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台 灣 日 語 教 育 學 會 J-GAP TAIWAN Can-do 実 践 研 究 国 際 シンポジウム タイトル: J-GAPのこれからー 台 湾 韓 国 日 本 の 発 足 推 進 今 後 日 時 :2015 年 3 月 7 日 ( 土 曜 日 )8:30-18:00 会 場 : 東 吳 大

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台灣日語教育學會 J-GAP TAIWAN

「Can-do 実践研究国際シンポジウム」予稿集

―「J-GAP のこれからー台湾、韓国、日本の発足・推進・今後」―

日時:2015年3月7日(土曜日)8:30-18:00 会場:東吳大學第一教研大樓 1F 普仁堂(台北市士林区臨渓路70号) 主催:東呉大学日本語文学系・台湾日語教育学会 J-GAP TAIWAN 協賛:国際交流基金・科技部人文社会科学研究中心

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台灣日語教育學會 J-GAP TAIWAN

「Can-do 実践研究国際シンポジウム」

タイトル:「J-GAPのこれからー台湾、韓国、日本の発足・推進・今後」 日時:2015年3月7日(土曜日)8:30-18:00 会場:東吳大學第一教研大樓 1F 普仁堂 (台北市士林区臨渓路70号) 主催:東呉大学日本語文学系・台湾日語教育学会 J-GAP TAIWAN 協賛:国際交流基金・科技部人文社会科学研究中心 日程表 8:30-9:00 受付:東呉大学第一教研大楼 1階 普仁堂の前 9:00-9:10 開会式 頼錦雀理事長 (台湾日語教育学会会長、東呉大学外国語学部部長) 普仁堂 9:10-10:00 基調講演: 世界をつなぐ日本語教育 講演者: 當作靖彦先生 (南カリフォルニアー大学サンディエゴ校 教授・J-GAP 総括) 司会 :頼錦雀先生 10:00-10:50 基調講演: 韓国におけるJ-GAPの発足・推進 ・今後 講演者: 鄭起永先生(釜山外国語大学教授日語学院院長・J-GAP韓国代表) 司会:蘇克保先生 10:50-11:40 基調講演: グローバル人材育成のための日本語アーティキュレーション 講演者: 堀井恵子先生(武蔵野大学大学院言語文化研究科教授・中日 J-GAP 代表) 司会:黄英哲先生 11:40-12:30 昼食(戴氏基金會議室) 12:30-13:30 普仁堂 戴氏基金會議室 發表者:周若珍(淡江大学日本語学科修士課程) 題 目:高校と大学間の日本語教育のアーティキュレーションの現状 ―中国・韓国・インドネシアの例を中心に- 司会:上条純恵先生 發表者:神作晋一(南台科技大学応用日本語学科 助理教授) 題 目:科技大学の既習者クラスにおける会話課程の実践―発表・ プレゼンテーションの活動を例にー 司会:黄鈺涵先生 發表者: 荒井智子(銘傳大学助理教授) 題 目:日本語使用場面調査結果から見る「日語A1・A2級的教材教法」 の発展的活用―日本語専攻の台湾人大学生を対象にしてー 司会:頼美麗先生 發表者:王怡人(東海大学日本言語文化学科 助理教授) 題 目:言語知識を課題遂行能力へ変身させる会話授業の試み 司会:許均瑞先生 13:30-13:40 休憩 13:40-14:40 發表者:内田さくら(東呉大学日本語文学科博士課程) 題 目:交流会で使える日本語の実践研究の一試み ー台北市にある高校の例を中心にー 司会:郭碧蘭先生 發表者:廖伯承・今福宏次 (台湾科技大学数位学習與教育研究所修士課程) 題 目:Maharaを用いたパスポート型eポートフォリオの構築を目指して 司会:工藤節子先生 發表者:小池一平(東海大学日本言語文学科修士課程) 題 目:活動型授業を通して到達できるA1レベルの言語能力とは? ―中等教育の第二外国語の授業の場合― 司会:施信余先生 發表者:陳姿菁(開南大学応用中国語学科・応用日本語学科 副教授) 題 目:自己評価リストを用いた会話活動の実践 司会:陳美玲先生 14:40-14:50 休憩 (以下のプログラムは普仁堂にて開催) 14:50-16:20 發表者:張瑜珊(新生醫護管理專科學校應用日語學科 助理教授兼學科副主任) 題 目:「~ができる」だけでいいのかーー内容言語統合型学習の提案 司会:羅曉勤先生 發表者:黄英哲(台中科技大学応用日本語学科 副教授兼学科主任) 題 目:台湾の日本語学科における卒業制作の実行上の問題点と指導上の注意点 司会:葉淑華先生 發表者:黄淑燕(東海大学日本言語文化学科 副教授兼学科主任) 題 目:東海大学日本言語文化学科言語コア科目のデザインと試行錯誤 司会:楊錦昌先生 16:20-16:30 休憩 16:30-17:30 パネルセッション 司会:當作靖彦先生「総評と提案」 鄭起永先生・奈須吉彦先生・陳淑娟先生 17:30-17:40 閉会式 陳淑娟先生 (台湾日語教育学会J-GAP TAIWAN 代表) 18:00~ 懇親会 紅豆食府 天母SOGO8F ★ 申し込みサイド: http://goo.gl/forms/1uKLLEA2IZ ★ 申し込みの締め切り:2015 年 03 月 05 日 17:00 まで ★ お問い合わせ:jgaptaiwan@gmail.com

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II 各位日語教育老師先進: 感謝您今天的參與! 台灣日語教育學會J-GAP TAIWAN 的日語教師研習活動,進入了第三年;我們的目 標是力圖解決高中日語教學與大學日語教學的銜接。為下ㄧ代學童提供優質的教學 制度環境,具體的動作是從日語教師自我成長的學習開始,擬漸漸驅近建構外語課 綱的制度! 我們在台灣的北、中、南開過29 場的例會(研習會),會議紀錄與影片公開在官網上, 隨函敬呈我們29 次會議紀錄提供各為參考。http://jgap.tw/?p=142 同時邀請各位先進參加我們第30 次的特別活動,3 月 7 日在東吳大學舉行的「台灣 日語教育學會J-GAP TAIWAN 的國際學術研討會」,http://goo.gl/forms/1uKLLEA2IZ 敬祈了解日語教學與國際接軌的ㄧ部份,共同參與探討在台灣建構銜接性外語學習 制度的可能性,在少子化之下,吸引更多學童選擇進入有校學習日文行列! 感謝大家!也歡迎有興趣的老師先進們加入J-GAP TAIWAN!

台灣日語教育學會J-GAP TAIWAN 代表 陳淑娟 敬邀

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III 目 次 一、プログラム 二、J-GAP TAIWAN 代表からごあいさつ 三、発表規則 四、基調講演 世界をつなぐ日本語教育 當作靖彦先生 1 韓国におけるJ-GAPの発足・推進 ・今後 鄭起永先生 5 グローバル人材育成のための日本語アーティキュレーション 堀井恵子先生 11 五、論文発表 高校と大学間の日本語教育のアーティキュレーションの現状 ―中国・韓国・インドネシアの例を中心に― 周若珍 16 日本語使用場面調査結果から見る「日語 A1・A2 級的教材教法」の発展的活用 ―日本語専攻の台湾人大学生を対象にして― 荒井智子 24 交流会で使える日本語の実践研究の一試み ―台北市にある高校の例を中心に― 内田さくら 32 活動型授業を通して到達できるA1レベルの言語能力とは? ―中等教育の第二外国語の授業の場合― 小池一平 41 「~ができる」だけでいいのか―内容言語統合型学習の提案― 張瑜珊 48 台湾の日本語学科における卒業制作の実行上の問題点と指導上の注意点 黄英哲 56 東海大学日本言語文化学科言語コア科目のデザインと試行錯誤 黄淑燕 62 科技大学の既習者クラスにおける会話課程の実践 ―発表・プレゼンョンの活動を例に― 神作晋一 70 言語知識を課題遂行能力へ変身させる会話授業の試み 王怡人 78 Maharaを用いたパスポート型eポートフォリオの構築を目指して 廖伯承・今福宏次 87 自己評価リストを用いた会話活動の実践 陳姿菁 96 パネルセッション 司会:當作靖彦先生「総評と提案」 鄭起永先生・奈須吉彦先生・陳淑娟先生 106 六、実行委員会

