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(1)

喫煙者を対象とした電子タバコの安全性確認試験

三浦克之

1)

,菊川友子

2)

,中尾隆文

2) 3)

,東海秀吉

2)

,泉 康雄

3)

,藤井比佐子

2)

,北條泰輔

2)

1)大阪市立大学大学院医学研究科 薬効安全性学,2)大阪市立大学医学部附属病院医薬品・食品効能評価センター,3)分子病態薬理学

Safety Assessment of Electronic Cigarettes in Smokers

Katsuyuki MIURA

1)

, Yuko KIKUKAWA

2)

, Takafumi NAKAO

2) 3)

, Hidekiti TOKAI

2)

, Yasukatsu IZUMI

3)

,

Hisako FUJII

2)

, Taisuke HOJO

2)

1)Departments of Applied Pharmacology and Therapeutics, 3)Pharmacology, Osaka City University Medical School:

1-4-3 Asahimachi, Abeno, Osaka 545-8585, Japan;

2)Center for Drug and Food Clinical Evaluation, Osaka City University Hospital:

Abeno Medics 6th floor, 1-2-7 Asahimachi, Abeno, Osaka 545-0051, Japan.

Abstract

In order to assess the safety of electronic cigarettes, 32 smokers who consume more than 20 tobacco cigarettes

daily were enrolled in the present study. The cartridge of an electronic cigarette contains 0.25 g of glycerin aqueous

solution. Each participant was asked to consume one filter cartridge per day (more than 150 puffs per day) for 4

weeks. Following the treatment, no abnormal changes in blood pressure, hematological data, or blood chemistry

and no severe adverse events were observed. Although a trace amount of acrolein was detected in the vapor

collected from a single filter cartridge, it was less than the minimum amount in the mainstream smoke from a single

tobacco cigarette. During the use of the electronic cigarette, the daily consumption of tobacco cigarettes decreased

significantly. This electronic cigarette containing glycerin aqueous solution may be a safe alternative to cigarette

smoking.

Keywords: acrolein, electronic cigarette, safety, smoker

報 文

1) 3)〒545-8585 大阪市阿倍野区旭町 1-4-3 E-mail: [email protected] 2)〒545-0051 大阪市阿倍野区旭町 1-2-7 あべのメディックス 6F Ⅰ.はじめに たばこに含まれるニコチンは習慣性、依存性を生じ る。加えて多数の発がん物質や有害物質を含むため、 様々な呼吸器疾患、循環器疾患の発症に関与すること が知られており、さらに肺癌をはじめとする多くの悪 性腫瘍のリスクを高めることはよく知られた事実であ る。さらに副流煙には主流煙以上に有害物質が含まれ ており、受動喫煙による健康被害は大きな問題となっ ている[1]。2004 年に中国で販売されはじめて以来、 ニコチン吸引装置としての電子タバコが数多く世界中 に出回っている[2]。この装置は一般にニコチン、プ ロピレングリコールあるいはグリセリンに加え様々な 風味を含む溶液を含むカートリッジとヒーターとバッ テリーで構成されており、吸引することでヒーターを 作動させ、溶液を蒸気化することで吸入される。いわ ゆる一般的なタバコとは異なり、火気を用いない上に、 燃焼に伴うタールや一酸化炭素やタバコの先端からの 副流煙なども発生しない。Laugesen はこれらのニコ チン含有電子タバコはたばこの喫煙の安全な代替品と 言っている[3]。一方、世界保健機構はこのような電 子タバコがニコチン代替療法として証明されたもので

(2)

