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バイオエタノール製造技術の現状と課題

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Academic year: 2021

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(1)

特  集

教授

講師 近藤 昭彦 

近 藤 昭 彦

 私は昨日まで、オランダ、台湾に行っていました が、各国政府レベルではバイオマスエネルギーに対 して関心が高く、どの国もかなりの投資を行って研 究を進めているのが現状です。こうした中で、本日 は問題点や課題などについて話したいと思います。

●工業原料バイオマス

 工業原料用のバイオマスを考えると、デンプン系、

油系、リグノセルロース系。そして最近では微細藻 類というのが注目されます。世界的にみると、デン プンから作られるのが第 1 世代のバイオ燃料、リグ ノセルロースから作られるのが第 2 世代のバイオ燃 料といわれています。さらにブタノールなど、高級 アルコール系の燃料価の高いものが 2.5 世代のバイ オ燃料といわれています。じつは微細藻から作られ ていくようなものが第 3 世代のバイオ燃料といわれ ていて、実用化レベルのものも作られています。リ グノセルロース系からの第 2 世代のバイオ燃料「エ タノール」をいかに早く実用化できるかが世界の潮 流であります。それは 2015 年から 2020 年であろう と見られていて、その頃から商業レベルで増えてい くだろうということです。第 3 世代の微細藻のよう なものから出てくるのが 2020 年から 2030 年だろう と考えられています。技術の進展で大きく変わって くるため、ロードマップのとおりとは行きませんが、

現在の世界の関心事は第 2 世代のバイオ燃料を誰が どれだけ早く実用化できるかということです。本日 は第 2 世代のリグノセルロースからのバイオ燃料を 中心に話したいと思います。

 これはリグノセルロースからの化学的構造を書い ていますが、リグニンは 15 〜 25%、ヘミセルロー スが 23 〜 32%、セルロースが 38 〜 50%というよ うな組成からなっているのが一般的なリグノセルロ ースです。どこをとっても難しいというのが最初の 話です。リグニンと呼ばれている部分は、たくさん エネルギーを持っている構造をしていますが、分解 するのに難しく化学的には使いにくい。ですからエ

ネルギーがたくさんあることを利用して、燃焼して います。そしてプロセスの中で使うエネルギーを発 生させて、できるだけプロセスを自律でエタノール ができるようにするための、エネルギー源として使 っているのが実情です。ヘミセルロースの部分と呼 ばれるものは、分解すると似たように見えますが、

ヘミセルロースはキシロースと呼ばれるカーボン 5 つからなる糖が主成分で、これが大きな問題です。

じつはヘミセルロースは分解しやすいことはよいの ですが、できたキシロースという糖を使おうとする と、ほとんどの微生物が発酵できません。一方、セ ルロースのほうはグルコースができてから分解さえ すれば、グルコースですからほとんどの微生物がう まく発酵できます。ところが難分解性であるために、

エネルギーが非常にかかるということです。このよ うにリグノセルロース系のバイオマスは、どこをと っても利用できやすい形になっていません。いかに 省エネルギー的でシンプルなプロセスで分解してい くか、それが大きな課題といえます。せっかくこん なによい構造なのだから、分解しないで何か新しい 構造が作れないかという話もあります。しかし、そ れも化学的にも難しいということから、いずれの場 合においても分解して、多くの場合、糖の部分だけ を使っていこうということになります。

神戸大学大学院工学研究科

バイオエタノール製造技術の現状と課題

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 バイオファイナリーのイメージで、大きく言えば 熱化学プラットフォームと糖のプラットフォームと いうのがあって、これは世界的に研究されています。

バイオマスにまず熱をかけるとガス化あるいは液化 ができます。このようにガス化や熱分解、あるいは 液化した後に例えばガス化すると、それを化学プロ セスで燃料に持っていくことが可能です。一方、バ イオのプロセスでは、イオマスを前処理して、多く の場合はその後に酵素を使って糖にまで分解してで きたグルコース、キシロースのような糖をバイオプ ロセスで発酵し、エタノールなど多様な化学品を作 っていこうというのが糖のプラットフォーム、ある いはバイオテクノロジーを使った方法です。例えば アメリカの研究機関 NREL では、熱化学プラット フォーム、糖のプラットフォームでどれくらいの割 合で研究しているかといえば、熱化学プラットフォ ームが 2、糖のプラットフォームが 8 程度だそうで、

