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商業高校における新学習指導要領の実施に向けて

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Academic year: 2022

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【要旨】

 令和4年度より、平成30年3月に告示された高等学校学習指導要領が実施される。各教科 の目標及び内容が、育成を目指す資質・能力の3つの柱に沿って再整理され、「主体的・対話 的で深い学び」を目指した授業が実践される。また、学習の成果を的確にとらえ、主体的・対 話的で深い学びの視点から授業改善を図る「指導と評価の一体化」に向けての取り組みが求め られる。商業高校においては、これまで大切にしてきた資格取得と新学習指導要領との両立を 図る学校が多いと思われる。数年間は混乱が予想されるが、GIGAスクール構想を起爆剤と して、ICT環境を活用した教育を実施し新学習指導要領に沿う授業改善に取り組めば、「令 和の日本型学校教育」を実現できる。

1.はじめに

 令和4年度より、高等学校では年次進行で新学習指導要領が実施される。新学習指導要領に おいては、①生徒が未来社会を切り開くための資質・能力とは何かを社会と共有し、連携する「社 会に開かれた教育課程」の重視、②育成を目指す資質・能力を3つの柱に整理し、すべての教 科等の目標や内容の3つの柱に沿った再整理、③「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け た授業改善の推進、④各学校におけるカリキュラム・マネジメントの推進が示された。

 現在、各校では, 日々の教育活動と並行して新学習指導要領の趣旨に従って教育課程の見直 しが行われ、次年度以降の実施に向けた準備が進められている。この4つの見直し点について は、どの学校も現状を大きく見直す改革になると思われる。

 本稿では、商業教育を通じて学習指導要領の理念を実現することで、いかに令和の日本型学 校教育を構築していくか、特に商業高校並びに教科商業において変化が大きいと思われる上記

②③について主に述べる。

研究論文

商業高校における新学習指導要領の実施に向けて

― ICT機器の活用を通した授業改善をめぐって ―

Toward the implementation of the new course of study in commercial high schools

池田宏史

IKEDA Hiroshi 商業高校 新学習指導要領 令和の日本型学校教育 GIGAスクール構想

KEY WORDS

(2)

2.商業高校の現状と課題

 商業高校の特徴として、入学してくる生徒の多様さと資格取得への積極的な取り組みがある。

これらは、すべての商業高校が当てはまるわけではないものの、多くの商業高校が当てはまる と思われる。

(1)入学してくる生徒の多様さ

 このことは「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して ~すべての子供たちの可能性を 引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの実現~(答申)」(以下、「令和の日本型学校教育(答 申)」)にも課題として示されており、商業高校に限らずどの学科においても抱えている課題で ある。具体的には基本的な生活習慣や学習習慣が身についていない、小学校や中学校での基本 的な学習内容が定着していない、外国にルーツがあり日本での生活が短く日本語は日常の会話 のレベルでも不自由する、といったことがあげられる。これらの生徒に基礎学力をつけて授業 に参加できるようにすることが課題となる。

 成績優秀な生徒については、卒業後の進路についての目標が明確で、有名企業への就職や難 関大学への進学を目指しており、学校の実績を確認して入学してくる。評定や資格取得に対し 高い意識を持っており、そのことが活動の原動力になっている生徒も多いが、一方で負担になっ ている生徒もいるのが現状である。

(2)資格取得への取り組み

 商業高校に限らず、商業科の科目が設置されている学校においてはほとんどそうであるが、

授業の目標の一つとして、「資格取得」が設定されることが多い。そして、全校をあげて資格 の取得に力を入れている学校も多い。これには生徒と保護者、企業と上級学校、高等学校と教 師とそれぞれ理由がある。

 生徒と保護者は、資格を取得し、進路活動のさいに取得資格を活かして合格を勝ち取りたい、

という強い要望を持って入学してくることがほとんどである。このことは、検定試験に出題さ れない学習内容は学習したくない、得点につながらない活動などは取り組みたくない、という 意識にもつながっている。

 企業や上級学校においては、資格は学校の成績と違い、全国統一の問題で測定された結果で あることや、合格に向けた本人の努力を評価できる、といったことがあげられる。企業の採用 担当者からは資格取得について、例えば全商簿記1級といったような具体的なレベルの要求を されることは少なくなってきた印象があるが、資格の取得状況について過去に入社した生徒と 比較されることは確かである。上級学校、特に商業高校の生徒の中での進学希望者数が多い4 年制大学の商学系の学部においては、資格の取得が推薦の受験資格になっていることが多い。

