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課題認識と教科観の形成

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課題認識と教科観の形成

著者 青木 幸子

雑誌名 東京家政大学博物館紀要

巻 15

ページ 55‑72

発行年 2010

出版者 東京家政大学博物館

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010309/

(2)

1.はじめに

 1991(平成 3)年の指導要録の改定を機に、学力の捉え方が変化した。従来の実体的学力観から 機能的学力観の重視へと転換したのである。安彦忠彦によれば、実体的学力観とは①読み・書き・

計算をはじめ、②要素的な知識・技能と基本概念、並びに③文化的常識の3つを強調する学力の捉 え方である。一方、機能的学力観とは①見方・考え方・調べ方・学び方・まとめ方など「能力目標 として掲げてきたもの」や②思考力・判断力・選択力・転移力・表現力・創造力などの「主体的で 力動的な能力」=「創造的認知能力」、③関心・意欲・態度・価値などの態度的なものを重視する 学力の捉え方である。1)

 1989(平成 1)年改訂の学習指導要領では「ゆとり」の中で「生きる力」を育成することが目指 され、自ら問題を見つけ、考え、解決する能力の育成が強調された。この生きる力は、子どもの主 体的で個性的・個別的な学びを求め、知識の理解を重視する授業から子どもが自分で意欲的に学び とる「自己教育力」(自らを鼓舞しながら学び続ける姿勢)を重視する授業へと授業観の変革を伴 うものであった。受動的な学びから能動的な学びへの転換である。

 学習指導要領とそれに続く指導要録の改訂は、学習における「自己教育力」の育成に対応すべ く、学習状況の評価のうち「関心・意欲・態度」が第一に据えられた。学力観の変更は、授業観、

評価観の変更を伴うものであり、学習者を主体とした主体的で個性的・個別的な学びは、学習の多 様性を認める変革であった。

 そのような学びを創出するためには、教師もまた指導内容に対する柔軟性を確保している必要が ある。広い視野から多角的にものを見つめ、アプローチする方法を習得していることが求められ る。子どもに「自己教育力」を求めるのであれば、教師もまた「自己教育力」を磨き、ブラッシュ

青木 幸子

Investigation Work and Competence Formation in Home Economics Teacher Training Course(2)

The Recognition of Problem and Formation of Home Economics View

Sachiko A

OKI

家庭科教員養成における探究学習と力量形成(2)

課題認識と教科観の形成

栄養科 家庭科教育研究室

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アップを図る意欲に溢れているほうが好ましい。

 このように教育現場と連動した力量の向上を図ることも教員養成課程の責務である。養成課程に おける学びの体験が、教育現場における子どもの学びの創造に投影され、主体的で個性的な学びの 創出に繋がると考える。

 本稿では、前報2)に引き続き、教科指導に関する主体的、個性的な学びの創出に資する資質・力 量を育成するために不可欠な教科観の確立を目指した探究学習について、質的研究法を援用するこ とにより分析し、探究学習の有効性を検討することを目的とする。

2.研究方法

(1)研究対象

 平成21年度家政学部「家庭科教育法Ⅳ」履修者59名 

(2)研究方法

 当該科目の探究活動において試みられた、課題設定、探究計画、探究方法と問題場面への対応と の関連性について、研究報告書の記述内容の分析を試み、その関連性を追検証する。

3.授業のねらいと授業展開の概要

 「家庭科教育法Ⅳ」のねらいは、家庭科観の確立であり、そのための学びとして探究学習を取り 入れた。授業における学生の学習活動の概要は、既報のとおりであるが、要点を再掲する。

(1)ねらいと学び

 授業における学生の参画を促し、学ぶ意欲を喚起し、学ぶことの喜びや達成感を体得し、自己教 育力の育成につながることを願い探究学習を採用した。

 家庭科観の確立とは、まさに学生一人ひとりの主体的で動的な学びを創ることにより、認識と価 値観の形成を促しながら経験の再構成を触発し、実践的指導力の基盤となる資質・力量の基本を培 うとともに家庭科に対する自身の基本的スタンスを確立することを意味する。

(2)問題場面

 学校現場で校長や他教科の教師から、次のような質問を受けました。

「現行のカリキュラムでは総合的な学習の時間ができて、家庭科で教えていることは総合 学習の中でもやれるんだよね。足りないところは家で母親が教えればいいと思うけど。授 業時数が足りなくて困っているんだよね。家庭科は入試に関係ないし、学校でわざわざ教 えなくてもいいと思うんだ。どうしてもと言うんだったら家庭科の授業時数減らしてくれ ない?」

 上記の問題場面に対する回答(自身の対応)を引き出すことを最終目的とする。探究課題は、家 庭科教育法での学習はもとより、生徒の生活実態や社会の状況、学校現場の課題なども踏まえて、

学生がもっとも興味・関心のあるテーマを自ら選定し、意欲を持って探究活動をすることで、問題

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場面と関連づけながら、家庭科観の確立を目指そうとするものである。

