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九州大学学術情報リポジトリ

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

低浸透率砂岩中の超臨界CO2透過・貯留メカニズムに 関する研究

本田, 博之

https://doi.org/10.15017/1931888

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

I

低浸透率砂岩中の超臨界 CO 2

透過・貯留メカニズムに関する研究

2018年 1 月

九州大学大学院 工学府 建設システム工学専攻

本田 博之

(3)

II

論文調査(甲)

論文提出者 本田 博之

論文題名 低浸透率砂岩中の超臨界 CO

2

透過・貯留 メカニズムに関する研究

Research on the Mechanism of Supercritical CO2

Penetration and Storage in Low-Permeability Sandstone

論文調査委員 主査 九州大学 教授 三谷 泰浩

副査 九州大学 教授 安福 規之

副査 九州大学 教授 島田 英樹

(4)

I

目次

第1章 序 論 ... 1

1.1. はじめに ... 1

1.2. 地球温暖化とCO2地中貯留 ... 1

1.2.1 地球温暖化とCO2排出 ... 1

1.2.2 CO2地中貯留 ... 2

1.2.3 世界の現状 ... 5

1.2.4 日本の現状 ... 8

1.3. CO2地中貯留実施時の貯留層内の現象 ... 15

1.3.1 CO2の性状 ... 15

1.3.2 CO2の貯留メカニズム ... 17

1.3.3 貯留層内のCO2流動パターン ... 18

1.4. 貯留対象としての低浸透率砂岩の提案 ... 22

1.5. CO2流動に関する既往の研究 ... 23

1.5.1 相対浸透率 ... 23

1.5.2 物理探査技術 ... 24

1.5.3 X線CT ... 27

1.6. 課題の整理と研究の目的 ... 28

1.7. 本論文の構成... 29

1.8. まとめ ... 31

参考文献 ... 32

第2章 CO2透過・貯留実験システムの構築 ... 36

2.1. はじめに ... 36

2.2. 実験システムの開発コンセプトと構成 ... 36

2.2.1 開発コンセプト ... 36

2.2.2 実験システムの構成 ... 36

2.3. CO2流動モニタリングシステムの導入 ... 43

2.3.1 弾性波速度測定システム ... 43

2.3.2 電気比抵抗測定システム ... 45

2.4. 岩石試料と試験体作成 ... 48

2.4.1 岩石試料 ... 48

2.4.2 コアリング ... 49

2.4.3 側面流の抑止およびCO2漏洩の対策 ... 49

2.4.4 試験体のセットアップ ... 50

(5)

II

2.4.5 試験体の作成手順 ... 52

2.5. 実験手順 ... 56

2.5.1 透水試験の手順 ... 56

2.5.2 CO2透過・貯留実験の手順 ... 57

2.6. まとめ ... 58

参考文献 ... 59

第3章 CO2透過・貯留特性の把握 ... 60

3.1. はじめに ... 60

3.2. CO2透過・貯留実験 ... 60

3.2.1 温度・圧力条件 ... 60

3.2.2 実験結果:透水試験 ... 61

3.2.3 実験結果:CO2透過・貯留実験 ... 62

3.2.4 CO2飽和度の算出 ... 64

3.3. TOUGH2の概要 ... 65

3.4. 解析手順と解析モデル ... 72

3.4.1 解析モデルと条件 ... 72

3.4.2 解析手順 ... 72

3.5. 感度解析 ... 74

3.5.1 差圧の変化 ... 74

3.5.2 CO2飽和度の変化 ... 75

3.6. 相対浸透率の同定 ... 76

3.7. まとめ ... 77

参考文献 ... 77

第4章 CO2透過・貯留メカニズムの解明 ... 79

4.1. はじめに ... 79

4.2. 実験条件 ... 79

4.3. 実験結果 ... 80

4.3.1 透水試験と透水係数 ... 80

4.3.2 注入流量増加実験(実験A) ... 82

4.3.3 同一流量での繰り返し注入実験(実験B) ... 90

4.4. 高浸透率砂岩との比較 ... 97

4.4.1 岩石試料の比較 ... 97

4.4.2 実験条件 ... 99

4.4.3 実験結果の比較と考察 ... 99

(6)

III

4.5. まとめ ... 102

参考文献 ... 104

第5章 CO2流路予測シミュレーション ... 105

5.1. はじめに ... 105

5.2. インベージョンパーコレーションの概要 ... 105

5.3. 空隙のモデル化 ... 106

5.4. 解析モデルとシミュレーション手順 ... 107

5.4.1 TOUGH2によるシミュレーション ... 107

5.4.2 インベージョンパーコレーションによるシミュレーション ... 108

5.5. シミュレーション結果と考察 ... 109

5.6. まとめ ... 113

参考文献 ... 113

第6章 結 論 ... 114

謝 辞 ... 116

(7)

1 第1章 序 論

1.1. はじめに

18 世紀後半の産業革命以降,人類は大量の化石燃料を使用するようになり,その燃 焼により膨大な量の二酸化炭素(CO2)を排出してきた.また,化石燃料の燃焼に限ら ず,産業の発展とともに,CO2排出量は上昇を続けた.近年は,気候変動に関する政府 間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCCと略記)により,世界中 の研究者が膨大なデータを解析し,提言を行っている.本章では,地球温暖化の現状や その要因,また,解決策としてのCO2地中貯留について概説し,国内外のCO2地中貯留 プロジェクトについて整理する.さらに,CO2地中貯留時のCO2の性状や貯留メカニズ ム,流動パターンについてまとめるとともに,低浸透率砂岩へのCO2地中貯留を提案し ている.また,CO2注入に関する室内実験に関して,技術別に研究例をレビューし,解 決すべき問題点を明確にしたのちに,本論文の目的・論文構成を示す.

