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サムス ン電子の移動通信端末機の

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サムス ン電子の移動通信端末機の

グローバル事業展開に関す る史的考察

一 市 場 参 入 か らCDMAト ップ企 業 へ の 躍 進 過 程 を 中心 に一

金 宇 烈

は じめ に

世 界 最 先 端 の エ レ ク トロニ ク ス 王 国 と言 わ れ る 日本 市 場 に、 韓 国 最 大 の 移 動 通 信 端 末 機(い わ ゆ る携 帯 電 話 機 の こ とで 、 以 下 移 動 端 末 機 とい う)メ ー カ ー で あ るサ ム ス ン電 子 が 、2006年 春 ボ ー ダ フ ォ ン に移 動 端 末 機 を供 給 し、

日本 市 場 に上 陸 す る こ と とな っ た 。 また 、NTTド コモ は韓 国2位 のLG電 子 の移 動 端 末 機 を採 用 す る と発 表 した'。

韓 国 の 移 動 端 末 機 の 世 界 市 場 に お け る シ ェ ア を見 る と、2005年 末 時 点 で サ ム ス ン電 子 が 第3位 、 そ してLG電 子 が第4位 の シ ェ ア を 占 め て い る。 こ れ に 対 して 日本 の場 合 、NEC、 パ ナ ソニ ッ ク ・モ バ イ ル ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ン ズ 、 シ ャー プ な ど、 国 内 三 強 を合 計 して も、 世 界 シ ェ ア は合 計 数%程 度 で 完 全 にマ イ ナ ー の存 在 に留 ま っ て い る。 移 動 通 信 お よ び 関連 機 器 は、 日本 が 世 界 的 に先 駆 けて 主 導 して きた と言 って も過 言 で は な い分 野 で 、 相 変 わ らず 高 い 品 質 力 と部 品 の競 争 力 を維 持 して い る。 に もか か わ らず 、 移 動 端 末 機 分 野 に 関 して 、 日本 の大 手 エ レ ク ト「ロニ ク ス ・メ ー カ ー は現 段 階 に お い て世 界 市 場 の メ ー ジ ャー か ら完全 に姿 を消 して い る2。

1『 産経新聞』2006年1月13日 。

サムスン電子 の移 動通信 端 末機 のグpバ ル事業展 開に関 する史 的考 察9

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サ ム ス ン電 子(SamsungElectronicsCo.,Ltd.)は 、 移 動 端 末 機 事 業 に お い て 、 後 発 メ ー カ ー と して 参 入 し、1988年 に海 外 の部 品 を単 純 に組 み 立 て る レベ ル の 製 品 を 初 め て 韓 国 市 場 に 投 入 して か ら、 わ ず か15年 足 らず で 世 界 第3位 の 市 場 シ ェ ア を 占 め る躍 進 を み せ た。 特 に、 エ レ ク トロニ ク ス 王 国 日本 は、 半 導 体DRAM分 野 に お い て サ ム ス ン に後 塵 を拝 して か ら、

LCD(LiquidCrystalDisplay)、 移 動 端 末 機 事 業 に お い て も再 び後 発 の サ ム ス ン電 子 に逆 転 され る状 況 とな り、 サ ム ス ン電 子 の 急 速 な躍 進 に対 して危 機 感 を募 らせ 、 サ ム ス ン電 子 の 戦 略 、 強 み 、 そ して 経 営 改 革 に関 す る関 心 が 非 常 に高 まっ て い る。

本 研 究 は、 企 業 戦 略 の観 点 か らサ ム ス ン電 子 の移 動 端 末機 が 、 急 速 な成 長 を成 し遂 げ た 戦 略 的 な 特 質 を明 らか に す る と こ ろ に究 極 的 な 狙 い が あ り、 本 稿 は、 そ の 前 段 階 と して、 サ ム ス ン電 子 の 移 動 端 末 機 事 業 が 歩 ん で きた成 長

の軌 跡 を史 的 に考 察 す る もの と して 位 置 づ け られ て い る。

と ころが 、 サ ム ス ン は、 内部 情 報 へ の ア ク セ ス を厳 し く制 限 して い る こ と で 有 名 な企 業 集 団 で 、 最 近 の サ ム ス ン に 関 す る複 数 の文 献 を見 て も、 内部 情 報 ア クセ ス の 難 しさ を訴 えて い る ほ どで あ る。 この よ うな 経 緯 もあ り、本 稿 の執 筆 に あ た っ て は 、 そ の ほ とん どを既 存 の ジ ャー ナ リズ ム 的 な文 献 、 新 聞 記 事 、 サ ム ス ン電 子 の 社 史 な ど、 い わ ゆ る間接 資 料 に依 拠 せ ざ る を得 な い 状 況 で あ っ た 。 した が って 、 本 稿 は、 よ り深 層 的 に サ ム ス ン電 子 内部 の 内容 ま で を言 及 す る こ とが で きず 、 そ の 点 に本 研 究 の 限界 が あ る と も言 え る。 しか し、 な るべ く、 関連 事 実 に基 づ き、 客 観 性 を保 つ こ とに注 力 した た め、 サ ム ス ン電 子 の移 動 端 末機 事 業 の 史 的展 開 を理 解 す るの に は それ ほ ど大 きな 問題 は な い と思 う。

また 、 本 稿 はサ ム ス ン電 子 が 移 動 端 末 機 事 業 に本 格 的 に参 入 した1990年 代 初 期 か ら、CDMA分 野 の トッ プ企 業 に 躍 り出 た1998年 ま で に焦 点 を合

2た だし、日本とスウェーデンの合弁企業であるソニーエリクソンが韓国LG電 子と4位 を争って いる。また、2005年 以降、サムスン、LGの 韓国勢も世界の販売数量およびシェアにおいて伸び 悩みを見せている。

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わせ て い る。 それ 以 降 の展 開 につ いて は、 改 め て報 告 す る予 定 で あ る。

1サ ム ス ン電子の事 業構造 と移動 端末機 事業 の位 置づ け

サ ム ス ン電 子 の移 動 端 末 機 事 業 を概 観 す る前 に、 サ ム ス ン電 子 の多 角 的 な 事 業 構 造 を概 略 し、 そ こで 移 動 端 末 機 が 占 め る位 置 づ け を理 解 す る こ とか ら 始 め た い 。 サ ム ス ン電 子 グ ル ー プ全 体 の 売 上 高 を見 る と、2005年 度 基 準 で 年 間 売 上 高80.6兆 ウ ォ ン、 営 業 利 益7.6兆 ウ ォ ン、 ブ ラ ン ド価 値161億 ド ル(2006年 ラ ン キ ン グ で全 世 界20位3)で 世 界 トッ プ ・ク ラス の 大 企 業 の 一 員 を成 して い る4

。 サ ム ス ン電 子 の事 業 部 門 は 次 の よ うに構成 され て い る。

「デ ジ タ ル ・メ デ ィ ア 統 括 」

① 財 務 指 標:売 上 高(15.9兆 ウ ォ ン 、17.7兆 ウ ォ ン 、17.7兆 ウ ォ ン) 営 業 利 益(6千 億 ウ ォ ン 、4千 億 ウ ォ ン 、2千 億 ウ ォ ン (各2003年 度 、2004年 度 、2005年 度 、 以 下 同 様)

② 主 要 製 品:A▽ 製 品(デ ジ タ ルTV、DVDプ レ ー ヤ ー 、MP3)、

IT製 品(モ ニ タ ー 、 プ リ ン タ ー 、 コ ン ピ ュ ー タ)

「情報 通信統括 」

① 財務 指標:

② 主要製品

売 上 高(15.3兆 ウ ォ ン 、20.7兆 ウ ォ ン 、20.9兆 ウ ォ ン) 営 業 利 益(2,8兆 ウ ォ ン 、3.1兆 ウ ォ ン 、2.5兆 ウ ォ ン) 携 帯 電 話 機 、 そ の 他 の 通 信 機 器

32006年7月28日Interbrand/BusinessWeek発 。 ち な み に 同 年 日 本 の ソ ニ ー は26位(ll6 億 ド ル)で あ る 。 詳 細 は 次 の サ イ ト を 参 照 さ れ た い 。http://www.interbrand.com/

42005年 度 の 売 上 高 お よ び 営 業 利 益 は 連 結 子 会 社 を 含 む 数 値 で

、 詳 細 は サ ム ス ン 電 子 のAnnual Reportを 参 照 さ れ た い 。http://www.sec.co.kr/(2006年9月 末 現 在)

サムスン電子 の移動 通信 端 末機 のグローバル事 業展 開 に関 する史 的考察ll

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「生 活 家 電 」

① 財 務 指 標:売 上 高(4.9兆 ウ ォ ン、5.4兆 ウ ォ ン 、5.8兆 ウ ォ ン)

営 業 利 益(△500億 ウ ォ ン 、200億 ウ ォ ン、△300億 ウ ォ ン)

② 主 要 製 品:冷 蔵 庫 、 洗 濯 機 、 電 子 レ ン ジ

「半 導 体 統 括 」

① 財 務 指 標:売 上 高(14.2兆 ウ ォ ン 、21.7兆 ウ ォ ン、20.3兆 ウ ォ ン) 営 業 利 益(3.7兆 ウ ォ ン 、7.8兆 ウ ォ ン 、5.4兆 ウ ォ ン)

② 主 要 製 品:DRAM、SRAM、 フ ラ ッ シ ュ ・メ モ リ

「LCD統 括 」

財 務 指 標:売 高(4.4兆 ウ ォ ン 、9.1兆 ウ ォ ン 、8.7兆 ウ ォ ン) 営 業 利 益(9千 億 ウ ォ ン 、1.9兆 ウ ォ ン 、8千 億 ウ ォ ン)

主 要 製 品:TFTLCD(Thin‑FilmTransistorLiquidCrystalDisplay)