世界的にもバイオのほうが研究されているというこ とです。これはバイオマスがいろんな問題があった としても、プロセスとしてうまく動くということです。

 糖のプラットフォームをもう少し詳しく説明しま す。バイオマスのセルロース、ヘミセルロースの部 分を使って、リグニンの部分は当面プロセスをまか なうためのエネルギー源として使おうというのが現 状での考え方です。もちろんリグニンから有用化学 品が作れないかという試みはされていますが、今の ところの主流はエネルギー源としてまかなって、分 解してできる糖。その中で炭素が 6 つのもの(C6 糖)

がグルコース、5 つのもの(C5 糖)がキシロース という糖です。それを微生物で分解して、このよう なエタノールから始まる多様な C3、C4 などのカー ボンからなるビルディングブロック、モノマー体に もっていき、それを燃料として直接使う。あるいは

エタノールをエチレンにして、ポリエチレンにして 汎用化学品にして使うなど、いろんな展開を考えて いこうということです。一方が化学プロセスであり、

一方がバイオプロセスでありますが、バイオと化学 のプロセスを融合して、バイオマスからいろんな多 様なものを作っていこうというのが、糖のプラット フォームといわれるところであります。

 もう 1 つの要素があって、前処理のプロセスはど ちらかといえば化学機械、あるいは重工業的なプロ セスです。これから考えても、重工業的なメカニカ ルなプロセスがあって、バイオのプロセスがあり、

化学プロセスがある。これを実用化していこうとす ると、かなりマルチディスシプリナリーになります。

知を集めていかないと実用化できないようなプロセ スだといえます。

 ブラジルではサトウキビからエタノールが安価に できるため、エチレンにしてポリエチレンにする。

カーボンニュートラルということで、CO

2

削減効果 が大きいといわれています。バイオマスから得られ るエタノールというのはエネルギーだけでなくて、

非常にメジャーなパーツを占めるプラスチック、ポ リエチレン、ポリプロピレンなどにも使われてきて いるのが現状です。いかに植物体を食料と競合しな いで増産できるかが非常に重要なことですが、その 次には、エネルギーを使わないでどのように生産す るかというプロセスの開発が重要となります。ブラ ジルでは大規模なサトウキビ畑の中にエタノール工 場があり、サトウキビの糖汁がエタノールをつくっ ていく。搾りかすをバイオマスボイラーで燃やして いますが、エネルギーを回収して、外部からの石油 をほとんど使わずに全体のエネルギーをまかなって います。また、耕作に適さなかった半乾燥地でサト ウキビをいかに大量に増産していくかという国家プ ロジェクトが動いています。

 アメリカでは穀物メジャーの ADM 等が、トウモ

ロコシからエタノールを作って、それが伸びてきた

というのが現状です。日本の酒造りと同じようなプ

ロセスでであって、トウモロコシからのデンプンに

アミラーゼ、アルファアミラーゼのような酵素を加

えて煮ます。そして液化します。そしてグルコアミ

ラーゼを加えて糖化して、酵母で発酵してやるとい

うことです。デンプンでは酵素を加えたり、煮るこ

とが必要になってくるので、エネルギー的、コスト

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的にブラジルのエタノール生産より高くつきます。

このプロセスが批判対象にもなっています。バイオ エタノールとして得られたエネルギーを、生産する ために使ったエネルギーで割った数値が 1.3 という ことで、いかにエネルギー効率を上げていくのかが 重要なところといえます。

●セルロース系エタノール生産プロセスの開発  第 2 世代の燃料であるセルロースエタノール生産 プロセスを、いかにつくっていくかが重要な課題と なっています。現状ではそのプロセスがありません ので、これをいかに早く、商業的にもエネルギー的 にもよい形のプロセスを開発して実用化するかが求 められています。日本でもいくつかの試みがありま すので、国内での利用を考えたプロセス、世界を視 野に入れた最も効率のよい、最も優れたプロセスを 考えようという 2 つのアプローチを紹介したいと思 います。国内利用のものとしては、稲ワラのような ものを考えています。国内でやろうとすると組み換 え体の利用が難しく、組み換え体を使わないとなれ ば、当然高くついてしまいます。世界を考えた場合 は、組み換え技術でも何でも使ってもよいから最高 の技術を使ってつくってくれということです。

 まずは国内利用を想定して考えた技術です。エタ ノールの製造プロセスを分類すると、4 つの形に分 類されます。1 番目の熱化学を除き、2 番目の酵素 を使うもの、3 番目の一貫微生物を使うもの、4 番 目の非エタノール発酵系ということで発酵でないこ とも考えられています。これはバイオ燃料革新技術 協議会のエタノール・ワーキンググループの資料で す。本日紹介するのは 2 番目と 3 番目の技術です。

