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する指導の手引き でも高校生への食育については具体的にふれられていない. 高校進学率 ₉₈.₄%( 平成 ₂₅ 年度学校基本調査 ) である高校生は, 社会に巣立つ前に, 学校教育で一斉に健康に対する自己管理能力を養うことができる最後の機会である. 健康日本 ₂₁( 第二次 ) がめざす次世代の健康

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₂₆ Copyright © 2015 The Japan Society of Home Economics

資 料

高校生の体型認識と生活習慣

野中美津枝

*

Survey on Body Perception and Lifestyle Habits of High School Students

Mitsue NONAKA₁*

This survey identifies the body perception and lifestyle habits of high school students from the results obtained in a questionnaire survey of ₁₂₅₄ such students. High school boys had a body perception which was almost in agreement with BMI. In contrast, high school girls had a body perception which was fat rather than BMI; ₉₀.₉% of normal girls desired to be thinner, and even ₄₈.₁% of thin girls. A difference was found between the boys and girls in their diet method, the boys tending to diet by exercise, while the girls applied dietary restriction. Skipping meals, lack of sleep, lack of exercise, and stress resulted in poor health. Most high school students who ate three meals every day and did not feel stress were healthy.

Key words: body perception 体型認識,lifestyle habit 生活習慣,health condition 健康状態,high school

student 高校生,gender difference 男女差 所属機関名: 1茨城大学教育学部 1Faculty of Education, Ibaraki University, Ibaraki, 310-8512 原稿受付:平成26年10月17日  原稿受理:平成27年 5 月 8 日 * To whom correspondence should be addressed  E-mail:nonaka@mx.ibaraki.ac.jp

1.緒 言

 「₂₁世紀における国民健康づくり運動(健康日本₂₁)」 は,生活習慣病の予防,健康長寿の延伸を目的に,平成 ₁₂年に平成₂₂年度を目途とした具体的な数値目標を提示 して進められてきた.しかしながら,平成₂₃年の最終評 価では,目標に達したのは全体の₁₆.₉%にとどまり,メ タボリックシンドロームを認知している国民の割合は増 加しているものの,₂₀~₆₀歳男性の肥満者(BMI≧₂₅) の割合は ₃ 割を超えている₁).一方で₂₀歳代女性のやせ ている者の割合も依然として解消されていない.そのた め,平成₂₅年からスタートした「健康日本₂₁(第二次)」 では,将来を担う次世代の健康を支えるために,健康な 生活習慣を有する子どもの増加と適正体重の子どもの増 加が目標として挙げられている₂).つまり,これからの 健康教育において,生涯にわたる適正体重の自己管理能 力の育成が生活習慣病予防のために重要な課題となって いる.  生活習慣病予防のための体重管理は,消費エネルギー と摂取エネルギーのバランスが大切であり,身体活動量 に見合ったエネルギー摂取,栄養バランスのとれた食事 が重要である₃).しかしながら,体重管理は自己の体型 認識や体型願望に左右され,大学生の体型不安と食行動 との関連について,女子ではやせ願望が食べ物を選んで 摂取したり量を控えたりといった摂食行動に影響するこ とが明らかになっている₄).平成₂₀年度の国民健康・栄 養調査では,体型認識について取り上げられ,₂₀歳代女 性は₂₂.₅%がやせ体型(BMI<₁₈.₅)で,さらに本人が 理想と思っている体型(希望体型の BMI)も平均₁₉.₀で 若い女性の痩身志向が強いことが指摘されている₅).先 行研究では,女子大学生の体型やダイエットに関する調 査は多く₆)~₈),不適切なダイエットや食行動の異常が隠 れ肥満(正常体重肥満)に関係があることが指摘されて いる₉).また,₂₀歳代で問題になっているダイエットや 肥満につながりやすい食生活の是正対象は,高校生の時 代に始まる者が多いことが明らかになっている₁₀)  現在,学校における健康教育は,生活習慣病予防の視 点から平成₁₇年に食育基本法が制定され,学校教育活動 全体で食育に取り組むこととなっており,食育を中心に 進められている.そのため,小・中学校では,栄養教諭 の配置も進められており,文部科学省より「食に関する 指導の手引き」が出され,各学校で食の指導に係る全体 計画を作成することとなっている₁₁).しかしながら,高 校では昼食指導もないため食育は進んでおらず,「食に関

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(343) ₂₇ する指導の手引き」でも高校生への食育については具体 的にふれられていない.高校進学率₉₈.₄%(平成₂₅年度 学校基本調査)である高校生は,社会に巣立つ前に,学 校教育で一斉に健康に対する自己管理能力を養うことが できる最後の機会である.「健康日本₂₁(第二次)」がめ ざす次世代の健康を支えるためには,高校生の食生活だ けでなく,体型,運動,休養,ストレスと健康状態との 関係についても今後検討していく必要がある.  そこで,本研究では,高校生の体型認識や生活習慣と 体型,健康状態を把握して,高校生への健康教育の方向 性を検討することを目的とする.

