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Problme bei Entstehung und Bestand von dem beitragsrechtlichen Besch?ftigungsverh?ltnis im Sozialgesetzbuch

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Academic year: 2022

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Problme bei Entstehung und Bestand von dem beitragsrechtlichen Besch?ftigungsverh?ltnis im Sozialgesetzbuch

著者名(英) Mari Ueda

journal or

publication title

Toyohogaku

volume 56

number 1

page range 109‑158

year 2012‑07

URL http://id.nii.ac.jp/1060/00000146/

(2)

目次はじめに  問題の所在 就業者に対する適用除外の制約 就業関係の存続―不就労を例に 就業関係における事業主の義務懈怠の効果Ⅴ「就業者」以外への適用可能性おわりに

はじめに

  「自

らの労働に頼って生活する」雇用者にとって生活が困窮しないように、労働関係の外部に必要となる保障制度はきわめて重要な領域である。その中心になる「社会保険」には、人的適用対象の把握の仕方により、地域住民 《論   説》

被用者保険法における保険関係の成立及び存続に関する法的課題

― ドイツ社会法典を手がかりに

上   田    真   理

(3)

として捉える住民(地域)保険と、「被用者」として捉える被用者保険がある。本稿の課題は、「自らの労働に頼って生活する者」を適用対象とする被用者保険について、保険料をめぐる保険者と事業主の法律関係(以下、保険関

係という)を、ドイツ法を素材として解明することである。ドイツの被用者保険は、被用者を基軸に―正規雇用に限定しないだけではなく―、その他の業務・作業に従事する市民にも拡張している。わが国の被用者保険では、逆に、一部の就業者を除外する例外的取り扱いが拡張している。被用者に対する適用除外規定の射程を確認したい。日独の社会保険の特徴をその人的適用対象に注目して捉え、今後の課題を考察する。

Ⅰ  問題の所在

1「任意保険」化の背景

  (

1)事業主に判断権があるのか

  ドイツの社会保険法は、「就業者」を軸に、より広い範囲に拡大していくのに対し、わが国の社会保険は、すべての住民を対象にした特徴を有することが強調され(皆保険・皆年金)、被用者保険の適用対象者を漏れなく適用し、そして法律の予定した権利を実際にも行き渡らせることは十分になされていない。これまで、法律の予定した給付を行き渡らせることを目的として、児童扶養手当に関してではあるが、行政庁は、多くの受給資格者の無知を利用して「給付や手数を節約する権利もないし、その義務もないのであり、むしろ憲法二五条が宣明する福祉国家の理念や、これに立脚した立法者の意思は、保護対象者に認められた給付が、飾り物に終わらず実際にもすべてに給付されることを期待しており、受給資格者が洩れなく給付を受けることこそが、基本的に公益にかなうと考えられる」と判示されてい

る。被用者保険においても受給資格者に法律上予定された受給権は、被保険者の保険者への 1

(4)

請求により実現するが、被用者保険の特徴は、保険関係が事業主と保険者の間に成立し、事業主は労働者の保険料負担分を賃金から控除する権限を有しており、保険者としての行政、事業主(以下では使用者ということもある)、被保険者という三面関係が成立することである。そのような被用者保険において立法者が被保険者に実現を予定している保険給付、たとえば基本手当、傷病手当金、厚生年金等を漏れなく労働者に行き渡らせるという社会的権利の実現の要になっているのが、事業主の保険者に対する任務である。わが国の裁判所でも、被用者年金における届出義務の目的について、「労働者に対し、その老齢、障害及び死亡について保険給付を受ける権利を漏れなく付与することもその目的であると解される」としてい

る。 2

  本稿では、ドイツ法を検討素材として、被用者保険の適用対象者を拡張する構造を検討する。わが国では適用対象者が、労働市場という外部の状況によるだけではなく、被用者保険の制度的欠陥により縮小している。つまり、行政が受給権の実現に責任を負っているが、その帰趨が受給権を具体化する過程における事業主の義務履行によっている。事業主の恣意的判断と行政がそれを審査する権限の不行使が、受給権が実現しないことに帰着する。被保険者の届け出義務を負うのは確かに事業主であるが、ある者が被保険者か否かについての判断権は事業主に委ねられているわけではない。

  (

2)保険関係の成立・終了における事業主の義務

  被用者保険各法は保険関係の成立及び終了について規定し、客観的に成立するものであるが、そこには雇用関係の交渉が基本におかれ、そして事業主の届け出の行為が介在し、争いが生じる。保険関係の成立(ⅰ)と終了(ⅱ)の二つの局面に分けて、簡単に内容に言及しておこう。

  (ⅰ)保険関係の成立(被保険者資格の取得)

(5)

  まず、被用者保険の成立である。就業者に被用者保険各法を原則として適用するには、労使間で締結される契約の種類、雇用期間、収入等の労働条件を基準に、事業主が適切にかつ適時に保険者に届出ることによりはじめて法律が予定する給付が被保険者に行き渡る条件が整うことになる。

  (ⅱ)保険関係の終了(被保険者資格の喪失)と使用者による受領拒否

  そして、被用者保険の存続が問題になる局面である。被保険者の資格は、「使用されなくなったとき」(例えば厚

年一四条)に喪失すると定められている。資格喪失についても届け出義務が事業主に課され(厚年二七条)、行政の確認により効力が生じる。そもそも使用者による労務の受領拒否(解雇を含む)の場合に、解雇の効力を争っているとしても「使用されなくなったとき」に該当するのだろうか。また、事業主が資格喪失を届け出て、行政により資格の喪失が確認された後に解雇が無効とされたとしても、事業主が届け出義務を懈怠すれば、被保険者に大きな不利益が生じる。保険給付を受ける権利の成立が事業主の一方的・恣意的な決定に委ねられる可能性が小さくない。被用者保険では年金・基本手当のように受給資格として保険加入期間が定められているので、終了時点は受給資格期間を充足するか否かという給付の要件にも関わる重要な事柄である。そもそも、労務の受領が拒否される場合には、保険関係は中断するのだろうか。社会保障の視点から、使用者による受領拒否(解雇を含む)の一方的な行為に対して被用者保険の存続が重要な課題になる。

  以上の関心から、まず、わが国の被用者保険の任意保険化の運用改善にむけ、課題を確認し、次の順序でドイツ法を対象に検討をすすめる。ドイツ法の被用者保険の保険関係を成立させる就業関係(Beschäftigungsverhältnis)の成立を検討する。雇用形態が多様化するなかで、短期雇用の保険適用をどのように取扱うのかは争いになっている。判決を手がかりに「常用の」短期雇用への適用除外条項(四編八条)の射程を考察する。わが国の被用者保険