上 記 の 事 業 概 要 で も分 か る よ う に、 サ ム ス ン 電 子 は5つ の 事 業 部 門 で構 成 され 、 そ の 中で も情 報 通 信 部 門 と半 導 体 部 門 が 非 常 に高 い比 重 を 占 め て い る。 特 に 、 移 動 端 末 機 を製 造 ・販 売 す る情 報 通 信 部 門 は、2005年 末 の 時 点 に お い て 営 業 利 益 こ そ、2.5兆 ウ ォ ン で 半 導 体 部 門 の5.4兆 ウ ォ ン に及 ぼ な い もの の、 売 上 高 に お い て は20.9兆 ウ ォ ン で 、 サ ム ス ン電 子 のNo.1の 地 位 を 占め 、 名 実 共 に 中核 事 業 とな っ て い る。

サ ム ス ン 電 子 移 動 端 末 機 の 世 界 全 体 に お け る販 売 台 数 を見 る と、2004 年 度8,650万 台 、2005年 度1億290万 台 を 記 録 し、 前 年 対 比 で そ れ ぞ れ 52%、19%の 成 長 を見 せ い て い る。 そ して、2005年 度 世 界 全 体 の移 動 端 末 機 に 占 め る市 場 シ ェ ア は、 ノ キ ア(2億6千560万 台、32.5%)、 モ トロ ー

ラ(1億4千490万 台 、17.7%)に 続 き、 サ ム ス ン電 子 は市 場 シ ェ ア12.6%

で 世 界3位 の座 を 占 め て い る5。

(5)

ち な み に、 移 動 端 末 機 を め ぐ る世 界 全 体 の 需 要 動 向 を概 略 す る と、 主 要 諸 国 の需 要 が 飽 和 状 態 に達 して お り、 移 動 端 末 機 メ ー カ ー間 の 競 争 もか な り激 し くな っ て い る。 しか し、 い わ ゆ るBRICs諸 国 の 新 規 需 要 の 拡 大 、 カ メ ラ、

カ ム コー ダ ー、VOD(VideoOnDemand)な ど、 高 級 機 能 付 きの端 末 機 に 対 す る代 替 需 要 の増 加 、 そ して 、 開 発 途 上 国 にお け る低 価 携 帯 電 話 に対 す る 需 要 の 増 加 な どに よ り6、堅 調 な成 長 を維 持 して い る。

一 方、 サ ム ス ンの エ レ ク トロニ ク ス事 業 へ の進 出 は、 そ も そ も 日本 の三 洋

サ ムス ン

電 機 との合 弁 で 、1969年 三 星 三 洋 電 機 の 設 立 に遡 り、 真 空 管 式 白黒 テ レ ビ

サ ム ス ン

の 生 産 が そ の原 点 で あ る7。 そ の 後 、 三 星 半 導 体 通 信 の 設 立 に よ る半 導 体 分

サ ム ス ン

野 へ 進 出 す るが 、1988年 サ ム ス ン電 子 が 三 星 半 導 体 通 信 を吸 収 合 併 す る こ とに よ り、 サ ム ス ン電 子 の 一 事 業 部 門 とな り、 現 在 に至 っ て い る。 そ して現 在 は、DRAM、SRAM、VCR、 電 子 レ ンジ 、 カ ラー モ ニ ター 、 カ ラー テ レ ビ、

TFT‑LCDな ど、 世 界 トップ ・シェアの 製 品 を多 数 保 有 し、 従 業 員8.05万 人9 を抱 え て い る世 界 トッ プ ・ク ラス の グ ロ ーバ ル企 業 と して 成 長 して い る。

そ の 中 で 、 移 動 端 末 機 事 業 は半 導 体 事 業 に な らぶ 中核 事 業 を成 して お り、

ま た サ ム ス ン が グ ル ー プ次 元 で 改 革 を 宣 言 した1993年 の 「新 経 営 」 以 降 、 本 格 的 に展 開 した 事 業 で あ る。 した が って 、 単 に移 動 端 末 機 事 業 に お け る戦 略 だ けで は な く、 サ ム ス ン電 子 の グ ロ ー バ ル戦 略 を理 解 し、 今 後 の企 業 戦 略 を解 明 す るの に も格 好 の対 象 で あ る と言 え る。 以 下 、 サ ム ス ン電 子 の 移 動 端 末 機 の成 長 軌 跡 を考 察 して い く。

5GartnerDataquest{2006 .2.) shttp://www .sec.co.kr/

7サ ム ス ン の 電 子 産 業 の 進 出 経 緯、 そ の 後 の 展 開 に っ い て は 、 曹 斗 隻 ・伊 鐘 彦 『三 星 の 技 術 能 力 構i築 戦 略 』 有 斐 閣 、2005年 に 詳 し い 。

8『 ハ ン ギ ョ レ 新 聞 』2006年4月10日(韓 国 語)

。 元 出 所 は 韓 国 上 場 社 協 議 会 ・韓 国 証 券 取 引 所 発 表 資 料 。

サムスン電子 の移動通 信 端 末機 の グローバ ル事業 展 開 に関す る史 的考察13

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II移 動端 末機 事業へ の参入 期

こ こ で は、 サ ム ス ン 電 子 が カ ー フ ォ ン で 移 動 端 末 機 事 業 に 参 入 し、

SH‑700と い うモ デ ル を投 入 した1993年 まで を市 場 参 入 期 と して位 置 づ け、

当 時 の 市 場 ・競 争 状 況 お よび サ ム ス ン電 子 内部 の状 況 につ い て概 観 す る。

1移 動 端 末 機 市 場 を め ぐる 状 況

下 記 の 表1は 、1980年 代 半 ば か ら1990年 代 初 期 に わ た る韓 国 国 内 の 移 動 電 話 加 入 者 数 を表 して い る。1988年 の 加 入 者 は2万 人 程 度 で 、 絶 対 数 こ

そ少 な い も の の 、1984年 か ら1993年 ま で に 毎 年 前 年 対 比 倍 増 して い る。

特 に、1993年 か ら1994年 に か けて は 約4.4倍 も成 長 し、 一 気 に47万 人 か ら2百 万 人 に急 増 す るな ど、 新 しい成 長 産 業 と して 急 速 な成 長 期 を迎 えっ つ あ っ た。

しか し、 韓 国 内 に お け る急 速 な需 要 拡 大 とは裏 腹 に、 移 動 端 末 機 メ ー カ ー と して は 、 ア メ リカ の モ トロ ー ラが 韓 国 国 内市 場 で 約70%近 くの シ ェ ア を 占 め、 韓 国 市 場 は完 全 にモ トロー ラの コ ン トロ ー ル下 に あ っ た 。 これ に対 し て 、サ ム ス ン電 子 の 移 動 端 末 機 は、1992年 約2万 台 が 販 売 され た にす ぎ ず9、

韓 国 国 内 で も10%程 度 の シ ェ ア に 留 ま っ て い た 。 さ ら に、 移 動 端 末 機 の 開 発 経 験 と核 心 技 術 力 が不 足 し、頻 繁 な故 障 と通 話 不 良 に よ り、韓 国 内 で さ え、

消i費者 に ア ピー ル す る製 品 とは到 底 及 ぶ もの で は な か っ た とい う。

表1韓 国移動 電話加入者 数の推移(1984‑1994年)

年度 加入者

1984 2,65$

198 4,685

1986 7,093

19$7 10,265

1988 20,353

1989 39,718

1990 80,0Q5

1991 166,198

1992 271,568

(単 位:人)

1993 471,784

1994 2,0$2,

546 出 所=キ ム ジ ン ギ 「世 界 移 動 電 話 市 場 の現 況 に 関 す る 考 察 」 『情 報 通 信 政 策ISSUE』 第8巻2号

通 巻72号 、1996年 、44ペ ー ジ 、 一 部 加 筆修 正 。

9サ ム ス ン 電 子 株 式 会 社 『サ ム ス ン 電 子30年 史 』1999年 、289ペ ー ジ(韓 国 語)。

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2サ ム ス ン 電 子 の 移 動 端 末 機 事 業 へ の 参 入

サ ム ス ン 電 子 が 移 動 端 末 機 事 業 に 参 入 し た の は 、1984年7月 日本 の 東 芝 か らの 技 術 支i援 に よ り、Cellularカ ー フ ォ ン(carphone)の 生 産 に 着 手 し、

同 年10月 か ら販 売 し た こ と に 遡 る'o。 当 時 、Cellularカ ー一フ オ ン の 生 産 販 売 を 行 っ て い た の は 、 サ ム ス ン 電 子 で は な く、 前 述 し た 「三 星 半 導 体 通 信 」 と い う サ ム ス ン ・グ ル ー プ の 系 列 会 社 で あ っ た 。 し か し、1987年 サ ム ス ン ・

リ コ ン リ ビ ョ ン チ ョル

グ ル ー プ の 第2代 会 長 と して就 任 した 李 健 煕 現 会 長(創 業 者 故 李a氏 の 三 男)が 、 グ ル ー プ組 織 改 革 の.̲.と して 、1988年7月 三 星 半 導 体 通 信 を サ ム ス ン電 子 に吸 収 合 併 させ る こ とに よ り、 移 動 端 末 機 事 業 は サ ム ス ン電 子 の1つ の事 業 部 門 と して移 管 され る こ とに な っ た11。

統 合 当 時 、 サ ム ス ン電 子 の 事 業 部 門 は 、 家 電 事 業 部 、 半 導 体 事 業 部 、 そ し て情 報 通 信 事 業 部 の3つ の事 業 部 門 で構 成 され 、 情 報 通 信 事 業 部 門 は 、 既 存 の家 電 事 業 部 門 の情 報 機 器 事 業 本 部 を吸 収 統 合 して 、 交 換 機 、 伝 送 措 置 、 移 動 端 末機 、 通 信 機 器 、 コ ン ピ ュ ー タお よび そ の周 辺 機 器 、 事 務 機 器 な どを生 産 ・販 売 す る よ う に な っ た 。 とこ ろが 、 コ ン ピ ュー タ お よ び周 辺 機 器 は 、 当 時 新 興 成 長 産 業 で あ っ た こ と も あ り、 同 事 業 部 を育 成 す るた め に、1989年 7月 に情 報 通 信 事 業 部 門 か ら分 離 独 立 し、 コ ン ピ ュー タ事 業 部 門 が 新 設 され

