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セ ヌ フォ社会 におけ る夫方 居住 集 団の 空 間概 念 と実践

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セ ヌ フォ社会 におけ る夫方 居住 集 団の 空 間概 念 と実践 29

セヌフォ社会 における夫方居住集団の空間概念 と実践

1は じ め に

本 稿 は、セ ヌ フ ォ社 会 にお け る基 礎 的 集 団 範 躊 の ひ とつ で あ る父 方 夫 方 居 住 集 団 「ダ ア ラ」 を対 象 と し、 かつ て は 高 度 の 自律 性 を有 して い た 生 産 と消 費 の 単位 と して の 集 団 の あ り方 を考 察 す る こ とで、 セ ヌ フ ォの居 住 空 間概 念 と実践 の様 態 を示 す こ と を 目 的 とす る。

第 二 節 で は、 ダ ア ラ(父 方 夫 方居 住 集 団)の 現 代 的位 置 づ け をみ る 。 第 三 節 で 、 空 間 お よ び居 住 空 間 を め ぐる 人類 学 理 論 を概 観 し、居 住 集 団研 究へ の ア プ ロー チ を瞥 見 す る。 第 四節 で、 ダ ア ラ と対 照 的 な 空 間 的 か つ 集 団 的 な 範 疇 バ の概 略 を記 述 す る 。 第 五 節 で は、 居 住 空 間 ダ ア ラ とバ の複 層 的 関係 を示 す 。 第 六節 で は 、 母系 出 自集 団 の 民 俗 生 殖 観 を記 述 す る。 第七 節 で は 、 ダ ア ラの 内 実 を 更 に 記 述 す る 。 第 八 節 で は 、 ダア ラ の 「団 体 」 的 性 格 を示 す 。 第 九 節 で は 、 ダ ア ラ と対 比 され る 出 自集 団 バ の 「団 体 」 的性 格 を示 す 。 第 十節 で は 、理 論 的 な検 討 と して 「イ エ 」 論 に 言 及 す る 。 第 十 一 節 で は、 「イエ 」 論 の 存 在 論 的 転 換 にふ れ る。 お わ りにで 、 今 後 の課 題 を提 示 す る。

本 稿 は 、 お もに居 住 集 団 ダ ア ラの存 在 様 態 を明 らか に す る た め に 、 民 族 誌 記 述 と若 干 の理 論 的考 察 を提 供 す る こ とを 目的 とす る 。 と くに 現 代 マ リ共和 国 にお け る 「社 会 的紐 帯 の再 組 織 化 」 が 国家 お よび社 会 の 問 題 とな っ た と き、 い か な る しか た で 「社 会 的 な もの」 す な わ ち 国家 と個 人 との 媒介 と して の 集 団 が 現 れ 、 宗 教 的 ・社 会 的 実 践 と 相 関 関係 を切 り結 ぶ の か 、 そ して ロ ー カル な社 会 的 想像 力 の うち で ど う対 応 して い る の か を 究 明 す る準 備 作 業 をお こな うた め で あ る。

1父 方 夫方 居住 集 団 「ダア ラ」 の 現 代 的位 相

セ ヌ フ ォ社 会 に つ い て 簡 単 に 概 略 す る 。

セ ヌ フ ォ は 、 マ リ 南 部 か ら 、 コ ー トデ ィ ヴ ォ ワ ー ル 北 部 、 ブ ル キ ナ フ ァ ソ 南 西 部 に か け て 内 陸 サ ヴ ァ ン ナ 地 帯 に 居 住 す る 民 族 で あ る 。 言 語 に つ い て は 、 ド ゴ ン 、 ミニ ヤ ン カ 、 モ シ 、 ボ ボ 、 タ レ ン シ と 同 じ言 語 系 統 で 、 い わ ゆ る ニ ジ ェ ー ル ・コ ン ゴ 語 派 ヴ ォ ル タ 諸 語 系 民 族 で あ る 。 生 業 つ い て は 、主 に トウ モ ロ コ シ 、 ト ウ ジ ン ビ エ 、 モ ロ コ シ、

陸 稲 、 フ ォ ニ オ 、 ラ ッ カ セ イ な ど を 栽 培 す る 焼 畑 農 耕 民 で あ る 。 コ ー トデ ィ ヴ ォ ワ ー

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セ ヌフ ォ社 会 にお け る夫方居 住 集団 の空 間概 念 と実践

ル共 和 国、 と りわ け コロ ゴ県 東 部 の セ ヌ フ ォ社 会 で は 、 ヤ ム イ モ な ど塊 茎類 も耕作 さ れ る。近 年 の研 究 で は、セ ヌ フ ォの狩 猟 結 社 ドゾ と秘 密 結 社 ポ ロ が コー トデ ィヴ ォ ワー ル共 和 国 内戦 で 中心 的 な役 割 を担 っ て い た こ とが わ か っ て い る 。

さ て、 現 代 マ リ共 和 国 セ ヌ フ ォ社 会 に お け る 「ダ ア ラ 」 の お か れ た位 置 づ け をみ て み よ う。 まず 基 本 的 な定 義 か らで あ る。 こ の社 会 単 位 は 、古 典 的 な社 会 人類 学 の 用 語 で定 義 す る な らば、 父 方 夫 方 居 住 集 団 とい え る うえ 、 実 際 の調 査 か ら もお お む ね そ の よ うに 定 義 され た集 団 で あ る こ とが わ か った 。 た とえ ば 、 生 産 と消 費 の 単 倖 で あ り、

婚 後 居 住 規 制 に お い て は父 方 夫 方 居 住 の単 位 で あ り、 空 間 的 に は居 住 集 団 の屋 敷 地 を 指 す もの で あ り、 さ らに儀 礼 主 体 の単 位 で あ る とい う点 か らみ て も、 お お よそ 「父 方 夫 方 居 住 集 団」 とい うこ とが で きる。 こ の よ うに 「ダ ア ラ 」 は 、 生 来 の 土 着 的概 念 に よ っ て組 織 化 さ れ る集 団 で あ り範 躊 で あ る。

他 方 、 この セ ヌ フ ォに お け る基 礎 的 集 団 範 躊 で あ る 「ダ ア ラ」 とい う社 会 単 位 は、

マ リ繊 維 開発 公 社(Campagnie〃zaliennePourlede'veloPPementdestextiles)に よる 地 方 の綿 花 栽 培 開発 で労 働 力 の効 率 的収 奪 の た め に設 定 され た社 会 的 ・地縁 的 単位 で もあ る。 したが っ て マ リ繊 維 開発 公 社 の貸 付 の単 位 で あ る とい う意 味 で 、行 政 書類 上 の操 作 概 念 で もあ る。 こ の点 で、 ダ ア ラ とい う範 疇 と制 度 は 、 単 に 生 来 の もの で も国 家 や公 社 に よ っ て仮 構 され た 想 像 的単 位 と もい い が た い。 「上 か ら」 導 入 さ れ た社 会 的単 位 で も、 他 方 、 「下 か ら」 の も と も とあ る固 有 の 集 団 とい う単 調 な もの で は な い。

