• 検索結果がありません。

実験社会心理学研究第 58 巻第 1 号 2018, DOI: /jjesp.1614 資料 受稿日 :2016 年 12 月 7 日受理日 :2017 年 11 月 29 日早期公開日 :2018 年 1 月 20 日 外集団成員との相互作用の予期が集合的罪悪感に与える影

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "実験社会心理学研究第 58 巻第 1 号 2018, DOI: /jjesp.1614 資料 受稿日 :2016 年 12 月 7 日受理日 :2017 年 11 月 29 日早期公開日 :2018 年 1 月 20 日 外集団成員との相互作用の予期が集合的罪悪感に与える影"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

早期公開日:2018 年 1 月 20 日 DOI: 10.2130/jjesp.1614

〔資   料〕

外集団成員との相互作用の予期が集合的罪悪感に与える影響

1)

柳   学 済

名古屋大学環境学研究科

堀 田 美 保

近畿大学総合社会学部

唐 沢   穣

名古屋大学情報学研究科 要   約 個人間の罪悪感研究では,関係の維持が必要となる被害者に対しては,関係を修復するために罪悪感が生 じやすいことが示されている。本研究では集団間においても同様に,集団間の相互関係が予期される外集団 に対して,集団間の関係修復のために集合的罪悪感が生じやすいか否かを検討した。また,これまでの集合 的罪悪感研究で一貫した結果が得られていない集団同一視の影響に対して,集団間の相互作用が調整効果を 持つかどうかを検討した。60 名の大学生を対象に小集団による得点の分配ゲームを行い,参加者は内集団 との同一視(高vs. 低)×外集団成員との相互作用の予期(あり vs. なし)の 4 条件のいずれかに割り当てら れた。ゲーム内での内集団成員の外集団に対する不公正な分配により,すべての参加者に対して,集合的罪 悪感を喚起させた。集団同一視の操作は,ゲーム内での分配における内集団成員の公正さの程度により行い, 集団間の相互作用は,外集団への不公正な分配が行われたのちに外集団成員と共にゲームをするか否かを予 期させることにより操作した。実験の結果,集団間の相互作用が予期される場合には,集団と同一視する集 団成員において強い集合的罪悪感が生起し,相互作用が予期されない場合には,罪悪感が生起しない傾向が 明らかにされた。 キーワード: 集合的罪悪感,集団同一視,罪悪感の機能 問   題 植民地支配や侵略など,集団間に生じた被害に対して 加害集団が謝罪と補償を行う意思を示すか否かは,集団 間関係の改善にとって重要な問題となりうる。加害集団 が行為の責任を認め謝罪することが集団間関係の改善を もたらす一方で,集団の行為の責任を認めず行為の正当 化を行うことが集団間の関係を悪化させることもあり, 集団の加害行為をどのように評価するかは,集団間関係 においての主要な問題である。このような内集団の行為 に対する責任の受け入れや謝罪と補償を促す感情として 集合的罪悪感があげられる。 集合的罪悪感は,外集団に対する不正や,道徳に反す る行為を内集団が行ったと認識するときに,成員に生 じる苦痛の感情と定義される(Branscombe, Doosje, &

McGarty, 2002)。集合的罪悪感は,内集団が行った行為 に個人的な責任のない集団成員にも生じるとされている (Branscombe et al., 2002)。集団成員が行為の責任を認め て集合的罪悪感が生起することは,被害集団の非難を低 減させ,集団間の対立の低減をもたらすと考えられてい る(Lickel, Schmader, & Barquissau, 2004)。そのため集 合的罪悪感の生起過程を検討することは,良好な集団間 関係を維持する方法を知るうえで有益となるだろう。本 研究では個人間の罪悪感を促進することが示されている 被害者との相互的な利害関係に着目し,集合的罪悪感に 影響する要因として集団間における将来的な集団成員の 相互関係の予期を検討する。 罪悪感の機能的側面 個人間における罪悪感研究では,危害を与えた他者と 第1 筆者連絡先 e-mail: [email protected] 1)本研究は JSPS 科研費基盤研究(B)15H03446(研究代表者:唐沢 穣)の助成を受けた。

(2)