2.方 法

(1)調査時期及び調査対象  平成₂₃年 ₆ ~ ₇ 月,徳島県 A 高校(₉₂₂名),愛媛県 B 高校(₃₄₀名),合計₁,₂₆₂名に体型認識と生活習慣,健康 状態に関する質問紙調査を実施した.男女で比較するた め,性別が未記入だった ₈ 名を除き,₁,₂₅₄名(男子₅₉₂ 名,女子₆₆₂名)を対象とした(有効回答率₉₉.₄%).対 象者の学年の内訳は, ₁ 年生₄₁₅名, ₂ 年生₄₂₁名, ₃ 年 生₄₁₈名で,平均年齢は約₁₇歳である.調査は無記名自記 式で,調査結果は統計処理し個人が特定されないことを 記載し,身長・体重等の記入内容が回収時見えないよう に個封筒に入れるなど配慮した.なお,本調査について は,茨城大学の倫理審査委員会の承認を得ている(承認 番号₁₄₀₁₅号). (2)調査内容と分析方法  調査内容は,①BMI,②体型認識,③ダイエット状況, ④生活習慣,⑤健康状態,以上 ₅ 点について調査し,分 析した.  ① BMI については,記入された身長及び体重から[体 重 kg/(身長m)₂]で求め,体型については,日本肥満学 会の診断基準(₂₀₁₁年版)で使用している₁₈.₅未満「や せ」,₁₈.₅以上₂₅未満「普通」,₂₅以上「肥満」を用いた. 体重については,現実の体重と希望の体重を記入しても らい,平成₂₀年度の国民健康・栄養調査にならい,現実 の体重から算出した現実体型の BMI と希望体重から算出 した希望体型の BMI を比較した.②体型認識について は,自分の体型意識と体型願望を尋ねて,BMI の体型別 に分析した.③ダイエット状況については,先行研 究₆)₇)₁₂)の質問項目を参考にし,ダイエット経験とダイ エット方法,ダイエットによる健康障害を尋ねた.ダイ エット経験のある者にダイエット方法をチェック式で尋 ね,ダイエット内容で「運動」「食事」「その他(自由記 述)」に分類し,さらに実施しているダイエット方法で 「運動のみ」「運動+食事」「食事のみ」「その他のみ」に 分類して分析した.ダイエットによる健康障害について は,ダイエット経験者で体調を崩した経験がある者に, 該当する自覚症状をチェック式で回答してもらった.④ 生活習慣については,欠食状況,食べるスピード,就寝 時間,運動時間,ストレスについて尋ねて,体型との関 連を分析した. ₁ 日の欠食状況については,朝食,昼食, 夕食をそれぞれ「毎日食べる」「食べないことがある」 「食べない」の ₃ 件法で尋ね,「食べないことがある」「食 べない」と回答した者を欠食習慣があるとした.ストレ スについては,「よく感じる」「時々感じる」「めったに感 じない」「全く感じない」の ₄ 件法で尋ね,「よく感じる」 と回答した者を「ストレスあり」,「めったに感じない」 「全く感じない」と回答した者を「ストレスなし」とし た.⑤健康状態については,高校生や大学生の健康状態 に関する先行研究₁₀)₁₃)₁₄)の質問項目で使用されている₁₂ 項目の体調不良状況について,該当するものにチェック をしてもらった.₁,₂₅₄名の₁₂項目の体調不良状況は表 ₁ ,体調不良該当数の度数分布は図 ₁ に示す通りであっ 表 1 .体調不良状況(n=1,254) 人(%) 体調不良項目 該当者 非該当者 ₁ 体だるい ₇₂₅(₅₇.₈) ₅₂₉(₄₂.₂) ₂ 何もやる気がしない ₄₅₇(₃₆.₄) ₇₉₇(₆₃.₆) ₃ イライラする ₄₄₈(₃₅.₇) ₈₀₆(₆₄.₃) ₄ 立ちくらみ ₄₂₄(₃₃.₈) ₈₃₀(₆₆.₂) ₅ 物事に集中できない ₄₁₇(₃₃.₃) ₈₃₇(₆₆.₇) ₆ 頭痛 ₂₈₉(₂₃.₀) ₉₆₅(₇₇.₀) ₇ 便秘 ₁₅₀(₁₂.₀) ₁,₁₀₄(₈₈.₀) ₈ 胃痛 ₁₁₅(₉.₂) ₁,₁₃₉(₉₀.₈) ₉ 冷え症 ₁₁₅(₉.₂) ₁,₁₃₉(₉₀.₈) ₁₀ 下痢 ₁₁₀(₈.₈) ₁,₁₄₄(₉₁.₂) ₁₁ 夜眠れない ₉₉(₇.₉) ₁,₁₅₅(₉₂.₁) ₁₂ 食欲不振 ₆₈(₅.₄) ₁,₁₈₆(₉₄.₆) 図 1 .体調不良該当者の度数分布 173 243 243 208 142 105 71 36 18 7 5 0 3 0 50 100 150 200 250 300 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (n=1254) 人 個

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(344) ₂₈ た.体調不良の該当数が ₀ 個の者を「健康群(n=₁₇₃ 人)」, ₁ ~ ₃ 個の者を「軽度な体調不良群(₆₉₄人)」, ₄ 個以上の者を「重度な体調不良群(₃₈₇人)」として,健 康状態と生活習慣の関連について分析した.  なお,分析に当たっては,EXCEL 統計Ver. ₇.₀を用い, 項目間の検定には,母比率の差の検定,母平均の差の検 定を行い,統計的有意水準は ₅ %以下とした.

