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TMI 中国最新法令情報

―(2012 年 5 月号)―

TMI 総合法律事務所

〒106-6123 東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー23 階 TEL: +81-(0)3-6438-5511 FAX: +81-(0)3-6438-5522 E-mail: [email protected] 〒200031 上海市淮海中路 1045 号 淮海国際広場 2606 室 TEL: +86-(0)21-5465-2233 FAX: +86-(0)21-5465-5745 E-mail: [email protected] 皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。 お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI中国最新法令情報」をお届けします。記事の 内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下さ い。なお、バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきます ので、併せてご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/office/china/index.html) 目次 一.中国最新法令 1.主な中央法令 (1) ソフトウェア産業及び集積回路産業の発展を一層奨励するための企業所得税政策に 関する財政部、国家税務総局の通知 (2) 個人人民元外貨両替特許業務の試行管理弁法 (3) 女性従業員労働保護特別規定 (4) 国内非金融機構の香港特別行政区での人民元建て債券の発行に関する国家発展改革 委員会による通知 (5) 先物取引会社の登録資本金又は持分の変更の関連問題に関する規定 2.主な司法解釈 (1) 独占行為により生じた民事紛争案件の審理における法律適用の若干の問題に関する 規定 二.連載 中国企業法実務/第二弾:各種契約締結の実務(第 2 回 賃貸借契約) 三.上海法務事情 1.上海市律師協会特別会員制度の始動 2.上海市企業昇給ガイドライン(2012 年)

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一.中国最新法令(2012 年 4 月中旬~5 月中旬公布分)

1.主な中央法令 (1) ソフトウェア産業及び集積回路産業の発展を一層奨励するための企業所得税政策に 関する財政部、国家税務総局の通知1 中国政府は、以前からソフトウェア産業及び集積回路産業に力を入れ、多数の優遇政 策を打ち出していた。2000 年及び 2011 年には、それぞれ「ソフトウェア産業及び集積 回路産業の発展を奨励することに係る若干の政策」及び「ソフトウェア産業及び集積回 路産業の発展をより一層奨励することに係る若干の政策」が公布された。これらの政策 によれば、条件に合致する集積回路企業及びソフトウェア企業は、「両免三減半」 財政部、国家税務総局 2012 年 4 月 20 日公布 2011 年 1 月 1 日施行 ① 背景 2の企 業所得税優遇を受けることができ、更に先進的な技術を有し、かつ、条件に合致する集 積回路企業は、「五免五減半」3 上記条件の他、従業員の研修費用の控除、資産又は設備の償却年限の短縮等、多数の の優遇を受けることができる。但し、ここで挙げられた 条件は不明確であり、具体的な認定基準及び実施細則は財政部・国家税務総局により策 定されると規定されている。この度、本通知の公布により、上記の未定だった部分が明 確化されたといえる。 ② 主な内容 本通知により、「両免三減半」又は「五免五減半」の優遇を受けられる集積回路企業 又はソフトウェア企業の条件が明確にされた。 集積回路企業は、(ア)集積回路生産企業のライセンスを有すること、(イ)短期大学 以上の学歴を有する従業員が従業員全体の 40%を下回らず、研究開発に従事する従業 員が従業員全体の 20%を下回らないこと、(ウ)研究開発費用が企業売上の 5%を下回 らないこと、(エ)集積回路製造による売上が企業売上の 60%を下回らないこと、等の 条件を満たさなければ、優遇を受けることができない。 集積回路デザイン企業及びソフトウェア企業は、(ア)2011 年 1 月 1 日以降に中国で 設立され、かつ、集積回路デザイン企業及びソフトウェア企業のライセンスを有するこ と、(イ)短期大学以上の学歴を有する従業員が従業員全体の 40%を下回らず、研究開 発に従事する従業員が従業員全体の 20%を下回らないこと、(ウ)研究開発費用が企業 売上の 6%を下回らないこと、(オ)集積回路デザイン又はソフトウェア開発による売 上が所定の基準を下回らないこと、等の条件を満たさなければ、優遇を受けることがで きない。 1 《财政部、国家税务总局关于进一步鼓励软件产业和集成电路产业发展企业所得税政策的通知》(财税[2012]27 号) 2 利益獲得年度から起算して、1 年目、2 年目は企業所得税の徴収を免除し、3 年目~5 年目は 25%の法定税 率から半分に減じて企業所得税を徴収するという優遇政策の略称である。 3 利益獲得年度から起算して、1 年目~5 年目は企業所得税の徴収を免除し、6 年目~10 年目は 25%の法定 税率から半分に減じて企業所得税を徴収するという優遇政策の略称である。

