,移植待機期 間の短縮に寄与している6, 7) 。
抗体関連拒絶の診断
歴史的には移植腎機能障害を認めた際に,移植腎生 検にて病理学的に peritubular capillary(PTC)への C4 d沈着,動脈フィブリノイド壊死部への免疫グロブリ ンおよび補体の沈着,また血清学的に血中 DSA の存 在を示した場合に確定された8) 。また CAAMR は糸球 体基底膜の二重化を基本に,PTC 基底膜の多層化,in-terstitial fibrosis/tubular atrophy(IFTA),動脈内皮の線維性肥厚,C4d 沈着をもって診断された9)
。血清 DSA mean fluorescence intensity(MFI)については高値で あるほうが当然ながら AMR 発症,グラフト機能廃絶 のリスクが高いとされるが10, 11) ,測定時期や程度によ り変動が大きく 1 点での MFI の値で現在発症してい る AMR 発 症 の 評 価 を す る こ と は 困 難 と 考 え ら れ る12) 。
現 在 は Banff classification 2013 に 基 づ き AAMR は
以下の!∼#の診断基準すべてを満たすものとされ る。 !以下の組織学的特徴を 1 つ以上含む組織学的な急性 組織障害 (1)微小血管炎症としての g>0,ptc>0,内皮もし くは貫壁性の動脈炎 v>0 (2)他原因不明の急性血栓性微小血管障害 (3)他原因不明の急性尿細管障害 "DSA と血管内皮反応として以下を 1 つ以上含む (1)PTC に直線上に C4d 沈着を認める[C4d2 or 3 蛍光抗体法(凍結切片),C4d>0 免疫染色(パ ラフィン固定標本)] (2)中等度の微小血管炎 g+ptc≧2 (3)生検組織内に血管内皮障害を示す遺伝子転写産 物の存在の証明 #血清中の DSA の存在の証明 一方 CAAMR は以下の!∼#の診断基準すべてを 満たすものとされる。 !以下の組織学的特徴を 1 つ以上含む組織学的な慢性 組織障害 (1)慢性血栓性微小血管障害がない条件でのグラフ ト糸球体症 cg>0 (2)高度の PTC 基底膜多重化(電子顕微鏡) (3)他原因がない新規動脈内皮の線維化 "DSA と血管内皮反応として以下を 1 つ以上含む (1)PTC に直線上に C4d 沈着を認める[C4d2 or 3 蛍光抗体法(凍結切片),C4d>0 免疫染色(パ ラフィン固定標本)] (2)中等度の微小血管炎 g+ptc≧2 (3)生検組織内に血管内皮障害を示す遺伝子転写産 物の存在の証明 #血清中の DSA の存在の証明 をもって診断される13) 。
術前減感作療法
既存 DSA 陽性症例に対する腎 移 植 に お い て は, ABO不適合腎移植と同様に術前減感作療法が必要と なる。大きく分けて B 細胞に対する治療,抗体除去 療法があり,それらを組み合わせて減感作を行う。B 細胞に対する治療に関しては rituximab(Rit,抗 CD20 抗体)がある。血液型不適合移植には保険適応となっ たが,DSA 陽性症例に対してはいまだ保険適応外で はあるが,多くの施設で使用されており,その有効性 についての検証がなされている。当院では,腎移植 2 週間前に 100-200 mg/body で投与を行っている。投与 後にリンパ球サブセットにて CD19/20 を確認し,B 細胞の抑制が不十分であると判断した場合にはさらに 追加投与を行う。Ishida ら14) は術前の DSA の有無およ び Rit 投 与 の 有 無 で DSA+Rit−,DSA−Rit−,DSA +Rit+,DSA−Rit+の 4 群に分けて拒絶反応と生着 率を比較したところ,術後 6 カ月の急性拒絶反応の発 症率は 39%,19%,15%,0%,CAAMR は 50%,22%, 18%,0%,5 年生 着 率 で は 84%,95%,98%,91% で DSA+Rit−群が他の群と比較して有意に低かったと 報告している。このように DSA 陽性腎移植における Rit投与の優位性は既に示されている。投与量・投与 時期に関してはさらなる検討が必要であろう。 抗体除去療法に関しては,二重膜濾過血漿交換法 (double filtration plasmapheresis:DFPP),血漿交換療 法(plasma exchange:PE)が 一 般 的 で あ る。