通勤混雑による電車遅れモデルと丸ノ内線への適用
10D8104017B 浦野俊平
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室
2014
年3
月1
序論東京メトロは,9路線
195.1km
の地下鉄ネットワーク を形成し,1日に631
万人(2010年度実績)の利用者がい
る.その中で,丸ノ内線は朝ラッシュ時間帯において,最 短で1
分50秒間隔という極めて高密度な列車運行を行っ ている.このような背景もあるのか,朝ラッシュ帯の丸ノ 内線に乗ると遅延している様子がよく見られる.本研究では,丸ノ内線における遅延を考慮した運行スケ ジュールを作成する.また,朝ラッシュ帯における遅延状 況の実測データと比較することで,新たに作成した運行ス ケジュールが実際の遅延状況に対応できているかについ て考察する.
2
使用データ2.1
丸ノ内線の遅延状況調査データ朝ラッシュ時間帯の丸ノ内線の遅延状況について現地 調査を行った.日時は,2013年
9
月9
日と9
月10
日の 朝7
時30
分‐9時に実施した.9日は中野坂上駅,新宿 駅,国会議事堂前駅の3
駅,10日は赤坂見附駅,東京駅 の2
駅の各ホームに人員を1
人配置し,到着時刻,発車 時刻,時間調整の有無を調べる.2.2
大都市交通センサスからの乗車,降車人数データ2.2.1
大都市交通センサス本研究では,平成
17
年に実施された第10
回大都市交 通センサスのデータの中から鉄道定期券利用者調査,鉄道 普通券利用者調査,鉄道駅名データ,鉄道路線名データを 用いる.2.2.2
利用電車割り当てアルゴリズム大都市交通センサスのデータをそのまま利用しただけ では,途中で乗り換えて丸ノ内線に乗車した人々の乗車時 間がわからないという問題がある.この点を解決するため に,センサスデータから得た
OD
交通需要を,時空間ネ ットワークに割り当てる.各利用者について,出発駅から 到着駅への最短経路を求め,その経路に交通需要を付加す る.ただし,利用電車種別および利用路線,出発時刻につ いては,センサス通りに利用者毎に設定する.3
各データからの考察3.1
列車内人数の推移2.2
節にて説明した大都市交通センサスのデータから,丸ノ内線の出発駅から終着駅までの各駅における乗車人 数,降車人数,列車内人数のデータを抽出した.列車内人 数は,以下の式から導き出す.
列車内人数=前の駅での列車内人数
+当駅での乗車人数-当駅での降車人数 図
3.1
は,7時-8時の丸ノ内線荻窪方面の各駅での列 車内人数を表したものである.図3.2
は,8時-9時の丸 ノ内線荻窪方面の各駅での列車内人数を表したものであ る.列車の本数が多いので,2
本に1
本の列車を図に表示 する.図
3.1 各駅での列車内人数(7
時‐8時)図
3.2 各駅での列車内人数(8
時‐9時)図
3.1
より,各駅での列車内人数の推移について,全て の列車でほぼ同じ動きをしていることがわかる.池袋駅,東京駅,新宿駅において列車内人数が大きく増えているこ とがわかる.つまりこれら
3
つの駅では,降車人数に対し て乗車人数が非常に多いと言える.逆に,列車内人数が大 きく減っている銀座駅,霞ヶ関駅,国会議事堂前駅,中野 坂上駅,新中野駅では乗車人数に対して降車人数が非常に 多いと言える.図
3.1
に対して,図3.2
では列車内人数が全体的に増え ていることがわかる.しかし,各駅の列車内人数の推移に 関しては,図3.1
と同様の動きをしている.これより,朝 ラッシュ時間帯に,ホームが非常に混雑する駅が特定でき ると考えられる.そして,そのような駅の後に余裕時間を 置くことが最適であると推測できる.3.2
各駅における遅延状況朝ラッシュ時間帯において,各駅で遅延がどの程度発生 しているかを観察するために
2.1
節で説明した実地調査から得られたデータをグラフ化し,3.1節で表した列車内 人数のグラフと比較することで列車内人数と遅延の関係 性を考察した.
その結果,遅延時間の発生や増加と,乗車人数,降車人 数,列車内人数は関係性が高く,遅延問題を考える上では 重視しなければいけない点の一つであることがわかった.
