理 学 療 法 学 第23巻 第2 号 51
〜
58頁 (1996年 )報 告
機能 的
電
気刺 激
に よ
る
C6
完
全
四
肢麻 痺
の
ADL
拡大
*白
土
幸 子
1)#市 江 雅 芳
o
半
田
康 延
2)要 旨
我
々は, 経 皮 的埋め込み電 極 法に よる機
能 的 電 気 刺 激 (Functional
Electrical
Stimula −
tion
:FES
)
を, 頸髄損傷者
のADL
拡大
の方
法に取
り入 れて い る。 今 回,
c
6
完 全 四肢
麻痺の上 肢 およ び下 肢につ い て
FES
によ る動 作 再 建 を行っ た。 上 肢で は,
食 事・
書 字 動 作 を実
用 的な レベ ル ま で制御
し た。下
肢につ い ては, ベ ッ トから車
椅 子へ の移乗時
の上肢
の負
担軽減
を目
的と し,両下肢
の膝伸展刺激制御
を行
っ た。 こ の際
,移乗動作時
の足部
へ の体
重負荷
量 を床反力計
で測定
し た ところ,
FES
では自力
での移乗動作
に比 し10
kg
荷 重量 が 増 加して いた。その結 果
,
ベ ッ ト
・
車椅
子 間の移
乗 動作
は介 助レ ベ ル か ら監 視 レ ベ ル に向 上 させ るこ とがで きた。
キー
ワー
ドC6
完 全四肢麻痺
,機
能 的 電 気 刺激
ADL
は じ め に脳 卒 中や脊 髄 損
傷
な どの中枢性
運動
ニ ュー
ロ ン 障 害に よ る麻 痺に対 して は,
運 動 療 法によ る機 能 回復に は限界
がある。個
人の 残 存 機 能 を 活か しADL
(Activities
ofDaily
Living
)
を拡大
する方
法は,
従 来のPT ,
OT
で は運 動 能 力を最 大 限 引 き出 すと ともに装
具・
自助 具の使 用,
また,家
屋改
造 を する事
などで対
応 して きた。近
年,
そ れ らに加え,麻痺
し た上下肢
の動作
をsThe
Improvement of Daily Activities of C 6
Quad−
riplegic Patient by Functional Electrical Stimu 旦ation
D
北陵ク1丿
ニ
ッ クYukikQ Shirado
,
RPT,
Masayoshi Ichie,
MD :HokuryoFES CIinic
#現所属 〒 376
−
Ol群 馬県1[i田郡大間々町大間々504恵 愛 堂 病 院 リハ ビリテ
ー
シ ョ ン科2)
東 北 大 学 大 学 院 障 害 科 学 運 動 機 能 再 建 学 分 野
Yasunobu Handa
,
MD : Dept.
of Restorative Neuromuscular Surgery and Rehabilitation,
TohQkuUniversity Graduate School of Medicine
(受付口 1994年9月26口/受理 口 1996年1月29口)
再
建 する方法
と して,機能 的
電気 刺激 (
Func −
tional
Electrical
Stimulation
:FES
) が脚 光を 浴びて い る。 これ までC4
,
C5 ,
C6
完 全四肢 麻 痺の上 肢1一
3),
胸 髄 損 傷に よ る完 全 対 麻 痺の 下 肢4s ),
脳 血 管 障 害に よ る片麻
痺の上下
肢7)8) に対
してのFES
が報告
さ れて い る。 今 回,
我々 はC
6
レベ ル 完 全四肢 麻 痺 者の上 下 肢にFES
を 行っ た。 上 肢にっ い て,
指伸
筋が末梢
性の障害
のた め,指
の 屈 曲制御
が中
心 と なっ た。 下肢で は, 移 乗 動作時
にFES
を行
い,体
重支持
の補助
を試
み た。な お
,
本 稿に関 して の写 真掲
載・
紹 介に関 して は,
当 人に 了解
を 得て い る。FES
の概要1.FES
の 原理 と適 応脳卒中