1 つは適切な前処理を行ったバイオマスを酵素で処理、

糖化して、発酵によってエタノールにするという技 術です。つまりバイオマスを前処理して、酵素で糖 化分解して糖が得られます。それを微生物で発酵し てエタノールを得て、それを濃縮・脱水してエタノ ールにするというプロセスです。発酵で使う微生物 は非組み換え体を考えています。もう少しプロセス 的に示したのがこの図です。バイオマスをまず粉砕 する必要があります。稲ワラを考えると 5 mm 程度 角のサイズに粉砕し、酸やアルカリを使った前処理 をするわけです。酵素を加えて、糖に分解し、発酵 エタノールをつくるということになります。前処理

はここに示したように非常に多様なバリエーション が世界で考えられていて、いろんな方法で取り組ま れています。しかし、私たちが特に注目したのは水 だけを使う処理です。水だけを使う処理にはいろん な方法があります。高温高圧の水を使う、蒸気を使 う、いろんな形が考えられますが、もしも水だけを 使って酵素分解が非常にしやすい形になるのであれ ば、これがいちばん良いと考えたのです。従来、世 界で使われてきたのは希硫酸を使う方法でした。な ぜ水熱処理法が使われてこなかったかといえば、エ ネルギー収支が非常に悪いと考えられたからです。

それが最近では改良されて、エネルギー効率がよく なりました。そうなれば、水だけを使う方法が優れ た方法だといえるわけです。

 私たちは水熱処理法とこのようなかたちを組み合 わせるものの開発を兵庫県で進めてきました。200

℃で 3 メガパスカルくらいの高温高圧の水を使って、

水熱処理法でバイオマスを処理しました。高温高圧 の水で処理すると、分解しやすいヘミセルロースの 部分が分解されて、このような液体になってきます。

これをさらに酵素分解して発酵します。じつは自然 界のほとんどのものがキシロースは発酵できない といわれていましたが、生物の多様性で発酵できる 酵母がいて、それはピキアスティピティスという酵 母です。それを使って発酵する。セルロースの部分 はさらに酵素で糖化する。これは通常に発酵で使わ れている酵母ができあがったグルコースを発酵しよ うというものです。フローを 2 つに分けて、1 つは キシロースを発酵できる自然酵母、そして C6 を発 酵できるサッカロマイセス・セレビシエという酵母 を使って発酵していこうということです。

 ここでは兵庫県のプロジェクトを紹介しますが、

協議会をつくって、神戸大学と民間から重工業、発

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酵工業、化学機械の企業が連携、農水省の支援を受 けてプロセス開発をしています。このプロジェクト では、稲ワラを天日乾燥して、水分を少なくする必 要があります。乾燥後にロールベーラーでロール状 にして貯蔵、そして運搬し、製造設備でエタノール へと発酵していく。こうした収集・運搬からエタノ ール発酵までの全体を通して、どれだけエネルギー がかかるかの評価もしていこうというものです。発 酵残渣は畑地に戻すなど有効利用して、循環のシス テムを考えています。これは組み換え体を使わない 方法での挑戦であります。稲ワラは 1 年中収穫でき るというものではないので、貯蔵がどの程度できる のかもポイントで、できるだけ低コストで貯蔵可能 な方法が課題ともなります。

 バイオ燃料の製造フローですが、組み換え体を使 わないため、天然酵母を使います。水熱分解したも のを C5(キシロース)の部分と C6(グルコース)

の部分に分けて、さらに酵素を加えて分解します。

そしてキシロースピキアスティピティスという酵母 を使います。グルコースの発酵はサッカロマイセ スセレビシエという酵母を使います。これで発酵 してできたものを蒸留、脱水し、貯留するというの が製造工程になります。いっぱいのタンクが必要、

で酵素もいっぱい要るから、お金がかかりそうだと いうことが分かると思います。国内でのいろんな制 約を考えると、こんなようなプロセスを確かめてい るということです。三菱重工業の開発によるこの製 造技術の特徴を言いますと、ポイントは 1 つです。

いかに少ない加圧した水量で原料を処理して糖液を 得るのか、あるいは処理液を得るかということです。

この水をたくさん使えば、当然のようにエネルギー 収支が合わなくなります。いかに水を減らせるかが エネルギー収率、あるいは最終的なバイオマス収率 を考えても大事なことだと言えます。