(6)

の被保険者の範囲は、明確な適用除外基準を法律で定めないまま、「常用」を狭く捉えすぎる運用をしているのではないか、という疑問がある。さらに、就業関係の存続の意義を、使用者が労務の受領を拒絶する場合を例に考察

に合致しないことを明確にした し、就業関係をそのつど中断すると労働者に重大な不利をもたらすことになり、被用者を保護する社会保険の目的 3

Datenerfassungs- und Übermitt-せるのに重要な行為である(四編二八a条ないし二八c条、情報処理及び伝達規則( い。続いて、事業主の届け出は「労働に依拠して生活する者」に受給権を行き渡ら 4

lungsverordnung[DEÜV])。社会保険において事業主の懈怠により受給権者に不利益が生じる場合に、最終的責任を負うのは行政であることを確認した

有用な行為にも適用を拡大する構造を検討する。 い。最後に、被用者保険を、就業者だけではなく、他の職業活動又は社会的 5

 2わが国における任意保険化:保険者の任務の懈怠と事業主の恣意的判断

  (

1)適用対象者の制約

  雇用保険法を含め被用者保険各法は正規雇用を中心として保険関係を立させ、人的適用対象者について限定的な運用になっている(図1)。典型例をあげると、被用者年金の適用除外が、法律で規定していない基準である、フルタイムの四分の三以上の労働時間(厚生労働省の部内通達、いわゆる一九八〇年の内翰)を充たさない就業者に、慣行上認められていることである。また、行政不服審査の裁決の中には、保険加入義務を保険者が認める判断を事業主が争っている事案ではパートタイマーの適用除外が慣行となしていると評価し、事業主の主張を是認しているものもあ

外」の基準は、法律で明確に定められるべきである。 る。しかし、就業者に被用者保険法は適用されるのが原則であり、原則とは異なる扱いをする「適用除 6)

(7)

  雇用保険法は二〇一〇年四月一日に改正され、適用除外の有期雇用者を、「同一事業主に三一日以上雇用されることが見込まれない労働者」としている(同法六条三号)。適用対象は実際に拡大しているのだろうか。二〇一一年一〇月一日に施行された求職者支援法は、雇用保険が使えない求職者を対象とする制度と説明され、雇用保険法に劣位する関係にある。そうであれば、優位する雇用保険法がどの範囲で機能しているのか検証し、優位性を回復することは緊急の課題である。

  (

2)被用者保険機能の拡充

  被用者保険が、就業者を基軸にしつつ、多くの市民にアクセスを可能な限り拡大し、従前保障機能を果たすには、二つのレベルでの拡充が課題になる。一つは、適用対象者の拡大であり(いわば量的レベ

ル)、主たる対象である就業者には強制加入が原則である以上は、適用除外条項の適用を制約することがあげられる。また、強制加入対象に対する加入手続が懈怠していることが争いになっているのを想起すれ

険者に対し、適切な報酬を基準として果たすことである(いわば質 履行することが要になる。二つに、従前保障機能を、強制加入の被保 ば、事業主が被保険者資格の得喪、収入等の各種の義務を保険者に 8

的・水準レベル)。ここには、保険者に事業主が真実の報酬額を申告す

図 1  日本の被用者保険の強制加入の被保険者:被保険者の不認定(b,c)の拡大( 7 )

(8)

べき義務だけではな

みることができよう(後述)。 金差別に対応する雇用保険や公的年金の差額(差額公的年金等)を請求するのは、被用者保険の質的拡充の争いと 準に一定の水準の質が保障されることが予定されている。使用者に損害賠償を求める事案で差額賃金と並んで、賃 険者の確認が重要になる。多くの適用対象者に「公正な賃金」を基準に保障機能を果たすには、そうした賃金を基 く、労働事件において差別賃金是正の請求が認容される場合を含めて、事業主の変更届又は保 9

 3民事訴訟での救済可能性と限界

  (

1)使用者の恣意的判断に対する損害賠償請求

  被用者保険機能の量的及び質的拡充に関わる争いは、わが国でも増えている。まず、社会保険法の適用対象の「就労者」といえるのかは、「事実上の労働者」とされる個人事業主の形式での非正規雇用者に多くみられる。従来、非正規雇用者のみならず、形式的には労働者でないが実態は労働者に類似している個人事業者にも、被用者保険各法は機能を縮小してきた(図

1参照)。   「事

実上の労働者」が被保険者資格を取得し雇用保険に加入できたはずであるのか、そして被保険者資格が肯定される場合の調整が争点になっている。実務では、たとえば雇用保険法四条一項の「雇用される労働者」をめぐる統一的基準は定立されていな

事業者の活用にみられることに留意したい。 い。適用対象を拡大している雇用保険法の潜脱が、非正規雇用だけではなく、小規模 10

  とはいえ、労働者性に関しては労働基準法・労災法上の争点になる場合でも、雇用保険・被用者年金・医療保険の適用が争点になっているわけではな

い。それは、社会保険では、要保障事故の発生前の保険料をめぐる関係が事 11

(9)

前に事業主に届け出られ、保険者が確認していることが不可欠になるからである。「強制」加入を原則としている被用者保険制度であっても、事業主の恣意的かつ一方的な判断によ

険とくに年金を受けられないことを事業主に対して「損害」賠償を請求するだけでは救済方法として問題が残る。 り、加入していない状態になっている。社会保 12

  (

2)「差額賃金」と「差額公的年金」等の請求

  (ⅰ)差別賃金による雇用保険の受給権侵害の例   「平

等な報酬」を基礎にした保障水準にかかわる争いは、使用者に対する損害賠償請求が多い。例えば、被用者保険に加入している場合に、「差別賃金」に対応して雇用保険の基本手当、傷病手当金、公的年金の額が算定されるため、差額賃金請求と並んで社会保険の差額請求が争点にな

日(最高裁により確定)牛根漁業協同組合事 るので、修正された賃金を基に算定した基本手当等の差額請求をすることになる。福岡高裁平成一七年一一月三〇 ある場合に、差額賃金と並んで、雇用保険の支給額は離職日の直前六か月に支払われた賃金総額を基礎に算定され る。たとえば、雇用関係の存する期間に賃金格差が 13