や脊髄損傷
で は,中枢内
の 運動伝導路
が 遮断
さ れて,
大 脳 皮 質 運 動 野か らの随 意 的 運 動 命 令が末 梢性
運 動ニ ュー
ロ ンに伝 達さ れず , 運 動が 惹 起され ない状 態と な っ て いる。FES
は こ の様な上
位
運 動ニ ュー
ロ ン障 害によ る麻痺
に対
し, 患 者の残 存 機能 (
音声
,呼吸
, 運 動,
筋 電 図な ど) を 制 御 命 令と して,
末 梢の神経
・
筋
に統御
された 電 気刺激
を与
え, 日常 生 活動作
に必要
な動作
を 再 建 する もの で あ る9)(図1
)。脳 血 管 障 害な どで は
,
四肢
の筋
を支
配 する末 梢 の 運動
ニ ュー
ロ ン に は障 害が な く, 多 くの場 合
FES
が適応
と な る。 し か し,脊
髄 損 傷で は,
損 傷 部 位に前 角 細 胞や根の障害
が存在
し, そ の範 囲 が広
く動作再建
に必 要な筋
の電気刺激
に対
する反 応が得 ら れ ない場合
は,FES
の適 応と な ら ない 症 例 もある。2
.FES
シ ス テム電 極は
,
半田,
尾宮
ら10)ll)が開 発 した経 皮 的 埋 め込み電 極 を 用い た。SUS
316L
ス テ ン レ ス ワイ ヤー
(
内径 25
μs)
を19
本 捩 じ り, テフ ロ ン被
覆 した後,
ヘ リカル巻
き に加
工 した もの で ある。 これ は,神
経を含
む生体組織
に対
する毒 牲が なく,
ま た,組織
反 応 も極めて少ない こ と が判
明 して い る12)。 これ を,皮膚,皮 ド組織
筋膜
筋 肉を貫 い て,
目 的とする末 梢 神 経 筋 枝にガ イ ド針
を用
い て刺 入 留 置し た。刺 激 装 置は 日本 電 気三栄 製
FESMATE
1230
を 用い た。 大 きさは, 14.
5
×8.
9
×3
.
1 (
cm)
, 重 さ は36094
)。一
台
で30
チ ャ ンネル の 出力を有し て い る。 主 電 源には充電式
; ッ カ ド電 池 (単四 ×4
本 ) を 用い て い る。 刺 激出
力は,
パ ル ス幅
を0
.
2ms
に固定
し た振 幅
変 動 方 式で,
周 波 数は必 脳 図 1 FES 原 理 図要
な収縮
力 を得な が ら疲 労を最 小 限に抑え,
しか も震えの ない滑
らかで十分
な強縮
を得る た めに,
20Hz
に固 定さ れて い る王3)。刺
激振幅
は, 電 極と 神 経・
筋との 距 離で決ま る が,本
シ ス テ ム の場合
t 最大
一 15V
で ある。3 .FES
完 成まで電
極
埋め込み術 後,一
週 間の安 静 期 聞を置 く。 その後,一
回5 分刺激
を一
日3
回か ら始め,徐
々 に時 問と回数
を増
や してい く。最終
的に,
三週 間 後に は一
同15
分 刺 激を一
日6
回まで行
う。 こ の トレー
ニ ン グは, 屈 筋,
伸 筋が交 互に通 電さ れる。 こ の期 間を治 療的電気
刺激
(
Therapeutic
Elec・
tlical
Stilnulation
:TES
) 訓 練 期 間と呼んで いる。 こ の間は,
筋
の持久
力 を高
める事
が 目的であ る。 刺 激によ る筋 力が徒 手テス トで4
レベ ル に至 る と,動作 再
建っ ま りFES
訓練
に移行
す る。FES 訓練
は,残存機能
に よるス イ ッ チ操 作の使 い こな し や,
FES
を利 用 して食事
や書字
を実際
に行うことで,
持 久 力 を 向 上さ せ ること が 目的と な る。FES
訓練
で重要
な点
は,刺
激に よ る筋疲
労である16)。 筋 疲 労 が 生 じて くる と収縮
力は衰え,ド肢
であ れば膝折
れが生じ転倒
の危 険 性が出て く る。従
っ て常
に筋
の収縮
を確認する必 要がある。 症伊
囗1 .
