近 世 社 寺 建 築 研 究 集
会建 造 物 研 究 室
近 世 社 寺 建 築 研 究 集 会 は , 昭 和 六 十 二 年 十 一 月 二 十 六 ・ 二 十 七 日 の 両 日 , 奈 良 国 立 文 化 財 研 究 所 講 堂 に 於 い て 開 催 さ れ た 。 建 築 史 研 究 者 ・ 文 化 財 修 理 技 術 者 等 約 130名 が 参 加 し た 。
文 化 庁 の 国 庫 補 助 事 業 に よ る 各 県 単 位 の 近 世 社 寺 建 築 緊 急 調 査 は , 昭 和 五 十 二 年 か ら 開 始 さ れ , 昭 和 六 十 四 年 度 に は 全 国 を 終 了 す る と い う 時 期 に あ っ て , 調 査 の 成 果 を 整 理 し , 近 世 社 寺 建 築 の 平 面 ・ 構 造 ・ 意 匠 ・ 技 法 等 の 特 質 を 明 か に す る と と も に , そ れ を 支 え た 生 産 体 制 ・ 社 会 構 造 等 と の 係 わ り の 中 で そ れ を 評 価 す る と い っ た , 様 々 な 側 面 で の 研 究 が 急 が れ る 状 況 に あ る 。 ま た そ れ ら を 文 化 財 の 指 定 や 修 理 等 の 文 化 財 保 護 の 指 針 と な す こ と も 必 要 で あ る 。 こ う し た 諸 問 題 に つ い て 情 報 を 交 換 し , 解 明 を 加 え て ゆ く べ く , こ の 研 究 集 会 を 計 画 し た 。 三 ヶ 年 を 予 定 す る う ち の 第 一 回 目 と な る 本 年 は , 近 世 社 寺 建 築 の 主 と し て 本 殿 ・ 仏 堂 の 平 面 的 な 特 質 を 全 国
的な視野から把握しておくことを目標とした。
第 一 日 は , 古 代 以 来 の 建 築 の 流 れ の 中 で 近 世 社 寺 建 築 の 特 質 を 整 理 し , 今 後 の 研 究 の 課 題 を 提 示 し た 工 藤 圭 章 氏 の 講 演 「 近 世 社 寺 建 築 研 究 の 問 題 と 今 後 の 展 望 」 , 近 世 社 寺 建 築 緊 急 調 査 担 当 者 へ の ア ン ケ ー ト を も と に 調 査 の 成 果 と 問 題 点 を 総 括 し た 細 見 啓 三 の 報 告 「 近 世 社 寺 建 築 調 査 の 総 括 」 , 寺 院 建 築 に つ い て , 地 域 的 な 特 性 を 整 理 し た 宮 本 長 二 郎 の 報 告 「 近 世 社 寺 建 築 の 地 域 的 特 性 ( 寺 院 ) 」 , が 行 わ れ た 。 第 二 日 は , 神 社 本 殿 の 形 式 に つ い て 地 域 的 特 性 を 明 か に し , 併 せ て 細 部 絵 様 の 編 年 の 試 み を 紹 介 し た 上 野 邦 一 の 報 告 「 近 世 社 寺 建 築 の 地 域 的 特 性 ( 神 社 ) 」 , 南 都 の 中 世 後 期 か ら 近 世 初 頭 に か け て の 社 寺 の 存 在 形 態 を 制 度 的 ・ 経 済 的 側 面 を 中 心 に 解 説 し た 永 島 福 太 郎 氏 の 講 演 「 近 ・ 世 社 寺 の 社 会 経 済 基 盤 」 , が あ り , 以 上 の 報 告 等 を ふ ま え つ つ , 宗 派
毎の建築の特質について藤井恵介氏(天台・真言宗)・永井規男氏(禅宗).楼井敏雄氏(浄 土系).佐藤正彦氏(神社)・山岸常人(浄土真宗)から発表があり,これに基き,西和夫氏 の司会のもとに,総合的な討論が行なわれた。なお宮本と上野の報告は,各県の近世社寺建築 緊急調査報告書からすべての報告例をカード化して整理・分類した(当研究所建築関係研究員 全員の分担作業による)データに基づくものである。討論では,年代判定方法や調査内容(特に架構)等の調査方法から始まって,分類のための 用語.細部部材名等の用語の問題,平面の改造や内部の使用方法,更には仏堂を空間構成の面 から分析すべきとの提言を含め,今後の新たな研究方法や課題の設定といった広汎な問題まで が議論された。特に従来の調査では充分でなかった架構や構造についての分析が,平面だけを 対比する従前の研究に新たな指針を与え,かつ今後の修理事業等とも直接係わってくる問題と なる。なお,十一月二十八日には,蓮長寺・五劫院.三室戸寺.万福寺の見学会を行い 20名 余りの参加をえて,実際の建物を前にしての議論が行われた。(山岸常人)
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