• 検索結果がありません。

フリースタイル分娩に対する病院勤務助産師の見解

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "フリースタイル分娩に対する病院勤務助産師の見解"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 24, No. 2, 386-397, 2010

*1宝塚大学看護学部(Takarazuka University School of Nursing) *2四日市看護医療大学(Yokkaichi Nursing and Medical Care University)

2010年5月31日受付 2010年12月8日採用

資  料

フリースタイル分娩に対する病院勤務助産師の見解

Midwifery practices of alternative labour positions:

Perspective of midwives in hospital

宮 本 雅 子(Masako MIYAMOTO)

*1

赤 井 由紀子(Yukiko AKAI)

*2 抄  録 目 的  フリースタイル分娩の施設内導入を推進するために,フリースタイル分娩の導入施設および未導入施 設の勤務助産師の推進に対する考え方と,導入への問題点を明らかにすることを目的とする。 対象と方法  フリースタイル分娩の導入施設16施設,未導入施設20施設の病院勤務助産師367人を対象とし,自記 式質問紙調査を実施した。調査内容は,年齢や経験年数,現施設での経験年数,フリースタイル分娩の 実施の程度・経験,促進・導入意思,フリースタイル分娩による産婦・胎児の状態および分娩進行状況, 分娩環境や産科的な医療介入等への考えを12項目,助産技術への不安である。両施設の助産師の認識

の差や共通する因子,関連性の高い因子に関して相関分析,差の検定には,順位データに対してMann-Whitney U test,Kruskal-Wallis testを実施した。

結 果  導入施設において,フリースタイル分娩を128人(65.6%)の助産師が実施している。また,未導入施 設の助産師の160人(93.0%)がフリースタイル分娩を良いと考えている。しかし,導入意思があるのは 128人(74.5%)であり,導入施設では促進意思が166人(85.5%)に留まった。導入施設において,フリー スタイル分娩を行う上で最も問題となるのは「助産技術:37人(34.9%)」であり,未導入施設では「医師 の協力と分娩方法のルーチン化:22人(40.7%)」であった。「施設設備や分娩環境,人的な問題(導入施 設:27人,25.5%,未導入施設:18人,33.3%)」がこれらの問題に続いて示された。フリースタイル分 娩の促進・導入意思は,助産技術の不安や介助経験に関連した見解差を認めた。 結 論  娩出期のフリースタイル分娩の実施率が低いことから促進意欲を制限する要因があることを示した。 導入施設においては,研修会や助産技術の向上,業務改善を行い,日常業務において不安が軽減できる 取り組みや,産婦に提供できる助産に,医師や看護職者間の考え方の一貫性や方向性をもつことが必要 である。フリースタイル分娩の実施において,生理的な効果の理解と緊急時や医療介入の手順など十分

(2)

Ⅰ.緒   言

 アクティブバースの考え方は1980年代後半に日本 に導入され,助産所を中心に行われるようになった。 その中でもフリースタイル分娩は,分娩経過において, 「座位や立位など起き上がった姿勢は子宮収縮を有

効にする」(Barcia, Guerra, Cibilis, et al., 1960; Bauer,

Arroyo, Ramos, et al., 1975),「胎児の状態が良好であ

る」(水田,1987;Koga. S, Koga. Y, Nagai, 1988),「会

陰裂傷が少ない」(Tebbe, David, Farki , 1996; Soong &

Barnes, 2005),「満足感が得られる」(遠藤・小松崎・ 深澤,2005;山本・藤田・西村,2009)など心身とも に多数の利点が明らかにされている。アメリカでは, 助産師(CNM)の80.4%が仰臥位以外の分娩体位を推 奨している(Hanson, 1998a)。日本の病院においても 1990年ごろから,フリースタイル分娩の導入が進んで いる。実施状況は「お産選びマニュアル」(河合,2000) やRIBORNに よ る「産 院 リ ス ト(RIBORN, 2007)」に 掲載しており,フリースタイル分娩が可能な病院は 2000年で63施設(河合,2000)から,2007年には99施 設(RIBORN, 2007)と漸増している。しかし,個々の 産院におけるフリースタイル分娩の実態は明らかでは ない。  フリースタイル分娩の導入に関する報告には,各 病院における導入経緯・現状報告や改善を目的とし た満足度調査等がある。フリースタイル分娩の導入 に対し,「産婦の主体性や安全確保の重視」(太田・遠 藤・杉村他,2005),「助産経験,スタッフ教育」(澤田 に話し合い,組織的な対応を可能にすることが重要であると考える。 キーワード:フリースタイル分娩,仰臥位以外の体位,病院勤務助産師,助産師の見解,助産ケア Abstract Purpose

The purpose of this study was to make clear problems on women's labour positions from the perspective of midwives in hospital in order to promote alternative labour positions in midwifery in Japan.

Method

Self-administered survey questionnaires from 367 midwives from 16 hospitals encouraging women to use al-ternative labour positions, and 20 other hospitals were eligible for analysis. Question items included age, years of experience at a hospital and as a midwife, wishes to use alternative labour positions, opinions of maternal and foetal conditions, labour progress, birth environment and obstetric interventions (12 items) in non-supine positions, and anxiety in midwifery in assisting births in non-supine positions. Correlation analysis, Mann-Whitney U test and Kruskal-Wallis test were used to compare views mainly between two groups of midwives, one group where non-supine positions were used and the other where non non-supine positions were not used.

Results

65.6% of midwives in hospitals using non-spine positions had used non-supine positions during the second stage of labour. 93.0% of midwives whose hospitals do not use non-supine positions were considered desirable for using alternative labour positions. Nevertheless only 74.5% wished to use them, and 85.5% wished to promote those who work at hospitals using non-supine positions routinely. The biggest obstruction in using non-supine labour positions is midwifery (34.9%). Noncooperation of obstetricians and routine supine position use were problems for midwives whose hospitals used only supine position. Subsequently, problems of facilities, environment of labour, and short-age of midwives were indicated. Significant relations were found between wishes for using non-supine positions and their experience or anxiety in midwifery.

