2016 年 12 月 22 日
個人投資家向け会社説明会 ミーティングメモ
参天製薬株式会社(4536)
日 時:2016 年 12 月 7 日 場 所:ホテル阪神「ザ・ボールルーム」(大阪市福島区) 説明者:コーポレート・コミュニケーショングループ IR チーム マネージャー 西川 輝美子 氏 1.事業内容と強み ・ 当社の基本理念は中国の古典『中庸』の一節にある「天機に参与する」で、社名もここ に由来します。「自然の神秘を解明して人々の健康に貢献していく」という意味ですが、 「目」のスペシャリティ・カンパニーとして患者様をはじめとする社会に貢献していく という理念です。ビジョンや経営戦略がこの理念に基づいていることは勿論、社員一人 ひとりの日々の業務においてもこの理念に基づいて活動が行われています。 ・ 1890(明治 23)年に大阪・北浜で創業され、125 年以上の歴史を持っています。1990 年代以降、米国、欧州、中国など海外展開を積極的に進めてきました。2014 年に米国の 大手製薬会社メルク社の緑内障関連の眼科製品 9 品目を取得し、アジア・欧州における 事業展開を加速しました。2015 年には抗リウマチ薬事業をあゆみ製薬に承継し、これに より 100%経営資源を眼科に集中した企業となりました。2016 年には緑内障のインプラ ントを開発している InnFocus(米国・フロリダ)を買収し、薬だけではなく医療機器も 含め眼科治療に取り組んでいます。 ・ ドラッグストア等で購入できる一般用眼科薬においては、「サンテ」ブランドで展開し、 国内一般用眼科薬市場で約 24%のシェアを確保し、国内市場第 2 位の地位にあります (2015 年度)。この一般用医薬品は当社の売上の 6%に過ぎず、病院で処方される医療 用眼科薬が 88%を占めています。加えて、前述のとおり事業譲渡した抗リウマチ薬が 2%、 白内障の眼内レンズなどの医療機器が 1%となっています。 ・ 製薬業界もご多分に漏れず、自社の強みを明確化し戦略を打ち出していかなければ勝ち 残っていけない競争激化の時代になっています。その中で製薬企業が勝ち残っていくた めの 4 つの方向性が厚生労働省「新医薬品産業ビジョン」に示されています。まず規模 で戦っていく「メガファーマ」は幅広い領域(総合型)の医療用医薬品を自ら開発(先 発品)する企業で、米国のファイザー、メルク、日本では武田薬品工業などが該当しま す。当社は領域を特化し自社開発を行う「スペシャリティファーマ」に当たります。当 社以外では、糖尿病に特化しているノボ ノルディスク、皮膚科に特化しているマルホ などがここに当てはまります。新薬メーカーが開発した先発品を特許が切れた後に、開 発費をかけずに安価で提供していく「ジェネリックファーマ」では、沢井製薬、東和薬 品、日医工などがあります。そしてドラッグストアで購入できる一般用医薬品を中心に している「OTC ファーマ」としては、ロート製薬などがあります。・ 当社の特化している目の構造と眼科疾患を幾つか紹介すると、目の前側「前眼部」の疾 患には緑内障、ドライアイ、感染症などがあります。目の後ろ側「後眼部」の疾患とし ては、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症、ぶどう膜炎(後眼部)などがあ ります。前眼部に比較して後眼部の疾患は薬が届きにくくアンメットメディカルニーズ (未充足ニーズ)が残る領域です。 ・ 当社の国内医療用眼科剤は、眼の疾患に合わせて 40 種類以上提供しており、製品数は 薬の濃度、容量、容器の形状などの違いにより 100 以上にわたります。 ・ 当社の国内医療用眼科薬市場におけるシェアは No.1 の 44%となっています。外資系企 業の参入などによりシェアを落としていた時期もありましたが、新製品の投入や医療従 事者のニーズに合わせたきめ細かな営業活動によりシェアを高めてきました。金額ベー スでは 44%ですが、本数ベースでは 50%を超えており、2 本に 1 本は当社製品というこ とになります。 ・ 疾患領域ごとのシェアをみると緑内障、網膜、ドライアイ、抗菌領域では No.1、抗アレ ルギー領域のみ No.2 となっていますが、月間ベースでは 1 位になることもある水準ま でトップ企業に肉薄しており、すべての領域での No.1 を目指して活動しています。 ・ 各領域の主要製品においては、複数の製品により売上を構成しているというのが、当社 の特徴です。1 つの製品に依存していると、特許切れにより大きく売上が落ち込むこと があるため、複数の製品で売上を支えることにより、急激な売上低下のリスクを低減し ています。また、なかには特許を満了したものもあり、こうした製品については後発品 の侵食により売上低下が生じますが、海外での売上でカバーし、一定の売上を維持して います。 ・ 新製品と特許切れとなり後発品の出ている長期収載品の比率をみると、売上低下リスク の低い筋肉質な企業を目指し、新製品比率を向上させる努力を行っており、2016 年度に は新製品比率は 72%まで高まる予想となっています。 2.成長戦略 ・ 世界の医療用眼科薬市場は、2020 年には約 3 兆円、年平均成長率 6%が見込まれていま す。これは製薬市場全体と比較しても高い成長率となっています。地域別ではアジア、 東欧・北欧・ロシアといった新興国市場の伸長が著しく、当社も成長率の高いこれらの 地域での展開を図り、成長していきたいと考えています。また、疾患領域別では網膜、 緑内障、ドライアイといった市場規模の大きな領域で製品提供を拡大していきます。 ・ 2020 年までの長期的な経営ビジョンとして、「世界で存在感のあるスペシャリティ・カ ンパニーの実現」を掲げています。患者様や医師をはじめとする医療従事者の抱える未 充足ニーズに合致した製品やサービスを提供することで、グローバルに戦っていける会 社になっていきたいと考えています。 ・ 成長イメージとしては、2020 年までに世界の眼科薬市場でグローバル TOP3 以内の“世
界で存在感のあるスペシャリティ・カンパニー”を実現することを目指しています。その ためには日本国内だけでは市場規模が限られているので、2020 年の海外売上比率 40- 50%、その過程では 2017 年度の海外売上比率 30%を目標として設定しています。 ・ 2017 年度までの中期経営計画の基本方針として、製品創製面、すなわち製薬企業の成長 の源泉である研究開発においては、持続的な成長を可能とするための製品創製への変革 (パイプラインの充実)、生産性向上の実現、社内に限らず社外も含めた積極的な事業 開発投資の継続を目指しています。また、事業展開ではアジア・欧州での事業成長およ び 新規市場参入により海外売上の向上を図ります。組織・人材面では、持続的な成長 を実現するための人材育成と組織構築、およびグローバル・マネジメント体制の強化を 図っています。 ・ とくに、製品創製面では、主に「緑内障」「角結膜疾患」「網膜疾患」領域に注力し、パ イプラインの充実を図っています。また、当社の特徴として、社内だけではなく、社外 との共同開発や社外からの導入も活用しながら、時間を短縮しながら、費用においても 効率性を向上するために「ネットワーク創薬」を進めています。 ・ 研究開発体制としては、米国、日本、欧州に拠点を置き、グローバルでの製品提供の実 現を支えています。 ・ 代表的な事業開発を紹介すると、2012 年にノバガリ・ファーマを買収し欧州での開発を 強化しました。2014 年には米国のメルク社より緑内障の製品を取得し、アジア・欧州で の展開を積極化しています。2015 年には抗リウマチ薬事業を承継し、完全に経営資源を 眼科に集中しました。そして、2016 年に緑内障の医療機器を製造する InnFocus 社を買 収しました。 ・ InnFocus 社買収の戦略的意義としては、患者様や医師に薬だけではなく、医療機器も含 めた緑内障の治療手段の提供、加えて既存の緑内障製品や緑内障事業とのシナジーの追 求、併せて、医療機器は薬に比べ開発・承認の成功確率が高いため、中長期的な成長に 貢献につながると考えています。 ・ 緑内障は日本において中途失明原因の 1 位となっており、40 歳以上の 20 人に 1 人が罹 患していると言われています。仕組みとしては、眼圧が上昇することにより視神経が圧 迫されて視野が欠損していく可能性のある疾患で眼圧を低下させることが主な治療で す。 ・ 当社の買収した InnForcus 社の製品「MicroShunt」は睫毛の 2 倍程度のマイクロチュー ブで、眼球に刺すことによって眼の中の房水という体液を排出することにより眼圧を下 降させる医療機器です。特徴としては、非常に小さく患者様の体への負担が軽い「低侵 襲手術デザイン」、免疫反応が起こりにくい「生体不活性製品素材」があげられます。 ・ 2020 年度に海外売上比率 40~50%、2017 年度に 30%を目指しています。当社内では欧 州(Europe)に加え、中東(Middle East)、アフリカ(Africa)の頭文字をとって EMEA (エミア)事業と銘打っていますが、とくに欧州・アジアを中心に事業成長を加速して