本体(充電池) ジョイント(噴霧器) フィルターカートリッジ 試験に使用するフィルターカートリッジの内容  グリセリン水溶液(約 0.25g)    組成:食品添加物グリセリン、精製水 2.被験者 20歳以上の成人男女で喫煙の習慣があり毎日 20 本以 上喫煙しているボランティアを対象とした。なお、電 子タバコを使用したことがある者、心疾患や呼吸器疾 患の既往歴がある者、アレルギー体質や慢性皮膚炎を 有する者、その他試験責任医師が本試験に参加するこ とが不適当と判断した者は除外した。これにより、上 記条件を満たした 34 名を選定した。被験者の年齢は 44.9±13.7歳(平均 ± 標準偏差)で男性 26 名、女性 8 名 であった。本試験は大阪市立大学大学院医学研究科倫 理委員会の承認(承認番号 1794)のもとに行われ、ヘ ルシンキ宣言(2008 年改訂)に則り被験者には試験の 目的・内容などについて十分に説明した後に、文書に て試験参加の同意を得た上で実施した。 3.試験スケジュール 試験スケジュールを図2に示した。あらかじめ事前 チェックリストを用いてプレスクリーニングを行い、 適合した人を被験者候補者として来院を依頼した。電 子タバコの使用期間を 2010 年 7 月 10 日から 8 月 6 日 の 4 週間として、使用開始前、1 週後および電子タバコ の使用終了日の翌日の計 3 回来院した。1 回目の来院時 に試験内容を説明し文書による同意を取得した。初回 はないと主張している[4]。加えて米国食品医薬品局 は 2 社の電子タバコのカートリッジを分析し、ニコチ ンに加え、タバコに特徴的なニトロソアミンのような 発がん物質、タバコ特有の夾雑物、さらには有毒なジ エチレングリコールを含むものがあることを示し、そ の危険性を指摘している[5]。また風味付けのために 若者たちがニコチン製品に手を出す可能性も危惧され ている[6]。一方、安全性に関する臨床的検討はなさ れていない[7]。 このような背景のもと、ニコチンを含有しない電子 タバコが開発された。今回の研究の目的は株式会社ジェ イビーエスの開発したニコチンを含まない電子タバコ の安全性について喫煙者を対象に検討することである。 この電子タバコは吸引することで専用カートリッジ内 のグリセリンを含む液体が加熱され、白色の蒸気煙に なる。その蒸気を吸引することでタバコの代替とする 製品である。今回の研究では、喫煙者を対象に本電子 タバコを 28 日間使用し、その安全性を確認する試験を 行った。なお、同社の電子タバコは 2008 年 10 月から 既に市販されている。 なお、グリセリンを加熱することにより有害物質で あるアクロレインが生成されることがある。この物質 は食物の調理過程で生成され、また大気中にも存在す る[8]。そこで、本電子タバコより発生する蒸気中に 含まれるアクロレインの生成の有無について検討した。 Ⅱ.方 法 1.試験器具 商品名:マイルドスモーカー ネクスト(株式会社 ジェービーエス) 器具の構成(図1) フィルターカートリッジ ジョイント (噴霧器) 本体(充電池) 図1 試験器具(電子タバコ)の形状 倫 理 委 員 会 承 認 同意取得とエントリー スクリーニング 適格性の判断 被験者のリクルート及び プレスクリーニング 電子たばこの使用 28 日間 1 回目来院 (試験開始前) 来院 2 回目 (使用開始 1 週間後) 3 回目来院 (終了時) 図2 試験スケジュール

(3)