る12。

一 方 、1988年12月 サ ム ス ン電 子 はSH‑100と い うモ デ ル の 移 動 端 末 機 (カ ー フ オ ンで は な い携 帯 電 話 機)を 開 発 し、1989年 市 販 す る こ と に よ り、

い よ い よ本 格 的 に移 動 端 末 機 の 製 造 ・販 売 に参 入 す る こ とに な る。 そ して 、 SH‑200(1990年)、SH‑300(1992年)を 次 々 と開 発 し、 国 内 移 動 通 信 市 場 の 開 拓 に乗 り出 しだ3。 しか し、 これ らの 製 品 はサ ム ス ン電 子 の 固 有 モ デ ル とは い え 、 ほ とん どの部 品 を海 外 か ら調 達 し単 純 に組 み 立 て た 製 品 に過 ぎ

loサ ム ス ン 電 子 株 式 会 社、 前 掲 書 、219ペ ー ジ 。 11同 上 書 、249‑251ペ ー ジ 。

12同 上 書

、252‑253ペ ー ジ 。 13同 上 書

、289ペ ー ジ 。

サムスン電子 の移 動通信 端 末 機 の グローバル事業 展 開 に関する史 的考 察15

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な い もの で あ り、 また 一 部 の モ デ ル は市 場 投 入 もで きず 失 敗 に終 わ る な ど、

初 期 の 製 品化 は多 大 な試 行 錯 誤 の連 続 で あ っ た。

しか も、韓 国 の 消 費 者 はサ ム ス ン電 子 の移 動 端 末 機 を買 お う としな か っ た 。 移 動 端 末 機 市 場 に参 入 した もの の 、核 心 技 術 力 や 部 品 開発 力 な ど、 製 品 開 発 に必 要 な 技 術 お よび ノ ウハ ウの 蓄 積 が 脆 弱 だ っ た た め、 高 い 故 障 ・不 良 率 、 粗 悪 な 品 質 、 通 話 の 質 の悪 さ な どを解 消 で きず 、 韓 国 内 で も消 費 者 に大 き く ア ピー ル す る こ とが で きな か っ た の で あ る14。

無 線 通 信 技 術 に 関 す る ノ ウハ ウ の 欠 如 や 、核 心 チ ッ プな どの技 術 的 な 問題 を解 消 で きず 、 販 売 も低 迷 して い た た め、 当 時 移 動 端 末 機 の 開 発 を担 当 して い た 「無 線 開発 室 」 の 人 員 が 大 幅 に縮 小 され るな ど、 事 業 自体 が 存 廃 の危 機 に さ ら され て い た こ とも あ っ た 。 特 に、1990年 代 初 期 、 韓 国 の移 動 端 末 機 市 場 は、 当 時 世 界 トッ プ で あ っ た ア メ リカ の モ トロ ー ラが70%以 上 の シ ェ ア を 占 めて お り、製 品 、品 質 、性 能 、そ して ブ ラ ン ドカ な どの面 で 、韓 国 メ ー カ ー を圧 倒 して い た15。

しか し、1993年 設 計 か ら製 作 まで 、 最 初 の 韓 国産 の携 帯 電 話 機 と言 え る、

SH‑700を 開 発 投 入 して か ら状 況 は少 しず つ 変 わ り始 め る。 このSH‑700は 、 移 動 端 末機 事 業 に参 入 した もの の 、 これ ぞ とい う ヒ ッ ト製 品 を 出せ ず に、 失 敗 を重 ね て い た サ ム ス ン電 子 の 開 発 チ ー ムが 、 当 時韓 国 市 場 トッ プだ っ た モ トロ ー ラ に対 抗 す るた め に、 モ トロ ー ラ製 品 の徹 底 的 な リバ ー ス ・エ ンジ ニ ア リ ン グ(ReverseEngineering)を 通 じて 開 発 され た もの で あ る。

以 上 の よ う に、 サ ム ス ン電 子 は 日本 の 東 芝 か ら技 術 供 与 を通 じて カ ー フ ォ ン の生 産 に着 手 し、 本 格 的 に移 動 端 末 機 の 製 造 ・販 売 に乗 り出 した もの の 、 初 期 の製 品 開 発 と販 売 は試 行 錯 誤 の連 続 で あ っ た 。 しか し、 モ トロ ー ラの対 抗 機 種 で あ るSH‑700を 投 入 して か ら、 状 況 は徐 々 に好 転 され 、 飛 躍 の き っ

か け をつ か む こ とに な る。

14同上書、373ペ ージ。

i5初期の製品化および市場開拓の難 しさは、次の報道資料に詳 しい。韓国KBS製 作 『サムスン携 帯電話機の神話』2003年12月12日 報道資料。

(9)

皿 韓国市場拡大期

こ こで は、 サ ム ス ン電 子 が 韓 国 国 内 市 場 を め ぐって 、 モ トロ ー ラ と一 騎 打 ち の競 争 を展 開 し、 韓 国 内 トッ プ の シ ェ ア を達 成 した1995年 まで の 時 期 に 焦 点 を合 わ せ る。 特 に、 ア ナ ロ グで は完 全 な後 発 メ ー カ ー で あ っ た サ ム ス ン 電 子 が 、 後 に グ ロ ーバ ル 市 場 で 大 きな プ レゼ ン ス を獲 得 し う る背 景 とな った デ ジ タル へ の切 り替 えの 動 き、サ ム ス ンの グ ル ー プ レベ ル で の 変 革 で あ る 「新 経 営 」 な どを概 観 す る。 そ して モ トロー ラ との競 争 行 動 を考 察 して い く。

1移 動 通 信 市 場 の 状 況 と デ ジ タ ル へ の 移 行 の 動 向

1991年 当 時 、世 界 の移 動 通 信 加 入 者 数 を見 る と(表2参 照)、 北 米 、西 ヨー ロ ッパ 地 域 がR多 い 加 入 者 を確 保 し、 そ れ ぞ れ833万 人(51%)と466万 人(29%)で 、 世 界 移 動 電 話 加 入 者 の 約80%を 占 め て い た 。 しか し、 表2で

も分 か る よ うに 、 世 界 の 移 動 通 信 加 入 者i数は1991以 降 、 急 速 に拡 大 して お り、 特 に ア ジ ァ太 平 洋 地 域 と中 南 米 地 域 の急 速 な増 加 が 目立 って い る。

ア ジ ア 太 平 洋 地 域 は、1995年 現 在 、2,180万 人 で 、 西 ヨー ロ ッパ2,252 万 人 に 匹敵 す る市 場 に まで 成 長 して い る。 また 、 絶 対 加 入 者 数 は少 な い もの の 、中 南 米(406万 人)や 中東(122万 人)の 成 長 も著 し く、1995年 に な る と、

ア ジ ア太 平 洋 地 域 、 中 南 米 お よび 中東 な ど、 いわ ゆ る新 興 地 域 の世 界 全 体 に 占 め る比 重 が31%ま で に成 長 して い る。 この よ うに 、1990年 代 半 ば の 移 動 通 信 市 場 は、 先 進 国 だ けで は な く、 韓 国 の よ うな 新 興 市 場 の 台 頭 に も後 押 し

され 、 世 界 全 体 にわ た っ て 急 速 に拡 大 して い た 。 また 、 そ れ に伴 い、 移 動 端 末 機 も新 しい成 長 産 業 と して 大 き な成 長 局 面 を迎 えつ っ あ っ た の で あ る。

サムスン電子 の移 動通 信 端末 機 の グローバル事 業展 開 に関す る史 的考察17

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表2世 界 移 動 通 信 の 加 入 者 数

(単位=1,000名 、%) 1991 199 1991対 比1995の 成 長 率

北 米

8,337 36,057 332%

51.9% 41.5%

西 ヨ ー ロ ツ パ

4,667 22,525 383%

2s.o% 25.9%

東 ヨmツ

23 672 2,821%

0.14% 0.77%

ア ジ ア 太 平 洋

2,539 2].,803 759%

15.8% 25.1%

353 4,060 1,050%

2.19% 4.67%

136 1,227 802%

0.9% 1.4%

ア フ リカ

19 562 2,858°/a

0.12% 0.'T 注:下 段 は 世 界 全 体 に 占 め る シ ェ ア 。

元 出 所:MTA‑EMCI,WorldCellularMarket:1996,1996,Pyramid,CellularandPCSMarketsin AfricaandtheMiddleEast,1996.

引 用:キ ジ ン ギ ・キ ム ヨ ン ギ ュ 「CDMA移 動 通 信 市 場 の 現 況 と わ が 国 の 企 業 の 海 外 進 出 」

情 報 通 信 政 策 』 第9巻6号 、 通 巻183号 、1997年 、4ペ ー ジ 、 加 筆 修 正 。

一 方、 当 時 の 移 動 通 信 方 式 は 、 ア ナ ロ グ 方 式 のAMPS(Advanced

MobilePhoneService)が 主 流 で あ っ た。AMPSと は、1983年 に ア メ リカ のAT&Tと モ トロ ー ラが 開 発 した ア ナ ロ グ携 帯 電 話 方 式 の こ とで 、 す で に 世 界 的 に広 く普 及 し、 特 に大 都 市 で の収 容 能 力 は 限界 に達 して い た。 そ こで 新 しい 通 信 方 式 と して 、 ア ナ ロ グか らデ ジ タル へ 技 術 の移 行 が 世 界 的 に差 し 迫 っ て お り、 多 様 な デ ジ タル の通 信 方 式 が 導 入 され て い た 。

韓 国 の 場 合 、 政 府 が 新 しい デ ジ タ ル 方 式 で あ るCDMA(CodeDivision

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MultipleAccess)方 式 の 採 用 を1992年 に決 定 し、1996年 か らの本 格 商 用 化 に 向 けて 準 備 して い た 時 期 で もあ る'6。

