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周産期の女性が体験した医療者からのポジティブ・サポートとネガティブ・サポート

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J.Jpn.Acad.Mid.,Vol.18,No.2,pp.34-43,2004.12

周 産 期 の 女 性 が 体 験 した 医 療 者 か らの ポ ジ テ ィ ブ ・

サ ポ ー ト とネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー ト

Positive

support

and

negative

support

from

medical

staff

which

perinatal

women

experienced

相 川 祐 里(Yuri AIKAWA)* 抄 録 目 的 本 研 究 は,ソ ー シ ャル ・サ ポ ー トに お け る ポ ジ テ ィブ ・サ ポー トとネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー トとい う概 念 を用 い て,周 産 期 の 女 性 が 体 験 した 医療 者 との か か わ り をポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー トとネ ガ テ ィブ ・サ ポー トに分 け,そ の構 成 要 素 を明 確 に し,比 較 検 討 す る。 そ の 結 果 か ら,医 療 者 の か か わ りが ポ ジ テ ィ ブ ・ サ ポ ー トに な るた め に必 要 な要 素 は何 で あ るか を明 らか に す る こ とを 目 的 とす る。 対 象 と方 法 対 象 は,研 究 承 諾 の 得 られ た病 院 主 催 の 母 親 学 級 に参 加 し,妊 娠 合 併 症 や,妊 娠 に よ っ て増 悪 す る よ うな基 礎 疾 患 を もた な い とい う条 件 を 満 た す 者6名 。 デ ー タ 収 集 に は,半 構 造 化 面 接 法 を用 い,妊 娠32 週,産 後5日 目,産 後1か 月 の3時 点 で 実施 した 。 得 られ た デ ー タ は,面 接 内 容 を逐 語 録 と して デ ー タ 化 した後,内 容 分 析 を用 いて 帰 納 的 ・記 述 的 に分 析 を行 っ た 。 結 果 分 析 の結 果,周 産 期 にお け る医 療 者 か らの ポ ジ テ ィ ブ ・サ ポ ー トと して は,〈 共 感 に 基 づ い た か か わ り〉,〈 ス ク リー ニ ング 的 な かか わ り〉,〈 「母 親 モ デル 」 の提 示 〉,〈 専 門家 に相 談 で き,ま た 仲 間 と 集 え る場 の提 供 〉 な どが 抽 出 され た。 また 各 時 期 に お け る ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー ト と して は,1)妊 娠 期 は 〈対 象 者 不 在 の情 報 提供 〉,〈 共 感 の 欠 如 した かかわ り〉,2)出 産 期 は 〈一 方 的 な 医療 行 為 〉,〈 気 持 ち を表 出 で きな い雰 囲 気 〉,3)入 院 期 は 〈個 別 性 が 排 除 され た か か わ り 〉,〈 医 療 的 正 義 の 押 し付 け 〉,〈 自己 判 断 力 を奪 う よ う な情 報 提 供 〉,4)産 後1か 月 間 は 〈対 象 者 不 在 の 情 報 提 供 〉,〈 共 感 の 欠 如 した か か わ り 〉 とい う カ テ ゴ リー が抽 出 され た 。 結 論 周 産 期 の 女 性 と医 療 者 との 間 で も,ソ ー シ ャル ・サ ポ ー トの一 側 面 で あ るネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トが 発 生 して い る こ とが明 らか に な った 。 そ して ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー トとポ ジテ ィブ ・サ ポー トを比 較 す る と, 医 療 者 の サ ポ ー トが 意 図 した 効 果 を もた らす に は,そ の サ ポ ー トは受 け手 が必 要 と して い る サ ポ ー トで *九 州 大 学 大 学 院 医 学 研 究 院 精 神 病 態 医 学 児 童 精 神 医 学 研 究 室(Department of N

europsychiatry, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University)

2004年5月17日 受 付2004年11月22日 採 用

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周産 期 の女 性 が体 験 した医 療者 か らの ポジ テ ィブ ・サ ポ ー トとネガ テ ィブ ・サ ポー ト

あ る か,医 療 者 が 自 身 の 発 す る 影 響 力 を 考 慮 し て い る か が 大 き く関 与 し て い る こ と が わ か っ た 。 キ ー ワ ー ド 周 産 期,医 療 者,ソ ー シ ャ ル ・サ ポ ー ト,ポ ジ テ ィ ブ ・サ ポ ー ト,ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー ト

Abstract Purpose

This study is designed to categorize and define medical support, which has been experi-enced by perinatal women, into positive and negative factors and to weigh the positive against the negative, by using the concepts of the positive support and negative support in social support. And the analysis of this study leads finally to what elements are needed for the medical staffs in order to help their support become positive support.

Method

The subjects of this study are six women who participate in mothers' class organized by the hospital which has consented to cooperating for the research. They do not have the basic disease which would be aggravated by pregnancy complications and pregnancy itself. The date are collected by using semi-structured interviews, which were held at the following three stages; the 32nd week of the pregnancy, 5th day after delivery, and one month after delivery. As raw data are converted into transcribed data, the date are compiled and anal-yzed inductively and descriptively by the method of content analysis.

Results

As a result of the analysis in the perinatal period, the types of positive supports, which are provided by medical staff, can be categorized into"sympathetic support","screening pur-pose","mother-model support","offering of a field where a perinatal woman can talk to specialists and group together". The types of negative supports can be different in each per-inatal term as follows : 1) Pregnancy period "medical comments without acknowledging the presence of the client", "deficiently sympathetic care"; 2) Delivery period-" one-sided medical act","emotionally repressed situation"; 3) Hospitalization period-"impersonalized correspondence","intrusive medical justice","provision of information hindering voluntary decision"; 4) the period of one month after delivery-"medical comments without acknow-ledging-the presence of the client","lack of sympathy".

Conclusion

It becomes clear that negative support has occurred even between the perinatal woman and the medical staff. With the analysis of factors in both negative and positive support, it is considered that the achievement of effective support intended by the medical staff are sig-nificantly involved with whether support is truly demanded by perinatal people and how med-ical staffs recognize the influence of their support.

