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図書館員の文献紹介と       資料の活用

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日本の歴史

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『江戸の食文化 : 和食の発展とその背景』 原田信男編 本書の請求記号 383.8‖Edon (小学館 2014)

稲垣宏行

 2013年12月、ユネスコの世界無形文化遺産に 登録され、世界でも注目を集める和食。料理史 に造詣が深い大学教授の著者は、江戸時代を庶 民も楽しんだグルメ社会で、和食文化が隆盛した 時代だと述べています。

 明治期以前の日本は四足動物、いわゆる獣を 食することを忌避し米食を尊ぶ傾向があり、第5 代徳川将軍・綱吉の「生類憐れみの令」によって その傾向は強まりました。また、時には和食文化 の隆盛が罪悪として幕府からの規制を受けたこと すらありました。

 江戸の食生活が発展した背景には5つの歴史 的条件がありました。①新田開発などでの耕地増 大により生産力が発展したこと②水運など流通網 の整備によって全国各地の名産・特産品が行き渡 るようになったこと③酒・調味料が企業生産され入 手が容易になったこと④米への嗜好に伴う肉食禁 忌と水産業の発達⑤料理本の出版が盛んになり、

その技術が一般にも普及したことです。これには 地方にも及ぶ識字率の高さも関係しています。

 外食産業も発展しました。江戸(現・東京)で は6000軒もの食べ物屋が建ち並んだと言います。

地方からの人の流入が盛んで、それに伴い独り身 の男性が増え、また彼らに好まれたからです。京 都や大坂(現・大阪)では屋台という形で発展し ました。振売りという町を歩いて食べ物を売る職 業もこの時代にありました。著者はこれを「現代 のコンビニエンス・ストアが向こうから歩いてくる 感じ」だと述べていますが、そう考えれば、その原 型がこの時代で出来上がっていたことになります。

 食に対する庶民の関心の高さを示すかのよう に、ベストセラーになった『豆腐百珍』など大衆 向けの料理本も多く出版されましたが、料理と結 びつけた旅行本もこれに劣らず出版されました。

現代の『るるぶ』などの旅行本の礎とも言えます。

使われた食材も豊富で、魚介類に関する書物『武 江産物志』にはクロダイ、ダツ、テナガエビ、シ

ジミやアカガイなど、現代で知られるものも多数 記載されています。また、前述のように、この時 代は獣肉食が禁忌とされましたが、九州地方や 山里など一部では食されており、猪は「山くじら」

と呼ばれ売られていました。当時、鯨は常食され ていたからです。料理も汁物、寿司、琉球料理な ど多種多様ですが、書物で紹介される料理の品 目も数多く、米飯料理を扱う『名飯部類』からは 149品目もの料理が登場します。

 江戸時代の食文化を知る上で忘れてはならな いのが調味料です。塩、味噌、醤油、酢、みり んなど、我々の暮らしでも身近なものです。そし て砂糖の普及が食のレパートリーの拡大に貢献し ました。これらの製造に携わったキッコーマンや 月桂冠などの有名な老舗も見落とせない存在で す。

 本書では、育児、上水道の設備、政情などに ついても触れていますが、注目すべきが育児で、

子どもは3歳まで好きな時に授乳を受けられ、愛 情豊かに育てられたといいます。しかし「多少の 空腹感と寒さを感じる程度が、古くから伝わる丈 夫な子どもを育てるコツ」だとする考え方もあり、

甘やかしていただけではなかったようです。幼児 虐待の多い現代において見習うべき事例だと感じ ます。

 彩り豊かに発展した江戸期の和食文化。「江戸 の一日はご飯を炊くことから始まる」と言われる ほどの庶民の意識の高さが大きく関係していたと 考えられますが、彼らの調理は、竈

かまど

を中心とした 簡素な台所とすり鉢、おろし金、包丁などの最低 限の道具によってなされていたと言われています。

現代の和食文化の基礎を形作ったとも言われる 江戸時代。その奥深さもさることながら、少ない 設備のみでこれを支えてきた当時の人々の力も侮 れません。

いながき ひろゆき(司書・情報サービス課)

参照

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