もう少 し、 詳 し く 「ダ ア ラ」 の お か れ た現 代 的条 件 を み て み よ う。

世 界 銀 行 お よ びIMFの 主 導 に よる マ リ繊 維 開発 公 社 の 民 営 化 と綿 花 生 産 の推 進 が す す む につ れ、 ダ ア ラ に よ る集 合 農 地 経 営 か ら各 世 帯 に よる個 人農 地へ とひ とび との 経 済 的 関心 が 移 行 す る こ とで、 伝 統 的 な農 作 業 に お け る理 念 的 ふ る まい と現 実 との葛 藤 と して ダ ア ラ 内 で の もめ ご とが うま れ た。 と くに綿 花 経 営 の貸 付 の状 況 か ら論 証 で きた の は、 多 くの綿 花 生 産 者 が 経 営 難 に 陥 り経 営 破 綻 す る こ とで 、若 者 た ち の ダ ア ラ 長(家 長)へ の権 威 が大 き く失 墜 す る さ まで あ っ た[溝i口2004、2005]。 ダ ア ラ長へ の権 威 失 墜 の帰 結 は、 彼 に服 従 して い た キ ョウ ダ イ や子 供 た ち が任 意 に 農 地経 営 を 始 め、 具 体 的成 員 を前 提 とす る ダ ア ラが 集 団 的性 格 を徐 々 に弱 め る こ とに つ な が る とい う点 に あ る。 そ れ は、た だ ち にか つ て の 婚 姻 の 前 提 と な っ て い た花 嫁 奉 仕 、花 嫁 代 償 、 そ して婚 姻 儀 礼 の衰 退 を惹 起 し、 マ リ繊 維 開発 公 社 が か つ て綿 花 生 産 の た め の社 会 的 紐 帯 の再 組 織 化 の た め に狙 い定 め た はず の ダ ア ラ とい う生 産 単 位 の崩 壊 を 意 味 して い た。 同公 社 の 目指 した 「社 会 的紐 帯 の再 組 織 化 」 の崩 壊 とは、 同公 社 の貸 付 単位 こそ が ダ ア ラ で あ っ た点 、 そ して貸 付 支 払 い の責 任 を とる法 的 人格 を ダ ア ラ間 関係 に 設 定 して い た こ とが 裏 目に で て、 綿 花 生 産 が た ち ゆ か な くな っ た 点 、 そ の た め 、 た だ ち に 村 人 が ダ ア ラ とい う仮 想 もさ れ て い た 「団体 」 か ら抜 け 出 て 自己 の利 益 を求 め て個 人 農 地 を経 営 しよ う とす る点 に こ そ あ っ た。 そ れ は 、 ダ ア ラ とい う 「団体 」 的性 格 を有 す る単 位 が 、 な る ほ ど 「伝 統 的」 で あ りな が ら、 近 代 的制 度(公 社)に 強 制 され た こ

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セヌ フ ォ社 会 にお け る夫 方居 住集 団 の空 間概念 と実践 31

とか ら生 じた集 団 で あ る こ とに 由 来 す る 矛盾 で あ っ た 。 調査 村 の 親 族 範 疇 と実体 的 集 団 の相 関 を複 雑 な もの に し、社 会 的凝 集力 の再 活 性 化 を し くじ らせ た の も、 この 自生 的 かつ 擬 制 的 な ダ ア ラ の側 面 で あ る 。

以 上 の課 題 を対 象 化 す る た め に 、本 稿 で は 、最 近 の変 化 が 生 じる 以前 の ダア ラに つ い て述 べ て い くこ とにす る。 そ の た め 、 ま ず拡 大 家 族 で構 成 され る 「父 方 夫 方居 住 集 団」 ダ ア ラ の理 念 的側 面 を と りあ げ る。 そ して 父 方 夫 方居 住 規 制 を とる た め に各 村 に 拡 散 した母 系 出 自集 団 の ひ とび とが不 ぞ ろ い に居 住 して い る ダ ア ラ 内 の ひ とび との 関 係 性 と そ の葛 藤 に焦 点 を あ て る。

こ こ で の 試 み は、 地 縁 的 な居 住 集 団 ダ ア ラ とい う集 団 の単 位 を分 析 の対 象 と して 、 同集 団の 範 疇 をめ ぐる実 践(婚 姻 儀 礼 と葬 送 儀 礼)の 構 造 と機 能 を探 る た め の準 備 作 業 で あ る[溝i口2011a、2012a、2012d、2012e]。

人 類 学 に お け る空 間 の問 題 と居 住

「ダ ア ラ」 と い う居 住 空 間 にお け る ひ とび との ふ る ま い や 行 動 の 変 化 を 記述 ・考 察 す る前提 と して 、 ひ と と ひ と、 事 物 と ひ と、 事 物 と事 物 に取 り囲 まれ た個 人 の 条 件 を 定位 す るた め に こ こで 簡 単 な理 論 的 準 備作 業 をす る。第 十節 、第 十 一 節 で 少 し立 ち入 っ て 理論 的 な検 討 をお こ な う。

ひ とび との 生 活 に埋 め 込 まれ た 空 間 な り時 間 な りが 、 単 な る均 質 な空 間 で は ない の は 、 す で に多 くの 人類 学 者 が 指摘 して きた 。 た と えば 、 アル フ レ ッ ド ・ジ ェル の博 士 論 文 は、 男 性 小 屋 を取 り囲 む居 住 空 間 を中心 と して外 部 に広 が る女性 小 屋 や そ の外 側 に あ る薮 や森 の外 縁 に い た る まで の 空 間 が 、 決 して均 質 的 で も、 等 質 な もの で も ない こ とを示 し、 言 語 や儀 礼 との相 関 関係 で 日常 的 な居 住 空 間 で の 実践 が繰 り広 げ られ る 様 子 を記 述 した[Gelll975]1)。 ジ ェ ルが 対 象 と した ニ ュ ー ギ ニ ア の ウ メ ダ社 会 で は、

社 会 空 間 の 中心 に、 「男 性 性 」 と結 びつ い た居 住 空 間 の 中心 で あ る 広 場 が あ り、 社 会 空 間 の もっ と も外 縁 に畑 、 薮 、 森 が あ る。 儀 礼 や祭 祀 が行 わ れ る の は 中心 の広 場 で あ る。 そ して居 住 空 間 の 中心 の 「男 性 性 」 と薮 や森 をつ な ぐ媒 介 項 と して女 性 の領 域 で あ る 女 性 小 屋 が 存 在 す る2)。 ウ メ ダ社 会 に は、 集 落 が6つ あ り、 そ れ ぞ れ に9‑12戸 程 度 の核 家 族 が 自身 の家 屋 を もつ 。 中央 の広 場 を軸 に して成 人 男 性 、 女 性 、 子 供 の活 動 範 囲 が 同心 円状 に外 側 に広 が り、 同時 に もの と もの、 ひ と とひ とが 濃 密 な空 間 的編 成 を もって 配 置 され る。 と りわ け 「男 性 性 」 の 中心 とな る広 場 は、 儀 礼 な りを媒 介 に

した 社 会 関 係 が 展 開 す る場 と な る。

この よ うな事 例 は 、ベ イ トソ ンの イ ア トム ル[Bateson1958]や バ ー ス のバ ク タマ ン [Barthl975]の 事 例 にお い て も共 通 して み られ る の で、 居 住 空 間 の ニ ュ ー ギ ニ ア的 特 徴 で あ るが 、 西 ア フ リカの セ ヌ フ ォ社 会 で も空 間編 成 の 点 で 同様 の こ とが 言 え る3)。

以 上 の 空 間 論 の 論 点 を別 の 角 度 か ら整 理 した 西 井 は、 す で に田 辺 繁 治 を は じめ と し

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セ ヌ フ ォ社 会 にお ける夫 方居 住集 団 の空 問概念 と実 践

た人 類 学 者 が 探 求 して きた 日常 的実 践 論[田 辺2002]を 空 間 論 的 に展 開 した 際 に遭 遇 した課 題 を指 摘 した[西 井2006]4)。 そ れ に よ れ ば、 日常 的 な実 践 が 繰 り広 げ られ る社 会 空 間 とは、 一 般 的 に比 喩 的 に考 え られ て い る イ メ ー ジ、 た とえ ば計 算 可 能性 に 裏 打 ち され た社 会 的行 為 の透 明 な水 準 に存 す る の で は な く、 む しろ 身体 や情 感 に埋 め 込 ま れ た は な は だ 「肉」 感 的 な 「暗 い穴 」 で あ る。 西 井 は、 メ ル ロ=ポ ンテ ィ を引 き 合 い に 出 し なが ら、 「肉 」 感 的 な 空 間 の 記 述 を、 い か に民 族 誌 の うち に見 出す こ とが で きる のか を具 体 的 に示 した点 で、 上 記 の ジ ェ ル の よ うな ニ ュ ー ギ ニ ア民 族 誌 の象 徴 論 的居 住 空 間論 にお け る示 唆 を超 え た理 論 的独 自性 を示 した。 この 点 は 、他 者 性 や社 会 性 の 問題 との連 繋 と して も重 要 な論 点 とな る の で、 第 十一 節 で後 に ふ れ る 。 ひ と ま ず こ こで他 者 性 や 社 会 性 を帯 び た 固有 の 空 間 につ い て の 議 論 で 注 目 して お くべ き は、