そのため、学校としては資格取得を念頭においた教育課程が編成されることが多い。企業や上 級学校への書類の提出について、就職活動は9月初旬に設定されており、進学は一番早いAO 入試の場合、多くの大学では8月以降エントリーシート提出となっている。そのような事情か

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ら、学習内容が検定試験に関連する科目は、できるだけ1、2年次に履修する教育課程が編成 されている。現実に、3年次の1学期までにできるだけ多くの上級資格を取得し、資格の取得 状況をアピールして進路実現をする生徒の割合が高い。

 教師の側からすると、資格を授業の軸に据えると、複数の教師で担当しても各クラスの授業 進度や指導内容の足並みをそろえ、授業の質の均質化が計れるという利点がある。また、資格 取得の学習は解答の導き方を説明すれば事足りることが多く、受験のための教材も充実してお り、教材研究も容易であることがあげられる。資格取得に関しては、伝統的に朝や放課後、長 期休業期間中などに講習を行っている学校も多い。さらに、放課後等に授業において後れを取っ た生徒に向けて、資格取得を学習の動機付けとして補習がさかんに行われており、こうした学 力の底上げのための取り組みも生徒の資格取得に寄与してきた。

 なお、都立商業高校では平成30年度からビジネス科が新たに設置され、全日制商業科はす べてビジネス科へ移行した。それまでの商業科では、簿記、会計、コンピュータなどの実用的 な科目を学び、幅広い資格取得を目指すとともに、ビジネス社会のマナーを身に付けることを 目的としていた。ビジネス科では簿記やコンピュータなど専門分野の学習に加え、東京都独自 の学校設定科目「ビジネスアイデア」などで企業と連携してビジネスを実地に学ぶ機会を設け、

創造的な能力と実践的な態度を身に付けることとなった。現在、資格取得の長所を活かしなが ら「主体的・対話的で深い学び」への指導の転換を進めている。

(3)その他の指導

 本稿では扱わないが、商業高校では進路指導と生活指導に力を入れている。商業高校は普通 科や総合学科の高等学校と比べ、卒業と同時に就職する生徒の割合が高い。そのため、職業指 導と生活指導を組み合わせ、キャリア教育に加え、身だしなみや、約束の時間や期限を守るこ と、挨拶などルールやマナーの指導をおこなっている。

3.新学習指導要領における商業教育

 今回の学習指導要領の改訂は生徒の学習内容だけでなく、各教科等の「見方・考え方」を生 かした授業改善や、「主体的・対話的で深い学び」の視点での授業改善、学習評価の充実など 教育現場にとって大きな改革となる。

(1)各教科等の目標

 新学習指導要領では、各教科等の目標の書き方が大きく変わった。目標に「見方・考え方」、

育成を目指す資質・能力の3つの柱である「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学 びに向かう力、人間性等」の4つの目標が示されるようになった。以下、この4つの目標につ いて1つずつ見ていく。

1) 「商業の見方・考え方」

 学習指導要領解説商業編では、「商業の見方・考え方とは、企業活動に関する事象を、企業

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の社会的責任に着目して捉え、ビジネスの適切な展開と関連付けることを意味している。」と している。授業を担当する教師の視点で見ると、「商業の見方・考え方」だけでは内容が簡潔過ぎ、

抽象的でわかりづらい。

 前半の「企業活動に関する事象を、企業の社会的責任に着目して捉え」は、様々な利害関係 者に対して果たさなければならない責任を果たしているのかを着眼点とし、「ビジネスの適切 な展開と関連付ける」は、企業の社会的責任を果たしビジネスが健全で持続的に発展していく ように考える、ということであろう。

 科目や単元において生徒が「見方・考え方」を働かせる状態になるには、学習内容に対し具 体的に落とし込む作業が必要であり、教員は「見方・考え方」を軸に授業改善を進めることが 求められる。教師が評価をするさいの評価規準の作成とともに大きな作業となると思われる。