1.2. 地球温暖化とCO2地中貯留 1.2.1 地球温暖化とCO2排出

2017年10月世界気象機関(World Meteorological Organization: WMO)は,地球温 暖化の主因とされる二酸化炭素(CO2)の2016年の世界平均濃度(403.3 ppm)が1984 年の観測以来,過去最高の数値を更新したと発表した1).さらに,2015年に比べ,CO2

濃度の増加幅は3.3 ppmと増加率においても過去最大であり,「早急に,パリ協定での 合意目標を超える抜本的なCO2の排出削減が必要になる」と指摘した 1).パリ協定は,

地 球 温暖 化対 策に 関する 国 際的 な会 議で ある国 連 気候 変動 枠組 条約締 約 国会 議

(Conference of Parties: COPと略記)の第21回会議(COP21,2015年12月)にお いて採択された 2).その内容は,「地球の平均気温上昇を産業革命前に比べ,2 ℃未満 に抑えることを目標に,1.5 ℃に抑える努力を追求する」としている.これまでも地球 温暖化対策が実施されているにも関わらず,温室効果ガス(Greenhouse gas: GHGと 略記)の排出量は,年々増加している.IPCC第5次評価報告書では,約1,200ものシ ナリオが集計されており,長期目標として今世紀後半にGHGの排出を実質ゼロにする ために,大気中のCO2濃度を2100年までに430から530 ppm程度に抑える必要があ るとしている3)(図1-2-1).特に,化石燃料の燃焼やセメントの製造,さらに油ガス田 でのフレア燃焼由来の累計CO2排出量は,1970年までで4200±350億トンであるのに 対し,2010年には,1.3兆±1,100トンであることも報告されている3).この化石燃料 由来の CO2 を削減することが,地球温暖化緩和策において最も効果的な方策であると いえる.

(8)

2 1.2.2 CO2地中貯留

IPCC 第5次評価報告書 3)によると,2004 年度における人為起源の GHG のなかで

CO2が70%以上を占めており,そのなかの56.6%が化石燃料由来であるとされている.

そのため,地球温暖化の緩和には,化石燃料起源のCO2排出量を抑えることが最も有効 であるといえる.現在,省エネルギーの推進やCO2排出量の少ない太陽光や風力などの 再生可能エネルギーや原子力などの開発・導入が世界的に進められているが,残されて いる課題は多く,現在の経済活動を維持するには化石燃料に頼らざるを得えない状況で ある.また,CO2フリーへのエネルギー転換には長い時間がかかることが予想され,当 分の間,化石燃料の使用は続くと考えられる.このような状況のなか,即効性のある地 球温暖化緩和策の一つとして,工場や発電所から発生するCO2を回収し,地下に圧入・

貯留することで,大気中から CO2を物理的に隔離する CO2 回収・貯留技術(Carbon

dioxide Capture and Storage: CCSと略記)が注目されている.国際エネルギー機関

(International Energy Agency: IEAと略記)の「エネルギー技術展望2015」では,

2050年における排出量削減量の 13%はCCS により達成すると評価されている 5).さ らに,CO2地中貯留のポテンシャルに関しても,全世界で約2兆トンと,世界のCO2排 出量の63年分相当する 6)など将来性があり.現実的な技術であるといえる.以下,図

1-2-26)に示すように,CO2地中貯留の形態を6つに分類する.

(1) 枯渇油・ガス層貯留(図1-2-2中の1)

枯渇油・ガス層貯留は,CO2の貯留に枯渇した油田や天然ガス田を用いる方法である.

油田や天然ガス田は,地層中の微細な空隙に数百万年・数千万年の長期間にわたり揮発 性成分を貯蔵していた実績があり,CO2を安全かつ長期的に貯留することが可能である.

ただし,枯渇油田・ガス田へのCO2隔離は,既存の抗井等からのガスリークに注意する 必要がある.

図1-2-1 シナリオ別の世界全体のGHG排出量4)

(9)

3

(2) 石油・ガス増進回収でのCO2使用(EOR,EGR,図1-2-2中の2)

油田開発において油層から原油を採取する方法は,1次回収,2次回収,3次回収が ある.1次回収とは,自然の排油エネルギーを利用した方法であり,自噴採油,人工採 油(ポンプ採油)がある.2次回収とは,油層に人工的に排油エネルギーを供給して採 油する方法であり,油層に水を注入することで層圧力の減退を補い,原油を置換する方 法が一般的に実施される.3次回収は,毛細管圧力の作用によって孔隙に補捉された原 油を回収する方法である.3次回収は,油との接触で混和状態(ミシブル)を作り出す 薬剤や炭化水素ガス,CO2を圧入する方法と油層内に熱エネルギーを与え,原油の流動 性を高める方法があり,熱攻法,ケミカル攻法,ガス攻法に分類される.これらの3次 回収方法は,石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery: EORと略記)と呼ばれること が多い.また,EOR同様,採取量が減衰してきたガス田において,水やCO2を圧入す ることにより,CO2を地中に貯留しつつ,天然ガスの増進回収を行う方法をガス増進回 収法(Enhanced Gas Recovery: EGRと略記)という.EORやEGRはCO2を貯留す ることで,原油やガスを回収できることから,お金を産むことができるCO2地中貯留と いえる.

(3) 深部非使用塩水飽和貯留岩(図1-2-2中の3)

地下深部の帯水層は,通常,地層水(化石海水)に満たされている.化石海水とは,

母岩堆積当時の海水が岩に閉じ込められたものであり,海水以上の鹹水で場合をある.

このため,飲用や農業用水には使用できない(利用価値がない)ため,塩水を含む帯水 層をCO2地中貯留の対象とすることができる.

(4) 深部非採掘石炭層(図1-2-2中の4)

地下深部の炭層は採掘コストが高いことに加え,盤圧の高さから従来の坑内採掘法で は採掘作業も困難になるため,採掘されずに残されていることが多い.特に,日本では,

高度経済成長期以前から全国で炭量調査が実施されており,堆積盆地深部に多量の石炭 層が潜んでいることが確認されている.日本では,1,200 mより深い炭層は深部非可採 炭層に分類され,埋蔵量の統計にも加えられていないことから,更なる探鉱が必要であ る.小出ら7)は,旧炭鉱地域とその延長部の未開発区域に残る石炭の CO2固定可能量は 約 10 億トンと評価しており,さらに,深部非可採炭層のCO2固定可能量は,3,000 m 以浅の比較的浅部の炭層は,北海道だけで 35 億トン以上であり,未調査の本州・九州 の深部非可採炭層も加えれば 100 億トン以上のポテンシャルがあるとしている.これ らの深部非可採炭層でのCO2固定能力は今後も増える可能性がある.

(10)

4

(5) 炭層メタン増進回収におけるCO2使用(図1-2-2中の5)

石炭は,炭化度が進むにつれて,泥炭,褐炭,亜瀝青炭,瀝青炭,および無煙炭と変 化するが,特に,原料炭,燃料炭として採掘される亜瀝青炭,瀝青炭には,メタン(以 下CH4)が多く含まれるため,回収することでエネルギー資源として有効利用される.