Key Words Perinatal period, a medical staff, social support, positive support, negative support. I緒 言 母 親 とな る女 性 に とっ て,子 ど もの誕 生 とい う 新 しい命 との 出会 い は,喜 び や充 実感 を もた らす もの で あ るが,同 時 に さ まざ まな 不 安 や 悩 み を も つ もの で も あ る。 さ らに現 代 社 会 にお い て進 む核 家族 化 は,母 親 を孤 立 させ る結 果 と な っ て お り, 出産 ・育 児 を取 り巻 く環 境 は厳 しさ を増 して い る。 この よ うな 状 況 の 中 で,ど うす れ ば母 親 の不 安 や 日本 助 産 学会 誌 第18巻 第2号(2004.12) 35

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周 産期 の女性 が体験 した医 療者 か らの ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー トとネガ テ ィ ブ ・サ ポ ー ト 負 担 を軽 減 して い くこ とが で き るか と い う発 想 か ら,育 児期 の 母 親 を対 象 と した ア プ ロ ー チ は 各 方 面 か ら行 わ れ て きた 。 そ の 中 で,母 親 を取 り巻 く 周 囲 の 人 び とが,い か な るサ ポ ー トを行 え ば よい か とい う手 立 て を得 る た め の研 究 とし て,そ の人 の対 人 関 係 の あ り方 が ス トレス に よ る健 康 障害 を 左 右 す る とい う,「 ソー シ ャル ・サ ポー ト」 の概 念 を取 り入 れ た 研 究 が 進 め られ た 。 これ まで の ソー シ ャル ・サ ポ ー ト研 究 を概 観 す る と,サ ポ ー トとい う概 念 本 来 の 含 意 か ら,そ の 人 の 良 い対 人 関 係 の あ り よ う がWell-beingの 状 態 を増 加 させ る とい う,ソ ー シ ャル ・サ ポ ー トの 肯 定 的 な影 響 へ の関 心 が高 く(難 波,1999),周 産 期 の 女 性 に対 す る ソー シ ャル ・サ ポ ー ト研 究 も, そ の 側 面 に 注 目 し て い る(喜 多,1997;岩 田, 2001)。 しか し,臨 床 的 実 践 に おい て も,ま た 日常 生 活 で の感 覚 に照 ら して も,個 人 が 何 らか の 問 題 を抱 え た時 に,他 者 か らサ ポー トを受 け る とい う こ とは,と て も複 雑 で 微 妙 な状 況 で あ る。 サ ポ ー トに よ っ て ポ ジテ ィ ブ な効 果 が 生 じる場 合 もあ れ ば,逆 に ネ ガ テ ィブ な 効 果 を もた らす場 合 もあ り うる こ とは容 易 に推 測 で き る(菊 池,2003)。 この よ うに,ソ ー シ ャル ・サ ポ ー トが 心 身 の 健 康 に肯 定 的 な効 果 を もつ と一 括 して 結 論 付 け て し ま う こ とに疑 問 を も ち,対 人 関 係 に お い て 望 ま し い効 果 を もた らす はず の言 動 が,意 に 反 して 望 ま し くな い効 果 を もた ら して しまう とい う過 程 を扱 っ た研 究 が近 年行 わ れ る よ うに な っ て い る。 また 現 段 階 に お いて は,周 産 期 の 女性 を取 り巻 く重 要 な サ ポ ー タ ー と して 存 在 し,ポ ジテ ィブ ・サ ポ ー ト の提 供 が期 待 され て い る 医療 者 か らの か か わ りに お い て も,同 じ よ う な現 象 が起 こ って い る の か に つ い て は十 分 に明 ら か に され て い な い 。 そ こで 本 研 究 で は,サ ポ ー ト提 供 者 を周 産 期 の 女性 にか か わ る医 療 者 に 限 定 し,医 療 者 か ら周 産 期 の 女性 に提 供 さ れ るか か わ りに もネ ガ テ ィブ ・ サ ポ ー トが 存 在 す る の か を明 らか にす る。 さ ら に 周 産 期 の女 性 が体 験 した 医 療 者 か らの ポジテ ィブ ・ サ ポー トとネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トの構 成 要 素 を明 確 に し,比 較 した結 果 か ら,医 療 者 の か か わ りが ポ ジテ ィ ブ ・サ ポ ー トにな るた め に必 要 な 要素 は 何 で あ るか を明 らか に す る こ とを 目的 とす る。

II用

語の定 義

ポ ジ テ ィ ブ ・サ ポ ー ト 被 援 助 者 で あ る周 産 期 の 女 性 が,医 療 者 か ら提 供 さ れ た サ ポー トを 「助 け に な っ た」 と判 断 す る 主 観 的 な体 験 。 ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー ト 被 援 助 者 で あ る周 産 期 の 女 性 が,医 療 者 か ら提 供 さ れ た サ ポ ー トを 「助 け に な ら な か った,迷 惑 だ っ た,い や な思 い を し た」 と判 断 す る主 観 的 な 体 験 。 III研 究 方 法 1.研 究 デ ザ イ ン 本 研 究 で は,周 産 期 の女 性 が 体 験 した 医 療 者 か らの ポ ジ テ ィブ ・サ ポー トとネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トの構 成 要 素 を 明 らか に す るた め に は,被 験 者 が 自 身 の体 験 に つ い て 回 想 し,そ の 人 な りの 観 点 か ら 自由 に語 り,そ れ を記 述 し分 析 す る質 的 記 述 的 調 査 が 適 して い る と判 断 した 。 また 本 論 文 で 扱 う 「周 産 期 の女 性 に かか わ る医 療 者 」 とは助 産 師,医 師 に限 定 した。 2.研 究 対 象 者 対 象 は,研 究承 諾 の得 られ た 病 院 主 催 の 母 親 学 級 に参 加 し,デ ー タ収 集 開 始 時 の 妊 娠32週 時 点 ま で 正 常 な妊 娠 経 過 を経 し,妊 娠 合 併 症 や,妊 娠 に よ っ て増 悪 す る よ う な基 礎 疾 患 を もっ て い な い と い う条 件 を満 た す 者6名 と した 。 3.デ ー タ 収 集 期 間 と方 法 デー タ の収 集 期 間 は2003年6月 か ら10月 で あ る。 デ ー タ の収 集 は,研 究 参 加 へ の 同 意 を得 られ た 周 産 期 の女 性6名 に,妊 娠32週,産 後5日 目,産 後 1か 月 の3時 点 で の 半 構 造 的 面 接 法 を 用 い て行 っ た 。 この3時 点 を選 ん だ 理 由 は,妊 娠32週 は研 究 対 象 病 院 主 催 の母 親 学 級 が 終 了 し,妊 娠 期 に受 け る 医療 者 か らの か か わ りを ま とま りで 回 想 で き る と して,ま た産 後5日 目 は 翌 日の 退 院 を控 え そ れ ま で の 入 院 生 活 を振 り返 れ る時 期 で あ り,産 後1か 36 日本 助 産 学会 誌 第18巻 第2号(2004.12)