 このようなスキームで目標は 1 リッター 90 円程 度に設定しています。そのぶん国内で受け入れられ る技術だけを使って、やっていこうというものです。

全国では他にもこれと似たようなアプローチが農水 省の実証事業として進行しています。関西では兵庫 県で三菱重工業のチームが行っています。

● CBP 一貫バイオプロセスによるエタノール生産  次に世界に向けて、どんな組み換え技術を使って

もいい、とにかく最高の技術をつくってくださいと いう要請へのアプローチを紹介します。先ほど申し ましたように、いっぱいのタンクを使っていろいろ やるとお金がかかってしまうことがあります。やは り、できるだけインテグレートした、いろんなステ ップをまとめるシンプルプロセスのほうがお金もか からないことがあります。じつは前処理した後に酵 素を加えていましたが、この酵素の値段がプロセス のコストを圧迫しているため、酵素をいかに減らせ るか、できれば使わないでいけるかというのが大き な課題でした。ワンポット反応でエタノールを作れ るようにできないかというのが一貫微生物系のアプ ローチです。

 一貫微生物系のことを世界では CBP(Consolidat- ed  Bioprocessing)と言いますが、日本には日本の オリジナルなアプローチがあり、これが神戸大学と 京都大学で開発してきたアプローチです。一貫微生 物を実現するために、細胞の表面にセルロースを分 解できる酵素を集積して腕をつけた。これをアーミ ング技術といって、腕がいっぱい付いています。酵 素を集積し、前処理したセルロースを分解してエタ ノールにする。こうした理想的な微生物ができれば、

これだけ加えたら、いきなり発酵できるわけです。

アーミングは千手観音から名付けられています。こ れを基盤にしながら技術開発を進めています。ポイ ントは微生物細胞工場、細胞を工場で行うようにつ くり変えるというのがキーワードで、英語ではセル・

ファクトリーと呼んでいます。セルは細胞のことで す。細胞を、原料を搬入し、反応、製造して、製品 として加工する、工場のように作りこみます。

 バイオマスは高分子であるので、生物はいきなり

それを利用できません。ですから、アーミング技術

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で酵素を大量に集積、バイオマスを分解して取り込 ませます。取り込んだ後に目的の代謝物にブタモー ルを作りたいとか、イソプロパノールを作りたいと か、いろんな要請があります。そのような目的の製 品になるように代謝経路をつくることになります。

そのためにデザイン戦略が必要となります。デザイ ン戦略に基づき、細胞工場を操作して実際につくり 込みます。それを発酵槽でテストします。多くの場 合はなかなか目的の生産性能を目指せません。しか し、微生物の反応は非常に複雑です。従来は何が起 こっていたのか分からなかったという状況でしたが、

最近の生命化学の進展によってマルチオミックスと いって、細胞の中の状態を網羅的に解析する技術、

あるいは代謝経路の中でどの反応がどんな大きさで 流れているかを解析する技術が出来上がってきてい ます。これを使ってどこで何が起こったのかを解析 します。ここで莫大なデータが出てきますので、イ ンシリコでさらにシミュレーションして、どこをど うすればよいかの律速段階を特定し、律速段階を取 り除くように再設計しながら、よいものができた段 階でスケールアップをしていくことが必要になって きます。とにかく世界最高のものをつくろうという ことになりますので、先端バイオを総動員して設計 していかないととてもできません。

 インシリコ・シミュレーションとはどういうこと なのか。設計図をつくるところは、代謝経路をデザ インするパスウェイマイニング、つまりどのような 代謝経路をつくり込んだらよいのか、どれか遺伝子 をなくしたらよいのではないか、どこかの遺伝子の 反応を強化したらよいのではないかということがあ ります。キーワードは代謝です。微生物の代謝を目 的の方向だけにもっていきたいわけで、そのような 代謝をどう改善すればよいのかということになりま す。

 最近はゲノムスケールのシミュレーターがたくさ ん出てきています。ご存知のように、いろんな微生 物のゲノムがあるのか分かりきっています。という ことは、どんな酵素が要るかも分かっていれば、ど んな化学反応が細胞の中でいっぱい起こっているか が、化学反応式として書き表せます。その部分をコ ンピューターの中で表した数式の羅列、それがゲノ ムスケールモデルといわれるものです。それを使う と、インシリコの形質転換や変異がシミュレーショ

ンできます。実際に条件を与えて発酵してみて、ど んな条件で発酵したらどの程度の成果が出るのかが 想定できるようになっています。このようなものを 使いながら、開発を進めているということでありま す。そして実測段階を特定するマルチオミックス、

例えば代謝プロファイル解析といって代謝物の蓄積 を見たり、素反応を解析したり、それに基づいて律 速度段階を特定するインシリコの技術とか、いろん なことができます。