来支給されるべき雇用保険金を得られず、既に支給された金額との差額と同額の損害を被ったものと認められる」。 らかであるから、結局、一審原告は、一審被告による本件専任職規程の新設によって雇用保険受給権を侵害され、本 り、一審原告に対して退職前六か月間に現実に支給された賃金の額が本来受けるべき支給額よりも減少したことは明 間に現実に支払われた賃金の総額を基に計算されることが認められるところ」「無効な本件専任職規程の新設によ 請求も認容している。すなわち、「一審原告が受給した雇用保険金の支給額は、離職(退職)した日の直前六か月 件では、差額賃金請求と、本来支給されるべき雇用保険との差額分の 14

  他方で、差額賃金請求を認容しつつ、被用者保険、とくに年金額の確定の困難さ等を理由に請求を認容しない事

案もある。そこでは、被保険者が、本来差別がなければ負担したはずの保険料の支払いを免れていることにも言及 15

(10)

し、「原告は、賃金差別がなければ受け得たと認められる賃金相当金の支給を受けていれば、当然に負担したはずの保険料の支払を免れているのであり、これについても考慮される必要があるところ、同保険料率が幾度となく改正されていることも併せ考えると、結局、仮に原告の基本給額が異なっていた場合について、公的年金として原告にどれだけの得べかりし利益があったかは、算定不能であるというほかない」。さらに、「損害」額の算定又は「損益相殺」において、労働者が免れているとされる保険料相当額の支払いが争点になる。事業主が賃金から控除する権限(例えば徴収法三一条一項一文)は自らが適法に納付義務を履行している場合に行使できるものであると考えれば、事業主は、その義務懈怠の場合には、控除の権限を行使できないのではないだろうか。

  (ⅱ)解雇が無効とされた場合

  他方で、資格喪失に関わる、使用者に対する「損害」賠償請求には、解雇が無効であれば得られる賃金相当分を請求する事案で、社会保険に関する給付又は保険料負担が損害額の算定が争点になる。たとえば、健康保険の強制加入資格を喪失し、任意継続保険に加入していた場合に、任意継続被保険者として負担していた保険料の約半分を、本来は使用者負担に相当すると考えて、償還請求している事件があ

されている に、解雇の無効が確認されれば、社会保険上の就業関係の喪失を遡及して取り消すことは行政実務の通ちょうで示 る。また、解雇の効力が争われている場合 16

が、裁判所も強制保険として遡及するのが当然であるという見解を示しているわけではな 17

選択できるように説明する義務が使用者に課されると判示し、労働者の損害賠償請求を一部認容するものもある。 く、労働者が 18

  わが国の実務では、社会保険に加入しないことに合意してい

い。これは強制加入による社会保険に合致しない当事者の行為を裁判所が事後的に正当化する結果になり、それが されている、又は資格喪失時を被保険者が選択できるかの説示をする等、当事者の主観を考慮にいれる傾向が強 た、社会保険に加入する予定でない契約形式が選択 19

(11)

また行政の事業主に対する権限不行使の慣行に帰着してい

負うのは福祉国家であり、事業主の瑕疵の結果を市民に負わせないルールをドイツ法から示唆をえたい。 使が労働者の保障の欠如に至っている。そこで、労働者である多くの市民の受給権の実現に対して保障する責任を る。結局のところ、事業主の義務懈怠と行政の権限不行 20

Ⅱ  就業者に対する適用除外の制約

 1就業者に対する社会保険法適用原則

  ドイツ被用者保険は、非正規雇用者にも適用されるのが原則であり、間接雇用の派遣労働者も被用者保険の適用対象者である「就業者」としては直接雇用の就業者と同じである。日独の「社会保険」を対比すれば、まず、就業者に適用される範囲の広狭に顕著に示される(図

1、図

2の(a)(b)参照。なお図

2の(c)(d)についてはⅤで

後述)。就業者に対して社会保険を適用することが原則であるならば、それを適用しない就業者を認めるにしても、法律で基準を明確にするのはもとより、原則から逸脱し、適用の除外という法的効果が生じる場合には、その規定の合憲性が審査されなければならない。また、就業者に対する適用を原則とするのであれば、その例外を定めている規定の拡大解釈は認められな

い(後述)。 21

  「就業者」としての被保険者2

  (

1)「短期」就業者の適用除外の基準

  社会法典四編(社会保険総則)は保険関係の義務を生じさせるのは就業関係の成立によることを規定し(七条一

項)、適用除外となる就業は僅少就業(ミニジョブ)とよばれ、社会法典四編は、被用者保険関係から適用除外とな

(12)

る二つの僅少就業を、四〇〇ユーロ未満の低賃金雇用(八条一項一号)と短期就労(八条一項二号)としている。僅少就業か否かが争いになった例をみていこう。

  まず、常用の(regelmäßig)就業者の場合には、所定の収入(四〇〇

ユーロ)を基準に適用除外かどうかが判断され、常用ではない、臨時の

(gelegentlich)就業が二か月以内であれば八条一項二号が適用され

を合意した労働(以下、呼び出し労働)(パートタイム労働・有期雇用契約 が問題になる。最近では、業務の必要に応じて労務給付をおこなうこと を理由に適用除外されないためには、当該就業が「常用」といえるのか そこで、所定の収入を超える場合に、低賃金雇用(一号)ではないこと る。 22

法(Teilzeit- und Befristungsgesetz[TzBfG])一二条一項一文)、しかもそれを反復している場合に、一号の「常用(Regelmäßigkeit)」のメルクマールを満たすのかが争いとなっている。パートタイム労働・有期雇用契約法によると、呼び出し労働についての合意は、一週及び一日の労働時間の一定の長さを定めなければならない(一二条一項二文)。ただし、週労働時間の上限を合意することは定められていないので、被用者保険法適用除外の限度(月額四〇〇ユーロ)を超えることがある。連邦社会裁判所一九九五年五月二三日事

件では、使用者(原告)の一人がその都 23

図 2  ドイツ被用者保険の被保険者範囲の拡張:就業者への適用除外の制約(a)と被保険者 の拡大(b 及び c,d)

(13)

度の合意に基づく契約を労働者(補助参加人)と締結していたことから四編八条一項一号の要件を充足しないといえるのかが争点になっている。裁判所は、その都度の合意により労務給付を提供していることは、四編八条の適用除外の認否にとって重要な問題ではないとしている。呼び出し労働は、呼び出しにより就業する準備をしているものであり、労務給付の義務は常に生じるわけではないが、そうした場合にも「常として」就業の反復が意図されているのであれば、当該就業は「常用である」という。