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IV 議 事 規 則 一.発表前に携帯電話をお切りください。 二.時間配分 1.進行役;講演者、発表者及び司会者の紹介をします。 2.講演者;50 分間の講演です。質問の時間はありません。 3.発表者;一つの発表は 20 分です。質問討論等の時間は 10 分間です。 4.司会者;発表者の紹介、発表についての質問、討論をします。 三.制限時間について 1.一回目のベルは発表の終わり 3 分前に一度鳴ります。二回目のベルは発表時 間の 20 分が過ぎると二度鳴ります。 2.討論の時間では 10 分過ぎるとベルが二度鳴ります。 3.休憩時間の終わり、発表前にベルが一度鳴ります。 四.発言について 1.大会の正式言語は中国語、日本語とします。 2.質問の際には所属、お名前をおしゃってからご発言願います。

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基調講演1:世界をつなぐ日本語教育

講演者:當作靖彦先生

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基調講演 2:韓国における J-GAP の発足・推進・今後

講演者:鄭起永先生

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基調講演 3:グローバル人材育成のための

日本語アーティキュレーション

講演者:堀井恵子先生

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会場 1:普仁堂

12:30-13:30 發表者:周若珍(淡江大学日本語学科修士課程) 題 目:高校と大学間の日本語教育の アーティキュレーションの現状 ―中国・韓国・インドネシアの例を中心に- 司会:上条純恵先生 發表者: 荒井智子(銘傳大学助理教授) 題 目:日本語使用場面調査結果から見る 「日語A1・A2級的教材教法」の発展的活用 ―日本語専攻の台湾人大学生を対象にしてー 司会:頼美麗先生 13:30-13:40 休憩 13:40-14:40 發表者:内田さくら(東呉大学日本語文学科博士課程) 題 目:交流会で使える日本語の実践研究の一試み ー台北市にある高校の例を中心にー 司会:陳文敏先生 發表者:小池一平(東海大学日本言語文学科修士課程) 題目:活動型授業を通して到達できるA1レベルの言語能力とは? ―中等教育の第二外国語の授業の場合― 司会:施信余先生 14:40-14:50 休憩 14:50-16:20 發表者:張瑜珊(新生醫護管理專科學校應用日語學科 助理教授兼 學科副主任) 題 目:「~ができる」だけでいいのかー ー内容言語統合型学習の提案 司会:羅曉勤 先生 發表者:黄英哲(台中科技大学応用日本語学科副教授兼学科主任) 題 目:台湾の日本語学科における卒業制作の実行上の問題点と 指導上の注意点 司会:葉淑華 先生 發表者:黄淑燕(東海大学日本言語文化学科 副教授兼学科主任) 題 目:東海大学日本言語文化学科言語コア科目のデザイン と試行錯誤 司会:楊錦昌先生 16:20-16:30 休憩 16:30-17:30 パネルセッション 司会:當作靖彦先生「総評と提案」 鄭起永先生・奈須吉彦・陳淑娟先生 17:30-17:40 閉会式 陳淑娟先生 (台湾日語教育学会J-GAP TAIWAN 代表)

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高校と大学間の日本語教育のアーティキュレーションの現状

―中国・インドネシア・韓国の例を中心に―

周若珍 淡江大学日本語学科 修士課程二年 【要旨】 2010 年に台北で開催された日本語教育国際研究大会で當作靖彦先生により、 日本語教育のアーティキュレーション・プロジェクトが提案された1 。欧米な どでは、幼稚園から大学まで連続した言語教育プログラムを展開し成功してい る例も多く見られる中で、台湾では中等教育と高等教育の連関が欠如している。 そこで問題点として挙げられたのは、「指導要領の不備」「大学における日本語 既習者の受け入れ体制の不備」「大学に高校時代履修単位の認定を求める思考 様式の非分」などである2 特にここ十数年来、高校での日本語教育が盛んになってきたにもかかわらず、 アーティキュレーションが重視されていないことは、学習意欲が削がれてしま うことになる。本発表では、文献調査、インタビューなどの方法を通して、日 本語教育が盛んな中国や韓国、また近年学習者の増加が注目されるようになっ たインドネシアなどの国では、高校と大学の間のアーティキュレーションに関 してどのような問題があり、どのような取り組みを行っているのかをまとめ、 報告したい。同じアジアの国であるため、台湾における高校と大学間のアーテ ィキュレーションのあり方を見直す際、参考になるところが多いと考えられる。 キーワード:アーティキュレーション 中国 韓国 インドネシア 1. はじめに 台湾では、高校によって違うが、ほとんどの一般高校では一年または二年に わたって、高校生は選択科目として英語以外の「第二外国語」を履修すること ができる。中でも日本語は学習者数が 3 万人にも上り、最も人気の集まる第二 1 2012 年日本語教育国際研究大会実行委員会「第 11 回日本語教育国際研究大会 2012 年日 本語国際研究大会(ICJLE2012)報告」『日本語教育』154 号 P.22 2 賴錦雀(2009)「台湾の日本語継続教育に対する一考察―普通高校から総合大学への場合を 中心に―」『台湾日語教育学報』第 13 号 pp.291-308

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外国語となっている3。また、2008 年から、「高級中學學生預修大學第二外語課

程(以下、AP コース4と呼ぶ)試辦計畫」が始まり、「第二外語能力測驗―基礎

級(Second Foreign Language Proficiency Test-Basic)」や日本語能力試験 N4・N5 に合格できるような、より高いレベルまで学習できる場が提供されるようにな った。そのほか、職業高校の応用日本語科で三年間しっかりと日本語を身に付 け、大学に入る前に、すでに日本語能力試験 N3 以上に合格した学習者も少な くない。 ところが、高校での学習で少なくとも初級レベルの日本語能力を持つように なったこれらの学習者は、大学では日本語学科に入って日本語を専攻として勉 強し続ける人もいれば、別の学科に所属しながら、第二外国語として日本語を 学習し続ける人もいるが、どちらも多くの場合はもう一度ゼロから勉強し始め ざるを得ないことになっている。言い換えれば、高校での日本語教育が盛んに なってきたにもかかわらず、高校と大学の間のアーティキュレーションはそれ に比例するほど重視されていないのが現状であろう。 台湾でのアーティキュレーションの問題解決の糸口を探るにあたって、他国 での日本語教育のアーティキュレーションの実態を把握することも大切であ る。そこで、本稿は中国、韓国、インドネシアを中心に、文献とこれらの国の 日本語教育事情に詳しい 6 人の学者へのインタビューデータを通じて、それぞ れの国での日本語教育の現状や問題点をまとめ、台湾への示唆を考えたい。 2. 先行研究 国際交流基金(2013:12)によると、世界でもっとも日本語学習者が多い国 は中国であり、全学習者の 26.3%を占めている。次に多いのはインドネシアで あり、全学習者の 21.9%を占めている。三番目に多いのは韓国であり、全学習 者の 21.1%を占めている。3 か国で全学習者の 7 割弱も占めている。中国、イ ンドネシア、韓国での日本語教育の現状については、すでに数え切れないほど の先行研究があるが、アーティキュレーションに軸足を置くような研究はまだ 多いとは言いがたい。 當作(2010)によると、2010 世界日本語教育大会のシンボジウムでは、各 3 高級中學第二外語教育學科中心「普通高級中學開設第二外語課程學校、班別及人數統計表」 を参照。http://www.2ndflcenter.tw/class_detail.asp?classid=61 2014/10/30 閲覧

4 Advanced Placement course、即ち、高校生の間に高校以上のレベル、大学レベルの授業がと れる制度である。

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18 国、各地域の中等・高等教育における日本語教育の共通の問題点の一つとして、 アーティキュレーションの欠如が取り上げられた。さらに、「アーティキュレ ーションの欠如は、それぞれの地域、国の教育制度、国情、教育文化、社会文 化、政治的背景などと複雑に結びついており、地域的な問題と言ってよい」と 指摘している。 また、大舩他(2012)では、中等教育における「学習の継続性」を支えるた めに必要なものとしては、「国内高等教育機関との連携」と「国内外の企業等 の社会組織との連携」が重要であると述べている。 本稿では学習者数が多く、且つ台湾と同じアジアの国である中国、インドネ シア、韓国を中心に、この 3 か国では日本語教育におけるアーティキュレーシ ョンはどのように考えられているか、達成できた部分と欠如している部分など を明らかにし、報告したい。 3. 中国における日本語教育のアーティキュレーションの現状 中国は世界 1 位の 100 万人もの日本語学習者を持っているが、詳しく見てい くと、その中で最も多いのは高等教育の学習者であり、中等教育の日本語学習 者が占めた割合はわずか 8.5%であることが分かる(国際交流基金,2013:24)。 ちなみに、中国の中等教育の日本語学習者のうち、東北三省(黒竜江省、吉林 省、遼寧省)が約 70%を占めている(朴,2009)。 それゆえ、学校によっては、中学 1 年から日本語を勉強し、大学に入る時点 ですでに 6 年も勉強してきた学習者もいるにもかかわらず、割合としては極少 数であるため、中等教育と大学の間におけるアーティキュレーションはほぼ無 視されていると言えよう。 興味深いことに、大学側はかえって高い日本語能力の持っている学生をあま り歓迎していないという。それは中国の大学では、卒業するまでに「大学英語 試験5」の 4 級に合格しなければならないという規則があるが、中等学校で日 本語を第一外国語や専攻として学習してきた学習者は、英語能力が劣れている 傾向があるため、大学での英語学習の学習成果が芳しくないからであると言わ れている。 また、中国は国土が広く、社会的格差も大きくあり、日本語教育における地 域差が激しいと考えられる。地方での中等教育機関における日本語教師の質に