 以下、(3)探究課題の設定、(4)探究計画の立案と発表、(5)探究活動とプレゼンテーション、

(6)課題研究報告書の作成と提出へと続くプロセスは前報の通りである。

5.家庭科観形成への探究活動の足跡

 上記(1)〜(6)の探究活動の成果として提出された研究報告書の探究課題の一覧は表1のとお りである。個人で探究活動に取り組むケースと類似した課題意識を持つ者がグループで取り組む ケースがあり、59 名の履修者に対して 30 の探究課題が設定された。表 1 から分かるように、食生 活分野への興味・関心が高い学生が多いが、保育を除き家庭科の分野を網羅する内容について課題 が設定されている。この中から課題が重複せず、しかも教科観の形成が満足すべきレベルにあった 4つの事例を取り上げ、家庭科観の形成と問題場面への対応に至るプロセスを分析する。

 表 2 は、4 事例の研究報告書の内容を項目ごとに分析したものである。各欄の記載内容は、筆者 がその報告書の記述内容からキーワードを拾い、要約して表したものである。

No. 探究課題

1 食の重要性

2 家庭科教育が生徒に及ぼす影響 3 家庭科への食中毒からのアプローチ 4 現代における食の問題

5 食事の選択

6 男女での家庭科の必要性や興味の差について 7 生活に必要な知識・実践的な態度について 8 消費行動における家庭科教育の在り方 9 家庭科必要とされる背景には 10 家庭科の評価の特性と工夫 11 衣食住に関わる生活文化の歴史 12 高齢社会における家庭科教育の必要性 13 調理実習の意義と生徒の意識 14 家庭教育と家庭科教育の違いについて 15 生徒から見た家庭科を学ぶ意義 16 調理のいろは

17 装う―豊かな家庭と暮らし―

18 男女共同参画社会に向けて―家庭科の必要性―

19 家庭科観のギャップ―社会・生徒・教師―

20 食育と栄養バランスから見た家庭科の必要性 21 消費と環境―エコロジーの視点から―

22 家庭科教育=生きる力

23 家庭科を通して家族との関わりについて考える 24 家庭科に対する関心の希薄さをどう克服するか 25 もしも、家庭科がなくなったら…。

26 食の乱れ

27 高齢化社会について

28 男女の食文化や家庭科観の意識の違い 29 食品添加物について

30 教師と生徒の家庭科の捉え方 表1 2009年度探究課題

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事例探究課題課題設定の理由探究計画探究方法家庭科観家庭科教師としての抱負問題場面への対応評価(自己相互)事例1高齢社会における家庭科教育の必要 *高齢社会の進展見、齢者への否定的イメー*教育による高齢期齢者へのイメージの変期、しく向き合うための教育の必要性 1.高齢社会の実態2.生徒の実態3.科のあり方4.まとめと今後の課題 *調査研究ンター*文献研究*教育実習体験 家庭科は高齢期を途切れるこる。「自上」け、者、生を考える契機となる より生活に身近な教科として、情収集を惜しまない  、家生をよりよく生きていくことつ。も、で、す。H.P.F.H.J.総合的な学習と連携を図ることで、生徒の意識の変革を促す 計画的集中的に探究活動ができた。高齢社会への関心が高まり、き、た。科のほかに保健体育など他教科での扱いを調べることで家庭科の重要性が明らかになったのではないか 事例2調理のいろは*女性の社会参加の拡大*親から子への家庭技術の伝達は可能か*調理の基礎と家庭科の必要性 1.調用語と調理技術の理解2.親の実態の分析3.親の年代別時代背景4.まとめ *調査研究*文献研究 慣、る。「生活」は、たった一つの正解があるわけい。り、”豊活”え、めに必要 一方的に知識を叩き込むことり、。家は健全で文化的生活の礎となり、学びたくなるような内容や教し、立てていけるような教師になりたい 「家て、りないところは家で母親が教る」は、い。も、け、。時り、間で補うのでなく時間を確保して教えることが必要 保護者対象の調査でサンプル(102名)、年数も統一できなかったのが反省。で、く、であることが明確になった。時代とともに家庭科も変わり、家庭科は生きていると感じた

事例3消費と環境エコロジーの視点から *環境問題とエコブーム*環境問題への関心*環境問題の確認と解決*私たちにできること 1.様々な環境問題と関心2.環境問題行動と対策3.コ、環境へ *文献研究*調査研究ンター は、と、方、ど成長に合わせた内容が盛りん。り、ト。り、問う関わりができる 自分の価値観を押し付けるのく、と、価値観を見つけられるように導けたらいい と、の教科でできることの限界をえ、る。、人し、にしたい て、た。動を通して企業の環境への取組や施策も様々であることをた。ような環境問題の現状を伝えた。探究したよさを感じた