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周 産 期 の女 性 が体 験 した 医療 者 か らの ポジ テ ィブ ・サ ポー トとネガ テ ィブ ・サ ポー ト 月 は医 療 者 との か か わ りが1か 月健 診 時 で い った ん終 了 す る こ とが 多 い こ とか ら設 定 した 。 質 問 内容 と して 医療 者 の か か わ りが助 け とな っ た もの,助 け に な らな か っ た もの な ど を設 定 し, 必 要 時,問 い か け た。 質 問 にあ た っ て は,研 究対 象者 の 主体 的 な語 り を尊 重 し,感 情 の 流 れ を止 め な い よ う注意 した。 面 接 は1回 の 面 接 時 間 はお よ そ30分 か ら60分,研 究 対 象 者 が 同意 した場 合 に は 面接 内容 を録 音 した 。 4.分 析 方 法 マ イ リング(1983)の 内 容 分 析 法 を参 考 に 分析 を行 った 。 まず面 接 に よって得 られた イ ンタ ビュー か ら,医 療 者 の サ ポー トに関連 す る と思 わ れ る記 述,合 計90エ ピ ソー ドをす べ て 抽 出 した 。 そ れ ら をポ ジテ ィブ ・サ ポ ー トとネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー ト の概 念 に基 づ き分 類 し,各 カ テ ゴ リー に割 り振 ら れ た1エ ピ ソー ドご と に,医 療 者 か らの サ ポ ー ト の意 味 を最 もよ く表 す と考 え られ る名 前 をつ けコー ド化 を行 い,同 じ よ うな 内 容 を表 して い る もの を グル ー ピ ング し,か つ抽 象 的 な名 前 をつ け カ テ ゴ リー 化 した。 最 後 にカ テ ゴ リー化 した そ れ ぞれ を 妊 娠 期,出 産 期,入 院期,産 後1か 月 間 の4つ の 時期 ご と に分 けた 。 デ ー タ収 集 お よび分 析 に つ い て は,心 理 学 分 野 で の質 的研 究 経 験 の あ る者1名 と,周 産 期 専 門家1名 か らス ーパ ー ビジ ョン を受 けた。 5.倫 理 的配 慮 研 究 対 象 者 に対 して は,面 接 開 始 時 に研 究 の 目 的 と方 法,得 られ た デ ー タ は対 象 者 の 承 諾 な く本 研 究 以 外 に使 用 しな い こ と,本 研 究 の結 果 は論 文 とし て公 表 す る可 能 性 が あ る こ とにつ い て文 章 お よび 口頭 で 説 明 し,研 究 承 諾 書 へ の 署 名 に よ り研 究 参 加 へ の同 意 を得 た 。 また 研 究 対 象 者 の 匿 名 性 を保 障 し,面 接 は研 究 対 象 者 の プ ライ バ シー を厳 守 す るた め個 室 で 行 い,プ ライ バ シー に関 す る情 報 の守 秘 に十 分 な 配 慮 を行 った。 なお,本 研 究 は, 研 究 計 画書 の段 階 で研 究 調 査 依 頼 病 院 の倫 理 委 員 会 の審 査 を受 け,承 認 され た。

IV結

1.対 象 者 の 背 景 対 象 者 は6名 で あ っ た 。 年齢,産 科 既 往 歴,分 娩様 式 は表1の とお りで あ る。 表1ケ ー スー 覧 2.ポ ジ テ ィブ ・サ ボ ー ト,ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー トを構 成 す るカ テ ゴ リー 分 析 の結 果,周 産 期 の女 性 と医 療 者 との間 で も, 望 ま しい効 果 を もた らす は ず の 言 動 が 意 に反 し て 望 ま し くない効 果 を もた ら して しまう とい う,ソ ー シ ャル ・サ ポ ー トの一 側 面 で あ る 「ネ ガ テ ィ ブ ・ サ ポ ー ト」 の発 生 が確 認 され た 。 そ こで,各 時 期 の ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー ト,ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー トを構 成 す るカ テ ゴ リー と,そ れ に含 まれ る内 容 に つ い て説 明 す る。 1)妊 娠 期 (1)ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー ト 妊 娠 期 の ポ ジ テ ィ ブ ・サ ポ ー トと して は <共 感 に基 づ い た か か わ り >,< 具 体 的 な情 報 提 供 >, < ス ク リー ニ ン グ的 な かか わ り>,< 直 接 的 医 療 行 為 >,< 仲 間 と集 え る場 の提 供 > の5つ の カ テ ゴ リー が 抽 出 され た 。 <共 感 に基 づ いた か かわ り> とは,「 超 音 波 の子 ど もの 映 像 は ピー ナ ッ ツ み た い な の に,看 護 婦 さ ん は 『か わ い い で す ね 』 っ て言 っ て くれ た 。 幸 せ 感 が す ご く助 長 した 」(E)な どの<子 どもの存 在 を一 緒 に喜 ぶ とい う幸福 感>,さ らに<治 療 決 定 に 自分 の意 見 が 尊 重 され る こ と>と い う小 カ テ ゴ リー か ら成 る。 <具体 的 な情 報 提 供 > は,母 親 学 級 で 体 重 増 加 を防 止 す るのに効 果 的 な食 事 内 容 を指 導 された く困 日本 助産 学 会誌 第18巻 第2号(2004.12) 37