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19 もばらつきがあるため、中学や高校で日本語を勉強したとしても、間違った言 語知識や発音を覚えてしまった場合もあるという。特に発音が定着していると、 矯正はなかなか難しいとされているので、大学側にとってはむしろゼロからの 学習者のほうが好ましいかもしれないという。 4. インドネシアにおける日本語教育のアーティキュレーションの現状 インドネシアでは、中等教育の学習者が全学習者で占めた割合が圧倒的に高 く、約 95.8%に達している。それは 2006 年に中等教育のカリキュラムが改定 され、高校では第二外国語を 3 年間継続して学習することができるようになっ たためである。また、2010 年に実施された EPA6の影響で、中等教育機関で社 会福祉を専攻している学生たちは、日本語への学習意欲が大きく上がった(国 際交流基金,2013:38-39)。 日本語学習者数は増えつつあるが、日本語教育における問題点はさまざまで、 とてもアーティキュレーションなどを考える余裕がないという。高校では最大 3 年間日本語を学習し続けられるが、高校 2 年や 3 年になってから勉強しはじ める学生もいるため、クラスにはかならず既習者と未習者が混在している。 現時点で最も大きな課題とされているのは、日本語教師の人数や能力の不足 など、教師に関する問題である。インドネシアでは日本企業が多く駐在してい るので、学習者には日本語を身につければ、将来日系企業に入っていい仕事に 就くことができるという高い動機づけがある。学習者の数が多く、日本語教師 の需要も高まっている一方、大学で日本語を勉強し、卒業した者は、やはり企 業への就職を優先させ、うまくいかない場合、日本語教師として日本語教育に 携わる者も少なくないという。 5. 韓国における日本語教育のアーティキュレーションの現状 韓国では、日本語学習者の中で中等教育の学習者が占めた割合が最も高く、 約 82.6%である。しかし、周知のように、「2009 改定教育課程」の実施に伴い、 必修科目だった第二外国語は「裁量科目」という選択科目に変更された結果、 中等教育における学習者が激減した(国際交流基金,2013:28-29)。 韓国での日本語教育のアーティキュレーションの活動は、モデル地域である

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20 釜山で盛んに行われている。鄭他(2013)によると、釜山外国語大学の日本語 学科では、高校までの学習が継続的に行われているとは言いがたい状況であっ たため、学習者が自分のレベルに合わせたクラスに入るように、2013 年度入 学の 1 年生を対象にレベルチェックを行ったなど、アーティキュレーションの 達成に積極的に取り組んでいる姿勢が見られる。 ところが、他の地域、例えばソウルではアーティキュレーションが同じよう に重視されているかというと、そうとは限らないという。つまり、アーティキ ュレーションの大切さをどのようにしてより多くの人に納得してもらうかが、 これからの課題であると思われる。 韓国ではガイドライン、教科書、評価基準を制作するそれぞれのチームがあ り、コースデザインはしっかりできているが、日韓関係などにも関わるが、日 本語という科目の位置づけはどうなのか、日本語教育の意味は何なのかと、教 師が悩み始めているようである。 6. まとめと台湾における日本語教育への示唆 中国では高等教育の日本語学習者が最も多いのに対し、インドネシアと韓国 では中等教育の日本語学習者のほうが大半を占めている。しかし、アーティキ ュレーションの視点から見ると、継続的な学習は中国でもインドネシアでもあ まり重視されていないと考えられる。 この 3 か国で共通して見られるのは、普通高校で日本語を第二外国語として 勉強した学習者は人数が多いが、言語知識としての日本語能力のレベルはまだ まだゼロに近いのに対し、職業高校の応用日本語科などで日本語を専門として 勉強し、N1 や N2 に合格した学習者は、日本語能力は高いが、人数はまだ少な いので、このような学習者のためにわざわざ新たなコースを作る必要があるの かという疑問である。台湾もまさに同じ課題に直面しているのである。 ところが、日本語能力がまだ低いと言っても、約百時間ぐらいの時間をかけ て学習したのは事実であり、それを無駄にするのは、学習者にとっても、教師 にとっても、学校にとってももったいないことであろう。釜山外国語大学のよ うなレベルチェックを導入するのは、望ましい解決法の一つであると思われる。 すぐには導入できない教育機関では、違うレベルの教材を用意したり、協働学 習の教室活動を取り入れたりして、教師が授業をもっと工夫しなければならな い。 また、各国の教育環境や文化に合わせてガイドラインを作るのも、アーティ

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21 キュレーションを達成させるための一つの重要なステップである。韓国にもイ ンドネシアにも中等教育のための国定教科書があり、中国にはまだ国定教科書 がないが、大連市では共通した教科書を使うことになっている。台湾では中等 教育のために作られた日本語教科書がたくさんあるが、全てガイドラインに沿 って作られたわけではないため、同じ学習時間数で勉強した学習者でも、学校 によって、または同じ学校にいてもクラスによって能力にばらつきが見られる。 もしかしたら、大学の日本語教師は「大学ではここから教えたいから、学習 者に高校でしっかりとそこまでの能力を身につけてほしい」という気持ちもあ るかもしれないが、ずっと高校の教師との対話の場がないため、不信感が生ま れてしまったのであろう。スタンダードを作る場は、教師と教師との対話の場 であると考えられる。もし高校の教師と大学の教師が協力してスタンダードを 作成し、中等教育を終えた時点で、学習者の日本語能力がある程度のレベルに 保たれることができたら、今までアーティキュレーションのことをあまり考え ていない大学側も、それに応じてカリキュラムを考え直す可能性が高くなるで あろう。 幸い、台湾の大学では中国のように高い能力を持つ既習者を拒むような考え 方はないようである。ただし、既習者を歓迎してはいるが、学習者が継続的に 学習できるような環境は整っているとはまだ言えない。とはいえ、本稿で取り 上げた 3 か国にはない AP コースを導入したことから見ると、台湾では高校と 大学の間のアーティキュレーションはこれから少しずつ重視されていくであ ろう。 7. おわりに 「永遠に続く課題」だと言われているアーティキュレーションの問題への万 全の解決策をすぐに見つけ出すのは至難であるが、J-GAP の働きかけで、世界 各国では近年アーティキュレーションの達成のために動き出しはじめた研究 者が続々と出ており、努力し続ければ何年先には絶対成果が現れると今回訪ね た全ての学者が見込んでいる。 日本語教育におけるアーティキュレーションの意味は、国によって異なるが、 一つ共通的なものは、限りある教育資源の無駄をなくすということである。少 子高齢化になりつつある台湾では、将来を担う若者たちをどのように育てるか は、国が長い目で見なければならない。実は少子化だからこそ、子供一人ひと りに注げる教育資源が今までよりも多くなるはずである。無論、そもそも中等

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22 教育の教育目標は、高等教育のとは違うが、これから世界が求める人材とは、 基本的教科の知識のほか、高度の思考能力、問題解決能力、異文化コミュニケ ーション能力、生涯学習能力などの能力(西山他編,2014:34)を持つ人間で あり、それを目標として、家庭、学校、社会が協力し、国の将来に貢献できる ような人材を育てられるような教育を実践すべきである。 アメリカでは、社会や親に対して学校に説明責任があり、きちんと社会や企 業の求めているような能力を持つ学生を育てなければならないという。効率的 に教育目標を達成させるのに不可欠のは、まさに完備したアーティキュレーシ ョンである。教育の一環としての日本語教育においても、これからは言語知識 ばかりを重視せず、継続的な学習でグローバル人材の育成に役立つようなコー スデザインも必要となってくるであろう。 【付記】 筆者は日本交流協会の「2014 年度撰寫碩士論文訪日經費資助」を受け、2015 年 2 月 10 日~2 月 19 日の十日間、東京を中心に研究調査をしておりました。 訪日中は国際交流基金日本語国際センター図書館、国会図書館、筑波大学附 属図書館、早稲田大学附属図書館、東京外国語大学附属図書館、お茶の水女子 大学附属図書館に行き、修士論文に必要な参考文献を集めたほか、カリフォル ニア大学サンディエゴ校の當作靖彦先生、国際交流基金日本語国際センターの 坪山由美子先生、押尾和美先生、王崇梁先生、武蔵野大学の島田徳子先生、東 京外国語大学博士課程の Hari Setiawan 先生にもお伺いし、さまざまなご指導を いただきました。ご協力、ご指導をくださった先生方に心より厚く感謝申し上 げます。