事例4教師と生徒の家庭科の捉え方 *良妻賢母主義教育から男女がともに学ぶ家庭科へ*単位数の削減や履修漏れなど教育現場の実情*教師と生徒の家庭科に対する認識 1.科の理解2.調査内容の分析3.究(男科、のモチベーション、座学と生徒主体の授業づくり)4.まとめ *文献研究*調査研究ンター A:家庭科は時代を反する科。て、は、る。科。、家で、る。は、る「人間教育」の側面が強いB:姿得など総合的に学ぶことが出が、る。り、であるC:も、る。将来の生活に大きな影響を与え、り、教科である 時代のニーズに合わせた幅広る。く、激のある授業づくりができる研究熱心な教師でいたい探究活動を通して予想以上にた。期待に応えられるよう家庭科し、い、が出来るよう精進していきた調査結果や教育実習から生徒む。く。た、定着するよう復習の機会を設けていきたい 家庭で家庭科を教えると生徒る。も、り、ることは生徒の将来に悪影響を与える家庭科は生きる力と自立するり、これが出来るのは家庭科だけす。す訳にはいきませんは、る。親、使方、時数や授業内容を考える必要がある 積極的に取り組むことができた。き、4年を見つめ直し、自分の考えを確立することができたことを嬉しく思う高校でアンケートの許可が得ず、ができなかった探究活動記録とそれぞれの評り、が、ると、チームワークよく実施されたことが分かる 2 探究活動の足跡

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 事例1・2・3は個人研究、事例4は三人による共同研究である。

(1)設定課題の特徴

 「探究課題」にみられるように、事例1〜3は、高齢者、食生活、消費と環境という家庭科の固有 の分野に照準を当てながら家庭科のあり方を探る探究活動であり、事例4は教育現場における教師 と生徒の家庭科の捉え方の違いから、家庭科の将来像を探る探究活動である。

(2)探究の過程と活動

 「課題設定の理由」「探究計画」「探究方法」から各事例の特徴を把握する。

1)事例1

 事例1は、世界に例を見ないスピードで高齢化が進行している我が国において、家族形態の変化 と相俟って高齢者に対する理解が不十分である。その結果、高齢者に対して先入観や偏見による否 定的イメージが醸成されていくことも現実である。ますます高齢化率が上昇していく我が国におい て、若い世代が高齢者や高齢期を正しく理解し、高齢者を肯定的に捉えて高齢社会に対峙していく とともに、自らの高齢期の設計を考えさせる力を養うことの重要性から課題が設定されたものであ る。

 したがって、文献研究はもとより実証的研究成果を援用しつつ、教育実習での授業実践などを通 して探究活動が行われ、「高齢社会における家庭科教育の必要性」に言及した取り組みとなってい る。文献研究では、高齢社会の実態について、高齢化の現状、高齢化の推移と将来推計、高齢世代 人口と生産年齢人口の比率、平均寿命の推移と将来推計、世界の高齢化率の推移、家族形態の推移 から理解を深めた。

 また、外国での「学習と高齢者に対する偏見の関わりについての調査」結果では、「教育は高齢 者についての誤解や無知をなくすのに効果がある」、つまり「高齢者に対する差別的見方は子ども たちの学年が上がるに従って低下する」との結論が導き出されている。この仮説を基にした我が国 の調査結果は、先の結論とは反対に学年が上がるほど高齢者に対する肯定的な見方は低下し、否定 的な見方が増大していく結果となった。社会で得る情報や学校教育における学習内容に問題はない かと、探究は続く。

 ある書物の内容を引用し、「残念ながら我が国で現在使われている小中高の『社会』の教科書は、

高齢者・高齢社会についてネガティブな、他人事としての記述が成されており、自らの未来の課題 として位置づけはされていない。このことが、子どもたちの学年が上になるほど肯定的得点が下が り、否定的得点が上がる要因の一つになっていると考えられる」ことを一つの理由としている。

 そして、家庭科における高齢者・高齢期の取り扱いを学習指導要領により確認し、「家庭科では、

高齢期を途切れることのない流れの中の一過程として捉えている。そして、学習の根底には『高齢 期とは自分自身の生活の延長線上にあり、特別なものではないこと』という意識を持たせることが 必要になってくるだろう。その点でも生活という最も身近な部分から考えさせることができる教科 である家庭科が果たす役割は非常に大きいのではないだろうか」「高齢者との異世代交流を持ち、

家族や他者だけではなく自分自身の人生・将来を考えるきっかけにもなるのではないかと思う」と

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結んでいる。

 本事例は、文献3冊、インターネット5件を活用した探究活動であった。

2)事例2

 事例2は、問題場面のうち、家庭科は入試に関係なく、家で母親が教えればいいという教師の言 葉に敏感に反応した探究活動である。

 近年の親や子どもを取り巻く環境実態の中で、はたして親が子に教えることができるか、親から 子への伝承はどのように行われているかに照準を当て、きわめて実証的に探究が進められた。

 「家で母親が教えればいい」という教師の潜在意識には、家庭科 = 家事労働 = 女の仕事 = 女教師 なら誰でも指導できる、という性別役割分担意識がしっかりと息づいているのを確認することがで きる。家庭科の内容は、親が教えきることができる内容なのかが、まず問われなければならない。