現 病 歴47
歳,
男 性。1991
年の4
月7
日, 仕 事中
作業
現場
か ら転落
しC5 , 6
骨 折 と診 断される。 直ち に,
前 方 固定 術を受
け る。 その後
, 通常
の理学療
法
を行
い,1992
年9 月
に当
ク リ ニ ッ クを受診
し , 10月
に FES の た めの電 極 埋め込み手 術を行っ た。2 .
入 院 時 評 価 入 院 時の評 価では, 身 長156
cm , 体重56
kg
。 徒 手 筋 力テ ス ト は,
肩 甲骨 周 囲筋
が 左右 3 〜 4
レ ベ ル,
肩 関 節 周 囲筋
が4
レベ ル ,肘関
節 屈 曲 が4 ,
伸 展は0
で あっ た。 ま た,
前 腕 回 内3
・
回外 4
,手
関節背
屈4 ・
掌 屈3 ,
手 指 屈 曲・
伸 展は0
であ り,体幹機能
も麻 痺 しておりC6
完 全四肢 麻 痺で あっ た。 筋 緊張
は休幹
上下肢
とも弛緩性
であっ た。 他 動 関 節 可 動 域に は制 限はなか っ た。 移乗動作
は機 能的電気 刺激に よ るC6 完 全四肢 麻 痺の ADL 拡 大 53
横乗
り方式
で,殿部
の引
き摺
りを家族
が介
助。 食事
はマ ジ ッ クバ ン ド式スプー
ン ホル ダー
(自 助 具)
を使
用し,
手背
屈と前 腕 回外 運 動で 行っ て い た。
書字は テノデー
シ ス・
アクシ ョ ンを利 用 して いた が,握力
が ない た め筆
圧が低 く,字
が読み取 れ ない状
況で あっ た。職 業は 工務 店 を経 営 し て お り
,客
との取り引き や従業員
へ の指示
が主な仕事
で あ る。再
建動作
に対
す る希望 は,
「仕
事の打ち合わせ の時, 字
がうま く書
きたい。」,
「一
.
一
入で 車 椅 子 か らベ ッ ト の移 動が したい」 と明 確であっ た。3
.術前評価
表面電
極を用い た電 気 刺 激によ る筋 収 縮 反 応 検 査より,
手の指 伸 筋に反 応がない事
が〕卜
IJ明 。筋萎
縮が著 明で,
末 梢 性の障害
が強く疑わ れ た。手指
屈筋
・
母指屈筋
・
母指伸筋 ・母指外転筋
に関して は,
刺 激 反 応は良 好であっ た。 また,
下 肢の筋
は 全て電 気刺
激に反 応し た。 方 去1 .
上肢のFES
上 肢の埋め込み部 位は
,
橈 骨神経
深 枝・
短母指
伸筋
・
長母指
伸筋
・
短母指外転筋 ・
短 母指
屈 筋・
長 母指
屈筋・
浅指
屈 筋・
深 指 屈 筋と した。 把 持 動 作の再 建に必 要な.