Conclusions

The decline of implementation of alternative positions showed factors of stagnation in the desire for its promo-tion. Midwives in hospitals using non-supine positions need to be able to gain more experience in studying for as-sisting births in non-supine positions, and improve their midwifery practices. Midwives and obstetricians need to have a course of action for providing consistent care of midwifery of labour positions for women. It is important for midwives in hospitals to realize the physiological effectiveness of non-supine positions and discuss the procedure of obstetric interventions for an emergency in order to be possible to provide organized treatment of midwifery. Key words: alternative labour positions, non-supine positions, midwives in hospital, perspective of midwives,

(3)

が,目標を見いだし,導入方法の方向性を導き出す可 能性を高めることがフリースタイル分娩への推進の一 助となると考える。

Ⅱ.方   法

1.研究デザイン  本研究は,フリースタイル分娩の実施に関する問題 点や課題を明確化するために行う調査であり,病院勤 務助産師のフリースタイル分娩の実施状況や経験,考 え方について明らかにするためにも,実態調査である 量的記述研究を実施した。 2.用語の操作的定義 フリースタイル分娩:産婦が仰臥位を含む側臥位,座 位,四つ這い位,膝垂位,立位,蹲踞位等の自由な 姿勢を,分娩第1期から第2期まで行うこと。 導入施設:フリースタイル分娩を実施している病院。 未導入施設:フリースタイル分娩を取り扱っていない 病院。 フリースタイル分娩の導入:未導入施設が,フリース タイル分娩をその施設の助産業務として取り扱うこ と。 フリースタイル分娩の促進:導入施設が,フリースタ イル分娩をさらに充実できるようにフリースタイル 分娩に関する助産業務の質を高め,継続すること。 3.調査期間およびデータ収集方法 1 ) 調査期間:2007年12月から2008年3月 2 ) データ収集方法:フリースタイル分娩の導入施設 は,「お産選びマニュアル」(河合,2000)および「産院 リスト」(RIBORN, 2007)に243施設掲載している。そ の中から診療所と助産所を除く病院99施設のリスト を作成し,7地方に分類した。各地方から無作為に合 計42施設を抽出し,調査協力を依頼した。施設看護 部長および産科看護管理者に「本調査が,『フリース タイル分娩』について助産に関わる全ての助産師の考 え方を知るために行われること」を説明する文書を郵 送した。2007年時点でフリースタイル分娩を実施して おり,調査協力の了承が得られたのは16施設であり, 了承施設に勤務する417人の助産師を導入施設の対象 とした。  未導入施設は,東海地方2県各市町村の分娩を取り 扱う有床施設を,助産師会会員名簿およびホームペー ・小橋・平岡,2001),「産婦への意識普及」(小笠原・ 東大野・久保田他,2002c)が必要と述べている。導入 が可能となった経緯については,「医師の協力」(笹山, 2006;河田,2007;深澤,2006;福田,2007)が最も多 い。成功した経緯として「助産師のやりがいや熱意が あること,医師の協力が得られたこと,助産技術の習 得」など(澤田・小橋・平岡,2001;笹山,2006;河田, 2007)が挙げられる。これらの報告例からは,導入に は「助産師自身の導入意思と助産技術」が必要であり, 「医師の理解」は導入の過程でその可能性に対し大き く影響することが推測される。  導入に関して問題となる因子として,「分娩施設の 環境や体質,勤務状況,スタッフの考え方」などがあ る(小笠原,2002a)。病院では,助産業務の方針(小笠 原,2002b;柴田・尾島・中村,2006),人的資源(小 笠原,2002b;太田・遠藤・杉村他,2005)や施設の環 境(福田,2007),助産技術(小笠原,2002a;澤田・小 橋・平岡,2001;酒井,2007)など,フリースタイル 分娩の導入において各病院が抱える問題は多様である こと(小笠原,2002a)が推測された。これまでのフリー スタイル分娩における助産師への調査には,実施病院 1施設,または地域内の現状と問題点の報告例(小笠原, 2002a;澤田・小橋・平岡,2001;太田,遠藤・杉村他, 2005)がある。しかし,全国においてフリースタイル 分娩を取り扱っている病院に勤務する助産師の抱える 問題や,導入していない病院の助産師のフリースタイ ル分娩に対する考えを,複数の病院を対象にして広範 囲に調査された報告例を見出していない。  そこで本研究は,フリースタイル分娩の導入や促進 について,分娩経過や実際の介助に携わる勤務助産師 の観点から,フリースタイル分娩への考え方や実施の 状況,および問題点を明らかにすることを目的とした。 特に,フリースタイル分娩を実施する上で予測され る「分娩環境,業務環境,医師との協調性や協力,産 婦や家族,助産技術や医療介入」などの多様な考えが, 病院勤務助産師から得られる可能性があり,分析を通 してフリースタイル分娩の促進や導入に関する課題を 明らかにすることが可能である。さらに,導入施設と 導入していない施設の助産師の考えを分析することに より,フリースタイル分娩への認識の共通点や相違点 が明らかになる可能性がある。このことは,それぞれ の施設の勤務助産師にとって,フリースタイル分娩を 推進するために解決する問題点や課題を見いだす上で 意義があると考える。促進や導入に向けて勤務助産師

(4)