教師といえども、他教科の内容に関して詳細を理解しているわけではないからである。

 そこでまず、高校生を持つ親を対象に調理用語と調理技術の理解度に関するアンケート調査が実 施された。親が教えられるであろうと考えられる調理に関する基礎的理解度でさえ、驚くべき結 果が示された。まず、毎日の生活における調理頻度では、「毎日する」が約80%、「週1日以下」と

「しない」が約 10%、年代別では 30 代が最も頻度が少なく 58%、40 代は「毎日する」88.9%、「し ない」11.1%でともに最も高い。調理技術の伝承については、「親に教えてもらったことがある」

18%、「親以外の親族」8%、「親と親族の両方」63%、「両方ともない」11%で、年代別では60代の 全員が「親」「親と親族」から教わっているが、50代以下は「両方ない」が見られ、40代は22%で ある。伝承時の年齢は 7 〜12 歳の小学生時(38%)と 19 歳以上(39%)に分かれ、時期に特徴が 見られる。年代別では 40 代では 19 歳以上が 45.5%、30 代では 7〜12 歳が 41.7%で 40 代と逆転して おり、しかも30代は低年齢化の傾向が見られ、12歳までに58.4%が教わっている。

 こうした親の伝承実態から、各年代の子ども時代が高度経済成長の時期と重なり、インスタント 食品などの加工食品の隆盛や学歴社会の浸透と決して無縁ではないことを分析している。

 翻って、その親からわが子への調理技術の伝承を尋ねた。わが子に「教えたことがある」62%、

「ない」38%であり、年代別では「ない」が 40 代で 33.3%、30 代では 100%である。今でも子ども に教えている割合は92%に及ぶ。

 そこで、基本的な調理用語について親の理解度を調べた。日常的な調味料に関する「さ・し・

す・せ・そ」の正解 58.5%、三杯酢 55.8%、板ずり 55.0%、乱切り 46.2%、三枚おろし 82.5%で全問 正解者は102名中2名のみで、年代は40代・50代各1名である。

 このような実態を踏まえ、家庭での伝承機会は減少傾向にあり、もっとも身近な調理技術でさえ 教えられる内容は限定され、しかもその内容に不安が残ることは明らかであり、家庭科で定期的 に、しかも一定水準を保持した内容を提供する必要があるとの結論を得た。他分野の内容を考え合 わせると、豊かな人間形成や社会生活を送る上でも家庭科教育は必要であると結んでいる。

 本事例は、アンケート調査(高等学校、カルチャースクールで3回実施)、文献2冊を活用した探 究活動であった。

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3)事例3

 事例3は、地球環境全体にかかわる重要な課題解決を迫られている状況を背景に、実際の環境問 題への関心の把握と問題解決への具体策を検討した探究活動である。

 探究の過程は、さまざまな環境問題と関心の度合いを把握し、環境問題を引き起こす行動とその 対策、そして持続可能な開発と消費に向けたあり方の提案へと組み立てられている。

 数ある環境問題を把握したのち、関連機関の調査資料から我が国の環境問題への関心度を調べ た。その結果、地球環境問題への関心は「非常にある」「ある程度ある」を合わせて約85%と高く、

年代が高くなるほど関心が高まる傾向が確認された。しかし、20 代の男女、40 代の女性の関心が 低いことが明らかになった。さらに、環境問題のテーマ別関心度を見ると、「地球温暖化」が群を 抜いて高く、「ゴミの増大」「リサイクルの推進」「大気汚染」「省エネルギー」がベスト 5 であり、

何れも女性の関心が男性より高い。また、関心のテーマを男女別に見ると、身近な問題への関心は 女性が、「産業廃棄物の処理」「クリーンエネルギーの開発・実用化」などへの関心は男性の方が高 い。

 そこで、次に関心の高かったテーマについて、問題が引き起こされる原因や環境問題への関連に 言及し、問題解決に繋がる一人ひとりの行動対策を述べている。さらに、国や地域、企業の取り組 みを紹介し、「消費活動は人為的なものが大半であるが、人が作り出したからこそ、エコに変え、

環境に戻すことができるのではないか。人間が生きてゆくためには、決して避けることのできない 環境問題。人間の消費生活が行われると同時に環境問題も確実に進行している。自然と親しみ、で きることをしようとする考えと行動がエコロジーである。」と「消費からエコ・エコから環境へ」

という私たちの消費活動に対する意識と行動の変容を説いて締めくくっている。

 本事例は、文献4冊、インターネット2件を活用した探究活動であった。

4)事例4

 事例4は、家庭科教育の歴史と現在の教育改革の方向性や履修漏れなど教育現場の状況を背景に、

教師と生徒の家庭科の捉え方に照準を当て、今後の家庭科のあり方を探るために行ったグループに よる探究活動である。

 このグループは、調査に先立ち仮説を立てた。つまり、教師は、家庭科の授業時数や単位数を減 らしてもよいと考える人がかなりおり、生徒は、家庭科は身近な教科であるが受験科目ではないた め、息抜きとして捉える割合が多いであろうとの仮説の下に研究を始動した。