石炭に対するガスの吸着力は,CO2がCH4よりも大きい.そのため,CH4が吸着してい る石炭にCO2を接触させると,吸着力の相違によるCO2とCH4の置換現象が生じ,CO2

が吸着するとともに,CH4が脱着する.この特性を利用し,石炭層にCO2を圧入し,脱 着されるCH4を回収する炭層メタン増進回収法(Enhanced Coalbed Methane: ECBM)

によって,経済性に優れたCO2隔離技術となる.

(6) その他の提案オプション(玄武岩,沖母頁岩,空洞,図 1-2-2中の6)

玄武岩は世界に広く分布していることに加え,玄武岩の珪酸塩がCO2と反応して,炭 酸塩鉱物を形成することからCO2の固定化に寄与する.しかし,一般に低孔隙率,低浸 透率であり,CO2の貯留には不向きとする見方がある.また,有機物が豊富な頁岩は,

炭層への CO2吸着と似たようなトラップメカニズムを示し,固定化の期待はあるもの の,浸透率の低さから,大規模なCO2の注入には.不向きである.最後に,岩塩空洞へ の貯留だが,溶解採掘により生成された岩塩空洞へのCO2貯留は,西カナダやメキシコ 湾の岩塩や岩塩ドームに液化天然ガスや石油製品を貯留するため開発された技術を使 用することで達成される.岩塩空洞におけるCO2貯留は,単位容積当たりの高い貯留容 量,高効率及び高注入流量など利点がある一方で,システム故障時の CO2 放出の可能 性,各空洞のほとんどが比較的少容量であること,溶解空洞から排水した塩水処分の環 境問題などの課題もある.岩塩空洞は,CO2の発生源と貯留場所の間のCO2回収や流通 システムにおける一時貯留場として使うこともできる.

図1-2-2 CO2を大深度地層に貯留するオプション6)

(11)

5 1.2.3 世界の現状

(1)世界のCO2貯留ポテンシャル

IPCCの2005年報告書に,世界のCO2地中貯留のポテンシャルが示されている(表

1-2-1).油田やガス田だけの貯留容量は多く見積もると 900 GtCO2であるが,深部塩

水帯水層を貯留候補に入れることで,そのポテンシャルは1~2オーダー大きくなると 推定されている. IEAのEnergy technology prospective 2012によると,産業革命以 前から世界平均気温の上昇を2 ℃以内に抑制するシナリオ(2DSシナリオ)を達成す

るために2015年から2030年までに123 GtCO2を貯留する必要があるとしている8)

この目標は,世界の貯留ポテンシャルを有効に利用することで十分達成される.また,

油田・ガス田のみならず,広範囲に分布し,十分な貯留容量を有する深部塩水帯水層へ のCCSプロジェクトが求められる.

表1-2-1 貯留オプション毎の貯留容量(経済性は不問)6)

貯留層タイプ 推定貯留可能容量(GtCO2)

下限 上限

油田・ガス田 675* 900*

非採掘石炭層(ECBM) 3-10 200 深部塩水帯水層 1000 不確実だが104

*油田やガス田での溶解を考慮すると 25%増加することもありうる

(2)世界のCCSプロジェクト

CCSの大規模プロジェクトは,石炭火力由来が年間80万トン以上,その他の排出源 由来は年間40 万トン以上の規模のプロジェクトを指す.2017年 1 月時点で,世界の 運転中の大規模プロジェクトは16件あり,建設中が5件,精査・評価・構想中が17件 となっている.地域別では,北米が17件と突出している.欧州では5件,中東で2件,

南米1件,アジアが10 件となっている9).主なCCSプロジェクトの開発状況を図1- 2-3 に示す.また,操業終了から現在運転中のプロジェクトを含め,主要な CCS プロ ジェクトについて,貯留形態や貯留深さ,実施国や主体,CO2圧入流量,累計貯留量等 をまとめたものを表1-2-2に示す.

海底下での世界初のCCS である Sleipner Project(ノルウェー)やオーストラリア初

の大規模CCSであるGorgon Projectは,地下深部塩水帯水層が対象である.その一方

で,世界最大の圧入量であるCentury Plant Project(アメリカ)や世界初のCO2削減 を目的に実施したWeyburn Project(カナダ)はEORであり,油ガス田を貯留対象と している.海外の大規模プロジェクトの特徴として,浸透率が高い貯留層を対象として いることが挙げられる.あまり公表はされていないが,貯留層の浸透率はSleipnerや,

Questは1000mD程度,Snøhvitが500mD程度となっている.

(12)

6

図1-2-3主なCCSプロジェクトの開発状況9)

(13)

7 地名 貯留層名実施国貯留形態貯留深さ実施主体開始年CO2圧入流量 (トン/)

累計貯留量 ~年 Sleipner CO2 Storage ProjectSleipner UtsiraNorway深部塩水層海底下800 1,000mStatoil19961011,650 (2015) Snøhvit CO2 Storage ProjectTubasenNorway深部塩水層海底下2,600mStatoil200870400 Gorgon Carbon Dioxide Injection ProjectGorgonAustralia深部塩水層地下2,500mChevron20173001億ト以上 今後30年) Weyburn-Midale CO2 Monitoring and StorageWeyburnCanadaEOR地下1,500mPetroleum Technology Research Centre200024161 (2010) In Salah GasIn SalahガスAlgeriaガス貯留 石炭紀帯水層地下1,800m国営炭化水素公社 (Sonatrach),BPStatoil2004100800 (2011) サン海盆ルト油田CCS Presalt layerBrazilEOR海底下 2,000~3,000mPetrobras201370300 万ト 2015年) Uthmaniyah CO2-EOR Demonstration ProjectGhawar 油田 Kingdom of Saudi ArabiaEOR地下1,800- 2,100mSaudi Aramco201580160 QuestプロジェクトThe Basal Cambrian SandsCanada深部塩水層地下2,300mShell Canada2015100200 苫小牧CCS実証萌別層,滝ノ上層Japan深部塩水層海底下1,100 1,200 m2,400 ~3,000 m日本CCS調査株式会社20161090 Century PlantOil field in Permian BasinAmericaEOROccidental Petroleum2010840

表1-2-2世界の主要なCCSプロジェクトのまとめ

(14)