居 住 空 間 とそ の対 比 的 な広 が り と して の薮 や農 地 に お い て、 村 人 は どの よ うな 道 具 や 建 物 や 動 植 物 な どの 「もの」 に空 間 的 に 囲 まれ て い る の か 、 そ こで い か な る ふ る まい や 行 為 を お こ な い、 い か な る動 機 付 け に よ り村 人 の行 為 や情 動 が 回路 づ け られ て い る の か とい う問 い を忘 れ ない こ とで あ る5)。 セ ヌ フ ォで は、 父 方 夫 方 居 住 婚 とい う婚後 居 住 規 制 の制 度 と母 系 出 自集 団 との社 会 的矛 盾 が著 しい 。 そ の た め この 矛盾 が 具体 的 な生 活 の空 間 で どの よ うに現 れ る の か とい う こ とが 問題 とな る 。 だ か ら こそ 、居 住 空 間 の な か に生 産 と消 費 の単 位 の根 幹 とな る屋 敷 地 に住 む ひ とび との あ つ ま り(父 方 夫 方 居 住 集 団)と 、 居 住 空 間 を超 え た著 しい地 域 的広 が り を見 せ る ひ とび との あ つ ま り (母系 出 自集 団)の 一 部 とが、 同 時 に同 じ屋 敷 地 に 共 住 す る こ とか ら くる矛 盾 した 空 間認 識 の性 質 と問題 点 が着 目 され る必 要 が あ る わ け で あ る 。

lVダ ア ラ とバ の概 略

「ダ ア ラ 磁 伽 」は 、セ ヌ フ ォ語 で 「イ エ」を表 す 、と ひ と まず 考 えて お こ う。 つ ま り、

屋 敷 地 の な か に あ る家 屋 の集 ま りを意 味 す る と同 時 に 、屋 敷 地 に住 む ひ とび との 集 ま りを指 す 。 社 会 的脈 絡 と用 法 に応 じて異 な る が 、 実感 と して は 、 ダア ラは屋 敷 や建 物 を示 す 空 間 的含 意 よ り も、 む しろ集 団 的意 味 で用 い られ る こ とが多 い 。 ダァ ラは 、建 物 と して の 日干 し煉 瓦 の小 屋 や そ の寄 り集 ま りを 直接 的 に 意 味 す る場 合 、 と く に居 住 集 団長 の個 人名 と空 間 を指示 す る後 置 詞 マmaを 補 う こ とで、 住 居 の集 ま り と して の 家 屋 群 を指 す こ とが で き る。 日本 語 で の家 長 と近 似 の 意 味 合 い を もつ 居 住 集 団 長 は、

ダ ラ フ ォ ロdaalafolOと 呼 ば れ 、 ダ ア ラ の最 年 長 男 性 が そ の職 掌 につ く6)。家 屋 群 を 包 含 す る空 間 的含 意 が 込 め られ た ダ ア ラ は、居 住 の た め の 小 屋 バ と対 比 的 に語 られ る。

バgba」 あ るい は 「バ ギgbagi」 とは、 端 的 に 言 え ば 「小 屋 」 で あ る。 バ は、 通 常 ダ ア ラ 内 の住 居 と して の土 壁 の小 屋 を意 味す る。 あ る い はバ は 、雨 季 に入 っ て つ くる 藁 の屋 根 と柱 の み の土 壁 す らな い 出作 り小 屋 を意 味 し、トウ ジ ン ビエ や トウモ ロ コ シ、

イ ネ な どの 穀 物 を入 れ る穀 倉 も意 味 す る。 この よ うに 、小 屋 や 穀 倉 を含 意 す る 「バ 」

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セ ヌ フォ社会 におけ る夫方 居住 集 団の空 間概 念 と実践 33

あ るい は 「バ ギ 」 は、 屋 敷 地 とい う空 間 的 な領 域 の意 味 内容 を もつ ダ ア ラ と対 照 され る。 ダ ア ラが 、 い くつ か の小 屋 が 寄 り集 ま っ た屋 敷 地 とい う空 間 的含 意 と、 そ こに住 む ひ と と ひ と との 結 合 とい う集 団 的含 意 の二 つ の意 味 論 的負 荷 を帯 び て い る の と同様

に、 バ も二 様 の 意 味 を もつ 。

具 体 的 にバ の 二 様 の 意 味 とは次 の よ うな もの で あ る。 第一 に、 バ は、 屋 敷 地 内 の建 物 と して の 小 屋 そ れ 自体 を指 示 す る。 た とえ ば、 小 屋 に居 住 す る もの の個 人名 とバ を 組 み 合 わ せ れ ば、 誰 々の 小 屋 とい う意 味 に な る。 第 二 に、 バ は、 小 屋 の うち に住 む ひ とび との 集 ま り、 わ けて も母 を 中心 と した子 供 た ち とい う意 味 で用 い られ る集 団 的 レ ベ ル で の バ で あ る。 この 二 点 を各 々詳 し くみ て み よ う。

まず 建 物 と して の バ に 関 してで あ る。 男 性 は、 最 初 の女 性 と結 婚 す る と小 屋 バ を も つ 。 そ の 後 、 複 婚 で 妻 を嬰 る た び に新 しいバ を建 て る。 後 か ら屋 敷 地 に複 婚 で入 居 し て くる妻 た ち は、 最 初 は 第 一 夫 人 のバ で、 自分 の バ が つ く られ る ま で寝 泊 ま りす る。

か りに新 妻 が 入 居 す る前 に 日干 し煉 瓦 のバ が 建 て られ て い て も、 一 ヶ月以 上 は 第 一夫 人 と彼 女 の バ に一 緒 に共 住 す る こ とで、ダア ラ にお け るあ らゆ る 日常 の 作 法 を学 ぶ[溝 ロ2011a、2012c]。 通 常 時 間 が経 て ば 、僚 妻 た ち は、必 ず 自分 の バ を もつ よ う に な る。

こ う して 子 ど もが 生 まれ る と母 と子 ど もた ち か らな る集 団が 、 母 の名 前 と小 屋 を意 味 す る語 バ と「ひ と」を意 味 す る シ ェ ンshenと の 結 合 語 に よ って 表 現 され る。 た と え ば、

母 の 名 前 がAだ とす れ ば 、Aの ひ とび と を、Aバ ・シ ェ ン と呼 ぶ 。 こ う して 母 を 中 心 とす る世 帯 が 子 ど も中心 につ く られ る。 そ の子 ど もた ち、 と くに息 子 らが大 き くな る と、 早 い 者 で13、4歳 を超 え る と 自分 のバ を父 親 の ダ ア ラ 内 に築 く し、 少 な く と も 結 婚 適 齢 期 を超 え る と独 立 の た め にバ を建 築 す る。 同父 異 母 兄 弟 た ち が、 若 者 へ と成 長 す る と各 々が 屋 敷 地 の 境 界 を 出 な い範 囲 で 自分 の母 のバ の近 くに 自分 た ち の小 屋 を 建 て る。

つ ぎ に集 団 的 な レベ ルで の バ につ い てで あ る。 こ の意 味 で のバ は、 社 会 人類 学 的 な 語 彙 を用 い る と、 母 子 親 子 接 合 とい う、 血 縁 を指 示 す る 固有 の 同一 性 論 理(セ ヌ フ ォ 社 会 の 民 俗 生 殖 観 か らす る と、 「血shishang」 で は な く、 「母 乳nWfireli])に 基 礎 付 け られ た 人 的結 合 を さす 。 さ ら に、 バ は、 基 底 部 に は 母 乳nWfireliに 象 徴 さ れ る物 質 を基 点 と した 親 子 接 合 を表 現 す る と同時 に、 母 系 出 自範 躊 とそ れ に 由来 す る集 団 を も 意 味 す る。 社 会 的 脈 絡 に よ って は、 こ のバ のみ で、 直 示 的 に母 系 出 自集 団 を意 味 で き るが 、と りわ け、母 方 オ ジ を排 他 的 に意 味 す る 「ネ リオ 」(nerio,nalew)と の合 成 語 「ネ ル バ ガ」(nergbaga=母 方 オ ジ の小 屋)、 も し くは女 を 意 味 す る 「チ ェ」(ce)と の合 成 語 「チ ェバ ガ 」(cegbaga二 女 の小 屋)に よ り、 よ り直 接 的 に母 系 出 自範 躊 と集 団 が 示 され る。 この よ う にバ は、 小 屋 を意 味 す る建 物 と して の空 間 的含 意 と母 系 出 自集 団 に基 づ くひ と と ひ と との つ なが りの 二 つ の 意 味 を もつ わ け で あ る。