ジなどの産婦人科リストで213施設抽出した。その中 からフリースタイル分娩の導入施設および診療所,助 産所を除く病院58施設を無作為に抽出した。調査依 頼は,施設看護部長および産科看護管理者に「助産師 の考える『フリースタイル分娩の施設内導入に関する 利点や問題点』を明らかにすること」を説明する文書 を郵送した。その中で,調査協力の了承が得られたの は20施設であり,224人の助産師を未導入施設の対象 とした。  了承を得た病院には質問紙を郵送し,産科看護管理 者を通して勤務助産師に配布した。対象助産師には文 書で調査目的および意義を説明し,記載後には個別に 返送を依頼した。 4.質問紙の概要(表1)  質問紙は,「産婦主体の分娩ニーズに対する意識調 査」(小笠原,2002a;小笠原,2002b)を参考に独自に 作成した。質問内容は,フリースタイル分娩を行って いる施設を含む病院勤務助産師3人と検討して,「分娩 の状態や産科介入,分娩環境,助産技術」などフリー スタイル分娩の実施において利点や問題点となりえる と考えられる特徴をもつ項目を抽出した。  質問紙は,年齢・卒後年数などの「対象助産師の背 景」,および「フリースタイル分娩の実施:フリース タイル分娩の介助経験(未導入施設),実施状況(導 入施設)」,「フリースタイル分娩への考え(12項目): 産婦・胎児の状態,医療体制・助産への影響(共通)」, 「フリースタイル分娩の推進意思:促進・導入意思」, 「助産技術(共通)」の5つの構成部分の項目から成り, その中に,自由記述項目として,フリースタイル分娩 の「利点・欠点」や「促進や導入に関する問題点」,「自 由な意見」3項目を加えた。  質問紙の所要時間を把握し,表面妥当性を検討する ためにフリースタイル分娩の導入施設助産師と未導入 施設助産師6人に対してプレテストを実施した。内容 のわかり易さ,レイアウトなどの意見を聴取し,その 後に著者が質問項目の修正・加筆を行った。 表1 質問紙の概要 構成部分 項目 質問項目 施 設 備 考 対象助産師の背景 年齢・助産師学校卒業後の経験年数 現在の施設での経験年数 共通 フリースタイル分娩の実施 分娩第1期の姿勢について 共通 フリースタイル分娩の実施頻度 導入施設 フリースタイル分娩の介助経験 未導入施設 フリースタイル分娩への考え 1.産婦・胎児の状態への影響 ・分娩時間の短縮 ・母体・胎児・新生児の健康状態 ・産婦主体である ・分娩の経過の正常化 ・産痛緩和 ・リスクのある産婦の適用の可能性 共通 2.医療体制・助産への影響 ・異常時の産科介入処置への支障 ・新生児の緊急蘇生への支障 ・安全性 ・医師の協力 ・産婦の受け持ちが多いとき ・清潔野を保つこと 共通 フリースタイル分娩の利点と欠点 共通 自由記述 フリースタイル分娩の推進意思 フリースタイル分娩の導入に対する考え フリースタイル分娩の導入意思 導入が困難な理由 未導入施設 自由記述 フリースタイル分娩の促進意思 フリースタイル分娩の実施における問題点 導入施設 自由記述 フリースタイル分娩の助産技術 分娩介助に特別な助産技術の必要性 分娩介助技術への不安の程度 共通 フリースタイル分娩について 自由な意見 共通 自由記述

(5)

5.分析方法  「フリースタイル分娩への考え」12項目(表1)は,「分 娩の状態」と「産科介入,分娩環境,助産技術」の2つ の因子に分類した。  フリースタイル分娩の実施による「産婦・胎児・医 療体制・助産」への影響に関する12項目と,助産技術 1項目(表1)の計13項目について,導入施設と未導入 施設の考え方の違いを明らかにするため,差の検定を 実施した。また,導入施設で実際にフリースタイル分 娩を実施する助産師が65.6%,未導入施設において介 助経験のある助産師は29.1%であり,介助経験がある 助産師と全くない助産師の2群における考え方の差を 分析した。  質問紙は「思う」,「やや思う」,「どちらともいえな い」,「あまり思わない」,「思わない」の5つの順序尺度 からなる選択肢から回答されているため,ノンパラメ トリック検定のMann-Whitney U testを実施し,順位 データである回答項目の比率と各項目の選択人数に 関して比較するグループ間(フリースタイル分娩の導 入群・未導入群,実施群・未実施群,経験群・未経験 群)の関連性に関して相関係数を検討した。また,フ リースタイル分娩の介助技術への不安「なし」,「あま りない」,「どちらともいえない」,「ややある」,「あり」 については,5つの選択肢をそれぞれのグループとし て,導入施設助産師の促進意思・未導入施設助産師 の導入意思(5つの選択肢)との関連を分析するため, Kruskal-Wallis testを実施した。有意確率は5%水準と し,統計処理にはSPSS16.0 for windowsを使用した。 6.倫理的配慮  調査同意を得た病院の勤務助産師には,「研究の主 旨および方法,回収方法,研究協力は自由意志である こと,無記名の質問紙調査であり,分析において個人 を特定できないようにコード化すること,調査結果を 学術目的以外に使用しないこと」について説明する文 書を送付した。また,個人情報保護のため個別郵送回 収とし,質問紙の返送をもって調査協力の了承が得ら れたこととした。なお,本研究は聖隷クリストファー 大学倫理委員会の承認を得た上で実施した(受付番号 07-021-02)。

Ⅲ.結   果

1.対象助産師の背景(表2)  研究調査への了承が得られた施設計36施設,助産 師641人において,導入施設は417人のうち195人(有 効回答率46.8%)の回答が得られた。未導入施設は224 人の助産師のうち172人(有効回答率76.8%)で,全体 で367人(有効回答率57.6%)の回答が得られた。  対象助産師の年齢は平均35.2 9.0歳で,導入施設は 33.1 7.7歳であった。助産師としての平均臨床経験年 数は導入施設8.9 7.0年,未導入施設が11.7 8.1年で あり,現在の勤務病院での経験年数は,導入施設が7.0 6.2年,未導入施設が8.2 7.2年であった。 2.フリースタイル分娩の実施や介助経験  導入施設では,フリースタイル分娩の介助を行うの は128人(65.6%)であり,介助を実施しない助産師は 58人(29.8%)であった。未導入施設におけるフリース タイル分娩の介助経験は,前の職場や現在の職場での 介助経験,産婦の希望時に介助したなど,「経験あり」 は50人(29.1%)であり,「経験なし」は118人(68.6%) であった。 3.フリースタイル分娩の促進・導入意思  導入施設で,今後もフリースタイル分娩の「促進の 意思がある」助産師は164人(85.4%)であり,「どちら ともいえない」が23人(12.0%),「あまり思わない」が 5人(2.6%)であった(表3)。  未導入施設において,フリースタイル分娩の導入に 表2 対象助産師の背景 施 設 (施設数) (36)全 体 導入施設(16) 未導入施設(20) 人数(%) 367(100.0) 195(53.1) 172(46.9) 平均年齢(歳) 35.2 9.0 33.1 7.7 37.7 9.7 助産師経験年数 10.2 7.6 8.9 7.0 11.7 8.1 施設での経験年数 7.6 6.7 7.0 6.2 8.2 7.2 表3 フリースタイル分娩の促進意思(導入施設) N=192 促進意思 人数(%) 意思あり 思うやや思う 118 46 164(85.4) どちらともいえない 23 23(12.0) 意思なし あまり思わない思わない 5 0 5( 2.6)