の相互関係が罪悪感の生起程度に影響することが示され てきた。感情には,個人の目的に応じて,他者との協力 的な関係の維持や確立などの個人の利益をもたらす機能 が備わっており(Fischer & Manstead, 2010),なかでも 罪悪感には,周囲の他者との関係を損なわないように, 被害者との関係を修復する意図と行動を促す機能がある と考えられている(Ketelaar & Au, 2003)。また,罪悪感 には自身の行為により生じた危害を修復するための行動 を促す機能があり,他者や周囲に誤りを認めて,それ以 降は適切に行動する意図を示すことで,関係を修復する 行動を促すとされている(Barrett, 1995)。このような罪 悪感の機能により,利己的行動を抑制し向社会的行動を とることで,自己にとって長期的な利益をもたらすこと ができると議論されている(DeSteno, 2009)。実証研究 においても,罪悪感が他者との関係改善を促す機能を持 ち,自己と関係のある被害者に対して,より強い罪悪感 が生じることが示されている(Van Lange, Joireman, Parks, & Van Dijk, 2013)。Nelissen(2014)は,罪悪感を喚起さ せる被害者との関係を実験的に操作し,自己にとっての 報酬を左右する他者や自己に援助を提供する能力を持つ 他者に対しては,より強い罪悪感が生じることを明らか にしている。このように,個人間における罪悪感研究に おいては,危害を与えた他者が自己に利益をもたらす相 互関係にあることが,より強い罪悪感を喚起させる要因 となることが明らかにされている。 個人間の罪悪感の生起過程については,このような知 見が蓄積されてきたことに対し,集団間の文脈を扱った 集合的罪悪感研究においては,外集団との関係が利益と なるか否かが,集合的罪悪感に与える影響を実証的に検 討した研究例は極めて少ない。そこで本研究では,集団 間における罪悪感の関係維持の機能を検討するため,自 己と自集団に利益をもたらすと期待できる外集団成員と の相互作用が集合的罪悪感に与える影響を検討する。 集合的罪悪感と集団同一視 集合的罪悪感に関する研究では,集団との同一視が集 合的罪悪感に影響することが前提とされてきた。その主 な理由は,集合的罪悪感の生起過程を説明する際に,社 会的アイデンティティ理論(Tajfel & Turner, 1986)や 自己カテゴリー化理論(Turner, Hogg, Oakes, Reicher, & Wetherell, 1987)に基づいた以下のような観点が取られて きたことにある(Doosje, Branscombe, Spears, & Manstead, 1998)。個人内の社会的アイデンティティが顕在化し, 自己を集団の一員としてカテゴリー化するとき,集団は 自己にとってアイデンティティの一部として意識され る。その結果として,内集団が外集団に対し行った加害 行為に対して集団の責任が問われることがあると,その 行為に直接的に関与していない成員であっても心的な負 債を感じ,罪悪感が生じると考えられている(Branscombe, 2004)。Doosje et al.,(1998; Study 1)は,個人の社会的ア イデンティティが顕在化する場合には,しない場合に比 べ,より強い集合的罪悪感が生じることを明らかにして いる。また,Zebel, Pennekamp, Van Zomeren, Doosje, van Kleef, Vliek, & van der Schalk(2007)は,集団の加害行 為に自分と血縁関係にある人物が関わっていると意識す ると,自己と行為の関わりを強く知覚して,より強い集 合的罪悪感が生じること明らかにしている。このように, 個人が強く同一視する集団の行為に対しては,強い集合 的罪悪感を覚えるという研究結果が示されている。 その一方で,集団と同一視する成員ほど,集合的罪悪 感が生じにくいとする研究結果も存在する。Doosje et al., Study 2(1998)は,集団と強く同一視する集団成員は, 内集団の加害行為に関する情報が曖昧な場合に,集団の 価値を維持するために加害行為を正当化し,集合的罪悪 感が低いことを示している。また,Doosje, Branscombe, Spears, & Manstead,(2006)においても,集団と同一視 する成員は,加害行為の正当化が容易である場合には, 集合的罪悪感が生じにくいという結果が示されている。 これらの結果については,集団と同一視する成員ほど, 自己の肯定的な価値を維持するために,社会的アイデン ティティを保とうとする動機が強く,特に行為の正当化 が容易な場合には,集合的罪悪感が生じにくいという説 明がなされている。 以上に述べたように先行研究の結果は,集団同一視が 集合的罪悪感を促進することを示したものがある一方 で,同一視によって内集団の価値を維持しようとする動 機が喚起され,正当化が行われて罪悪感が生じない場合 も示唆されるなど,必ずしも一貫していない。そこで本 研究では,正当化が阻止されて同一視に基づく集合的罪 悪感が成員に喚起されるのが,どのような状況であるの かを吟味する。 外集団成員との相互作用の予期と集団同一視が集合的罪悪 感に与える影響 本研究では,被害を受けた外集団成員との直接的な相 互作用の機会が将来的に予期される状況においては,集 団同一視の程度に対応した集合的罪悪感が生起すると予 測する。以下にその根拠を述べる。 内集団が何らかの危害を与えたことが明白な外集団の 成員と,将来にわたって相互作用が続くと予期される場

(3)

