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テレビ視聴者の特性分析

∼新聞・インターネットとの比較を通して∼

一橋大学経済学部 学士論文

2016 年 1 月 31 日

学籍番号:2112221A

氏名:藤岡佑輔

ゼミナール指導教員:川口大司

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概要

近年、インターネットの出現によるテレビメディアの衰退が危惧されている。 こうした背景を考察しつつ、本論文ではテレビ視聴者の特性を分析し、その将 来を展望した。JGSS-2000,2001,2002,2005,2008,2010 を用いてテレビ・新聞・イ ンターネットの利用者の特性を導き出し比較した結果、「女性」「高齢者」「低 学歴」「低世帯所得層」「小家族」の特性がテレビの視聴時間を延ばす効果があ ることが明らかになった。 また、新聞・インターネットの接触者の特性と比較してみると、インターネ ットと新聞は接触者の特性に重なりがあり、互いは代替関係にあるのに対し、 インターネットとテレビは接触者の特性が重ならずそうした代替関係にない ことが明らかになった。その他、「兄姉の数」がテレビ視聴時間の決定要因と して有意であることから、視聴行為は多かれ少なかれ成人前に習慣化する可能 性があることが分かった。 テレビは、「高齢者」「小家族」「低世帯所得層」といった社会との結びつき が比較的弱い人に必要とされる傾向にある。今後、日本の人口構成の変化から

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目次

Ⅰ.はじめに...5 1-1 目的意識...5 1-2 背景...6 1-3 先行研究...10 Ⅱ.本研究方法と仮説...12 Ⅲ.分析方法...13 3-1 使用データ...13 3-2 被説明変数と説明変数...14 3-3 被説明変数の加工と定義...15 3-4 説明変数の加工と定義...15 3-5 記述統計量...16 Ⅳ.分析結果と考察...18 4-1 重回帰分析結果...18 4-2 テレビの視聴時間...21 4-3 他メディアとの比較...22 4-4 日本の社会問題とテレビ視聴時間...24

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4-5 テレビの将来...24

Ⅴ.おわりに...28

Ⅵ.謝辞...30

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Ⅰ.はじめに

1−1. 目的意識

インターネットの出現以来、「メディアの王」と呼ばれたテレビの衰退が懸 念されている。確かに、視聴率においては低下がうかがえるものの、平均視聴 時間では同様の低迷は見られない。果たして今後、インターネットはテレビに 取って代わることになるのだろうか。こうした疑問から、テレビの視聴時間の 決定要因を明らかにした上でその特性を考察する。また、現代の日本が抱える 「高学歴化社会」「少子化」「高齢化」「核家族化」「女性の社会進出」といった 社会問題を踏まえつつ、テレビメディアの将来を展望する。 同時に、新聞・インターネットの接触者の特性も分析し、テレビ接触者の特 性との比較を行う。というのも、インターネットの出現以来、新聞の広告費が 低下する一方で、テレビ広告費では増加が続いているという対称的な状況を説 明する仮説を立て、その検証を行うためだ。具体的には JGSS データのメディ ア接触項目を用いて考察を進めていく。

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1−2.背景

前節で触れたテレビ、及び他のマスメディアの現状を統計データを用いなが ら把握していく。以下は、テレビ平均視聴時間・テレビ平均視聴率・広告費の 三点に関する統計データとそれに関する考察である。

テレビ平均視聴時間

図 1-1 は、テレビ・ラジオの平均視聴時間の推移をグラフにしたものである。 このグラフを見ると、テレビの視聴時間には年によってブレがあるものの全体 的には横ばいになっており、衰退している様子は見られない。(一方、ラジオ の視聴時間は年を追うごとに減少の傾向にある) 図 1-1 テレビ・ラジオ平均視聴時間推移 225 214 214 222 215 225 231 217 222 235 223 223 218 225 223 215 226 225 226 223 218 49.3 47.7 48.8 44 45.4 42.8 43 44.3 41.7 45.7 42.3 44 42.7 43 44 41.1 37.5 36.5 39.4 37.7 36.9 0 10 20 30 40 50 60 200 205 210 215 220 225 230 235 240 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 201 1 2012 2013 2014 2015 平 均 視 聴 時 間( 分)