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23 【参考・引用文献】 (日本語) 2012 年日本語教育国際研究大会実行委員会「第 11 回日本語教育国際研究大会 2012 年日本語国際研究大会(ICJLE2012)報告」『日本語教育』154 号 P.22 大舩ちさと・和栗夏海・松井孝浩・須摩亜由子・フロリンダアンパロ A パル マヒル(2012)「『プログラムの継続性と『学習の継続性』を目指した日本語 教育導入の試み―フィリピンの中等教育における実践から―」 『国際交流 基金日本語教育紀要』 第 8 号 国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012 年度 日本語教育機関 調査より』くろしお出版 鄭起永・検校裕朗・奈須吉彦・松浦恵子(2013)「J-GAP 韓国の発足と現在まで の取り組み―モデル校の釜山外国語大学を一例として―」海外日本語教育レ ポート 第 27 回 https://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/tsushin/report/201304.html(2015 年 2 月 21 日閲覧) 當作靖彦(2010)「中等・高等教育における日本語教育におけるアーティキュ レーションの達成―今後の支援活動・交流活動のアクションプラン―」『2010 世界日本語教育大会基調講演等予稿集』 pp.133-139 西山教行・平畑奈美編(2014)『「グローバル人材」再考―言語と教育から日本 の国際化を考える』くろしお出版 朴英姫(2009)「中国の中等教育における日本語教育について―黒竜江省ハル ピン市を中心に―」政策研究大学院大学・国際交流基金日本語国際センター 日本言語文化研究会(第 16 回)報告 http://www3.grips.ac.jp/~jlc/old/files/kenkyukaihoukoku16/kenkyukaihoukoku_2_ 16.html (2015 年 2 月 21 日閲覧) 賴錦雀(2009)「台湾の日本語継続教育に対する一考察―普通高校から総合大 学への場合を中心に―」『台湾日語教育学報』第 13 号 pp.291-308 (中国語) 日本国际文化交流财团编(2014)『国际化人才的培养与多语种教育──从日语 教育探索其可能性』 中国教育学会外语教学专业委员会

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日 本 語 使 用 場 面 調 査 結 果 か ら 見 る「 日 語 A1・ A2 級 的 教 材 教

法 」 の 発 展 的 活 用

― 日 本 語 専 攻 の 台 湾 人 大 学 生 を 対 象 に し て ―

荒 井 智 子 銘 伝 大 学 助 理 教 授 キ ー ワ ー ド:日 本 語 使 用 場 面 調 査 、JF ス タ ン ダ ー ド 、ト ピ ッ ク 、CEFR、 A1・ A2 要 旨 荒 井 ・ 施 ・ 頼 ( 2012) は 、 日 本 語 を 主 専 攻 と し て 学 ぶ 台 湾 の 大 学 生 738 名 を 対 象 に 日 本 語 使 用 場 面 に つ い て 調 査 を 行 っ た 。 そ れ に よ る と 、113 項 目 の 日 本 語 使 用 場 面 の う ち 、「 ア ニ メ や 映 画 を 見 る 」「 歌 を 聞 く 」「 先 生 の 指 示 を 聞 く 」 な ど 、「 聞 く 」や 「 読 む(「 見 る 」を 含 む )」 な ど 「 受 容 」 が 多 く 、「 訳 す 」 が 少 な い 傾 向 が み ら れ た 。 学 習 者 の 立 場 か ら 考 え れ ば 、 こ の よ う な 使 用 頻 度 の 高 い 場 面 で の 日 本 語 を 授 業 で 取 り 上 げ る よ う に 期 待 す る こ と が 予 測 さ れ 、 ま た 、 教 師 側 も そ の 必 要 性 が あ る と 感 じ る の で は な い だ ろ う か 。當 作( 2014)は 、 「 言 語 教 育 と は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の ツ ー ル を 与 え る だ け で は な い 」 「 ツ ー ル に 加 え て 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 内 容 も 与 え る 必 要 が あ る 」 と 述 べ 、内 容 重 視 の 言 語 教 育 と い う 考 え 方 の 重 要 性 を 強 調 し て い る 。 つ ま り 、 言 語 の ハ ウ ツ ー を 教 え る の で は な く 、 学 生 の ク リ テ ィ カ ル な 思 考 能 力 を 使 う よ う に す る こ と が 重 要 で あ る 。 2014 年 に J-GAP TAIWAN に よ っ て『 日 語 A1・A2 級 的 教 材 教 法 』が 出 版 さ れ た 。こ れ は CEFR の 概 念 を 取 り 入 れ 、 17 つ の 主 題 で 38 の ユ ニ ッ ト が 収 容 さ れ た 活 動 集 で あ る 。 本 発 表 で は 、 ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 と 活 動 集 の 両 者 を 照 ら し 合 わ せ 、 よ り 発 展 的 に 活 用 で き る か に つ い て 述 べ た い 。 は じ め に 国 際 交 流 基 金 の『 JF 日 本 語 教 育 ス タ ン ダ ー ド 2010 利 用 者 ガ イ ド ブ ッ ク[ 第 三 版 ]』( 2014)に は 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の た め の 言 語 活 動 と し て 日 本 語 を 学 習 す る 人 に と っ て 、 ど の よ う な 言 語 能 力 を 身 に

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25 つ け る こ と を 学 習 目 標 と す れ ば よ い か 、 そ し て 、 そ の た め に ど の よ う な 言 語 活 動 を 教 育 現 場 で 行 う か と い う 目 安 が 「 JF ス タ ン ダ ー ド の 木1」 で 示 さ れ て い る 。 こ の 図 に は 、 言 語 活 動 が 、 読 む ・ 聞 く の 「 受 容 」 、 話 す ・ 書 く の 「 産 出 」 、 会 話 や 手 紙 の や り と り な ど の 「 相 互 行 為 活 動 」 の 3 つ に 大 き く 分 け ら れ 、 学 習 者 の ニ ー ズ や 目 的 、 さ ら に 、 す で に 身 に つ け て い る 能 力 や 知 識 な ど を 考 慮 し て 、 言 語 能 力 と 言 語 活 動 を 結 び つ け な が ら 学 習 目 標 を 設 定 し て い く こ と が で き る よ う に な っ て い る 。 台 湾 で は 、 2012 年 ご ろ か ら 、 多 様 な 日 本 語 学 習 者 の ニ ー ズ や 学 習 環 境 に 応 じ て 柔 軟 に 活 用 で き る ツ ー ル と し て 、上 記 の JF ス タ ン ダ ー ド の 概 念 を 取 り 入 れ た 日 本 語 教 育 を 目 指 す 動 き が 始 ま り2、言 語 能 力 と 言 語 活 動 を 結 び つ け た Can-do の 概 念 が 徐 々 に 広 ま っ て い る 。そ し て 、2014 年 に は『 日 語 A1・A2 級 的 教 材 教 法 』が 出 版 さ れ た 。こ れ は CEFR3の 概 念 が 取 り 入 れ ら れ た も の で 、17 つ の ト ピ ッ ク4で 38 の ユ ニ ッ ト が 収 容 さ れ 、JF ス タ ン ダ ー ド の 言 語 の 熟 達 度 A1, A2, B1, B2, C1, C2 と い う 6 つ の レ ベ ル の う ち の 基 礎 段 階 の 言 語 使 用 者 で あ る A1 と A2 に 焦 点 を 合 わ せ た 教 材 に な っ て い る 。 こ れ ら の 38 の ユ ニ ッ ト は 、 台 湾 の 日 本 語 現 場 で 実 際 に 日 本 語 を 教 え て い る 教 師 た ち が JF ス タ ン ダ ー ド の 概 念 を 取 り 入 れ た 活 動 ア イ デ ア を 持 ち 寄 っ て 作 成 し た も の で あ る 。 よ っ て 、 こ の よ う な 教 材 を 教 育 現 場 で 授 業 の 副 教 材 と し て 取 り 入 れ て い く こ と で 、 日 本 国 外 で 学 ぶ 学 習 者 が 、 そ の 学 習 環 境 に 合 わ せ た 実 践 的 な 言 語 活 動 を 行 い な が ら 言 語 能 力 を 身 に つ け る こ と が さ ら に 期 待 で き る の で は な い だ ろ う か 。 荒 井 ・ 施 ・ 頼 ( 2012) は 、 日 本 語 を 主 専 攻 と し て 学 ぶ 台 湾 の 大 学 1 『 JF 日 本 語 教 育 ス タ ン ダ ー ド 2010 利 用 者 ガ イ ド ブ ッ ク[ 第 三 版 ]』2014 6 ‐7 頁 。 学 習 者 の 課 題 遂 行 能 力 の 向 上 を 目 指 し た 教 育 実 践 を 行 い や す く す る た め に 、CEFR の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 言 語 能 力 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 言 語 活 動 の 関 係 を 整 理 し 、 一 本 の 木 で 表 現 し た 図 の こ と 。 2 J-GAP TAIWAN は 2012 年 に 台 湾 日 語 教 育 学 会 の 組 織 の 下 に 結 成 さ れ た 。 Japanese Global Articulation Project の 略 称 。毎 月 1 回 月 例 会 を 開 き 、中 等 教 育 と 高 等 教 育 の 日 本 語 教 師 た ち が 集 ま っ て い る 。