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周産 期 の 女性 が体 験 した 医療 者 か らのポ ジテ ィ ブ ・サ ポー トとネガ テ ィブ ・サ ポ ー ト 表2周 産 期 に お け る ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー ト,ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー トー 覧 難 な状 態 を改 善 で き る情 報 〉 や,人 形 を使 っ た 沐 浴 指 導 な ど,知 識 で は な く体 験 を伴 っ て与 え られ る<体 験 で きた情 報>,さ らに胎 児 の成 長 に不 安 を 抱 い て い た と きに,超 音 波 を用 い て視 覚 的 に そ の 成 長 を確 認 で きた<視 覚 的 に確 認 で き る情 報>で あ っ た。 <ス ク リーニ ング 的 なか か わ り>の 例 として は, 「先 生 に 言 うほ どで もない んだ け ど,お 腹 が ぴ りぴ りす る とか,ち ょっ と心 配 で だ れ か に言 っ て安 心 した い時 は,診 察 が始 ま るほ ん の 一 瞬 の 隙 に看 護 婦 さん に聞 い ち ゃ い ます。 そ うす る と,『 この時 期 はそ うな ん で す よ』 とか,『 よ くあ ります よ』 とか 言 わ れ て 安 心 す る。 そ の リア ク シ ョ ンで そん な に 心配 す る こ と じゃ ない っ てわ か るか ら」(E)な ど の発 言 が あ げ られ,母 親 に とっ て 自分 の状 態 が 異 常 か,そ うで はな いか な どを識 別 で き る よ う に, 医療 者 が ス ク リー ニ ン グ的 にか か わ る こ とが,ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー トと な っ て い た。 さ らに<直 接 的 医療 行 為>は,医 療 者 に求 め ら れ る サ ポ ー トの主 な もの の1つ で あ るが,や は り 体 調 不 良 に際 して,医 学 的 治 療 が 提 供 さ れ身 体 的 な改 善 が あ る こ とは評 価 され て いた 。<仲 間 と集 え る場 の 提 供>と は,主 に母 親 学 級 の 場 が お互 い の 悩 み を相 談 で きる,ピ ア ・サ ポー ター とな り う る仲 間 と知 り合 え る場 に な って い た こ とか ら抽 出 され た 。 (2)ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー ト 一 方 ,妊 娠 期 の ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トと して は, <対 象 者 不 在 の 情 報 提 供>,<共 感 が 欠 如 し た か か わ り>の2つ の カ テ ゴ リー が 抽 出 さ れ た 。 <対 象 者 不 在 の情 報 提 供>と は,「 母 親 学 級 で 有 無 を言 わ さ ず 出産 の ビ デ オ を見 させ られ て 恐 怖 を感 じた」(D)な ど過 剰 に リア ルで,対 象 者 の必 要性 な どを加 味 した り,情 報 の取 捨 選 択 な どの 過 程 を経 る こ とな く,す べ て の情 報 が 与 え られ る と い う情 報 提 供 の しか た が それ に あ た る。 <共 感 が 欠 如 した か か わ り>と は 「出産 予 定 日 を過 ぎて 私 も早 く産 み た い と思 っ て,検 診 の 時 に 先 生 に何 か した ほ うが い い で す か っ て 聞 い た ん で す。 で も 『何 も し な い で,無 理 し な い で い い で す』 っ て 軽 く言 わ れ た の が す ご い 不 安 で 。 も う ち ょっ と具体 的 に 『こ う した ほ うが 少 し は促 進 に な り ます よ』 っ て言 っ て も ら っ た ほ うが,ま だ 気 持 ち が楽 に な った か な」(E)と い った よ うな,不 安 な気 持 ち を十 分 に理 解 して も ら えな い ま まの, 感 情 が か み合 わ な い か か わ りが これ に あ た る 。 2)出 産 期 (1)ポ ジ テ ィブ ・サ ボ ー ト 出 産 期 の ポ ジ テ ィ ブ ・サ ポ ー トと し て は,<具 体 的 で肯 定 的 な か か わ り>,<ス ク リー ニ ン グ的 38 日本 助産 学 会誌 第18巻 第2号(2004.12)

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周 産期 の女性 が体 験 した 医療 者 か らの ポ ジテ ィ ブ ・サ ポー トとネ ガ テ ィ ブ ・サ ポー ト な か か わ り>,<状 態 予 測 の 助 け とな る情 報 提 供>,<技 術 に裏 付 け ら れ た,快 適 な 身 体 的 ケ ア>,<継 続 性 の あ る か か わ り>の5つ の カ テ ゴ リー が 抽 出 さ れ た。 <具 体 的 で肯 定 的 なか かわ り>と は,「 破 水 した 後 は結 構 うつ ろな感 じに な っ て きて,夢 の 中 み た い な感 じ。 周 りの人 の 指 示 に従 う こ とだ けが 唯 一 で き る こ とな の で,具 体 的 に言 って もら っ てす ご い楽 で した 」(A)や,「 ず っ と 『う ま くで きて い る』 って お っ し ゃ って くだ さ って いた んで,安 心 して って い うか,不 安 もな く。 その まま 自分 のや っ て い る こ とを続 けれ ばい い んだ と思 った 。 自分 の や って い る こ とを変 え た りし な くて もい い と思 え て,す ご くや りやす か った 」(C)な どで,出 産 時 の医 療 者 か らの具 体 的 で肯 定 的 な声 か け は,対 象 者 が 自信 を もっ て 出産 に臨 め る よ うな サ ポ ー トと な っ て い た。 <ス ク リー ニ ング的 な か か わ り>と は,例 え ば 緊 急 帝 王 切 開 に な っ た際 に,想 像 して いた よ り緊 迫 してい ない手術 場 の雰 囲 気 か ら安 心感 を得た ケー スか ら抽 出 され た。 出産 期 の女 性 は,周 囲 の医 療 者 が か も しだ す雰 囲気 か ら敏 感 に 自分 の状 態 を推 測 し,大 丈 夫 で あ る と安 心 す る材 料 に して いた 。 そ して この場 合 医療 者 は,妊 娠 期 の よ うに質 問 に 答 え るな どの対 応 を しな くて も,た だ 医療 者 が そ こに安 心 感 を与 え る存 在 と して居 るだ けで,同 じ よ うな役 割 を果 た してい た こ と も明 らか にな った 。 また 緊 急手 術 の 際 に は,予 測 不 可 能 な手 術 とい う出来 事 に対 して落 ち着 い て臨 む こ とが で きる た め の,流 れ が わ か る よ うな<状 態 予 測 の助 け とな る情 報 提 供>も サ ポ ー トとな っ て い た。 さ らに<技 術 に裏 付 け られ た,快 適 な身 体 的 ケ ア>は,「 陣 痛 促 進 剤 の副 作 用 で,手 が冷 た くて足 が しびれ て い る,寒 い っ て訴 えた ら助 産 婦 さんが, こ う触 っ て,『 す ご く冷 た くな っ てい るね 』 と言 っ て,お 湯 を張 っ て,ア ロ マ の マ ッサ ー ジ を して く れ た 。 それ は本 当 に地 獄 に仏 み た い だ った 」(E) とい うケ ース が これ にあた り,迅 速 で,身 体 的 な, 快 を もた らす ケ アが 評 価 され て いた 。 <継 続 性 の あ る か かわ り>は,帝 王 切 開 の手 術 に 際 し説 明 と同 意 書 を取 っ た時 と同 じ麻 酔 医 が, 手 術 場 で も最 後 まで 麻 酔 の 担 当 と して付 き添 っ た こ とで,手 術 の 緊 張 が 緩 和 され た ケー スか ら抽 出 され た カ テ ゴ リー で あ る。 (2)ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー ト 出 産 期 の ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トと して は,<一 方 的 な医 療 行 為>,<気 持 ち を表 出 で きな い 雰 囲 気>が 抽 出 され た。 <一 方 的 な医 療 行 為>は,「 赤 ちゃん の心 音 を取 る機 械 が 邪 魔 だ っ た。 しか も心 音 が な か な か 探 せ な くっ て,こ っ ち を 向 い て くだ さ い,あ っ ち を向 い て くだ さ い とか言 わ れ て 。 そ ん な痛 い の に 動 け な い よ とか 思 って うっ と う しか った」(B)と い う ケー ス に表 れ て い れ る よ うな,医 学 的 必 要 性 が優 先 され,相 手 の状 況 を受 け容 れ る プ ロセ スが 省 か れ た 対 応 の こ とで,被 援 助 者 に対 す る配 慮 に 欠 け た 医 療 行 為 の優 先 は ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トとな っ て い た。 また<気 持 ち を表 出 で きな い 雰 囲 気>と は,自 然 分 娩 を望 ん で い た が予 定 日超 過 と分 娩 停 止 に よ り陣 痛 促 進 剤 を使 う こ とに な った対 象 者 に対 し, 促 進 剤 の説 明 は な され た が,そ れ に関 す る質 問 や 疑 問 を 口 に した り,不 安 な 気持 ち を表 出 す る こ と が 許 され な い よ うな場 の雰 囲気 が あ った こ とが含 まれ る。 3)入 院 期 (1)ポ ジテ ィブ ・サ ポ ー ト 入 院 期 の ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー ト として 抽 出 さ れ た の は,母 親 た ち が安 心 して 依 存 で き る条 件 と も い え る,<「 母 親 モ デル 」 の提 示>,<聞 きや すい 雰 囲気>,<丁 寧 で優 しいか かわ り>,<ル ーテ ィ ン化 して い な い か か わ り>,<技 術 に裏 付 け られ た か か わ り>の5つ の カ テ ゴ リー で あ っ た。 <「 母 親 モ デ ル 」 の 提 示>と は,「 何 を して も泣 きや まな い っ て 時 に,看 護 婦 さ ん が 来 て くれ て ち ょっ と手 伝 っ て くれ る とす ぐに泣 きや む。 看 護 婦 さん がや っ て くれ るの を見 て,こ うい うふ う に や れ ば い い ん だ とか 少 し勉 強 に な る ん で,そ こで 安 心 で き ます 。 自分 の や り方 を ち ょっ と次 は変 え て や っ て みた りす る」(C)な ど,ど うす れ ば い い の か,具 体 的 な や り方 を示 し,次 に真 似 して 自分 で で き る よ うな対 処 が評 価 さ れ て い た 。 さら に<聞 きや す い 雰 囲 気>と して は,「 子 ど も に 関 して の ち ょ こ まか と した不 安 は あ る け ど,そ の つ ど聞 い た ら心 配 な い よ って す ぐ教 えて くれ る。 な ん か そ の繰 り返 しで,一 つ一 つ ち ゃん と解 消 し 日本 助産 学 会誌 第18巻 第2号(2004.12) 39