この よ うに1995年 まで の 移 動 端 末 機 市 場 の 状 況 は 、 世 界 的 に市 場 が 急 速 に拡 大 し、 か つ ア ナ ーロ グか らデ ジ タ ル へ 移 行 す る時 期 で もあ っ た だ け に、 移 動 端 末 機 メ ー カ ー は、 成 長 して い る市場 を 吸収 す る形 で 、 市 場 拡 大 を図 る こ

とが で きた 。 また 一 方 で は、 ア ナ ロ グか らデ ジ タ ル へ とい う技 術 の 断 絶 が 予 期 され て い た た め 、 ア ナ 「ログ方 式 で 培 って きた先 発 企 業 の技 術 お よび 市 場 の 優 位 性 が 、 新 しい デ ジ タ ル方 式 下 に お い て 必 ず し も持 続 し う る とは 限 らな い 状 況 で あ った 。 した が って 、 後 発 参 入 メ ー カ ー に とって も十 分 に競 争 で き る 未 開 拓 市 場 が あ り、場 合 に よ って は先 発 メ ー カ ー の優 位 性 を覆 し、世 界 トッ70

ク ラス の企 業 と して飛 躍 し う る機 会 を潜 め て い た時 期 で も あ っ た と言 え る。

2サ ム ス ン ・グ ル ー プ の 「新 経 営 」 と 移 動 端 末 機 事 業 の 転 機

一一方、1993年 当 時 、 サ ム ス ン ・グ ル ー プ の2代 目 会 長 とな っ た 李 健 煕 現 会 長 が 、 グ ル ー プ 次 元 の 改 革 を 骨 子 とす る、 「新 経 営 」 を ドイ ツ の フ ラ ン ク フ ル トで 宣 言 す る 。 こ の 「新 経 営 」 は 、 後 に サ ム ス ン 電 子 の 移 動 端 末 機 が 高 級 品 と して グ ロ ー バ ル 市 場 に 浸 透 す る の に 、 直 ・間 接 的 に 多 大 な 影 響 を 及 ぼ す 。 「新 経 営 」 が 移 動 端 末 機 事 業 の 戦 略 形 成 に 及 ぼ し た 影 響 は 、 次 回 の 論 文 で 詳 細 に議 論 す る こ と と し、 こ こ で は 、 「新 経 営 」 に 関 す る概 略 的 内 容 だ け を 整 理 して お く17。

第1に 、 「危 機 意 識 の 共 有 」 で あ る 。 そ れ は 、 デ ジ タ ル 化 、 技 術 革 新 、 そ し て 第2次 産 業 に お け る 供 給 過 剰 は サ ム ス ン に と っ て 大 き な 危 機 で あ る。

これ らの 危 機 を 李 健 煕 会 長 自 らが 認[1し た 上 で 、 全=社 員 に こ の 危 機 意 識 を 植 16サ ムスン電子株式会社、前掲書、375ペ ージ、およびキム ジンギ 「世界移動電話市場の現況に

関する考察」『情報通信政策ISSUE』 第8巻2号 、通巻72号 、1996年 、1‑57ページ(44ペ ージ) (韓国語)。

17サ ムスン電子の 「新経営」に関 しては、キム ソンホン、ウ イ ンホ著 ・小川昌代訳 『サムスン 高速成長の軌跡一李健煕10年 改革』ソフ トバンククリエイティブ、2004年 、および具本国 「サ ムスンを成長 させた2っ の外部要因 と3つ の内部要因」 日本 に根付 くグローバル企業研究会&日 経ビズテック編 『サムス ンの研究』 日経BP、2005年 、154‑155ペ ージを参照されたい。

サムスン電子 の移 動通信 端 末機 のグローバル事 業展 開 に関 する史的考 察19

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え 付 け る 以 外 に 根 本 的 な 変 化 は 期 待 で き な い とい う考 え か ら 、 変 革 を 推 し進 め る こ とで あ る 。 そ の 端 的 な ス ル ー ガ ン が 「自分 の 家 族 以 外 は 全 て を 変 ろ 」

とい う こ とで 、 こ の こ とか ら も オ ー ナ ー 経 営 者 の 変 革 へ の 強 い 意 志 を うか が い 知 る こ とが で き る。

第2は 、 「量 重 視 の 経 営 か ら質 重 視 の 経 営 へ の 大 転i換 」 で あ る。 新 経 営 を 行 う以 前 の サ ム ス ン は 、 ど ち ら か と い う と、 質 よ り も量 で 成 長 して き た 。 値 段 も 安 い 代 わ り に 品 質 も そ こ そ こ と い っ た イ メ ー ジ で 捉 え ら れ て い た 。 しか し、「量 を捨 て て 、質 を大 事 に す る」とい うの が 、新 経 営 の 核 心 で あ り、世 界 ト ッ プ ・ク ラ ス の 企 業 を 目指 し、 全 社 的 な 意 識 改 革 を行 う も の で も あ る 。

しか し、 こ の よ う な トッ プ の 改 革 宣 言 が 最 初 か ら全 社 員 に ス ム ー ス に 浸 透 し て い た わ け で は な か っ た 。 何 よ り も変 革 、 あ る い は 改 革 とい うの は 、 社 員 の 意 識 や 思 考 お よ び 行 動 様 式 を 変 え る も の で あ り、 慣 れ 親 し ん だ 行 動 や や り 方 を 簡 単 に 捨 て る の は 生 理 的 な 躊 躇 と拒 否 感 が つ き ま と うか ら で あ る。 特 に 、 質 重 視 の 経 営 は 、 トッ プ の 思 惑 とは 裏 腹 に な か な か 浸 透 す る こ とが で き な か っ た とい う。

質 重 視 へ の 転 換 の 厳 し い 道 程 を 端 的 に 表 し た 事 件 が 、 い わ ゆ る 「不 良 品 の 火 刑 式 」 とい う も の で あ る 。 問 題 の 発 端 は 、 年 賀 の 品 と し て 約2,000台 の 携 帯 電 話 機 を 社 員 に 支 給 し た が 、 通 話 が で き な い 、 とい う声 が 一 部 の 社 員 か ら 聞 こ え 始 め 、 や が てi携帯 電 話 機 の 不 良 品 が 国 内 に 出 回 っ て い る とい う報 告 が 李 会 長 に も伝 え られ る。 「量 の 経 営 か ら質 の 経 営 」 へ 大 転 換 を 打 ち 出 し、 か つ 移 動 端 末 機 事 業 に 愛 着 を も っ て い た 李 会 長 は 、 こ の 報 告 を接 し、 激 怒 して 荒 治 療 を 行 っ た の が 、 「不 良 品 の 火 刑 式 」 で あ る 。

1994年5月 、 携 帯 電 話 機 、 フ ァ ク シ ミ リ 、 業 務 用 電 話 機 な ど15万 台 、 金 額 に 換 算 す れ ぼ 、500億 ウ ォ ン(約62億 円)相 当 の 製 品 を 工 場 の 全 社 員 の 前 で 燃 や し 、 品 質 確 保 の 強 い 意 志 と メ ッ セ ー ジ ー を 公 に 表 し た の で あ る'8。 こ 18キ ム ソンホン、ウ インホ著・小川昌代訳、前掲書、142‑145ペ ージ。ただ し、「不良品の火刑式」

の時期 に関 しては、キム ソンホンらの資料では、1995年3月 となっているが、前掲の韓国KBS 報道資料では、1994年5月 となってお り、本稿 ではKBS報 道資料に基づ く。

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の こ とは 、 生 え抜 きの専 門 経 営 者 に とっ て は到 底 行 え な い こ とで あ り、 一 方 に お い て は、 サ ム ス ン にお け る李 会 長 の 絶 対 的 な 権 力 者 と して の 一 面 を十 分 に うか が い 知 る こ とが で き る もの で もあ る。

外 部 的 に は移 動 端 末機 市 場 の 急速 な拡 大 、 そ して 内部 的 に は絶 対 的 な権 力 を も って い るオ ー ナ ー 経 営 者 の 「新 経 営 」 宣 言 に よ る 「質 へ の転 換 」 を模 索 す るな ど、 大 変 革 の 渦 巻 きの 中 で 、 サ ム ス ン電 子 の 移 動 端 末 機 事 業 も その 存 続 にか か わ る重 要 な 時 期 に直 面 して い た 。 李 健 煕 会 長 が ドイ ツの フ ラ ン ク フ ル トで 「新 経 営 」 を宣 言 す る際 に、"3年 以 内 に モ トロ ー ラ水 準 の 品 質 の 製 品 を開 発 で きな けれ ば 、 移 動 端 末 機 事 業 か ら撤 退 す る"と 伝 え た とい う こ と で あ る。

そ こで 、当時 移 動 端 末 機 の開 発 を担 当 して い た チ ョン キ ョン ジ ュ ン氏 は 、 李 健 煕 会 長 に対 して 、 サ ム ス ンの移 動 端 末 機 が モ トロ ー ラ との競 争 で 勝 利 す

る こ とを約 束 し'9、そ れ が で き な けれ ば移 動 端 末 機 事 業 か ら徹 底 す る、 と念 を押 され た とい う。 以 上 の よ うに 、 外 部 的 な 事 業 機 会 と内部 的 な 危機 感 の 共 有 の 中 で 、 移 動 端 末 機 の開 発 チ ー ム は情 報 通信 事 業 部 の社 運 をか け て 、 まず 韓 国 市 場 に ター ゲ ッ トを しぼ り、 モ トロ ー ラ との 一騎 打 ち の 勝 負 に打 っ て 出

る こ とに な る。

3品 質 向 上 とマ ー ケ テ ィ ン グ投 資 の 拡 大

上 記 の よ うに、 初 期 開 発 段 階 に お け る技 術 的 問題 点 、 マ ー ケ テ ィ ン グ戦 略 の欠 如 な どで 、 韓 国 内 で さ え なか な か 市 場 シ ェ ア を伸 ばせ な い サ ム ス ン電 子 は、 マ ー ケ テ ィ ン グ室 主 導 で新 しい 製 品 戦 略 を模 索 す る こ とに な る。