3 CEFR( Common European Framework of Reference for Language の 略 。 外 国 語 の 学 習,教 授 ,評 価 の た め の ヨ ー ロ ッ パ 言 語 共 通 参 照 枠 ) 4 自 己 與 家 人 、 居 住 、 學 校 生 活 、 日 常 生 活 、 流 行 、 買 東 西 、 食 物 、 興 趣 與 遊 樂 、 交 通 與 旅 遊 、 節 慶 、 社 會 與 習 慣 、 科 學 技 術 、 語 言 與 文 化 、 人 際 關 係 、 自 然 與 環 境 、 他 區 社 會 與 世 界 、 工 作 與 職 業 の 17 つ の ト ピ ッ ク の う ち 、 こ の 教 材 に は 、 他 區 社 會 與 世 界 と 工 作 與 職 業 以 外 の 15 個 の ト ピ ッ ク が 収 め ら れ て い る 。

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26 生 738 名 を 対 象 に 日 本 語 使 用 場 面 に つ い て ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。 そ れ に よ る と 、103 項 目 の 日 本 語 使 用 場 面 の う ち 、使 用 場 面 の 多 か っ た 上 位 20 に は 、「 ア ニ メ や 映 画 を 見 る 」「 歌 を 聞 く 」「 先 生 の 指 示 を 聞 く 」 な ど 、「 聞 く 」 や 「 読 む (「 見 る 」 を 含 む )」 な ど の 「 受 容 」 が 多 い 傾 向 が み ら れ 、 ま た 、 学 年 に よ る 差 が 見 ら れ る 項 目 は 103 項 目 中 83 項 目 あ っ た が 、留 学 や 渡 航 経 験 の 有 無 と は 関 連 性 は 見 ら れ な い と い う 結 果 だ っ た 。 こ の よ う に 、 学 年 に よ っ て 学 習 者 が 日 本 語 に 接 す る 場 面 と 頻 度 に 違 い は 見 ら れ る が 、 学 習 者 の レ ベ ル と 実 際 の 使 用 場 面 に 合 わ せ て 、 授 業 で も 実 際 の 場 面 に 近 い 場 面 を 想 定 し た 活 動 を 行 い な が ら 日 本 語 の 練 習 を す る こ と が で き れ ば 、 学 習 者 の 意 欲 を 高 め 、 さ ら に 、 実 用 的 な 練 習 が 可 能 に な る の で は な い だ ろ う か 。 本 研 究 で は 、 荒 井 ・ 施 ・ 頼 ( 2012) の ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 を も と に 『 日 語 A1・A2 級 的 教 材 教 法 』を 分 析 し て 、こ の 教 材 の 発 展 的 な 活 用 に つ い て 考 え る 。 1 . 研 究 課 題 1. 『 日 語 A1・ A2 級 的 教 材 教 法 』 は 、 大 学 生 の 日 本 語 使 用 場 面 の 調 査 結 果 に 挙 げ ら れ た 場 面 と 重 な る も の が あ る か 。 2. 台 湾 の 大 学 で 日 本 語 を 主 専 攻 と す る 学 生 に 、こ の 教 材 は ど の よ う に 活 用 で き る か 。 2 . 『 日 語 A1・ A2 級 的 教 材 教 法 』5 こ の 教 材 に は 、17 個 の ト ピ ッ ク の う ち の 15 個 の ト ピ ッ ク が 収 め ら れ 、ま た 、表 1 で 示 し た よ う に 、全 部 で 38 ユ ニ ッ ト が あ り 、各 ユ ニ ッ ト に は 、 対 象 の レ ベ ル 、 対 象 の 学 習 者 の タ イ プ 、 使 用 技 能 に つ い て 書 か れ て い る 。 こ の 教 材 全 体 に 占 め る 、 レ ベ ル 別 、 対 象 別 、 技 能 別 の 割 合 に つ い て 以 下 に 整 理 す る 。 5 作 者( 画 数 順 ):工 藤 節 子( 東 海 大 學 )上 條 純 恵( 交 通 大 學 )内 田 さ く ら( 私 立 衛 理 女 子 高 級 中 學 ) 周 欣 佳 ( 國 立 嘉 義 高 級 家 事 職 業 學 校 ) 荒 井 智 子 ( 銘 傳 大 學 )許 均 瑞( 銘 傳 大 學 )施 信 余( 淡 江 大 學 )陳 文 敏( 靜 宜 大 學 )陳 美 玲( 東 呉 大 學 ) 陳 姿 菁 ( 開 南 大 學 ) 黄 英 哲 ( 台 中 科 技 大 學 ) 黄 鈺 涵 ( 台 灣 大 學 ) 馮 寶 珠 ( 輔 仁 大 學 ) 賈 志 琳 ( 國 立 豊 原 高 級 中 學 ) 頼 美 麗 ( 文 藻 外 語 大 學 ) 羅 暁 勤 ( 銘 傳 大 學 ) 蘇 子 翔 ( 國 立 台 中 女 子 高 級 中 學 ・ 國 立 台 中 文 華 高 級 中 學 ) 、 校 對:磐 村 文 乃 ・ 内 田 陽 子 ( 交 流 協 会 台 北 事 務 所 )

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27 表 1 各 ユ ニ ッ ト の テ ー マ 1 自我介紹 14 日記 27 観光景點介紹 2 談自己 15 穿著打扮 28 日語導覧 3 介紹家人 16 服装流行 29 介紹台灣的建築物 4 我居住的城鎮 17 在超市購物 30 年節遊戯 5 找租屋 18 逛百貨公司 31 談節慶 6 我的房間 19 洗手做三角飯 32 談説廣告 7 我的學校生活 20 我要點餐 33 智慧型手機 8 學生宿舎 21 拉我喜歡日本的拉麵 34 表情符號 9 看招牌 22 比較美食優惠案 35 日本文化海報 10 我與家人的日常生活 23 我會唱日文歌 36 玩自我介紹遊戯 11 猜猜這是什麼 24 我喜歡打藍球 37 日語的稱呼 12 包包裡的文具與用品 25 説明交通方式 38 聽氣象預報 13 介紹與日本有關的産品 26 我喜歡的地方 ① 対 象 レ ベ ル の 詳 細 ( CEFR 共 通 参 照 レ ベ ル ) と ユ ニ ッ ト 数 A16: 25 ユ ニ ッ ト ( 66% ) ( CEFR 共 通 参 照 レ ベ ル ) ・ 具 体 的 な 欲 求 を 満 足 さ せ る た め の 、 よ く 使 わ れ る 日 常 的 表 現 と 基 本 的 な 言 い 回 し は 理 解 し 、 用 い る こ と も で き る 。 ・ 自 分 や 他 人 を 紹 介 す る こ と が で き 、 ど こ に 住 ん で い る か 、 誰 と 知 り 合 い か 、 持 ち 物 な ど の 個 人 的 情 報 に つ い て 、 質 問 を し た り 、 答 え た り で き る 。 ・ も し 、 相 手 が ゆ っ く り 、 は っ き り と 話 し て 、 助 け 船 を 出 し て く れ る な ら 簡 単 な や り 取 り を す る こ と が で き る 。 A2: 13 ユ ニ ッ ト ( 34% ) ( CEFR 共 通 参 照 レ ベ ル ) ・ ご く 基 本 的 な 個 人 的 情 報 や 家 族 情 報 、買 い 物 、近 所 、仕 事 な ど 、直 接 的 関 係 が あ る 領 域 に 関 す る 、よ く 使 わ れ る 文 や 表 現 が 理 解 で き る 。 ・簡 単 で 日 常 的 な 範 囲 な ら 、身 近 で 日 常 の 事 柄 に つ い て の 情 報 交 換 に 応 ず る こ と が で き る 。 ・自 分 の 背 景 や 身 の 回 り の 状 況 や 、直 接 的 な 必 要 性 の あ る 領 域 の 事 柄 を 簡 単 な 言 葉 で 説 明 で き る 。 6 CEFR 共 通 参 照 レ ベ ル で は 、 A を 「 基 礎 段 階 の 言 語 使 用 者 」 と い う 言 語 能 力 と し 、 さ ら に A1 と A2 に 分 け て 定 め て い る 。