合には,集団間の関係が悪化したままであることによる 相互の不快感情,あるいはそれを解決しなければならな いといった心理的負担が存続することになる。既に述べ たように,対人間の関係においては,罪悪感が関係の修 復に機能することが示されているが(e.g., Nelissen, 2014), 集団間においても同様に,良好な関係を構築するために 外集団に対する罪悪感が強まる可能性は十分に考えられ る。加えて,対人間で利害関係の有無が罪悪感の生起の 規定要因となったのと同様に,集団間でも内集団の利害 を左右するような外集団に対しては,関係修復のために, 加害行為を正当化するのではなく,罪悪感が生起するこ とが重要となるであろう。特に,集団と強く同一視する 成員においては,利害を左右する外集団との関係悪化に 伴い,集合的罪悪感を含む不快感情がより強く生起する と予想できる。なぜなら,一般に集団間関係に依拠する 感情は,同一視の弱い集団成員よりもそれが強い成員に 強く生じるからである(Mackie, Devos, & Smith, 2000)。

他方,外集団との将来の相互作用が予期されない状況 では,集団同一視の強い成員ほど集合的罪悪感が生起し にくいと予測できる。外集団との相互作用が存在しなけ れば,関係を修復する必要性や内集団の利害への影響可 能性は相対的に低いであろう。このような場合,内集団 同一視の強い成員においては,従来の研究も示すように 過去の内集団による行為を正当化する動機が強く作用す ると考えられるためである。 本研究では,以上の議論から導出された以下の仮説を 検証する。 仮説1 集団間の相互作用が予期される状況では,内集 団との同一視が強い成員であるほど,集合的罪 悪感が生じやすい。 仮説2 集団間の相互作用が予期されない場合には,内 集団と強く同一視する成員であるほど,集合的 罪悪感が生じにくい。 本研究の実験パラダイム 上記の仮説を検証するにあたって本研究では,小集団 によるゲーム状況を用いた実験を行った。これまでの集 合的罪悪感研究では,植民地支配による被害などの加害 行為に対する罪悪感を扱った研究が多く,対象とされる 集団は国家であることが多かった。しかし,国家間で起 きた行為を扱う場合には,集合的罪悪感の対象となる行 為が集団内でどのように評価されているかを考慮する必 要があるだろう。McGarty & Bliuc(2004)は,集合的 罪悪感の対象となる植民地支配などの行為は,ときに被 植民地であった国の発展をもたらした名誉なものとして 集団内で扱われるため,そのような行為に対しては集合 的罪悪感が生じにくい可能性を指摘している。この他に も,実際に存在する集団を題材に取った研究パラダイム においては,事実としての歴史的背景に起因する無数の 余剰変数の効果が混入することが予測される。つまり現 実の集団を対象とした多くの先行研究の結果は,個別の 集団を対象にしている点で現実性が認められる一方,内 的妥当性については問題点が指摘できる。そこで本研究 においては,内的妥当性を高めることに主眼を置いて, 実験室実験による厳密な要因統制を目指した。 また本研究では,実験参加者の内集団同一視を実験的 に操作するために,得点分配ゲームにおいて,他の内集 団成員が実験参加者に対して公正な,あるいは不公正な 分配を行うという状況を設定した。内部で不公正な分配 が行われる集団と比べて,公正な分配がなされる集団は, 成員にとってより魅力の高い集団となり,その結果,よ り強い集団同一視を促進することが予測できる(Ferguson & Kelley, 1964; Hogg & Abrams, 1988)。その根拠として, 望ましい集団への所属意識を促進することを予測する社 会的アイデンティティ理論(Tajfel & Turner, 1986)や, 集団内での協力関係に均衡するように集団との関係の 認知が変容することを予測するバランス理論(Heider, 1958)といった諸理論の観点が挙げられる。実際,集団 内での公正な分配の知覚が,集団への関与を強めると いう実証的事実(Colquitt, Conlon, Wesson, Porter, & Ng, 2001)に基づいて,集団内分配の公正さをもって集団同 一視を操作とするという方法が,先行研究においても採 用されている(熊谷,2013)。報酬分配を伴うゲームを 用いた本研究においても,分配の公正さを利用した内集 団同一視の操作を行うことにした。 方   法 実験概要 大 学 生 計60 名(男性 32 名・女性 28 名;平均年齢 19.81 歳,SD=1.24)を対象に実験を行った。参加者は, 内集団との同一視(高vs. 低)×外集団成員との相互作 用の予期(ありvs. なし)の 4 条件のいずれかに,ラン ダムに割り当てられた(各条件n=15)。 実験操作は,最後通牒ゲームを応用した小集団内およ び集団間での分配ゲームにより行った。参加者は同一集 団成員を装った1 名の実験協力者と共にゲームの説明を 受けた。ゲームは,2 つの集団の間で報酬分配を行うも ので,各集団は同じ学部または専攻に所属する学生4 人 ずつで構成された。各集団には「心理チーム」「文芸チー