8 1.2.4 日本の現状

(1) GHG排出量

日本のGHG総排出量を図 1-2-4に示す 10).排出量の CO2換算量は, 2015年度は

13 億2,100 万トンであった.ここ10 年のデータのなかで,2011 年度におけるGHG

総排出量は13億800万トンであり,以後2,3年は増加を示している.この時期は,

東日本大震災における原子力発電所の事故を受けて各地の原子力発電所の稼働が停止 し,火力発電による発電量が増加したことが挙げられる.2014,2015年度においては,

排出量の減少が確認されているものの,震災前の水準には達していない.このGHG排 出の大半を占めているものが,CO2であるため,温暖化対策はCO2排出量削減により達 成されるといえる.また,電源種別の発電電力量(図 1-2-5)11)から,化石燃料由来の 発電が多いことがわかる.特に,GHG排出量の約4割を電力が占めるという状況下で は,火力発電への CO2削減の対策が必要である.さらに,日本は COP21 において,

2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減するとしている.2015年度 の排出量は約6.0%減であり,さらに20%の削減を求められる.産業構造は十数年の間 に改革することができないことを考えると,早期・大規模にCO2を削減できる施策とし ては,発電施設や工場に付随させるCCSによるCO2排出量削減が有効であるといえる.

図1-2-4 日本における温室効果ガス排出量の推移10

(15)

9

図1-2-5 電源種別の発電電力量と二酸化炭素排出量11)

(2) 日本のCO2貯留ポテンシャル

全国貯留層賦存量調査12)によると,帯水層への貯留は,カテゴリーA「背斜構造への 貯留」,カテゴリーB「層位トラップなどを有する地質構造への貯留」に分類される(表

1-2-3).各カテゴリーは国による基礎調査(基礎試錐および基礎物理探査)等で取得さ

れた地質データの質・量によって評価精度が異なることを考慮し,さらにカテゴリーA を3つの準カテゴリー(A1,A2,A3)に,カテゴリーBを2つの準カテゴリー(B1,

B2)に細分化されている.A1には,3,492百万トン,A2には,5,202百万トン,A3に

は,21,393百万トンのCO2が貯留可能であり,B1には,88,477 百万トン,B2には,

27,532百万トンが貯留可能である.日本全体では,合計146,096百万トン(1,461億ト

ン)の地中貯留可能量が算出されている.また,貯留可能量の8割近くがカテゴリーB

「層位トラップなどを有する地質構造への貯留」である.

全国の貯留可能な帯水層分布と調査状況(図1-2-6)について以下にまとめる.

石狩湾について地層層序は,上位よりF層(第四系),E層(当別層),D層(望来層),C 層(厚田~盤の沢層),B層(奔須部都層),A層(グリーンタフ)となっている.貯留の対象 として期待されているのは C 層であり,C 層は火山礫凝灰岩,凝灰角礫岩,火山角礫 岩,凝灰岩および砂岩といった多様な岩相から構成され,孔隙率は10~30%,浸透率は

0.1~100 mDである.C層への貯留可能量は,1,656百万トンである.

次に,秋田沖について,地質は基盤岩類と緑色凝灰岩特有の新第三系およびこれを被 覆する第四系からなり,上位より第四紀の鮪川層,笹岡層,新第三紀中新世~鮮新世の 天徳寺層,船川層,新第三紀中新世の女川層,西黒沢層および基盤岩(グリーンタフ)

に区分される.下部天徳寺層は,シルト~泥岩主体とするが,下部天徳寺の異相として

(16)

10

扱われる桂根相は,上部漸深海~中部漸深海で堆積したタービダイトを主体としており,

砂岩や凝灰質砂岩の優勢な互層となっている.主として陸域から秋田沖海域にかけて広 く分布し,一般に,厚く分布する地域では粗粒の堆積物が優勢になり,貯留層として期 待できる.孔隙率は5~25%,浸透率は0.1~20 mDであり,貯留可能量は,1,933 百万 トンである.

北部九州小倉海域について,泥岩が卓越する深度775~820.4 m区間(上到津部層)が 遮蔽層に,その下位の泥岩・砂岩・礫岩からなる深度820.4~1,071.13 m区間(上到津 部層-天籟寺部層)が貯留層として期待できる.貯留層区間は,全体的には泥岩相が卓越 し,その中に層厚が数 m~数 10 m の砂岩・礫岩の粗粒岩が発達する様相を呈してい る.粗粒岩相の最大層厚は約25 m,上到津部層下部に発達する砂質礫岩である.コア 分析孔隙率は2.7%~17.8%,平均 9.2%,浸透率は,0.1 m以下~最大135 mDとなっ ている.貯留層深度区間800~2,500 m,有効貯留層層厚100 m,孔隙率16.1%で貯留 可能量250百万トンと試算されている.

北部九州松浦海域の貯留層としては,佐世保層群下部と相ノ浦層群下部が候補として 挙げられている.両者ともに炭層を挟在する砂岩泥岩互層からなり,砂岩割合は70%以 上と計算されている.平均孔隙率は,佐世保層群下部が 15.1%,相ノ浦層群下部が

6.52%とされている.貯留可能領域に対して佐世保層群で砂岩率75 %,貯留可能量193

百万トン,相ノ浦層群で砂岩率72%,貯留可能量117百万トンと示されている.

天草沖は,古第三系を不整合で覆う鮮新統を貯留岩と想定した非構造性の貯留可能域 である.貯留対象層の孔隙率は27%,断層から5 km程度離れた範囲を貯留可能域と仮 定した場合,貯留可能量は1,050百万トンとなる.

CO2地中貯留の有効性評価においては,貯留可能量に加えて排出源と貯留サイトとの マッチングが重要である.これは,地中貯留のコスト分析において,輸送に係るコスト が相対的に大きな割合を占めるためである.排出源近傍において CO2 地中貯留のポテ ンシャルを示すことが重要であるといえる.