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28 ② 対 象 学 習 者 と ユ ニ ッ ト 数 大 学 生 を 対 象 に し た ユ ニ ッ ト は 、38 個 の ユ ニ ッ ト の 中 で 、15 個 の ユ ニ ッ ト で あ る 。 ③ 使 用 技 能 の 割 合 38 個 の ユ ニ ッ ト の 中 で 、「 訳 す 」 技 能 を 必 要 と す る 活 動 は 全 く な か っ た 。 し か し 、 「 聞 く 」 は 28 ユ ニ ッ ト 、 「 話 す 」 は 32 ユ ニ ッ ト 、 「 読 む 」 は 21 ユ ニ ッ ト 、 「 書 く 」 は 21 ユ ニ ッ ト 、 「 文 化 理 解 」は 24 ユ ニ ッ ト あ り 、お お よ そ 均 等 に 分 か れ て い る 。 国中 7ユニット (9%) 高中職 26ユニット (34%) 第二外語 28ユニット (37%) 大学生 15ユニット (20%) 「聴」 28ユニット (22%) 「説」 32ユニット (25%) 「読」 21ユニット (17%) 「寫」 21ユニット (17%) 「譯」 0% 文化理解 24ユニット (19%)

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29 表 2 『 日 語 A1・ A2 級 的 教 材 教 法 』 ユニット テーマ レベル 國中 高中職 第二外語 大學 聽 説 讀 寫 譯 文化理解 1 自我介紹 A1 1 1 1 1 1 1 2 談自己 A1 1 1 1 1 1 1 3 介紹家人 A1 1 1 4 我居住的城鎮 A1 1 1 1 1 5 找租屋 A1 1 1 1 1 1 6 我的房間 A1 1 1 1 7 我的學校生活 A1 1 1 1 1 1 1 1 8 學生宿舎 A1 1 1 1 1 1 1 9 看招牌 A1 1 1 1 1 1 10 我與家人的日常生活 A1 1 1 1 1 11 猜猜這是什麼 A1 1 1 1 1 1 12 包包裡的文具與用品 A1 1 1 1 1 13 介紹與日本有關的産品 A1 1 1 1 1 1 1 1 14 日記 A2 1 1 1 15 穿著打扮 A2 1 1 1 1 1 1 16 服装流行 A2 1 1 1 1 1 1 1 17 在超市購物 A1 1 1 1 1 1 18 逛百貨公司 A2 1 1 1 1 1 1 19 洗手做三角飯 A1 1 1 1 1 1 20 我要點餐 A1 1 1 1 1 1 1 21 拉我喜歡日本的拉麵 A1 1 1 1 1 1 1 1 22 比較美食優惠案 A2 1 1 1 1 1 1 1 23 我會唱日文歌 A1 1 1 1 1 1 24 我喜歡打藍球 A1 1 1 1 1 1 1 1 25 説明交通方式 A1 1 1 1 1 26 我喜歡的地方 A2 1 1 1 1 1 1 27 観光景點介紹 A2 1 1 1 1 1 28 日語導覧 A2 1 1 1 1 1 29 介紹台灣的建築物 A2 1 1 1 1 1 1 1 30 年節遊戯 A1 1 1 1 1 31 談節慶 A2 1 1 1 1 1 1 32 談説廣告 A2 1 1 1 1 1 1 1 33 智慧型手機 A2 1 1 1 1 1 1 34 表情符號 A1 1 1 1 35 日本文化海報 A1 1 1 1 1 1 1 1 36 玩自我介紹遊戯 A1 1 1 1 1 37 日語的稱呼 A1 1 1 1 1 1 1 38 聽氣象預報 A2 1 1 1 1 合計 7 26 28 15 28 32 21 21 0 24 3 . 荒 井 ・ 施 ・ 頼 ( 2012) の 調 査 結 果 表 2 は 、 調 査 を 行 っ た 103 の 日 本 語 使 用 場 面 の う ち 、 使 用 場 面 と し て 選 ん だ 学 習 者 が 多 い 上 位 20 位 ま で の 項 目 で あ る 。「 ア ニ メ や 映 画 を 見 る 」「 歌 を 聞 く 」「 先 生 の 指 示 を 聞 く 」な ど 、「 聞 く 」や「 読 む (「 見 る 」を 含 む )」 な ど「 受 容 」が 多 く 、「 訳 す 」 が 少 な い 傾 向 が み ら れ た 。

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30 表 3 多 數 受 測 者 使 用 日 語 的 場 面 之 排 比 前 20 項 ‐ 荒 井 ・ 施 ・ 頼 ( 2012) よ り ‐ 4 . 分 析 ・38 の ユ ニ ッ ト の 中 で 、大 学 生 を 対 象 に し た 使 用 場 面 調 査 の 上 位 20 位 と 同 様 の 場 面 の も の は 、 6 つ あ る 。 「 9.看 招 牌 」 、 「 17.在 超 市 購 物 」、 「 18.逛 百 貨 公 司 」、「 23.我 會 唱 日 文 歌 」、 「 32.談 説 廣 告 」 、 「 37.日 語 的 稱 呼 」 。 ・ 初 級 の 授 業 で よ く と り あ げ ら れ る「 1. 自 我 介 紹 」は 、使 用 場 面 の 調 査 で は 77 位 で 、 「 22.我 要 點 餐 」 は 、 44 位 「 メ ニ ュ ー を 見 る 」 或 い は 94 位 「 料 理 を 注 文 す る 」 で あ る 。 ・学 習 者 に と っ て 身 近 な 話 題 、台 湾 の こ と に つ い て 考 え な が ら 活 動 、 ま た 、 情 報 を 収 集 す る 必 要 の あ る 活 動 が あ る 。 「 28. 日 語 導 覧 」 「 29. 介 紹 台 灣 的 建 築 物 」 「 33.智 慧 型 手 機 」 な ど 。 排比 編號 使用日語的行為/活動 語言活動 的類型 (人數)※ (%) 依學年差 異有顯著 差異 依有無留學 /遊學經驗 有顯著差異 依有無赴 日經驗有 顯著差異 1 15 看日本卡通 理解 678 95.4 2 62 聽日文歌 理解 699 94.6 ** 3 14 看日本電影 理解 665 93.8 4 77 用簡短的日文單字和同學對話 互動 661 89.9 ** * 5 66 聽取老師的日文說明、指示 理解 661 89.7 ** 6 8 看日文歌詞 理解 637 86.3 ** 7 16 看日劇 理解 606 85.4 ** 8 25 看日本的廣告 理解 598 83.9 * ** 9 27 看街上的日文看板 理解 580 81.7 ** * ** 10 94 用字典查日文單字 理解 592 80.7 ** 11 73 聽日本人之間的對話 理解 593 80.2 ** ** ** 12 47 看日本的影片分享網站(如ニコニ コ動畫、Youtube等) 理解 589 79.8 13 46 利用網路看日劇 理解 576 77.8 ** 14 19 看日本漫畫 理解 545 76.5 15 100 唱日文歌 表達 549 75.9 ** * 16 28 看日文標籤 理解 535 75.4 ** 17 76 模仿卡通或日劇的對白 表達 529 72.2 18 35 用日文查網頁資料 理解 507 71.3 ** ** 19 29 看日文標誌、告示 理解 484 68.4 ** ** ** 20 23 閱讀日本產品的使用說明書 理解 481 67.7 ※: 人數因扣除遺漏值之故,與順位排比有差異。 ** : P<.01 差異顯著 * : P<.05 差異顯著