(4)

ム」のように,参加者の所属に呼応した専攻名または学 部名をとったチーム名が付与された(以下,参加者の観 点に即して「内集団チーム」「外集団チーム」と表記する)。 各チームの成員にはチーム名が含まれるID が付与され た。各参加者は個室でコンピューターを通じてゲームに 参加したが,他の7 名は架空の存在で,ディスプレイ上 に彼らの選択として提示される情報は,あらかじめプロ グラムされたものであった。 ゲームの構成 本研究で用いたゲームは,3 つのセッションにより構 成した。セッションごとに,(1)集団同一視の操作,(2) 集合的罪悪感の喚起,(3)外集団成員との相互作用の予 期の操作をそれぞれ行った。ゲームは4 名で構成された 2 つの小集団による得点の分配ゲームであった。セッ ション1 とセッション 3 では集団内の個人間で分配を行 い,セッション2 では集団間でチーム単位の分配が行わ れた。 セッション1 とセッション 3 は,分配額を決定する 「提案者」1 人と,分配の賛成・反対を選択する「受領者」 3 人の 2 つの役割が設けられた。セッション 2 では,チー ム単位で提案者と受領者の役割を行った。参加者はゲー ム内の役割に応じて以下の選択を行った。提案者は,全 ての参加者の分配額が等しくなる「均等」か,提案者の 得点が受領者の得点に比べて高い「不均等」のいずれか を選択した。これに対して受領者には「賛成」または「反 対」の選択肢が与えられた。受領者が提案者に「賛成」 する場合は,後に述べる分配方法に沿って,全ての参加 者が得点を得るルールであった。一方で,過半数の受領 者が「反対」の場合には,全ての参加者が無得点となっ た。ゲームの得点は,分配により得られる「個人得点」 に加え,チーム内の個人得点の合計として「チーム得点」 を設け,参加者はそれぞれの得点に応じて景品が得られ ると説明された。これらの得点を設けることで,チーム 内の協力的な選択が,利己的な選択よりも集団の利益に 貢献できるというルール設定とした。これにより,後述 する集団同一視の操作において,集団内の協力がより集 団の魅力を促すよう操作した。 集団同一視の操作(セッション1) セッション1 では同一集団内の 4 人で得点の分配ゲー ムを行い,内集団成員の魅力により内集団同一視を操作 した。集団同一視高条件では,チーム内の架空の参加者 が,均等と賛成を選択することにより,公正で相互協力 的な魅力の高い集団になるよう操作した。一方で,集団 同一視低条件では,架空の参加者が不均等と反対を選択 することにより,利己的かつ非協力的な魅力の低い集団 になるよう操作した。 セッション1 では,チーム内の 1 名が提案者,他の 3 名が受領者の役割を順次交代で行い,合計4 回の分配を 行った。参加者は,3 回目まで受領者役を行い,4 回目 に提案者役を行うように設定した(図1)。 セッション1 での分配の配点は,「均等」は提案者と 受領者の3 人が等しく(提案者 50 点,受領者 50 点), 「不均等」は提案者が多くの得点を得る(提案者100 点, 受領者20 点)ものとした。これらの配点により,チー ム内の個人得点が平均して高い均等に比べ,不均等が選 択される場合には,受領者の3 人の得点が低くチーム全 体の得点が低下するように設定した。したがって,均等 を選択することは個人間の公正性だけではなく,チーム 図1 セッション 1 における選択と配点

(5)