手指
屈筋
が中 心で ある が,
電気
刺 激に対 する反 応性
の改善
を目的
と し,手指伸
筋群
にも埋め込んだ。通
常 C6
完 全四肢麻痺
で は,指伸
筋を刺 激して 手指の伸 展を行 うが,
本 症 例で は,
末 梢 性の 障害
のた めに刺 激 反 応が不 良で あり,伸
展は不 可能
で あっ た。 そこで,手指屈筋 ・母指
屈 筋・
母 指 外 転筋
刺 激に よ る把 持を再 建し,
これに よ り,
自助具
を 使 用せずにス プー
ンを把持
し た食事動作
や , ペ ンを把持
しての書字
を可能にす るこ と と し た。上 肢に
用
い た刺激
パ ター
ン と刺激
部 位を図2
左 に示す。縦軸
は,
装 置の読み込 む 時 間経
過の ア ド レ スを示 し,
横 軸 は刺 激 電 圧値
を示
す。一
度
ス イッ チを押
すと, ア ドレ スが0
か ら50
まで進み刺激
が継 続さ れる。 刺 激 筋は,
手 指の屈 筋のみ と した。 再びス イ ッ チを押 すとア ドレ スが200
か ら250
まで 進 むた め,
こ の パ ター
ンで は自動的
に刺激
が停
止さ れ る。 そ れ まで刺 激は継 続 さ れ る。2
.
下肢のFES
下 肢の埋め込み部 位は
,
大 殿筋
・
中
殿筋 ・
大 腿神経
・
ハ ム ス ト リングス・
総 腓 骨 神 経と した 。 筋・
E
萎縮
の改善
をも 目 的と して,
膝 屈 筋 群・
足 背屈
筋群
へ も埋め込ん だ 。目的 制 御 動 作は大 腿四
頭筋
, 大殿筋
の 両側
同 時 刺 激による体
重支持
動作
であ り, これにより,
移乗動
作時
の補
助とすること と した。 上肢 (食 事・
書字 動 作 〉 刺激電 圧 値 下肢 (トランスフr−
) 刺 激電 圧 値 00
50−−
200−
250鬯
一
.
「
9喩
ρ
卩
一
鬯
冒
鬯
.
一
・
・
■
,
P彈
鬯
鹽
手指屈伸筋 母指外 転筋 長・
短 母指屈 筋一
,
}
胃
一
一
一
一
一
一
冒
層
.一
甲
呷
一
一
一
一
.
−冒
一
一
一
呷
卩
霞
・
甼
鄲
一
一
一
一
一
大殿 筋、 大腿神経璽
騨
「
,
冒
一
一
冒
一
讐
.
騨
騨
帰
卩
呷
−,
冒
ロ
層
,
鄲
卩
一
250 ア ドレス ア ド レ ス 図2
刺 激パ ター
ン と制 御 部 位 上肢で は,
スイッチを.
回押す とア ド レ ス 50 まで進み,
刺 激が入 り断続さ れ る.
再 びス イッチを押 すと,
ア ド レ ス200か ら250 に進み,
自動 的に刺 激が解 除さ れ る,
下 肢で は,
スイッ
チを 押 すと刺 激が入る が, ア ドレ ス 50 で自動 的に刺激が停止 する.
下肢
の刺激
パ ター
ン と制御部位
を図 2
右に示 す。
こ の パ ター
ン は,
一
度ス イッ チを押
す事
で両側
の 大腿
四頭筋
お よび大 殿 筋が刺 激され,
ア ドレスが50
に き た時点
で自動
的に刺
激が停
止される。 こ のア ドレ ス50
まで 進む時 間は, 刺 激 装 置に付 属 する ダ イアル に よっ て変更
することが で きる。 本 症 例の場 合,
移 乗 動 作に要
する時
間, っ ま り,刺
激継続時間
を1.
5
秒と した。 これは,
上肢
で支持
する時聞
を 最 短にする た め,
数 回 試 行 した後,
設定
し た時
間であ る。 ま た,
ス イ ッ チを押
してか ら 刺 激が実 際 入るまで の時 間 (タイム ラ グ) も設 定 可能
で, こ れ を2 秒
と し た。FES
を利 用 し た移乗動作
の方法
は, ス イ ッ チ を押
し てか ら2
秒の問に移動
がで きる よ う, ま ず手
の つ く位置
や体幹
の 前傾の度 合いな ど体 勢 を整 え る。 その後,
「ピー
」 と い う発信音
を聴
き , 刺 激によ る膝 伸 展 (1.