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周産 期 の女 性 が体 験 した医 療 者 か らの ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー トとネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー ト て くれ る の で全 然 不 安 が 積 み重 な る っ て い う こ と が な か っ た の で,不 安 が 長 引 い て感 じ られ る っ て い うの は ひ とつ もなか ったで す 」(A)な どの,必 要 な と きにす ぐに不 安 が解 消 で きる環 境 が ポ ジテ ィ ブ ・サ ポ ー ト とし て あ げ られ た。 <丁 寧 で優 し いか か わ り>と は,人 間 的 に信 頼 で きた 医療 者 の 人 柄 や,医 療 者 の 聞 きや す い 雰 囲 気,丁 寧 な対 応 な ど,病 棟 全 体 の雰 囲 気 を親 子 が 安 心 して 生 活 で き る場 で あ る と感 じ る こ との で き る よ うな,一 人 ひ と りの ス タ ッ フの 対 応 か らあ げ られ た 。 さ ら に<ル ー テ ィ ン化 して い な い か か わ り>に は,規 則 的 な授 乳 で は な く,子 ど もの 哺 乳 欲 求 に 合 わせ た 授 乳 に して くれ るこ とか ら抽 出 され た<親 子 の ニ ー ズ に沿 お う とす る シス テ ム>,<ニ ー ズ に 沿 った 対 応>の 小 カ テ ゴ リー が 含 まれ て い る。 また<技 術 に裏 付 け られ た か か わ り>と は,母 乳 マ ッサ ー ジの 際 の 医 療 者 の 技術 を評 価 す る,「 私 は左 側 の乳 頭 が 硬 くて沈 ん で い る感 じで,子 ど も が なか な か吸 っ て くれ な い と き に,本 当 に よ く, 毎 日の よ う に マ ッサ ー ジ を い ろい ろや って い た だ いて,そ れ で 大 分 や わ らか くな って,少 し 出 る よ う に な った 。 あれ が な くて 自分 で や って い た ん で は 出 な か った と思 う」(D)に 表 され る よ うな こ と で あ る。 (2)ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー ト 入 院 期 の ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トは,<個 別 性 が 排 除 さ れ た か か わ り>,<医 療 的 正 義 の 押 し付 け>,<自 己判 断 力 を奪 う よ う な情 報 提 供>の3 つ の カ テ ゴ リー に な った 。 <個 別 性 が 排 除 され たか か わ り>は,「 夜 の見 回 りな ん か で,寝 て い る と きに起 こさな いで ほ しい, や っ と寝 た の に また 眠 れ な くな っ ち ゃ うか ら。 朝 6時 に検 診 され た りす るの が,ち ょっ とつ ら くて き つ か っ た。 い い よ も う,寝 か し とい て くれ よ っ て思 った 」(B)な どの場 合 に み られ た ような,個 別 的 な必 要 性 で は な く,ス ケ ジ ュ ー ル と して優 先 され る 医療 行 為 か ら抽 出 され た。 また 「私 はで き る か ぎ り母 乳 はあ げ た い な って思 って た んだ け ど, す ご く眠 くって,ち ょっ とサ ボ っ ち ゃ った 時 に, 授 乳 時 間 が短 い って 指 摘 され ち ゃ っ た こ とが あ っ て。 そ の と きに そ う,結 構 き つ く看 護 婦 さ ん に言 わ れ て,あ あ,私 っ て ダ メ母 ね っ て 思 っ ち ゃ っ た と きが あ りま した 」(D)と い うケ ー ス に見 られ る よ う に,相 手 の希 望 や 状 況 を受 け容 れ る プ ロ セ ス が省 か れ,本 人 に と っ て は必 要 性 もわ か るた め よ り強 制 的 に な る か か わ りな どは,<医 療 的 正 義 の 押 し付 け>と な った 。 <自 己 判 断 力 を奪 うよ うな情 報 提 供>と は,「 授 乳 間 隔3∼4時 間 空 けて」 な ど とい った,そ の時 々 に応 じた 判 断 を要 求 し な い,単 純 な形 で提 供 さ れ た情 報 は対 象 者 の創 造 性 を奪 い,結 果 と して 対 象 者 に合 った そ れ ぞ れ の 生 活 ス タ イ ル の確 立 を阻 む もの と な っ て い た こ とか ら抽 出 され た 。 4)産 後1か 月 間 (1)ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー ト 産 後1か 月 間 の ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー トと して 抽 出 され た の は,<子 ど もに 関 す る不 安 の解 消 に つ な が る医 療 的 か か わ り>,<迅 速 で 直 接 的 な 専 門 家 の か か わ り>,<専 門 家 に 相 談 で き る場 の 提 供>,<仲 間 と集 え る場 の提 供>で あ り,現 状 で は医 療 者 との か か わ りは他 の 時 期 に比 べ て 減 少 す る産 後1か 月 間 にお い て も,母 親 とな っ た ばか り の 女 性 た ち に は依 然 とし て子 ど も に関 す る心 配 事 や 不 安 が 存 在 し,医 療 者 との か か わ りを他 の 時 期 と同 じ よ うに求 め て い る と考 え られ た。 <子 ど もに 関 す る不 安 の解 消 に つ な が る医 療 的 か か わ り>と は,「 子 ど もの の どが ゼ ロゼ ロい うの で,風 邪 を 引 い た ん じ ゃ な い か と心 配 した んで す け ど,家 庭 訪 問 の 保 健 婦 さ ん に大 丈 夫 って 聞 いて, 問 題 な い と思 えた 。 で も1か 月 健 診 で も気 に な っ た の で 聞 い た ら,む せ た ミル クが 出 き らず に の ど に残 っ て,そ れ の 音 が す るん じ ゃ な い か っ て,小 児 科 の先 生 が い ち ば ん 医学 的 に説 明 して くれ た 」 (F)な どの よ うに,「 大 丈 夫 」 とい う言 葉 か け だ けで な く,「大 丈 夫 」 な根 拠 も同 時 に示 され る説 明 か ら抽 出 され た 。 また<迅 速 で 直 接 的 な専 門 家 の か か わ り>と は, 「地 域 の 保 健 婦 さん か ら電 話 が あ っ た と き,『 よ く 泣 くん で す け ど,お な か が 痛 い ん じ ゃ な い で し ょ うか 』 とか 心 配 に な って い る こ とを ち ょ っ と尋 ね て み た んで す。 そ う した ら翌 日す ぐに家 庭 訪 問 に 来 て くだ さ っ て,す ご い助 か った 。 家 族 も近 くに 居 な い し,だ か らあ ん ま り聞 く人 もな か っ た ので, す ご くあ りが たか った で す 」(C)な ど心 配 にな っ て い る時,す ぐに子 ど もの様 子 を直 接 診 て くれ る 40 日 本 助 産 学 会 誌 第18巻 第2号(2004.12)