(6)

ついて,「良いことである」と思っている助産師は28人 (16.3%),「分娩時の安全性が確保されれば良いと思 う」が132人(76.7%)であり,93%が導入に関して良い と考えていた。しかし,実際の導入意思は「ぜひ導入 したい」27人(15.7%),「導入したいが困難である」34 人(19.8%),「したいと思うことがある」67人(39.9%) の3項目を合わせると,導入の意思があるのは128人 (74.5%)であった。「導入を良いと思っている」160人 (93%)に比べると,導入への考えは肯定的であっても 導入への意思があることにはつながらなかった(表4)。 4.導入の有無別フリースタイル分娩に対する考え   (表5)  フリースタイル分娩12項目において,項目間の 関連性は,「新生児の蘇生」と「産科介入」(ρ=.428, p= .000),「安全である」(ρ=.416, p=.000)および,「医師の 協力」と「産婦の数」(ρ=.379, p=.000),「健康的である」 と「分娩が正常化する」(ρ=.605, p=.000),「産痛緩和に 効果的である」(ρ=.414, p=.000),「安全である」(ρ=.511, p=.000)の項目間に相関を認めた。  導入施設と未導入施設の2群比較に関してMann-Whitney U testを実施した。その結果,導入施設は未 導入施設と比較して,フリースタイル分娩が「健康的 である」,「産痛緩和」,「安全である」,「医師が協力的 である」,「産婦の数が多くても問題がない」を選択す る助産師が多くみられた(p=.000)。  導入施設における,フリースタイル分娩の介助実 施群と未実施群の2群比較の結果,「産婦の数が多くて も問題がない」(ρ=.378, p=.000),「産科介入に問題がな い」(ρ=.272, p=.000),「新生児の緊急蘇生に問題がな い」(ρ=.260, p=.000),「医師が協力的ではない」(ρ=.254, p=.001),「分娩が正常化する」(ρ=.203, p=.006),「リス クのある産婦への適応の可能性」(ρ=.195, p=.008)の 項目において有意な見解差を認めた。「分娩が正常化 する」(p=.006),「健康的である」(p=.009)を回答する 助産師は実施群に多く,「産婦が多く一人の助産師が 多数の受け持ちをする場合は困難である」や「医師が 協力的ではない」と回答する助産師は未実施群に多 くみられた。未導入施設は,介助経験の有無により, 「安全である」(ρ=.223, p=.004),「新生児蘇生の問題」 (ρ=.190, p=.015)および「リスクのある産婦への適用の 可能性」(ρ=.158, p=.039)に有意な見解差を認めた。  「リスクのある産婦への適用の可能性」について, 「適用できる」と「リスクのレベルによる」は両群を合 わせて288人(84.0%)が回答し,そのうち「適用できる」 と答えた助産師は18人(5.2%)であった。 5.フリースタイル分娩の実施における問題点 1 ) フリースタイル分娩の促進・導入に対する問題点  導入施設では,現在の問題点の自由記述から得た 106の記載内容を6項目に分類した。「助産技術が不充 分」が37人(34.9%)と最も高く,「設備や人的な分娩環 境」が27人(25.5%),「医師の協力が得られない」が23 人(21.7%)と高率であった(図1)。  「分娩介助技術への不安がある」と回答した助産師 は,導入施設で131人(67.2%),未導入施設で138人 (80.3%)と両施設とも高率であり,Mann-Whitney U testにより2群間に見解差がみられた(表5)。しかし, 未導入施設において,「フリースタイル分娩を導入し たいが困難である」と回答した34人(19.8%)(表4)の その理由に関する54の記載内容を5項目に分類した結 果,最も多かったのは「医師の協力が得られないこと, 分娩方法のルーチン化」が22人(40.7%),「設備,人的 制限」が18人(33.3%)など医療体制の問題であり,続 けて「助産技術が不充分」を8人(14.8%)が挙げてい た(図2)。両施設の共通点は,「医師の協力」と「設備, 人的制限」であった。  12項目以外にフリースタイル分娩の利点・欠点に 表4 フリースタイル分娩の導入に対する考えと導入意思(未導入施設) N=172 導入への考え 人数 小計(%) 導入意思 人数 小計(%) 肯定的 良いことだと思う 28 160(93.0) ぜひ導入したい 27 128(74.5) 分娩時の安全が確保されればよいと思う 132 したいが困難である 34 したいと思うことがある 67 どちらともいえない 2 2( 1.2) どちらともいえない 35 35(20.3) 否定的 分娩時の安全を考えると疑問 1 2( 1.2) 導入したいとは思わない 6 6( 3.5) 良いとは思わない 1 その他・無回答 8 8( 4.6) 3 3( 1.7)

(7)