および 3 回目の来院時に身体所見を取るとともに採血、 検尿を行った。なお、当該の来院前日の午後 9 時以降 の水以外の摂取を禁止した。1 個のフィルターカート リッジは 150 回以上の吸引で白色煙様の蒸気がほとん ど出ないようになることがわかっている。そこで、被 験者には 1 日に 150 回以上吸引もしくは蒸気煙が微量 になるまで吸引するとともに、毎日フィルターカート リッジを新しいものに交換して使用するよう指示した。 なお、被験者には試験中の喫煙について、特に制限を 加えなかった。 4.検査項目 1) 身体所見:体重、BMI、血圧、脈拍 初回来院時には身長を測定し、各時期に測定した体 重より BMI を算出した。また、血圧および脈拍は 5-10 分の安静後、座位にて自動血圧計により測定した。 2) 血液学的検査 白血球数、赤血球数、血小板数、ヘモグロビン、ヘ マトクリット、MCV(平均赤血球容量)、MCH(平均 赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン 濃度) 3) 血液生化学的検査 アルブミン、血中尿素窒素、クレアチニン、総ビリ ルビン、AST、ALT、γ-GTP、総コレステロール、トリ グリセリド、HDL- コレステロール、血糖(空腹時) 4) 尿検査 ブドウ糖、蛋白質、ウロビリノーゲンを尿試験紙に て定性的に調べた。  5) 問診 3度の来院時に問診を行った。初回来院時は既往 歴、現在の健康状態、アレルギー歴を確認し、試験終 了時は試験器具使用による体調の変化について問診を した。また 2 度目の来院時には、体調の変化について 問診をするとともに、使用済みのカートリッジフィル ターの重量変化を測定することで吸引量を推定しグリ セリン水溶液の減少が著しく少ない場合は吸引方法を 指導した。 6) 日誌 試験器具使用の 4 週間にわたり試験器具の使用頻 度、体調の変化、薬物の使用についての日誌の記載を 求めた。 5.アクロレイン発生に関する検討 グリセリンを加熱することにより有害物質であるア クロレインが生成されることがある。そこで、本電子 タバコより発生する蒸気中に含まれるアクロレインの 生成の有無について検討した。本試験は(財)化学物 質評価研究機構に依頼して行った。電子タバコより発 生する蒸気を液体窒素で冷却しトラップし、得られた 液 0.3 g をメタノールで定容しガスクロマトグラフ質量 分析計で分析した。 6.統計解析 すべてのデータは平均値 ± 標準偏差で表した。安全 性の評価として体重、BMI 血圧、脈拍および血液臨 床検査値は試験器具の使用前および 4 週間の使用後に ついて paired t-test を用いて検定し、危険率 5%以下を 有意とした。なお、統計学的解析には SPSS 15.0J for Window (SPSS inc., Chicago, IL)を用いた。

Ⅲ.結 果 今回の試験においては 34 名が試験に同意し、2 回目 来院までは全員来院したが 3 回目の来院時には個人的 な理由により試験への継続参加が出来なかった 2 名が 試験より脱落したため、32 名の被験者が試験を完遂し た。試験器具の使用については、使用前後のフィルター カートリッジの重量の差を電子天秤(g 単位の小数点以 下 3 位まで測定可能なもの)による測定および日誌記 載内容により、そのコンプライアンスを確認した。 完遂した被験者はすべて 90% 以上の使用日数(日数 の割合:97.7±4.4 %)であった。また吸入量の平均:0.181 ±0.040gであり、予備的検討として試験に用いるフィル ターカートリッジを用いて 150 回以上吸引した際の吸 入量の 0.235±0.021 g (n=13) の 70% を上回ったことから コンプライアンスは良好と判断した。 1.血圧、体重に対する影響 表1に電子タバコ使用前後における体重、BMI、収 縮期血圧、拡張期血圧および脈拍の推移を示す。体重、 BMIに変動はなかった。血圧は収縮期、拡張期とも 4 週間の試験器具使用後に統計学的に有意な上昇を示し たが軽微であり、生理的な変動の範囲内であると判断 された。