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優遇政策も併せて公布された。 (2) 個人人民元外貨両替特許業務の試行管理弁法4 (3) 国家外貨管理局 2012 年 4 月 24 日公布 5 月 1 日施行 ① 背景 従来、個人向けの人民元外貨両替業務は銀行しか行うことができなかったが、人民元 の自由流通を目指し、制限が徐々に緩められてきた。2008 年 8 月に公布された「個人 人民元外貨両替特許業務の試行展開に関する国家外貨管理局の通知」により、北京及び 上海において、金融機構でない企業も人民元外貨両替業務を行うことができるようにな り、その後、かかる実験的な政策が 13 の省・自治区・直轄市に広げて実施され、さら に今回公布された管理弁法により全国まで拡大された。 ② 主な内容 従来の政策と比較し、本弁法では以下の点において変化が見られる。 (ア) 地域範囲の拡大。本弁法の公布により、外貨管理局の認可を得れば、全国各地の金 融機構でない企業が個人人民元外貨両替業務を行うことができるようになった。 (イ) 支店増設の手順及び条件を明確にすることにより、個人人民元外貨両替業務を行う 企業の全国展開を促進する。 (ウ) 個人人民元外貨両替業務を行う条件として、登録資本金の要求が 100 万人民元から 500 万人民元に引き上げられた。 女性従業員労働保護特別規定5 4 《个人本外币兑换特许业务试点管理办法》(汇发[2012]27 号) 5 《女职工劳动保护特别规定》(国务院令第 619 号) 国務院 2012 年 4 月 28 日公布 同日施行 ① 背景 中国では、女性従業員の人数が現在 1.37 億人にのぼり、従業員全体の 42.7%を占め ており、女性従業員は生理上・心理上男性従業員と異なることから、特別な労働保護を 受ける必要がある。1988 年に、国務院により「女性労働保護規定」(以下「1988 年規定」 という。)が公布され、女性従業員に特別な保護を与えてきたが、当該規定の施行から 既に 20 年以上が経ち、現在の社会情況に合致していない部分が多数存在すると思われ る。この情況を踏まえ、今回、国務院により 1988 年規定を改正する「女性従業員労働 保護特別規定」が公布され、同時に、1988 年規定が廃止されることになった。 ② 主な内容 1988 年規定と比較し、本規定における主な改正点は以下のとおりである。 (ア) 労働禁止範囲の調整。女性従業員の労働禁止範囲は、1988 年規定には定められてお らず、1990 年に労働部が制定した「女性従業員の労働禁止範囲に関する規定」によ り定められている。本規定では、これらの禁止範囲が付録として盛り込まれ、かつ、 妊娠計画中の労働禁止範囲の削除、生理期間中の同範囲の縮小、妊娠中の同範囲の拡 大等、その内容についても若干調整された。

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(イ) 出産。出産休暇が 90 日から 98 日に引き上げられた。また、流産休暇が 15 日(妊 娠 4 箇月未満の場合)又は 42 日(妊娠 4 箇月以上の場合)であると明確化された。 (ウ) 法的責任。1988 年規定では、罰則について漠然とした定めしか規定されていなかっ たが、本規定により、過料の金額等、罰則の内容が明確化された。 (4) 国内非金融機構の香港特別行政区での人民元建て債券の発行に関する国家発展改革 委員会による通知6 (5) 国家発展改革委員会 2012 年 5 月 2 日公布 同日施行 ① 背景