  同様に、人出不足に応じて介護に従事している者に就業関係が成立するのかが争点になっている事案があ

徴収を認め、事業主の上告を棄却している。 ついており、契約内容形成や実際の行動などの全体像をみれば、労働者のそれに匹敵しているとし、保険料の事後 としての危険を引き受けていないとしている。そして、当該介護士は他の被用者の病欠等で欠員補充として仕事に て、本件では、介護士の報酬が時間給によること、自己の資本をもつものではないことから、当該介護士は事業者 とから、契約当事者の意思だけを基に法的な性格を決定することはできない、と(強調筆者)判示している。そし 444444444444444444444444444444 に、雇用契約は締結されていないが、被用者保険は公法上の制度としての性格をもち、特別な保護を目的とするこ 必要に応じた呼び出し労働にすぎないことから、使用関係は成立していないと主張した。連邦社会裁判所は、確か 求した。これに対して、事業主の施設長は、この介護士は他の施設でも働いており、経済的従属性がないことや、 険者は当該従事者を夜勤の従属労働者であると判断し、保険関係が成立しているので事業主に保険料の支払いを請 る。保 24

  (

2)短期就業に対する適用除外の例外:職業の「生計維持」機能の重視

  次に、二か月以内の短期の雇用期間が適用除外の基準になるのは、当該就業が常用ではない場合である(四編八

条一項二号)。一年間のうち最長二か月に限定された短期雇用(八条一項二号)は、適用が除外されるが、そこには

(14)

二つの例外があり、例外に該当すれば短期雇用も強制加入対象になる。例外の一つ目は、期間の定めが「就業の特性」によらない場合である(四編八条一項二号本文)。二つ目は、二か月以内の就業が「職業として(berufsmäßig)」遂行され、かつその賃金が月額四〇〇ユーロを超える場合である(八条一項二号但書)。ここでは連邦社会裁判所が蓄積してきた、二つ目の「職業としての遂行性」の基準をとりあげたい。

  有期雇用が「職業として遂行」され、かつその賃金が月額四〇〇ユーロを超える場合には、適用除外とならない

(四編八条一項二号但書)。連邦社会裁判

を超えている場合には、二号による適用除外を否定している。連邦社会裁判所は、職業として繰り返してきた 所は次のように「職業として」当該就業が遂行され、かつ一号の収入基準 25

(regelmäßig)業務については四編八条により保険加入資格がある、と判示している。すなわち、有期雇用でも当 4

該就業が経済的にも生計をたてるのに重要な意味があれば 44444444444444444444444444、その就業は 44444「職業として 44444」遂行されたものであり 4444444444(四

編八条一項二号但書)(強調は筆者)、したがって、月収が四〇〇ユーロを超える場合には被用者保険法は適用除外とならない。ここでの重要な概念は、当該就業が「職業として」なされているというものである。これは、臨時的

(gelegentlich)にしかなされていない就業と区別するものである。

  裁判所によれば、「当事者がそれを通して自己の生計を主として、又は自己の経済的な位置(Stellung)のかなりの部分が就業に依っている範囲において賄っている場合」には、それは「職業としての遂行」であると判断され

以上は、職業生活の成立と同時に、一時的に従前の生活ができない事態に備える必要が生じる、と考えるわけである。 る。多くの市民が「職業として」遂行した就業・業務に自己の生計が依っている、そうした生活様式をもっている 26

  連邦社会裁判所一九九三年五月一一日事

的労働者を雇用していたところ、当該労働者について医療保険及び年金保険加入義務があると年金保険者の事後的 件の原告は家具会社の事業主であり、業務の必要に応じて日雇いの補助 27

(15)

審査により認定された。原告はそれらの社会保険加入義務の不存在を主張しているが、連邦社会裁判所は、事業主の上告を認め、原審に差し戻した。本件判決は、四編八条一項二号の加入免除に当っては、職業遂行性について、当該補助的労働者が「生計のために就業せざるをえない」状況にあるのかの判断が必要である、と。そして、職業遂行性があるか否かは、当該労働者がかつて失業していた時に失業給付や扶助に依存せざるをえなかった場合に肯定される、という。ただし、現に当該労働者が短期の補助的業務を遂行する準備をしていたというだけで「職業として」遂行された、との原審の判断に対しては、補助的業務について事実認定が必要であるとする。職業遂行性は、当該業種の職業像、たとえば運送業の補助労働のように「常用ではない(unregelmäßig)」業務が当該業種では典型である場合には肯定されてい

いる。 たことを示すのであり、そうした個別事情を基に従属労働者か否かを総合的に判断することが必要である、として 給期間があるかどうかも重要な判断基準になり、失業手当を受給していた事実は、安定的な就業関係が成立してい うな就業についているのかも考慮にいれなければならないとしている。それゆえ、過去に雇用保険の失業手当の受 る。さらに本件一九九三年判決は、当該労働者が補助業務に就く前後にどのよ 28

  連邦社会裁判所が、期間の長短ではなく、むしろ当該就業が生計にもつ意義を示しながら形成してきた「職業遂行性」の基準を確認しておこう。連邦社会裁判所一九九三年判決が強調したように、一つに、短期の就業に前後して保険加入義務のある就労に従事している場合には、当該短期の就業は職業としての遂行である。そうした場合の就業は、短期であっても、そもそも稼得者(Erwerbstätigen)の人的範囲に含まれないような、臨時に就業しただけの人とは違う意味を就業がもつからである。それは、二つの就業関係の間に隙間があいた場合に、その間をつないで就労しているのと違いはないのであり、職業として適切に従事した労働者の固有性は、就業が短期であること

(16)

で失われるわけではな

いえば、従属労働者の人的範囲に属していることになるのであるとい た、個別事例のあらゆる諸事情を考慮に入れれば、通常、従来の保険料義務のある就業に、したがって、一般的に い。二つに、短期の就業につく前に労働者が雇用保険の基本手当を受給していたこともま 29

の休業期間だけ就労する学生や、年金生活者、専業主婦である」。 否定される。本判決は端的に「連邦社会裁判所の判断基準によれば、職業としての遂行性が否定されるのは、学期 も、就労していない期間(次の就労までの期間)が長い、又は他の主たる業務についているならば、職業遂行性は 遂行性が否定されるのは、当該就業が臨時的な場合である。そして、反復して短期の就労の準備をしている場合で う。反対に、一九九三年判決によると、職業 30