内の得点の最大化をもたらす相互協力的な選択であっ た。一方で,不均等は自己の得点を多くするだけではな く,チーム得点も低下させる点においても利己的な選択 であった。これにより,内集団成員が均等と賛成を選ぶ 頻度により集団の公正さの知覚を操作するゲーム内容と した。 以上の条件のもとに分配ゲームが行われ,集団同一視 高条件では,架空の参加者が全て均等と賛成を選択する ことで集団同一視を高める操作を行った。一方で,集団 同一視低条件では,架空の提案者が分配の3 回中 2 回で 不均等を選択し,それに対して反対が多数選択されるよ うにした。また,参加者が提案者として均等か不均等の どちらを選択しても反対されることで,集団同一視を低 下させる操作をおこなった。 集合的罪悪感の喚起(セッション2) 集合的罪悪感の喚起は,集団間での得点分配ゲームに おいて,参加者が関与しない分配で内集団チームが外集 団チームへ不公正な選択をとる場面を設定することによ り行った。セッション2 では,チーム単位で提案者と受 領者の役割を行い,先ず外集団チームが均等を選択する のに対して,内集団チームが不均等を選択するように設 定した。 ゲームでは,提案者と受領者の役割を入れ替えた2 回 の分配が行われた。分配の選択は,チームの成員の多数 決により決定された。多数決を奇数人数で行うために各 分配で参加しない成員を1 人選び,各チーム 3 人でそれ ぞれの分配を行った。参加しない者を無作為に決定した 結果,参加者自身は2 回目の分配に参加しないと説明を 受ける。この設定の下で,1 回目の分配では,外集団チー ムが均等(提案者チームの全員100 点,受領者チームの 全員100 点)を選択して,内集団チームが賛成を選択す るように操作した。これに対して,参加者が関与しない 2 回目の分配で内集団チームが不均等(提案者チームの 全員300 点,受領者チームの全員 50 点)を選択するよ う操作した。セッション2 では,分配に参加しない成員 に対しても,チーム内で同様の得点が与えられるため, 内集団チームの不公正な分配により,ゲームに関与しな かった参加者も同様の点数が得たことが参加者に伝えら れた。 外集団成員との相互作用予期の操作(セッション3) セッション3 では,セッション 2 で被害を与えた外集 団チームの成員と共にゲームをすることを参加者に伝 え,外集団成員との相互作用の予期を操作した。 相互作用あり条件は,次のゲームにおいて,セッショ ン2 で被害を与えた外集団チームの成員と共に得点の分 配を行うことが伝えられた。参加者は外集団チームの2 名と内集団チームの1 名と共に,セッション 1 と同様の ゲームを行うと説明を受けた。これにより,参加者が得 点を多く得るためには,不公正な分配を行った外集団成 員との協力が必要な状況を作り出した。一方で,相互作 用なし条件では,これまでと同様のチームでゲームが行 われ,外集団チームの成員との相互作用はなかった。 セッション3 は関係性の意識の操作が目的であるため 実際にゲームは行わなかった。参加者はゲーム内容の説 明後,ゲームの得点集計の待ち時間があると告げられ, その間に質問に回答するよう求められた。 質問への回答 セッション3 の説明終了後,参加者は集団同一視およ び集合的罪悪感に関する質問に回答した。集団同一視の 操作チェックの質問として,Mullin & Hogg(1999)の 研究で用いられたものを参考に4 項目(「あなたはどれ くらい内集団チームに好意を持ちましたか」「内集団 チームの人と意見が合うと思いましたか」「あなたは内 集団チームの一員だと感じましたか」「内集団チーム のメンバーは信頼できると思いましたか」;クロンバッ クのa=.90)を用いた。集合的罪悪感に関する項目は, Doosje et al.(1998)で用いられたものから 3 項目(「内 集団チームが外集団チームにとった選択に対して罪悪 感を感じる」「内集団チームの外集団チームへの不公平 な選択を残念に思う」「内集団チームの選択で,外集団 チームの結果が悪くなったことを申し訳なく思う」;ク ロンバックのa=.82)を用いた。質問項目への回答は全 て「1:そう思わない」~「5:そう思う」の 5 件法で行 い,質問の提示と回答は全てコンピューターを用いた。 質問項目の回答後,参加者にデブリーフィングを行い, セッション3 が行われないことに加え,実験の本来の目 的と実験操作の意図が説明された。その際,ゲームにお いて他の参加者は存在せず,他者の気分を害することは なかったことが説明された。最後に,参加者は実験の謝 礼を受け取った。 結   果 操作チェック 集団同一視に関する4 項目の平均得点を求め集団同一 視得点とした。実験操作の確認のために,集団同一視得 点に対して2(集団同一視)× 2(相互作用の予期)の 分散分析を行った。その結果,集団同一視の主効果が有

(6)