以 上 の よ う に ダ ア ラ とバ は、 そ れ ぞ れ 屋 敷 地 あ る い はそ の 内 に あ る小 屋 を意 味 す る の で あ れ 、 居 住 す る ひ とび と も し くは 出 自集 団 を意 味 す る人 的 結 合 を意 味 す る の で あ

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セヌ フ ォ社 会 にお け る夫方居 住集 団 の空 間概念 と実践

れ、 そ れ ぞ れ の 語 彙 が 空 間 的 意 味 と社 会 的 意 味 を 同 時 に もつ こ とが わ か る。 しか し、

問題 な の は、 こ の こ とが 日常 生 活 、 と くに経 済 的社 会 的実 践 に お い て複 雑 な事 態 と帰 結 を もた らす こ とを暗 示 して い る点 で あ る。

V居 住 空 間 ダ ア ラ の複 畳 性

以 上 の よ う な基 礎 的 概 念 定 義 をふ ま え る と、 ダ ア ラ の 内側 に、 そ れ よ り も下位 で も あ り上 位 で もあ る空 間概 念 バ(小 屋 と母 系 出 自集 団)と い う空 間が 広 が っ て い る とい う状 況 が よ り一 層 私 た ちの 理 解 を困 難 な もの にす る こ とが わ か る。 とい うの も「小 屋 」 や 「穀 倉 」 を意 味 す るバ が 、 国 境 を越 え た村 々 に拡 散 した親 族 関係 者 を抱 え 込 む母 系 出 自集 団 を意 味 す るか らで あ る。 この 理 解 の 困難 さ は、 上 記 の よ うに、 村 の 中 で の空 間 的 な基 礎 単 位 で あ る居 住 空 間 ダ ア ラの 構 成 要 素 の 内幕 に、 そ れ よ り も小 さな極 小 の 単 位 で あ るバ が 含 まれ て い る とい う事 実 に もとつ い てい る。 す な わ ち ダ ア ラや 村(カ ア 肋勉)以 上 に 大 き く、 集 落 と集 落 を空 間 的 に 超 え で て 国 境 も軽 々 と越 境 して しま

うほ どの 広 が りを もつ バ とい う集 団 が 屋 敷 地 ダ ア ラの なか に含 ま れ て い る とい う意 味 で 、 だ ま し絵 的 な要 素 が そ こ に含 まれ て い る。 この 点 は、 小 屋 バ と屋 敷 地 ダ ア ラ、 そ して 母系 出 自集 団 バ と父 方 夫 方 居 住 集 団 ダ ア ラ との 、 空 間的 範 躊 で か つ 集 団 的範 躊 の 意 味 論 的磁 場 が ひ と と ひ と との 結 合 の あ りか た に陰 画 的 に影 響 を与 え る こ とを意 味 す る 。

とは い え 、 この よ うな 一 瞥 して 複 雑 にみ え る集 団 編 成 の あ りか た は、 ア フ リ カで は 珍 しい こ とで は な い 。松 園 が 指摘 して きた よ う に、 ア フ リ カの 多 くの 社 会 で は、 居 住 集 団 や 家 族 が 範 型 と な っ て社 会 集 団 が 形 成 さ れ て きた と い う事 実 が あ るか らで あ る 。 松 園 の指 摘 は 次 の よ うで あ っ た 。

ア フ リカ の社 会 は た い て い ど こで もそ うだ が 、 重 要 な社 会 集 団 は家 族 をモ デ ル に して で きあ が っ て い る。 家 族 を ふ た まわ り、 み まわ り、 とだ ん だ ん 大 き くして い け ば、 そ れ が リネ ー ジ や ク ラ ン とな り、 つ い に は 民族 とい う大 家 族 集 団 が で き る とい う わ け だ。 グ シ イ語 で夫 婦 がす む家 、 つ ま り母 屋 の こ とを エ ニ ョンバ とい うが 、核 家 族 か らは じま っ て グ シ イ民 族 に い た る ま で の各 集 団 が すべ て エ ニ ョンバ と よば れ る の は、 グ シ イ た ち 自 身が そ う した か ん が え を もっ て い る こ とを しめ して い る7)。

う え に引 い た行 論 に あ っ て松 園が 主 張 して い る の は 、居 住 集 団 や そ の 内側 に あ る 家 屋 の現 地 語 彙 が 、 「民 族 」 ま で を も内 包 す る と き、 そ こ に は集 団編 成 にお け る独 自の 意 味 論 的 磁 場 が 形 成 さ れ る とい う点 に ほ か な らな い。 じっ さい松 園 は 、 グ シイ で 母屋 を意 味 す る 「エ ニ ョ ンバ 」 とい う空 間 的 な場 所 を 占 め る建 物 の含 意 が 、 そ の ま ま 「民 族 」 と い う大 規 模 な集 団編 成 ま で も意 味 す る こ とを発 見 した。 そ して セ ヌ フ ォに お い

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セ ヌ フ ォ社会 にお ける夫 方居住 集 団 の空 間概 念 と実 践 35

て も事 態 は全 く同 じ位 相 に あ る。 た だ セ ヌ フ ォ社 会 は、 松 園 の指 摘 す る グ シ イ の集 団 構 成 よ り複 雑 な問 題 を抱 え て い る。 とい うの も、 「バ 」 とい う、 小 屋 や そ こ に住 む母 子 関 係 か ら母 系 出 自集 団 の よ り広 い範 囲 の集 団 ま で を指 す 概 念 に、 ダ ア ラ とい う父 方 夫 方 居 住 集 団 と屋 敷 地 の 概 念 が 日常 生 活 で は重 な り合 うか らで あ る。 した が っ て以 下 で は これ らの 実 体 に近 づ くた め に具 体 的 な デ ー タ に よ っ て そ れ ぞ れ の テ ー マ を扱 っ て い きた い 。

Wバ にお け る民 俗 生 殖 観

この 節 で は、 バ にお け る民 俗 生 殖 観 をみ る。 小 屋 バ に い る母 親 が 赤 子 に授 乳 す る と きの 母乳 が 、 ま さ し く集 団 論 的 な意 味 で の バ の 、 つ ま り母 系 出 自集 団 の本 源 的 基 底 部 を意 味 す る 。 母系 出 自集 団 バ(=ネ ルバ ガ)に つ い て は こ こで 詳述 す る紙 幅 は な い が 、 この 点 を 簡 潔 に再 確 認 して お く。 調 査 村 に お い て、 母 系 出 自集 団 は、 共 通 の 女 性 始 祖 に基 づ い た 出 自集 団 、 す なわ ちあ る女 性 とそ の 女 系 子 孫 〃勿諺幽 罐 で構 成 され る集 団 で あ る と考 え られ て い る 。 男 系 子 孫 は、 一 世 代 限 り母 親naaの 母 系 出 自集 団 に 属 す る に と ど ま る。 ダ ア ラ の 男系 子 孫'の 翻 卿 は 一 世代 を超 え る ば あ い母 親 の 血縁 し か子 供 は継 承 で きな い の で 、 母系 集 団 に属 す こ と は ない 。 子 供 は母 親 の 「血sishaga」

を 「受 け継 ぐkOi'pliiw」が 、父 親'ooと の 血 の つ なが りは な い と認 識 さ れ るか らで あ る。

子 供 の視 点 か らみ れ ば、母 親 の 夫 との 血 の つ なが りは ない とみ な され て い る。セ ヌ フ ォ の民 俗 生 殖 観 の視 点 か ら見 た 場 合 、 血 縁 は、 「母 乳 ガァ6刎 に よっ て形 成 され る と考 え られ て い る た め、 乳 幼 児 に授 乳 をつ う じて血 の つ な が り を継 続 させ る 。