テレビ・ラジオ平均視聴時間推移

テレビ 視聴時 間 ラジオ 視聴時 間 NHK放送文化研究所『全国個人視聴率調査』より

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テレビ平均視聴率

図 1-2 は、テレビの平均視聴率の推移を時間帯別にグラフ化したものである。 これを見ると、「6時∼9時」では視聴率の増加が見られるが、その時間を除 く全ての時間帯で平均視聴率が大きく低下していることがわかる。 テレビ平均視聴時間は横ばいであるにも関わらず、平均視聴率が低下してい るということから、個人の視聴時間に格差ができていることがうかがえる。こ のことは、NHK 放送文化研究所・世論調査部 (2015) 「日本人とテレビ 2015 調査 結果の概要について」においても触れられており、『40 代以下は「短時間」 視聴の人が半数前後を占めるが、70 歳以上は「長時間」視聴の人が多数派と年 齢間で差が大きい』と述べられている。 図 1-2 テレビ平均視聴率推移 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 201 1 2012 2013 2014 2015 視 聴 率( %)

時間帯別総視聴率推移

1日視聴率 平均 6〜9時 9〜12時 12〜13 時 13〜18 時 18〜24 時 ビデオリサーチ『テレビ視聴率季報』より

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マスコミ広告費

平均視聴時間、平均視聴率に続き、広告費の推移からテレビ及びマスメディ アを考察する。図 1-3 は日本国内のマスコミ4媒体別広告費(雑誌、新聞、ラ ジオ、テレビ)並びにインターネットの広告費、GDP の推移をグラフ化した ものである。単位は GDP のみ百億、他の単位は億で示してある。また、図 1-4 はマスコミ4媒体別広告費とインターネット広告費のみを取り上げ、グラフ化 したものである。 これらの図を見てマスコミ4媒体を比較すると、雑誌・ラジオは横ばい、新 聞は下向き、テレビは GDP とともに緩やかに上向き、インターネットは安定 して上昇していることが見てとれる。 新聞における広告費は、インターネットの出現以来下降を続け、2009年 を境にインターネットとの逆転が見られる。一方、現状ではテレビの広告費を インターネット広告費が上回ったことはない。インターネット出現以降も、マ スコミ4媒体で唯一上昇を続けているのはテレビだけである。

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図 1-3 広告費と GDP の推移 図 1-4 マスコミ4媒体別広告費推移 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000 50000 55000 60000 65000 70000 75000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

日本の広告費と

GDP

GDP(百億円) 総広告費(億円) マスコミ四媒体広告費(億円) 新聞(億円) 雑誌(億円) ラジオ(億円) テレビ(億円) インターネット(億円) 37895 37212 36302 33671 28991 28533 27907 28809 28935 29393 10377 9986 9462 8276 6739 6396 5990 6242 6170 6057 4842 4777 4585 4078 3034 2733 2542 2551 2499 2500 1778 1744 1671 1549 1370 1299 1247 1246 1243 1272 20898 20705 20584 19768 17848 18015 18128 18770 19023 19564 3777 4826 6003 6983 7069 7747 8062 8680 9381 10519 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

マスコミ4媒体別広告費

マスコミ四媒体広告費(億円) 新聞(億円) 雑誌(億円) ラジオ(億円) テレビ(億円) インターネット(億円)

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1−3.先行研究

本論文の執筆にあたり参考にした先行研究を紹介する。 橋本摂子(2008)では、JGSS-2005 を使ってテレビ・新聞・インターネットの 利用者の階層特性を分析している。テレビの視聴時間を、性別・年齢・世帯人 数・本人の最終学歴・世帯収入・就業の有無で見た結果、テレビの視聴時間は 就労状態の強い影響下にあるが、それは年収や雇用形態などの階層的な側面と いうよりも、就労持間という物理的な要素による影響が強いと述べられていた。 また、この論文で特に強調されていたのは、「二人世帯ダミー」による効果で ある。これは、二人世帯において視聴時間が延びる傾向を示唆している。一人 とも三人とも異なる二人きりの空間は特別なものであり、互いのコミュニケー ションコストを緩和するための道具としてテレビが機能していると述べられ ている。 福井誠・加藤優希(2010)では、各メディアの接触者をコーホート分析した。 一般的に、近年のマスコミメディアの衰退はインターネットの出現によるもの と考えられているが、この論文ではこうした意見に疑問を投げかけている。分 析方法は、「NHK 国民生活時間調査」 というパネルデータを用いたコーホー