意で,集団同一視高条件の参加者(M=3.60, SD=1.01, 95%CI [3.24, 3.96])は,集団同一視低条件の参加者 (M=2.73, SD=0.90, 95%CI [2.37, 3.09])に比べ,集団 同一視得点が有意に高かった(F(1, 56)=11.48, p < .001, hp2=.18)。また,外集団との相互作用要因の主効果 (F(1, 56)=0.03, p=.870, hp2<.001)と,2 要因の交互作用 (F(1, 56)=0.57, p=.454, hp2=.01)はいずれも有意でな かった。これらの結果から,本研究における集団同一視 の操作は成功したと言える。 集団同一視及び外集団との相互作用の予期が集合的罪悪感 に与える影響 外集団成員との相互作用の予期と集団同一視が集合的 罪悪感に与える影響を検討するため,集合的罪悪感尺度 3 項目の平均得点を集合的罪悪感得点とし,これを実験 条件間で比較した。2 要因分散分析の結果 ,集団同一視 の主効果(F(1, 56)=0.37, p =.543, hp2=.01)は有意でな かった。一方で外集団との相互作用の予期の主効果につ いては,相互作用あり条件(M=2.69, SD=1.20, 95%CI [2.18, 3.20])の参加者は,相互作用なし条件(M=1.69, SD=0.59, 95%CI [1.18, 2.20])の参加者に比べて,より強 い集合的罪悪感が生起する傾向が見られた(F(1, 56)=3.70, p=.060, hp2=.06)。また,図 2 に示すように相互作用の予 期と集団同一視の交互作用が有意であった(F(1, 56)=4.04, p=.049, hp2=.07)。そこで,さらに詳細な検討を加える ために下位検定を行った。相互作用なし条件では,集 団 同 一 視 高 条 件 の 集 合 的 罪 悪 感(M=1.69, SD=0.59, 95%CI [1.18, 2.20]) が, 集 団 同 一 視 低 条 件(M=2.36, SD=1.04, 95%CI [1.85, 2.87])よりも低い評定値を示す 傾向が見られた(F(1, 56)=3.44, p=.069, hp2=.11)。この 差は傾向にとどまったが,中程度の効果量が見られ (Cohen, 1992),仮説 2 と一貫する結果であったと言える。 一方,相互作用あり条件においては,集団同一視高条件 M=2.69,SD=1.20,95%CI[2.18, 3.20]と集団同一視 低条件M=2.33,SD=0.61,95%CI[1.82, 2.84]の間に 有意な差は見られなかったが(F(1, 56)=0.98, p=.327, hp2=.03),集団同一視高条件における下位検定の結果は, 相互作用あり条件(M=2.69, SD=1.20, 95%CI [2.18, 3.20]) で,相互作用なし条件(M=1.69, SD=0.59, 95%CI [1.18, 2.20])よりも強い集合的罪悪感が生じていたことを示 した(F(1, 56)=7.73, p=.007, hp2=.22)。これは,集団同 一視が強い成員ほど,集団間関係が予期されることによ り集合的罪悪感が生じるという,仮説1 と一致する方向 の結果である。 考   察 本研究の結果は,集団間の相互作用が予期される場合 には,内集団と同一視する成員ほど強い集合的罪悪感が 生起し,相互作用が予期されない場合には,反対に内集 団と同一視する成員ほど集合的罪悪感が生起しないとい う交互作用を示していた。特に,集団同一視が強い成員 に関しては,集団間の相互作用が予期される場合,予期 されない場合に比べて強い集合的罪悪感が生じることが 示された。これは,集団と強く同一視する成員ほど,集 団間の関係修復の必要性が高い場合には,集合的罪悪感 による関係修復が動機づけられ,行為の正当化が低減し たことによる結果であると考えられる。一方で,関係修 復の必要性が低い場合には,集団の価値を維持するため の行為の正当化により,集団と強く同一視する成員には, 集合的罪悪感が生じにくいとする先行研究の議論と一致 する方向の結果が得られたと考えられる。 下位検定の結果は有意傾向にとどまったが,中程度の 効果量が見られたことから,本研究の結果で示された交 互作用のパターンは,将来の集団間の相互作用のような 被害集団との関係性が,集合的罪悪感研究で一貫してい なかった集団同一視の効果を説明する要因として影響し ている可能性を示している。加害集団と被害集団との集 団間関係が集合的罪悪感に与える影響については,これ までの研究では積極的に扱われてこなかったが,本研究 の結果は集合的罪悪感を検討するうえで,集団間の将来 にわたる相互関係の有無を考慮する必要性を示している。 本研究で示された集団間の相互作用の予期による集合 的罪悪感への影響は,集団間の関係を意識することが集 団間対立の低減につながる可能性を示している。Lickel 図2 集合的罪悪感の平均得点

(7)