こ の点 は、 フ ェ リ ック ス ・コ ネが1989年 にパ リ社 会 科 学 高等 研 究 院 に提 出 した 「母 系 出 自集 団」 を 主題 と した博 士 論 文 に も指摘 され て い る8)。1980年 代 、ク ロー ド・フ ァ イ、 ジ ャ ン ・ジ ャマ ン、 ニ コ ラ ・サ ン ドジ ング レ、 ブ ライ マ ・ベ リ ドゴを は じめ と し た 社 会 科 学 高 等 研 究 院 を 中心 と した セ ヌ フ ォ研 究 に携 わ っ た ほ とん ど全 て の社 会 人類 学 者 が 、 独 自の あ り方 を見 せ る母 系 出 自集 団 ネ ルバ ガ を対 象 と して記 述 ・分 析 した こ

と は改 め て 注 目 に値 す る。 以 下 に、 た とえ ば、 近 年 セ ヌ フ ォ族 の母 系 出 自集 団 を主 題 と した 博 士 論 文 を提 出 した フ ェ リ ックス ・コ ネ の指 摘 を見 て お こ う。

母 系 出 自 集 団 バ アgba2aは 、 も っ ぱ ら 女 性 を 通 じ た 出 自filiationの 原 理 に も と つ い て 構 成 さ れ る 。 こ の 集 団 は 、 収 敏 す る 参 照 点7の アε〃06deconvergenceが 共 通 し 、 そ の 参 照 点 の 祖 先 を も つ 。 参 照 す べ き 祖 先 の す べ て の 子 供 た ち お よ び 母 系 の 系 列 を と お し て そ の 祖 先 か ら 下 る あ ら ゆ る ひ と た ち の 子 孫 が 、 「同 じ母 乳 を 飲 む ひ と

た ち ブ師ngoronyen」 で あ る 。 子 供 た ち を 産 む 能 力 が 、 成 員 補 充recrute〃zentの だ ひ と つ の 基 準 で は な い 。 お な じ く子 供 た ち に 授 乳 す る 能 力 が 必 要 で あ る 。 子 供 た ち の 父 親 が 誰 で あ っ て も 、 ひ と りの 女 性 か ら 産 ま れ て き た 娘 た ち の す べ て は 母 親 と

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セ ヌ フォ社 会 にお け る夫方居 住 集 団の空 間概 念 と実践

お な じ乳 を もつ 。 娘 た ち は、 先 代 の母 親 た ち か ら母 乳 を受 け と り、 同様 に く りか え して創 設 の 女 祖 に ま で さか の ぼ る こ とが で きる と こ ろ の 母 か ら母 乳 を 受 け とる の だ。・ ・ … 母系 出 自集 団 をあ らわ す の に、 「同 じ母 乳 の子 供 た ち」 とい う表現 が もっ と もひ ん ぱ ん に もち い られ る。 … … こ こ で は 「授 乳 」 が、 母 系 出 自集 団 の成 員 資 格 移 譲 にお け る権 限 につ い て 「出産 」 と同 じ意 味 合 い を もつ の だ9)。

この 引 用 で もわ か る よ う に、 彼 らの 主 張 にお い て 問 題 だ っ た の は、 そ れぞ れ の博 士 論 文 の 内 実 は 、 抽 象 的 な概 念 操 作 に よ る、 不 適 切 な分 析 概 念 の 適 用 に よ る翻 訳 の粗 雑 さ にあ っ た こ と は言 う まで も ない 。 そ こで は、 何 重 もの 意 味 が 充 填 され た空 間 的 で も 集 団 論 的 で もあ る概 念 、 そ れ も空 間 的 に大 き な単 位 と して の ダ ア ラの う ち に、 小 屋 と い う空 間 的 に は極 小 の 単位 で あ る バ が 、 ダア ラ をめ ぐって 集 合 す る ひ と び との 範 囲 の 何 倍 もの 規 模 に な る とい う点 、 更 に 、 民俗 生 殖 観 の視 点 か ら見 て、 「肉」 感 覚 的 に 直 接 的 な接 触 と う意 味 で距 離 が 考 え られ る 意 味 で も最 も極 小 とな る母 親 の 母 乳 が 、 母 系 出 自集 団 の本 源 的準 拠 点 とな っ て い る 点 が見 落 と され て い た こ とは 、 こ こで 強 調 して お こ う。

居 住 空 間 と して の ダ ア ラ

セ ヌ フ ォで は、 ひ とつ の 屋 敷 地 に と も に暮 ら して い る ひ とび とが 、 生 産 と消 費 の単 位 を に な い 、 生 計 の 基 礎 的 な あ つ ま り と して 日常 生 活 の空 間 を満 たす 。 理 念 的 に は、

図1の よ う な ひ とつ の屋 敷 地 を媒 介 に して結 びつ くひ とび との社 会 的集 団 を居 住 集 団 と呼 ぶ とす れ ば、 ダ ア ラが ま さ し くそ れ で あ る。 こ の よ う な居 住 空 間 に住 む ひ とび と は 、「何 某 の ダア ラ シ ェ ン○Odaalashε εn(○○ ダア ラの 人 た ち)」と表 現 され る。通 常 、 何 某 に入 る の は 、 家 長 も し くは屋 敷 長 と もい え る ダ ラ フ ォ ロdaalafoloで あ る。 この

職掌 に つ く もの は 、屋 敷 地 内 に住 む 最 年 長男 性 で あ る。 た と え ば、 図1の 居 住 空 問 に 暮 らす ひ とた ち全 体 を空 間 的 か つ 集 合 的 に 指 す さ い、 ダ ラ フ ォ ロが ゴ ク ル ゴ とい う

固有 名 を もつ 最 年 長 者 で あ る な ら、 「ゴ ク ル ゴ ・ダ ア ラ の ひ とた ちGokourOUgOdaala 曲 εεπ」 と呼 ばれ る。 た だ 、社 会 的脈 絡 に応 じて、他 の 年 長 者 の名 前 が 入 る場 合 もあ る。

た とえ ば、 ダ ア ラが 分 裂 しそ うな場 合 とか 、 ダ ア ラ経 営 を実 質 的 に取 りし き って い る 年 長 者 が い る場 合 に は、 そ の ひ との 固有 名 が 入 る だ ろ う。何 某 の ダア ラの ひ とた ち と い う集 団 を指 示 す る言 い 回 しは、 最 年 長 者 と寝 食 を は じめ と した 日常 生 活 を送 る屋 敷 地 を中 心 に住 む ひ とび とを表 現 して い る。

も ち ろん ダ ラ フ ォ ロ にあ た る最 年 長 男 性 が 、 もめ ご と、 離 別 、 長 期 の移 民 な どで ダ ア ラ シ ェ ン と居 住 空 間 を別 にす る場 合 、 ダ ア ラ を代 表 す る人 物 とは み な さ れ な くな る 局 面 もあ る。 た と えば 、 次 の よ う な場 合 で あ る。 あ る ダ ア ラ内 で 最 年 長 者 の男 性 が 死 去 し、 次 の 最 年 長 者 が 国 境 を また い で 隣 国 の コー トデ ィ ヴ ォ ワー ル に 出稼 ぎに行 っ た

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セヌ フ ォ社 会 にお け る夫方居 住 集団 の空 間概 念 と実践

■忌e

︒曾

■薯橿

, q9O ■薯簿

・マe

■野・自§e ■魅§§

・魅陥桿

§e.r

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セ ヌ フ ォ社会 にお ける夫 方居住 集 団の 空 間概 念 と実践

ま まそ こで 畑 を も ち生 計 を立 て る よ う に な って い る。 そ れ で も彼 は最 年 長 男 性 とい う 点 で ダ ア ラ を継 承 す る権 利 を保 持 す る。 そ の 場 合 、 と くに、 彼 が 遠 い 隣 国か ら仕 送 り で も して い れ ば 、 なお さ らの こ と ダ ア ラ シ ェ ン は、 彼 に ダ ラ フ ォ ロ に な っ て欲 しい か ら村 に帰 って きて 欲 しい と主 張 す る こ と もあ る。 しば しば この よ う な場 合 で も、 ダ ア ラ内 で もめ ご とが 起 こ り、 屋 敷 地 に住 ま う ダ ア ラ シ ェ ンが 分 裂 す る こ とが あ る。 こ う い っ た 例外 的 状 況 をみ る と、 ダ ラ フ ォ ロの 継 承 権 は、 決 して 完 全 な規 範 に したが っ て 実 行 され るわ け で は な く、 社 会 的 経 済 的 脈 絡 に依 拠 して い る とい う こ とが わか る。 ま た 、 最 年 長 者 で な く、 若 者 が 隣 国 や 首都 な ど に出 稼 ぎ に行 き、 この 屋 敷 地 に住 んで い な い 場 合 は、 ダ ア ラ シ ェ ン とい う 表 現 で 示 され る集 団 か らは 一 時 期 外 れ る こ と に な る 。 セ ヌ フ ォの か な り広 範 囲 にわ た る親 密 圏 の 中 心 で あ る婚 姻 圏 を離 れ て、た とえ ば 、 隣 国 コー トデ ィヴ ォ ワー ル の 内 戦 に反 政 府 勢 力 兵 士 と して 参 戦 した り、 あ るい は コ ー