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2.血液検査 表2に電子タバコ使用前後における血液学的検査値 を示す。赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビ ン値および MCHC は試験器具使用により影響を受けな かった。一方、ヘマトクリット、MCV、MCH は試験器 具の 4 週間使用により有意な減少を示したが、僅かな 変化で生理的な変動の範囲内であった。 表3に電子タバコ使用前後における血液生化学的検 査値を示す。血中アルブミン濃度、クレアチニン値、 ASTおよび HDL- コレステロール濃度において電子タ バコ使用 4 週後に有意な変動が認められたが、その変 化は軽微で生理的変動の範囲内であると判断された。 3.尿所見 尿検査においては 32 名中 2 名に異常が認められた。 1名は尿蛋白 + で他の 1 名は尿蛋白 3+、尿糖 2+ であっ たが、試験期間中の変動はなく電子タバコの使用によっ ては影響を受けなかった(表4)。 4.問診および日誌 試験器具の吸引により 5 名の被験者が咽頭部の被刺 激感を 1 名が口唇の被刺激感を、2 名が咳や痰を訴えた。 これらの症状は試験終了後には消失した(表5)。 5.アクロレイン生成に関する検討 2個のフィルターカートリッジを用いて検討した結 果、アクロレインは 1 カートリッジあたりそれぞれ 2.31µg、7.08µg 検出された。 表1 試験器具使用前後における血圧と体重 項 目 使用前 4週間使用後 体重 (kg) 67.9 ± 12.1 67.5 ± 12.2 BMI 24.1 ± 3.9 23.9 ± 4.0 収縮期血圧 (mmHg) 118 ± 17 x 123 ± 18 * 拡張期血圧 (mmHg) 74 ± 11 x 76 ± 11 * 脈拍(回 / 分) 70 ± 11 x 72 ± 11 被験者数は32 名(男性24 名、女性8 名) 数値は平均 ± 標準偏差を示す 使用前との比較 * p<0.05 表2 試験器具使用前後における血液学的検査値 項 目 基準値 使用前 4週間使用後 赤血球数 (x104 /µl) 男性:450 - 510 487 ± 41 485 ± 43 女性:395 - 465 白血球数(x102 /µl) 43 - 80 66 ± 14 68 ± 19 血小板数(x104 /mm3) 18.0 - 34.0 24.5 ± 5.6 24.8 ± 5.8 ヘモグロビン (g/dL) 男性:12.4 - 17.2 15.4 ± 1.5 15.2 ± 1.5 女性:11.3 - 14.9 ヘマトクリット (%) 男性:38.0 - 54.0 44.2 ± 3.6 43.5 ± 3.7* 女性:36.0 - 47.0 MCV (fL) 83 - 93 90.8 ± 3.8 89.9 ± 3.6* MCH (pg) 27.0 - 32.0 31.7 ± 1.8 31.4 ± 1.8* MCHC (%) 32.0 - 36.0 34.9 ± 1.0 35.0 ± 1.0 被験者数は32 名(男性24 名、女性8 名) 数値は平均 ± 標準偏差 使用前との比較 * p<0.05 表3 試験器具使用前後における血液生化学的検査値 項 目 基準値 使用前 4週間使用後 アルブミン (g/dL) 3.5 - 5.0 4.3 ± 0.2 4.4 ± 0.2* 尿素窒素 (mg/dL) 7 - 18 11.9 ± 2.1 11.5 ± 2.4 クレアチニン (mg/dL) 男性:0.50 - 1.10 0.75 ± 0.12 0.74 ± 0.12* 女性:0.40 - 0.90 総ビリルビン (mg/dL) 0.2 - 1.0 0.8 ± 0.4 0.9 ± 0.3 AST (IU/L) 13 - 33 20 ± 10 22 ± 13* ALT (IU/L) 男性:8 - 42 女性:6 - 27 20 ± 10 21 ± 11 γ-GTP (IU/L) 5 - 60 38 ± 46 45 ± 67 トリグリセリド (mg/dL) 50 - 150 122 ± 71 112 ± 74 血糖 (mg/dL) 70 - 105 93 ± 13 93 ± 14 総コレステロール (mg/dL) 130 - 220x 183 ± 29 188 ± 32 HDLコレステロール (mg/dL) 男性:30 - 80女性:35 - 90 55 ± 12 53 ± 12* 被験者数は32 名(男性24 名、女性8 名) 数値は平均 ± 標準偏差を示す 使用前との比較 * p<0.05 表4 試験器具使用前後における尿所見 使用前 4週間使用後 − ± + ++ +++ − ± + ++ +++ ブドウ糖 31 0 0 1 0 31 0 0 1 0 蛋白質 30 0 1 0 1 30 0 1 0 1 ウロビリ  ノーゲン 32 0 0 0 0 32 0 0 0 0 数値は人数 表5 有害事象の愁訴人数の変化 項 目 試験開始前 試験開始から 開始1 週間後 開始1 週間後~試験終了 試験終了時 因果関係の有無 咽頭部の被刺激感 0 2 3 0 あり 口唇の被刺激感 0 0 1 0 なし 咳・痰 0 2 0 0 あり