3.3
各駅における乗車人数,降車人数,列車内人数3.2
節のグラフから遅延時間が長い時間帯の列車を1
本 取り出し,3.1
節のグラフからその時間帯に近い路線を探 し出し,1 本の列車の各駅における乗車人数,降車人数,列車内人数をグラフ化し考察した.
その結果,乗車人数が多かったのが,池袋駅,東京駅,
新宿駅である.特に東京駅に関しては降車人数の方も多く,
最も乗降時間がかかる駅であると考えられる.降車人数の 推移についても違いが見られ,朝ラッシュ帯の中でも時間 帯別で降車人数が多い駅が変わるということがわかった.
4
遅延計算モデルによる運行スケジュールの作成4.1
遅延計算モデル4.1.1
概要本研究の目的である遅延を考慮した運行スケジュール を作成する方法として,遅延計算モデル[1]を用いる.遅 延計算モデルでは,最も乗降の多い扉における乗降人数と 電車の混雑度から,駅での停車時間を算出する.一方,各 駅間の標準所要時間と,時刻表から得られる各駅の出発時 刻を用いて,各駅における調整時間を推定する.調整時間 よりも停車時間の方が長くなった場合に遅延が発生した ものとして,遅れた分だけ電車の出発時刻を遅らせるとと もに,後続電車との間隔を一定時間以上開けた電車の運行 を再現する.これにより,遅延を考慮した時刻表を作成す る.
4.1.2
停車時間関数最も混雑した扉の乗降人数を
x
(人),車内人数をz
(人)とするとき,駅における停車時間
D
(秒)を以下の式によ り導出する.D = −0.0031𝑥
2+ 0.7908𝑥 + 0.003𝑧 4.1.3
標準所要時間「慢性化している」遅延に対して,鉄道会社側も予め遅 延を考慮した時間(以下,調整時間と呼ぶ)を含んだ時刻 表を策定していると考えられる.時刻表から得られる各駅 間の出発時刻の差を駅間の所要時間とし,その所要時間か ら同駅間の標準所要時間を減じた時間を調整時間と仮定 して,各駅における調整時間を推定する.
4.1.4
遅延計算アルゴリズム遅延計算アルゴリズム[1]は,混雑によって引き起こさ れる遅延を計算し,遅延時間にともなってネットワーク構 造を変化させることによって,遅延を含んだ電車の運行を 再現するものである.
4.2
遅延を考慮した運行スケジュール7
時-9時の丸ノ内線荻窪方面の時刻表データから,4.4
節のアルゴリズムを用いて,運行スケジュールを作成した.図
4.1
に東京駅における新たな運行スケジュールの各発 車時刻での余裕時間と,3.2 節の実際の遅延状況を示す.図
4.2
に中野坂上駅における新たな運行スケジュールの 各発車時刻での余裕時間と,3.2
節の実際の遅延状況を示 す.余裕時間とは,各発車時刻において変更後の時刻表が 変更前の時刻表に新たに加えた調整時間のことである.図
4.1
東京駅における余裕時間と実際の遅延時間図
4.1
から,遅延時間が増加している場所である8
時8
分,8時26
分,8時31
分,8時43
分あたりの直後に余 裕時間を持たせられていることがわかる.つまり,この運 行スケジュールは遅延を抑えるのに効果的であると考え られる.図
4.2 中野坂上駅における余裕時間と実際の遅延時間
3.2
節の結果では,中野坂上駅において8
時以降に大き な幅の遅延が複数回ずつにわたり発生している.この複数 回ずつ起こる遅延に対し,運行スケジュールは余裕時間を 少し持たせて,遅延がおさまったら元に戻すといった組み 方をしている.5
まとめ本研究では丸ノ内線における遅延を考慮した運行スケ ジュールを作成した.
まず,丸ノ内線の朝ラッシュ帯における実際の遅延状況 のデータを集めた.次に,大都市交通センサスのデータか ら,乗降人数,列車内人数を抽出し,各駅における必要な 停車時間を計測し,遅延計算アルゴリズムを用いて運行ス ケジュールを作成した.そして,作成した運行スケジュー ルが,現在起きている遅延に対して対応しているかを考察 した.結果は,東京駅,国会議事堂前駅,中野坂上駅にお いて,遅延を十分に考慮した運行スケジュールを組むこと が出来ていた.
参考文献
[1]中村
幸史,
通勤電車運行スケジュールにおける遅延計算モデルの構築