 そのため、教師や生徒の意識調査をすることから始めた。調査対象者は、教育実習校2校の高校 2年生106名と教師35名である。

 その結果、教師の(子ども時代の)家庭科への好嫌度は、「好きだった」が男女とも9名(25.7%)

であり、「家庭科は女子のみがやるべきだと思う」「家庭科は母親が教えればいいと思う」は男女と も 0%、「家庭科の時間は減らしてもいいと思う」は女性教師 0%、男性教師 2 名(5.7%)である。

この 2 名の理由は、「なくすべきではないと思うが、進学校である以上、最低限の授業になったと してもやむを得ない」「学校の実情によっては必修ではなく選択でもよい」との意見である。選択

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という履修形態は、家庭科を履修しない生徒もいることを意味する。これは「家庭科は女子のみが やるべきだと思う」に男性教師全員が反対し、その理由として「家庭の生活は誰にでもある」「男 女共同参画社会だから」「いまどき何をいってんだ」「これからの時代男子も最低限の家庭科の知識 と技術がないと生活できない」からと述べていたことと矛盾する。時間数を減らすことに反対する 男性教師は、「受験科目だけになるのはよいことではない」との人間形成の立場からの意見と、「学 ばずして母親となってしまう。家族の健康管理、子どもの心理状況による適切な対応等、失敗して 許される範囲ではない。時間を多くするべき」という家事、育児を女の仕事として捉える立場から の意見もある。

 「家庭科がなくなったらどうなると思うか」に対する意見は、「衣食住に関する機能が著しく低下 する」「最低レベルを維持できなくなる」「共働き家庭を築く上で支障がある」「親から学んだこと を土台に家庭運営を行うことになる。しかし、母体となる家庭がさまざまであり、何を基準に家 庭運営したらいいのか分からない」「家族や家庭生活は壊れてしまう。家族や家庭、人としての生 き方などの理念がなくなってしまう」「家庭の格差が今より広がる」等の意見が寄せられた。だか らこそ、「家庭科に求めるもの」は、「個々の家庭の充実が社会の基盤であることを伝えてほしい」

「生活の基礎、生きる力の基盤を支えてほしい」「社会人になるための大切な教科なので全人教育に してほしい」「男女の協働のあり方を男女ともに履修することで教えていってほしい」「地域に根ざ した伝統を伝えていくような多様な形を期待する」「人として自立するためのあるべき姿勢・技術 を習得する」「あまり男女同権、平等を求める思想教育にすべきではない」など、さまざまな要望 が記されている。

 一方、生徒の家庭科に対する好嫌度は、「好き」が女子63名(79.9%)、男子15名(60%)である。

「家庭科は女子がやるものだと思う」女子1名、男子2名いたが、その理由は「結局、男は仕事、女 は家事という風習」「男性はあまり使わない」「よく分からない」としている。「家庭科を学ぶこと について」は、「毎日の生活、将来役に立つ」が女子68.4%、男子75%、「母や祖母から学べばよい」

女子は5.7%%、男子1.9%、「受験に必要ないので学ばなくてもよい」女子2.5%、男子11.5%である。

 以上の結果が示すとおり、グループの仮説は覆された。家庭科を軽視している教師は少なく、期 待している部分が多いこと、また、生徒も実生活に役立つ、楽しいなどプラス意見が多く寄せられ た。

 このような実態から見えてきた問題点として、「男女間の家庭科に対するモチベーション」「実 習に比べ存在感の薄い座学」「男女同権、平等を求める思想教育にすべきでない」の3点について、

探究を深めていく。

 「家庭科教育法Ⅲ」の「授業を創る視点と方法(1)」で指摘された題材開発の必要性は、これら 3 つの問題点を網羅するものである。男女間のモチベーション差を埋め、しかもそれぞれの要望に 応える教材の開発、内容の充実が必要であること、生徒の関心を高めるために座学においても体験 的学習を取り入れ、生徒の意思決定場面を導入し、生徒が主体となる授業を創っていく必要がある こと、そのためには固定的な役割分業意識を払拭し、「双方のよさも生かせるような」授業創りを

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していかなければならないことの必要性を確認した。家庭科は、「他教科との関連が深く、また、

生きる力や人として自立するためのあるべき姿勢・技術の習得など総合的に学ぶことができるた め、生徒の将来に深く関わる教科である。心も身体も成長段階にある生徒に生きる力が身につく授 業をすることにより、自分の将来設計の確立に役立てることもできる。よって、家庭科は、人を育 てていくことのできる教科だといえるので、中・高等学校の家庭科は、男女共学・必須の必要があ る」との結論を導きだしている。