3.結 果

(1)体型と体型認識 1)現実体型と希望体型  対象者の身体特性について自記された身長と体重をみ ると,男子₅₈₄名の平均は身長 ₁₆₉.₈ cm,体重 ₆₀.₆ kg, 女子₅₉₇名の平均は身長 ₁₅₇.₆ cm,体重 ₅₀.₉ kg で,日 本人の食事摂取基準(₂₀₁₅年版)で示されている₁₅~₁₇ 歳の参照体位(平均的な身長,体重;男子 ₁₇₀.₁ cm, ₅₉.₇ kg,女子 ₁₅₇.₇ cm,₅₁.₉ kg)₁₅)とほぼ一致してい た.自記された身長と体重から算出した BMI の平均は, 男子₂₁.₀,女子₂₀.₅で,男女とも標準体重の指標とされ る BMI=₂₂に近い.BMI による体型分類で男女を比較し ても有意差はなく,普通体型とされる割合は男女とも ₇₆%を占め,肥満者も男子₈.₀%,女子₆.₀%と少なかっ た.  現在の身長における希望体重を尋ねて,現実体型と希 望体型を比較した.身長,体重,希望体重をすべて回答 していた者(男₅₃₇名,女₅₆₉名)について,男女別に現 実体型の BMI 平均と希望体型の BMI 平均を求め,対応 のある母平均の差の検定を行った結果を表 ₂ に示す.男 子は,現実体型の BMI と希望体重から算出した希望体型 の BMI の間に有意差はみられなかったが,女子では,現 実体型の BMI ₂₀.₅±₂.₄₄ ㎏/m₂ に対し,希望体重から 算出した希望体型の BMI は ₁₈.₆±₁.₆₃ ㎏/m₂ で有意差 (p<₀.₀₁)がみられた. 2)体型意識と体型願望  BMI による体型別体型意識と体型願望を表 ₃ に示す. 男子は,自分の体型について,やせの者は「やせてい る」,普通の者は「普通」,肥満者は「太っている」と 思っている者が多く,現実の体型と体型意識が一致して 表 2 .現在の身長における現実体型と希望体型 (mean±S.D.) 身長 体重 BMI 有意差 現実 希望 現実体型 希望体型 男子(n=₅₃₇) ₁₆₉.₈±₅.₅₂ cm ₆₀.₄±₉.₁₂ kg ₆₀.₉±₇.₄₅ kg ₂₀.₉±₂.₈₂ kg/m₂ ₂₁.₁±₂₀.₆ kg/mn.s. 女子(n=₅₆₉) ₁₅₇.₅±₅.₂₂cm ₅₀.₉±₆.₇₁ kg ₄₆.₃±₄.₉₁ kg ₂₀.₅±₂.₄₄ kg/m₂ ₁₈.₆±₁.₆₃ kg/m** (t 検定)**p<₀.₀₁ 表 3 .BMI による体型別体型意識と体型願望 人(%) 男 子 体型意識 体型願望 やせている 普通 太っている やせたい 現状でよい 太りたい 体   型 やせ(n=₉₀)  ₆₁(₆₈.₇)  ₂₄(₂₆.₇)   ₅(₅.₆)   ₈(₈.₉)  ₃₉(₄₃.₃)  ₄₃(₄₇.₈) 普通(n=₄₃₉)  ₉₂(₂₁.₀) ₂₂₉(₅₂.₂) ₁₁₈(₂₆.₉) ₁₂₂(₂₇.₈) ₂₃₂(₅₂.₈)  ₈₅(₁₉.₄) 肥満(n=₄₆)   ₁(₂.₂)   ₀(₀.₀)  ₄₅(₉₇.₈)  ₃₅(₇₆.₁)   ₉(₁₉.₆)   ₂(₄.₃) 全体(n=₅₇₅) ₁₅₄(₂₆.₈) ₂₃₂(₄₀.₃) ₁₆₈(₂₉.₂) ₁₆₅(₂₈.₇) ₂₈₀(₄₈.₇) ₁₃₀(₂₂.₆) 女 子 体型意識 体型願望 やせている 普通 太っている やせたい 現状でよい 太りたい 体   型 やせ(n=₁₀₄) ₃₃(₃₁.₇)  ₄₄(₄₂.₃)  ₂₇(₂₆.₀)  ₅₀(₄₈.₁)  ₄₃(₄₁.₃)  ₁₁(₁₀.₆) 普通(n=₄₄₄)  ₁(₀.₂)  ₉₈(₂₂.₁) ₃₄₅(₇₇.₇) ₄₀₄(₉₁.₀)  ₄₀(₉.₀)   ₀(₀.₀) 肥満(n=₃₅)  ₀(₀.₀)   ₀(₀.₀)  ₃₅(₁₀₀.₀)  ₃₄(₉₇.₁)   ₁(₂.₉)   ₀(₀.₀) 全体(n=₅₈₃) ₃₄(₅.₈) ₁₄₂(₂₄.₂) ₄₀₇(₆₉.₈) ₄₈₈(₈₃.₇)  ₈₄(₁₄.₄)  ₁₁(₁.₉) ※ BMI 判定の体型ごとに体型意識の最も高い数値を太字・斜体・網掛けにしている.