2) 「知識及び技術」

 「知識・技術」については、商業の各分野についての体系的・系統的な理解及び関連する技術、

としている。教科商業科で学ぶ内容は、実際のビジネスや実務に関連付けて指導する。これま でも事例を取り上げて指導をしているので、これまでの取り組みをそのまま活かしていくべき である。

3) 「思考力、判断力、表現力等」

 「思考力・判断力・表現力等」については、ビジネスに関する課題を発見し、職業人に求め られる倫理観を踏まえ合理的かつ創造的に解決する力、としている。学習内容は 実際の経済 社会やビジネスに即したものとなる。ビジネスの現場で用いられる理論や学術的に認められた 理論、データ、成功事例や改善を要する事例など科学的な根拠に基づいて工夫してよりよく解 決する力を養う。

4) 「学びに向かう力、人間性等」

 「学びに向かう力、人間性等」については、職業人として必要な豊かな人間性を育み、より よい社会の構築を目指して自ら学び、ビジネスの創造と発展に主体的かつ協働的に取り組む態 度、としている。

(2)学習評価

 新しい学習評価を実施していくにあたり、学習評価を意味のあるものにするため、①学期末 や学年末に評定をつけて終わりではなく、生徒の学習改善につながるものにしていくこと、② 指導の方針や評価基準等を教員間で統一し、教師の指導改善につなげること、③これまで行わ れてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと、が求められてい る。特に①に関しては、学習評価を、年度末に評定をつけるための途中の過程にしないことが 重要である。

 観点別学習状況の評価の観点については、「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に 学習に取り組む態度」の3観点に整理して示された。このうち、「主体的に学習に取り組む態度」

(5)

は「学びに向かう力、人間性等」のうち、観点別学習状況評価を通じて見取ることができる部 分であり、観点別学習状況の評価にはなじまない「感性・思いやりなど」については、個人内 評価等を通じて見取ることとなった。「感性・思いやりなど」では、生徒一人一人の良い点や 可能性、進歩の状況について積極的に評価し生徒に伝えることで、生徒のモチベーションを高 めたり、自己肯定感を高めることが大切である。

 ②に関しては、評価をするさいに、生徒の記述内容や取り組みについて、同じ生徒でも評価 書者によって違う評価になる可能性がある。商業科目においては、特に必履修科目において、

一人の教員が学年全クラスを担当するようなことは少なく、複数の教師が担当することが多い。

評価のさい、ルーブリック表により評価をすると、AとBの中間、というように、どちらの評 価にも当てはまり評価者が迷ったり、同じものを見ても教員間で違う評価になる可能性があり、

信頼性について慎重に対応する必要がある。

 例えば、資料①のように、記述の分量や内容など、評価をする要素ごとに段階を分けるのは どうだろうか。

資料① 段階を経て評価するさいの評価基準の例(評価対象は活動日誌)

レベルA レベルB レベルC レベルD レベルE 評価手順1

提出時に記 入されてい る分量

すべて(ほ ぼ)埋めら れている

レベルCと Eの中間

3分の2程 度以下

評価手順2

感想・意見 単元の取り組みや、自分なりの感想・意見が具体的に記入されて いる。→ 1段階上げる

評価手順3

PDCAサ イクル

計画を立て、実行・評価し、次の計画を立てるなど、PDCAサ イクルを回していることが記述から読み取れる。

→ 1段階上げる

評価手順4 期日遅れ → 1段階下げる

字が極端に乱雑、極端に大きい → 1段階下げる

 難易度の低い順に並べ、一つ目の条件を満たしていなかったらD、満たしていたらC、別の 二つ目の要素を満たしていなかったらC、満たしていたらBというように段階を経て評価をす る。評価手順1では、評価者は原則として、レベルCかレベルEを選択するが、迷ったときに レベルDを選択するという形にして、違う評価者が評価をしてもブレが出にくいようにした方 がよいと考える。

 評定のつけ方については、「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料 高 等学校専門教科商業」によれば、3観点の観点別学習状況評価を示したうえで、それを踏まえ て、3観点の評価を数値化し、平均したものを評定にしている。つまり、3観点における配分

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が3分の1ずつとなっている。中学校においては今年度から新学習指導要領における観点別学 習状況評価がおこなわれている。中学校のホームページで開示している評価方法について参考 にしたり、中学校の先生を招いて研修会をおこなうなどの必要がある。