  ( 3)小括

  以上から、かつて失業手当の請求権を取得した労働者が、ある時期に短期の就業をしていたとしても、労働が生計維持にどのような意味をもっていたのかを考慮にいれて、被用者保険法の適用対象を判断しているのが明らかになった。社会保険では、業務そのものとしての就業(Beschäftigung)ではなく、人に関連している「就業者の地位

(Beschäftigtenstatus)」が重要であり、社会保険の対象にする「保護の必要性」というのは、その原因を、従属的な労働により労務の提供をおこなうことに見出すのではなく、むしろ就業者が自らの生計を従属的な労働という形 44444444444444444444

でそれぞれの労働力を用いて確保している点にこそあるのである 44444444444444444444444444444

証左であり、「就業」関係の判断に考慮されうる。 る。また労働者が失業手当を受給しているならば、むしろ失業前には受給資格を取得するような就業についていた 雇用に一時的に就くことでその生活様式を変更しているわけではなく、常用の短期雇用者には適用除外を制約す (Ⅲで後述)。労働により生計を営む者は、短期 31

(17)

 3雇用保険法における適用除外:「就業者」か自営業者か

  失業を要保障事故とする雇用保険法は、他の被用者保険法に定めがない適用除外の対象者を規定している。雇用保険法、一週間未満の就業を「一時的な(unständig)就業」をする者を適用除外とする(二七条三項一号)。雇用保険法では医療保険法や年金法と同じ文言を構成要件として用いている場合でも、適用の除外という法的効果が生じるものであるので、それぞれの規定の合憲性が審査されなければならな

用を原則とするのに対して、その例外を定めている規定を拡大解釈することは排除され い。また、就業者に対する雇用保険法の適 32

る、という重要な指摘がある。 33

  ここでの「一時的な」就業とは、業務の性質による又は労働契約によりあらかじめ約定されているかのいずれかにより、就業期間が一週間未満のものをいう。短期・断続的労働を典型とする職種、つまり、その都度転々と違う場所で遂行する就業が想定されている。雇用保険法は、他の被用者医療・年金・介護保険と異なり、「一時的就業」を、加入義務から免除している(二七条三項一号)。「一時的」就業の例として、就労期間が一週間ごとに設定され、異なる使用者のもとで就労する場合であり、音楽家、アルバイトのウェーター・ウェートレス、運送業の補助労働者、放送局のフリー契約者などが挙げられることからも明らかなよう

になることがある。 に、「事実上の労働者」か否かが問題 34

  業務の性質により一週間未満であっても、一定の間隔をおいて継続しているのが常態であり、細切れ雇用が反復している場合には、被用者保険法からの適用除外は自明のことではない。連邦社会裁判所によると、同一の使用者のもとで短期の就労が繰り返されている場合に、就業が、あらかじめ合意されているわけではなく、個々の事情から生じた予測不可能な必要に応じた場合にだけ、「一時的」とされるにすぎな

い。 35

  雇用保険法が適用除外となる「一時的」就業に該当するのかが問題になった事例のなかには、一か月のうち月末

(18)

の数日だけ業務につく労働者(月末労働者)がある。それらの者は、一方で、毎日通常の業務を行うのではないから四編八条一項二号の適用除外対象に該当しない。他方で、一週間未満の期間で使用者を変更するわけではないので、「一時的」ともいえないからである。連邦社会裁判所一九八二年四月二八日事

れ、そして数年を超えて遂行されているものであるからであ ständige Wiederholung的な」性格をもつものではない。それらの就業は、恒常的に反復していること()に向けら に該当し、保険加入が免除される。本件の労働者は七五日を越えないが、しかしそれらの就労は規定のいう「臨時 gelegentlich二項三文によると、一年のうち三か月又は七五日をこえない補助的労働者は、臨時的な()職務の遂行 裁判所は、一審原告の主張を認容しないで、一審被告の処分を違法でないと帰結している。ライヒ保険法一六八条 業務に雇用した者に対して、被告の保険者は保険加入義務があると決定したことから紛争になっている。連邦社会 を被用者年金・医療保険上どのように判断するのかが争点になった。本件では、原告(使用者)が最初から補助的 件では、月末だけの補助的業務 36

る。 37

  契約締結時に一週間未満の雇用期間が約定された場合に、期間の定め自体において適用が除外されるのではなく、そうした一時的な就業を認定する要点は、同一の使用者の下で繰り返されていないことであ

定の報酬額を超えていれば、雇用保険法も適用される。 間として合意が成立している場合でも、それが数か月にわたる就業が計画されているならば、一時的ではなく、一 regelmäßige Wiederholungる()ものではないことが必要になる。反対に、その都度の就業が一週間未満の超短期 り、反復を常とす 38

  個人事業者なのか従属労働者なのかの判定は労務給付の全体像を考慮に入れること、形式的な合意と実態に齟齬がある場合には、現実的関係の実態に基づき判断されることはすでに判

基準になるのは、自動車など自己所有の資本を用いているのか、労務給付の範囲を決定する自由をもっているの 決で確認されている。就業関係を肯定する 39

(19)

か、そして報酬の支払方法が時給ベース又は固定給付であるのか、などであ

る。 40

  例えば、運送業では、臨床検査品を医療機関に配達する業務に従事する者が自由業者なのか、ある有限会社と就業関係にあるのかが争われた事

従属労働か、あるいは独立的事業かの判断にとって、当該業務の諸事情こそが重要であるとしている。 と就業関係があると判断している。一人の委任者に対してフルシフトでの業務が常態である場合には、ある業務が 当該有限会社が決め、しかも運送には当該会社の従業員が随伴していたという業務の事情を踏まえると、当該会社 案がある。裁判所は、運送業者が自己のトラックを所有していたが、運送ルートを 41

  連邦社会裁判所一九九八年六月四日判

められた保険料支払い義務の不存在を主張した。裁判所は、本件では精肉業者は肉の解体などの注文を受けて原告 の加入義務及び保険料支払い義務を負うことを医療保険者が確認した。それに対して、「発注者」は、遡及して求 件では、精肉業者が「発注者」と従属関係にあり、発注者は使用者であること、したがって年金・医療・雇用保険 業を常としていたのか、つまり「一時的」就業か否かについての事実認定が必要であるとし、差し戻している。本 決(以下、一九九八年判決)は労働者性を認定した上で、一週間未満の就 42