5s
)に合 わせ,
殿 部を浮か せ た移乗動作
を行
う。 ス イ ッ チ, 刺 激 装 置は ベ ル ト で腰 部に固 定 し た。3 .
制 御 入 力 装 置 (ス イ ッチ)症
例
は肘 屈曲 ・手
関節背屈 ・前腕
回外
まで残存
機能
が あり,手指機能
が麻痺
して い るこ とか ら, 母指 内 側で 叩 く事の可 能な押し ボ タン式の ス イ ッ チを 作 製し た。
これ を上 肢,
下 肢 双 方の 制 御に使 用 し た。4 .
床 反 力 計に よ る計 測 下肢の移 乗 動 作の制 御に際 して,
日本 電 気三栄製
のSTATIC
SENSOGRAPH
I
G
O6
を用 い て床
反 力 を 測 定 した。 症 例が殿 部 をこす りな が ら行
っ た自力
での移乗動作 (自
力 ト ラン ス フ ァー
)
と, FES を利
用 し た移乗 動作 (
FES ト ラ ン ス フ ァー
)と を比 較し た。 これにより,
下 肢へ の荷 重 負 荷が上 肢の負 担 を どの程 度 軽 減 したか を 分 析 し た。 計 測は,
自力に よ る移 乗 動 作 およびFES
で の移乗動作
の2 種類
を,
それぞれ左側
か ら3 回
,右
側
か ら3
回,合計
12回行
っ た。 結 果1 .
上 肢FES
食 事 動 作で は,
手 指の開 きは テノデー
シ ス・
ア クシ ョ ンを用い, ス プー
ンを 母 指・
示 指 間に は さ ん だ後, 手 指 屈 筋の刺 激に よっ てス プー
ンを把持
し た。自
助具
の場合
は前
腕 回 内 位か ら回 外 する こ とで食物
をス プー
ンです く う事
になるが (図3
),
FES
を用いる と巾
問位
か ら回外
す るこ とで食事
図3
自助具で の食事場 面 前腕回 内位か ら手背屈機能で回外機 能を代償し ている.
ま た,
食 事中常に肩屈曲・
外転位を保持して いる.
図 4 FES で の食 事 場 面 自助 貝での食 事のよう な肩 関 飾の保 持 肢 位は見 られ ない.
ま た,
前 腕 回 内位 か らの動 作は見 られ ない.
機 能 的電 気 刺 激に よ る
C6
完 全 四肢 麻 痺のADL
拡 大 55 図5 これ は,
同じ時 間 内に症例が書いた数字である.
L
の=一
行 が,
FES でペ ンを把持 して書いた数 字であ り,
下の一
行が症 例の テ ノデー
シ ス・
アクショ ンにより書いた数字である,
薄 く,
明 確 でない.
図6
自力での トラン ス フ ァー
後 面 か らの写 真である.
殿 部 が浮 上 して おらず,
円常では介助 を必 要と して いた.
が可 能 とな り,
よ り健 常 者に近い動 作と なっ た(
図4
)
。 ま た, 自助
具とFES
で の食事動作
を比 較 すると,
自助 具で は食 事 中, 常に肩
屈曲 ・外転
位
をと り続
け疲労
が早
い。FES
の場合
は,
自助 具 使 用 時の ような肩 関 節の 保 持 肢 位は見ら れ ない。書 字 動 作へ の
FES
で は, 筆
圧が高
くなり, 濃
く明
確な字
が書
け る よ うになっ た (図 5 )
。
退 院 後 も見 積 も り書
類の作成
や,客
との商
談に利
用 し て い る。2 .
.