 ③に関しては、年度末に次年度に向けて検討しようとすると忙しさのあまり、検討がおろそ かになり、前年度を踏襲してしまう可能性がある。11月くらいには次年度に向けた改善の検 討を始め、学年末の評定を入れた段階で最終調節をするくらいの進行が良いと思われる。

(3)資格取得

 これまで商業高校で盛んに取り組まれてきた検定指導は、生徒への学習指導の手段の一つで あり、生徒への動機づけとして重要な役割を果たしてきた。

 「新学習指導要領に準拠した公益財団法人全国商業高校協会主催の各種検定試験等のあり方 について(答申)」によれば、「全国商業高校協会が主催する検定試験は、学習指導要領に示さ れた学習の内容や学習の程度を踏まえ出題の範囲を設定し、『知識及び技術』に加え、『思考力、

判断力、表現力等』を問う作問に心がけるなど、学力の3要素をバランスよく育むことを目指 す。」としている。

 しかしながら、生徒は検定試験を受験することで、学習意欲が喚起されることにはなるが、

日ごろの学習の成果を測定することができるだろうか。

「知識・技術」については、教師による説明を受け、基本的な問題を解答して理解を確認すれ ば十分である。「思考力」「判断力」は、例えば、解答を導く際に使用しない資料を盛り込み、

生徒に思考・判断させることで測定することができるが、「表現力」は検定試験の問題の解答 が1つになるように設定されている以上、測定するのは困難である。また、「学びに向かう力、

人間性等」を測定する機能は期待できない。したがって、検定取得が学習の目的になると学習 指導要領の理念とかみ合わなくない部分がでてくる。

 検定試験に挑戦するにあたり、生徒自身が、学習計画を立案し、学習を実行し、単元ごと、

あるいは定期的に学習成果を測定し、理解の状況に応じて計画を修正するといったPDCAサ イクルを回す経験は「学びに向かう力」の育成に有効であり、生涯学習社会を生きていくうえ で重要である。

 「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指すにあたり、資格取得の指導になりやすい会計 分野の授業については、授業時間内で資格取得の指導にかける時間を減らし、「対話的な学び」

や「深い学び」を増やしていく必要がある。資格取得のための学習や補習についても、次年度 以降生徒が1人1台ICT機器を持つようになれば、補習の時間を減らしたり、自宅に帰って からの学習教材を提供することもできる。

4.商業高校が目指す「令和の日本型学校教育」

 令和3年1月の中央教育審議会答申は、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~すべ

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ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現」であり、教育振 興基本計画の理念(自立・協働・創造)の継承、学校における働き方改革の推進、GIGAス クール構想の実現、新学習指導要領の着実な実施を掲げている。

 商業高校が新学習指導要領を実施し、現状と抱えている課題に向き合う上で、「令和の日本 型学校教育」がよいモデルになる。「令和の日本型学校教育」を目指す過程で、多くの課題が 改善されるものと思われるが、商業高校においては課題の改善にととまらず、商業高校の良さ を社会に示しながら解決していけるものと考える。

 多様な生徒が入学してくる高等学校においては、「個に応じた指導」を充実させ、生徒の「個 別最適な学び」が充実するようにしなければならない。

(1)「個に応じた指導」の充実

 これからの学校教育においては、「個に応じた指導」をより充実させることが重要である。

そのためには、生徒一人一人が自立した学習者としてICT機器を活用するとともに、自らの 学習を調整しながら学ぶことができるようにならなければならない。

 「主体的・対話的で深い学び」の実現には、多様な生徒、特に学習の遅れがちな生徒に対し て個別に対応していくことが必要である。そのためには、全ての生徒に基礎的・基本的な知識・

技能を確実に習得させ、思考力・判断力・表現力等や、自ら学習を調整しながら粘り強く学習 に取り組む態度等を育成する必要がある。特に基礎的・基本的な知識・技能が定着していない 生徒は教師の支援が必要であり、より重点的な指導を行うことが求められる。生徒一人一人の 特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行 うことなどの「指導の個別化」をし、きめ細かい指導を実現することが求められる。

 基礎的・基本的な知識・技能や情報活用能力等の、学習の基盤となる資質・能力を土台とし て、生徒の興味・関心に応じ、一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供す ることで、自己の学習が最適となるよう生徒自身が調整する「学習の個性化」も必要である。