(発注者)の指揮命令にしたがっていたこと、キロ単価を基準に報酬をうけとっていたことから事業者性がないことを認定している。もっとも、従属労働者でも、一時的就業には雇用保険の保険加入義務も保険料支払い義務もない。そこで、本件判決は、すでに定式化された判断枠組みを用いて次のように判示している。いわゆる連鎖契約、又は一定の間隔の就業期間をあけて反復継続した関係であれば、統一的・継続的就業関係として保険加入義務が肯定されるが、同一事業者でも事前の合意がなく単にその都度就業していた場合には、それが否定されることから、事実認定が必要である。一週間以内の「一時的」就業か否かは(雇用保険法二七条三項一号)、契約当事者の意思によるのではなく、業務の遂行の方法から客観的理由により、業務の性格を基に決められなければならないとし、本

(20)

件の事実認定が欠けているとする。

  連邦社会裁判所一九九八年判決を継承し、介護従事者の被保険者資格も判断されている。労働契約が締結されていない事案であるが、要介護者の家事援助者(原告)に対する医療・介護・年金・雇用保険すべての加入義務の存否が問題になってい

から一部差し戻している。それは、介護労働の期間や賃金も確認されていないので短期就業を理由とする適用除外 している場合には統一的な就業関係にあると判示したこと等を確認し、加入義務を肯定したのに対して、次の理由 る。本件は、原審が、連邦社会裁判所一九九八年判決において断続的関係が一定の間隔で反復 43

(四編八条)に該当しないのかが認定できないという理由による。

Ⅲ  就業関係の存続―不就労を例に

 1不就労でも就業関係は存続するのか

  (

1)被用者保険の継続性の意義

  「労

働に頼って生活する者」に社会保険の目的を達成するには、被用者保険を可能な限り多くの労働者に適用したうえで、その関係を存続させることが不可欠になる。わが国のある事案では、解雇の効力を争っている労働者と使用者の間で和解が成立したが、和解後に労務を提供していない場合に、労務給付の不履行の期間を含め、法的に雇用関係が終了するまで、被用者保険の使用関係が存続するのかが争点になった(東京地方裁判所平成一三年七月

一三日前掲判決)。そこでは、一時的に労務が提供されない期間には賃金請求権が成立しておらず、それは「使用関係が実質存続したと同様の状態」ではないがゆえに、被用者保険関係は不存在である、と帰結されてい

では同様の事 る。ドイツ 44

案で、医療・年金保険法上の就業関係が、雇用関係が終了するまで存続するのかが争点になってい 45

(21)

る。連邦社会裁判所は就業関係の存続を認める判断を示している。わが国では、労務が提供され、賃金請求権が成立しているような状態、つまり「使用関係が実質存続したと同様の状態」でなければ、保険関係を成立させる就業関係は存続しないとの理解があるが、ドイツ法を参考に、労務提供のない場合についても「就業関係の存続」の意義を確認したい。

  (

2)就業関係の成立と存続:強制加入の「保護機能」

  被用者保険は、労使による私的な関係(による交渉結果としての労働条件)を基礎にするが、強制保険であることから、契約当事者の任意性・恣意を排除するものである。しかし、わが国の被用者保険は運用では事業主の恣意的な行為が排除されず、労働者の生活保障が機能していない。重複するが、次の二点を確認したい。一つは、被用者保険の成立に関してである。法律により当事者の意思から独立して生じる義務を使用者が履行しない又は適切・適時に履行しない場合にも(不完全履行)、年金の「損害」賠償は認容されにくい。二つに、雇用関係の終了により被用者保険各法の被保険者の資格は喪失するため、使用者が解雇又は雇止めにより一方的に終了時を決めることができるならば、そうした恣意的な行為が労働者である被保険者の受給権に直接に重大な影響を及ぼす。

  日本の被用者保険法を機能させる上でドイツ法の議論が示唆する重要な点は、被用者保険法の「任意」性を排除し、つまり労働者の生活の安定を国家が引き受けること、つまり被用者保険は「雇用関係の保険である」という原

制保険の対象にし、保険を通じて引き受けるのは「雇用に依拠した生活」である。 捉えているのは、「従来の雇用に依拠した生活」が一時的又は継続的に終了する事態である。社会国家が公的に強 則を確認することではないだろうか。すなわち、失業はもとより傷病・障害・高齢の要保障事故を被用者保険法が 46

  多くの市民が労働に依拠して生活をしている現代において、ある程度の普遍性をもつ労働を基本に社会保険の権

(22)

利へのアクセスを最大限に実現することは、社会法典総則四条一項と結びついた総則二条二項後段の解釈指針を基に正当化されている。すなわち、社会的権利を最大限実現するには、広く労働者に就業関係を存続させることであ

Soziale Rechteる。被用者保険へのアクセスを多くの市民に確保することが、社会的権利()の一つであ 47

る。 48

  就業関係は広範囲に成立するだけではなく、いったん成立した後に容易に終了するものではない。というのも、就業関係を終了させると被保険者に不利をもたらすことになり、それは被保険者の保護を目的とした社会保険法の趣旨に合致しないからである。被保険者の保護の必要性(Schützbedürfnis)から、被用者保険の存続が認められてきた。被用者保険が被用者を保障する機能をもつことが確立している。学説でも就業関係の存続の論拠として、被用者保険の有する保護機能、労働法上の保護原理、連帯原理の三つがあげられてい

一九八一年九月二五日判 が労働関係の存続中に労働者の労働力を求めないことにより小さくなるわけではない、という。連邦社会裁判所 て可能な限り、病気、失業、障害、高齢、死亡のリスクから保護するものである、と。そうした必要性は、使用者 義務がもつ「保護機能」に主として注目したい。「保護機能」は、労働者を、その職業生活が継続する期間に対し る。ここでは一つめの保険加入 49

Gagel務の保護機能」から導いている。 決は、使用者の受領拒否が就業関係の存続を排除するものではないことを、「保険加入義 50

用者の受領拒否をもって就業関係が終了したとみなすのであれば、それに応じて、一方的にかつ法的根拠なく労働 44444444444444 働関係を保持することができる。場合により、むしろ労働者はそうした準備をする義務がある」。そして「もし使 活を営んでいるのである。使用者の受領拒否の場合でも、そのあと継続して働くことができると期待しながら、労 使用者が労働者の労働力を求めないことによって損なわれるわけではない。労働者は労働関係の継続する間職業生 死亡というリスクに対して可能な限り労働者を保護するものである。そうした必要性は、労働関係の存続する間に によると、「保護機能は職業生活が存続する間、病気・失業・障害・高齢・ 51

(23)

