Orlicz
空間 〜Lebesgue
空間の一般化〜Orlicz space - a generalization of Lebesgue space -
関数方程式研究室
BV16079
横田尚哉 指導教員:
竹内慎吾 教授1
はじめにOrlicz
空間はLebesgue
のL p
空間の自然な拡張である.
Orlicz
空間を考察していくためには,
主に関数解析や測度論の知識が重要になる
.
またOrlicz
空間にノルムを導入する ことでBanach
空間となることや, Lebesgue
のL p
空間 で よく知られているH¨ older
の不等式をOrlicz
空間でも扱え ることを述べていく.
本研究ではOrlicz
空間の定義や様々 な補題を述べるのに[2]
を,
またOrlicz
空間に関する必要な 知識などをまとめるために[1], [3], [4]
を参考にした.
2 Young
関数定義
1.
関数Φ : [0, ∞ ) → [0, ∞ ]
は次の形で表されるときYoung
関数とよばれる.
Φ(t) =
∫ t 0
φ(s) ds (0 ≤ t < ∞ )
この被積分関数
φ
はYoung
関数Φ
の左導関数とよばれ,
次の条件を満たすとする:
•
区間[0, ∞ )
上で定義され, [0, ∞ ]
に値をもつ非減少 関数.
• φ(0) = 0,
区間(0, ∞ )
で左連続.
ただし(0, ∞ )
上でφ ̸≡ 0, φ ̸≡ ∞ .
また
,
このφ
の左逆関数ψ
を次のように定義する. ψ(u) = inf { s > 0 : φ(s) ≥ u } (0 ≤ u < ∞ )
このとき,
関数Φ e
をΦ(t) = e
∫ t 0
ψ(u) du (0 ≤ t < ∞ )
と定義する
.
このΦ e
はまたYoung
関数となり, Φ
の 共役Young
関数とよばれる.
Young
関数は, t = 0
の近傍でΦ(t) = 0
となる場合や, t
が十分大きいときΦ(t) = ∞
となる場合も考えられる.
3 Orlicz
空間測度空間
(X, µ)
について, X =
∪ ∞ j=1
X j , X 1 ⊆ X 2 ⊆
…
⊆ X j ⊆
…, µ(X j ) < ∞
を満足するX
の可測部分集 合列{ X j : j ≥ 1 }
が存在するとき, µ
をσ-
有限な測度, (X, µ)
をσ-
有限な測度空間という.
以下では
X
上で定義された実数の値をとる可測関数を主 として取り扱うこととする.
定義
2. (X, µ)
をσ-
有限な測度空間, Φ
をYoung
関数と し, ε > 0
とする. X
上で定義された実数値関数で,
∫
X
Φ(ε | f (x) | ) dµ < ∞ (1)
となるf
の全体をΦ(εL)
で表し, Orlicz
クラスとよぶ.
ま た, Orlicz
空間L Φ (X, µ)
は,
L Φ (X, µ) = ∪
0<ε< ∞
Φ(εL) (2)
によって定義される
.
すなわち,
関数f
がL Φ (X, µ)
に属す るとは, ε > 0
を十分小さくとったとき, (1)
が成立すること を意味する.
明らかに,
Φ(L) ⊂ L Φ (X, µ) (3)
が成り立つ
.
ただし, Φ(L) = Φ(1 L)
である.
Φ(3L) Φ(2L) Φ(L) LΦ(X, µ)
図
1 Orlicz
空間Orlicz
空間の簡単な例を紹介する.
1 ≤ p < ∞
とし, Φ (t) = t p (0 ≤ t < ∞ )
と定める.
この とき,
定義2
の(1)
を用いて計算すると,
∫
X
Φ(ε | f (x) | ) dµ = ε p
∫
X
| f (x) | p dµ < ∞
で あ る か ら, Φ(εL) = L Φ (X, µ) = L p (X, µ)
と な る.
つ ま り こ の 場 合, Orlicz
空 間 は 通 常 のLebesgue
空 間L p (X, µ) =
{ f :
∫
X
| f (x) | p dµ < ∞ }
となる
.
Orlicz
空 間 で 扱 え る 関 数 の 自 由 性 は 高 く,
通 常 のLebesgue
空間などで取り扱う関数も含め,
より多くの関数を取り扱うことが可能である
.
命題
3. Φ
をYoung
関数とするとき, Orlicz
空間L Φ (X, µ)
は, Orlicz
クラスΦ(L)
を含む最小の線形空間となる.
証明は
, f, g ∈ L Φ (X, µ)
に対し, (2)
より正数ε 0
を選 び,
線形空間になることを示す.