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ト分析である。マスメディア接触は時代効果や年齢効果よりもコーホート効果 で規定されるところが大きく、近年のマスメディアの衰退はそのメディアを支 持する世代の推移が主要な要因であることを示唆する結果を得ている。 こう した考察の結果、「この数年間に顕著となったいくつかのメディアの衰退は、 インターネットという代替的なメディアの出現によるものではなく、コーホー トの加齢によるところが大きいと考えられる 」と述べられている。

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Ⅱ.本研究方法と仮説

テレビ視聴時間を分析するため、JGSS-2000,2001,2002,2005,2008,2010 を用い て回帰分析を行う。被説明変数に視聴時間を置き、その決定要因を考察する。 また、テレビだけでなく新聞、インターネットの接触者についても分析をする ことで、「テレビ」「新聞」「インターネット」の接触者の特性の相違点や共通 点を明らかにする。また、この分析で明らかになった各メディア接触者の特性 をもとに、以下の仮説を検証する。 仮説は、 ① 「新聞とインターネットの接触者の特性は重なっており、両者は代替関係 にある」そのため、広告費の推移では新聞広告費とインターネット広告費 が 2009 年を境に入れ替わった。 ② 「テレビとインターネットは異なる特性の人が接触している」そのため、 インターネットの出現の後も広告費が GDP とともに推移しつつ上向きで ある。 というものだ。

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Ⅲ.分析方法

3−1. 使用データ

本論文では、日本版General Social Surveys(JGSS)を用いる。JGSS研究セ

ンターによれば、「日本版General Social Surveys(JGSS)は、アメリカのNational

Opinion Research Centerが1972年から実施しているGeneral Social Survey(GSS)

に範を取り、国際比較を視野に入れて、日本社会と人々の意識や行動の実態を 把握することを目的としたプロジェクトである。このプロジェクトは、時系列 分析が可能な継続的かつ総合的社会調査のデータを蓄積し、データの二次的利 用を希望している幅広い分野の研究者を対象としてデータを公開することを 目指している。JGSSは研究者のイニシアチブで開始され、最初から、広く日本 の、また世界の社会科学者に共有され、国際比較研究の素材となるにふさわし い継続調査として設計されている。そして、調査データは、慎重で厳密なサン プリング,実査,クリーニングのプロセスを経て、公開されてきており、社会 科学者の貴重な共有財産となっている。」とあり、1998年(首都圏、大阪府)、 1999年(全国)の二回の予備調査を皮切りに、第一期である2000年、2001年、 2002年、2003年、第二期である2005年、2006年、第三期である2008年、2010年、 2012年において計9回の本調査が行われている。今回の分析では、使用したい

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変数が含まれているJGSS-2000、JGSS-2001、JGSS-2002、JGSS-2005、JGSS-2008、 JGSS-2010の6つの調査データを用いた。 これらのデータは、寄託者が大阪商業大学JGSS研究センター(寄託時大阪商 業大学比較地域研究所)と東京大学社会科学研究所、調査対象が満20∼89歳の 男女、調査地域は日本全国で層化二段無作為抽出法によってサンプリングを行 ったものである。 本論文で分析を行うにあたっては、6年分のデータをひとつにまとめ各々の 個人データにおいて用いた変数全てに対して判別可能な回答を答えたものの みを有効とした。無回答、欠損値があるものに加えて、「答えられない」「わか らない」など判別ができないものを回答したアンケートについては全て欠損値 として無効とした。

3−2. 被説明変数と説明変数

被説明変数には、①テレビの視聴時間②新聞週間接触日数③インターネット 接触ダミー(0,1)をおいた。また、説明変数には、女性ダミー(0,1)、誕生年、階 層帰属意識(5段階)、15 歳の頃の世帯収入のレベル(5 段階)、現在の世帯収

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3−3. 被説明変数の加工と定義

テレビの視聴時間は、実値回答のためそのまま利用した。新聞の接触日数は、 「ほぼ毎日」を 6 日、「週数回」を 3 日、「週一回程度」を 1 日、「それ以下」「全 く読まない」を 0 日とおいた。インターネット接触ダミーは、インターネット で情報検索をすると答えた人を 1、それ以外は0とおいた。 ここで気を付けたいのは、被説明変数の単位がテレビは時間・新聞は日数・ インターネットは接触ダミーとなっているため、説明変数の係数の大きさによ る比較ではなく、効果の向きによる比較を行うということである。