者の社会保険保護の範囲を決定することを 4444444444444444444、使用者の手に与えることになるだろう 44444444444444444」(強調筆者)とし、そうした考えは保障機能に一致しない旨が指摘されている。二番目の論拠は労働法上の保護原理であるとしている。使用者の契約違反、また一方的な行為により、社会保険料の義務から免れることになれば、それはこの原理に違反することになる、と。労働者には保険による保護に関して損害が発生し、それは年金においては損賠請求ではほとんど調整ができない性格のものであると。三つ目の論拠は連帯原理である。これは全ての労働者が自らの必要性・ニーズにかかわらず、自らの収入の範囲に従って社会保険の保険料を支払わなければならないという内容をもつ、と。そこでは、保険料徴収に際しては、労働関係から得る賃金が考慮に入れられなければならないことも含意されている、という。

 2就業関係の存続の争訟事例

  (

1)断続的な就業者の保障

  就業関係の存続をめぐる事例をみていこう。一つは、同一の使用者のもとで細切れ雇用をする場合に、就業の終了から次の就業の開始までの期間も、就業関係が存続しているのか。連邦社会裁判所一九九八年一二月三日事

あると解するのか、それとも短期の就業期間に応じて社会保険の就業関係も終了しており、そうした短期の就業関 れは、一方で継続的な就業関係が成立した上で、労務提供・賃金支払い義務のない期間をも含むような就業関係で しているといえるのか否かが問題になっている。極めて短期間の就業を中断しながらも繰り返している場合に、そ うした就業には就労しない期間=就業の停止期間が含まれているとはいえ、全体としては継続的な就業関係が存続 は、ドイツ第二テレビ放送(ZDF)で音響技師として働いていた労働者が細切れの雇用を繰り返していたが、こ 件 52

(24)

係が断続しつつ複数存するのか、が本件の争点である。第七小法廷は雇用保険法の就業期間をどのように理解するべきであるのか、なかでも賃金が支払われないし、労務も提供されないにもかかわらず、当該期間が就業期間と認められるための条件について、雇用促進法(AFG)一〇四条が明確に規定していないが、次のように判示している。すなわち、労働関係が存続し、使用者と労働者が就業関係を存続させる意思を持っている限りにおいては、「限定された期間」の事実上の就業関係の中断は就業関係の存続を認めるのに支障はな

存続していると判断される、と判示してい 限られず、ストライキ、有給でない休暇も、一定の限られた期間であれば、労務の中断があろうとも、就業関係は で、就業関係の存続が認められることを判示している。また、病気、有給休暇、賃金継続支払い時の労務の免除に gewährleistenと、一時的に中断している期間があっても、保険による保護を保障する()機能を就業関係はもつの Anwartschaftszeit雇用促進法一〇四条一項の被保険者資格期間()は保険料法上の就業関係と結びついているこ しても、労使において就業関係を存続させる意思がある限り、就業関係の存続を認めるのに支障はない、という。 を生じさせる保険料法上の就業関係は、労働関係が存続する以上は就業が「一定の限られた期間」になされないと い。本件判決は、保険関係 53

る。 54

  (

2)解雇の効力をめぐる争いと就業関係の存続

  連邦社会裁判所二〇〇八年九月二四日事

提供していない期間を就業関係と判断せず、和解を就業関係の終了の基準日と認定した。しかし、連邦社会裁判所 充たすのか否かが争点になっている。被告である保険料徴収機関としての医療保険者は、労働者が実質的に労務を 提供が免除されていた。労働者は退職までの期間につき年金保険及び雇用保険の被保険者としての「資格期間」を た労働者が、和解後から退職までの期間(本件では一〇か月間)賃金支払い義務が使用者にあるが労働者には労務 件を例に、就業関係の存続を考察する。本件では解雇の効力を争ってい 55

(25)

は、第一審被告である行政の請求を退けている。というのも、労働関係の存続中に病気のために労務を提供できない労働者も社会保険の就業関係は中断しないわけであり、それと比較すれば本件のような労務を提供していない労働者は被用者保険法上の保障の必要性が小さくなるわけではない。加えて、裁判所の判断に立つと保険の濫用を認める危険につながるのではないか、という医療保険者の主張にも、理由がないとする。もしそうした危険に対応するべきであるなら、そうした危険を除去する条項を規定するという方法がとられるはずであるが、それはなされていない、と。

 3小括

  (

1)就業関係の存続:「就業者」の保護の必要性

  被用者に対する社会保険は、労働関係に関連するが、しかしそれ自体ではなく、従来の労働関係を少なくとも一時的に喪失することにより、「従来の労働」に依拠した生活が継続できない人に法的に対応するものである。これを、Rolfs

Beschäfti-は、社会保険法の中心にあるメルクマールは「就業者」概念であり、業務それ自体の「就業( 56

gung)」ではないことを強調し、「就業者」は保護を必要とする一つの類型であり、人的な地位を示すものである、という。すなわち、重要なのは業務をさす「就業」ではなく、人に関連している「就業者の地位(Beschäftigtensta-

tus)」である。類型的に推測される「保護の必要性」は、その原因を、従属的な労働により労務の提供をおこなうことに見出すのではなく、むしろ就業者が自らの生計を従属的な労働という形でそれぞれの労働力を用いて確保し 444444444444444444444444444444444444

ている点にこそあるのである 4444444444444(強調筆者)。そうした意味での労働力の活用は実際に労務の提供をしているのかとは別に、賃金の支払いに基づく労働契約の締結及び存続とともにすでに生じているのである、としている。労働法

(26)

では労働関係そのものにおいて規律の必要性を捉えるのに対して、社会保障法では労働関係を媒介とした生活関係の保障の必要性を問題にするという相違が指摘されている、と解される。こうして社会保険の保護目的を強調し、たとえ労務が一時的に提供されていない期間であっても、その都度終了すると考えれば、就業関係を中断してしまい、保険の保護を受けることができなくなる。そうした社会保険の目的から、労働関係とは独立して、社会保険の就業関係を存続させることが目的にかなう、という。

  (

2)わが国の資格喪失の判断の見直し

  ドイツの検討からわが国の今後の課題とその解決の方向性をまとめておきたい。強制加入の被用者保険において、解雇を含め、使用者による労務の受領拒否が、「使用されなくなった」(例えば厚生年金法一四条)という要件を充足するとは限らないのではないだろうか。