ド肢 FES
FES
を利 用 し た移乗動
作 訓練
は,当 初,
一
冂5
回 程 度の筋 持 久 力 しか な か っ たものが, 3
か月 後の 退 院 時に は一
日20
回 程 度 可 能と な っ た。 ま た,車
イス と同
じ高
さのベ ッ ト間
での移乗動作
は 可 能と なっ た が,車
イスと高
さの違 う所や,
車イ ス との距 離が遠 くな る所などへ の移 乗は困 難で あ っ た。 現在
,症例
は自
宅で車
イス とベ ッ ト間の 移 動にFES
を利 用 して い る。 図6
は,
自力での 移 乗 動 作を背 面か ら撮影
し た写 真で あ り, 図7
はFES
で の移 乗 動 作 を 示 して い る。 殿 部の 上が り 具 合が,
自 力のもの に比べ, FES
の方が勝っ て い た。 こ れ まで の殿部
の引
き摺
り介助
は不要
と な り, 監視
レベ ル までADL
が向
上し た。3 .床
反 力計
によ る結
果 右 側へ の移 乗 動 作の平 均 最 大 荷 重 量は,
自力 ト ラン ス フ ァー
で11.
3kg ,
FES
ト ラ ンス フ ァー
は 図 7FES
で の ト ランスフ ァー
膝・
股の伸 展 制 御を して い る.
図6と比 較 すると,
殿 部の上が りが 勝っている.
20.
5kg
で あ り,
左 側へ の ト ラ ン ス フ ァー
で も 自力
で は8
.
O
kg
,FES
で は20.
O
kg
であっ た。両
者
の移乗動作
の デー
タ の一
部を図8
に示 す。
両 者と も二相の軌跡
が見ら れ る。一
相 目
は プ ッ シ ュ アッ プ寸
.
前の体 幹の前 傾によっ て荷 重さ れ た 軌 跡であ る。FES
ト ラ ン ス フ ァー
で は常に体 重 が負荷
されて い る が,自力
トラ ン ス フ ァー
の方
は ,移
動 する前
に一
一
一
つ の 盛り上が り を示
して い るの み であ る。次
の 二相 目
が, プッ シ ュ アッ プ を して殿部
を イス か ら離
し移動中
の軌
跡であ る。 自力 ト ラ ン ス フ ァー
に比 し, FES ト ラ ン ス フ ァー
は1
頃余斗 が急
で あ り時 間が 短縮されて い る。 っ ま り,
足 部 へ の体 重の負 荷を よ り強 く行いな がら,
短 時 間で 移 乗 動 作が可能になっ た こ とを示 して いる。
(Kg) FES トランスアァ
ー
30 2G 10 皿ax21.
G 侭3) 10S 30 20 10 自力 トランスファー
一
10s 図8 床 反 力 計に よ る荷 重 変 化 これ らは,
症例が行っ
た トラン ス ファー
の荷 重 変 化のデー
タの一
部であ る.
二相 の軌 跡が認め ら れ るh,
・
相 目の山が ト ラ ン ス ファー
を行う寸 前の体 幹の前傾な ど に よ る体重負荷によ るものである.
二相 目は, 殿部を椅子か ら離し, ト ラ ン ス ファー
移 動 中の時の体重負荷であ る.