第1に 、 モ トロ ー ラ社 の 製 品 の 長 所 ・短 所 に 関 す る緻 密 な調 査 と、 サ ム ス ン電 子 の移 動 端 末 機 が も って い る品 質 、 性 能 な どの 問 題 点 を徹 底 的 に分 析 す る こ とで あ っ た 。 そ こで 提 起 され た 問 題 点 が 、 モ トロ ー ラの 製 品 に比 べ 、 山岳 部 で の通 話成 功 率 が 極 めて 低 い とい う こ とで あ っ た。 韓 国 は高 い 山 は少

19サ ム ス ン 電 子 株 式 会 社、 前 掲 書 、374ペ ー ジ 。

サムスン電子 の移 動通信 端 末機 のグローバル事業展 開に関する史 的 考察21

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な い もの の 、 国 土 の 約70%が 山 岳 部 で あ り、 この よ うな 山岳 部 で の 通 話 成 功 率 を飛 躍 的 に向 上 させ な い 限 り、 モ トロ ー ラ との競 争 に は勝 て な い とい う 点 が 明 らか に な っ た の で あ る。

第2に 、 製 品 の 品 質 を確 保 す る こ とで あ っ た 。 性 能 面 で は劣 る も の の 、 少 な く とも 同水 準 の 品 質 を確 保 しな けれ ぼ、 世 界 的 な 巨人 で あ るモ トロ ー ラ

との戦 い に は挑 む こ とが で き な い とい う こ とで あ る。 しか し、 前 述 した よ う に 、 山岳 部 で の通 話 成 功 率 向 上 とい う品質 条 件 を ク リア ー す るた め に は、 多

くの技 術 的難 問 を克 服 す る必 要 が あ っ た。

第3に 品 質 と関 連 す も う1つ の 問 題 が 、 製 品 の 丈 夫 さ と品 質 の安 定 化 で あ る。 当時 の 移 動 端 末機 は 、 外 形 が か な り大 き く、 消 費 者 が よ く落 しが ち で あ っ た た め 、 落 して も簡 単 に故 障 しな い移 動 端 末 機 を作 る こ とも開 発 の 重 要 な課 題 で あ っ た 。 そ こで 当 時 責 任 者 で 、 現 在 情 報 通 信 事 業 部 の社 長 で あ る リ キ テ氏 は、 新 モ デ ル が 出来 上 が る と、 まず 、 床 に強 く叩 い て み た り、 足 で 踏 み 潰 して み た りす るな ど、 製 品 の 丈 夫 さ を徹 底 的 に追 及 して い た20。

そ して 、‑L記 の よ うな 製 品戦 略 に基 づ き、 まず 韓 国 国 内市 場 に お い て 、 当 時 トッ プの シ ェ ア を 占 めて い た モ トロー ラ との 競 争 で 勝 つ こ とを優 先 的 な戦 略 過 課 題 と して 策 定 す る。 この こ とは、 モ トロ ー ラ との競 争 な しに は、 韓 国 内 の シ ェ ア を飛 躍 的 に伸 ばせ な い とい う判 断 か ら、 明確 な競 争 の ター ゲ ッ ト と して モ トロ ー ラ を設 定 し、 韓 国 内 で の 市 場 シ ェ ア お よ び ブ ラ ン ド認 知 度 の 画 期 的 な 向上 を図 っ て い くこ とに した の で あ る。

モ トロ ー ラ との 競 争 を最 優 先 的 な 課 題 と して 取 り組 ん で い た 開 発 チ ー ム は、 実 は数 年 前 か らモ トロ ー ラ製 品 に対 す る徹 底 的 な ベ ンチ マ ー キ ン グ と リ バ ー ス ・エ ンジ ニ ア リン グ を通 じて 、 過 去 の モ トロ ー ラ製 品 に対 す る問題 点 や 弱 点 を徹 底 的 に 分 析 ・調 査 して い た。 そ こで提 起 され た モ トロ ー ラの 問 題 点 と して 、 通 話 中 電 話 が 切 れ る とか 、 繋 が らな い とい う内 容 で あ っ た 。

特 に、 山岳 部 の 多 い韓 国 で は、 モ トロー ラ製 品 も山岳 部 で は通 話 品 質 に 問 2。ここで述べる3つ の製品コンセプトの内容に関しては、韓国KBS製 作、前掲の報道資料に基づ く。

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題 が あ る とい う弱 点 を狙 い 、 これ らの 問 題 点 を大 幅 に修 正 ・改 善 す る こ と を 、 新 製 品 の 開 発 に お け る最 優 先 的 な コ ンセ プ トと して 設 定 した 。 そ して 、 山岳 部 で 通 話 品 質 を確 保 す るた め に、 ア ンテ ナ に金 属 コネ ク ター を設 置 し、

電 波 の 受 信 能 力 を高 め る よ うに工 夫 した 。 ま た最 適 な 回 路 設 計 、 周 波 修 正 ソ フ ト使 用 な ど を通 じて 品 質 改 善 を大 幅 に 図 っ た 新 製 品 を 投 入 した 。 そ れ が SH‑700(1993)で あ る2'。

SH‑700の 販 売 と共 に無 料 通 話 、 専 門 代 理 店 増 設 、 旧型 モ デ ル との無 償 交 換 な ど、 ブ ラ ン ド認 知 度 を高 め るた め の マ ー ケ テ ィ ン グ投 資 を積極 的 に行 っ た 。 この よ うな 努 力 もあ り、SH‑700は 韓 国 内 の 消 費 者 の 中 で 、 少 しず つ 信 頼 を得 て 、 販 売 が 伸 び 始 め た が 、 市 場 シ ェ ア を 大 幅 に伸 ば す こ とに は至 ら な か っ た 。 そ れ で 引 き続 き、 サ ム ス ン電 子 は 、1994年10月 に エ ニ コ ー ル (Anycall)と い う ブ ラ ン ド名 のSH‑770を 市 場 に投 入 し22、モ トロ ー ラの 追 撃 を一 層 強 め る。

4韓 国 土 着 優 位 性 を 活 か した マー ケテ ィング投 資 と韓 国 シ ェアNo.1の 獲 得 前 述 した よ うに、山岳 部 の多 い 韓 国地 形 に最 適 な通 話 成 功 率 を確 保 す べ く、

移 動 端 末 機 の 品 質 を大 幅 に改 善 したSH‑700で あ っ た が 、 先 発 の モ トロー ラ に 対 す る ブ ラ ン ド ・ロ イ ヤ ル テ ィや 旧 モ デ ル に対 す るネ ガ テ ィ ブ な イ メ ー ジ が 根 強 く浸 透 して い た た め 、 市 場 シ ェ ア を飛 躍 的 に伸 ば す こ とはで きな か っ た。 そ こで 、 品 質 的 な不 安 を あ る程 度 解 消 した とい う 自信 か ら、 デザ イ ン と 性 能 を若 干 修 正 したSH‑770を 投 入 し、 韓 国 の 土 着 的 な優 位 性 を最 大 限 活 か

した 製 品 お よ び ブ ラ ン ド ・コ ンセ プ トで 、 総 力 を挙 げ て大 々 的 な マ ー ケ テ ィ ン グ投 資 に 踏 み 切 る23。

まず 、 新 製 品 で あ るSH‑770を 投 入 す る際 に、 ブ ラ ン ド名 を公 募 し、 ど こ で も通 じ る とい う意 味 の エ ニ コー ル(Anycall)と い うブ ラ ン ドを使 用 し始

2正サ ム ス ン 電 子 株 式 会 社、 前 掲 書 、373‑374ペ ー ジ 、 お よ び 韓 国KBS製 作 、 前 掲 報 道 資 料 。 22サ ム ス ン 電 子 株 式 会 社、 同 上 書 、373‑374ペ ー ジ 。

23以 下 の マ ー ケ テ ィ ン グ お よ び 広 告 宣 伝 の 内 容 は、 韓 国KBS製 作 、 前 掲 報 道 資 料 に 基 づ く。

サムスン電子 の移 動通 信端 末 機 の グローバ ル事業 展 開 に関する史 的考察23

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め る。 ち な み に 、 も と も とは 、Anytellと い う ブ ラ ン ド名 が 一 番 の候 補 と し て 取 り上 げ られ た が 、 ア メ リカ の あ る会 社 が 商 標 登 録 を して い る こ とか ら、

代 替 案 と してAnycallに 変 わ っ た とい う。

次 に、 製 品 お よ び マ ー ケ テ ィ ン グ の コ ンセ プ トと して 「韓 国 地 形 に 強 い 」 とい う こ とを真 正 面 か ら打 ち 出 した 。「韓 国 地 形 に強 い 」とい う コ ンセ プ トは、

山岳 部 の 多 い韓 国 に お い て 、 サ ム ス ン電 子 の移 動 端 末{が もっ て い る品 質 上 の 弱 点 で あ っ た が 、 そ れ を強 み に変 え た もの で あ る。 また サ ム ス ン電 子 が 明 確 な タ ー ゲ ッ トと して定 めて い た モ トロー ラの 製 品 も、 サ ム ス ン電 子 の 移 動 端 末機 よ りは 山岳 部 で の 通 話 品質 が 勝 って い る もの の 、 平 地 の 多 い アメ リカ な どを想 定 して 開 発 され た 製 品 で あ るた め、 当 時 韓 国 消 費 者 も十 分 に満 足 し て い る品質 とは言 え な か っ た。

周 知 の よ う に、 マ ー ケ テ ィ ン グ とは製 品 お よ び ブ ラ ン ド、 そ して そ れ に フ ィ ッ ト(fit)す る広 告 宣 伝 の ユ ニ ー ク な コ ンセ プ トが もの を い う経 営 機 能 で あ る。 サ ム ス ン電 子 がSH‑770を 投 入 す る際 に打 ち 出 した 「韓 国 地 形 に強 い 」 とい う製 品 お よび マ ー ケ テ ィ ン グの コ ンセ プ トは 、 正 に相 手 の弱 み に狙 い を定 め 、 か っ 自社 の 弱 み を強 み に転 換 した戦 略 的 な コ ンセ プ トそ の もの で あ っ た と言 え る。