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(345) ₂₉ いる.一方,女子は,やせの者は,「普通」と思っている 者が最も多く,やせているのに₂₆.₀%が「太っている」 と思っている.普通の者では,₇₇.₇%が「太っている」 と思っており,女子では体型にかかわらず,自分のこと を現実よりも太っていると認識している.  そのため,BMIによる体型別体型願望では,男子では, やせの者は「太りたい」,普通の者は「現状でよい」,肥 満者は「やせたい」が最も多く,体型願望が適切である. しかしながら,男子でも全体では₂₈.₇%にやせたい願望 があった.一方,女子は,体型にかかわらず「やせたい」 が最も多く,普通の者の₉₁.₀%,やせの者の₄₈.₁%がさ らに「やせたい」願望を持っていた. (2)ダイエットと生活習慣 1)ダイエット状況  ダイエット経験の結果を図 ₂ に示す.「現在している」 「以前して成功した」「以前して効果がなかったのでやめ た」がダイエット経験者であり,合わせると女子では ₄₀.₁%にダイエット経験がある.さらに,「これからしよ うと思っている」₃₅.₃%を合わせると,女子の₇₅.₄%は ダイエットに関心がある.反対に男子では,ダイエット 経験があるのは₉.₆%と少なく,₇₉.₂%が「以前しなかっ たし,これからもしない」と回答しており,男子はダイ エットへの関心が低い.  ダイエット経験者(男子₅₇名,女子₂₆₃名)に,具体的 なダイエット方法について,表 ₄ に示す項目を挙げて該 当する項目全てにチェックしてもらった.女子では,「間 食をしない」「食事量減」が ₆ 割を超え,食事制限による ダイエットを実施している者が多い.一方,男子は食事 制限によるダイエットはいずれも₄₀%以下で,「筋トレ」 「歩く,走る」といった運動系の方法によるダイエットを 行っている割合の方が高かった.「その他」の自由記述に は,半身浴,カラオケが挙がっていた.  さらに,ダイエット経験者(男子₅₇名,女子₂₆₃名)の 実施したダイエット方法を「運動のみ」「運動+食事」 「食事のみ」「その他」で分類し,男女別に比較すると, 「運動のみ」は,男子₂₂.₈%(₁₃名)に対して女子は ₃.₈%(₁₀名)と男子の方が有意に高かった(p<₀.₀₁). 反対に「食事のみ」は,男子₂₈.₁%(₁₆名)に対して女 子は₄₂.₆%(₁₁₂名)と女子の方が有意に高かった(p< ₀.₀₅).  ダイエット経験者(男子₅₇名,女子₂₆₃名)で体調を崩 した経験がある者は,男子₅.₃%( ₃ 名),女子₁₁.₈% 図 2 .ダイエット経験の状況 23.6 35.3 8.6 9.7 21.8 79.2 10.6 1.4 5.2 3.0 0 50 100 以前しなかったし、これからもしない これからしようと思っている 以前して効果がなかったのでやめた 以前して成功した 現在している 男(n=592) 女(n=662) ** ** ** ** ** (比率の差の検定) ** p<0.01 % ダイエット経験有り 男;9.6% 女;40.1% 表 4 .ダイエット経験者のダイエット内容 人(%) ダイエット内容 男(n=₅₇) 女(n=₂₆₃) 有意差 食 事 系 間食をしない ₂₀(₃₅.₁) ₁₈₃(₆₉.₆) ** 食事量減 ₂₀(₃₅.₁) ₁₆₂(₆₁.₆) ** 寝る前に食べない ₁₆(₂₈.₁) ₁₅₁(₅₇.₄) ** 甘いものを食べない ₈(₁₄.₀) ₉₅(₃₆.₁) ** 油ものを控える ₆(₁₀.₅) ₆₉(₂₆.₂) * 炭水化物抜き・ 単品ダイエット ₅(₈.₈) ₆₀(₂₂.₈) * サプリ・ ダイエット食品 ₄(₇.₀) ₃₄(₁₂.₉) n.s. 食事回数減 ₃(₅.₃) ₂₄(₉.₁) n.s. 運 動 系 歩く・走る ₂₂(₃₈.₆) ₉₄(₃₅.₇) n.s. 筋トレ ₂₅(₄₃.₉) ₈₀(₃₀.₄) * ダイエット器具 ₃(₅.₃) ₃₂(₁₂.₂) n.s. ダイエット DVD・ ゲーム ₃(₅.₃) ₁₇(₆.₅) n.s. ヨガ ₂(₃.₅) ₁₅(₅.₇) n.s. 水泳 ₄(₇.₀) ₁₃(₄.₉) n.s. その他 ₇(₁₂.₃) ₆(₂.₃) ** (比率の差の検定)*p<₀.₀₅, **p<₀.₀₁