 本事例は、アンケート調査(高校生と教師)及び文献 2 冊、インターネット 1 件を活用した探究 活動であった。

(3)問題場面への対応と評価

 (2)に記したような探究活動を経て、メンバーが到達した「教科観」「家庭科教師としての抱負」

「問題場面への対応」、そして「評価」との関係をみていく。

 表2のとおり、同じ課題で探究活動に取り組んでも、分担した内容を始め、本人の意欲・取組み 姿勢、今までの学習の定着度、その他さまざまな事象に対する価値観や経験、家庭環境などによっ て、当然のことながら異なった価値観が醸成されることになる。ここでは限定された学びの中での 意味ある学習に必要な要件を抽出することにある。

1)事例1

 事例 1 は、「高齢社会における家庭科教育の必要性」を文献研究と実証的データより導き出した が、我が国における高齢者・高齢期の学習状況が決して満足すべき状況にないことを確認し、高齢 者・高齢期を取り扱う教科として家庭科が適切であるとの確信を持った。

 この探究活動による確信、つまり高齢者への肯定的イメージは「高齢期とは自分自身の生活の延 長線上にあり、特別なものではない」という意識を持たせることから始められるのは家庭科であ り、同時に異世代間の交流を通して他者だけでなく、自分自身の人生設計を考えるきっかけにもな るところに家庭科の教育的価値を認めている。

 この教科観は「教師としての抱負」にもそのまま反映され、生きていく糧ともなれる家庭科を、

生徒がより身近に捉えることができるよう「教材研究と情報収集」への努力を惜しまず、「生徒た ち一人ひとりが興味を持ってくれるような授業を創っていきたい」と語る。

 「問題場面への対応」では、「入試は学校に入るためのものですが、家庭科を学ぶことは一生をよ りよく生きていくことに役立ちます。高齢者の分野では生徒たちの興味・関心が比較的低い分野で すが、学習機会を与えることで肯定的に捉えることができます。この分野を学ぶことで高齢者に対 して正しい理解を持ち、さらには自分が高齢期を迎えたときに前向きに暮らしていくことができる でしょう。現在の家庭科の授業時間では実践的な活動が少なくなってしまいます。そこで、総合学 習との連携やホームプロジェクト、学校家庭クラブ活動の中で取り上げ体験していくことは、生徒 たちのかけがえのない経験として、一生の財産になりえるでしょう。家庭科は、大きな可能性を 持った大切な教科であるため時間数を減らすことはできません。むしろ、実践的な体験活動を増や すことが生徒のためになると思います」と、探究活動を根拠とした対応策が示された。

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 「評価」では、中間発表、最終発表に向け計画的・集中的に探究活動に取り組み、高齢社会への 関心と学校教育の内容を確認でき、そこから家庭科の担うべき役割を明確にすることができたこと を自負している。家庭科教師として、ここから得られた信念に基づいて、地に足の着いた授業展開 を期待したい。

2)事例2

 事例 2 は、「調理のいろは」と題して、母親から子への調理技術の伝承について、実証的な研究 を核として取り組んだものである。女性の社会進出の拡大や家族形態の変化とともに、家庭機能に も変化が見られ、家族の個人化が進み、「絆」が見えにくく、確かめにくくなってきている。そう した状況での技の伝承が難しいことを証明した。

 「日本独特の風土の中で培われてきた生活習慣や物の考え方は、個人で書物を読み学ぶものでは なく、人から教えられ実際に体験し、初めて理解が深まるのだと考える。特に“生活”というの は、国語や算数のように教えられたそのときからすぐにできるものでも、たった一つの正解がある わけでもない。先人たちから教えられた基礎をベースに、周囲の助けを得ながら各々が長年にわた り育て定着し、習慣化していくものだと思う。家庭科の内容は人間生活の基であると思う。伝統的 な技法や考え方、また生活に関係する新たな法律や内容等を学ぶことで、そこから“豊かな生活と はどういうことか”と考え、よりよい生活を築いていくために重要であると考える」と自身の教科 観を述べている。

 この考え方は、「教師としての抱負」に引き継がれ、「一方的に知識を叩き込むのではなく、生徒 が改めて考え、さらにそれをサポートしお互いに理解を深める」役割に徹したいとする。「生徒自 身が自ら考え学びたくなるような内容や教材を提示し、生きた授業を組み立てていけるような教師 になりたい」と抱負を述べる。

 「問題場面への対応」では、「『家庭科の時間を減らして足りないところは家で母親が補う』とい うのは確実にできることではない。特に近年はより難しい状況であるといえる。家庭科は“各教 科”の中に属するものであり、総合学習の中で行うと、結局総合学習の内容も家庭科の内容も中途 半端な状態になると思う。たとえ入試で関係ないとしても、よりよい生活習慣を身に付け、豊かな 社会生活を築くために大切な教科であるので、時間数を減らしたり他の時間で補うのではなく、き ちんと時間を設けて教えていく必要があると考える」と意見を表明している。