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周 産 期 の女性 が体 験 した 医療 者 か らのポ ジ テ ィブ ・サ ポー トとネガ テ ィ ブ ・サ ポー ト 専 門 職 に よ る訪 問 が 含 まれ る。 <専 門 家 に相 談 で きる場 の提 供>は,「 どうして も困 っ た こ とが あ っ た ら病 院 に電 話 す る け ど,そ れ まで持 ち こた え られ れ ば1か 月 健 診 の時 に ま と め て 聞 い て み よ う と思 って ま した 。 それ で,1か 月健 診 で細 か く指 導 し て くだ さ っ た の で,全 部 不 安 な こ とは解 消 され ま した 」(A)と い うケー スか ら も表 され る よ う に,主 に子 ど もに関 す る不 安 を 専 門 家 に相 談 で き る場 が 求 め られ て い た。 最 後 の<仲 間 と集 え る場 の提 供>と は,「 ず っ と 二 人 だ け で い る と些 細 な こ とで も,げ っぷ が 出 な い と これ っ て まず い ん じゃ な い か し ら とか,グ ル グ ル グ ル グ ル不 安 が渦 巻 い て きて,す ご くど う し よ う もな くな っ ち ゃ うけ ど,産 後1か 月 の親 子 の 会 で集 まっ た ら,み んな 『げ っぷ が 出 ない』 とか, 『寝 つ い て くれ ない』 とか,同 じよ うな悩 み を抱 え て い る っ て わ か っ た。 な ん だ 私 だ け じ ゃ な い ん だ っ て。 あ る程 度 ほ っ とい て もい い ん だ とか わ か る と,な ん か ち ょ っ とほ っ と して安 心 して,気 が 軽 くな ります 」(E)と い うよ うな,同 じ ような悩 み を抱 えた人 同 士 が,お 互 い の悩 み を相 談 で き る 仲 間 と知 り合 え,自 分 の 子 ど も と同 じ月齢 の子 ど も を見 る こ とが で き る場 の提 供 が 評 価 されて いた 。 (2)ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー ト 産 後1か 月 期 にお け るネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トで は,<対 象者 不 在 の情 報 提供>,<共 感 の 欠如 し た か か わ り>の2つ の カ テ ゴ リー が抽 出 され た。 <対 象 者 不在 の情 報 提 供>と は 「家 庭 訪 問 で, 保 健 婦 さん にい ろい ろ病 院 で 言 わ れ て きた こ と と 違 う こ と を言 わ れ る と混 乱 す る。 病 院 で 言 わ れ た か ら,帰 って きて も 自分 で は そ うい うふ う にや っ て た の に,今 か ら ど うす れ ば い い の っ て 思 っち ゃ う」(F)と い うケー ス に見 られ る よ うに,相 手 の 状 況 を まず 聞 くプ ロセ ス を経 る こ とな く一 方 的 に 与 え る,混 乱 を招 くよ うな 複 数 の,時 に は相 反 す る情 報 提 供 の こ とで あ る。 また<共 感 の 欠 如 した か か わ り>と は,医 療 者 と対 象 者 の感 情 の トー ンが 異 な り,対 象 者 の 抱 い て い る重 い気 持 ち と,医 療 者 の 言 葉 か ら感 じ る軽 い感 じが相 容 れ ず,お 互 い の感 情 が か み 合 わ な い 会 話 とな る。 そ の場 合,例 え ば子 ど もの健 康 に関 し て大 丈 夫 だ と医療 者 か ら言 わ れ て も,対 象 者 は 安 心 で きな い結 果 とな って い た 。