オフショア人民元建て債券(「点心債(Dim Sum Bonds)とも呼ばれる」)の発行は、 2007 年「国内金融機構の香港特別行政区での人民元建て債券の発行に関する管理暫定 弁法」の公布以来、大いに注目されている。その最大の魅力は、中国内陸部での人民元 資金調達コストより金利が遥かに低いことである。なお、2011 年に、オフショアで適 法に取得した人民元資金を中国への投資に使えるようになったことから、海外投資者に とって、オフショア人民元建て債券の魅力は一層強くなったと思われる。日本企業の内、 三菱商事、三井住友銀行等もオフショア人民元建て債券を発行した実績がある。 上記オフショア人民元建て債券のメリット(融資コストが低い)により、国内の中央 企業が香港での債券発行を望み、申請が後を絶たないという。但し、これまでオフショ ア人民元建て債券を発行している中国企業は全て中央の国有企業に集中し、かつ、案件 ごとに当局の個別許可を受けなければならず、許可の審査基準が非常に不明確であった。 以上の実情を踏まえ、中国企業によるオフショア人民元建て債券の発行を正常化・規 範化するために、国家発展改革委員会により本通知が公布された。 ② 主な内容 本通知によれば、香港で人民元建て債券を発行できる主体は、金融機関でない中国企 業(外商投資企業を含む)まで拡大された。これにより、中国企業の資金調達方法が増 えたといえる。 オフショア人民元建て債券の発行は、依然として国家発展開発改革委員会に申請しな ければならないが、その判断基準が以前より明確になった。本通知の第 3 条によれば、 その条件は(1)良好なコーポレート・ガバナンス(2)良好な資金信用情況、(3) 強い収益力、(4)募集資金が、主に固定資産投資プロジェクトに使われ、かつ、国家 産業政策等に合致すること、(5)発行済み企業債券又はその他の債務について、デフ ォルト又は元利返済延長等がないこと、(6)直近 3 年に、重大な違法行為がないこと、 とされている。 先物取引会社の登録資本金又は持分の変更の関連問題に関する規定7 6 《国家发展改革委关于境内非金融机构赴香港特别行政区发行人民币债券有关事项的通知》(发改外资 [2012]1162 号) 7 《关于期货公司变更注册资本或股权有关问题的规定》(中国证券监督管理委员会公告[2012]11 号) 中国証券監督管理委員会 2012 年 5 月 10 日公布 同日施行

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① 背景 近年、中国の金融市場は開放が徐々に進んできたが、銀行、保険、証券等の金融業と 比べ、外資による先物取引業への参入に対して、中国政府は一貫して慎重であった。2007 年まで外資にとって先物取引業は禁止類であったが、2007 年の「外商投資産業指導目 録」の改正により、制限類に入れられた。但し、実務上それ以来中国当局に認可された 外資による先物取引業への参入は 3 件にとどまり、しかもこの 3 件は全て「中国本土・ 香港経済連携緊密化取決め」(CEPA)の下の、香港会社による参入であり、香港以外の 外資参入はこれまで 1 件もなかった。 本規定により、証券監督管理委員会が正式に外資による先物取引業への参入を認める ようになり、先物取引業界での外資プレイヤーの不在という状況がこれから大きく変わ ると見られる。 更に、5 月上旬に北京で幕を閉じた米中戦略・経済対話では、中国政府が将来的に先 物取引合弁会社での外資比率を最大 49%まで認めると宣言したため、これから先物取 引業への外資参入から目が離せないと思われる。 ② 主な内容 本規定によれば、外国投資者が直接又は間接的(会社の定款、コントロール・アグリ ーメント等により)に中国の先物取引会社に資本参加する場合、関連関係を有する者と 合算して、一つの外国投資者の保有する持分又は議決権が 5%を超えてはならない。但 し、「外商投資産業指導目録」の範囲内であれば、次に掲げる場合は前記の 5%の制限 を受けないものとする。(ア)外国投資者が上場会社への資本参加により間接的に先物 取引会社の持分又は議決権を保有し、かつ、当該上場会社の支配株主、筆頭株主及び実 際支配者が中国投資者である場合、(イ)外国投資者が証券会社への資本参加により間 接的に先物取引会社の持分又は議決権を保有し、かつ、当該証券会社が既に証券ブロー カー、証券自己売買、証券資産管理等三種類以上のライセンスを保有する場合。 2.主な司法解釈 (1) 独占行為により生じた民事紛争案件の審理における法律適用の若干の問題に関する 規定8 8 《最高人民法院关于审理因垄断行为引发的民事纠纷案件应用法律若干问题的规定》(法释[2012]5 号) 最高人民法院 2012 年 5 月 3 日公布 同年 6 月 1 日施行 ① 背景 2008 年 8 月に中国の独占禁止法が施行されて以来、グーグルによるモトローラ・モ ビリティの買収等、事業者集中審査について大いに注目されていたが、他方、独占禁止 法違反(主に独占的協定及び市場支配地位の濫用)を理由とする民事訴訟の件数は、2011 年末までに全国の人民法院に受理されたものが 61 件、審決されたものが 53 件にとどま る。なお、この 53 件の内原告が勝訴したのはごく一部であると報道されている。独禁 法関連の民事訴訟について、件数が少なく、かつ、原告の勝訴率が低い理由は、かかる 訴訟の専門性が高く、立証が難しい点にあると思われる。