また, Φ(L)
を含む任意の 線形空間をM ((3)
よりL Φ (X, µ)
もそのひとつ)
としてL Φ (X, µ) ⊂ M
となることを示し,
最小性を導く.
4 L-N
ノルム定義
4. Φ
をYoung
関数とする. f ∈ L Φ (X, µ)
に対して,
|| f || L
Φ(X, µ) = inf {
λ > 0 :
∫
X
Φ ( 1
λ | f (x) | )
dµ ≤ 1 }
と定める
.
これをf
のLuxemburg-Nakano
ノルム(
略 してL-N
ノルム)
とよばれる.
L-N
ノルムは実際にノルムの条件を満たすことが証明できる
. L-N
ノルムを導入することで,
次の定理が成り立つ.
定理
5. Φ
をYoung
関数とするとき, Orlicz
空間L Φ (X, µ)
はL-N
ノルム|| · || L
Φ(X,µ)
に関して完備となり, Banach
空 間となる.
証明は
,
測度の性質とFatou
の補題等を用いて導く.
さらに,
このL-N
ノルムを用いて, Orlicz
空間の例をも う1
つ命題として述べる.
命題
6. Young
関数Φ
をΦ(t) = t (0 ≤ t < ∞ )
とする.
こ のΦ
によって定められるOrlicz
空間はLebesgue
の可積 分空間L 1 (X, µ)
である.
また,
その共役Young
関数Φ e
はΦ = e {
0 (0 ≤ t ≤ 1)
∞ (1 < t < ∞ )
となり,
次の等式が成立する.
L Φ e (X, µ) = L ∞ (X, µ), || f || L
Φe(X,µ) = || f || L
∞(X,µ)
ここで
|| f || L
∞(X,µ)
は|| f || L
∞(X,µ) = inf { λ > 0 : µ { x ∈ X : | f(x) | > λ } = 0 }
により定義される.
証明は
, L-N
ノルムや|| · || L
∞(X,µ)
の定義を用いて導く.
また
, L-N
ノルムとは別のOrlicz
ノルムとよばれるものがあり
,
この2
つのノルムは同値になる.
定義
7. (X, µ)
をσ-
有限な測度空間とする. Φ
をYoung
関数, Φ e
をその共役Young
関数とする. X
上で定義された 可測関数f ∈ L Φ (X, µ)
が次の式をみたすとき, Orlicz
ノ ルム|| · || Φ (X, µ)
とよぶ.
|| f || Φ(X,µ) = sup {∫
X
| f (x)g(x) | dµ :
∫
X
Φ ( e | g(x) | ) dµ ≤ 1 }
5 H¨ older
の不等式命題
8. ( L p (X, µ)
でのH¨ older
の不等式) 1 ≤ p < ∞ , 1
p + 1
p ′ = 1
とする.
ただし, p = 1
の場合に は, p ′ = ∞
とする.
このとき, Lebesgue
空間のL p (X, µ)
における
H¨ older
の不等式は次の不等式で与えられる.
∫
X
f (x)g(x) dµ
≤ || f || L
p|| g || L
p′f ∈ L p , g ∈ L p
′(4) Orlicz
空間L Φ (X, µ)
の関数に対してH¨ older
型の不等 式を考察すると, L p (X, µ)
でのH¨ older
の不等式と似た, Orlicz
空間におけるH¨ older
の不等式を導くことができる.
定理9. ( Orlicz
空間でのH¨ older
の不等式)
Φ
をYoung
関数, Φ e
をΦ
の共役Young
関数とするとき, ∫
X
f (x) g(x) dµ
≤ 2 || f || L
Φ(X,µ) || g || L
Φe(X,µ)
が全ての
f ∈ L Φ (X, µ), g ∈ L Φ e (X, µ)
に対して成立する. Φ(t) = 1
p t p (1 < p < ∞ )
とする.
このとき,
その共役Young
関数はΦ(t) = e 1
p ′ t p
′(
ただし
, 1 p + 1
p ′ = 1 )
とな る
.
ここで, L-N
ノルムを考えOrlicz
空間におけるH¨ older
の不等式を計算すると,
∫
X
f (x)g(x) dµ ≤ 2
( 1 p
)
1p( 1 p ′
)
p′1|| f || L
p|| g || L
p′となる
.
ここで,
右辺の係数部分に着目する. p = 2
のとき, Schwarz
の不等式((4)
でp = 2
としたもの)
を導くことが できるが, p ̸ = 2
のとき,
係数部分が1
より大きくなり(4)
よりも弱い評価になってしまう.
このようにL-N
ノルムとLebesgue
のL p
ノルムとの間にある定数倍のズレのために
,
最適なH¨ older
の不等式が得られない場合があることに注意する
.
6
まとめOrlicz
空間は実際にLebesgue
のL p
空間の拡張になっている