V考

周 産 期 の女 性 が 主 観 的 に体 験 す る ソー シ ャル ・ サ ポー トを,サ ポー ト源 を医 療 者 に絞 り,ポ ジテ ィ ブ ・サ ポ ー トとネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー トの2種 類 の 概 念 に 基 づ き分 類 し検 討 し た。 結 果,本 研 究 で 対 象 とした女 性 は,医 療 者 か らの ソー シャル ・サポー トに対 して,数 多 くの 場 面 で 「助 け に な った 」 と 評 価 していた ものの,同 じよ うに多 くの場 面 で 「助 け に な らなか っ た,迷 惑 だ った,嫌 な思 い を した 」 とい う判 断 に至 る主 観 的 な体 験 を表 出 して い た 。 そ こで,各 時期 にお け る ポ ジ テ ィ ブ ・サ ポ ー トと ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トの構 成 要 素 を比 較 し,医 療 者 に求 め られ るか か わ り方 につ い て考 察 す る。 1.ポ ジ テ ィブ ・サ ポ ー トと ネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー トの比 較 1)妊 娠 期 妊 娠 期 は母 親 学 級 や 外 来 な ど,専 門家 との か か わ りは直 接 的 な 医療 行 為 を受 け る こ と よ りも,情 報 を介 して行 わ れ る こ とが 多 い特 徴 が あ る。 その 情 報 提 供 の場 面 にお い て,提 供 さ れ る妊 産 婦 の こ と を考 慮 す る こ と な く一 方 的 に与 え る情 報 は,た と え内 容 が有 益 だ と医 療 者 が 判 断 して い て も,情 報 を受 け取 る妊 産 婦 に と っ て は必 ず し も有 益 に働 か な い とい う こ とが 言 えた 。 一 方,医 療 者 が 直 接 的 な 医療 行 為 を行 う こ とは,妊 娠 期 に お い て も有 効 な サ ポ ー トに な る こ とが 多 か っ た 。 しか し,医 療 行 為 を前 面 に押 し出 した か か わ りで は な く,医 療 者 が サ ポ ー トを強 く意 識 して い な い 場 面,診 察 時 の 短 い や り取 りや,母 親 学 級 な どの 場 の設 定 な ど にお いて も,そ の サ ポ ー ト効 果 は 医 療 者 の意 識 の 強 弱 に関 係 な く,有 効 に発 揮 され て いた こ と も わ か った 。 この こ とか ら,妊 娠 期 に お け る医 療 者 の か か わ りに は,共 感 とい う プ ロ セ ス を省 か ず に,対 象 者 の必 要 性 に 応 じた 情 報 や 医 療 行 為 の提 供 が な され, さ ら に直 接 的 な医 療 行 為 が な くて も,そ の対 応 や 反 応 か ら安 心 感 を得 られ る よ う な存 在 で あ る こ と が 求 め られ て い る と推 測 で きた 。 2)出 産 期 出産 期 は周 産 期 に お い て 最 も生 命 の安 全 が 脅 か 日 本 助 産 学 会 誌 第18巻 第2号(2004.12) 41

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周 産 期 の女性 が体 験 した医 療者 か らの ポ ジテ ィブ ・サ ポ ー トとネ ガ テ ィブ ・サ ポー ト され る時 期 で あ る た め,妊 産 婦 に とっ て最 も医 療 的 か か わ りを必 要 とす る場 面 で あ る。 そ の た め 医 療 者 と妊 産 婦 の 力 関 係 が,顕 著 に 医 療 者 に傾 く時 期 で あ り,そ の事 実 を 自覚 しな い ま まか か わ る 医 療 者 の 行 為 は,妊 産 婦 に とっ て 脅 か し とな っ て い た 。 そ し て,他 の時 期 と比 較 す る と,医 療 者 の か か わ りが 直 接 的 で,妊 産 婦 に対 して 具体 的 な形 で 提 供 され る こ とが 多 い こ と もわ か った 。 この こ とか ら出 産 期 に求 め られ る医 療 者 の か か わ り は,そ の 力 を全 面 的 に押 し出 して 妊 産 婦 を萎 縮 させ な い よ う,医 療 者 が 自身 の専 門 家 と し て の 優 位 を 自覚 し つ つか か わ る必 要性 が あ る。 そ して そ の専 門 的 技 術 が 生 命 の安 全 保 障 の た め だ け に行 使 され るの で は な く,妊 産 婦 が か らだ で 直 接 感 じ られ る よ うな 安 楽 を もた らす技 術 と して も使 わ れ る こ とが 求 め られ て い た と言 え る。 3)入 院 期 入 院期 は出 産 期 と同 様 に,周 産 期 の 中 で 医 療 者 と妊 産婦 が 最 も密 接 にか か わ る時期 で あ る。 そ し て 出産 を終 えた ばか りの女 性 は心 身 と もに 非 妊 娠 時 の そ れ と は異 な っ て い る た め,Rubin(1984) もそ の 著 書 の 中 で 著 し て い る よ うに,自 分 を取 り 巻 く周 囲 の 人 び とに対 して依 存 的 に な って い る。 そ の事 実 を裏 付 け るか の よ うに,こ の 時 期 の ポ ジ テ ィブ ・サ ポー ト として 抽 出 され て きた の は,母 親 た ち が安 心 して 依 存 で き る条 件 で あ り,丁 寧 で 優 し く,か つ 母 親 モ デル とし て の役 割 を医 療 者 が もつ こ とで あ った 。 ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポー ト も含 め比 較 検 討 す る と, この時 期 に 医療 者 に求 め られ る か か わ りは,安 心 して依 存 で き る よ う な存 在 と して の か か わ りで あ り,そ れ は や は り医 療 者 が 優 位 に立 っ て,そ の 正 義 を押 し付 け る もの で は な か っ た。 あ くまで も主 体 は親 子 で あ る こ と を 自覚 し,そ の場 限 りの頼 れ る存 在 で はな く,退 院 後 の生 活 まで 見据 えて,母 親 の イ メ ー ジの 中 で も頼れ る存 在 に な れ る よ う な か か わ りで あ る と考 え られ る。 4)産 後1か 月 間 現 状 で は,医 療 施 設 を退 院 した後 の 医 療 者 との か かわ りは他 の 時期 に比 べ て減 少 して い る。 しか し,産 後1か 月 間 の 母 親 とな っ た ば か りの 女 性 た ち は,入 院 中 と同 じ よ う に子 ど もに 関 す る心 配 事 や 不 安 を もち,医 療 者 との か か わ りを 他 の 時 期 と 同 じよ う に求 め て い る と考 え られ た 。 しか し,こ の 時 期 に お い て も,医 療 者 を頼 っ て は い るが,そ の か か わ り にお い て 自 身 の 存 在 が無 視 され た よ う な対 応 は,否 定 的 な効 果 を生 ん で い た 。 そ して, 同 じ よ うな悩 み を抱 え る人 び と との 交 流 の場 を提 供 す る こ と も有 効 な サ ポー トとして成 立 して い た。 この よ うに,産 後1か 月期 にお い て は,迅 速 で 直 接 的 な医 療 的対 応 を 引 き続 き求 め て い るが,同 時 に,相 談 場 所 や 仲 間 と集 え る場 な どの場 の提 供 も,子 ど もの い る新 しい生 活 を始 め た母 親 に とっ て 有効 なサ ポ ー トに な っ て い る と考 え られ た 。 2.医 療 者 に求 め られ るか か わ り方 周産 期 の 女 性 に対 して 専 門 家 が か か わ る際 に は, 一 方 的 に そ の知 識 や 技 術 を行 使 す るの で は な く, 妊 産 婦 の 存 在 を認 識 し,そ の気 持 ち に共 感 す る こ とが 求 め ら れ て い た 。 こ の こ とは,受 け手 が 必 要 とす るサ ポ ー トが提 供 され て初 め て,そ の サ ポ ー トは ポ ジテ ィブ な効 果 を もつ とい うサ ポー トの マ ッ チ ングモ デ ル(Cohen & Wills, 1985)が,医 療 者 と周 産 期 の女 性 の 間 の ソ ー シ ャル ・サ ポ ー トで も共 通 点 と して抽 出 され た と言 え る。 また 期 待 した よ うな サ ポ ー トが 得 られ な い と, 更 な るス トレ ス を抱 え る結 果 とな って い る場 合 も 多 くみ られ た。 そ れ は稲 葉(1998)が 提 唱 した, サ ポ ー トへ の 期 待 が大 き い ほ ど,そ の サ ポ ー トの 欠 如 は受 け手 に心 理 的 な 不 満 を生 む 。 また サ ポ ー トの提 供 が 規 範 化 され て い る ほ ど,そ の サ ポ ー ト の欠 如 は受 け手 に心 理 的不 満 を生 む とい う ソー シャ ル ・サ ポ ー トの文 脈 モ デ ル の概 念 か ら も示 唆 され る こ とで あ り,医 療 者 は そ の こ と を 自覚 す る必 要 が あ るだ ろ う。