当 院 で は術前 MFI 値<2,000 を指標とし,これらを組み合わ せて抗体除去を行っている。費用対効果の面からは DFPPが推奨されるが,DFPP では凝固因子の消費も 多く,術前の凝固能については注意が必要である。ど の程度の MFI を指標とするかに関しては,議論の余 地が残る。Bachelet ら15) は移植腎生検を施行した 51 人 の患者を対象とし,血清中 DSA(sDSA)とグラフト 内 DSA(gDSA)に つ い て 検 討 し た と こ ろ,sDSA (+)gDSA(+)群は sDSA(+)gDSA(−)群と比 較して有意に sDSA の MFI 値が低値であったと報告 している(7,369±4,932 vs. 2,158±3,694,p<0.0001)。 したがって,MFI 2,000 程度を目標として DSA 除去 をすることは必要であると考えられる。また,Malheiro ら16) は 60 人の DSA 陽性腎移植患者を対象とし,DSA 強度(MFI<,≧15,000)と補体である C1q 結合の有 無について検討したところ,C1q+DSA の存在は AMR の危険因子であり[odds ratio(OR)=16.80,p=0.001],グラフト生着率は強陽性かつ C1q+DSA 群において C1q−かつ弱陽性,強陽性群と比較して有意に低かっ たと報告している。このことは AMR における補体活 性反応の重要性を示しており,DSA 強度とともにさ らなる検討が望まれる。DSA class I と II での差異に 関しては諸 説 あ る が,Lefaucheur ら11) は 術 前 DSA の 存在は class I,II にかかわらずグラフト廃絶の危険因 子であると報告している一方,Fidler ら17) は class II 陽 性[hazard ratio(HR)=2.9]もしくは class I,II と もに陽性(HR=3.7)がグラフト廃絶の危険因子であ り,class I 陽性だけでは DSA 陰性群と有意差はない と報告している。また従来 HLA−Cw,DP に関して はその重要性は不明な点もあったが近年,DR 等と同 様に anti HLA Cw,DP 抗体に関しても AMR,グラフ
ト廃絶の危険因子であることが報告されている18)
。単 に MFI 値だけでなく,どの DSA が陽性であるかに関 しても注意深く検討する必要がある。
また,当院では術前の減感作としては施行していな い が intravenous immune globulin(IVIG)の 減 感 作 プ
ロトコルも複数報告されている。Vo ら19)
は 76 人の抗
HLA抗体を有している待機患者に対して,IVIG:2 g/
kg(day1,day30)および Rit:1 g(day15)を投与し たところ,T 細胞 FCXM 反応の減弱を認め,急性拒 絶反応の発症率は 37% で 2 年生存率,生着率はそれ ぞれ 95%,84% であったと報告している。 日本での現状では一般的には Rit による B 細胞消去 と血液浄化療法による抗体除去が減感作の主流を占め ていると思われる。
AMR
に対する治療
B細胞,抗体に対する治療ということになるが, AAMR,CAAMR に対する治療として,ともに抗体除 去目的に DFPP,PE,またステロイドパルス,IVIG, Rit等の薬剤加療が AMR に対して使用される20) 。ま た,グラフト障害を直接的に引き起こす補体活性阻害 剤は AAMR の予防21) ,および治療に効果があるとさ れている22) 。他に,プロテオソーム阻害剤の bortezomib も形質細胞除去による一定 の 効 果 を 報 告 さ れ て い る23) 。重症症例での緊急脾摘術の有効性も報告されて いる24) 。 また CAAMR への関心はグラフト生着率の向上と 直結するため,近年非常に高まっているが治療法とし て確実なものはない。Billing ら25) は平均年齢 15 歳,平 均 eGFR 43.0 ml/min/1.73m2 程 度 の 小 児 腎 移 植 後 CAAMR患者を対象に Rit 375 mg/m2 ×2,IVIG 1 g/kg/ wk×4 wks による加療を実施したところ,sDSA およ びグラフト内の補体活性の低下とともに移植腎機能低 下率の改善を認めたと報告した。