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なお、これまで独禁法関連の民事訴訟に関しては、訴訟に先立ち管轄する行政当局に 告発する必要があるかという点、また管轄、審級等、審判の手続きも不明確であったた め、独禁法関連の民事訴訟の手続きの明確化も本司法解釈の狙いの一つであると思われ る。 ② 主な内容 本司法解釈の内容は多岐にわたるため、以下、特に重要な条文について解説する。 (ア) 管轄当局の判断を待たず提訴が可能。独禁法違反を理由とした民事訴訟を提起する 場合、独禁法の管轄当局の判断を待たず直接人民法院に提訴することが可能である (第 2 条)。この点については、中国のメディアは大いに注目しているが、実務上価 格協議の存在等を立証するのが依然として困難であると思われるため、直接提訴する より、同時に管轄当局に告発し、証拠の調査について当局の協力を得ることが得策で あると思われる。 (イ) 立証責任(1)。請求の根拠となる独占的協定が独占禁止法第 13 条第 1 項第 1 号か ら第 5 号(水平的協定)の定める独占的協定である場合、当該協定が競争を排除・制 限する効果を有しないことについて、被告が立証責任を負う(第 7 条)。本条により、 水平的な独占的協定について、原告の立証責任が軽減されたが、他方、独占的協定を 締結しても、直ちに独占禁止法に違反することとならず、被告により競争を排除・制 限する効果を有しないことが証明されれば、違法とならないとの結論になり、被告に 抗弁する若干の余地を与えた。 なお、独占禁止法第 14 条(垂直的協定)の立証責任については、本司法解釈のパ ブリックコメント募集稿において、上記第 7 条に相当する内容(被告の立証責任)が 規定されていたが、公布版では削除されることになったことから、垂直的合意につい て、競争を排除・制限する効果があるか否かは、被告に立証責任を負わせないものと 解釈できると思われる。 (ウ) 立証責任(2)。請求の根拠となる独占的協定が独占禁止法第 17 条第 1 項の定める 市場支配地位の濫用である場合、被告が関連市場において支配地位を有すること、及 び当該支配地位を濫用したことについて、原告が立証責任を負う(第 8 条)。上記(イ) の内容と異なり、民事訴訟法の法理から見れば当然なことであると解されている。 (エ) 専門家による説明。当事者は、専門家 1 名又は 2 名を出廷させ、案件に関して説明 させるよう、人民法院に申し立てることができる(第 12 条)。前述のように、独禁法 関連の民事訴訟は専門性が高く、原告がなかなか訴訟に踏み出せなかったが、専門家 の説明の申立てが可能となることにより、原告の立証責任が若干軽減され、特に個人 がこの制度を利用して提訴する案件が増加するのではないかと思われる。 (彭涛、鍾雪垠・中国弁護士)

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二.連載 中国企業法実務

第二弾:各種契約締結の実務(第 2 回/全 5 回)

第 1 回 2012 年 4 月号 合弁契約 第 2 回 2012 年 5 月号 賃貸借契約 第 3 回 2012 年 6 月号 労働契約 第 4 回 2012 年 7 月号 技術ライセンス契約 第 5 回 2012 年 8 月号 代理店契約 1.概要

