熊野地域の植物を活用した屋上緑化工法実証実験
林泰弘会 内 藤 平 美 村 朝 尾 高 明 付 *
Rooftop g r e e n c o v e r s y s t e m u s i n g v e g e t a t i o n s from Kumano a r e a
Y a s u h i r o H a y a s h i , H i r a y o s h i N a i t o , T a k a a k i Asao
Rooftop green cover system has been applied on the rooftop of the building in Kinki University Technical College. Some vegetations growing in Kumano areas were put on the "Green Eco・Mat".Temperatures had been measured at various sites on the roof and were compared with the one from the AMeDAS data. The mat with/without plants suppressed the roof temperature rise. It is found that a moss is suitable vegetation for the roof.
Keyword roo丘opgreen cover system, Green Eco‑mat, temperature, vegetation
1
.はじめに
屋上に植物を植える屋上緑化は古くから行われてきた。
しかし、その目的は憩いの空間の創造が主たるものであり、
現在のものに比べ規模も小さい。現在の屋上緑化拡大のき っかけは、 2000年の東京都の自然保護条例の改正 (2001‑ 年4月より施行)であるといわれる。その中で、屋上緑化 に対しては、以下の規定がある。
1) 1,000平方メートル以上の敷地面積の民有地において、
建築物・駐車場等を新築・増築する者はすべて緑地化の義 務を負う。
2)地上部では、原則的に空地部分の20%以上で、樹木・
芝等の緑化を行なう必要がある。
3)屋上・壁面・ベランダでは、原則的に屋上の利用可能 部分の 20%に相当する面積以上で樹木・芝等の緑化を行 なう必要がある。
4)地上部と屋上等の緑地化に関する届出を義務付けた。
この届出の義務に違反した場合20万円以下の罰金を科す ことができる。
とれ以降、 2001年 5月には国土交通省が緑化施設の固 定資産材軽減措置を講じ、 2002年10月からは兵庫県が条 例による屋上緑化の義務付けをするなど、要望はさらに高
キ近畿大学工業高等専門学校 総合システム工学科都市環境系 村ネ一トン
村本熊野市森林組合
まっている。
屋上緑化のメリットは多岐にわたるうえ、そのタイプも さまざまである 1)、2)。屋上緑化では植物の選定が重要な要 素である。本論文は地元熊野地域の植物を活用した屋上緑 化工法についての実証実験結果によるものである。近畿大 学高専校内のプレハブ建物の屋上に緑化基盤材を敷設し、
熊野地方で採取した苔、セダムと芝を緑化材として用い、
屋根上の温度が基盤材の有無や植物の違いによってどの ような違いが出るのかを調査した。
2 .
屋上緑化の現状と課題屋上緑化はヒートアイランド対策として知られるが、実 際には多くの効用がある 1)、2)。
①断熱効果:緑化基盤材、植物による直射日光の遮断、
断熱。植物の蒸発散に気化熱。
②省エネルギー:断熱効果による空調費の縮減。
③建物寿命の延長:直接受ける紫外線の減少。昼夜の温 度差によるによる熱膨張、収縮による亀裂の防止。
④都市型洪水の防止:雨水の貯留、遅延効果。
⑤ヒートアイランド現象の緩和:気化熱による冷却、輯 射熱の抑制。
⑥大気浄化:植物による大気中の有害物質の吸収、分解、
無害化。
⑦水質浄化:土壌による水質改善。
⑧都市生態系の創出:野鳥や昆虫などの生息空間。
⑨都市景観、アメニティの創出:美しい都市景観や癒し
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•
の空間 を横2枚、たて6枚をlブロックとし、 9ブロック敷設し 屋上緑化のタイプは規模や目的によって様々なものが た。ブロックは板で因われ、通路として使用している。各 あるが、大きく 5つに分類できる 1)。
①庭園型:従来型。築山や樹木も植えられる。
②システム型:均質な多層構造で仕上げる。施工やメン テナンスが簡単。
③薄層型:5...7cmという超薄型の緑化層で施工。傾斜 屋根や丸屋根にも適応可。
④容器型:コンテナやプランターなどの容器を用いる。
⑤パーゴラ:藤棚。
屋上緑化の基盤は屋根側から防水層、透水層、土壌で構 成され、屋根の形状や耐力、タイフなどによってその構造 を決める必要がある。
行政による屋上緑化推進策によって、屋上緑化への取り 組みは広がりつつあるが、ドイツなどの屋上緑化先進国に 比べ、植物材料生産や維持管理面において課題が多い 2)。 現在は緑化面積の多くが多肉植物のセダムであるが、セダ ムは植栽基盤中に保持される水分量が少ないことや蒸発 散量が少ない、美観性が低いなどの問題がある。また、長 期にわたる耐久性の保証も遅れている。
3.屋上緑化工法実証実験
3. 1 実験システム
屋上緑化工法の実験システムは近畿大学工業高等専門 学校内の技術教育部の屋根上に設置した(写真1)。
写真1 屋上緑化の概観
技術教育部は5mX20mの小波スレート平屋建てであり、
屋根は若干東下がりの勾配を持っている。本研究では緑化 基盤材として土の代わりとして、グリーンエコマット (GMS)を小波スレート上に直接敷設して使用した。
GMSl枚の寸法は610mmX915mmX50mmであり、乾燥重 量が5.0kg、保水量約40kgである。 GMSは土に比較して 保水量が大きく、飛散しないという点で優れている。これ
ブロックには散水用のチューブを設置した。
散水用の水は雨水タンクから供給される。タンクへは屋 根上への散水あるいは降雨の水が樋を通じて回収される ようになっており、不足する場合には水道水からも供給さ れる。
3. 2 植物