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Ⅳ.考 察 今回、喫煙者を対象に食品添加物グリセリンを成分 とする電子タバコを 1 日 1 カートリッジ、28 日間使用 させた際の安全性について検討した。血液・尿検査、 被験者の日誌、医師による問診ならびに身体計測を試 験器具の使用開始前および 4 週間使用後に検討した が、本試験器具と因果関係があると考えられる臨床検 査値の異常変動や重篤な有害事象は認められなかった。 一方、32 名中 7 名(22%)の被験者において軽度の上 気道刺激症状が試験器具の使用時に認められ、これら の症状は試験終了後に消失した。被験者は試験期間中 も通常の喫煙を行っている。従って本試験器具の使用 により一部の人に軽度の上気道被刺激感を与える可能 性がある。Bullen らはニコチンを含まない電子タバコ 使用群、ニコチンを含む電子タバコ使用群およびニコ レット®インヘイラー使用群で口腔・咽頭刺激感の出現 頻度を比較した結果、それぞれ 22%、38%、88% に認 められたと報告している[9]。このような結果は今回 の検討と一致しており、忍容性に問題はないと考えら れた。 今回の検討で本試験カートリッジ内のグリセリン水 溶液の加熱によりアクロレインが産生されることが明 らかとなった。アクロレインは炭水化物、植物油、動 物脂肪やアミノ酸を含む食物の加熱調理により生成さ れる一方、石油燃料やバイオディーゼル燃料の燃焼に 伴い産生されている[8]。アクロレインはマウス、ラッ トおよびイヌを用いた経口投与による発がん性試験で は発がん性は示されていない。吸入暴露での試験も報 告されているが動物数や試験期間などに問題があり、 評価に足りるデータは得られていない。その結果、国 際癌研究機関(IARC)はグループ 3(ヒトに対する発 がん性については分類できない物質)に分類されてい る[10]。しかしながら、アクロレインは自然界に存在 し、ヒトでの 1 日摂取量は大気より 4.6µg、飲料水から は 0.30µg、食事からは 88µg と推定されている[10]。 また、たばこの主流煙中に 9.93 ~ 116µg / 本、副流煙 中には 288 ~ 348µg / 本のアクロレインが含まれている [10, 11]。例えばマイルドセブンの主流煙には 47.6 ~ 110µg /本、フロンティアライトでも 9.9 ~ 38.0µg / 本含 まれている[11]。今回用いたフィルターカートリッジ は 150 回以上吸煙可能で、これはタバコ 1 箱(20 本) 分に相当すると考えられる。これを考慮に入れるとア クロレインの有害性は完全には否定できないが、本試 験器具のフィルターカートリッジ 1 本から吸引される アクロレインの吸引量はヒトが大気中で暴露される量 程度で、またタバコ 1 本の主流煙に放出されるアクロ レインの最少量以下であることから喫煙者における喫 煙量を減らす目的で使用することを考えれば、その有 害性は問題とならないと考えられる。 30 p<0.01 20 10 0 喫煙本数(本/日) 試験開始前 試験 4 週目 図3 試験器具使用による喫煙本数の変化 今回の試験では喫煙本数については本試験器具使用 時において統計学的に有意な減少を示した(図3)。 今回用いたフィルターカートリッジにはニコチンは含 まれていないことから、喫煙本数の減少効果はニコチ ン依存に伴う喫煙に対する欲望が減ったためとは考え にくいが本電子タバコ使用に伴い喫煙量が減少するこ とは明らかとなった。喫煙量の減少した理由は明らか ではないが、試験期間中に試験器具を用いた吸引を 1 日 150 回以上強いているために喫煙の機会が減った可 能性もある。一方、国内で販売されている 25 銘柄 45 味中、11 銘柄 15 味でニコチンが検出された[12]。こ れらのニコチンを含むカートリッジおよびニコチンを 霧化する装置は薬事法違反である[13]。同様の問題提 起は米国の医薬品食品局においても行われており、留 意すべき問題と考えられる[6]。