第 2 回 賃貸借契約

賃貸借契約とは、賃貸人が賃貸物を賃借人に引き渡して使用、収益をなさしめ、賃借人 が賃料を支払う契約をいう9。賃貸借契約は、「契約法」の各論で具体的に契約の名称及び その詳細について定められている 15 種類の典型的契約10 そこで、中国進出の際には、まず建物賃貸借契約の交渉・締結という問題に直面するこ とになる。建物賃貸借については、根拠法令や司法解釈及び地方法規が数多く存在してい るため の一種であり、個人の日常生活や 企業の経済活動において非常に重要な契約である。 個人の日常生活の場合には、物の賃貸借行為もよく見られるが、企業活動の場合には、 不動産の賃貸借が圧倒的に多く、不動産の賃貸借に関する契約の重要性は格別に高い。中 国で外商投資企業の設立申請を行う時、又は外国企業常駐代表機構(駐在員事務所)の登 記申請を行う時には、登録住所地の証明が求められる。中国側パートナーが土地建物を提 供する合弁会社等の場合を除き、通常は、賃貸物件が用いられるので、登録住所地の証明 としては、建物賃貸借契約が必要となる。 11 2.賃貸借契約の交渉・締結に関する注意事項 、今回は、これらの根拠法に基づき賃貸借契約を締結する際の主な注意点を以下 のとおり紹介する。 (1) 賃貸物件の用途の確認 中国の不動産物件は、その用途に応じて「住宅」、「商業」、「オフィス」、「工場」等に分 けられており、建物は、基本的に決められた用途で使用しなければならない。小売り店舗 であれば、「オフィス」の物件では認められず、また、オフィスでも「住宅」の物件では認 められない。従って、賃貸物件を選定する際には、まず不動産権利証の開示を求め、対応 9 「中華人民共和国契約法」(1999 年 10 月 1 日施行、以下「契約法」という)第 212 条。 10 「契約法」各論で定めている 15 種類の典型的契約は、「有名契約」とも呼ばれ、具体的には、①売買契 約、②電力、水、ガス、熱エネルギー供給使用契約、③贈与契約、④金銭貸借契約、⑤賃貸借契約、⑥ファ イナンスリース契約、⑦請負契約、⑧建設工事契約、⑨運送契約、⑩技術契約、⑪寄託契約、⑫倉庫保管契 約、⑬委任契約、⑭斡旋契約、⑮仲介契約の 15 種類である。 11 不動産賃貸借に関しては、主に①「契約法」、②「商品建物賃貸借管理弁法」、③「都市建物賃貸借紛争 事件の審理における具体的な法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈」等が挙げられる。

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する用途になっているかを確認すべきである。 (2) 賃貸人の契約締結権限 賃貸人は、契約の権利義務の主体として、基本的に民事上の契約履行能力を有する者で なければならない。契約に関する紛争が生じ、司法的救済措置を採る場合、相手側を特定 する必要があり、また、通知等の送達(中国では、通知の効力は到達主義)が必要な場合、 相手側の住所等を特定する必要があるので、契約締結時に、賃貸物件に関する不動産権利 証に加えて、会社であれば営業許可証、個人であれば身分証明書の写しを提供させ、契約 書に添付するのが望ましい。 賃貸物件について、2 名(又は 2 社)以上の権利者が存在する場合、権利者全員の契約 履行能力を確認する必要があり、賃貸借契約に全員の署名を要する。 (3) 賃借人の契約締結の名義 新たに会社を設立する場合には、設立申請時にその住所地の物件の賃貸借契約を登記機 関へ提出する必要があるが、その時点で、会社はまだ設立されていないので、本来、設立 予定の会社名義では、賃貸借契約が締結できないはずであり、「鶏が先か、卵が先か」とい う問題に直面する。 この場合、実務上は、設立予定の会社の出資者(株主)が賃借人として賃貸人と賃貸借 契約を締結するのが一般的である。この場合、外国の会社が賃借人となっても問題はない。 また、設立予定の会社の法定代表者になる予定の個人が、個人名義で締結することもある。 この賃貸借契約の名義人は、出資者(株主)又は個人となるが、通常、このような賃貸 借契約においては、「新たに会社が設立された時点で、本契約の賃借人は同会社に変更し、 本契約における賃借人の全ての権利・義務は同会社が承継する」という特約を入れること で対応する。 (4) 賃貸借契約の届出 建物賃貸借契約の締結後 30 日以内に、建物賃貸借当事者は、賃貸借建物所在地の直轄市、 市、県人民政府の建設(不動産)主管部門で建物賃貸借登記届出を行わなければならない とされる12 また、上記の建物賃貸借登記届出を行うにあたり、建物賃貸借当事者は、建物賃貸借契 約、建物賃貸借当事者の身分証明、建物所有権証書又はその他の合法的な権利帰属につい ての証明及び直轄市、市、県人民政府の建設(不動産)主管部門が定めるその他の資料を 提出し 。 13、直轄市、市、県人民政府の建設(不動産)主管部門が不備のないことを確認し た後、建物賃貸借登記届出証明を発行する。同建物賃貸借登記届出証明には、賃貸人の氏 名又は名称、賃借人の氏名又は名称、有効な身分証書の種類及び番号、賃貸建物の位置、 賃貸借の用途、賃料の金額、賃貸借機関等の情報が記載される14 12 「商品建物賃貸借管理弁法」第 14 条 13 「商品建物賃貸借管理弁法」第 15 条 14 「商品建物賃貸借管理弁法」第 16 条、第 17 条