et al.(2004)は,集合的罪悪感が喚起され,内集団の 加害行為の責任を認めるようになると,それが外集団の 責任追及の低減につながり,集団間の関係修復に貢献す る一方で,集団の加害行為の正当化は責任追及を招き, 集団間関係の悪化を招く可能性を指摘している。本研究 の結果は,集団の価値を維持しようとする動機の強い集 団同一視が強い成員であっても,互いの集団が相互に利 益をもたらす関係であると意識することにより,加害行 為の責任を認めて謝罪と補償を行うことを促す可能性を 示している。これらの可能性は,集団間の非難の低減に つながると期待できるものであると考えられる。一方 で,集団間の関係が利益をもたらさない場合には,罪悪 感が生じにくく,さらなる集団間関係の悪化が引き起こ されると予測される。このように,集団間の相互の利益 関係を確認することは,集団間の対立を改善して集団間 の建設的な関係を築くために有益であると考えられる。 また本研究の方法は,本研究は実験室実験により集団 間の関係性や集団に対する態度などの要因を統制してい る点において,集団同一視が集合的罪悪感に与える影響 が正確に検討できていると考えられる。さらに本研究の 結果は,良好な関係を維持することが必要とされる他者 に対しては罪悪感の生起により関係修復が行われやすい とする個人間の罪悪感研究で示されてきた罪悪感の機能 が,集団間の成員関係においても同様に存在することを 示しており,罪悪感の関係修復機能は個人間・集団間を 問わず存在することを示唆している。 今後の研究の課題として,集合的罪悪感の関係修復が どのように機能するか,相互作用の予期と集団同一視が 集合的罪悪感に及ぼす影響の背景過程を含めてより詳細 な検討が必要となるだろう。具体的には,集団同一視が 強い成員ほど集合的罪悪感が強く生じる要因として,集 団間の関係が悪化したままであることによる相互の不快 感情を取り除く動機などが考えられる。今後は,集合的 罪悪感生起の過程として,先行研究で想定されてきた正 当化動機だけではなく,集団間の不快感情などの要因が 影響するか検討することが有益となるだろう。また,本 研究では,集合的罪悪感を操作した後に,集団間の相互 作用の予期を操作している。そのため,一度生起した集 合的罪悪感が後の操作で変化している可能性が考えられ る。今後は,集合的罪悪感を反復で測定するなどの検討 が必要となるだろう。 本研究の限界点として,サンプルサイズが適切ではな かったことが挙げられる。本研究で示された結果の一部 は,中程度の効果量が見られたものの統計的に有意に至 らないものがみられる。今後の研究において,適切なサ ンプルサイズの設計に基づいて,本研究で得られた結果 について再度検討する必要があるだろう。また,本実験 で操作された集団間関係は,分配ゲームにおける自己の 得点を外集団成員が決定するという限定的な集団間関係 であったことについても注意が必要である。 以上の課題点を踏まえて,今後は,国家間関係などの 現実集団においても同様の結果が得られるかを検討し, より現実的な集団間対立の解決を目指した研究に発展さ せていくことが望ましい。 引用文献

Barrett, K. C. (1995). A functionalist approach to shame and guilt. In J. P. Tangney & K. W. Fischer (Eds.),

Self-Conscious Emotions: Shame, Guilt, Embarrassment, and Pride. New York: Guilford Press, pp. 25–63.

Branscombe, N. R. (2004). A social psychological process perspective on collective guilt. In N. R. Brancombe & B. Doosje (Eds.), Collective Guilt: International Perspectives. Cambridge: Cambridge University Press, pp. 320–334. Branscombe, N. R., Doosje, B., & McGarty, C. (2002).

Antecedent and consequences of collective guilt. In D. M. Mackie & E. R. Smith (Eds.), From Prejudice to

Intergroup Emotions: Differentiated Reactions to Social Groups. Philadelphia, PA: Psychology Press, pp. 49–66.

Cohen, J. (1992). A power primer. Psychological Bulletin, 112, 155–159.

Colquitt, J. A., Conlon, D. E., Wesson, M. J., Porter, C. O., & Ng, K. Y. (2001). Justice at the millennium: A meta-analytic review of 25 years of organizational justice research. Journal of Applied Psychology, 86, 425–445. DeSteno, D. (2009). Social emotion and intertemporal

choice: “Hot” mechanisms for the building of social and economic capital. Current Directions in Psychological

Science, 18, 280–284.

Doosje, B., Branscombe, N. R., Spears, R., & Manstead, A. S. R. (1998). Guilty by association: When one’s group has a negative history. Journal of Personality and Social

Psychology, 75, 872–886.

Doosje, B., Branscombe, N. R., Spears, R., & Manstead, A. S. R. (2006). Antecedents and consequences of group-based guilt: the effects of ingroup identification.

Group Processes & Intergroup Relations, 9, 325–338.

Ferguson, C. K., & Kelley., H. H. (1964). Significant factors in over evaluation of own-group’s products. Journal of

(8)

Fischer, A. H., & Manstead, A. S. (2010). Social functions of emotion. In M. Lewis, J. M. Haviland-Jones, & L. F. Barrett (Eds.), Handbook of Emotions. Guilford Press, pp. 456–468.

Heider, F. (1958). The Psychology of Interpersonal Relations. New York: John Wiley & Sons.

Hogg, M. A., & Abrams, D. (1988). Social identifications.

A Social Psychology of Intergroup Relations and Group Processes. London: Routledge.

Ketelaar, T., & Au, W. T. (2003). The effects of guilt on the behavior of uncooperative individuals in repeated social bargaining games: An affect-as-information interpretation of the role of emotion in social interaction.