ヒ■…も し くは カ カ オ の換 金 作 物 栽 培 地 で 長 年 定 住 生 活 を送 っ た り、70キ ロ ほ ど離 れ た 県庁 所 在 地 も し くは400キ ロほ ど離 れ た 首都 バ マ コで 商 売 に従 事 す る ひ とび と もい る が 、彼 らは ダア ラに戻 っ て くれ ば あ る特 定 の ダア ラ シ ェ ン とみ な され る。 た だ、 あ ま りに も長期 間 ダ ア ラ を離 れ て い れ ば彼 らの こ と を ダ ア ラ シ ェ ン と して み な さ ない 場 合 もあ る 。 そ の た め 、 ダア ラは 、 居 住 空 間 を と も に し、 生 産 と消 費 の 単 位 と して 農 作 業 を 共 に す る ダ ラ フ ォロ や ダア ラ シ ェ ン とい う ひ とび とが 暮 らす 空 間 を意 味 す る こ と が多 い とい え る 。

この よ うに見 て くる と、 ダア ラは 、 た しか に 日本 語 の 「家 族 」 とい う概 念 の も とに 記述 され る こ とが 可 能 で あ る よ うに も思 わ れ るだ ろ う。 しか し上 記 の よ う に、 ダ ア ラ は 、居 住 空 間 を離 れ、生 産 と消 費 の単 位 を異 にす る ひ とび とが 住 む空 間 とい う よ り も、

つ ね に 、さ ま ざ ま な もの や ひ と び と の配 置 に埋 め込 ま れ た場 所 で あ る点 を か らみ て も、

や は り近似 的 に も 「家 族 」 とは い え な い だ ろ う。 日本 語 の 「家 族 」 は、 か りに距 離 的 に離 れ て い て い よ う とい まい と、 実 際 の も し くは 仮 象 的 な 血 縁 な ど を通 じた 系 譜 的 も し くは心 理 的 な絆 に基 づ い て構 成 され る と一 般 的 に考 え られ て い る。 この 点 か ら見 て も、村 とい う 限定 され た 空 間 に縛 られ て い る ダ ア ラ を、 「家 族 」 とい う概 念 に よ っ て 記 述 す る こ とは む しろ現 象 を 歪 曲 す る こ とに しか な らな い 。 した が って 、 上 記 の 理 由 に よ り、ダ ア ラ を、ひ と まず そ の語 彙 で 指 し、そ の 内実 を埋 め て い くこ とで代 替 した い 。

宗 教 的水 準 で見 た と きの ダ ア ラ も一 瞥 して み よ う。 図1の よ う に、 ダ ア ラ は、 夫 の 小 屋 ポ ウ ・バPowugbaを 中 心 と して 、 時 計 回 りに 第 一 夫 人 の 小 屋 、 第二 夫 人 の小 屋 が 並 ぶ 。 多 くの 場 合 、 そ の 夫 の小 屋 の す ぐ隣…に呪 物 小 屋yasungokPaagiが あ り、 供 犠 な ど もこ こ で お こ な う。また 、夫 の小 屋 か ら遠 く離 れ て い な い 場 所 に人 が 多 く集 ま っ て 踊 っ た りす る こ との 出来 る儀 礼 場 カ フ ゴkafuguが あ っ て、 埋 葬 儀 礼 、 葬 送儀 礼 や 婚 姻 儀 礼 の供 犠 な どが そ こで 執 行 され る。 中 心 に は 中庭tako20ijOが あ り、 葬 送儀 礼 な どで集 っ た 人 た ち は こ こに 集 まる 。

とは い え 、宗 教 的水 準 で見 た と きの ダ ア ラは 、 供 犠 をお こな う祭 祀 空 間 と して 機 能

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セ ヌ フ ォ社会 にお ける夫 方居 住集 団 の空 間概念 と実 践 39

す る こ と以 外 は、 祖 霊 祭 祀 を執 行 す る 唯一 の集 団 で は な い 。 む しろ逆 で あ る 。 なぜ な ら、 祖 霊 祭 祀 を司 る集 団 は、(バ の 最 大 の 出 自集 団 で あ る)ネ ル バ ガ だ か らで あ る。

上 記 の よ う に、 ダ ア ラ 内 で の父 系 親 族 とそ の妻 た ち を含 め る と60〜70名 を超 え る ほ どの 大 規 模 な親 族 集 団 とな る とい うの に、 ダ ア ラ は 、 父系 出 自集 団 の よ うに 一 つ の祖 先 を共 通 要 素 とす る集 団 を形 成 す る わ け で は な い 。 そ れ ど ころ か 、セ ヌ フ ォ社 会 で は、

婚 後 居 住 規 制 を父 方 夫 方 居 住 とす る た め に共 通 の祖 先 を 同 じ くす る 母系 出 自集 団 が あ ら ゆ る地 域 に分 散 す る た め、 ダ ア ラ 内 の居 住 集 団 の祖 先 は ほ とん どの場 合 異 な る 。 こ の よ う に ダ ア ラ は、 異 な る ネ ルバ ガ の成 員 に よ っ て構 成 さ れ て お り、 「器 」 の よ う に、

出 自の 異 な る ひ と び と を柔 軟 に 内 に含 み こ み なが ら、 社 会 的 お よび経 済 的統 一性 を維 持 す る。 こ の 柔 軟 性 が ダ ア ラの ひ とつ の 性 質 で あ る 。 た と え ば、 全 成 員 が 、50〜70 人 に も な る ダ ア ラ は、 そ れ だ け多 くのそ れぞ れ異 な る ネ ルバ ガ成 員 を抱 え る こ とに な るが 、 そ れ で も生 産 と消 費 の 単 位 と して の統 一 性 を もつ 。 大 規 模 な ダ ア ラ は、 必 然 的 に生 産 と消 費 の 単 位 と して の統 一 性 の確 保 が 困 難 と な る。 な か で も ダ ア ラ の な か に、

い くつ か の複 婚 家 族 が い くつ も存 在 す る場 合 で あ る。 食 事 な どの共 食 す る集 団が 夫 を 中心 とす る複 婚 家 族 を軸 に構 成 され 、 個 別 の 家 族 単 位 の農 地 を耕 作 す る場 合 、 ダ ア ラ は もは や 日本 の イ エ の よ う な ま と ま った 経 営 単 位 と して機 能 す る わ け で は な い か らで あ る 。

V皿 ダア ラの 「団体 」 的性 格

以 上 の節 の記 述 をふ まえ て確 か め て お くべ きポ イ ン トは、 ダ ア ラ とバ の 空 間 と集 団 に お け る意 味論 的両 義 性 が 、居 住 空 間 にお け る現 実 的 な複 畳 性 と人 的 結 合 にお け る複 畳 性 を 同 時 に惹 起 す る 点 に あ る 。拙 速 に い えば 、 この 二 重 の 複 畳性 が 、 と くに換 金 作 物 栽 培 を め ぐる 問題 とそ こで の労 働 力 調 達 とい う経 済状 況 下 で い か に人 的 結 合 と空 間 利 用 を複 雑 化 す る の か とい う問題 に つ な が っ て くる 。 マ リ繊 維 開発 公社 に貸付 の 単 位 と して組 み 込 ま れ、 そ の意 味 で の法 的 人格 と して指 名 され た ダア ラ にお い て 、擬 制 商 品 に もな り うる労 働 力 を労 賃 無 しに い か に動 員 す る の か とい う問題 が 、 この複 畳性 に お け る集 合 的範 躊 の用 法 と実 践 につ な が っ て くる だ ろ う。