3−4. 説明変数の加工と定義

「女性ダミー」は女性が1、男性が0。「誕生年」は実値回答のためそのまま 利用した。「階層帰属意識」は上が1下が5の5段階評価であったため、下を1上 を5に置き換えた。「15歳の頃の世帯収入のレベル」と「現在の世帯収入のレベ ル」は下が1上が5の5段階評価であったためそのまま利用した。「学歴ダミー」 は、旧制高校・旧制専門学校・高等師範学校・旧制大学・旧制大学院・新制短 大・新制高専・新制大学・新制大学院が最終学歴のものは1、それ以外を0とお いた。「家族人数」は実値回答のためそのまま用いた。

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3−5. 記述統計量

以下は、分析に使ったデータの記述統計量をまとめたものである。 被説明変数:テレビ視聴時間 サンプル数 平均 標準偏差 最小値 最大値 視聴時間 18785 3.512 2.166 0 20 女性ダミー 18785 0.536 0.499 0 1 生まれ年 18785 1952.517 16.782 1910 1989 階層帰属意識 (5段階)上1∼5下 18785 3.386 0.796 1 5 15歳の世帯収入のレベル 下1∼5上 18785 2.721 0.916 1 5 世帯収入のレベル 下1∼5上 18785 2.617 0.872 1 5 自分学歴ダミー 18785 0.334 0.472 0 1 家族人数(本人含む) 18785 3.398 1.541 1 11 被説明変数: 週間新聞接触日数 サンプル数 平均 標準偏差 最小値 最大値 新聞接触日数 18785 4.753 2.174 0 6 女性ダミー 18785 0.536 0.499 0 1 生まれ年 18785 1952.517 16.782 1910 1989 階層帰属意識(5段階) 上1∼5下 18785 3.386 0.796 1 5 15歳の世帯収入のレベル 下1∼5上 18785 2.721 0.916 1 5 世帯収入のレベル 下1∼5上 18785 2.617 0.872 1 5 自分学歴ダミー 18785 0.334 0.472 0 1

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被説明変数:インターネット利用ダミー サンプル数 平均 標準偏差 最小値 最大値 インターネット利用ダミー 7147 0.615 0.487 0 1 女性ダミー 7147 0.521 0.5 0 1 生まれ年 7147 1957.557 15.918 1916 1989 階層帰属意識(5段階) 上1∼5下 7147 3.393 0.814 1 5 15歳の世帯収入のレベル 下1∼5上 7147 2.756 0.904 1 5 世帯収入のレベル 下1∼5上 7147 2.644 0.869 1 5 自分学歴ダミー 7147 0.402 0.49 0 1 家族人数(本人含む) 7147 3.342 1.487 1 10

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Ⅳ.分析結果と考察

4−1.重回帰分析結果

表 4-1 は、「テレビの視聴時間」「週間新聞接触日数」「インターネット利 用ダミー」をそれぞれ被説明変数に、「女性ダミー」「生まれ年」「階層帰属 意識(5 段階)下 1∼5 上」「15 歳の世帯収入のレベル(5 段階)下 1∼5 上」 「世帯収入のレベル(5 段階)下 1∼5 上」「学歴ダミー」「家族人数」を説明 変数として回帰分析した結果である。 表 4-2 は、テレビをより詳しく分析するため表 4-1 とは別に回帰分析を行っ た結果である。テレビの視聴時間を被説明変数に「女性ダミー」「生まれ年」 「階層帰属意識(5 段階)下 1∼5 上」「15 歳の世帯収入のレベル(5 段階)下 1∼5 上」「世帯収入のレベル(5 段階)下 1∼5 上」「学歴ダミー」「兄の数」 「姉の数」「弟の数」「妹の数」を説明変数にして回帰分析を行った。「家族 人数」は変数から省いた。