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(346) ₃₀ (₃₁名)で,女子の方がダイエットによる健康障害があっ たと自覚している割合が高い.具体的なダイエットによ る体調を崩した症状は,表 ₅ に示す通り,女子の半数が 「疲れやすくなった」「生理不順/止まった」と回答して いた.「生理不順/止まった」と回答していた₁₆名の表 ₄ におけるダイエット方法は「食事量減」で, ₈ 名が「炭 水化物抜き・単品ダイエット」, ₆ 名が「食事回数減」を 実施していた. 2)欠食状況と運動時間  ダイエットの方法として男女共に「食事量減」「運動」 と答えており,実際の生活習慣における欠食状況,運動 時間とダイエットの関連性についても検討した.   ₁ 日の欠食状況について,三食とも毎日食べる者は ₁,₂₅₄名のうち₇₅.₃%(₉₄₄名)にとどまり,食生活リズ ムが崩れている者が多かった.表 ₆ は,三食の欠食状況 とダイエットの関係を示している.朝食の欠食率は,男 子は₁₉.₄%,女子₁₅.₃%で有意差はみられないが男子の 方が朝食の欠食率は高い傾向がみられた.反対に,夕食 の欠食率では女子の方が男子よりも有意に高く,女子の ₁₀.₄%が夕食を食べないことがあると回答していた.三 食それぞれの欠食者のうち,図 ₂ で「現在ダイエットし ている」(ダイエット中)と回答していた割合をみると, 男子では三食ともダイエット中の者は低率でダイエット による欠食は少ない.一方,女子では,朝食欠食者の ₁₆.₃%,昼食欠食者の₁₉.₂%,夕食欠食者の₃₁.₉%がダ イエット中であり,女子はやせるため食事制限として意 識的に欠食している.  表 ₇ は, ₁ 日の運動状況とダイエットの関係を示して いる.女子では, ₁ 日の運動時間が「₃₀分未満」が ₄₄.₁%にのぼり,女子の運動不足が顕著である.反対に 男子では,₄₄.₁%が「 ₂ 時間以上」運動しており,運動 部等で毎日長時間運動習慣のある男子と,高校生の時点 で運動習慣が少ない女子が対照的である.各運動時間区 分の該当者のうち,図 ₂ で「現在ダイエットしている」 (ダイエット中)と回答していた割合をみると,すべての 運動時間で女子の方が有意に高く,「₃₀分未満」の運動不 足でも女子は₁₇.₁%がダイエット中だった. (3)生活習慣と体型  生活習慣 ₅ 項目と体型において,男女別に検討した結 果を表 ₈ に示す.体型と関連性がみられた項目は,男女 間で共通していた項目は「食べるスピード」「ダイエット の経験の有無」で,「運動時間」では男子では関連性がみ られたが女子では体型との関連性はみられなかった.  男子では,「やせ」群において食べるスピードの遅い者 が速い者よりも多く,運動時間が₃₀分未満の者が多かっ 表 5 .ダイエットによる健康障害 人(%) 項 目 男(n=₃) 女(n=₃₁) 疲れやすくなった  ₁(₃₃.₃) ₁₇(₅₄.₈) 生理不順/止まった ₁₆(₅₁.₆) 貧血  ₂(₆₆.₇) ₁₂(₃₈.₇) めまいがする  ₁(₃₃.₃) ₁₂(₃₈.₇) 食欲がなくなった  ₀(₀.₀)  ₇(₂₂.₆) 吐き気がする  ₀(₀.₀)  ₅(₁₆.₁) 便秘がちである  ₀(₀.₀)  ₄(₁₂.₉) 下痢をよくする  ₀(₀.₀)  ₁(₃.₂) 表 6 .三食の欠食状況とダイエット 人(%) 朝 食 昼 食 夕 食 欠食あり うちダイエット中 欠食あり うちダイエット中 欠食あり うちダイエット中 男(n=₅₉₂) ₁₁₅(₁₉.₄) ₃(₂.₆) ₂₉(₄.₉) ₂(₆.₉)  ₂₄(₄.₁) ₂(₈.₃) ** ** 女(n=₆₆₂) ₁₀₁(₁₅.₃) ₁₇(₁₆.₃) ₂₆(₃.₉) ₅(₁₉.₂) ₆₉(₁₀.₄) ₂₂(₃₁.₉) (比率の差の検定)*p<₀.₀₅, **p<₀.₀₁ 表 7 .運動時間とダイエット 人(%) ₃₀分未満 ダイエット中うち ₃₀分~₁ 時間 ダイエット中うち ₁ ~ ₂ 時間 ダイエット中うち ₂ 時間以上 ダイエット中うち 男(n=₅₉₂)₁₅₉(₂₆.₉) ₅(₃.₁) ₁₀₆(₁₇.₉) ₃(₂.₈) ₆₃(₁₀.₆) ₃ (₄.₈) ₂₆₁(₄₄.₁) ₇(₂.₇) ** ** ** ** ** ** 女(n=₆₆₂)₂₉₂(₄₄.₁) ₅₀(₁₇.₁) ₁₃₉(₂₁.₀) ₃₃(₂₃.₇) ₉₁(₁₃.₇) ₂₄(₂₆.₄) ₁₃₅(₂₀.₄) ₃₇(₂₇.₄) (比率の差の検定)**<₀.₀₁