 「評価」では、保護者を対象とした調査での年代別サンプル数の調整に苦慮したことが記された。

しかし、親が技術を伝承することが難しいことを証明する結果が得られ、家庭科の重要性を認識す る根拠となったとともに、その時代の教育の影響が年代間に現れていることに興味を持ち、教育政 策と社会との関連について実感を持って理解したことを「家庭科はそれぞれの家庭生活だけでな く、周りの環境や社会にも影響されることが解り、家庭科は生きている内容なのだと感じた」と表 現している。

3)事例3

 事例3は、環境問題への関心を高め、解決策を検討することを通して、家庭科の担うべき役割を

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明らかにすることを求めた探究活動である。持続可能な開発は消費のあり方と連動しており、私た ちに生きるための営みの見直しを迫る取り組みでもある。

 文献と実証的研究から得られたのは、やはり”Think globally, Act locally”であった。探究活動 のまとめにあるように、環境問題は「消費からエコ・エコから環境へ」と循環しているのである。

 「家庭科には人が生活いくための知識や技術だけでなく、人間としてどう生きていくか、周りの 人とどう関わっていくかなど、成長に合わせた学習の内容が沢山あると感じる。環境問題は、家庭 科と大きく関わりのある問題で、家庭科のねらいの一つでもある『生きる力』を身に付けることと ともに、環境に配慮した消費生活、エネルギー資源の関係性や食物や衣服の大切さ、住環境の適切 さなどを学ぶことができる。私たちの生活を手助けする多くの知識と適切で実践的な技術を学べる のは家庭科という教科があるからだといえる」と家庭科の教育的価値を捉えている。

 したがって、家庭科教師としては自分の価値観を押し付けるのではなく、色々な考えがあるこ と、そして人の価値観に流されることなく自分だけの価値観を見つけさせるように指導したいと

「抱負」を語る。

 そして、「問題場面への対応」では、「家庭科しか学べないこと、他の教科でできることの限界を 伝え相手を納得させる。特に、生活していく上で必要最低限の知識や技術の大切さを伝えるよう にしたい。実習授業でしか得られないもの、人と接したり、協力したりすることを経験させたい」

と、問題場面に対するストレートな対応を述べていないが、探究活動から導き出された成果をバッ クグランドに間接的な対応を示している。

 こうした取り組みを通して、「評価」においては多くの気づきを獲得したこと、中間発表や最終 発表の折に誰もが危険を感じるような現状の伝え方ができなかったことを反省している。しかし、

一人でやる探究活動の楽しさ、自由さ、大変さを実感できたことに満足した評価をくだしている。

4)事例4

 事例4は、現在の教育現場における教師と生徒の家庭科に対する意識調査を核とした探究活動で あり、その結果から、男女間で家庭科に対するモチベーションに差があること、実習を伴う授業に 比べ座学の授業は生徒の興味・関心が薄いこと、家庭科は男女同権や男女平等を前面に打ち出すよ うな思想教育にすべきではない、という3点をターゲットに更なる探究を進めた。

 三人で異なる課題について探究しているが、「家庭科観」は三者とも類似している。21 世紀の喫 緊の課題として政府は男女共同参画社会の構築を目指しており、これは世界的趨勢であるにもかか わらず、教師の意見として男女同権・男女平等を推進していく方向性を「思想教育」の名の下で否 定されたことに、三者とも大きな戸惑いを感じている。生活を営むことの意味と、その基盤となる 価値観の形成、そこで必要とされる知識や技術の習得と生かすための実践的態度を育成することの 必要性を強調し、それこそが家庭科の教育的価値であると主張する。

 そうした教科観の下、Aは、生徒のさまざまな個別的事情を理解し、サポートしていける教師で あるとともに、生徒にさまざまな気づきを促し、家庭科のイメージを変えることができるような

「分かりやすく、専門的で刺激のある教材」で授業ができるよう「いつまでも研究熱心な教師でい

(13)

たい」と抱負を語る。

 また、B は、家庭科が予想以上に期待されていることを実感し、その期待に応えるべく、「家庭 科が息抜きではなく、しっかりとした授業を行い、生きる力、自立できる力を育て、家庭科を総合 的な教科にしていきたい」。そのためにも、家庭科の教師になって月日が流れても初心を忘れず、

生徒と向き合い、よい授業ができるよう日々精進していきたい」と意思表示をしている。

 C は、教育実習での体験を通して、基礎的な知識・技能の定着が低いことを目の当たりにした。

そこで、とりわけ生徒が興味・関心を持ちにくい座学の授業にこそ「生徒が主体となって行うこと のできる授業づくりを考える必要があり」、さらに学習の定着を図るために「授業で学習したこと を復習できる機会を設け」たいと提案し、生徒に寄り添い、生徒が積極的に参加できるような授業 を創れる教師になりたいと語る。