さ て近 年 で は、 と りわ け定 着 化 も進 行 し、 さ らに は マ リ繊 維 開発 公 社 や マ リ共和 国 政 府 の 行 政 制 度 に村 落 が 組 み 入 れ られ て い る が ゆ え に、 法 的 人格 と して の村 落 の 共 同 体 的 特 性 は、 以 前 に もま して強 くな っ て い る。 そ れ ゆ え に ダ ア ラが村 落 内 の法 人 的性 格 を帯 びた 社 会 構 成 単 位 とな っ て い る。 村 の裁 判 や 、 寄 り合 い、 裁 定 、 あ る い は農 耕 供 儀 を は じめ と した 諸 儀 礼 に は、 基 本 的 に ダ ア ラ を代 表 して、 居 住 集 団長 ダ ラ フ ォロ も し くはそ の 代 理 人 が 一 人 必 ず 参 加 す る こ とに な っ て い る。 村 落 の農 耕 供 儀 、 金 鉱 供 儀 、 呪 誼 も、 ダ ア ラ毎 にニ ワ トリ、 羊 、 コ ー ラ の実 を は じめ と した費 用 を捻 出す る の が 原 則 的 な規 範 で あ る 。 そ の 場 合 、 最 小 規 模 の核 家 族 的 ダ ア ラ も、70〜80人 を超 え

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40 セヌ フ ォ社 会 にお ける夫 方居 住集 団 の空 間概念 と実践

る規 模 の 拡 大 家 族 ダ ア ラ も ひ とつ の 法 的 人 格 を もっ た単 位 と して 同等 に扱 わ れ る。

この よ う に原 則 的 に は、 ダ ア ラが 村 落 を構 成 す る人 的結 合 の基 礎 単 位 で あ る と認 識 され て い るの は疑 い え ない 。 反 対 に、 バ は、 人 的 結 合 と して の規 模 や そ の社 会 的 も し くは 経 済 的 影 響 力 が 大 き くな って も、 村 落 内 で の法 人 的 な社 会 的 構 成 単 位 に は な りえ な い 。 あ くま で村 落 で は、 ダ ア ラの み が 、 外 部 に対 して 単 一 の法 的 人 格 と み な され 、 そ の よ うに居 住 空 間 に 住 み 、 生 産 単 位 と な って い る ひ と び と を代 表 す る もの と してふ る ま う こ とが 許 容 され る よ うな 集 団 と な る。 また 、 ダ ア ラ は、 供 犠 な どの 居 住 集 団 内 に 限 定 され た儀 礼 執 行 の た め の基 底 的 集 団 と して 、 あ る種 の 宗 教 生 活 の 基 本 単 位 を な して い る 。 ゆ え に 、個 別 の ダ ア ラは 、 きわ め て 自律 的 な 集 合 的 単 位 と して 日常 の あ ら ゆ る実 践 を組 織 化 す る とい う 「団体 」 的性 格 を もつ 。 た だ し、こ の社 会 の特 徴 と して 、 村 落 内 に お い て 、 ダ ア ラ の み が 集合 的 単位 を形 成 して い る よ う に見 え るが 、 他 方 の ダ ア ラ 内 の集 団 的単 位 で あ るバ は、 最 小 母 系 出 自集 団 と して ひ とび とに 認 識 され て い る こ とは忘 れ て は な らな い。

以 上 の よ う な事 態 を理 解 す る た め に、「団体 」 的性 格 を有 す る居 住 集 団 と して の 「 エ 」 につ い て、 レヴ ィ=ス トロ ース の 「イエ 」 論 を め ぐる議 論 を 簡単 に検 討 す る と便 利 で あ る。 こ こで 確 認 す るべ き は、 ダア ラが 、① 村 の基 礎 単 位 、② 生 産 と消 費 の 単 位 、

③ マ リ繊維 開 発 公社 か らの 貸付 の 単 位 、 ③ 法 的 人 格laPersonnemoraleの 単 位 、 ④ 儀 礼 の 単位 、⑤ 財 産 の 共 有 単 位 、 と な っ てい る点 で あ る。

まず 「イ エ 」 につ い て の レ ヴ ィ=ス トロー ス に よ る定 義 を確 認 しよ う。

リ ニ ー ジ や ク ラ ン に 比 定 し て 、 次 の よ う な は っ き り と わ か る 諸 特 徴 を 有 す る 。 列 挙 し て み よ う 。 イ エ と は 、 法 人 〃nePersonnemoraleで あ り、 財 産 を 保 有 し、 そ の 財 産 は 、 物 質 的 〃zate'rielsであ る と 同 時 に 非 物 質 的immate'rielsな も の か ら な る と こ ろ の も の で あ る 。 ま た 、 こ の 法 人 は 、 名 前 、 財 産 、 役 職 を 現 実 的 な も し く は 擬 制 的ictiveな 系 列 に 沿 っ て 移 譲 す る こ と で 永 続 し、 こ の 連 続 性 が 親 族 も し く は 姻 族 の こ と ばlanguageで 言 い 表 さ れ う る と い う条 件 の も と で 正 当 で あ る と み な さ れ 、 も っ と も し ば し ば こ の 二 つ の 両 方 に よ っ て 言 い 表 さ れ る こ と で 正 当 と み な さ れ る 。 (.̲.引 用 者 略)(居 住7観 鹿 πcθと 出 自filiationと い う)解 決 不 可 能 な 理 論 的 方 針 を 乗 り越 え る 試 み が 、 こ の イ エlamaisonな の だ10)。

以 上 の 引 用 を 閲 し て み る と 、居 住 集 団 の 単 位 で あ る ダ ア ラ を 法 的 人 格 と み な す の は \ 人 類 学 の 議 論 の う ち で 展 開 さ れ た レ ヴ ィ=ス トロ ー ス の イ エla〃 励30〃 論 の 学 説 に 依 拠 し て い る よ う に も み え る だ ろ う 。 と い う の も ダ ア ラ は 、「財 産 を 保 有 し」、財 産 が 「物 質 的mate'rielsで あ る と 同 時 に 非 物 質 的immate'riels」 で も あ る し、 「名 前 、 財 産 、 役 職 を 現 実 的 な も し く は 擬 制 的77ctiveな 系 列 に 沿 っ て 移 譲 す る こ と で 永 続 」 す る か ら で あ る 。

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セ ヌ フォ社 会 にお け る夫方 居住 集 団の空 間概 念 と実践 41

だ が 、 森 山 工 もマ ダ ガス カル の シハ ナ カ とメ リナ の 「イエ 」 を対 比 させ て指 摘 して い る よ う にll)、セ ヌ フ ォ の場 合 も 同 じ くレ ヴ ィ=ス トロ ー ス の定 義 に は適 合 し な い 部 分 が あ る。 そ の た め 一 概 に、 ダ ア ラ を レヴ ィ=ス トロ ース の イエ 論 が 言 う とこ ろ の 法 人 と して拙 速 に捉 え るの で は な く、 こ こで は彼 の 議 論 を発 見 学 的 概 念 と して用 い た

い12)。

た だ セ ヌ フ ォに お け る ダ ア ラ は、 森 山の 指 摘 す る シハ ナ カや メ リナの よ うに、 イエ の永 続性 の 物 質 的 基 底 部 と な る墓 を有 す るわ けで は ない 。 墓 な どの 永 続 性 の 物 質 的基 底 部 が存 在 す る か ら こそ 、 非 物 質 的 な力 が そ こ に込 め られ る とす れ ば、 そ の基 盤 が か け て い る 。 「墓 に物 質 化 さ れ る祖 先 」や 「墓 に象 徴 され る祖 先 の 永 遠性 の 次 元 」13)など、

セ ヌ フ ォに の ぞ む こ とは で き ない 。 墓 だ け で は な く、 人 が 逝 去 す る と しば しば建 物 と して の小 屋 バ や家 財 道 具 は 「死 者 の稼 れ」の た め 使 用 され ず 打 ち捨 て られ る。 セ ヌ フ ォ に と り物 質化 され る財 産 移 譲 の レベ ル で 重 要 なの は、 ダ ア ラ とバ と を 同時 に法 的 人 格 と して扱 うか の ご と く、そ れぞ れ の集 団 を代 表 して タ カ ラ ガ イ、聖 骸 布 、トウ ジ ン ビエ 、 金 銭 が や り と り され る 点 に あ る 。 これ らの 婚 姻 と葬 送 儀 礼 で 突 出 して や りと りされ る