●メタボローム解析による発酵阻害の解明

 マルチオミックスの中のメタボローム解析が、い かに役立つかということについて少し紹介します。

ゲノムがあり、その上にトランスクリプトームとい うことで、メッセンジャー RNA になって、プロテ ーム、タンパク質になり、最終的にタンパク質がい ろんな反応をして体の中には代謝物がいっぱいある わけです。メタボロームというのは分子レベルでの 細胞表現型で、細胞がどんな反応がどんなふうに起 こっているかは、代謝物の分布や流れを特定するこ とで分かってきます。代謝プロファイル解析という ことで、細胞の中にあるいろんなものを測ろうとす ると、いろんな分析装置を駆使していく必要があり ます。これはガスクロマトグラフィー(GC)の TOFMS、こちらはキャピラリー電気泳動(CE)の TOFMS、超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)

の TOFMS というように、いろいろ組み合わせてい かないと解析できません。こうしたことを地道にや っていかないと、イノベーティブな細胞がつくれま せん。

 このような最先端バイオを総動員しながら、CBP

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微生物をつくっていく。酵素処理とエタノール発酵 を同時にできるような微生物をつくり上げていくの が、ここでの課題であります。こちらのほうは経産 省の支援を受け各企業と大学が結集して全体的なプ ロセス、前処理から CBP で発酵し、エネルギー(エ タノール)を回収するということです。企業として は月桂冠、サントリー、関西化学機械、豊田中央研 究所、鹿島建設、大学では京都大学、大阪大学、神 戸大学、東北大学、名古屋大学が協力してこのよう なプロセスを現在つくっております。微生物をスー パー化していくわけです。アーミングという技術を 使って前処理したバイオマスを、アームをたくさん 付けたもので分解、グルコースまでもっていって発 酵する。ヘミセルロースで分解した液も高分子が含 まれているので、それを分解していくようなヘミセ ルラーゼという酵素が必要です。それを集積して分 解、発酵していくという発酵経路を導入するような 取り組みが必要で、あたかもアンドロイドのような 細胞にしていこうとするものです。

 こうしたものを使った発酵の 1 つの例が次のよう なものです。代謝経路の中で発酵している酵母から、

発酵に必要な遺伝子をサッカロマイセス・セレビシ エという酵母に移植します。移植すると発酵できる ようになります。さきほどの汚い C5 液は、発酵の 性能があまり出てきません。そこで腕(アーム)を 付けてやりますと、前処理したものがさらに発酵で きますので、たくさん発酵できるようになるという ことです。腕を付けることがとても大切だというこ とです。

 最後にマルチオミックスをどのように使っていく かの 1 例を紹介します。バイオマスを分解すると、

酢酸や蟻酸など微生物にとって悪いものが出てきま す。発酵には悪いものです。こうしたものがどのよ うな悪影響を及ぼしているかをマルチオミックス技 術で解析しました。これは発酵している図です。キ シロースが発酵できるように代謝系を移植したスー パーなサッカロマイセス・セレビシエ、酵母です。

酢酸がないときは青色で示したように糖が発酵時間 とともになくなっていき、赤色で示したエタノール ができてきます。ところが 30 ミリモルとか 60 ミリ モル程度の酢酸を加えると、60 ミリモルではほと んど糖がアルコールと変わらなくなってしまいます。

何が起こったのか。このような時間でサンプリング

して、細胞をとってきて細胞の中がどうなっている かを、マルチオミックス技術で解析してやるわけで す。山ほどデータが出てきますが、その中でペント ースリン酸経路の中産代謝物を見たものがこのグラ フです。S7P が代謝物ですが、酢酸が存在していな い時は発酵時間が経過して 24 時間後にはゼロにな ります。60 ミリモルの酢酸が入っていると全く減 らず細胞の中にたまったままです。このようないく つかの代謝物が見てとれます。他のものは発酵とと もに減っていくわけですが、このように溜まってし まうようなものがあります。それはどこだろうと見 ますと、この化合物があるのはペントースリン酸経 路といわれるところです。例えば S7P が溜まって いますので、これを先に進める酵素をたくさん作ら せてやったらよいだろうということで、TAL1 とい う酵素を酵母の中でもっと作らせてやる。さきほど の 30 ミリモルの酢酸を加えたものは発酵しなくな っていたのですが、これを加えることで発酵できる ようになったということであります。

 このようにどこが悪影響を受けているかを、代謝 物を網羅的に解析することで明らかにして、ストッ プしている所を流れるように遺伝子操作することに よって、酵母をタフにしていく、強くしていくこと に取り組んでいます。

質疑

< Q >こうした研究開発は政府の補助なしではで きないと思うが、実用化へ向けたデザインのような ものを聞きたい。

< A >国内でバイオマスから作るには、やはり補

助金なしではあり得ない。実用化問題は経済的に成

り立つかどうかだろう。

参照

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