(17)

11

表1-2-3 地下深部塩水層へのCO2貯留のカテゴリー分類12)

地質データ カテゴリーA

(背斜構造への貯留)

カテゴリーB

(層位トラップなどを有 する地質構造への貯留)

既存油ガス田 坑井・震探データ豊富 A1 B1

(水溶性ガス田)

基礎試錐 坑井・震探データあり A2 基礎物探 震探データあり

坑井なし A3 B2(16海域)

主なトラップメカニズム

構造および層位トラップ 溶解トラップ 残留ガストラップ

鉱物トラップ

貯留概念図の例

(カテゴリー分類)

図1-2-6 貯留可能な帯水層分布と調査状況12)

(18)

12

(3) 国内のCCSプロジェクト

長岡実証実験13)

長岡におけるCCS実証実験は,国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発 機構(NEDO: New Energy and Industrial Technology Development Organization)

の委託により,公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(Research Institute of Innovative Technology for the Earth: RITEと略記)が2000年から2004年に実施し た CO2 圧入実証実験であり,新潟県長岡市にある帝国石油株式会社の岩野原基地にお

ける地下1,100 m の帯水層にCO2の圧入が実施された.この実証試験は,CO2貯留を

目的とした陸域での帯水層貯留としては世界初であることに加え,日本の地層は複雑な 構造を有するため海外からも注目されている.実証試験が実施された地域の深度約

4,000 m~5,000 m以深には,天然ガス産出層となっている第三紀中新世の基盤(緑色

凝灰岩類,寺泊層)が存在し,その上部に,下から西山層,灰爪層,魚沼層が分布して いる.これらの層は顕著な褶曲構造をなし,天然ガス鉱床として重要なトラップを構成 している.圧入対象の帯水層(貯留層)としては灰爪層の砂岩卓越部を,キャップロッ ク層としては貯留層上部にあたる同じく灰爪層の泥岩卓越部を選定している.貯留層の 厚層は約60 mで,キャップロックの厚層は貯留層の約2倍の約140 mあり,十分なシ ール性が期待され,また,断層などの明瞭な構造不連続面は認められていない.本実証 試験は,①二酸化炭素の地中挙動に関する理解,②既存技術の二酸化炭素地中貯蔵への 適用性検証の2つを目的としている.

圧入井の周囲3ヶ所に観測井を掘削し,弾性波トモグラフィ(図1-2-7),坑井内計測

(比抵抗検層,中性子検層,ガンマ線検層,音波検層)などの計測が実施され,挙動予 測シミュレーションと結果の比較が行われている.圧入試験は 2003 年 7 月 7 日から 2005年1月11日まで実施され,累計で10,405トンのCO2が圧入された.CO2の挙動 を観測するためのモニタリングは現在も継続して実施されている.Sleipner プロジェ クトの貯留層のように,海外の地下深部塩水層には,厚さが数 100 m で浸透率 1000 mD を超えるものが認められるのに対して,我が国の地下深部塩水層は厚層が 100 m 未満で最大浸透率が数10 mD程度のものが一般的である.長岡の試験地での事前調査 では,貯留層となる地下深部塩水層は約60 m,浸透率数10 mDと予想され,我が国の 地下深部塩水層を代表する性状のものと考えられた.その後の調査により,貯留層の浸 透率はさらに低いことが判明している.

この長岡実証実験が世界で注目されている理由の一つに,2007 年の新潟県中越沖地 震を経験していることが挙げられる.CO2圧入後のモニタリングにより,地震によるCO2

の漏洩が確認されなかったことから,CCS が安全であることを示す貴重なデータとし て参考にされている.

(19)

13

図1-2-7 長岡CCSプロジェクトの成果

(圧入量3,200トンと10,400トンの地盤速度の変化率)13

苫小牧大規模実証実験14),15),16),17)

苫小牧における実証実験は,日本CCS株式会社が経済産業省の委託により実施して いる.本プロジェクトは長岡実証実験により得られた成果を踏まえ,国内におけるCCS 事業をより実用化に近づけることを目的としており,CCS技術の実用化を2020年度ま でに検証することを目標にプロジェクトが進められている.

実証実験地点は,北海道苫小牧港沿岸区域であり,供給源となる製油所の水素製造装 置から発生するCO2を化学吸収法(アミン法)によって分離・回収し,海底下の貯留層へ と圧入・貯留するという CO2の回収から貯留並びにモニタリングまでのトータルシス テムの実証を担うものとなっている.

CO2分離・回収プロセスに関しては,省エネルギー分離・回収プロセスとして注目さ れ,使用実績も多い活性アミン溶液と省エネルギー型フロースキームが採用されている.

通常のCO2回収は,CO2を吸収したアミン溶液を加熱して行うが,省エネルギー型フロ ースキームは,CO2を吸収したアミン溶液を加熱する前に低圧放散塔内において減圧し,

CO2の一部を回収することにより,分離・回収に要するエネルギー消費量削減を可能と する.さらに,低圧放散後のアミン溶液の一部を分離・回収に循環利用する二段吸収プ ロセスを採用しており,一層のエネルギー消費量削減に取り組んでいる.

圧入の対象地点である苫小牧港沿岸区域においては,過去に国や石油会社等の民間企

(20)

14

業により石油・天然ガスを対象とした地質調査が行われ,地下の地質構造について豊富 なデータが蓄積されている.実証実験対象区域は,中生代火山岩類の基盤岩の隆起帯に 位置し,古第三系,新第三系および第四系が分布しており,古第三系の上位に,下位よ り滝ノ上層,振老層,平取・軽舞層,荷菜層,萌別層,鵡川層が存在する(図1-2-8). これらのうち,上部に良好な遮蔽層(泥岩層)を持つ滝ノ上層,萌別層(砂岩主体)が CO2貯留層である.滝ノ上層は深度約2,400~3,000 mに位置する厚層600 mの背斜構 造を持つ構造性帯水層である.滝ノ上層の孔隙率,浸透率は萌別層に比べて小さい(孔 隙率:5.0~18.0%,浸透率:0.68~1.18 mD;苫小牧 CCS-1 圧力テスト解析結果)が,

貯留層は不均質であると同時に,貯留性の良好な岩相の存在が確認されていることから,

適切な貯留ポイントを選定することにより,良好な貯留性能が期待できる.一方で,萌 別層は深度1,100 m~1,200 mに位置する厚層約100 mの非構造性帯水層であり,孔 隙率,浸透率ともに大きく(孔隙率:25.0~40.0%,浸透率:9~25 mD;苫小牧CCS-1 圧力セスト解析結果),貯留層性能は十分と判断される.萌別層泥岩層に断層等は認め られず,浸透率は貯留層より約3オーダー小さい.また,CO2圧入後も貯留層上限の圧 力は遮蔽層下限の圧力を超えないことがシミュレーションで確認されており,遮蔽層の 性能に問題はないとされている.