考
察
上
肢 FES
で, 電 気 刺 激 に反 応 しない指 伸 筋を 制 御 するこ と は不 可能
であ っ た が, 患者 自身
の テ ノ デー
シス・
ア クシ ョ ン と指 屈 筋の制 御を組み合 わ せ るこ とに よ り,食事
・
書字動作
が可能
と なっ た。 食事
の際 自渤
具を使
用 する と肩
屈曲
・
外転
位
を とっ たが,
これ は,
料 理 を す く う時の前 腕 回内機能
を代償
して いる ため と思われる。FES
を 用い ると, 健 常 者と同 様の把 持 と な る た め, 回内
運 動 を伴 わな くて も食 事 が 可 能 と なり,
肩の代 償 運動
は不要
とな っ た。食事動作
において は,
テ ノ デー
シ ス・
ア ク シ ョ ンで は把持
が不十
分で,十
分 な筆 圧が得 ら れ な か っ た が,
手 指 屈 筋をFES
で 制御
し た ことに より,
ペ ンを 強 く把 持できた た め,
濃 く明確
な字
が書
け る よ うにな っ た。 下 肢のFES
では, 床 反 力 計 を 用いた測 定で,FES
を利用
し た移 乗 動作
の際
,荷
重 変 化の一
相 目に常に体 重が負荷
さ れて い た。 これ は, ス イッ チ を入れてか ら発信音
が なるまでの タイム ラグの 間,
体 幹の前 傾な どの準 備 態 勢を とっ て いた か ら で あると思 われ る。 自力で の移 乗 動 作の 際,一
相目
と二相 目
の間
に連 続 性が認め られな かっ た 。 こ れ は,自分
の 意 志で直
ぐに移
動で きる た め,
特に準
備期間
を必 要 とせず,
移 動 する直 前に体 幹前 傾 を行う だ けで よい ため と考
え ら れ る。 二 柑 目 を比 較 すると, FES
の下肢荷
重量 が, 自力
での移乗
に比し,
平 均10kg
増 加して いた。 これ は, 膝の伸
展刺
激に よ り,体
重 負 荷が足 部に達 して い る こ と を示 して いる。C6
完 全四肢麻痺
では, 肘
の伸 展と下 肢に は随 意 機 能が ないた め, 自
力で移 乗 す る際
に は,肘関節
の ロ ッ ク機 構と肩の筋 力で プッ シュ ア ッ プ を行
い, 殿部
を浮
か して い る。 足部
へ の体 重 負 荷の増 加は,
上 肢の負 担の軽 減を意 味し て おり,移乗動作
を容易
に して い ると考
え ら れる。 ま た, FES
で の移乗動作 時
の二相 目
の移動時間
の 短 縮は,
膝の伸 展 刺 激によ っ て 殿 部の引 き慴 り が解消
し,移乗動作
その ものが短 時間
で行われた 事を示 して いる。 本 症 例は,
食 事・
書 字な ど とい っ た明 確な希 望 を持
っ て い たこ とや,関節拘縮
が な か っ た こと,
制御
に必要
と さ れ る筋
の刺激
反 応が良好
であ っ た こと がFES
適 用の成 功 要 因で あっ た と 思 わ れ た。 お わ り に今 回
,C6
完 全四肢 麻 痺 患 者の上 下肢
にFES
を適 用 し, 日常
生活動作
の一
部 を 再 建 することが で き た。本症例
に対
するFES
は,食事
・
書字
・
ト ラ ン ス フ ァー
を よ り確 実な もの にする ため の手 助け と なっ た。 食事
は自
助 具に代わ り,書字
は不 可 能であっ たものが可 能と な り, 車 椅 子とベ ッ ト 聞の移 乗 動 作は介 助レベ ル か ら監 視 レ ベ ル へ と導 く事
がで きた。 ま た,健
常 者 と同じ前 腕の肢位
で 食 事がで きたこ とに よ り 「食べ やすい」,
書 字が可能
にな っ たこと で 「仕 事に役 立て られて う れ し い」 な どの , 患者 自身
のFES
に対 する プ ラス の機 能 的 電 気 刺 激に よる
C6
完 全 四肢 麻 痺のADL
拡 大 57 評価
も得 られた。 電 気の力
で はありな が ら, 自
ら の手 足で 動 作 を 獲 得で きる とい うことは,
心理的 に も患 者に とっ て大 きい ものがある。
これ まで の リハ ビ リテ
ー
シ ョ ン は,残存機能
を 最 大 限に利 用 するとい う概 念で行 われて きた。FES
は これ に加え,麻
痺して い る筋 を 動 か し,
動 作を再構
築し ようとい う, 全 く新 しい発想
を リ ハ ビ リ テー
シ ョ ン の現場
に も た ら す。 ま た,
FES は,
麻 痺 肢そ の もの の筋 収 縮 を利 用 するた め,
筋・
骨 萎 縮,
拘 縮の防 止な どの治 療 的メ ↑丿ッ トもある 。 しか しな が ら, 電極刺
入 部の処置
や感染
,装置
そ の もの の 着 脱な ど課題 も残
さ れてい る。麻
痺肢
に対 する機能的電気刺激
は,動作
再建
に あたっ て の術 前 術 後 評 価・
再 建 動 作に必 要な埋あ 込 み筋
の検討
・
再建
動 作の検 討・
刺 激 調 整 という 分 野を,
理学 療法
士が医師
と共
に担
っ て い る。 日 常 生 活 動 作 獲 得へ の アプロー
チは , リハ ビ リテー
シ ョ ンの中
で大 変 重要な位 置 を しめ,
患者
が第・
一
に願 うと こ ろ で も あ る、FES
が その ための一
助
と な れ ば幸
い で ある。 現 在,
完 全 埋め込み型 装 置の開 発 も進んで お り,
患 者のADL
拡 大に今 後さらな る期 待が持て るで あろ う。稿を
終
え る にあた り,
ご協力
をいた だい た目時
明 雄さんに深 く感 謝 する。 文 献D
半田康 延 :末 梢神 経へ の機 能的 電 気 刺 激に よ る麻 痺 肢の機 能 再 建.
