九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Activated M2 Macrophages Contribute to the
Pathogenesis of IgG4-Related Disease via Toll- Like Receptor 7/Interleukin-33 Signaling
石黒, 乃理子
https://doi.org/10.15017/4060075
出版情報:九州大学, 2019, 博士(歯学), 課程博士 バージョン:
権利関係:© 2019 The Authors. Arthritis & Rheumatology published by Wiley Periodicals, Inc. on behalf of American College of Rheumatology. This is an open access article under the terms of the Creative Commons Attribution-NonCommercial License, which permits use, distribution and reproduction in any medium, provided the original work is properly cited and is not used for commercial purposes.
(様式3)
氏 名 :石黒 乃理子
論 文 名 :Activated M2 Macrophages Contribute to the Pathogenesis of IgG4-Related Disease via Toll-Like Receptor 7/Interleukin-33 Signaling
( 活 性 化 し たM2マ ク ロ フ ァ ー ジ はTLR7/IL-33シ グ ナ ル を 介 し てIgG4関 連 疾 患 の 発 症 に 関 与 す る 。 )
区 分 :甲
論 文 内 容 の 要 旨
IgG4関連疾患(IgG4-related disease: IgG4-RD)は、高IgG4血症と罹患臓器への著明な IgG4陽性形質細胞の浸潤や線維化を伴う腫脹を特徴とする全身性疾患である。IgG4はそもそも Th2サイトカインによりクラススイッチが促進されることが知られていることから、特異なTh細胞サブセッ トがIgG4-RDの病態形成に重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし近年、Th細胞など の獲得免疫だけではなく、自然免疫も発症に関与していることが指摘されていることから、本研究で は自然免疫に必須な病原体センサーであるToll様受容体(TLR)に注目し、IgG4-RDにおける TLRファミリーの発現と機能について検討を行った。
まず、IgG4-RD 6例、唾石症3例、健常者3例の顎下腺におけるTLRファミリー(TLR1-TLR10)
の発現をDNAマイクロアレイにて検索した。IgG4-RDで発現亢進を認めたTLRファミリーについて は、さらに症例数を増やしてreal-time PCRおよび免疫組織化学染色にてバリデーションを行い、発 現細胞についても検索を行った。その結果、IgG4-RDはTLR7のみ有意な発現亢進を認め、病変 局所での主なTLR7発現細胞は濾胞周囲に集積するCD163陽性M2マクロファージであった。一 方、二次リンパ組織であるリンパ節と扁桃(健常者)ではIgG4-RDと同様に、濾胞周囲にTLR7の 発現は認めるものの、その主な発現細胞はCD123陽性形質細胞様樹状細胞であった。
最近の報告では、マクロファージをTLR7アゴニストで刺激すると、Th2活性化因子である IL-33 が産生されることが示唆されていることから、TLRファミリーとIL-33との関連について検討をおこなった ところ、TLR7のみIL-33 と正の相関を認めた。さらに、ヒトPBMCから分化させたCD163 陽性細 胞(M2 マクロファージ)をTLR7アゴニストで刺激したところ、無刺激群と比較して培養上清中の IL-33濃度が有意に高かった。
最後に、ヒトTLR7トランスジェニック・マウスTLR7ノックアウトマウス(huTLR7 Tg/mTLR7 KOマ ウス)を作製して同週齢の野生型マウスと比較検討したところ、huTLR7 Tg/mTLR7 KOマウスの みIgG4-RDの好発部位である顎下腺と膵臓でリンパ球浸潤と線維化の亢進を認め、血清IgG1 値(ヒトのIgG4に相当)が野生型マウスと比較して有意に高かった。さらに、TLR7 アゴニストによる 刺激実験(4週間)を行なったところ、mTLR7 KOマウスではいずれの臓器(顎下腺、膵臓、腎臓、
肺、肝臓)においてもリンパ球浸潤や線維化は認めなかったが、huTLR7 Tg/mTLR7 KOマウスで は刺激により顎下腺と膵臓でのリンパ球浸潤と線維化の増強を認めた。
これらの結果から、病変局所に浸潤するM2マクロファージは、TLR7/IL-33シグナルを介してTh2 サイトカイン産生を促進させ、IgG4-RDの病態形成に関与していることが示唆された。