植物にはセダム、コケ、芝を用いた。セダム属は世界に 300種類ほどあり、古くから花壇、鉢植え、ロックガーデ ンなどに広く用いられている。全般に耐乾性・耐寒性があ り、性質は極めて強健である。また、繁殖力も旺盛で水分 及び肥料の要求量が少なく、やせ地や薄層土壌でも粗放な 管理で生息可能な植物である。そのため屋上緑化にも多く 用いられる。本研究で用いたセダムを写真2に示す。
写真2 セダム
コケは世界に2万種ほど確認されている。湿気の多い場 所に植生する印象が強いが、陽のあたる場所のコンクリー トへも活着するなど耐性がある。数ヶ月間も水分がない環 境でも枯れずに仮死状態で生存でき、自然に降る雨水で生 息可能である。土からではなく、風雨による外来飛散によ って栄養分を補給でき、環境適応能力が非常に高く、通常 の植物が生育しにくい場所でもすぐれた生育を見せる。本 研究では熊野地方で採取されたスナゴケを使用した(写真 3)。
写真3 スナゴケ
芝は一般的に日当たりを好み、日当たりが悪い場所では
円hu
円h
v
(a) 060723‑060729
80 70 60
‑ so 函μ 40
甥 30 20 10
0
8 8
生息は望めない。また、芝は水はけの良いところを好むた め、水引が悪く、雨の降った後何日も水が残るような場所 では根腐れになり、枯れてしまう。本設置場所は勾配を有
し排水はよい。本研究で使用した芝を写真4に示す。
8
︒‑ o
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持︒‑8
‑060
8 8
(b) 060903‑060909
写真4 高麗芝
また、秋口から緑化材として使われるモリムラマンネン
グサ(写真5)も追加した。 8 g
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(c) 061029‑061104
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(d) 061203心61207
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モリムラマンネングサ 写真 5
観測方法
2006年 6月に施工を完了し、温度観測を開始した。温 度観測の場所は表 lの通りである。
温度測定場所 3
3.
80 70 60
̲ SO )J
話40 5星30 20 10 0 o 明
。
(e) 061217‑061223 80
70 60 550
函40
唄30
20 10 0 8 8
観測期間 Ch1 Ch2 06/06/30‑06/10/20 基盤材下 通路下 06/10/20‑06/11/10 セダム下 屋根上 06/11/24‑06/12/07 高麗芝下 GMS下 06/12/08‑07/01/02 セ夕、ム下 ゼニゴケ下
表 1
g c 8
0
8 g g g 時$(1J o o
‑D一D
10分毎の温度観測データ
3. 4 観測結果
1週毎の温度の観測結果を図 lに示す。観測期間は図の 上部に記載している。
‑67‑
図 1
「基盤材下」とは植物を配置していない基盤材の下、「通 路下」とは写真 lの木板通路の下、「屋根上」は小波スレ ーと上で何も覆いのない状態、「セダム下」、「高麗芝下」、
「ゼニゴケ下」は基盤材GMS上にそれぞれの植物を配置 した場合の基盤材下の温度である。各観測期間において、
2箇所の温度を測定することで温度の違いを把握した。な お、温度は 10分間隔で記録されている。
図 1の(a)と(b)は測定場所が同じで期間が異なるもので ある。(b)のように 1日の温度変化が小さい場合には測定場 所での温度の違いは見られないが、(a)のように温度変化が 大きい場合には違いが見られた。なお、熊野市新鹿のアメ ダスデータによると(b)の期間の最高気温は 27.7""'30.60C、 (a)の期間の最高気温は25.3""'34.60Cである。基盤材が含む 水分が温度上昇抑制効果を発揮したものと考えられる。(d) からは基盤材上の植物の有無が比較できる。植生(芝)が ある場合の方が最高温度は低く、最低温度が高くなってお り、温度変化が小さいことがわかる。 (e)によると、セダム に比べゼニゴケのほうが温度変化が小さい。寒いこの時期 はセダムが枯れていたため、温度抑制効果が小さくなった ものと思われる。
気温が高い夏季ではセダムが繁茂するため、効果は逆転 する可能性は高い。
図 2に各測定場所の日最高温度と最低温度の変化を示 す。熊野市新鹿でのアメダス観測データ(最高気温、最低 気温、降水量)もあわせて示す。
屋根上の温度上昇は日射によるととろが大きい。そのた め、降雨が確認された日は気温によらず屋根上の温度は測 定場所(条件)によらず気温と近い値を示している。降雨 が確認されなかった場合でも、最高気温と屋根上の温度の 差が大きいのは(a)の通路下と(c)の屋根上で、あり、少なく
とも基盤材があれば温度上昇を抑制する効果は高いとと がわかる。
基盤材上の植生の有無や植生の違いが明確でないのは、
植物が十分に活着していないためであると考えられる。屋 上への基盤材と植物の設置が6月末であり、十分に活着し ないまま夏季を迎えたため芝は枯れ、コケやセダムも十分 に生長しなかったため、植物による蒸発散効果が小さかっ たと考えられる。
1年3ヶ月あまりが経過した現在は温度計測を行ってい ないが植生の観察は継続している。芝やセダムの活着状況 はよくないがスナゴケや途中から追加したモリムラマン ネングサは少しずつ根付いてきている。
謝辞
本研究は、近畿大学工業高等専門学校研究助成金による支 援をいただき実施しました。ととに謝意を表します。
参考文献
1) 船 瀬 俊 介 :I屋上緑化」完全ガイド,築地書館,
2003.8.
2) 三輪隆:屋上緑化,土と基礎,Vo1.54, No.1 0, pp.25・26, 2006.10.
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10/29 10/30 10/31 11/1 11/2 11/3 11/4 日付
12/3 12/4 1215 1216 1217 日付
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日付
図 2 日最高、最低温度と降水量