(2)GIGAスクール構想

 GIGAスクール構想の実現による新たなICT環境の活用より、「主体的・対話的で深い 学び」を実践しやすくなる。少人数によるきめ細かな指導体制の整備や、「個に応じた指導」

を充実させることができる。その際、資料②にあるように、「1人1台端末」の環境により生徒 一人一人に個別に対応することがしやすくなり、学びの動機付けや幅広い資質・能力の育成に 向けた効果的な取り組みを展開することができる。これにより、個々の家庭の経済事情等に左 右されることなく、生徒たちに必要な力を育むことが可能となる。

 次年度以降入学する生徒は、入学時より1人1台のICT端末を所持している。これによ り、家庭の経済事情にかかわらず生徒が自分専用のICT機器を日ごろから利用できる環境が 整う。

 個別最適な学びにより生徒一人一人に合わせた学習やキャリア教育の充実が図られ、生徒が

(8)

自分自身に必要な学びを認識し、主体的に学習に取り組めるよう意識付けすることができる。

資料② 「1人1台端末・高速通信環境」がもたらす学びの変容イメージ

「1人1台端末」ではない環境 「1人1台端末」の環境 一

斉 授 業

・教師が大型提示装置等を用い て説明し、子供たちの興味関 心意欲を高めることはできる

学び  の  深化 

・教師は授業中でも一人一人の反応を把握 できる。

→ 子供たち一人一人の反応を踏まえた、

双方向型の一斉授業が可能に 個

別 学 習

・全員が同時に同じ内容を学習 する(一人一人の理解度等に 応じた学びは困難)

学び  の  転換 

・各人が同時に別々の内容を学習

・個々人の学習履歴を記録

→ 一人一人の教育的ニーズや、学習状況 に応じた個別学習が可能

協 働 学 習

・意見を発表する子供が限られ る。

・一人一人の考えをお互いにリアルタイム で共有

・子供同士で双方向の意見交換が可能に

→ 各自の考えを即時に共有し、多様な意 見にも即時に触れられる

文部科学省「GIGAスクール構想について」より引用  授業でのICT機器活用の現状であるが、プレゼンテーションソフトを利用して授業用に作 成したスライドの資料を提示したり、動画を視聴したり、クイズ・テスト作成ソフトで小テス トを作成し、理解度を測定するというような活用が多い。また、教師の手本を生徒に見せたい ときに教師の手元を映して提示するような指導もみられる。

 オンラインによる授業が行われるようになってからは、授業の説明を自宅にいる生徒に配信 したり、授業の説明を録画し欠席した生徒や授業内容を理解できなかった生徒に配信するケー スも多く見られるようになった。これらをストックし組み合わせれば、欠席した生徒や理解が 不足している生徒が、後で繰り返し視聴する等の活用もできる。

 教師1人に1台配備されたICT端末で統合型校務支援システムを利用すれば、出欠管理、

成績管理、進路管理、保健・健康管理等さまざまな校務のメニューにより、資料の作成作業や 点検作業の時間が大幅に削減され、教師の事務作業の削減や事故の減少が期待できる。

 また、ICT支援員の存在も大きい。ICT機器の活用について、現在あるハード、ソフト でできることについて教師向けに研修を実施し、さらに、教師側のさまざまな要望や質問に対 して活用方法の提案をするなど、大変参考になっている。今後はそれらをもとに、現状の学校

(9)

教育の中で教育的な視点も踏まえた支援も期待される。

(3)学習指導要領の着実な実施

 「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)【概要】」によれば、高等学校教育段階 において目指す学びの姿として、次の3点があげられている。

①社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力や、社会の形成に主体的に参 画するための資質・能力が育まれる

②地方公共団体、企業、高等教育機関、国際機関、NPO等の多様な関係機関との連携・

協働による地域・社会の課題解決に向けた学び

③多様な生徒一人一人に応じた探究的な学びや、STEAM教育など実社会での課題解決 に生かしていくための教科等横断的な学び

 商業高校においては、高等学校卒業後に就職する生徒が多く、①はすでに行われている。

 ②は商業科目の授業のなかでおこなわれているが、東京都教育委員会は、商業高校の生徒が ビジネスを実地に学べる機会を拡充するために、企業や地域社会と共同し必要な授業支援を行 う組織として「商業教育コンソーシアム東京」を平成30年7月に設置している。