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31 5 . ま と め ・ 大 学 生 が よ く 日 本 語 に 接 す る 場 面 が 教 材 の 練 習 に も 取 り 上 げ ら れ て い る 。 活 動 集 を 使 っ て 身 近 な 話 題 を 取 り 上 げ る こ と で 、 学 習 者 の 学 習 動 機 を 高 め 、 日 本 語 の 学 習 の 効 果 、 達 成 感 を 高 め ら れ る 。 ・『 日 語 A1・ A2 級 的 教 材 教 法 』に は 言 葉 を 覚 え る た め の 活 動 だ け で は な く 、 考 え た り 話 し 合 っ た り す る 必 要 の あ る 活 動 も 含 ま れ て い る 。當 作( 2014)は 、「 言 語 教 育 と は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の ツ ー ル を 与 え る だ け で は な い 」「 ツ ー ル に 加 え て 、コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 内 容 も 与 え る 必 要 が あ る 」 と 述 べ 、 内 容 重 視 の 言 語 教 育 と い う 考 え 方 の 重 要 性 を 強 調 し て い る 。教 師 は 、日 本 語 教 育 活 動 を 通 し て 、 ど う し た ら 学 生 の 創 造 的 思 考 能 力 を 育 成 す る こ と が で き る の か と い う こ と に 意 識 を 向 け て い く 必 要 が あ る 。 こ の よ う な 教 材 を 用 い た 教 室 活 動 を 行 う こ と で そ の 可 能 性 を 見 出 す こ と が で き る 。 参 考 文 献 荒 井 智 子 ・ 頼 美 麗 ・ 施 信 余( 2012)「 台 湾 人 日 本 語 使 用 者 の 日 本 語 使 用 場 面 に 関 す る 一 考 察 ― 日 本 語 専 攻 の 学 部 生 を 対 象 に ― 」『 台 湾 日 本 語 教 育 学 会 J-GAP TAIWAN 2012 年 度 調 査 報 告 書 』 陳 淑 娟 ・ 羅 暁 勤 編 致 良 出 版 p33-42 陳 淑 娟( 2015)「 如 何 活 用 CEFR― 運 作 12 年 國 教 的 第 二 外 語 課 網 時 ― 」 台 灣 日 語 教 育 學 會 J-GAP TAIWAN ( 於 : 静 宜 大 學 外 語 學 院 ) 當 作 靖 彦( 2014)「 ス タ ン ダ ー ズ に 基 づ い た 日 本 語 教 育 ― マ ス タ ー プ ラ ン か ら レ ッ ス ン プ ラ ン へ ― 」 台 湾 日 語 教 育 学 会 J-GAP Taiwan 2014 年 特 別 ワ ー ク シ ョ ッ プ ( 於 : 東 呉 大 學 ) 當 作 靖 彦( 2015)「 グ ロ ー バ ル 時 代 の 学 習 者 、ペ ダ ゴ ジ ー 、学 習 内 容 、 評 価 ― 新 し い 日 本 語 教 師 養 成 の ニ ー ズ 」 交 流 協 会 台 北 事 務 所 2014 年 度 日 本 語 教 育 特 別 講 演 会 真 嶋 潤 子 ( 2010)「 CEFR に お け る 評 価 と ア セ ス メ ン ト 」( 第 2 章 ) 佐 藤 慎 司・熊 谷 由 理 編『 ア セ ス メ ン ト と 日 本 語 教 育 - 新 し い 評 価 の 理 論 と 実 践 - 』 く ろ し お 出 版 pp.19-43

J-GAP TAIWAN 著 ・ 陳 淑 娟 監 修 ( 2014)『 日 本 語 A1・ A2 的 教 材 教 法 』 致 良 出 版

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交流会で使える日本語の実践研究の一試み

―台北市にある高校の例を中心に―

内田さくら 東吳大學日本語文學系博士生 要旨 台湾と日本の間に高校レベルの交流活動が年々盛んになっている1。それに 対応すべく、本稿は JFS の Can-do リストに A1 の接触場面で必要な項目を入れ、 台北市にある某高校のクラブ活動としての日本語指導を実践した。またその振 り返りをまとめた。 本実践校では、日本の某高校と姉妹校関係が結ばれ、相互に訪問を行って おり、毎年日本人生徒達との交流会がある。その接触場面が高校生にとって国 際交流のいい機会であるが、しかし、何を、どう話せばいいか分からず戸惑っ ている光景が見られる。 そこで内田(2014)では、Can-do の概念を導入し、交流会に向けて「自己紹 介ができる」という目標を掲げ、1 学期の実践を行った。その結果、授業に対 して生徒たちは満足していることがわかったが、実際の交流会を見て、もっと やりとりを中心とした日本語会話を教える必要性を感じた。本実践では、より 交流会の形式に近づけた日本語会話を教えることを重視し、「①自己紹介する ことができる②簡単なことを質問することができる。」という目標を設定し、 授業活動をデザインした。本稿では、生徒達へのアンケート及び PAC 分析法を 用いたインタビューにより、授業の適切性を検証していく。 キーワード:JF 日本語教育スタンダード、Can-do、高校のクラブ活動、交流 会、PAC 分析法 1.はじめに 近年台湾と日本の間に高校レベルの交流活動が年々盛んになっている 2 本実践校では、日本の某高校と姉妹校関係が結ばれ、相互に訪問を行ってお り、毎年日本人生徒達との交流会がある。筆者が担当するクラブ活動の日本語 授業の生徒たちは、ほぼゼロから学び始めて半年で交流会に臨む。その接触場 面が高校生にとって国際交流のいい機会であるが、日本語を半年しか学んでい ないため、話したくてもコミュニケーションがうまくとれないことを残念がる というのが、よく見られた。そのような現状を解決するため、内田(2014)では、 1 第二外語教育學科中心網站 http://www.2ndflcenter.tw/inter.asp 2 第二外語教育學科中心網站 http://www.2ndflcenter.tw/inter.asp

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33 Can-do の概念を導入し、交流会に向けて「自己紹介ができる」という目標を 掲げ、1 学期の実践を行った。その結果、授業に対して生徒たちは満足してい ることがわかったが、実際の交流会を見て、やりとりを中心とした日本語会話 を教える必要性を感じた。 本実践では、より交流会の形式に近づけた日本語会話を教えることを重視し、 「①自己紹介することができる②簡単なことを質問することができる。」とい う目標を設定し、授業活動をデザインした。本稿では、生徒達へのアンケート 及び PAC 分析法を用いたインタビューにより、授業の有効性を検証していく。 2.Can-do とは Can-do とは、国際交流基金(2010a,2010b)では、「日本語の熟達度を『~が できる』形式で示す文」と定義されている。これは、従来のどのような文型や 文法を知っているか、単語や漢字をいくつ知っているか、または日本語能力検 定 N2 を持っているかのような日本語能力のとらえ方ではなく、「好きか嫌いか を述べることができる」のように、言語の熟達のある段階で、できる言語活動 や持っている言語能力の例を示し、目安とするものである(国際交流基金 2010a,2010b)。その種類は、言語能力を例示する「能力 Can-do」と、言語活 動を例示する「活動 Can-do」「テキスト Can-do」「方略 Can-do」の 4 種類に分 類され、教育現場における①学習目標の設定と②学習成果の評価などに利用す ることができるものである。 3.先行研究 3.1 Can-do を用いた教育実践 Can-do を用いた教育実践は世界中で行われている。その中でも、プーリク (2010)は、Can-do を利用する理由を以下のように述べている。 「JF スタンダードの言語活動 Can-do を使うと、目標とする授業毎のゴールが 明確にされ、達成度や評価が透明になると考えられる。SHC3 のコースは、大 学や義務教育機関と違い、単位を取れるテストや試験がない。趣味や教養とし て日本語を習っている学習者の中には、テストや試験を望んでいないものが多 い。一方、学習開始後、日本語学習の難しさに直面し、意欲を失う学習者が増 える。各授業の目的を明確な言語活動 Can-do にすれば、達成度や学習評価が 学習者に実感され、学習を続けるように動機付けができると考えている。」 (プーリク 2010:7) 3 シベリア・北海道文化センター

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34 本実践クラスも SHC のコースと似ており、趣味や教養として日本語を学ぶ学 習者に向けた授業においても Can-do による授業設計は意義があると示唆され る。 近年、台湾でも Can-do を用いた実践が発表されている。本実践と同じ高校 での実践として賈(2013)がある。賈(2013)は、学習者に 50 音を勉強しながら 日本文化理解を目的とし、「日本の食文化が理解できる」などの Can-do によっ てコースをデザインしている。加藤(2013)は、台湾の応用日本語学科の大学 1 年生の会話授業のシラバスに、ビジターセッションを組み込み、それを想定し てコースをデザインしている。 賈(2013)と加藤(2013)は、それぞれ「高校での実践」、「交流会に向けた実践」 という点で、非常に参考になる。しかし本実践校は、クラブ活動としての日本 語授業であり、授業時間が非常に限られるため、さらに現場に合わせての調整 が必要である。 以上より、Can-do による授業設計は本実践クラスのような初級のクラブ活 動でも有効であると考えられ、また実際に台湾においてもクラスの性質は異な るが賈(2013)と加藤(2013)でも実践が行われており導入可能であることがわ かった。 内田(2014)では、本実践校において 2013 年度に「自己紹介ができる」とい う Can-do を立てて授業を行った。その結果、生徒全体的に 1 学期の授業に満 足していることがわかり、困難に感じた点は、平仮名がまだ読めない、書けな い、覚えられないという点があげられた。Can-do を導入した授業実践は学習 者から肯定的な意見はもらえたが、授業設計においてはまだ改良の余地がある。 またその後、筆者が実際の交流会を観察した際、自己紹介を言うだけでなく、 日本人とのやりとりを授業の中に取り入れていくべきだと感じだ。 3.2 本稿の立場 本実践は、内田(2014)の反省を踏まえ、シラバスに改良を重ねたものであ る。また Can-do において言語活動 Can-do を重要視するが、実践時間と生徒た ちの負担も考え、話す、聞くことに重点を置いた。さらに内田(2014)と同様 に学習目標、評価に Can-do を利用した。 4.実践概要 4.1 実践クラスの概要 実践クラスの概要は表 1 の通りである。 表 1 実践クラスの概要 クラスの性質 某私立女子高校のクラブ活動(名称「高中日文社」)