(6)

Ⅴ.総 括 喫煙者(1 日 20 本以上)を対象にグリセリン水溶液 を用いた電子タバコを 4 週間使用した際の安全性を検 討した。併せて電子タバコ使用期間における喫煙量の 変化も検討した。血液・尿検査、被験者の日誌、医師 による問診を電子タバコの使用前後で行ったが試験に 用いた電子タバコと因果関係があると考えられる臨床 検査値の異常変動や被験者の重篤な有害事象は認めら れず、今回検討した電子タバコの安全性が確認された。 アクロレインが電子タバコより発生する蒸気中に検出 されたが 1 本のタバコの主流煙に含まれるアクロレイ ンの最少含量より少なく、喫煙者が使用する際に問題 はないと考えられた。一方、今回使用した電子タバコ により喫煙量は明らかに減少した。従って今回検討し た電子タバコは喫煙者にとって安全な代替品である可 能性が示唆された。

1) Schick S, Glantz S. Philip Morris toxicological experi-ments with fresh sidestream smoke: more toxic than mainstream smoke. Tobacco Control 2005; 14(6): 396-404.

2) Henningfield JE, Zaatari GS. Electronic nicotine delivery systems: emerging science foundation for policy (Editorial). Tobacco Control 2010; 19: 89-90.

3) Laugesen M. Nicotine electronic cigarette sales are permitted under the Smokefree Environments Act. New Zealand Medical Journal 2010; 123(1308): 103-105. 4) WHO. Marketers of electronic cigarettes should halt

unproved therapy claims.

http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2008/ pr34/en/.

5) Westenberger B. Evaluation of e-cigarettes. In: US Food and Drug Administration. Center for Drug Evaluation and Research DoPA, (ed). Rockville, MD; 2009.

6) Kuehn BM. FDA: Electronic cigarettes may be risky. JAMA 2009; 302(9): 937.

7) Wollscheid KA, Kremzner ME. Electronic cigarettes: safety concerns and regulatory issues. Am J Health Syst Pharm 2009; 66(19): 1740-1742.

参 考 文 献

8) Stevens JF, Maier CS. Acrolein: sources, metabolism, and biomolecular interactions relevant to human health and disease. Mol Nutr Food Res 2008; 52(1): 7-25.

9) Bullen C, McRobbie H, Thornley S, Glover M, Lin R, Laugesen M. Effect of an electronic nicotine delivery device (e cigarette) on desire to smoke and withdrawal, user preferences and nicotine delivery: randomised cross-over trial. Tobacco Control 2010; 19(2): 98-103.

10) 新エネルギー・産業技術総合開発機構.アクロレイ ン.化学物質の初期リスク評価書 2006. 11) 厚生労働省.平成 11-12 年度たばこ煙の成分分析に ついて(概要). http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/seibun. html 12) 独立行政法人国民生活センター.電子タバコの安全 性を考える. http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20100818_1.html 13) 薬食監麻発 0818 第 5 号(平成 22 年 8 月 18 日付). ニコチンを含有する電子タバコに関する薬事監視の 徹底について(依頼). (引用したサイトの URL は、2010 年 9 月にアクセスし たものである。) (2010 年 10 月 27 日受付・2010 年 12 月 27 日受理)

参照

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