しかし Bachelet ら26) は 平 均 年 齢 40 歳,平 均 eGFR 30.6 ml/min/1.73m2 の CAAMR患 者 に Rit 375 mg/m2 ×2,IVIG 1 g/kg/wk×4 wks療法を実施したところ,sDSA MFI は低下傾向に あったが,2 年後のグラフト生着率は治療群で 47%, 非治療群で 40% と治療効果を認めなかったと報告し ている。これらは慢性期の変化を来した症例に対する 治療の難しさを物語っている。したがって,慢性期に 入る前の段階での予防,早期治療が重要であることは 言うまでもない。これらの制御が今後腎移植後の長期 生着率の向上に寄与すると考えられる。
DSA
陽性腎移植の成績
術前 DSA 陽性症例に対する腎移植では,術後の遷 延した sDSA 陽性症例で AMR の発症率が高く,多変 量解析(性別,年齢,マージナルドナー,生体/死体 腎移植,前感作歴,DSA 遷延)では DSA 遷延が HR 5.71とグラフト生着率の悪化を認め,またレシピエン ト年齢 50 歳以下,再移植,術前 DSA MFI 3,500 以上 等が sDSA 陽性遷延の危険因子として報告されてい る27) 。逆に術前減感作成功例で術後の sDSA 遷延がな い症例においては術前 DSA 陰性症例に比較し遜色な い結果と考えられる。 当院での生体腎移植患者 243 例を対象とした DSA 陽性症例での腎移植の成績を示す28) 。DSA 陽性患者 (n=11)に対し,術前減感作療法として平均 Rit 400.0 ±165.8 mg を術前 1∼2 週間目に投与し,PE 2.7±1.1 回実施した結果,病理学的に確認された AAMR 発症 率は抗体陰性コントロール群と比較し多く確認され た。減感作が成功した例においては図 1 に示すよう に,残存する DSA の影響を受けて一過性に微小血管 障害(g>0,ptc>0)を発症し,病理学的に AMR と 診断されることが多いが,その後 DSA 追加産生がな い場合はグラフトへの抗体吸着の結果,sDSA は消失 し病理所見は自然に改善する。その結果術後 1 カ月, 1年の Cr 値,1,5 年グラフト生着率に有意差を認め なかった。したがって,十分な術前減感作療法により DSA陽性腎移植も比較的安全に施行可能であるが, CAAMRの発症を含め,遠隔期の成績等不明点も多く 今後の検討課題である。結語
いずれの臓器移植においても一般的には現状での半 定量 sDSA MFI 値を参考に術前減感作,治療方針が決 定されることが多いが,遠い過去の感作症例における memory B細胞の存在による移植後 1 週間程度での急 激な AMR や,グラフトへの吸着によるみかけ上のMFIの低下等,一概に sDSA MFI のみで議論すること
図 1 減感作成功術前 DSA 陽性症例での病理学的変化の推移
が難しいことがある。また,sDSA MFI 高値例におい てもグラフト障害のない例も存在し,これらの未解決 の部分へのさらなる研究が期待される。
文 献
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表 1 DSA+/−患者での腎移植後の経過
DSA+(n=11) DSA−(n=232) p value
観察期間(月:平均±SD,範囲) 72.7±40.3,14∼131 68.5±41.3,2∼139 グラフト機能 術後 1 カ月 Cr(mg/dl,平均±SD) 1.21±0.6 1.29±0.9 NS 術後 12 カ月 Cr(mg/dl,平均±SD) 1.29±0.8 1.31±0.9 NS 拒絶 急性細胞性拒絶 n,% 1,9.1 30,12.9 NS 急性抗体関連拒絶 n,% 2,18.2 0,0 0.0019 慢性活動性抗体関連拒絶 n,% 1,9.1 2,0.9 NS 病理所見(1 年以内) C4d+ n,% 1,9.1 3,1.3 NS C4d+(抗体関連拒絶発症例), n,% 1,50 0,0 N/A グラフト生着率 1年 100 100 NS 5年 95.9 96.1 NS (文献 16 より改変して引用)
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