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3.賃貸借契約の主な記載事項 「商品建物賃貸借管理弁法」では、建物賃貸借契約の内容は当事者双方により約定し、 一般的に以下の内容を含めなければならないと定めている。 ① 建物賃貸借当事者の氏名(名称)及び住所 ② 建物の位置、面積、構造、付属施設、家具及び家電等室内設備の状況 ③ 賃料及び敷金の金額、支払方法 ④ 賃貸借の用途及び建物使用条件 ⑤ 建物及び室内施設の安全性能 ⑥ 賃貸借期間 ⑦ 建物修繕責任 ⑧ 建物管理サービス、水道、電気、ガス等の関連費用の納付 ⑨ 紛争解決方法及び違約責任 また、同規則の規定により、各地の建設(不動産)管理部門は、工商行政管理部門と共 に建物賃貸借契約の雛型を制定しており、実際、中国で建物賃貸借契約を締結する際には、 これらの雛型を使用して締結されるケースが多く見受けられる。 (1) 建物賃貸借当事者の氏名(名称)及び住所 賃貸人は、適法な権利を有する者でなければならない。中国の一部の地域では、賃貸借 契約書に貸借当事者又は住宅の使用者の氏名、住所、身分証明書の種類及び番号の記載が 求められている。また、身分証明書や営業許可証等を提出できない者への賃貸借は禁止さ れている地域もあるので、契約締結前の段階から、これらの条件の有無を確認することが 必要である。 (2) 建物の位置、面積、構造、付属施設、家具及び家電等室内設備の状況 物件及び付属設備等の詳細は、契約の目的及び履行に関わる重要な事項であるため、契 約に明記する必要がある。付属施設及び設備の数量及び使用等の状況(汚れや損壊の有無 等)については、当事者の引渡義務及び明け渡し義務等の範囲を特定するために、契約(又 は附属書)において明記したほうが望ましい。実務上は、「建物引渡確認書」、「建物明け渡 し確認書」等がよく利用されている。 (3) 賃料及び敷金の金額、支払方法 賃貸借期間中の賃貸人による一方的な賃料の引上げは禁止されているため、賃料の変更 には当事者間の合意が必要である15 賃貸借契約のこの部分の内容は、賃借人が、契約に約定した賃貸借用途及び使用条件に 。敷金については、各地で慣習が若干異なり、上限が 定められていない地域もある。 (4) 賃貸借の用途及び建物使用条件 15 「商品建物賃貸借管理弁法」第 9 条