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35 生徒 高校 1 年生、2 年生計 16 名。1,2 名除いてほとんどの生徒が、日本語の学習歴がない。 期間・時間 2014 年 9 月 14 日~2013 年 12 月 26 日(全 11 回) 毎週金曜日午後 3 時~3 時 50 分の 50 分間 1 学期の教育目標 3 月の交流会に向けて①自己紹介することができる②簡単なことを質問することができる。 4.2 コースデザイン 1 学期のコースをデザインをする際は、国際交流基金(2010a:21)を参考 にし、まず目標を考え、その目標を達成するために必要な学習項目を考えた。 3.1 で示した目標「②簡単なことを質問することができる」については、以前 の交流会終了後にとったアンケートを参考にした。そこでは、好き嫌いに関す る内容や学校に関わる内容を話したいという意見があった。そのため生徒たち の日本語レベルを考え、好きなことを聞く、日常生活に関する(主に時間に関 する内容「何時に起きますか」「何時にご飯を食べますか」など)ことを聞くを 学習項目に入れた。 表 2 1 学期のシラバス 授業回数 内容 学習項目 第 1 回 オリエンテーション、名札づくり 第 2 回 教室用語、日本語のあいさつ 第 3 回 50 音①/日本の地名4 清音 第 4 回 50 音②/果物、野菜 濁音 第 5 回 50 音③/料理 拗音 第 6 回 50 音④/芸能人 促音・長音 第 7 回 やりとり①好きなことを聞くことができる 第 8 回 やりとり②日常生活を聞くことができる 数字、時間(~時、半) 第 9 回 やりとり③日常生活を聞くことができる 時間、生活に関する動詞 第 10 回 練習 第 11 回 テスト 4.3 授業の流れ 授業は最初に平仮名や数字などの基本的な学習項目を導入した。その後は目 標達成に必要な学習内容(日本の芸能人、日常生活)などを学びながら平仮名 の定着をはかり、最後は必ず会話練習を行った。 4.4 評価 評価方法としては、期末テストに行ったペアによる会話と毎回の授業で記入 する学習記録シートである。 4.4.1 期末テスト 1 学期の成果を測るために、学期の最後に以下の①~⑦を生徒 2 人一組で会 話してもらった。それに対して教師は表 3 の評価表を使用して評価を行った。 なお 4 段階のレベル基準については、表 4 のようにした。 4 地名に関しては、期末テストの項目にはないが、平仮名に慣れてもらうのと、生徒達が比較 的興味のある内容だったため、学習内容に追加した。

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36 《テスト内容》 ①自己紹介を言う。 ②好きな食べ物を聞く。 ③相手から好きな食べ物を聞かれたら答える。 ④好きな芸能人を聞く。 ⑤相手から好きな芸能人を聞かれたら答える。 ⑥日常生活について1つ質問する。 ⑦相手から日常生活について質問されたら、日常生活について質問に答える。 表 3 期末テスト評価表 4 3 2 1 ①自己紹介を言うことができた。 □ □ □ □ ②好きな食べ物を聞くことができた。 □ □ □ □ ③相手から好きな食べ物を聞かれたら、答えることができた □ □ □ □ ④好きな芸能人を聞くことができた。 □ □ □ □ ⑤相手から好きな芸能人を聞かれたら、答えることができた。 □ □ □ □ ⑥日常生活について1つ質問することができた。 □ □ □ □ ⑦相手から日常生活について質問されたら、答えることができた。 □ □ □ □ 表 4 レベル基準 4目標以上達成 3目標を達成 2目標まであと少し 1目標達成まで努力が必要 メモを見ないで流暢に質 問することができ、答え ることがで きる。 メモを見ながら、流暢に 質問することができ、答え ることができる。 メモを見ながら、ゆっく りと質問することがで き、答えることができる。 メモを見ながら、ゆっくりと 質問することができ、答える ことができる。ときどき間違 えるまたはつっかえる。 4.4.2 学習記録シート 毎回授業の最後に、生徒自身にその日の授業で学んだことが達成できたかど うかの自己評価を行ってもらった。また授業の感想も書いてもらった。 5.研究方法 5.1 アンケート 1 学期の最終授業日に生徒全員に対して行った。回収率は 16 人分である。 5.2 インタビュー 筆者の授業を受けて生徒たちは、どのような部分が印象に残ったのか、アン ケートでは見えてこない部分を探るため、生徒 2 人に対しインタビューを行っ た。実施日は、授業終了 1 週間後、2014 年 1 月 8、13、15 日の 3 日間である。 インタビュー対象者は、クラブのリーダで、筆者の授業を去年も履修した生徒 A と今回初めて筆者の授業を受ける生徒 B の計 2 名である。なお本稿は紙幅の 制限のため、生徒 B のデータのみ利用する。 インタビュー方法は、個人別に態度構造を測定するために内藤(1993a)によ って開発された PAC 法(Personal Attitude Construct:個人別態度構造)であ る。これは、当該テーマに関する自由連想(アクセス)、連想項目間の類似度評 定、類似度距離行列によるクラスター分析、被験者によるクラスター構造のイ メージや解釈の報告、実験者による総合的解釈を通じて、個人ごとに態度やイ

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37 メージの構造を分析する方法である。 (1)生徒 2 人に、「日本語クラブに対する印象・感想は何ですか」と刺激文を 与え、それに関するキーワードを 10 個を挙げ、紙に書いてもらった。カ ードに書く際、そのキーワードがプラスのイメージかマイナスかまたは中 間的かも紙に書いてもらった。 (2)10 枚のカードをプラス、マイナスのイメージ関係なく、重要と感じられ る順にカードを並べさせた。 (3)項目間の類似度距離行列を作成するために 7 段階の評定尺度に基づいて 類似度を評定させた。 (4)(3)で類似度を評定したものを筆者が SPSS によってクラスター分析を行 った。 (5)クラスター分析の結果、出てきた樹形図をもとに各被験者へ 30 分ほどの インタビューを行った。 本実践は上述した手順で、学習者のフィーバックを整理した。 6.結果 6.1 アンケート結果 選択式のアンケートより、全員の生徒が 1 学期の授業に満足していることが わかった。さらにほとんどの生徒が引き続き日本語を学びたいという肯定的な 意見が得られた。 学習内容についておもしろかったもの、難しかったものを挙げてもらった結 果は図 3、4 のようになった。難しかった内容の「その他」は、「濁音」、「50 音を読むこと」、「時間の読み方」などがあげられた。 難しかった内容の芸能人について、あまり芸能人に馴染みのない生徒にとっ ては、「芸能人の名前を読むのが大変」という意見が学習記録シートより見ら れた。また日常生活はおもしろかった内容、難しかった内容の上位であり、時 非常 に同 意 69% 同意 31% 1.1学期の授業に満足して いる 非常 同意 56% 同意 31% 普通 13% 2引き続き日本語を学びたい 図 1 1 学期の授業に満足している 図 2 引き続き日本語を学びたい

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38 間の言い方が難しいという意見もあったが、その一方で、「日本語が上達した 気がする」など達成感を感じた意見が見られた。 テストの感想としては、「緊張した」「少し失敗したけど成功した」「芸能人 の名前が流暢に言えなかった」「緊張したけど、普段練習しているから大丈夫 だった」「去年のテストの方が、全員の前で言う形でとても緊張した」などが あげられた。 授業の感想として、「日本語の授業を受けられてうれしい」という意見や「標 準的な日本語の発音を学べた」や「以前に比べて日本語が少しわかるようにな った」、「多くの日本語を学んだとともに、日本文化も学べた」などの意見が得 られた。 6.2 インタビュー結果 PAC 法によるインタビュー結果を以下に示す。 クラスター1:〈収穫がある(有收穫)〉〈興味のある授業(我的興趣課程)〉〈お もしろい(有趣)〉〈すばらしい(美好)〉 生徒 B は、この授業を受ける前にもともと日本に興味があり、音楽を聴いた 0 5 10 15 おもしろかった学習内容 0 1 2 3 4 難しかった学習内容 図 3 おもしろかった学習内容 図 4 難しかった学習内容 図 5 生徒 B の樹形図

参照

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