表 5 フリースタイル分娩への考え,助産技術,推進意思:比較 項目 施設全体 導入施設 未導入施設 全体 導入 (人) 未導入 (人) p 1) ρ 実施 (人) 未実施 (人) p 1) p 2) ρ 経験有 (人) 未経験 (人) p 1) p 2) ρ ρ 分 娩 時 間 が 短 縮 す る 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 89 83 22 74 77 17 .9 03 -.0 06 56 56 17 29 24 5 .4 45 -.0 56 21 24 6 52 53 11 .6 59 -.0 34 母 体 ・ 胎 児 ・ 新 生 児 が 健 康 的 で あ る 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 13 6 58 1 87 75 5 .0 00 * -.2 07 98 31 0 34 24 1 .0 09 * .1 91 30 18 2 57 56 3 .1 47 .1 13 .6 05 産 婦 主 体 で あ る 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 17 3 18 3 15 9 12 0 .8 89 -.0 07 11 4 13 2 53 4 1 .0 79 -.1 29 47 4 0 11 2 7 0 .4 49 .0 58 .4 14 分 娩 の 経 過 が 正 常 化 す る 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 11 2 76 5 74 88 7 .0 01 * -.1 76 84 42 2 26 29 3 .0 06 * .2 03 22 26 2 52 61 5 .7 15 .0 28 産 痛 緩 和 に 効 果 が あ る 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 17 8 16 1 14 1 29 2 .0 00 * -.2 11 11 8 10 1 53 6 0 .5 79 .0 41 39 11 1 10 1 18 1 .5 09 .0 51 .5 11 清 潔 野 を 保 つ こ と に 支 障 が な い 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 23 18 152 23 29 119 .0 48 * .1 04 21 11 95 2 6 51 .4 59 .0 55 9 9 33 14 20 85 .1 49 .1 11 産 科 介 入 に 支 障 が な い 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 37 21 125 16 28 125 .0 07 * -.1 43 33 16 71 4 4 48 .0 00 * .2 72 8 3 39 7 25 86 .4 96 .0 53 .4 28 新 生 児 の 緊 急 蘇 生 に 支 障 が な い 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 74 33 82 47 50 69 .2 24 -.0 65 57 21 47 15 10 32 .0 00 * .2 60 25 9 16 22 41 52 .0 15 * .1 90 .4 16 安 全 で あ る 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 15 9 31 2 10 7 59 5 .0 00 * -.2 29 11 2 15 1 43 13 1 .0 15 * .1 79 39 11 1 67 48 4 .0 04 * .2 23 医 師 が 協 力 的 で あ る 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 67 50 76 13 55 96 .0 00 * -.2 87 59 27 43 7 23 27 .0 01 * .2 54 4 16 29 9 38 67 .9 94 -.0 06 .3 79 産 婦 の 数 が 多 く て も 問 題 が な い 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 64 31 93 14 37 114 .0 00 * -.2 48 59 17 50 5 12 38 .0 00 * .3 78 8 10 31 6 27 82 .3 40 .0 75 リ ス ク の あ る 産 婦 へ 適 用 で き る で き る ・ レ ベ ル に よ る ど ち ら と も い え な い で き な い 16 0 21 11 12 8 26 17 .0 09 * -.1 38 11 4 12 3 42 7 7 .0 08 * .1 95 41 6 3 87 20 13 .0 39 * .1 58 分 娩 介 助 技 術 へ の 不 安 な い ・ あ ま り な い ど ち ら と も い え な い や や あ る ・ あ る 35 27 131 19 12 138 .0 14 * -.1 29 33 25 70 1 1 56 .0 00 * .0 00 ** 2) .5 41 8 6 36 11 6 101 .0 00 * .3 26 今 後 , 促 進 し た い 思 う ・ や や 思 う ど ち ら と も い え な い あ ま り 思 わ な い ・ 思 わ な い 11 8 8 2 41 15 3 .0 00 * .4 12 .7 99 2) 今 後 , 導 入 し た い ぜ ひ 思 う し た い が 困 難 で あ る 思 う こ と が あ る ど ち ら と も い え な い 思 わ な い 13 10 19 8 1 14 24 48 26 5 .0 48 * .1 53 注 : 質 問 項 目 の 選 択 肢 に は ,「 そ の 他 」が あ り ,「 そ の 他 」で 記 述 し て い た 内 容 が ど ち ら に 属 す る か 判 断 で き な い 回 答 は , 本 分 析 に お い て 無 回 答 と 同 様 に 無 効 回 答 と し た 。     例 : 導 入 施 設 に お い て「 分 娩 介 助 技 術 へ の 不 安 が あ る ・ や や あ る 」と 回 答 し た「 フ リ ー ス タ イ ル 分 娩 の 実 施 者 70 人 ・ 未 実 施 者 56 人 」は 合 わ せ て 12 6人 と な り , 13 1人 に 満 た な い 。 5人 は 無 効 回 答 と し て い る 。 †   項 目 : フ リ ー ス タ イ ル 分 娩 を 実 施 す る こ と に よ る 効 果 お よ び 助 産 技 術 ・ 促 進 意 思 1) *p < .0 5  M an n-W hi tn ey U -te st   2) ** p< .0 5  K ru sk al -W al lis te st   ρ 相 関 係 数   Sp ea rm an ρ

(8)

ついて自由記述を行った結果,最も問題視している項 目は,「知識や技術」に関して145人が困難を感じてい ることであった。それに対し,研修の場の必要性を7 人が答えていた。「設備,人的制限」は,多くの助産師 が問題点として挙げており,108人が「ハイリスクや緊 急時の医療介入に支障」,「人手不足」,「設備等環境整 備が困難」などの内容について問題視していた。 2 ) フリースタイル分娩の推進意思と問題点  導入施設におけるフリースタイル分娩の介助技術 に対する不安について,Mann-Whitney U testにより 実施に関連した2群の間に見解差を認めた(ρ=.541, p=.000)。未導入施設においても同様に分析した結果, 介助経験のある助産師50人と,介助経験のない助産 師118人の間には技術不安について見解差がみられた (ρ=.326, p=.000)。また,フリースタイル分娩の介助 に関連した2群において,促進意思についても見解差 を認めた(ρ=.412, p=.000)。  フリースタイルの分娩介助技術の不安と,促進や導 入への推進意欲については,Kruskal-Wallis testによ る分析結果から,導入施設において,分娩介助技術に 不安がある助産師(ある,ややあるを選択)が,今後 促進したいと思わない(あまり思わない,思わない) を選択する傾向を,有意に認めた(p=.000)。逆に,助 産技術への不安が低い助産師33人はすべて促進意思 がある項目を選択していた。未導入施設の場合は,技 術不安に関連した導入意思に見解差を認めなかった (p=.799)。