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従い、合理的に建物を使用しなければならず、また室内設備を撤去・変更してはならず、 他の不動産所有者及び使用者の合法的権益に損害を与えてはならないことなど、主に賃借 人の義務について定めている。また、通常、この部分では、賃借人による不適切な使用等 の原因により賃借建物及び設備の損壊をもたらした場合には、賃借人は、修復又は賠償の 責任を負うなどの内容も記載される。 (5) 建物及び室内施設の安全性能 賃貸物件及び物件内施設の性能が原因で、賃借人が損害を被った場合には、賃貸人が損 害賠償責任を負うことになるため、安全性能や責任の範囲等を賃貸借契約で明確に定めて 賃借人に告知する必要がある。 (6) 賃貸借期間 賃貸借期間は 20 年を超えてはならない。20 年を超える場合、その超過部分は無効にな る。また、賃貸借期間が 6 ヶ月以上の場合、書面によって契約を締結しなければならず、 書面による契約が締結されていない場合、期間の定めのない賃貸借とみなされる16 また、期間の定めのない賃貸借契約の場合、賃貸人は、自らが居住するために、随時物 件の明渡しを請求することができるので 。 17 この部分の義務は、原則として、賃貸人の義務である。賃貸人は、契約の約定どおりに 建物の修繕義務を履行し、かつ建物及び室内設備の安全性を確保しなければならず、損壊 した建物を修復せず、賃借人の使用に影響を与えた場合には、約定に従って賠償責任を負 い、又は賃料を減額しなければならない 、このような事態を避けるために、賃借人とし ては、賃貸借契約に賃貸物件の賃貸借期間を明確に定めることが重要である。 (7) 建物修繕責任 18 賃貸借契約をめぐる紛争解決の方法は、裁判又は仲裁のいずれもよく用いられるが、実務 上、事実関係の究明や紛争解決のし易さ等の観点から、物件所在地の人民法院を賃貸借契約 。 上記賃貸人の義務は、当事者間で約定することもできるので、物件の維持・修繕の責任 範囲及び費用負担について、賃貸借契約に明確に定めておくのが望ましい。 (8) 建物管理サービス、水道、電気、ガス等の関連費用の納付 「契約法」又は「商品建物賃貸借管理弁法」では、具体的に定めていないが、一部の地 方法規では、建物賃貸借の関連費用について契約に別段の定めがなければ、賃借人の負担 とする規定等が存在する。これらの関連費用の負担は、賃貸物件によってそれぞれ異なる ので、契約に明確に定めておくのが望ましい。 (9) 紛争解決方法 16 「契約法」第 214 条、第 215 条 17 『「民法通則」の全面的執行過程における若干の問題に関する意見(試行)』第 119 条 18 「契約法」第 221 条、「商品建物賃貸借管理弁法」第 9 条

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の合意管轄裁判所に指定するケースが多く見受けられる。 [応用編―中途解約条項について] 日本の賃貸借契約(特に一般住宅用)では、期間を定めた契約であっても、借主側から 1 か月前に申し入れることによって、中途解約ができ、中途解約に伴うペナルティがない 場合が多い。 ところが、中国では、一般には借主の中途解約権は約定されないことが多く、中途解約 は、契約違反となり、最低でも、保証金(敷金)の没収となることが多い。また、貸主側 が提供する雛型では、契約残存期間の家賃を賠償金として請求されるという条項が入って いることも少なくない。 上海等の大都市には日本人向けの不動産仲介業者が多数あり、日本語でサービスを受け られ、日本国内の延長線の感覚で家探しをすることができるが、契約条項については、あ くまで中国現地基準に従うことになるので、特に、いつ帰任・転任となるかわからない駐 在員の住宅については、中途解約の条件について、留意すべきである。 (莊凌云・中国弁護士)

三.上海法務事情

1.上海市律師協会特別会員制度の始動 本稿 2011 年 7 月号で紹介した、上海 市律師協会特別会員制度が、6 月 1 日か らいよいよスタートする。 「律師協会」は日本の弁護士会に相当 し、日本と同様の強制加入制がとられて いる。 弁護士が、地方と全国の律師協会の双 方の会員となる点も日本と同様である。 他方で、律師協会には、団体会員と個 人会員があり、法律事務所が団体会員に なり、それを前提として、法律事務所の構成員である弁護士が個人会員となるという二重の 会員制度になっている点は、日本と異なる。そのため、法律事務所に所属しない、企業内弁 護士や、政府機関に所属する弁護士は、律師協会の会員となれないのが中国の現状である。 また、外国弁護士については、専ら司法行政部門の監督下にあり、また、中国の法律事務所 と事務所を共同経営することも、中国の法律事務所に雇用されて、外国弁護士としての業務 を行うこともできないため、律師協会の会員にはなれない。 しかし、上海では、政府内弁護士(公職律師)と企業内弁護士(公司律師)が合計で 800