この滝ノ上層,萌別層それぞれにCO2圧入用の圧入井を設ける.滝ノ上層T1部層に 対する圧入井は,垂直深度2,789 m,水平偏距4,103 m,掘削長5,570 m,最大傾斜角

70°である.萌別層砂岩層に対する圧入井は,垂直深度1,169 m,水平偏距2,911 m,

掘削長3,520 m,最大傾斜角86°であり,いずれも高傾斜坑井あるいは大偏距(ERD)の

坑井となっている.これらの圧入井より 2016 年~2018 年の約3年間にわたって,年 間10万トン以上(最大20万トン)のCO2圧入が実施される予定となっており,2017 年9月29日現在, 累積で76,514トンのCO2が圧入されている.

2坑の圧入井では圧入するCO2の量や温度・圧力のモニタリングし,3坑の観測井で は,貯留層内の温度・圧力に加えて微小振動および自然地震を観測する.その他に,常 設型の海底受振ケーブル(OBC),4か所の海底地震計(OBS),1か所の陸上地震計を設 置して微小振動・自然地震を観測する.貯留層の温度・圧力は,圧入・貯留したCO2の 状況を示す基本データであり,微小振動と自然地震の観測は,CO2の圧入と自然地震の 発生には関連性がないこと,および自然地震により貯留された CO2が影響を受けない ことを確認するためのデータ取得が目的である.加えて,海域で弾性波探査を行い圧入 したCO2の拡がりを確認すると同時に,「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」

(海洋汚染防止法)に基づいて海洋環境モニタリングを行う.

苫小牧CCSプロジェクトはCO2の回収から貯留までのトータルシステムでの実証実 験としては国内において初の試みとなるほか,構造性帯水層と非構造性帯水層の2つの 岩石層を対象とした実証実験であることから,得られる成果は日本のCCS技術をより 実用的に運用していくための大きな足掛かりとなる.

(21)

15

図1-2-8 苫小牧CCS実証試験の貯留層18)

1.3. CO2地中貯留実施時の貯留層内の現象 1.3.1 CO2の性状

CO2 19)は常温・常圧では無色無臭の気体であり,通常毒性はないが,空気中に含まれ るCO2濃度が高くなると人体に悪影響を及ぼす.炭素(以下,C)を含む有機物などの 物質が,十分に酸素(以下,O2)がある状態で酸化反応を起こすとCO2が発生する.CO2

は炭素循環における最も高い酸化状態の一つであり,常温・常圧下でCとO2の混合物 が最も安定な状態となる物質であり,大気中でも380 ppm程度と多量に存在している.

また,赤外線を吸収する性質があるため,温室効果気体または,温室効果ガスとも呼ば れる.

CO2は,温度,圧力の相関により液体,固体(ドライアイス),気体(炭酸ガス)の三 態をとり,水に比較的よく溶け,その水溶液は弱酸性を示す.図1-3-1にCO2の状態図 を示す.CO2は常温・常圧では気体の状態をとるが,三重点(Triple point:T=-56.6 ℃,

P=0.52 MPa)以上の温度と圧力の条件下では液体化する.さらに,臨界点(Critical

point:Tc=31.1 ℃,Pc=7.38 MPa)を超えると超臨界状態となり,気体と液体の両方の

性質を兼ね備えた状態と表現される.超臨界流体(Supercritical Fluid)とは,一般に 臨界温度(Tc)と臨界圧力(Pc)を超えた非圧縮性高密度流体と定義される.耐熱容器 に水を入れて加熱すれば,水は沸騰をはじめ,次第に内部の圧力(蒸気圧)は増大する.

(22)

16

この圧力の増大には限界があると考えられ,臨界点の存在が発見された20).その際の実 験には,砲身を加工した作られた容器が用いられ,その中にアルコールを 1/3 ほど石

(marble)とともに封入し,加熱した.そして,ある温度で液相が消失することを転が る石の音で確認した.その後,CO2を用いて圧力・温度・体積の関係を詳細に測定した Andrewsにより“Critical Point”と紹介された21)

超臨界流体は分子間力による系の秩序を保ちつつ,それらの分子が激しく入れ替わる 状態にある.そのため,温度や圧力をわずかに変えると,その密度が連続的かつ大幅に 変わるので,密度の関数として表せる多くの溶媒物性,例えば溶解力や誘電率といった 平衡物性,あるいは拡散係数や粘度等の輸送物性を精密に制御することで,使用目的に 応じた溶媒性能を付与することが可能である.このような理由から,超臨界流体を分離 や反応操作に用いると,液体に近い溶解力と気体に匹敵する拡散性を有する新しいタイ プの溶媒になると期待されている.

図 1-3-1 の CO2の状態図が示すように,CO2 は比較的厳しくない温度・圧力条件

(Tc=31.1 ℃,Pc=7.38 MPa)で超臨界状態となるため超臨界流体の中でも最も研究・

利用が進んでいるものの一つである.1種類の超臨界流体であっても温度・圧力を調節 することにより溶媒としての性質を大きく変化させることができるため,抽出や反応場 としての利用が期待できる.超臨界 CO2を溶媒として抽出・反応に利用する利点とし て,環境負荷が少なく燃焼や爆発の危険性が低いことが挙げられる.また,目的物を溶 解した超臨界CO2を臨界点以下にすると,CO2は気化して飛散することで,溶質のみが 残る.飛散したCO2は回収して再利用が可能である.表 1-3-1に気体・液体および超臨 界流体のマクロ物性を示す.

図1-3-1 CO2の状態図

(23)

17

表1-3-1 気体・液体および超臨界流体のマクロ物性19)

物性 気体 超臨界流体 液体

密度ρ /g・cm-3 (0.6~2.0)×10-3 0.2~0.9 0.6~1.6 拡散係数D /cm2・s-1 0.1~0.4 (0.2~2.0)×10-3 (0.2~2.0)×10-5 粘性η /10-3Pa・s (1~3)×10-2 (1~9)×10-2 0.2~3.0

1.3.2 CO2の貯留メカニズム

現行のCO2地中貯留のシナリオは,Metz5)らに提案されたものが基本となっている.

このシナリオは,砂岩中の CO2の貯留が短期間から長期間で異なるメカニズムで生じ るとしている.図1-3-2は,各トラッピングの寄与率を対数時間で比較したものである.

図中の,Structural & Stratigraphic trappingが地質構造および層位によるトラッピン

グ,Residual trappingが水理学的トラッピングや残留ガス(CO2)トラッピングのこと

を指し,この2つのトラッピングは,物理トラッピングと呼ばれる.また,Solubility

trappingやMineral trappingは化学トラッピングと呼ばれる.