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(347) ₃₁ た.「肥満」群では食べるスピードが速い者が多く,ダイ エットの経験者が多かった.体型が「普通」群では,運 動時間が ₁ 時間以上の者が有意に多かった.一方,女子 では,「やせ」群では食べるスピードの遅い者が速い者よ りも多く,ダイエットの経験がない者が多かった.「普 通」群では,食べるスピードが速い者が多く,ダイエッ トの経験者が多かった. (4)健康状態と生活習慣  健康状態と生活習慣の関連を分析するため,健康群, 軽度な体調不良群,重度な体調不良群の ₃ 群について, 生活習慣の各項目で,母比率の差の検定で ₃ 群の総当り をした結果を表 ₉ に示す. 表 8 .生活習慣と体型 人(%) 男 子 体 型 や せ 普 通 肥 満 生 活 習 慣 食事回数 三食摂取(n=₄₄₀) ₆₆(₁₅.₀) ₃₄₁(₇₇.₅) ₃₃(₇.₅) 欠食有り(n=₁₃₈) ₂₅(₁₈.₁) ₉₉(₇₁.₇) ₁₄(₁₀.₁) 食べる スピード 速い(n=₃₂₃) ₄₁(₁₂.₇) * ₂₄₆(₇₆.₂) ₃₆(₁₁.₁) ** 遅い(n=₂₅₃) ₅₀(₁₉.₈) ₁₉₂(₇₅.₉) ₁₁(₄.₃) 運動時間 ₃₀分未満(n=₁₅₅) ₃₅(₂₂.₆) ** ₁₀₈(₆₉.₇) * ₁₂(₇.₇) ₁ 時間以上(n=₃₂₃) ₄₀(₁₂.₄) ₂₅₇(₇₉.₆) ₂₆(₈.₀) 就寝時間 ₂₄時まで(n=₂₄₁) ₄₈(₁₉.₉) ₁₇₇(₇₃.₄) ₁₆(₆.₆) ₁ 時以降(n=₁₀₄) ₁₅(₁₄.₄) ₇₈(₇₅.₀) ₁₁(₁₀.₆) ストレス あり(n=₁₅₉)なし(n=₁₂₄) ₂₄(₁₅.₁)₂₃(₁₈.₅) ₁₂₃(₇₇.₄)₉₂(₇₄.₂) ₁₂(₇.₅)₉(₇.₃) ダイエット 経験有(n=₅₅) ₅(₉.₁) ₃₇(₆₇.₃) ₁₃(₂₃.₆) ** 経験無(n=₅₂₆) ₈₆(₁₆.₃) ₄₀₇(₇₇.₄) ₃₃(₆.₃) 女 子 体 型 や せ 普 通 肥 満 生 活 習 慣 食事回数 三食摂取(n=₄₄₅)欠食有り(n=₁₄₈) ₇₉(₁₇.₈)₂₈(₁₈.₉) ₃₄₁(₇₆.₆)₁₀₉(₇₃.₆) ₂₅(₅.₆)₁₁(₇.₄) 食べる スピード 速い(n=₂₈₇) ₃₄(₁₁.₈) ** ₂₃₂(₈₀.₈) ** ₂₁(₇.₃) 遅い(n=₃₀₄) ₇₄(₂₄.₃) ₂₁₆(₇₁.₁) ₁₄(₄.₆) 運動時間 ₃₀分未満(n=₂₅₄)₁ 時間以上(n=₂₁₄) ₃₇(₁₇.₃)₅₁(₂₀.₁) ₁₉₂(₇₅.₆)₁₆₅(₇₇.₁) ₁₁(₄.₃)₁₂(₅.₆) 就寝時間 ₂₄時まで(n=₂₈₁) ₅₀(₁₇.₈) ₂₁₆(₇₆.₉) ₁₅(₅.₃) ₁ 時以降(n=₉₀) ₁₉(₂₁.₁) ₆₄(₇₁.₁) ₇(₇.₈) ストレス あり(n=₁₆₅) ₂₀(₁₂.₁) ₁₃₁(₇₉.₄) ₁₄(₈.₅) なし(n=₁₀₀) ₁₈(₁₈.₀) ₇₆(₇₆.₀) ₆(₆.₀) ダイエット 経験有(n=₂₄₃) ₁₇(₇.₀) ** ₂₀₈(₈₅.₆) ** ₁₈(₇.₄) 経験無(n=₃₅₀) ₉₁(₂₆.₀) ₂₄₁(₆₈.₉) ₁₈(₅.₁) (比率の差の検定)*p<₀.₀₅, **p<₀.₀₁  重度な体調不良群では,「欠食あり」が₃₃.₉%,「就寝 ₁ 時以降」が₂₃.₅%,「運動₃₀分未満」が₄₂.₆%,さらに ₅₄.₅%が「ストレスあり」で,欠食,就寝時間,運動不 足,ストレス各項目とも健康群,軽度な体調不良群より も有意に高く,これらの生活習慣は体調不良と関連があ る.しかしながら,健康群と軽度な体調不良群で有意差 がみられたのは,「欠食あり」と「ストレスあり」の ₂ 項 目のみで,健康群の「欠食あり」は₁₂.₇%,「ストレスあ り」は₄.₀%で非常に低く,つまり,健康群では₈₇.₃%が 毎日三食を食べ,₉₆.₀%とほとんどの者がストレスを感 じていない.