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表 4-1 テレビ・新聞・インターネットを被説明変数に置いた分析結果 (1) (2) (3) 変数 テレビ 視聴時間 週間新聞 接触日数 インターネット 利用ダミー 女性ダミー 0.364*** -0.438*** -0.105*** (0.0307) (0.0305) (0.00951) 生まれ年 -0.0215*** -0.0399*** 0.0147*** (0.000950) (0.000944) (0.000315) 階層帰属意識(5段階) 下1∼5上 -0.197*** 0.243*** 0.0187*** (0.0221) (0.0220) (0.00708) 15歳の世帯収入のレベル 下1∼5上 -0.00308 -0.00357 -0.00757 (0.0179) (0.0178) (0.00547) 世帯収入のレベル 下1∼5上 -0.132*** 0.0801*** 0.0547*** (0.0210) (0.0208) (0.00659) 自分学歴ダミー -0.553*** 0.246*** 0.186*** (0.0377) (0.0374) (0.0109) 家族人数(本人含む) -0.133*** 0.105*** -0.00319 (0.01000) (0.00993) (0.00325) 定数 45.50*** 83.02*** -28.20*** (1.839) (1.826) (0.609) サンプル数 18,785 18,785 7,147 決定係数 0.093 0.112 0.334 カッコ内は標準誤差 *** p<0.01, ** p<0.05, * p<0.1

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表 4-2 テレビ視聴時間を被説明変数により詳しく分析した結果 変数 テレビ視聴時間 女性ダミー 0.389*** (0.0277) 生まれ年 -0.0219*** (0.000991) 階層帰属意識(5段階) 下1∼5上 -0.196*** (0.0203) 15歳の世帯収入のレベル 下1∼5上 0.0284* (0.0161) 世帯収入のレベル 下1∼5上 -0.150*** (0.0191) 自分学歴ダミー -0.517*** (0.0323) 兄の数 0.0453*** (0.0148) 姉の数 0.0339** (0.0146) 弟の数 0.0187 (0.0168) 妹の数 -0.00267 (0.0167) 定数 46.99*** (1.945) サンプル数 22,993 決定係数 0.087 カッコ内は標準誤差

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4−2.テレビの視聴時間

表 4-1 の分析結果から、「女性」「低世帯収入層」「低学歴」「高齢者」「小家族」 の特性を持つ人は、1日のテレビ視聴時間が延びることが分かった。 また、大変興味深いのは表 4-2 の兄弟姉妹の数による効果である。弟・妹と いった年下の兄弟による効果は認められなかったのに対して、兄・姉の年上の 兄弟による効果は有意な結果となった。では、どうして年上の兄弟にしか効果 が認められないのか。この説明として、二つの想定をした。 ひとつは、「弟や妹の方が、低収入な状態になりやすいため視聴時間が延び る」という想定だ。もうひとつは、「弟や妹は幼い頃、上の兄弟に追いつくた め世間の流行に敏感になってテレビを見る習慣がつき、そのテレビ視聴習慣が 成人後の今も根付いている」という想定である。 表 4-3 は、世帯収入レベルと兄弟姉妹の相関を示した図である。この表から 明らかなように、兄弟姉妹の数が各々の所得レベルに与える影響として、特別 な違いは生じなかった。つまり、前者の想定を認めることはできない。 そのため、本論文では後者の想定を採択することにした。 もし後者の想定を採択するとするならば、テレビの視聴行為の有無やテレビ 視聴時間に与える効果は、現在の特性に拠るところが大きいのはもちろんでは

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あるが、採択した想定のように、幼少期から青年期の視聴行為が、そのまま成 人後にも習慣化されるという場合も否定できないであろう。 表 4-3 世帯収入と兄弟姉妹数の相関 世帯収入5段階 下1∼5上 兄の数 -0.0426*** (0.00563) 姉の数 -0.0367*** (0.00554) 弟の数 -0.0390*** (0.00639) 妹の数 -0.0346*** (0.00637) 定数 2.642*** 2.639*** 2.636*** 2.633*** (0.00688) (0.00690) (0.00689) (0.00681) サンプル数 23,661 23,661 23,661 23,661 決定係数 0.002 0.002 0.002 0.001 カッコ内は標準誤差 *** p<0.01, ** p<0.05, * p<0.1