SH‑770投 入 後 、 「韓 国 地 形 に強 い 」 とい う コ ンセ プ トに合 わ せ 、一 層 大 々 的 な広 告宣 伝 の キ ャ ンペ ー ン を実 施 す る。 韓 国 最 高 峰 で あ る 「チ リサ ン」で 、 登 山 客 を対 象 に 、 山岳 部 に お け る テ ス ト通 話 を皮 切 りに、 多 くの モ デ ル を起 用 し、 韓 国 地 形 にお け る通 話 成 功 率 は エ ニ コー ル が 最 高 とい うイ メ ー ジ を徹 底 的 に植 え付 け る よ う に した 。 しか も、 広 告 の コ ピ ー も、 「我 々 が 守 らな け

れ ぼ な らな い 民 族 の 河 山 」 とい うテ レ ビ ・コ マ ー シ ャ ル を3編 に も わ た る シ リー ズ で 放 映 し、 世 界 最 高 峰 の エ ベ レス トを登 頂 した 有 名 アル ピニ ス トが 登 場 す る な ど、 山 岳 地 形 に強 い とい うコ ンセ プ トを大 き くア ピー ル した 。

そ して、 品 質 に関 す るネ ガ テ ィ ブ な イ メ.̲̲̲ジを払 拭 し、 消 費 者 が 品質 に対 す る安 心 感 を もて る よ うに、 最 終 消 費 者 に移 動 端 末 機 を販 売 して い る代 理 店

(17)

の経 営 者 が 、"品 質 を保 証 す る"と い う宣 伝 も強 化 した 。 そ の他 に盗 難 保 険 実 施 、 国 内 最 大 のA/S網 の構築 、 山 頂 で 登 山 客 を対 象 と した 無 料 通 話 、 高 速 道 路 のパ ー キ ン グエ リア で の無 料 通 話 な ど、 様 々 な販 売 促 進 の企 画 を実 施 す る。

こ う した 努 力 が 実 を 結 び 、SH‑770を 投 入 した1994年10月26%だ っ た 市 場 シ ェ ア が 、1995年8月 に は、52%ま で に 上 昇 し、 つ い に モ トロ ー ラ と

の市 場 シ ェ ア 争 い で 逆 転 す る こ とに成 功 した の で あ る24。ま た 、 エ ニ コー ル とい うプ ラ ン名 のSH‑770は 、 市 場 投 入 後 、 わ ず か1年 足 らず で難 攻 不 落 の 巨人 で あ るモ トロ ー ラ を打 ち 破 り、1995年 当 時 韓 国 最 高 の ヒ ッ ト商 品 とな

り、 各 種 マ.̲̲.ケテ ィ ン グ賞 や 広 告 賞 を も席 巻 す る よ うに な っ た。

以 下 で は、SH‑770が 急 速 に そ の シ ェ ア を拡 大 し、 わ ず か1年 足 らず で 韓 国 トッ プ の市 場 シ ェ ア を獲 得 した 背景 を概 略 して お く。

第1に 、 韓 国 地 形 に 適 合 した 絶 妙 な 製 品 コ ンセ プ ト と品 質 レベ ル の 向 上 で あ り、さ らに、それ を見 事 に反 映 した マ ー ケ テ ィ ン グ戦 略 と、大 々 的 な マ ー

ケ テ ィ ン グ投 資 が 実 を結 ん だ と言 え る。

第2に 、 製 品 開 発 に お い て は 、 当 時 トッ プの シ ェ ア を誇 って い た モ トロー ラの 弱 点 を徹 底 的 に攻 め る戦 略 、 そ して モ トロー ラの 弱 点 をSH‑770の 強 み と して製 品 品質 に組 み 込 み、 それ を差 別 化 の 最 優 先 的 な ポ イ ン トと して 取 り 組 ん だ こ とが 大 き な原 動 力 に な っ た と考 え られ る。

第3に 、 上 記 の広 告 宣 伝 、 「我 々 が 守 らな けれ ば な らな い 民 族 の 河 山 」 と い う コ ピ ーで も想 像 で き る よ うに、 韓 国 人 の 愛 国 心 を くす ぐ る よ うな広 告 コ

ピーが 、 韓 国人 の 情 緒 に合 致 し、 国産 品 の使 用 を刺 激 した と も言 え よ う。

第4に 、 サ ム ス ン ・グ ル ー プ とい う韓 国 内 に お い て は トップ の企 業 イ メ ー ジ 、 そ して 最 高 の 家 電 メ ー カ ー と して 君 臨 して い た サ ム ス ン電 子 の販 売 網 や ブ ラ ン ド認 知 度 が 、 移 動 端 末 機 の 急 速 な販 売 拡 大 に も強 力 な 相 乗 効 果 を発 揮 した と言 え よ う。

24サムスン電子株式会社、前掲書、374ペ ージ。

サムスン電子 の移 動通信 端 末機 のグローバル事 業展 開 に関する史 的考 察25

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第5に 、 広 告 宣 伝 費 も当初 の 予 定 の8億 ウ ォ ンか ら56億 ウ ォ ン(95年 末 基 準)へ7倍 も増 や した と言 わ れ る よ う に、 多 大 な物 量 攻 勢 と販 促 もシ ェ ァ逆 転 に重 要 な役 割 を果 た した こ とは再 三 い うまで も な い。

IV(DMAの 商 用 化 と グ ロー バ ル 市 場 へ の 飛 躍 期

こ こで は、 サ ム ス ン電 子 が1996年CDMA方 式 の デ ジ タ ル 移 動 端 末 機 お よ び シ ス テ ム 開 発 に成 功 し、 い よ い よ本 格 的 に グ ロ ー バ ル 市 場 に 向 け て 躍 進 し、 さ ら にCDMA移 動 端 末 機 分 野 で 、 世 界 トッ プ の シ ェ ア を獲 得 した 1998年 まで の 時期 に焦 点 を合 わせ て 考 察 す る。

1ア ナ ロ グ か ら デ ジ タル へ の 転 換

1995年 当 時 の韓 国 移 動 通 信 サ ー ビ ス は 、第1世 代 の ア ナ ロ グ方 式(AMPS) か ら デ ジ タ ル 方 式 へ 徐 々 に転i換 す る 時 期 で あ り、 韓 国 で は1996年4月 か

らデ ジ タ ル 移 動 通 信 サ ー ビス が 開始 した 。 韓 国 政 府 は、 デ ジ タ ル 移 動 通 信 シ ス テ ム へ の移 行 に備 え て 、 そ の 通 信 方 式 と してCDMAを 採 用 し、 す で に 1992年8月 に韓 国 通 信 研 究 所(ETRI)が サ ム ス ン電 子 を は じ め とす る韓 国 4社 と共 同 開発 の契 約 を締 結 して い た25。

特 に 、 こ こで 注 目 に値 す る こ とは 、世 界 移 動 通 信 市 場 が ア ナ ロ グか らデ ジ タ ル へ 移 行 す る段 階 で 、 韓 国政 府 は この 流 れ に注 視 し、 当 時世 界 の どの 国 で も まだ 商用 化 して い な いCDMA方 式 の採 用 を決 定 した こ とで あ る。 そ して 、 この 決 定 を う け、CDMAに 関 す る基 本 特 許 を保 有 して い る ア メ リカ の ク ア ル コム(Qualcomm)社 か ら技 術 を導 入 し、CDMA方 式 の 通 信 シ ス テ ム 開 発 に も着 手 した の で あ る。

一・方、 世 界 全 体 の 移 動 通 信 加 入 者 は、 表3で も分 か る よ う に、1992年 当 25同上書、375ペ ージ。

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時 デ ジ タ ル加 入者 数 はわ ず か17%に 過 ぎな か っ た が 、1996年 度 に は35%ま で に成 長 し、 全 世 界 的 に デ ジ タル へ の切 り替 えが 大 い に期 待 され て いた 時 期 で あ る 。

し か し、 デ ジ タ ル 方 式 と は い え 、 欧 州 が1992年 初 め て サ ー一ビ ス を 開 始 し たGSM(GlobalSystemforMobileCommunications)方 式 が 圧 倒 的 な 優 位 を 占 め 、 デ ジ タ ル 加 入 者 に 限 っ て 言 え ば 、GSMが1996年 当 時 世 界 全 体 の66%を 占 め て い る状 況 で あ っ た(表4参 照)。 次 に 口本 独 自 のPDC

(PersonalDigitalCellular)が21.4%を 占 め 、 ア ジ ァ 太 平 洋 地 域 を 中 心 に 拡 大 さ れ て い た 時 期 で あ る 。 ま た 、 欧 州 のGSMは 、 欧 州 以 外 に オ ー ス トラ リ ア 、 香 港 、 台 湾 な どが 採 用 して お り、 新 た にGSMサ ー ビ ス を 普 及 予 定 と して い る 国 と して 、 マ レ ー シ ア(CelcomandBinariang)、 ベ トナ ム(Sing TelInternational)、 イ ン ド、 中 国 、 シ ン ガ ポ ー ル な ど が 名 乗 り上 げ て い た26。 こ の よ う に 、GSMは す で に 世 界60ヶ 国 で 採 択 を 完 了 、 ま た は 予 定 し て お り、 絶 対 的 な 通 信 規 格 と して 君 臨 し て い た の で あ る27。

表3ア ナ ロ グ/デ ジ タ ル 移 動 通 信 加 入 者 数 の 推 移

(単位:1,000名 、%)

1992 1995 X996 X997 1998

ア ナ ロ グ 25,283(83a) 64,521(7%) 80,129(65%) 91,553(55%) 98,0S9(46%) デ ジ タル 5,722(17%) 22,085(25%) 43,738(35%) 74,366{45%) 113,120(54%}

合計 34,005 86,906 123,867 is5,91s 211,209

注:比 重 は 全 体 移 動 通 信 加 入 者 に 対 す る そ れ ぞ れ の 比 重 で 、1997年 お よ び1998年 は 当 時 の 予 測 値 で あ る 。 元 出 所:MTA‑EMCI,WorldCeIlularMarket:1996,1996,Pyramid,CellularandPCSMarketsin

AfricaandtheMiddleEast,1996.