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(348) ₃₂

4.考 察

 対象者の高校生は,BMI による体型判定では男女とも 普通体型が多く差はないが,体型認識には男女差が大き く,先行研究₁₆)と同様に女子の体型認識に問題がみられ た.男子は自分の体型について正しく認識しているため 体型願望も適切であるが,女子では体型にかかわらず 「太っている」と認識しているため, ₈ 割以上がやせたい 願望を持っていた.そのため,女子の希望体型の BMI 平 均が₁₈.₆で,平成₂₀年度の国民健康・栄養調査における ₂₀歳代女性の希望体型の BMI ₁₉.₀と比較しても低く,希 望体重が₂₀歳代女性よりも一段と低体重を望んでおり, 高校生女子の痩身願望が強い.  そして,体型認識や体型願望が男子は適切であるが女 子は痩身願望が強いため,ダイエットへの関心にも違い がみられた.男子は₇₉.₂%がダイエットにまったく関心 がないが,女子は₇₅.₄%がダイエットに関心を持ち, ₄₀.₁%がダイエットの経験を持っていた.ダイエット方 法にも男女差があり,女子では男子に比べて食事制限に よるダイエットに偏りがちだった.本来,ダイエットは, 食事だけでなく運動も併用し,基礎代謝分の食事をしっ かりとって,摂取エネルギーと身体活動で必要なエネル ギーの収支で体脂肪を燃焼させることが大切である₁₇) 大学生のダイエット方法の調査では,「運動」「食事」単 独に比べて,「運動+食事」法が体重減少において効果的 であったとの報告もある₆).女子のダイエットが健康状 態に及ぼす影響として,体重減少による無月経症や骨密 度の低下などが指摘されている₁₈).本調査でも,ダイ エットをしている女子の半数が「生理不順/止まった」 と回答しており,食事制限によるダイエットが一因と推 察される.実際にダイエットで生理不順(止まった)と 健康障害を自覚していた者は,全員が食事量を減らし, 炭水化物ダイエットや単品ダイエット,食事の回数を減 らしている者が多かった.このような不適切な(非構造 的)ダイエットは,摂食障害の発症に影響を及ぼし₁₉) また,食事制限や不適切なダイエットを行うことは体脂 肪の減少効果がなく,ダイエット経験者は未経験者より も体脂肪率が高いという報告もある₂₀).本調査では体脂 肪率を測定していないが,女子は運動習慣がない者が多 く,食事制限が中心のダイエットをしている女子の中に は,隠れ肥満(正常体重肥満)がいる可能性がある.「健 康日本₂₁(第二次)」がめざす₂₀歳代のやせの者を減少さ せるためには,適正体重の理解,運動と食事の関係,ダ イエットの危険性などについて健康教育が必要である.  一方で,体型認識が適切である男子が,なぜ₂₀歳~₆₀ 歳の ₃ 割が肥満になるのか,肥満と生活習慣について学 習することが大切である.高校生男子は,油っこいもの やファーストフード,夜食をよく食べるなど肥満につな がりやすい食生活をしている者が多いことが明らかに なっている₂₁).高校生の現在の健康的な体型は,消費エ ネルギーと摂取エネルギーの関係から運動によって維持 されていることを理解するとともに,具体的な生活習慣 病と食生活や体型との関係について,正しい知識を身に つけることが必要である.  生活習慣と体型についても検討したが,食べるスピー ドの速さ,男子の運動時間に有意差がみられた.男子で は, ₁ 日の運動時間が₃₀分未満の者にやせが多く, ₁ 時 間以上運動する男子の ₈ 割が普通体型だった.大学生の 運動状況と体組成の調査では,男子は運動している学生 は運動をしていない学生に比べて BMI,筋肉量が有意に 高い値を示しているが,女子では有意差がない₂₂).本調 査でも高校生女子は運動時間で体型に有意差がなく,男 子は運動時間と筋肉量の関係があると考えられ,運動時 間が少ない男子は筋肉量が少なくやせが多いと推察され る.また,運動時間では,男子は₄₄.₁%が ₂ 時間以上運 動しているのに対して,女子は₄₄.₁%が運動時間₃₀分未 満であり,高校生女子の運動習慣が少ないことが指摘で きる.文部科学省の平成₂₄年度全国体力・運動能力,運 動習慣等調査結果では,中学生女子の₃₀.₉%が ₁ 週間の 総運動時間が₆₀分未満で女子の運動不足が指摘されてい るが₂₃),高校生女子も同様で,運動習慣がないまま₂₀歳 代を向かえる者が多いと推察される.また,今回の欠食 習慣の調査結果では,女子の ₁ 割が夕食を欠食すること があると回答し,しかもそのうちの ₃ 割がダイエット中 表 9 .健康状態と生活習慣 人(%) 生活習慣 健康群(n=₁₇₃) 軽度な体調不良群(n=₆₉₄) 重度な体調不良群(n=₃₈₇) 欠食あり ₂₂(₁₂.₇)*, *** ₁₄₇(₂₁.₂)*, ** ₁₃₁(₃₃.₉)**, *** 就寝 ₁ 時以降 ₂₄(₁₃.₉)*  ₉₁(₁₃.₁)**  ₉₁(₂₃.₅)*, ** 運動₃₀分未満 ₄₇(₂₇.₂)* ₂₃₉(₃₄.₄)** ₁₆₅(₄₂.₆)*, ** ストレスあり ₇(₄.₀)*, *** ₁₃₀(₁₈.₇)*, ** ₂₁₁(₅₄.₅)**, *** 注)*, **, *** 同士が有意差があることを示している (比率の差の検定)p<₀.₀₅

(8)

(349) ₃₃ であった.女子が思春期に運動不足でしかも食事制限に よる欠食習慣のある状態では,骨密度の低下を招き,将 来の骨粗しょう症につながりやすい.現在,若者の朝食 の欠食が問題となり,朝食の摂取は食育の重点事項とし て取りあげられているが₂₄),高校生では三食摂取の必要 性を伝えることも大切である.  特に,今回の調査で,生活習慣と健康状態の関連につ いて分析し,健康群の₈₇.₃%は欠食がなく,体調不良群 では欠食率が高く,改めて食育の必要性が指摘できる. さらに,健康群の₉₆.₀%はストレスがあると感じたこと がなく,体調不良群はストレスを感じているものが多く, 健康で充実した学校生活を送るためには,高校生におけ るこころの健康教育が重要であるといえる.現在,わが 国では,自殺率の高さが問題になっているが,次世代の 健康を支えるためには,ストレスの対処法などこころの 健康教育を具体的に推進していくことが求められる.そ して,体調不良には食事の欠食,運動不足,睡眠不足, ストレスが関連しており,また,生活習慣病予防のため の体重管理には体型認識が影響しており,食育だけでな く,体重管理やこころの健康を含めたトータル的な健康 教育が必要である.  今後,高校生の限られた教育課程の中で,どのような 健康教育の可能性があるのか,また,高校生では,将来 の健康に向けて自己管理能力を養うことが大切であり, 継続的な健康教育を導入しなければならない.現在,高 校における健康教育については,家庭科や保健・体育な どの教科で扱うが,授業時数は少なく,継続的な健康教 育につながっているとは言い難い.「健康日本₂₁(第二 次)」がめざす次世代の健康を支えるためには,高校生の 実態に即した教科内容や教育課程の検討とともに,高校 ₃ 年間を通した学校全体での取り組み体制を構築してい くことが求められる.