4−3.他メディアとの比較

重回帰分析した結果を示した表 4-1 から、本稿Ⅱ章で立てた二つの仮説「新 聞とインターネットの接触者の特性は重なっており、両者は代替関係にある」

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「テレビとインターネットは異なる特性の人が接触しており、両者は代替関係 にない」は立証された。 新聞とインターネットの接触者の特性は共に、「男性」「高学歴」「高世帯収 入」と重なっており、「生まれ年」を除く全ての有意な変数において、効果の 向きが一致した。「生まれ年」の効果が一致しなかったのは、インターネット が後発メディアであることに由来する。インターネットは若年層による支持を、 伝統的な新聞は高齢層による支持を得ている。 このことから、図 1-4 でみられた新聞とインターネットの広告費の逆転は、 両者の代替関係を踏まえ、消費行動が盛んな若年層をターゲットにできるイン ターネットにシフトして広告効率を高めたことに起因すると考えられる。 一方、テレビの接触者の特性は「女性」「低学歴」「低世帯収入家庭」であり、 「15 歳の頃の世帯収入」を除く全ての有意な変数において、テレビとインター ネットでは相反する効果がみられた。インターネットが出現して以降もテレビ における広告費が上昇を続けているのは、テレビがインターネットと代替関係 にないことによると考えられるだろう。

(24)

4−4.日本の現代社会とテレビ視聴時間

表 4-1、表 4-2 の分析結果から、日本の現代社会とテレビ視聴時間の関係に ついて考察する。 今後、日本に広がる「高齢化社会」「核家族化」の流れは、テレビ視聴時間 を延ばす要因として働くと考えられる。一方、女性の社会進出はテレビの主な 視聴者である女性のテレビ離れを促進するため、テレビ視聴時間に負の影響を 与えるだろう。総務省によると、2013 年には女性(15∼64 歳)の就業率が 62% を超え、過去最高の水準になったと報じられている。また、昨今の高学歴化も 視聴時間に負の影響を与え、さらにインターネットの利用に正の影響を与える と推測される。

4−5.テレビの将来

本論文では、テレビとインターネットが代替関係に無いことを述べた。とは いえ、現代においてインターネットの存在感が着々と増し続けていることは事 実である。 図 4-1 は TV・PC・インターネットの普及率の推移を示したものである。イ ンターネットの普及率が PC 普及率を上回ったのはスマートフォンによる影響 だろう。テレビ普及率はほぼ 100%の水準に達している一方で、インターネッ

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発展の余地が多分に残されている。今後テレビは、成長を続けるインターネッ トに苦戦を強いられることは間違いないだろう。では、今後テレビはどういっ た将来を歩むのか、別のデータを使って考察したい。 図 4-2 は 1990 年以降のテレビ番組ジャンル別視聴率である。この図では、 視聴率の大小でジャンルを比較することはできない。なぜなら、ジャンルごと に主な放送時間が異なるためだ。例えば、ゴールデンタイムに放送されること の多い「クイズゲーム」といったジャンルは必然的に高視聴率となる。このグ ラフで着目すべき点は、同ジャンルの過去との比較である。視聴率の推移を見 てみると、唯一右上がりとなっているジャンルは「時事解説」(赤色・太線で 表示)である。また、「スポーツ」「一般劇」「教育教養」は横ばい、それ以外 のジャンルは右下がりの推移となっていることが分かる。 ではどうして、「時事解説」だけ視聴率が上昇したのか。それはおそらく、 映像と音声で要約するテレビのコンパクトな報道がテレビ視聴者の特性であ る「低学歴」や「高齢者」とマッチしているからであろう。また、図 1-2 にお いて、「6 時∼9 時」の視聴率だけが右上がりだったことも、忙しい朝にそのコ ンパクトさが求められていることの表れと捉えることができるだろう。インタ ーネットの普及により、あらゆる情報に迅速にアクセスできるようになった利

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便性の反面、人々は膨大な情報の取捨選択を迫られるようになった。これは、 いわゆるメディアリテラシーといわれる力である。「低学歴」や「高齢者」の 人々は、こうした能力に乏しい傾向にある。今後のテレビメディアは、情報の 取捨選択を済ませた分かりやすくコンパクトな、かつ信頼性の高い放送をする ことでインターネットとの差別化を図っていく必要があるだろう。 図 4-1 TV・PC・インターネット普及率推移 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 (1 96 6 年 ) (1 96 8 年 ) (1 97 0 年 ) (1 97 2 年 ) (1 97 4 年 ) (1 97 6 年 ) (1 97 8 年 ) (1 98 0 年 ) (1 98 2 年 ) (1 98 4 年 ) (1 98 6 年 ) (1 98 8 年 ) (1 99 0 年 ) (1 99 2 年 ) (1 99 4 年 ) (1 99 6 年 ) (1 99 8 年 ) (2 00 0 年 ) (2 00 2 年 ) (2 00 4 年 ) (2 00 6 年 ) (2 00 8 年 ) (2 01 0 年 ) (2 01 2 年 ) (2 01 4 年 ) テレビ普 及率 パソコン 普及率 インター ネット普 及率 総務省『家電・耐久消費材等普及率』より