特にCO2地中貯留の対象は,シール性のある不透水層(キャップロック)を有する背 斜構造や,砂岩と泥岩の互層から形成される.砂岩に比べ,孔隙径が非常に小さい泥岩 層においては,CO2と地下水の置換や浸透に必要なキャピラリー圧(毛管圧)が大きく なる.そのため,多孔質砂岩で構成される貯留層に圧入されたCO2は,泥岩層に侵入す ることができず,CO2の移流が妨げられる.このような現象により,CO2は多孔質砂岩 中にトラッピングされる.以上のようなトラッピングのことを地質構造および層位によ るトラッピングと呼ぶ.このトラッピングでは,シール層の健全性が非常に重要であり,

CO2圧入や浮力等で発生する加圧状態において,シール層の破壊が生じないことの確認 が不可欠である.

残留ガストラッピングは,地質構造および層位によるトラッピングに比べ,経過時間 に依存する物理トラッピングである.貯留層に圧入されたCO2は,圧入による圧力勾配 や自然に存在する圧力差,また,浮力による拡散等により移動する.しかし,そのスピ ードは,圧入井以外は極めて遅い.そのため,すべてのCO2が移動するのではなく,一 部のCO2が孔隙内に残留する現象が生じる.そのため,明確な背斜構造が存在しない場 合でも,キャップロック下に連続的な貯留層において,残留ガストラッピングを考慮し,

貯留能力を大きく評価することが可能である.このような地質構造は,国内ではCO2の 大量排出源がある地域近傍に多く存在し,CO2地中貯留の実用化を考えるにあたり,期 待されるトラップであり,更なる現象の解明が求められる.

物理トラッピングは,後述の化学トラッピングに比べ,比較的短期間で起きると考え られる.本論文中では,これらのトラッピングを対象としている.

溶解トラッピングは, CO2が長時間かけて接触している水(塩水)に溶解すること

(24)

18

で,溶解水の密度が増加し,帯水層の下方に安定した状態となることで貯留される現象 である.溶解トラッピングは,時間を要するが,安定したトラップとなりうる.

鉱物トラッピングとは,溶解水中のイオン化したCO2が鉱物(金属イオン)と地化学 反応を起こし,鉱物化(炭酸塩鉱物を生成)していく現象である.CO2地中貯留の固定 に関する最終形態であり,長期的な CO2の固定が期待できる.この鉱物化トラップに は,1000年から数1000年の年月が必要とされており,その評価には,長時間に及ぶ室 内実験や,地球化学計算との連成解析による評価が必要である.

1.3.3 貯留層内のCO2流動パターン

CO2地中貯留は,地下の温度・圧力条件下においてCO2は超臨界状態となり,粘性が 貯留層に存在する塩水より約2オーダー低くなる.この超臨界CO2が,貯留層を構成す る多孔質砂岩中の空隙内に存在する塩水を押し出し,置換しながら浸透する(置換型流 動).この置換と浸透による流路形成のメカニズムの把握は,CO2地中貯留のポテンシ ャルや安全性,経済性を評価するうえで重要である.貯留層内に存在するCO2と水(塩 水)は長時間かけて溶解が生じるものの,互いに混和することがない(不混和流体)と 捉えることができる.この不混和流体同士の置換・浸透による流路形成は,図1-3-3に 示すStable displacement,Viscous fingeringおよびCapillary fingeringの流路パタ ーンがあるとされている22)

図1-3-2 貯留層におけるCO2トラッピングメカニズム5)

(25)

19

これらの流路パターンに関して西澤らがまとめているので,以下,参考文献23)に沿っ てまとめる.多孔質媒体中の不混和流体により形成される流路パターンは,置換側・被 置換側流体の粘性係数と,互いの境界での表面張力,および置換側流体の流速により決 定される.これらの関係は,以下の式 (1-1)に示すキャピラリー数(Capillary Number:

Cn)で表現される(無次元量).

Cn = υ η / γ  (1-1)

ここで,υ, η, γ はそれぞれ,置換流体の多孔質岩石内での流速(m/s),粘性係数(Pa・s

= N・s/m2),不混和流体の界面での張力である.Cn は置換流体が流路を形成する際に,

界面の形状を維持できるかどうかの目安となる.空隙を模擬した管内において,流速が 大きいと置換流体の中央部と壁側との間の速度勾配が拡大し,流体は界面の形を保つこ とができないが,小さい流速では,界面の形を保ちながら流動する.図1-3-3の上,中 段は置換,被置換流体の粘性係数の比が等しく,キャピラリー数が変化した場合,下段 はキャピラリー数が等しく粘性係数比が変化した際の流路形成パターンを示している.

図 1-3-3 に示す通り,流路形成のパターンとして Stable displacement と Viscous

fingering,Capillary fingeringで置換フロントでの挙動が異なる.Stable displacement では置換フロントはほぼフラットに進展する.Stable displacementは粘性流動の領域 にあり,キャピラリー圧の影響は小さく,流路先端で界面の形状はほぼ保たれている.

一方で,Viscous fingeringとCapillary fingeringは置換フロントが枝わかれを繰り返 して流路が形成される.Viscous fingering は流路上で界面の形を維持することができ ず,置換流体は粘性抵抗に抗して高速で移動するのに対し,Capillary fingeringは流路 先端の界面の形状を保ちながらの置換流動である.そのため,Capillary fingeringの置 換パターンはViscous fingeringより複雑であり,置換フロントの背後に流路に囲まれ た未置換領域が現れる.

上述の流動パターンは,図1-3-4のDrainage phase diagramによって決定する.両 軸は対数で表示され,縦軸は置換流体のキャピラリー数,横軸は置換流体と被置換流体 の粘性係数の比となっている.このDrainage phase diagramは,孔隙同士を繋ぐネッ トワークにおける界面の安定性をキャピラリー数で記述することで,流路幅など影響し ないことがわかる.そのため,図1-3-4内の流動パターンを決定する境界は,砂岩の粒 度などには大きく依存せず,均質な砂岩であれば一般に適用できるとされている.これ は,流路形成における界面形状の安定性は,流路幅(浸透率)に応じて,流速を変える ことで決定される.以上のことから,流路形成パターンは,キャピラリー数が最も影響 のあるパラメータであるといえる.