Ⅳ.考   察

1.フリースタイル分娩の実施および介助経験について  導入施設では,約9割の助産師はフリースタイル分 娩の促進意思があるものの,介助実施率が約7割と低 い結果となった。それは,実際に介助している助産師 と,介助していない助産師に有意な見解差がみられた 項目;「産科介入に支障がある」,「新生児の緊急蘇生 助産師の技術が不十分・不安・ 教育体制が不十分    スタッフの意思統一が 図れていない   助産師学校での教育が 行われていない   設備や環境,人的に制限がある 医師が協力的ではない 産婦が望まない 0 5 10 15 20 25 30 35 40 2(1.9%) 7(6.6%) 10(9.4%) 23(21.7%) 27(25.5%) 37(34.9%) ■人数  n=106 医師が協力的ではない   分 方法がルーチン化している 助産師の技術が不十分・不安・ 教育体制が不十分    スタッフの意思統一が 図れていない   設備や環境,人的に制限がある 産婦の理解や意欲の不足 0 5 10 15 20 25 1(1.9%) 5(9.3%) 8(14.8%) 18(33.3%) 22(40.7%) ■人数  n=54 図1 フリースタイル分娩を行う上での問題点(導入施設) 図2 フリースタイル分娩を導入したいが困難な理由(未導入施設)

(9)

に支障がある」,「産婦の数が多いと問題である」,「医 師が協力的ではない」などが理由として推測され,「医 療体制・助産」に関連する問題点と考える。フリース タイル分娩を行う上での問題点に関する自由記述(図 1)においては,「施設や環境,人的制限」と「医師の協 力」が高率であることからも,その関連性を裏付けて いる。先行研究では,産婦主体の分娩を取り入れられ ない理由が,「施設の体質や人的・時間的余裕がない」 と挙げており(小笠原,2002a),本結果と一致した。  未導入施設においても約3割の助産師に介助経験が あり,フリースタイル分娩の導入について(表2)は約 9割が肯定的に捉えているが,実際に「ぜひ導入した いと思う」助産師はわずかであった。この結果は,自 由記述(図2)の「導入したいが困難と考える理由」が「医 師の協力」,「施設や環境,人的制限」と,導入施設と 同様の理由が明らかにされており,導入意思と関連す る可能性がある。実際に,フリースタイル分娩が導入 できたのは,「医師の理解が得られたこと」を理由の一 つに述べている報告例(笹山,2006;河田,2007;深澤, 2006;福田,2007)が多く,本結果を裏付けるものと 考える。「施設や環境,人的制限」に関しては,フリー スタイル分娩を実施する上での人員確保の必要性は小 笠原(2002b)が述べており,産婦の個別性に対し,安 全な分娩環境を提供できるような人員配置が必要であ る。 2.病院勤務助産師のフリースタイル分娩への考え方 について  フリースタイル分娩への考え方は,「医療体制・助 産」と「産婦・胎児の状態」の2因子とした。「医療体制 ・助産」は,先行研究においてフリースタイル分娩を 導入するための因子,実施するにあたり関連する因子 として「協働するスタッフや医師,病院の理解と協力 (深澤,2006),医師の協力(笹山,2006など),介助技 術(酒井,2007;de Jonge, Teunissen, van Diem, et al., 2008; Terry, Westcott, O'Shea, et al., 2006)」な ど の 内

容を示す。さらに,「安全である」ことが,「産婦・胎 児の状態」の「健康的である」と有意に相関したことは, フリースタイル分娩の実践が安全であり,母子の健康 的な状態を保つ助産ケアであるという回答助産師の共 通した考えを示している。  多くの助産師が「健康的である」,「分娩経過が正常 化する」,「産痛緩和につながる」と認識している(表5) が,リスクのある産婦へ「適応できる」と回答したの はわずかであった。リスクの高い産婦にとって,仰臥 位以外の体位をとることは,子宮収縮を促進し(Bar-cia, Guerra, Cibilis, et al., 1960; Bauer, Arroyo, Ramos, et al., 1975),胎児心拍を良好に保つことにおいても有 効である(水田,1987;Koga. S, Koga. Y, Nagai, 1988)。 フリースタイル分娩を「リスクが少なく,安全が確保 された正常産において可能」と考え,実施しないこと は,多くの助産師が考える「フリースタイル分娩が産 婦・胎児の状態を健康的なものとし,正常化する」と いう認識と矛盾を示すようにみえる。しかし,「フリー スタイル分娩の実施は産科介入に支障がある」と考え る助産師が多い結果(表5)から,多くの介入処置を必 要とするリスクのある産婦への適用が困難と判断した 可能性がある。  導入施設と未導入施設の助産師のフリースタイル分 娩への考え方は,ほとんどの項目において両施設間に 見解差を認めた(表5)。特に未導入施設との考えの差 が大きい項目は「医師の協力,産婦の数」,「健康的で ある」,および「産痛を緩和する」であった。導入施設 において健康状態や産痛緩和は,実施経験を通して助 産師の中に認識される可能性が高いため,この差異は 当然といえる。産婦や胎児の状態に関するフリースタ イル分娩の知識は,多くは研究成果を根拠とした研修 内容や実際の介助経験から得られると推測する。未 導入施設においては,介助経験の有無により「安全で ある」,「新生児の蘇生」,「リスクのある産婦へ適応で きる」に見解差を認めたことは,研修などによる知識 と経験知による「安全の確保」に対する認識の違いが 考えられる。さらに,介助経験により,産婦の個別性 に応じた体位を選択することが可能となり(de Jonge,