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Ⅴ.おわりに

テレビ接触者の特性に「高齢者」「小家族」「低世帯所得層」とあることから、 テレビは社会との結びつきが比較的弱い層から支持されていることが分かっ た。今後、日本の人口は急激な高齢化が進み人口ピラミッドは現在の図 5-1 か ら図 5-2 を経て、やがて図 5-3 のようになると予想されている。将来的に、社 会と分断される可能性のある人が増える日本社会において、テレビの社会的重 要性はより大きくなるであろう。 図 5-1 2015 年人口分布図

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図 5-2 2040 年人口分布図

図 5-3 2060 年人口分布図

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Ⅵ.謝辞

本研究の回帰分析に当たり、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データ アーカイブ研究センターSSJ データアーカイブから「日本版 General Social Surveys <JGSS-2000 2010>」(大阪商業大学 JGSS 研究センター)のデータ提供 を受けました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。 また、視聴率データの作成にあたり、ビデオリサーチ様から「テレビ視聴率 季報」を閲覧させて頂きました。ビデオリサーチの太田様・内山様、そして毎 日放送の森上様・井上様、ご協力を賜り誠にありがとうございました。 最後に、川口大司教授には二年間にわたり熱心なご指導を頂きました。本論 文の作成にあたっても数多くのコメントを頂き、心より感謝いたしております。 同時に、共に学んだ川口ゼミの皆様・日本女子大学原ゼミの皆様にも、ここに 感謝の意を表します。

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Ⅶ.参考文献

橋本摂子(2008)「現代日本におけるメディア環境の階層特性: JGSS-2005 によ るテレビ・新聞・インターネット接触を用いた実証分析 」 福井誠・加藤優希(2010)「マスメディアのライフサイクル分析― NHK 国民 生活基本調査のコーホート分析による―」経済・経営情報編、『流通科学大学 論集』第 19 巻第 1 号,61-74 NHK 放送文化研究所(2015)「テレビ視聴とメディア利用の現在」 米田幸弘・直井優(2004)「情報メディアとしてのインターネット -HP 利用 層の分析- 『大阪大学大学院人間科学研究科紀要.』第 30 巻, P.64-P.76 早稲田大学メディア文化研究所(2014) 「メディアの将来像を探る」, 一藝社 NHK 放送文化研究所(2011)「年齢による差がさらに広がる視聴時間」 北村日出夫・中野収(1983) 「日本のテレビ文化」,有斐閣

Bruno S. Frey, , Christine Benesch, Alois Stutzer(2007) Does watching TV make

図 1-3  広告費と GDP の推移  図 1-4  マスコミ4媒体別広告費推移   5000 0 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000 50000 55000 60000 65000 70000 75000 2005  2006  2007  2008  2009  2010  2011  2012  2013  2014 日本の広告費とGDP  GDP(百億円)  総広告費(億円)  マスコミ四媒体広告費(億円)  新聞(億円)  雑誌(億円)
表 4-1  テレビ・新聞・インターネットを被説明変数に置いた分析結果      (1)  (2)  (3)  変数  テレビ  視聴時間  週間新聞 接触日数  インターネット 利用ダミー  女性ダミー  0.364***  -0.438***  -0.105***    (0.0307)  (0.0305)  (0.00951)  生まれ年  -0.0215***  -0.0399***  0.0147***    (0.000950)  (0.000944)  (0.000315)  階層帰属意識(5
表 4-2  テレビ視聴時間を被説明変数により詳しく分析した結果  変数   テレビ視聴時間      女性ダミー   0.389***    (0.0277)  生まれ年   -0.0219***    (0.000991)  階層帰属意識(5段階)  下1〜5上   -0.196***    (0.0203)  15歳の世帯収入のレベル  下1〜5上   0.0284*    (0.0161)  世帯収入のレベル    下1〜5上   -0.150***    (0.0191)  自分学歴ダミー   -
図 4-2  テレビ番組ジャンル別視聴率推移 
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参照

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