  解雇が無効であることが裁判により確定した場合は、ドイツでは、わが国とちがって、解雇訴訟中も労働関係が継続しているため、就業関係も労働関係と同様に存続する。わが国では、労働関係が終了すれば被用者保険各法での被保険者資格は喪失する。現行法を前提にする限り、解雇が無効であることが確認された事案において、被用者保険の任意保険化の危険は、ドイツのように就業関係の存続を原則としないわが国の法的関係のほうが大きい。こうした任意保険化を回避するには、いずれかの方法が必要になろう。一つは、事業主が行政に適切に資格喪失届後の変更を行う義務を履行すること、そして行政はそうした事業主の行為について情報提供義務を負い、かつ適時に調査、審査する権限を行使する義務を負うことを明確にすることである。いま一つは、ドイツ法を参考に、解雇の効力を争っている期間も、労働者は「自らの労働に頼って生活する者」でなくなるわけではない以上、就業関係を存続させることである。厚生年金法一四条二号でいう事業所に「使用されなくなったとき」を、東京地裁平成一三

(27)

年前掲判決のように「使用関係が実質存続したと同様の状態」と解するのは被用者保険の保障機能に合致しないことから、労務を提供していない期間もなお被保険者資格は喪失しない、と解したい。解雇をめぐる訴訟を社会保障法の視点から検討するにはなお論点が残されているが、ここでは次の方向性のみ確認しておきたい。社会保険が強制保険である以上、事業主の一方的判断によって保険関係が終了することは原則として認められない。そうであれば、使用者により労務が受領されないことが、解雇の効力を争っている場合にも保険関係の終了事由(厚生年金法 一四条)であると解することはできない。労務の提供の可能性も奪われ、賃金も支払われないことにより被用者保険の保護を一方的に終了させることはできないからであ

なる。 使用者の手に与える」ことをわが国でも許容しないように、使用関係の存続について検討することは急務の課題と 444444444 る。「労働者の社会保険の保護の範囲を決定することを、 574444444444444444444444

Ⅳ  就業関係における事業主の義務懈怠の効果

 1被保険者資格の決定権と事業主の届け出義務

  (

1)行政の決定権

  就業関係が成立している場合でも、被用者保険の受給権は被保険者が一定の受給資格期間(保険料支払い期間又

は就業期間)に依っているので、事業主が被保険者の氏名・収入の届出義務を履行することは、被用者保険が機能する不可欠の条件である。事業主の届出義務は、無償の行政事務であ

簡易に行えるという理由から正当化されてい り、保険者が労働者に直接におこなうよりは 58

務であ る。使用者の届出義務は民法二四二条により生じる労働法上の付随義 59

り、連邦労働裁判所二〇〇五年一〇月五日判決によると、使用者が各保険についての届出義務を負うことは 60

(28)

(DEÜVと結びついた四編二八a条)公法上の義務を認めることと矛盾するものではな

者の労働法上の付随義務を具体化す 容は社会法典四編の規定により形成され、届出義務(四編二八a条一項)の内容がBGB二四二条から生じる使用 い。労働法上の付随義務の内 61

ない(四編二八a条三項二文二号b、c及び二八f条三項)。 ermitteln事業主は、就業の開始・終了日を届出(二項一、二号)又は、支払い額を算出し()、届け出なければなら よる強制加入の対象につき所定の事柄を事業主又はその他の届け出義務者に定めている(二八a条)。たとえば、 る。社会法典四編では、労災を除き、健康保険・介護保険・年金・雇用保険に 62

  事業主の保険者に対する届け出義務が適切に履行されているのか否かについては、行政が最終的責任を負っている。つまり、事業主の行為の適法性や有効性のコントロールをおこなうのは行政である。そうであれば、事業主に事務が委ねられている場合でも、原則として、事業主による事務は行政機関による事務と質的には同じでなければ 444444444444444444444

ならないのであり 44444444、公的主体であれば設定されるはずの一般的水準よりも質が下がることは許容されない 44444444444444444444444444444444444444(強調筆

者)、と指摘されてい

persönliche Zuverlässigkeitな信頼性()が担保されることが要請されなければならない、とい る。したがって、特定の行政事務が付与されている事業主には、その専門的な適性及び人的 63

う。 64

  とはいえ、ドイツ法では、事業主が自らに課された事務を合法的に履行し、適性を果たしているのかを確認する方法は、四年に一度行う年金保険者の事業所審査しかない(四編二八p条)。十分な審査方法ではないが、次のように事業主の届け出義務懈怠が発覚することもある。

  ある事案では、テレビ局のレポーターとして就業していた者が自らを労働者であると主張し、それを労働裁判所は認容し

出なかったところ、事業所審査により、保険者は事業主に労働関係の成立時に遡及して保険関係を確認し、保険料 た。事業主は、連邦労働裁判所の労働関係の認容後もなお、保険関係を成立させる就業関係の成立を届け 65

(29)

徴収を求めた。事業主はすでに四年の時効により保険料債権が消滅している旨を主張した。連邦社会裁判所は、使用者の上告を棄却している。その理由は、就業関係の成立時に事業主がレポーターをフリーの契約労働者であると考えていたとしても、保険料債権の短期消滅期間の四年の期間満了前にすでに事業主に「故意」がある場合には、就業関係がないという信頼は保護されないからである。そして、本件では、連邦労働裁判所が労働関係の存在を認めたことから、すでに短期消滅期間の満了前に保険料不納付の「未必の故意」が生じているとし、保険債権には短期消滅の四年ではなく、三〇年の消滅時効期間が適用されると帰結している。

  (

2)全就業者についての所得の届出義務 4444

  ドイツでは事業主はすべての就業者(四編七条一項)につき所得証明書を作成し、保険者に提出する義務がある。したがって、被用者で保険の対象にならない僅少労働者(例えば四編八条一項二号の短期就業者)についても事業主は所得証明書を作成し、届け出義務を負う。その理由は、社会保険において就業関係の存在を決定する権限をもっているのは事業主ではな

の強制対象になり、所得証明書を作成する義務があるのかを決定する権限は、事業主にはな 位確認申請の応答をする(七a条)年金保険者だからである。就業者かどうか不明確な場合に、どの従業員が保険 く、保険徴収機関(二八h条一項)又は抽出審査(四編二八p条一項五号の事業所審査)や地 66

い。 67

 2保険料支払い債務者としての事業主

  (

1)保険加入義務不存在についての事業主の証明 444

  事業主は、医療保険・介護保険、年金、雇用保険の総保険料(四編二八d条)を支払う債務を負う(二八e条)。届け出義務・保険料支払い義務を事業主が適切にかつ適時に履行しているのかは、年金保険者が、抽出審査(二八

参照

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