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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

シクロラバンデュリルブチレートに誘引される寄生 蜂の分類学的、行動学的研究

菅原, 有真

http://hdl.handle.net/2324/4060235

出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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氏 名 菅原 有 真

論 文 名 Taxonomic and behavioral study of parasitic wasps attracted by cyclolavandulyl butyrate

(シクロラバンデュリルブチレートに誘引される寄生蜂の分類学的、行動学的研究)

論文調査委員 主 査 九州大学 准教授 上野 高敏 副 査 九州大学 准教授 津田 みどり 副 査 九州大学 准教授 紙谷 聡志

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文は、果樹類の難防除害虫コナカイガラムシ類の天敵寄生蜂として有望なトビコバチ類につ いて研究したものである。重要であるが分類学的な問題から混同されていたトビコバチの種分類を 明確にした上で、それらのトビコバチ類の生態を明らかにしつつ、フジコナカイガラムシの性フェ ロモン類似物質がトビコバチ類の行動に与える影響を評価し、最終的には、性フェロモンを利用し た交信攪乱防除法と土着天敵を活用した保全的生物的防除法を組み合わせることの有効性について 焦点を当てている。

コナカイガラムシ類はその生態的特性ゆえに化学農薬のみに依存した防除体系では管理が難しく、

天敵を利用した生物的防除が不可欠なグループである。フジコナカイガラムシの性フェロモンの類 似物質であるシクロラバンデュリルブチレート(CLB)は、内部寄生蜂のAnagyrus sawadai Ishii (ハ チ目:トビコバチ科)を強力に誘引し、CLB を設置した果樹園ではコナカイガラムシ類による被害 が抑制される。そこで、本研究では、まず CLB に誘引される寄生蜂相を全国各地で詳細に調査し た。その結果、CLBに誘引されたトビコバチ類には色彩が異なる2タイプが混在していた。そのた め、それら 2 タイプが同種なのか別種なのかを確認すべく、CLB トラップで捕獲された個体から DNA を抽出し、CO1 領域の配列の一部を決定するとともに、その外部形態を対応付けて比較解析 した結果、A. sawadaiとは明確に区別できる種が見いださ、この種がA. subalbipes Ishiiとして記 載された種に該当することが判明した。本種は前種のシノニムであるとされることが多かったが、

本研究の結果はこれを否定し、両者が独立した別の種であることを強く支持した。

過去の研究はA. sawadaiA. subalbipesを混同しているため、CLBに誘引されるトビコバチ 類がどの種に該当するか再検討した。全国の農業試験場で CLB トラップを設置し、トビコバチ類 の誘引消長をモニタリングしたところ、誘引されている寄生蜂は大部分がA. subalbipesであり、

A. sawadaiは少数のみ誘引されることが明らかになった。したがって、CLBに誘引されフジコナ

カイガラムシ防除に貢献しているのは主にA. subalbipesであると判断された。

さらに過去の寄主記録は再検討の必要があるため、特に重要と思われる A. subalbipesの寄主範 囲を決定するための一連の実験を行った。まず野外採集した A. subalbipesの寄主選好性を室内実 験によって調査したところ、ミカンコナカイガラムシ、マツモトコナカイガラムシ、 クワコナカイ ガラムシの順に寄生成功率が高くなることが判明した。しかし、蜂の羽化率や体サイズにはコナカ イガラムシ3種間で有意な差がなく、トビコバチ雌親間の寄生成功率の個体差が大きかった。これ らのことから、寄主選好性には環境要因が関与している可能性が示唆された。そこで追加の選好性 試験を実施したところ、寄主選好性が羽化直後学習や寄主の交尾条件によって変化することが明ら

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かになった。すなわちA. subalbipesでは羽化直後に学習したマミー由来の寄主匂い源を学習し、

自身が羽化した寄主に対して積極的に寄生を行う性質があった。また多く交尾前と交尾後で体重の 変化が大きいクワコナカイガラムシでは、交尾後成虫に対する寄生成功率が明らかに減少する一方 で、産卵数が少なく交尾前後の体重変化が小さなミカンコナカイガラムシでは交尾前後で成功率に は差がなかった。よって、寄主の産卵により寄生蜂幼虫の可食部位が減少する結果、寄主の交尾条 件がA. subalbipesの寄生成功率に影響することが明らかになった。このように、A. subalbipes 潜在的に3種の害虫コナカイガラムシ類を寄主として利用でき、それらの天敵寄生蜂として有望で あることが示唆された。

また、Yオルファクトメーターを使った実験により、A. subalbipesでは雄が雌を強力に誘引する 性フェロモン様物質を出していることが明らかになった。興味深いことに雄性フェロモンの誘引効 果は交尾後雌に対しても有効であった。CLBはトビコバチの未交尾ないしは既交尾の雌個体のみを 誘引する点から CLB は雄性フェロモンと近い特性を有していると考えられる。本研究の結果は、

CLBが本種の性フェロモンと同一か、酷似しているため A. subalbipesCLBに強力に誘引され ることを示唆していた。これらの結果は、土着天敵誘引物質 CLB を活用したコナカイガラムシ類 の防除技術開発を推進する上で必要不可欠な基礎情報となると同時に、CLBの機能を理解する上で 重要な新知見であると考えられる。

以上要するに本研究は、難防除害虫コナカイガラムシの天敵トビコバチの種分類と生態を明らか にし、その知見を用いて効率的な保全的生物的防除法について探ったもので、天敵昆虫学の発展に 寄与する価値ある業績と認める。よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有すると認 める。

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