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名ほどおり、また、上海における外国法律事務所の代表処が 147 に及んでおり、これらの、 「両公一外」の弁護士は、上海で登録している弁護士(13,761 人)19 律師協会の会費は、通常の登録弁護士の場合、個人会員が今年度は年間 1,300 元 の数と比べても、1 割 程度の勢力になるといえる。 そこで、これらのカテゴリーの弁護士も、律師協会に一定の範囲で参加をさせて、登録弁 護士との交流を促進するため、2010 年上海市律師協会の定款が改正されて、特別会員制度 の採用が決まった。そして、1 年半の準備・検討期間を経て、6 月 1 日からの実施となった。 20、団体 会員は事務所の規模により、20,000 元から 50,000 元となる。個人の負担額は、日本の弁護 士会(個人のみ月数万円)と比べると相当低い。特別会員については、通常の会員よりも権 利義務が制限されているため、個人会員は、政府内弁護士と企業内弁護士が年間 300 元、外 国弁護士が年間 500 元となっている。なお、外国法律事務所の代表処は団体会員として一律 年間 30,000 元が徴収される。 なお、特別会員については、任意加入となっており、5 月 16 日に行われた「特別会員作 業委員会」の開催時点では、147 ある外国法律事務所の代表処のうち、僅か 15(個人会員の 人数は 23 人)という数字であった。 6 月には、入会式典、その後も交流会等が企画されているが、特別会員制度が根付くため には、いかに意義のある活動がなされ、多くの参加者が積極的に参加するかにかかっている といえる。 2.上海市企業昇給ガイドライン(2012 年) 5 月 25 日に、上海市人力資源社会保障局(労働局)から、今年度の昇給ガイドラインが 公布された。 「平均ライン」は、経営状態が正常で、収益が上がっている会社について適用がある。そ のうち、前年度平均賃金が市の平均賃金(4,331 元)の 2 倍(8,662 元)以上である場合に は、平均ラインを下回ったレベルでの昇給が可能である。 「上位ライン」は、経営状態が正常で、収益が比較的良い会社で、かつ、前年度平均賃金 が市の平均賃金の 60%を下回る企業に適用がある。 「下位ライン」は、業績が芳しくない企業に適用される。経営が困難で赤字の企業につい ては、従業員代表大会等で議論して、昇給なしとすることもできる。 2010 年 2011 年 2012 年 上位ライン 16% 18% 16% 平均ライン 11% 13% 12% 下位ライン 4% 6% 5% また、当該ガイドラインの「実施意見」として、賃金水準の低い第一線の従業員の昇給率 19 これは、今年 3 月に開かれた弁護士代表大会(律師協会の最高権力機関)で紹介された数字。 20 昨年度は、1,500 元であったが、上海市律師協会は、会員数が年間 1 割近くも増加して財政が豊かである 反面、競争激化により、若手弁護士の経済的負担軽減の必要があるために、200 元引き下げられた。

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は、全従業員の昇給率より低くなってはならないこと、また、一般従業員の昇給なくして経 営者や管理職の昇給をするのも適切でない旨が強調されている。 昇給は、企業の経営判断に属する事項であり、本件ガイドラインに、法的な拘束力はない が、人件費の高騰傾向の中で、優秀な従業員の安定雇用を図るためには、昇給の判断におい て、本件ガイドラインを参照するのが有効である。 (参考)近年の上海市最低賃金・平均賃金の推移 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 最低賃金 960 (4 月 1 日~) 960 (据え置き) 1,120 (4 月 1 日~) 1,280 (4 月 1 日~) 1,450 (4 月 1 日~) 上昇率 14.3% 0% 16.7% 14.3% 13.3% 年平均賃金 39,502 42,789 46,757 51,968 月平均賃金 3,292 3,566 3,896 4,331 上昇率 13.8% 8.3% 9.3% 11.1% (山根基宏・弁護士) TMI 中国最新法令情報―2012 年 5 月号― 発 行:TMI 総合法律事務所 監 修:何連明・外国法事務弁護士 編集主幹:山根基宏・弁護士 発 行 日:2012 年 5 月 31 日

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