Cognition & Emotion, 17, 429–453.

熊谷智博(2013).集団間不公正に対する報復としての 非当事者攻撃の検討 社会心理学研究,29, 86–93. Lickel, B., Schmader, T., & Barquissau, M. (2004). The

evocation of moral emotions in intergroup contexts: The distinction between collective guilt and collec-tive shame. In N. R. Branscombe & B. Doosje (Eds.),

Collective Guilt: International Perspectives. Cambridge:

Cambridge University Press, pp. 35–55.

Mackie, D. M., Devos, T., & Smith, E. R. (2000). Inter-group emotions: Explaining offensive action tenden-cies in an intergroup context. Journal of Personality

and Social Psychology, 79, 602–616.

McGarty, C., & Bliuc, A. N. (2004). Refining the meaning of

the “collective” in collective guilt. In N. R. Branscombe & B. Doosje, Collective Guilt: International Perspectives. Cambridge: Cambridge University Press, pp. 113–129. Mullin, B. A., & Hogg, M. A. (1999). Motivations for group

membership: The role of subjective importance and uncertainty reduction. Basic and Applied Social

Psychology, 21, 91–102.

Nelissen, R. M. A. (2014). Relation utility as a moderator of guilt in social interactions. Journal of Personality

and Social Psychology, 106, 257–271.

Tajfel, H., & Turner, J. C. (1986). The social identity theory of inter-group behavior. In S. Worchel & L. W. Austin, eds. Psychology of Intergroup Relations, pp. 7–24. Turner, J. C., Hogg, M. A., Oakes, P. J., Reicher, S. D., &

Wetherell, M. S. (1987). Rediscovering the Social Group:

A Self-Categorization Theory. Oxford: Basil Blackwell.

Van Lange, P. A. M., Joireman, J., Parks, C. D., & Van Dijk, E. (2013). The psychology of social dilemmas: A review.

Organizational Behavior and Human Decision Processes, 120, 125–141.

Zebel, S., Pennekamp, S. F., Van Zomeren, M., Doosje, B., van Kleef, G. A., Vliek, M. L. W., & van der Schalk, J. (2007). Vessels with gold or guilt: Emotional reaction to family involvement associated with glorious or gloomy aspects of the colonial past. Group Processes

and Intergroup Relations, 10, 71–86.

The effect of expecting future intergroup interactions on collective guilt

Hakche Ryu (Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University)

Miho Hotta (Faculty of Applied Sociology, Kindai University)

Minoru Karasawa (Graduate School of Informatics, Nagoya University)

The present study examined the effect of an expectation of future intergroup interactions on the degree of collective guilt caused by a transgression by in-group members toward an out-group. Drawing on evidence that a need to maintain interpersonal relations with a victim induces a feeling of personal guilt, we hypothesized that collective guilt might have a similar effect at the intergroup level. We also examined whether an expectation of future intergroup interactions moderates the effect of in-group identification on collective guilt. Sixty Japanese undergraduates participated in a study involving an intergroup game paradigm with a 2×2 factorial design. All participants were led to experience collective guilt due to a transgression by in-group members toward the out-group. The extent of group identification was manipulated by enhancing or lowering in-group fairness. Furthermore, half of the participants were told that they would have to cooperate with the out-group in the subsequent task. As predicted, the participants who strongly identified with their group felt greater collective guilt, particularly when they expected that intergroup cooperation would subsequently be required.

参照

関連したドキュメント

(注2) 営業利益 △36 △40 △3 -. 要約四半期 売上高 2,298 2,478

長期的目標年度の CO 2 排出係数 2018 年 08 月 01 日 2019 年 07 月 31 日. 2017年度以下

C.海外の団体との交流事業 The Healthcare Clowning International Meeting 2018「The Art of Clowning 」 2018 年 4 月 4

〜 3日 4日 9日 14日 4日 20日 21日 25日 28日 23日 16日 18日 4月 4月 4月 7月 8月 9月 9月 9月 9月 12月 1月

春学期入学式 4月1日、2日 履修指導 4月3日、4日 春学期授業開始 4月6日 春学期定期試験・中間試験 7月17日~30日 春学期追試験 8月4日、5日

大正13年 3月20日 大正 4年 3月20日 大正 4年 5月18日 大正10年10月10日 大正10年12月 7日 大正13年 1月 8日 大正13年 6月27日 大正13年 1月 8日 大正14年 7月17日 大正15年

第1回 平成27年6月11日 第2回 平成28年4月26日 第3回 平成28年6月24日 第4回 平成28年8月29日

日本への輸入 作成日から 12 か月 作成日から 12 か月 英国への輸出 作成日から2年 作成日から 12 か月.