VI結

周 産 期 の女 性 と医 療 者 との 間 で も,ソ ー シャル ・ サ ポ ー トの 一 側 面 で あ る ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー トが 発 生 して い る こ とが 明 らか に な った 。 そ して ネ ガ テ ィ ブ ・サ ポ ー トと ポ ジ テ ィ ブ ・サ ポ ー トを比 較 す る と,医 療 者 の サ ポー トが意 図 した効 果 を もた らす に は,そ の サ ポ ー トは受 け手 が 必 要 と して い る サ ポ ー トで あ るか,医 療 者 が 自身 の発 す る影 響 力 を考 慮 して い るか が 大 き く関 与 して い る こ とが 42 日本助 産 学会 誌 第18巻 第2号(2004.12)

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周 産期 の女性 が 体験 した 医療 者 か らの ポ ジテ ィブ ・サ ポー トとネ ガ テ ィブ ・サ ポ ー ト わ か った 。 また 周 産 期 の女 性 は,時 間 の 流 れ と とも に その 特 徴 や 抱 え る 問題 が変 化 す る存 在 で あ り,医 療 的 なサ ポ ー トを必 要 とす る程 度 も経 時 的 に変 化 して いた 。 この こ とか ら も,医 療 者 は専 門 的技 術 を一 方 的 に た だ与 え るの で はな く,そ の 時 期 に応 じた サ ポ ー トの 内容,提 供 の しか た を考 え る意 識 を も つ こ との 重 要性 が 示 唆 され た 。 医 療 者 はサ ポー ト 提 供 者 と して認 知 され た 存 在 で あ り,そ の働 き に 対 す る期 待 も影響 力 も大 き く,そ こで の サ ポ ー ト の食 い違 い は相 手 に大 きな ダ メー ジ を与 え る可 能 性 が あ る。 その こ とを医 療 者 は 自覚 し,利 用 者 が 必 要 と して い る個 別 性 を重 視 し,迅 速 で 具 体 的, そ して 専 門 的 技 術 に裏 付 け られ た か か わ りをす る 必 要 が あ る と考 え る。 VII研 究 の 限 界 と 今 後 の 課 題 本 研 究 に お い て は一 施 設 で の み デー タの 収 集 を 行 った が,出 産 場 所 の違 いが デー タ に影 響 して い る可 能 性 は高 い。 今 後 は,他 の 施 設 で の デ ー タ を 収 集 す る な ど妊 産 婦 を増 や し,ま た サ ポ ー トの提 供 者 で あ る医 療 者 か らの デー タ収 集 も同 時 に行 う な ど,対 人 関 係 に お け る相 互 作 用 を考 慮 した研 究 も必 要 で あ ろ う。 謝辞 本研 究 に ご協力 いただ いた妊産 婦の皆様,研 究 を ご 指 導 く だ さ い ま し た 立 教 大 学 の 箕 口 雅 博 教 授 に 心 か ら 感 謝 い た し ま す 。 な お,本 研 究 は,2003年 度 立 教 大 学 大 学 院 文 学 研 究 科 心 理 学 専 攻 修 士 論 文 の 一 部 を 加 筆,修 正 し た も の で あ る 。 引 用 文 献 岩 田 銀 子, 伊 藤 久 美 子, 柳 原 真 知 子, 三 田 村 保, 森 谷 潔 (2001), 妊 婦 の 情 動 に 対 す る ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト効 果 の 検 討(第1報)-夫 の サ ポ ー ト と不 安 の 関 連 に 焦 点 を 当 て て-, 看 護 総 合 科 学 研 究 会 誌, 4(2), 15-27. 岩 田 銀 子, 柳 原 真 知 子, 三 田 村 保, 森 谷 潔(2001), 妊 婦 の 情 動 に 対 す る ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト効 果 の 検 討(第2 報)-夫 以 外 の 人 お よ び 助 産 婦 の サ ポ ー ト と 不 安 の 減 少 に 焦 点 を 当 て て-, 看 護 総 合 科 学 研 究 会 誌, 4(2), 28-41. 菊 池 勝 也(2003), ソ ー シ ャ ル ・サ ポ ー トの ネ ガ テ ィ ブ な 効 果 に 関 す る研 究, 愛 知 教 育 大 学 教 育 実 践 総 合 セ ン タ ー 紀 要, 6, 239-245. 喜 多 淳 子(1997), 妊 婦 が 認 知 す る ソー シ ャル ・サ ポ ー ト と ソ ー シ ャ ル ・ネ ッ ト ワ ー ク の 質 に つ い て の 検 討(第1 報)-ソ ー シ ャ ル ・サ ポ ー トの サ ポ ー ト源 お よ び 下 位 概 念(4種 類 へ の 分 類)を 用 い た 検 討-, 日本 看 護 科 学 会 誌, 17(1), 8-21.

Mayring, P.(1983), Qualitive Inhaltsanalyse(pp. 45-47), Weinheim: Beltz. 難 波 茂 美(1999), 産 褥 期 の 母 親 が 感 じ て い る サ ポ ー ト ・葛 藤 の 特 徴 とス トレ ス 反 応 と の 関 連, 岡 山 県 立 大 学 保 健 福 祉 学 部 紀 要, 6(1), 1-8. Reva Rubin(1984)/新 道 幸 恵,後 藤 佳 子 訳(1997), 母 性 論 母 性 の 主 観 的 体 験, 117-134, 東 京, 医 学 書 院 Uwe Flick(2002)/小 田 博 志 ・山 本 則 子 ・春 日常 ・宮 地 尚 子 訳(2002), 質 的 研 究 入 門:「 人 間 の 科 学 」 の た め の 方 法 論, 237-241, 東 京, 春 秋 社. 日本 助 産学 会誌 第18巻 第2号(2004.12) 43

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