います。 ・ これまでの歩みとして、アジアでは市場規模の大きな中国・韓国・ベトナムを重点国と 位置づけ、ここでの収益拡大を進めてまいりました。また、新製品を投入することによ りこれまで未進出であった新規国・新規市場を含め参入を進めています。アジアにおい て日本に次ぐ市場である中国では、2015 年度には緑内障薬「タプロス」の承認取得・発 売を行っており、2016 年度には中国の国有企業・重慶科瑞製薬有限公司との合弁会社を 設立しました。これまで湾岸部の医療レベルの高い医療機関を中心に行ってきましたが、 この合弁会社の設立により、内陸部や従前販路のなかった地域にも製品を提供していき たいと考えています。 ・ 当社では早期からコーポレート・ガバナンスを重視し、体制を整備してきました。特徴 としては、役員のうち半数以上が社外役員であり、ガバナンスが効きやすい体制となっ ています。もう一つの特徴としては、取締役が社内 2 名、社外 3 名の計 5 名と少数で事 業部ごとに執行役員を配置し、機動力のある役員体制となっています。 ・ 2017 年度の中期業績目標としては、売上収益 2,050 億円以上、営業利益(コア営業利益) 515 億円以上、当期利益 310 億円以上と前中計の最終年度 2013 年度との比較では 2 ケタ 近い成長を目指しています。ROE(株主資本利益率)13%以上、成長を牽引する研究開 発費は 210 億円程度、配当性向は 40%を目途としています。会計基準では IFRS(国際 会計基準)を導入しており、今期 2016 年度の業績予想は、売上収益 2,000 億円、前年度 における抗リウマチ薬事業譲渡による特別利益などを除いたコア営業利益は 441 億円、 コア当期利益 302 億円を予想しています。今年度は薬価改定がありましたが、その分を 吸収し安定的に成長しています。 3.株主還元策 ・ 当社の株価は、長期的にみると安定的に推移しています。 ・ 株主還元の方針としては、安定的かつ持続的な株主還元の実施を目指しています。将来 のための成長投資の必要性も認識し、その分の資金を確保しつつも、安定的な還元を行 っていきます。 ・ 機動的に自己株式の買付を進めたいと考えています。2016 年度は 9 月 13 日~11 月 22 日で 130 億円の自己株式を取得しました。 ・ 配当性向は 40%を目処としており、今期 2016 年度通期での配当金額は 26 円を予想して います。 4.質疑応答 Q1.国内トップシェアがあればこそ、国内人口の減少や医療費抑制などマイナス要因が避 けられないと思いますが、今後の国内の営業戦略を教えてください。 A1.国の制度として医療費抑制の流れは避けられない状況にありますが、国内事業は当社
の売上の 7 割以上を占めており、その重要性を十分認識しています。国内事業のなか でメインは医療用医薬品事業ですが、「ドクターのベストパートナー」を目指してい ます。それぞれの患者様ならびに医師のニーズは異なっていますし、医療の高度化に より、一層多様化することが予想されるなか、当社は幅広い疾患への製品を備えてい ます。今後もまだ充足されていないニーズを満たすような製品あるいは情報の提供に よって信頼関係を築いていきたいと考えています。社外による顧客満足度調査などを 見ても 2 位以下の企業を大きく引き離している状況が確認できており、さらなる信頼 獲得を進めていきたいと思います。 眼の病気の多くは高齢の患者様が多く、例えば緑内障では 40 歳以上の 20 人に 1 人と いう統計が出ています。網膜の後ろの疾患である加齢黄斑変性も加齢とともに発生す る疾患と言われており、今後日本の人口が縮小する過程において、高齢者人口は増加 していくため、患者数の増加を見込んでいます。 