Teunissen, van Diem, et al., 2008),このことは,どの

体位が産婦にとって「苦痛を緩和」し,「健康な状態を 保つことができるのか」判断する能力も高めることを 示す。フリースタイル分娩の導入に向けて,これらの 知識を得るには勉強会や研究会,研修,情報交換の 必要がある(小笠原・東大野・久保田,2002c;太田・ 遠藤・杉村他,2005;笹山,2006;島田,2006;深澤, 2006)。したがって,導入施設と未導入施設のフリー スタイル分娩の実施に関連した見解差のあるこれらの 項目は,導入推進に向けての重要な課題といえる。  フリースタイル分娩の利点と欠点の自由記述におい て,いくつかの課題を見いだした。「フリースタイル 分娩の知識や技術」に関して両施設の多くの助産師が 困難を感じており,同時に「研修や学ぶ場の必要性」

(10)

を課題として挙げていた。このことは,フリースタイ ル分娩の導入に向けて研修や情報交換の必要性を述べ た報告例(例えば,小笠原,2002c他)を裏付ける結果 を得たといえる。特に,フリースタイル分娩の実施に 必要な助産診断や分娩介助技術は,多くの介助経験が 必要である(de Jonge, Teunissen, van Diem, 2008)と いわれることから模擬的な分娩介助体験ができるよう な研修が必要と考える。勤務施設内では,研修で得ら れた知識や技術に関する情報交換,助産業務への適用 や技術改良の検討(島田,2006;Hanson, 1988b; Terry, Westcott, O'Shea, 2006)が必要と考える。 3.フリースタイル分娩の促進・導入に関連する要因  導入施設と未導入施設の2群において,「分娩介助技 術への不安」に見解差を認めた。しかし,不安が「あ る,ややある」助産師は導入施設で131人,未導入施 設が138人と両施設とも同様に高率に認めるため,そ の差異は不安が「あまりない」,または「ない」助産師 が,導入施設のほうが多い点にある(表5)と考えられ る。同様に,導入施設においてフリースタイル分娩の 介助実施群と未実施群の,介助技術の不安の程度に認 めた差異も,介助技術の不安のない助産師が,実施群 に33人いることに対して未実施群はわずか1人という 点にある。介助技術の不安とフリースタイル分娩の実 施の有無について,促進意思に関連した見解差を有 意に認めた。実際には,不安の少ない助産師全員が導 入促進の意思がある項目を選択していた。このことは, フリースタイル分娩の継続に関して「分娩介助に対す る自信をもつことが必要である」という報告内容(赤川, 2007)から得られる「介助経験の必要性」の示唆と一致 すると考える。つまり,助産師自身がさまざまな体位 の分娩介助を経験するなかで不安が軽減し,介助技術 への確信ができると促進意思を高める可能性が考えら れる。導入施設において,フリースタイル分娩の問題 点として「助産技術が不充分」を最も多く挙げていた 結果(図1)からも,今後のフリースタイル分娩の推進 課題といえる。  未導入施設では,技術不安の回答項目において,介 助経験に関連した見解差がみられたが,導入意思に関 しては認められなかった。この見解差は,導入施設と 未導入施設のフリースタイル分娩への考え方に「安全 性,医師の協力,産婦の数による問題,健康的である こと,産痛緩和の効果」に差を認め(表5),導入が困 難な理由が「介助技術」よりも「医師の協力や分娩方法, 設備,環境,人的制限」が多くを占めたという結果(図 2)から,これらの項目が導入意思への影響要因とな る可能性が考えられる。この結果は未導入施設が新た にフリースタイル分娩を導入するために重要な課題と して,安全に分娩介助ができる体制を協働する医師や スタッフと話し合いながら整えるという報告例(大園, 2007;福田,2007,笹山,2006)と一致するといえる。 4.本研究の限界と今後の課題  本研究は,臨床で分娩介助を行う病院勤務の助産師 を対象としたため,本来フリースタイル分娩に主体性 をもって取り組む存在でもある産婦やその家族の考え が反映されていない。さらに本研究で導入を制限する 要因でもある「医師の協力」,「助産技術」,「施設環境」 について,その具体的内容の追究には限界があった。 特に助産技術は,卒後研修や助産教育で学ぶ機会の導 入を図り,評価することが課題と考える。  フリースタイル分娩は,チーム医療により実現可能 と考える。医師や他の助産師,看護師などスタッフの 理解と協力,産婦の意思,分娩環境の整備など各要素 が機能することにより,産婦にも助産師にも満足でき る分娩環境を提供できると考える。

Ⅴ.結   論

1 .未導入施設の助産師の160人(93%)がフリースタ イル分娩を良いと考えている。しかし,導入意思が あるのは128人(74.5%)であり,導入施設では促進 意思があるのは164人(85.5%)に留まった。 2 .フリースタイル分娩の介助は,「医療体制・助産」 と「産婦・胎児の状態」による影響を受ける。導入 施設では未導入施設と比較して,母児の状態や分娩 進行,安全性,医療介入および医師の協力に関して 肯定的に捉えていた。 3 .導入施設と,未導入施設の2群間で,フリースタ イル分娩において「健康的である」,「産痛緩和」,「安 全である」,「医師が協力的である」,「産婦の数が多 くても問題がない」などの「医療体制や助産」の項 目における実施に関連した見解差を有意に認めた (p=.000)。また,介助経験や実施に関連した見解差 も同様に認めた。この結果から,産婦の個別性に対 応できる安全な医療体制の構築や,知識・助産技術 を高めることが課題となった。 4 .導入施設においてフリースタイル分娩を行う上

(11)

で最も問題となるのは「助産技術(34.9%)」であり, 未導入施設では「医師の協力と分娩方法のルーチン 化(40.7%)」であった。「施設設備や分娩環境,人的 な問題(導入施設25.5%,未導入施設33.3%)」がこ れらの問題に続いて示された。安全な分娩環境を提 供できるように医師との協調や人員配置が課題と考 える。 5 .導入施設・未導入施設の2群間において,助産技 術の不安や介助経験の項目におけるフリースタイル 分娩の促進・導入意思に関連した見解差が認められ た。このことから特に導入施設においては,研修会 や助産技術の向上,業務改善を行い,日常業務にお いて不安が軽減できる取り組みが必要であることが 示唆された。さまざまな体位の分娩介助を経験する ことも必要である。 謝 辞  本研究にご協力いただきました病院施設管理者およ び勤務助産師の方々に心より感謝申し上げます。なお, 本研究は平成18∼19年度科学研究費若手研究(課題番 号18890231)を受けて実施したものである。 文 献 赤川元(2007).わたしたちのフリースタイル分娩導入記②. ペリネイタルケア,26(9),39.