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<Abstract>
The
Improvement
ofDaily
Activities
ofC6
Quadriplegic
Patient
by
Functional
Electrical
Stimulation
Yukiko
SHIRADO#,
RPT,
Masayoshi
ICHIE,
MD
Ubku,:yo
EES
Cginic
#
P}resent:
Dopt
of
Rehabigitation,
Keiaido
Ifospital
Yasunobu
HANDA,
MD
Dopt
of
Restorative
IVeurvmuscutar
Surgery
andRehabilitation,
7bhoku
Clitiversity
Graduate
Schooi
of
Medicine
A
multichannelfunctional
electrical stimulation(FES)
system usingpercutaneous
intrarnuscular
electrode.s was appliedto
aC6
quadriplegic
patient
for
improvement
ofdaily
activities.Since
hand
function
is
mainlyimpaired
in
the
upper extremities ofC6
quad-ripregia,
the
daily
tasks
canbe
usually perforrnedby
using selfdevices
and/or dy-namictenodesis
action ofthe
hand
providedby
active wristflexion
and extension movements,The
requirement ofthis
patient was,however,
to
acquire sophisticated, rigid and stablehand
activitiesfor
writing anddrawing,
which were absolutely nec-essaryfor
his
job.
Both
methods were not satisfactoryfor
this
pttrpose.
Intramuscular
clectrodes wereirnplanted
to thefinger
flexors
andthumb
musclesfor
restoring cylindricalgrasp
motion of the right handby
FES.FES-control of
hand
opening was notprovided
because
ofdenervation
ofthe
extensordigitorum.
By
pressing
the
controlbuttons
withleft
hand,
he
couldgrasp
the
writ-ing
or eating utensilstightly
withhis
righthand.
Thus
he
could utilizethe
graspingmotion practically
for
his
daily
tasks
with great satisfaction.
The
transfer
movementfrom
abed
to
a wheel chair,for
example, wasdicacult
to
performindependently
in
such ahigh
spinal cordinjury
patient.
The
force
for
pushing up
his
body
was not enoughfor
his
transfer
movementbecause
of weak-ness ofthe
shoulder muscles andparalysis
ofthe
tricepsbrachii.
Antigravity
muscles such asthe
quadriceps
femoris
andgluteus
maximus were activatedby
ourFES
system simultaneously withthe
volitionalpushing
up motionof
the
patientin
order toprovide
him
with theindependent
transfer movement.
Comparing
the results ofgreund
reactionforce
(GRF)
during
transfer movementwith and without
FES,
the
peak
o'eGRF
withFES
was1O
kg
greater
than
thatwith-out
FES.
This
result suggests thatthe
load
onhis
upper extremitiesduring
push up action was markedly reduced with a support ofFES-powered
antigravity rnuscles.After
training
oftransfer
movement withFES
for
severaldays,
the
patient
couldtransfer
by
himself
from
a wheel chair withthe
FES
systemsin
his
home
andhis
othce everyday.