 ③については、STEAM教育に取り組んでいるとは言い難いが、商業科目ではビジネスの 事例を扱うことが多く、その場合、1つの科目にとどまらず、科目や教科を横断することが多 い。また、科目「課題研究」において探究的で教科等横断的な学びはすでにおこなわれている。

 使用する教材については、教科書に準拠した教師用の指導資料や、教科書に合わせた生徒用 の教材の活用を検討した方がよい。これらの教材には優れたものが多く、指導上のノウハウが ふんだんに盛り込まれている。授業用の資料をそのまま活用したり、指導する生徒に合わせて 加工して活用することで、学習指導要領の趣旨に沿った授業が展開できるとともに、教師の教 材研究の時間の短縮につながる。また、同一科目においては共通の教材として活用し校内で指 導内容を均質に保てば、授業実施後の評価等もしやすくなり、授業改善に結びつけやすくなる。

(4)教師の研修

 商業高校の特有の課題として、設置している選択科目数が多く、結果、教員の担当科目の種 類が多くなり負担となっている、という点があげられる。商業科目は20科目で構成されており、

自分の専門領域ではない科目を担当することも多々あることである。「主体的・対話的で深い 学び」を実現するための教授方法はもちろんのこと、科目の指導項目についての研修が必要で ある。商業科目の指導内容は、必要とされる専門的な知識、技術などが変化するだけでなく、

高度化していることから、ビジネスにおける事例や実務について研修が必要である。

 資格試験があるものは専門学校が教材および指導のノウハウを持っており、現在でも教員向 けのセミナーが行われている。総論から各論まで必要性に応じてコンテンツを整えたり、より

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理論的ものや最先端の内容のものについては大学の教員や実務家に講師を依頼するのもよいと 考える。また、オンラインで実施できれば勤務校を離れずに研修でき、受講者も参加しやすく なる。教材のダウンロード、講義のライブ配信等をオンラインで実施したり、オンデマンド型(多 くの専門学校等で動画の教材はすでに存在している)の研修を用意すれば、主催者側の労力も 経費も削減できる。特にオンデマンド型であれば授業の空き時間や放課後、自宅勤務日などに、

場所や時間を選ばずに研修できるようにすることも可能である。

5.終わりに

 商業高校は、新学習指導要領の実施により変革の数年間となる。教師にとっても負担が大き いが、生徒にとっても基本的な学力を身に付けることに加え、学習の中でレポートや発表など アウトプットが多く、負担が大きい。このような中で、GIGAスクール構想によるICT機 器の導入は変革への起爆剤になると考える。補習のような復習にあたる部分や事務作業につい ては、ICT機器に任せられる部分は任せることで、新学習指導要領の理念の実現のために労 力を注ぐことができる。商業高校にとって、新学習指導要領の確実な実施に軸足を置きながら、

これまで大切にしてきた資格取得においても、これまでどおりの成果を出すチャンスである。

 困難を最小限に抑え、生徒がいきいきと学校生活を送り、教師もやりがいをもって教育活動 に取り組めるよう、私自身研究を続け、実践していきたい。また長い間、商業教育に携わって きた者として、これまでの経験を活かし新学習指導要領の理念の実現に向けて精力的に取り組 み、成果を残していきたいと考えている。

(いけだ・ひろし 東京都立芝商業高等学校主任教諭)

<参考文献・参考資料>

・国立教育政策研究所「「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 高等学校専門教科 商業」令和3年8月

・全国商業高等学校協会「新学習指導要領に準拠した公益財団法人全国商業高校協会主催の各種検定試験 等のあり方について」(答申) 平成31年2月2日

・中央教育審議会「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~すべての子供たちの可能性を引き出す、

個別最適な学びと協働的な学びの実現~(答申) 令和3年1月26日

・東京都教育委員会「子供たちに未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む指導と評価の一体化 を目指して」令和2年11月

・西村修一監修「商業科教育法-理論と実践―」 東京法令出版 令和3年

・文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年度告示)解説 商業編」 平成30年7月

・文部科学省「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録 の改善について」(通知) 平成31年3月29日

・文部科学省「GIGAスクール構想について」 令和2年7月7日

参照

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