5.要 約

 生活習慣病の予防や次世代の健康を図るためには,健 康な生活習慣を有する子どもの増加と適正体重の子ども の増加が課題である.そこで,高校生の体型認識や生活 習慣を把握するため,₁,₂₅₄名の高校生にアンケート調査 を実施した.その結果,以下のことが明らかとなった. ₁) 男子は BMI による自分の体型判定と体型認識がほぼ 一致しているが,女子は BMI 判定による体型に関わ らず「太っている」と感じている.そのため,男子は 現状維持でよいと思っている者が多いのに対し,女子 は,普通体型の₉₀.₉%,やせの者も₄₈.₁%が「やせた い」と思っており,女子の痩身願望が強い. ₂) 女子では₄₀.₁%にダイエット経験があり,「これから しようと思っている」者を合わせると,女子の₇₅.₄% がダイエットに関心を持っていた. ₃) ダイエット経験者のダイエット方法は,男子は運動, 女子は食事制限でダイエットをしている者が多い. ₄) ₁ 日三食毎日食べる者は₇₅.₃%にとどまり,食生活リ ズムが崩れている者が多い.朝食の欠食については, 男子₁₉.₄%,女子₁₅.₃%で男子の方が多い.一方,女 子では,夕食の欠食習慣がある者が₁₀.₄%おり,その うちの₃₁.₉%が現在ダイエット中だった. ₅) ₁ 日の運動時間は,男子は₄₄.₁%が ₂ 時間以上運動し ているのに対して,女子は₄₄.₁%が₃₀分未満で,女子 の運動不足が顕著である. ₆) 食事の欠食,運動不足,睡眠不足,ストレスは体調不 良に関連がある.健康な者は,₈₇.₃%が毎日三食を食 べ,₉₆.₀%がストレスを感じていない.

謝 辞

 調査の実施に際してご尽力いただきました三谷遥氏に 深謝致します.また調査にご協力いただいた生徒の皆様 に心からお礼申し上げます.

引 用 文 献

 ₁) 厚生労働省.「健康日本₂₁」最終評価.₂₀₁₁  ₂) 厚生労働省.健康日本₂₁(第二次).₂₀₁₂  ₃) 加藤秀雄,中棒幸弘. “ウエイトコントロールと食事.” スポーツ・運動栄養学.講談社サイエンティフィク, ₂₀₀₇, ₇₂-₇₉  ₄) 石沢智美,田名場美雪,芳野晴男.大学生の体型不安 と食行動との関連について.弘前大学保健管理概要. ₂₀₀₂, No. ₂₃, ₅-₁₄  ₅) 厚生労働省.平成₂₀年国民健康・栄養調査報告.₂₀₁₀  ₆) 高橋亜矢子,宮川豊美.女子学生の身体状況並びに体 型意識とダイエットに関する調査研究.和洋女子大学 紀要.₂₀₀₄, 44, ₄₁-₆₀  ₇) 山本真紀,小田光子,岸田典子.女子学生の肥満度と 生活習慣及び自覚症状との関連に関する一考察.県立 広島大学人間文化学部紀要.₂₀₀₆, 1, ₆₁-₇₃  ₈) 野田艶子.若年女性の自己の体型認識からみたアセス メント.相模女子大学紀要.₂₀₁₀, 74, ₅₃-₆₀  ₉) 間瀬知紀,宮脇千惠美,甲田勝康,藤田裕規,沖田善 光,小原久未子,見正富美子,中村晴信.女子学生に おける正常体重肥満と食行動との関連性.公衛誌. ₂₀₁₂, 6, ₃₇₁-₃₈₀ ₁₀) 野中美津枝,局百花,溝口理沙.若者の朝食欠食に関 する実態調査:大学生と高校生の比較.家庭科教育実 践研究誌.₂₀₁₀, No. ₉, ₁-₈ ₁₁) 文部科学省.食に関する指導の手引き:第一次改訂版. 東山書房,₂₀₁₂, ₂₆₆p ₁₂) 宮沢貞子,金子基子,島崎洋子.“ダイエット.”栄養

(9)

(350) ₃₄ 指導・栄養教育に必携食生活情報ブック.女子栄養大 学出版部,₁₉₉₅, ₂₂₀-₂₂₅ ₁₃) 宮沢貞子,金子基子,島崎洋子.“高校生編健康・病 気.”栄養指導・栄養教育に必携食生活情報ブック.女 子栄養大学出版部.₁₉₉₅, ₅₈-₆₃ ₁₄) 山脇美代.本学学生の食習慣と健康との関連について. 純真人文研究.₂₀₀₄, 10, ₆₇-₇₇ ₁₅) 厚生労働省.日本人の食事摂取基準(₂₀₁₅年版)の概 要.₂₀₁₄ ₁₆) 芝木美沙子,橋本里和.高校生の体型認識とダイエッ トについて.北海道教育大学紀要.₂₀₁₃, 63, ₁₅₅-₁₆₆ ₁₇) 吉田企世子,松田早苗.“ダイエット時の摂取エネル ギー量は.”安全においしく食べるためのあたらしい栄 養学.高橋書店,₂₀₀₆, ₅₈-₅₉ ₁₈) 坂本元子.“健康阻害要因としての食生活の問題.”栄 養指導・栄養教育.第一出版,₂₀₀₅, ₆₉-₇₈ ₁₉) 松本聰子,熊野広昭,坂野雄二.どのようなダイエッ ト行動が摂食障害や binge eating と関係しているか.心 身医.₁₉₉₇, 37, ₄₂₆-₄₃₂ ₂₀) 杉山文宏,渋谷聡,広川龍太郎,小泉綾,笹木春光,了 海諭,石田松五郎.本学学生の健康生活における調査 研究:その ₁ 体脂肪と体型認識及び生活習慣との関連. 東海大学紀要.₁₉₉₉, 29, ₁-₈ ₂₁) 野中美津枝.高校生における食生活の是正対象と体調 不良状況.家政誌.₂₀₁₃, 64, ₁₀₁-₁₀₆ ₂₂) 徳田修司,飯干明.鹿児島大学新入生の骨密度と体組 成.鹿児島大学教育学部研究紀要.₂₀₁₄, 65, ₉-₂₂ ₂₃) 文部科学省.平成₂₄年度全国体力・運動能力,運動習 慣等調査結果.₂₀₁₃ ₂₄) 内閣府.平成₂₅年版食育白書.₂₀₁₃

参照

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