特に,CO2地中貯留を実施する際は,超臨界CO2と塩水の粘性係数の比から図1-3-4 において横軸が決定され,灰色部分の領域内でしか存在し得ない.このことからも,流

(26)

20

路パターンを決定するパラメータは,縦軸のキャピラリー数となる.このキャピラリー 数を構成する流速は,圧入井近傍以外では小さくなるため,貯留層へのCO2圧入時のキ ャピラリー数(縦軸)は貯留層では,圧入点近傍を除き10-5以下を示す.ここで,空隙 を細い管(管径 )の連結と考えれば,CO2が塩水を押し出して置換するために必要な 圧力は管径に依存し,式 (1-2)に示すスレッショルド圧pcを越える必要がある.

(1-2)

ここで,γは表面張力,θはCO2と塩水の境界の接触角である.接触角はCO2と塩水 の温度,圧力,塩分濃度などで変化する24).式 (1-2)から,スレッショルド圧は管径が 大きくなるほど,小さな値を示すことがわかる.そのため,CO2注入圧が小さい場合,

径が大きな空隙においてCO2と塩水の置換が行われる.また,形成された流路がCO2に 満たされる場合は,流路の先端(フロント)でのみ選択的な流路形成が生じる.さらに,

一度CO2の流路が形成されたあとの,流路に関しては,CO2は塩水に比べ粘性が2オー ダー程低いため,新たな塩水領域との置換は生じず,CO2の粘性抵抗に支配された流動 が生じる.これは,圧入流量が変わらないか,小さい限り,同様の現象が継続されると 考えられる.一方で,圧入流量を大きくすることで,注入圧(CO2圧力)が上昇し,低 い流量での圧入では侵入できなかった径サイズの空隙へも CO2 が浸透し,流路の拡張 が生じると考えられる.この流動では,既存の流路先端で相対的にキャピラリー圧が低 い領域(より径の大きい管路や大きい空隙)が選択され,CO2 と塩水の置換が生じる.

上述の通り,CO2の流路形成は,流路先端のキャピラリー圧によって決定される.こ の流路先端における選択的な流路の形成メカニズムは,インベージョンパーコレーショ ン(Invasion percolation)と呼ばれる25).これまでパーコレーション26)は,森林火災 や伝染病の拡大などのネットワーク形成モデルとして用いられてきた.パーコレーショ ンは,サイトの占有確率,あるいはサイト間のボンドの結合確率がネットワーク形成を 支配するモデルとなっている.一方で,インベージョンパーコレーションによる流路の 拡大や拡張は,形成された流路の先端での相対的な置換確率によって決定される.その ため,パーコレーションのように実験サンプルや貯留層におけるサイトの占有確率,あ るいはサイト間のボンドの結合確率の大小は流路の形成に直接的には支配されない.

CO2地中貯留でのCO2置換・浸透に関しては,インベージョンパーコレーションを用い ることにより,キャピラリー圧の大小を流路先端の置換確率とし,モデル化することで,

流路予測が可能となる.

(27)

21

図1-3-4 Drainage phase diagram23)

図1-3-3 流路形成パターン

(28)

22

1.4. 貯留対象としての低浸透率砂岩の提案

前節まででCCSとは,地下800 m以深の比較的浸透率の高い油・ガス田にCO2を圧 入し,地圧・地温により超臨界状態となったCO2を,貯留層上部に存在するキャップロ ック(不透水層)によって遮蔽し,固定する技術であると述べた.通常,油田は数十mD

から数百mD(= 10-12 m2オーダーから10-14 m2オーダー)の浸透率を有する.透水係

数と貯留層の評価並びに,おおよその浸透率の単位変換に関して,図1-427)に示す.図 1-4にて,Aquiferに関して,”Excellent”や”Good”と評価される石油や天然ガスの貯留 層を有する地質構造は,世界的に偏在性が極めて高い.また,油田・ガス田の豊富に存 在する国では,従来から用いられる石油,天然ガスの還元井および回収率を高めるガス 注入技術は確立されたものであり,CCSは実施可能である.一方で,油田・ガス田の分 布が極めて限定的である我が国では,貯留層の代替案としてキャップロックに依存しな い非構造性帯水層が検討されている.国内では,日本沿岸部に透過性の低い堆積岩が広 く分布している.また,非構造性帯水層の中でも,岩石の固結度が高く,岩石内部にお ける流体の移流が遅い低浸透率砂岩層に CO2を圧入することで,長期的に CO2を大気 中から隔離できると考えられている.

低浸透率砂岩層内に圧入されたCO2は,圧入井から周囲の堆積岩層(多孔質砂岩)へ と押し出されていく.このとき,層内は地下水で飽和しており,超臨界CO2がこの地下 水を押しのけることでCO2圧入・貯留が実行される.前節で述べた通り,空隙に存在す る水の全てが一様に移動して排除されるのではなく,一部は移動せずそのままの位置に とどまる.また,水に溶解しなかった超臨界CO2は,圧入による圧力勾配や自然に存在 する圧力差,浮力や拡散等により移動するが,透過性の低さから,その移動は圧入によ るものを除くと極めて遅いと考えられる.また,移動しない水(塩水)には,その場の 温度・圧力条件で決まるCO2溶解度に応じて,CO2の溶解が期待できる.このことから CO2は,長い時間をかけて移流することで CO2を大気中から長期的に隔離することが 可能である.さらに,物理的トラッピングだけでなく,CO2の地下水への溶解によるト ラップや,岩石と CO2 溶解水との鉱物反応により固定される鉱物トラッピングにも期 待できる.このような理由から,地下深部の低浸透率砂岩は CO2の貯留対象となり得 る.特に,キャップロックを持つ帯水層が乏しい我が国では,非構造性帯水層中の低浸 透率砂岩へのCO2貯留および固定化技術の開発が急務である.

これまでに,難透過性堆積岩(本論文では,低浸透率砂岩とする)に対する室内透水 試験に関する研究例は存在するが,低浸透率砂岩を対象としたCO2透過・貯留特性を評 価した研究は少ない.特に,CO2は圧力および温度条件により容易に相変化を起こすだ けでなく,水への溶解性も変化するため,詳細な低浸透率砂岩のCO2挙動を把握するた めには,温度および圧力を厳密に制御した条件下で室内CO2透過・貯留実験を行うこと により,基礎的なデータを蓄積していくことが求められる.本論文中では,低浸透率砂 岩の定義を10-17 m2オーダーから10-18 m2オーダーとする.

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