Barcia, C.R., Guerra, N.L., Cibilis, L.A., Alvarez, H., Poseiro, J.J., Pose, S, V., et al. (1960). Effect of position changes on the intensity and frequency of uterine contractions during the labor. Am.J.Obstet Gynecol, 80, 284-290. Bauer, M.C., Arroyo, J., Ramos, C.G., Menéndez, A., Lavilla,

M., Izquierdo, F., et al. (1975). Effects of standing posi-tion on spontaneous uterine contractility and other as-pects of labor. J. Perinat. Med, 3, 89-100.

de Jonge, A., Teunissen, D.A.M., van Diem, M.T., Scheepers, P.L.H., Janssen, A.L.M.L. (2008). Women's positions during the second stage of labour: views of primary care midwives. J. Adv. Nurs, 63(4), 347-356.

遠藤香織,小松崎順子,深澤千映子(2005).フリースタ イル分娩の導入と産婦の反応.茨城県母性衛生学会誌, 25,55-59. 深澤千映子(2006).外部研修の院内システム構築まで. 助産雑誌,60(1),40-43. 福田純子(2007).わたしたちのフリースタイル分娩導入 記①.ペリネイタルケア,26(9),38.

Hanson, L. (1998a). Second-stage positioning in nurse-mid-wifery practices. Part 1: position use and preferences. Nurse Midwifery, 43(5), 320-325.

Hanson, L. (1998b). Second-stage positioning in nurse-midwifery practices. Part 2: factors affecting use. Nurse Midwifery, 43(5), 326-330.

河合蘭(2000).お産選びマニュアル.136-197,東京:農 山漁村文化協会.

河田かおり(2007).助産師外来とフリースタイル分娩の 導入.看護部マネジメント,15(264),4-7.

Koga, S., Koga, Y., Nagai, H. (1988). Physiological signifi-cance of fetal blood gas changes elicited by different delivery postures. Tohoku J. exp. Med, 154, 357-363. 水田正能(1987).分娩時母体体位の胎児所見に及ぼす 影響に関する検討.日本産科婦人科学会雑誌,39(6), 965-971. 小笠原敏浩(2002a).岩手県の総合病院に勤務する助産師 の「産婦主体の分娩ニーズ」に対する意識調査̶特に フリースタイル分娩への取り組みについて̶.岩手県 立病院医学会雑誌,42(1),21-27. 小笠原敏浩(2002b).岩手県の勤務助産婦の分娩に対する 意識調査.助産婦雑誌,56(3),229-233. 小笠原敏浩,東大野朋子,久保田慶子,古舘睦子(2002c). 総合病院でのフリースタイル分娩の取り組み̶はじめ てフリースタイル分娩を取り入れるために̶.ペリネ イタルケア,21(3),210-214. 太田寛子,遠藤久美子,杉村紀美,田中季果,鈴木久子 (2005).当院でのフリースタイル出産導入についての 意識調査.岐阜県母性衛生学会雑誌,33,39-41. RIBORN産院リスト http://www.web-reborn.com/saninjoho/ [2007-04-25] 酒井由美子(2007).わたしたちのフリースタイル分娩導 入記③.ペリネイタルケア,26(9),40. 笹山雪子(2006).自由な分娩体位を導入するまでの道のり. 助産雑誌,60(1),44-47. 澤田久美,小橋美千代,平岡康子(2001).自由体位分娩 の導入による助産婦の意識の変化.旭川赤十字病院医 学雑誌,15,50-52. 柴田眞理子,尾島俊之,中村好一(2006).快適な妊娠・ 出産における分娩期の体位に関する産婦人科医の考え 方及び実態に関する研究,上武大学看護学部紀要,1, 1-15. 島田真理恵(2006).病院出産で自由な姿勢を拒むもの. 助産雑誌,60(1),16-19.

(12)

Soong, B., Barnes, M. (2005). Maternal position at midwife-attended birth and perineal trauma: Is there an associa-tion? Birth. 32(3), 164-169.

Tebbe, K.A., David, M., Farki . M. (1996). Aufrechte Gebär-positionen - mehr Geburtswegsverletzungen? Ergeb-nisse einer retrospektiven vergleichenden Untersuc-hung. Zentralblatt für Gynäkologie. 118, 448-452.

Terry, R.R., Westcott, J., O'Shea, L. et al. (2006). Postpartum outcomes in supine delivery by physicians vs nonsupine delivery by midwives. J Am Osteopath Assoc, 106(4), 199-202.

山本雅子,藤田小矢香,西村正子(2009).出産体験が女 性の出産意識に与える影響̶フリースタイル出産と載 石位出産を比較して̶.母性衛生,49(4),620-627.

参照

関連したドキュメント

Because of the knowledge, experience, and background of each expert are different and vague, different types of 2-tuple linguistic variable are suitable used to express experts’

Making use, from the preceding paper, of the affirmative solution of the Spectral Conjecture, it is shown here that the general boundaries, of the minimal Gerschgorin sets for

We show that a discrete fixed point theorem of Eilenberg is equivalent to the restriction of the contraction principle to the class of non-Archimedean bounded metric spaces.. We

In this work, our main purpose is to establish, via minimax methods, new versions of Rolle's Theorem, providing further sufficient conditions to ensure global

In Section 3 using the method of level sets, we show integral inequalities comparing some weighted Sobolev norm of a function with a corresponding norm of its symmetric

The first group contains the so-called phase times, firstly mentioned in 82, 83 and applied to tunnelling in 84, 85, the times of the motion of wave packet spatial centroids,

We show how to use a Riemannian invariant: the eigenvalues of the Ricci operator, polynomial invariants and discrete invariants to give an alternative proof of the

A connection with partially asymmetric exclusion process (PASEP) Type B Permutation tableaux defined by Lam and Williams.. 4