引 用:キ ジ ン ギ ・キ ム ヨ ン ギ ュ 「CDMA移 動 通 信 市 場 の 現 況 と わ が 国 の 企 業 の 海 外 進 出 」

『情 報 通 信 政 策 』 第9巻6号 、 通 巻183号 、1997年 、6ペ ー ジ 、 加 筆 修 正 。

26キ ム ジ ン ギ、 前 掲 論 文 、27‑29ペ ー ジ 。

27パ ク ソ ク フ ァ ン 「世 界 電 気 通 信 市 場 の 環 境 変 化 と対 応 戦 略(II)」 『情 報 通 信 政 策 』 第7巻2号 、 1995年 、24‑65ペ ー ジ(31‑32ペ ー ジ)(韓 国 語)。

サムスン電子 の移動 通信 端末 機 の グローバル事 業展 開 に関す る史 的考察27

(20)

表4世 界市場 にお けるデ ジタル ・システ ム別加 入者状 況

(単 位:1,000名 、%)

1994 1995 1996

TDMA

563 1,857 3,i70

9.1 .. 7.3

CDMA

0 472 2,313

0.0 2.1 5.3

GSM

5,059 16,037 28,895

... 72.6 66.1

Pnc

565 3,718 9,360

9.1 16.8 21.4

注:比 重 は 全 体 移 動 通 信 加 入 者 に 対 す る そ れ ぞ れ の 比 重 で あ る 。 出 所lMTA‑EMCI,WorldCellularMarket:1996,199fi,Pyramid,CellularandPCSMarketsinAfrica

andtheMiddleEast,1996.

引 用=キ ジ ン ギ ・キ ム ヨ ン ギ ュ 「CDMA移 動 通 信 市 場 の 現 況 と わ が 国 の 企 業 の 海 外 進 出 」

情 報 通 信 政 策 』 第9巻6号 、 通 巻183号 、1997年 、7ペ ー ジ 、 加 筆 修 正 。

とこ ろ が 、 ア ジ ア太 平 洋 地 域 で は、1994年 時 点 で ア ナ ロ グ方 式 が 移 動 電 話 の93%を 占 め て お り、 デ ジ タ ル 方 式 は わ ず か7%に 過 ぎ な か っ た(表5 参 照)。 しか も、 そ の ほ とん どを 欧 州 のGSMと 日本 のPDCが 占 め て お り、

韓 国 政 府 が 採 用 を決 定 して い たCDMAは 皆 無 に近 か っ た 。 こ の よ う に、 韓 国 政 府 は デ ジ タ ル移 動 通 信 へ 移 行 す る際 に、 当 時全 く採 用 され て い なか った CDMA方 式 の 採 用 を 決 定 す る とい う リス ク を背 負 い 、 世 界 初 の 商 用 化 に 向 け て政 府 、 研 究 機 関 、 通 信 事 業 者 、移 動 端 末 機 メ ー一カ ー と共 同 で 準 備 を進 め て い た の で あ る。

(21)

表5ア ジア太平 洋地域 の移動電話 システム別 シ エアお よび成 長率

形 態 標 準 成 長 率(1994) 市 場 シ ェ ア

(1994)

ア ナ ロ グ

AMPS 30% 45%

TACS 35% 43%

NMT 20% 5%

30 93%

デ ジ タル GSM :!1'. 3%

TDMA 500 0.5%

CDMA 0%

PCSIPCN 0.5%

PDC 900% 3%

:f1'. 7%

合 計 45% 100%

引用:キ ジ ンギ 「世 界 移 動 電 話 市 場 の 現 況 に 関 す る考 察 」 『情 報 通 信 政 策ISSUE』 第8巻2号 通 巻72号,1996年 、28ペ ー ジ。

2韓 国 政 府 のCDMA方 式 の採 択 と狙 い

とこ ろが 、 前 述 した よ う に 当 時 デ ジ タ ル 移 動 通 信 方 式 と して 、 世 界 的 に CDMAを 採 択 した 国 が 皆 無 で あ り、GSMが 主 導 して い た 時 期 に 、 なぜ 、 韓 国 政 府 はCDMA方 式 を採 用 した の か 。

この 点 に 関 して 、 韓 国 情 報 通 信 大 学 院 教 授 で 、 当 時 デ ジ タル 方 式 の選 定 に 参 加 して い た リ ヒ ョ ク ジ ェ氏 は、 当 時 の 状 況 を次 の よ う に振 り返 る。 世 界 の ど こで も実 用 化 され て い な い た め、 開 発 失 敗 の リス ク に 対 す る憂 慮 と、

成 功 す れ ば韓 国 移 動 通 信 技 術 が 飛 躍 的 に発 展 す る とい う意 見 が 交 わ る 中で 、 1992年 韓 国政 府 がCDMAを 世 界 最 初 に採 択 す る とい う こ とを発 表 す る こ と に よ り、 デ ジ タ ル 方 式 採 択 に 関 す る論 議 に終 止 符 を打 ち、CDMA方 式 の 端 末 機 お よび シ ス テ ム 開 発 に 拍 車 をか け る こ とに な っ た28。っ ま り、 韓 国 政 府

サムスン電子 の移動 通信 端 末機 のグローバル事 業展 開に関する史 的考 察29

(22)

は移 動 通 信 技 術 の 飛 躍 的 な 発 展 を狙 い 、 政 府 自 らが リ ス ク を 背 負 っ た と推 測 す る こ とが で き る の で あ る 。

ま た 、 先 発 のGSMが 圧 倒 的 に 有 利 な 状 況 の 中 で 、GSMを 採 用 し て も 、 真 正 面 か ら 欧 米 の 先 発 メ ー カ ー一に は 適 わ な い とい う判 断 か ら、 韓 国 政 府 と通 信 事 業 社 、 そ し て 移 動 端 末 機 メ ー カ ー が 歩 調 を 合 わ せ 、CDMA方 式 と い う

隙 問 を 狙 っ た と い う 指 摘 も あ る。 そ れ は 、 移 動 端 末 機 だ け で は な く、 通 信 シ ス テ ム 開 発 な ど に お い て も技 術 を 蓄 積 し、 デ ジ タ ル 化 に 移 行 す る 他 国 が CDMA方 式 を 採 択 す れ ば 、 そ こ に 最 初 に 駆 け つ け 、CDMA方 式 の 普 及 に 合

わ せ て 、 世 界 的 に 市 場 シ ェ ア を 伸 ば し て い く とい う こ とで あ る29。

そ し て 、 も う1っ は 、 当 時CDMAの 採 用 を 発 表 し た り、 ま た は 実 際 に 商 用 化 に 向 け て 動 き 出 して い た 国 お よ び 地 域 が あ っ た と い う こ と も 事 実 で あ

る。 ア メ リ カ は す で にTDMA(TimeDivisionMultipleAccess)方 式 を採 用 し て い た が 、TIA(TelecommunicationlndustryAssociation)が1993

年 に 入 り、TDMAに 続 い てCDMAも 標 準 と し て 採 用 し、USWest,Bell Atlantic,PacificTelesisがCDMAを 新 し い 方 式 と し て 決 定 し て い た30。

し か も、 香 港 のHutchisonTelephoneが 、1995年5月29日 、 世 界 最 初 にCDMA方 式 の 商 用 サ ー ビ ス を 開 始 し た と い う報 告 も あ る。 同 社 は1994 年8月 に ア メ リ カ の モ ト'ロー ラ にCDMAの シ ス テ ム 構 築 を 発 注 し、 同 年12 月 か ら テ ス ト し て き た の で あ る31。 ち な み に 、 韓 国 の サ ム ス ン 電 子 の 社 史 や そ の 他 の 韓 国 資 料 に よ る と、 韓 国 が1996年4月1日 か ら世 界 最 初 にCDMA を 商 用 化 し た 国 と な っ て い る こ とか ら、 香 港 のHutchisonTelephoneに よ

28詳 細 は

、次 の サ イ トを 参 照 さ れ た い 。http:〃kr.blog.yahoo.com/sockokyu/1454507.htm1(2006 年9月 末 現 在)

29塚 本 潔 『韓 国 企 業 の も の づ く りの 衝 撃 一 ヒ ョ ン ダ イ

、 サ ム ス ン 、LG、SKテ レ コ ム の 現 場 か ら一 』 光 文 新 書 、2002年 、30‑31ペ ー ジ 、 お よ び 北 岡 俊 明 『世 界 最 強 企 業 サ ム ス ン 恐 る べ し!一 な ぜ 、

日本 企 業 は サ ム ス ン に 勝 て な い の か!?』 こ う書 房 、2005年 、31‑33ペ ー ジ 。 30情 報 通 信 政 策 研 究 院 「米 国 デ ジ タ ル 標 準 方 式

、TDMAと 平 行 し てCDMA技 術 も採 用 」 『情 報 通 信 政 策 』 第5巻20号 、1993年11月 、42‑43ペ ー ジ(韓 国 語)。

3A情 報 通 信 政 策 研 究 院 「HutchisonTelephone

,CDMACellularサ ー ビ ス 開 始 」 『情 報 通 信 政 策 』 第7巻23号 、1995年12月 、55‑56ペ ー ジ(韓 国 語)。

(23)

るCDMA商 用 化 は 旨 くい か な か っ た と思 わ れ る。 実 際 に香 港 のHutchison Telephoneは 、 後 にサ ム ス ン にCDMA移 動 端 末 機 供 給 を依 頼 す る。 そ の 背 景 に は ク アル コ ム社 の端 末 機 に問題 が あ り、 業 績 不 振 の 問題 が あ った か らで あ る32。