タカ ラ ガ イ に象 徴 化 され る永 遠性 の 流 れ が 、 彼 らの そ れ ぞ れ の 集 団 を団 体 と して 凝 集 させ るた め の あ る種 の力 を 帯 び させ て い る と もい え る[溝i口2011a、2011b、2012a、

2012b、2012d]。 そ の 中 で も と くに タカ ラ ガ イや 聖 骸 布 が 、 この 婚 姻 儀 礼 や 葬 送 儀 礼 な どの集 合 的 契約 を取 り結 ぶ た め特 別 な 位 置 づ け を与 え られ 、 そ の 「もの 」 を与 えた

り受 け とっ た りす る 主体 が ダ ア ラ とな る 。

1Xバ の 「団体 」 的性 格

八 節 で示 した よ うに 、 な る ほ どバ は 、村 落 内 で は 、 法 的 人格 や 大 きな 経 済 単 位 、 儀 礼 単 位 を構 成 しな い し、 空 間 的 な居 住 の 単位 で す らな い 。 しか し、 居 住 や 生 産 ・消 費 の単 位 と して 固定 的 で永 続 的 な(出 自集 団 の よ うな)集 団 を形 成 で きず 、 不 断 に生 成 と消 滅 に さ らさ れ て い る、 変 動 的 で過 程 的 な存 在 と して の ダア ラ とは 対 照 的 に、 ダ ア ラ の 内側 に存 在 す る集 団バ は、離 接 的 な出 自集 団 ネ ルバ ガ に連 動 す る と き、特 有 の 「 体 」 的性 質 を帯 び た、持 続 的 で村 落 や 国 境 を も越 え る 自律 的 な親 族 集 団 と して現 れ る。

な る ほ ど、 バ を基 礎 付 け る ネ ルバ ガ は、 墓 石 の よ うな 空 間 的 に 固 定 され て い る 可視 的 な 「主 体 の 位 置 を指 定 す る ア イ デ ンテ ィ テ ィ装 置 」14)は もた な い が 、 母 系 出 自集 団 長 ネ ルバ ガ フ ォ ロが 所 有 す る死 者 を葬 る た め の布 を入 れ た箱 、籠 に入 っ た タ カ ラ ガ イ、

そ して呪 物 シ セ レゲ と して甕 の破 片 な どに物 質化 し象 徴 化 され る祖 先 と集 団 の 連 続性 に よ り、 特 異 な集 合 体 と して顕 現 す る。 こ こ で簡 単 に定 義 す る と、 バ とは 、本 来 、 そ の 集 団 内 部 で の 通 婚 が 禁 止 され 、 出 自集 団 長 ネ ル バ ガ フ ォロ が 法 的 人 格 を代 表 して 、 婚 姻 儀 礼[溝 口2011a]、 葬 送 儀 礼[溝 口2012a、2012d]、 浄 化 儀 礼[溝 口2012d]、

夢 の 解 釈 や ト占[溝 口2010b、2012e]な どに携 わ り、 集 団 を物 質 的 に表 現 す る い く

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セ ヌフ ォ社 会 にお け る夫方居 住 集団 の空 間概 念 と実践

つ か の 「もの」 を所 有 す る 点 で 、社 会 人類 学 の語 彙 を用 い れ ば 、 婚 姻 規 制 を もつ 外 婚 的母 系 出 自集 団 とい うこ とが で きる 。 親族 関係 名称 を示 した 図2で は 、 黒 三 角 ▲ と黒 丸 ● に よっ て母 系 出 自集 団 の範 囲 を 理念 的 に示 した 。 記憶 され る世 代 深 度 は 、 深 くて 4〜5世 代 を超 え ない 。 この 集 団 は、居 住 集 団 ダ ア ラ と村 落 カ ア(Ka2a)よ り も上 位 で、

民 族 集 団 よ り も下位 に あ り、 人 的結 合 の分 類 に お け る種 操作 媒体 とい え るだ ろ う。 こ の点 で、世 代 を経 る ご とに生 成 、分 裂 、消 滅 して い く社 会 過程 と して の ダア ラ と は は っ

き り と した対 照 を な して い る 。

以 上 、 ダ ア ラ とネ ルバ ガ の対 照 的 な 関係 性 を 指摘 した 。 出 自集 団 の よ うな 永 続 的 な 社 会 的凝 集 力 を帯 び た社 会 範 疇 で も集 団 で もな い ダ ア ラは 、 た しか に固 有 の屋 敷 地 を もっ て共 住 し、焼 畑 農 地 を経 営 し、 農作 業 を 中 心 に 組織 化 され 、 生 産 をお こ な う経 済 単 位 で あ り、 更 に農 耕 儀 礼 、 雨 乞 い儀 礼 な ど を実 践 す る点 に 「団体 」 的 特 徴 が あ る。

だ が ダ ア ラ に お け る こ の種 の集 団 的側 面 の特 質 は 、 バ の そ れ と異 な って い る。 ダ ア ラ は、 あ る期 間 の 間 だ け い くつ か の家 屋 と小 屋 の 集 ま りで あ る屋 敷 地 とい う空 間 を 占有 す る過 程 的存 在 と して、 個 人 の ラ イ フ サ イ ク ル に従 っ て 生 成 、 分 裂 す る集 団 なの で あ る。 とは い え、 共 示 的 な水 準 で見 た場 合 は 、 明確 な 「団体 」 的性 格 を持 つ 法 的 人 格 で あ り、 村 落 を構 成 す る重 要 な単 位 と して存 在 す る の で あ る 。 この 点 で 、 バ と明確 な コ

ン トラ ス トを な して い る の が わ か る 。

X空 間論 に お ける存 在 論 的 転換

以 下 で は、 も う一 つ の課 題 で あ っ た 、居 住 空 間 に お け る事 物 の 配 置 の 問 題 を検 討 す る。 と くに 第 二 節 の空 間 論 をふ ま え て 、 「ダ ア ラ」 とい う居 住 空 間 にお け る ひ とび と のふ る ま い や行 動 の変 化 を記 述 ・考 察 す る場 合 、 人類 学 に お け る 空 間 論 の新 た な議 論 にふ れ て お く必 要 が あ る。 なぜ な ら、居 住 空 間 の 内部 や外 部 を取 り囲 む動 植 物 、道 具 、 建 物 、 そ して そ れ らに埋 め 込 ま れ た ひ と とひ と との 関係 性 を新 た な 「イ エ 」 論 の 視 点 で記 述 ・考 察 す る に あ た っ て、 空 間論 に お け る 人類 学 の存 在 論 的 転換 の 議 論 を検 討 す る こ とで新 た な視 点 か ら居 住 空 間 や居 住 集 団 を考 察 す る こ とが で きる か らで あ る。

ひ とび との生 活 に埋 め込 ま れ た 時 空 間 は、 人 間 が作 り出 した建 物 や 道 具 、 あ るい は 動 植 物 な どの 「もの」 に 固定 さ れ る。 だ と して も、 そ れ らは常 に不 安 定 な か た ち で し か な い。 そ の不 安 定 な か た ち の あ りか た を、 人 間 と非 人 間 との存 在 論 的 関係 性 と して と らえ なお した近 年 の研 究 が あ る。 フ ィ リ ップ ・デ ス コラ の そ れ で あ る 。八 節 で ふ れ た レヴ ィ=ス トロ ー ス の 「イ エ 」 論 の 批 判 的 乗 り越 え に成 功 し た デ ス コ ラ は、 人類 学 的空 間論 に対 して新 た な視 点 をつ け くわ え た 。 こ こ で 、 セ ヌ フ ォの居 住 空 間 を考 え る上 で そ の 空 間 論 にお け る存 在 論 的 転 換 の議 論 に検 討 を加 え て お く と便 利 で あ る15)。

なぜ な ら、 居 住 空 間概 念 で あ りかつ 父 方 夫 方 居 住 集 団 を 同 時 に 意 味 す る 「ダア ラ」 の 内部 に い る ひ とび とは、 動 植 物 や道 具 類 に 囲 ま れ て お り、 そ れ に対 す る そ の つ どの 実

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