Q2.海外事業を強化されていますが、成長が見込める地域とその領域は何ですか。御社の 当面の課題についてお聞かせください。 A2.当社は現状、アジアと欧州に拠点があります。米国についてはこれから参入計画を考 えています。アジアについては、今後も 15%ないしは 20%近い現地通貨ベースでの 成長が見込まれています。その背景として人口の拡大もありますが、経済発展によっ て医療整備が向上していく過程において、当社の抗菌剤が高い需要になります。日本 における戦後高度成長下においても同様に抗菌剤の需要が伸びました。それと同じこ とが今アジアで起きており、今後も高い需要が見込まれています。また、欧州では従 前はドイツと北欧の 5 カ国が主なマーケットでしたが、メルク社からの眼科製品取得 を機に、イギリスやフランスを含め欧州全域で当社の製品をカバーしています。これ によって当社が新製品を販売ルートに乗せることによるこれからの成長を見込んで います。米国については開発拠点を有しており、現地で競争力の高い製品としてぶど う膜炎の治療剤「DE-109」が来年 2 月に申請予定、2018 年には販売を見込んでいます。 また、今年の夏に買収した医療機器「MicroShunt」も 2018~2019 年にフェーズⅢが終 わり、2020~2021 年で米国での販売を見込んでいます。自社販売か共同販売かは検討 中ですが、新たに米国参入も果たし、グローバルでの成長を目指しています。 Q3.薬価が今年 1 年以内で改定されたことがニュースになりましたが、御社の経営に影響 はないのでしょうか。 A3.国内製薬業界においては、年 1 回薬価改定があります。これは、特許が満了した製品 の薬価が引下げになるもので、特許の満了した製品が多い企業ほど薬価改定のマイナ スの影響を受けることになります。当社では 2008 年度は特許の切れた長期収載品の 比率が 60%あり、薬価改定の影響を大きく受けていましたが、最近は新薬を多く投入
することにより長期収載品比率は 2 割弱まで下がっており、薬価改定の影響も低下し ています。薬価改定の影響を受けない新製品の拡大と海外展開の強化によって国内の 薬価改訂の影響を受けにくい企業体質を構築しているところです。 Q4.自己株式買付の目的は何でしょうか。M&A でしょうか。 A4.今年秋に自己株式買付を行いましたが、株主還元を機動的に行うことがその目的でし た。成長戦略として行ってきた新薬の導入や買収が一巡し、株価も低迷していたため、 既存株主に少しでも報いたいという考えもあり実施しました。なお、取得した自己株 式については、すべて償却する予定です。 Q5.M&A が続いているようですが、独自の基礎研究は行われていますか。 A5.当社は、他社から新薬の種を導入して眼科に転用していく研究開発の方針をとってい ます。日本の医薬品業界の平均的な研究開発費が売上の約 16~17%とされる中で、当 社は 12~13%前後となっています。基礎研究における新薬の成分開発は行っておらず、 その代わりに有効な成分を導入することにより研究開発の効率化および時間の短縮を 図っています。今後も他社からの成分の導入や M&A による新薬の取得を進めてまいり ます。 Q6. 海外の展開においては、ジェネリック医薬品の影響はないのでしょうか。 A6. 海外におけるジェネリック医薬品の影響はありますが、影響を受けないような販売方 法をとっています。例えば、中国においては、地場のジェネリックメーカーが乱立し ていますが、当社のターゲットとしている医療機関は、ハイエンドな高度治療を行う 第 2 級病院、第 3 級病院であり、政府や軍の関係者などの富裕層が利用しており、品 質の低い医薬品は販売できないため、質の高い医薬品を扱う当社や外資系メーカーは 影響を受けにくい状況となっています。一方、欧州においては、特許満了後に当社が メルク社より取得した医薬品は失明リスクの高い緑内障領域であり、患者様や医療従 事者にとって他の新薬に切り替えることに抵抗があるため、ジェネリック医薬品によ る影響を大きく受けていません。メルク社の医薬品は取得以前には 10%の減収を見込 んでいましたが、実際には 5%程度の減収幅で収まっています。 以 上