いず れ に し ろ、 韓 国 政 府 は、 当 時 無 名 で は あ るが 、 技 術 的 に可 能 性 の あ る CDMAに か け、 しか も0部 で は あ るが、 ア メ リカ を 中 心 にCDMAが 少 しず っ 普及 し始 め た こ とに大 き な期 待 を寄 せ て い た と考 え られ る。 実N1に 韓 国政 府 の 思 惑 は的 中 し、1997年 以 降 、世 界 的 にCDMA採 用 の動 きが 増 え始 め た 。

特 に北 米 で は、CellularCDMAお よ びPCS(個 人775帯 通 信 シ ス テ ム)が 着 実 に伸 び始 め、 大 都 市 を 中 心 に シ ス テ ム 構 築 が 進 行 して い た 。 カ ナ ダ も CDMAを 採 択 し、 シ ス テ ム構 築 を 急 い で い た 。 ア ジ ア太 平 洋 地 域 の 場 合 、 中 国 、 香 港 、 イ ン ド、 イ ン ドネ シ ア、 タイ 、 シ ンガ ポ ー ル 、 フ ィ リ ピ ン な ど がCDMA構 築 を検 討 して い た 。 中南 米 で は、 ア ル ゼ ンチ ン、 ブ ラ ジ ル 、 チ

リ、 ベ ネ ズ エ ラ、 ペ ル ー な どが 採 択 した。 ヨー ロ ッパ は相 対 的 にGSMの 強 勢 に押 さ え られ 、CDMAの 採 択 は ほ とん どな か っ た が 、 ドイ ツ とポ ー ラ ン

ドが 部 分 的 に導 入 を検 討 し、 「ロシ ア は準 備 中 で あ っ た。 中東 地 域 は イ ス ラエ ル 、 イ エ メ ンが 導 入 を決 定 し、 ア フ リカ で も一 部 の 地 域 で 導 入 を決 定 す る な

ど33、徐 々 に世 界 的 な 広 が りを見 せ 始 め て い た の で あ る。

3サ ム ス ン 電 子 の ⊂DMA端 末 機 生 産 の 参 入

上 記 の よ う に 、韓 国 政 府 が 国 を 挙 げ てCDMA方 式 を採 用 した こ と に よ り、

サ ム ス ン 電 子 もCDMA移 動 端 末 機 お よ び 通 信 シ ス テ ム の 開 発 に 本 格 的 に 参 入 す る こ と に な る。

サ ム ス ン 電 子 は 、 ま ずCDMAの 基 本 特 許 を 抑 え て い る ク ア ル コ ム 社 か ら 技 術 を 導 入 し 、 ま た 開 発 人 材 を ク ア ル コ ム 社 お よ び 韓 国 通 信 研 究 所 に 派 遣 し 32サ ムスン電子株式会社、前掲書、493ペ ージ。

33キ ム ジンギ ・キム ヨンギュ 「CDMA移 動通信市場の現況 とわが国の企業の海外進出」『情報 通信政策』第9巻6号 、通巻183号 、1997年 、1‑27ペ ージ(韓 国語)。

サムスン電子 の移 動通信 端 末機 のグローバル事 業展 開 に関する史 的考察31

(24)

て 、 本 格 的 なCDMA移 動 端 末 機 の 開 発 に取 り組 ん だ 。 そ して、1994年 テ ス ト通 話 を成 功 す る と、 移 動 端 末 機 の 開発 を完 了 し、 ア メ リカ で の 互 換1生テ ス トも無 事 に行 っ た 。 また韓 国 で も共 同開 発 企 業 と もシ ス テ ム の互 換 性 テ ス トに成 功 し、1995年8月 に世 界 最 初 にCDMAデ ジ タルCellular携 帯 電 話 機 の商 用 化 に成 功 す る こ とにな っ た の で あ る34。

商 用 化 の 成 功 を 受 け、1996年3月 か ら 本 格 的 な 量 産 体 制 に 入 り、

SCH‑100、SCH‑200を 次 々 と 開 発 ・販 売 し た。 ま た 、 サ ム ス ン 電 子 は、

CDMA方 式 の 移 動 端 末 機 だ けで は な く、 移 動 通 信 シ ス テ ム の 開 発 に も成 功 し、CDMA用 の 通 信 交 換 機 、 デ ー タ処 理 装 置 、基 地 局 装 置 な どCDMAと 関 連 す る全 て の装 備 も開 発 に成 功 す る85。

以 上 の よ うに、 韓 国 が 世 界 に先 駆 けてCDMAの 通 信 方 式 を商 用 化 した こ とに よ り、CDMA方 式 の商 用 化 に 関 す る不 安 と憂 慮 が 大 き く払 拭 され 、ま た、

一 方 に お い て は北 米 とア ジ ア、 南 米 な どを 中心 にCDMAの 市 場 が 徐 々 に広 が りを見 せ 始 め た の で あ る。

一 方、 ア ナ ロ グ方 式 で 韓 国 市 場 トップ の シ ェ ァ を サ ム ス ン に奪 わ れ た モ ト ロー ラ は、 ア ナ ロ グ か らデ ジ タル へ の転 換 に も大 きな 遅 れ を と り、 韓 国 市 場 の シ ェ ア 回 復 の機 会 を 完 全 に喪 失 して しま う こ とに な っ た。 特 に、 韓 国 で 1996年4月CDMA方 式 の デ ジ タ ル 移 動 通 信 サ ー ビ ス が 本 格 的 に 開 始 す る と、CDMA方 式 の モ デ ル に集 中 して 、 次 々 と新 モ デ ル を投 入 した サ ム ス ン 電 子 の攻 撃 的 で 、 か つ ス ピー デ ィな経 営 に対 して 、 モ トロ ー ラ は韓 国 市 場 で の 主 導 権 を完 全 に 消 失 す る こ とに な る36。そ して 、 現 在 、 韓 国 市 場 は サ ム ス ン電 子 とLG電 子 、 そ して パ ン テ ッ ク の 国 内3強 が 分 割 す る状 況 に な って い る。

34サ ム ス ン電 子 株 式 会 社、 前 掲 書 、375ペ ー ジ 。 35同 上 書、378ペ ー ジ 。

36モ トロ ー ラ は、 一 時 期 世 界 の2位 の 座 も サ ム ス ン 電 子 に 奪 わ れ る の で は な い か と い う憂 慮 が 多 か っ た が 、 現 在 は サ ム ス ン 電 子 と の 差 を さ ら に 広 げ 、 見 事 な 復 活 を 見 せ て い る 。 こ れ に 対 し て 、 サ ム ス ン 電 子 は 世 界 で の シ ェ ア 拡 大 に か な り苦 戦 し て お り、 今 後 の 戦 略 が 注 目 さ れ て い る 。

(25)

4グ ロ ー バ ル 市 場 へ の 拡 大 とCDMAト ッ プ企 業 へ の 躍 進

サ ム ス ン電 子 がCDMA方 式 で世 界 の フ ーロ ンテ ィ ア企 業 と して 商 用 化 に成 功 す る と、CellularCDMA移 動 端 末 機 だ け で は な く、CDMA方 式 の個 人 携 帯 通 信 シ ス テ ム(PCS)の 端 末 機 の 開 発 に も成 功 し、 同分 野 に お け る技 術 蓄 積 や 製 品 開 発 を猛 ピ ッチ で加 速 す る。

1997年9月 に は、CDMA方 式 のPCSと し て 最 初 の モ デ ル で あ る SCH‑1100を 投 入 し、1997年10月 に は韓 国 最 初 の 音 声 認 識機 能 を搭 載 した SPH‑2000を 投 入 した 。 そ して 、 同 年12月 に は最 軽 量 のSPH‑3000、1998 年 に は、 フ リ ッ プ が 上 に 開 く独 創 的 な モ デ ル で あ るSPH‑5000を 開 発 ・投 入 す るな ど、0度 軌 道 に乗 り始 め た 市 場 で の 優 位 性 を更 に強 化 す る た め に 、

デザ イ ン と機 能 性 に重 点 をお い た新 モ デ ル次 々 と投 入 した37。

ま た ス ピー デ ィ な 新 製 品 開 発 とマ ー ケ テ ィ ン グ 強 化 は、CellularCDMA 端 末 機 に お い て も同 様 で 、 地 域 番 号 自動 ダ イ ヤ ル機 能 を採 用 したSCH‑250

(1997年4月)、 当 時 世 界 最 軽 量 と言 わ れ た142gのSCH‑300(1997年7

月)、 世 界 最 初 に音 声 ダ イ ヤ ル 機 能 を採 用 したSCH‑350(1997年8月)、 雑 音 除 去 機 能 のEVRCチ ッ プ を採 用 したSCH‑400(1998年1月)、 世 界 最 初 の1008帯 電 話 機 で あ るSCH‑600(1998年3月)、90gで ス トッ プ ウ ォ ッ チ 、 計 算 機 、 オ ン タ ッチ マ ナ ー モ ー ド機 能 搭 載 のSCH‑750(1998年7月)、

さ ら に、 ワ イ ド ・グ ラ フ ィ ックLCDを 採 用 し、 電 子 手 帳 や デ ー タ入 力 お よ び 管 理 機 能 を搭 載 した フ ォ ル ダ ・タ イ プ のSCH‑800(1998年10月)な ど、

持 続 的 に斬 新 な デ ザ イ ン と進 化 した機 能 の新 モ デ ル を次 々 と投 入 した38。

一 方、 サ ム ス ン電 子 は、CDMA分 野 で 韓 国 内 の基 盤 を確 実 に築 き、 製 品 開 発 お よび 技 術 に お い て ノ ウハ ウ を 蓄 積 す る と、 そ れ を て こ入 れ し、 海 外 市 場 に も本 格 的 に進 出 す る。 前 述 し た よ うに 、 韓 国 以 外 の 諸 国 で も徐 々 に CDMAを 採 用 す る動 きが 増 え る に つ れ て 、 そ こで の 新 規 需 要 を 吸 収 す る形

37同 上 書

、491‑492ペ ー ジ 。 38同 上 書

、492‑493ペ ー ジ 。

サムスン電子 の移動 通信 端 末機 のグローバル事 業展 開 に関す る史 的考察33

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