 「問題場面への対応」は、三者とも家庭科の教育的価値を踏まえて確たる授業時間の確保が必要 であることを強調している。Aは、家庭での家庭科指導にも言及し、その学習内容に差ができるこ とを杞憂している。Cは、家庭科の学習内容の定着度が低いことは、家庭での実践機会と関係して おり、親の態度や生徒の意識などを改めるためにも「復習」を強調している。

 「評価」では、計画的に、しかもチームワークよく探究活動が進められたことが伺われる。しか し、学校によっては調査の許可が得られず幅広い意見収集ができなかったことを悔やむ評価もあっ た。A は、「今回の探究活動を通して、自分が 4 年間で学んできた『家庭科』について、改めて見 つめなおした。たくさんの人の意見を聞き、その中で、自分の考えを確立できたことを、嬉しく思 う」と綴っていた。

 このように事実や事象を見つめなおし、捉えなおし、そして自分の考えを固めていってくれるこ とがこの探究活動のねらいである。

 

6.問題場面への対応と学習履歴

 前項で各事例の探究活動のあらましを述べた。この4事例とも、すべてにおいて満足すべき内容 と評価しているわけではない。前報のとおり、この探究活動と報告書は、卒業研究・卒業論文作成 への前哨戦でもある。そのような観点からみると、「課題設定の理由」や「探究計画」には検討の 余地がある。これらの項目こそ、既習内容の定着度を始め、子どもや家庭生活の変化や課題、教育 諸政策の変化、世界情勢を含めた社会の動向などに関する情報をどれだけ敏感にキャッチし、自ら の課題として受け止め、課題解決への方策を反芻したかを問う内容だからである。つまり、既習内 容や経験に加えてどれだけ新たな経験の再構成がなされ、意味ある自己内対話が蓄積されてきたか を問う内容なのである。自らの学びへの意欲と姿勢が遺憾なく発現できる場であり、同時にいやお うなく発現させられる場でもある。

 このようにさまざまな要因が関与して形成される教科観であるが、その中から一つの要因として 過去の家庭科教育法の成績と報告書との関連を追跡した。その結果、ある傾向を見出すことができ た。4事例の6名のうち「家庭科教育法Ⅰ〜Ⅳ」のすべての科目がA評価であった者が2名、CやB

(14)

評価からA評価へと上昇の軌跡を辿った者が4名であった。一人での探究活動であろうが、仲間に 感化されながら懸命に取り組む共同での探究活動であろうが、いずれの活動もクラス全員を対象と した発表の場で、共に学び合い、刺激を受けあい、助け合いながら報告書の完成という目標に向か い、同時に自らの価値観を形成し、他者に発信するための「自分の言葉」を持ったことで自信を獲 得していったことは、探究学習の持つ大きな力として再認識することができた。

7.問題場面への対応と探究活動履歴

 探究活動における学生の参画度は 100%である。探究課題の設定から遂行、評価まで一貫して学 生の興味・関心や課題意識を最優先した責任を伴った活動である。この探究活動は、4 年生前期に 開講されており、多くの学生はこの間に教育実習を体験する。したがって、より一層計画的な探究 活動が要求されるのである。

 そこで、探究活動の足跡と目的到達度との間の関連性を把握することは、計画的に遂行されたか 否かを量るひとつの尺度ともなる。表3は、30事例すべての課題研究報告書を対象とし、活動履歴 の評価結果を示した。中間発表の空欄部分は、各種実

習との関係で実施できなかったクラスの評価である。

これらの評価結果のうち、発表の評価基準は、探究活 動に基づく発表資料(P.P.)と発表態度を、また報告 書は、探究内容の範囲と論理性・客観性 ・ 信頼性、方 法の適切性などを総合的に判断して A・B・C の 3 段 階とした。なお、発表日は学生の希望を優先し、発表 と報告書の提出については公平性を保つよう配慮して いるのも前報の通りである。 

(1)探究過程と報告書

 この表から読み取れることは、発表時の評価(中間 発表より最終発表)は、報告書の評価にかなり影響を 及ぼすということである。計画、遂行、評価まで一貫 して責任を負うグループ活動のスタートの大切さを示 唆している。探究計画についての方向性と意思疎通、

各自の責任感、リーダーの統率力などが、探究活動に 影響を与える。

 結果として、研究報告書の評価の割合は、「A」が 60.0%、「B」が26.7%、「C」が10.0%、「D」が3.3%で あった。

(2)報告書と問題場面への対応

 報告書は、グループとしての探究課題への取り組み

中間発表 最終発表 報告書 編数

A A

AA

AB C

51

A B

BB

AB

C 1

A C

CC

AB C

B A

AA

AB C

11

B B

BB

AB

C 1

B C

CC

AB C

C A

AA

AB C

1

C B

BB

AB C

1

C C

CC

AB C

欠席 A

C A

D 1

1 AA

A

AB C

92 2 BB

B

AB

C 3

CC C

AB C

D D

n=30 報告書:「A」 18編(60.0%)

「B」  8編(26.7%)

「C」  3編(10.0%)

「D」  1編( 3.3%)

表3 探究過程と報告書

参照

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