• 検索結果がありません。

2. 練習効果と疲労効果これから行う実験のように, 人間の心理的機能を調べる場合には ある課題 ( 刺激 ) を与えて その成績 ( 反応 ) を測定するという方法をとるのが一般的である ところが, ここに考慮しなければならない問題がある それは 練習効果と疲労効果である ともに高等動物特有の現象と

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "2. 練習効果と疲労効果これから行う実験のように, 人間の心理的機能を調べる場合には ある課題 ( 刺激 ) を与えて その成績 ( 反応 ) を測定するという方法をとるのが一般的である ところが, ここに考慮しなければならない問題がある それは 練習効果と疲労効果である ともに高等動物特有の現象と"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

I-2 人間の情報処理特性

【基本知識】 1.情報と情報量 「情報」に関してはさまざまな定義があるが,ここでは,「わからないこと」,あるいは「曖昧 なこと」と考えよう。とすると,情報量とは,「わからなさの度合い」,あるいは「曖昧さの程度」 ということになる。この曖昧さの程度を数量化してみよう。いま,m コの等確率な結果をもつ試 行 A を考えると,この試行の曖昧さの程度は m によって決まることは明らかであろう。つまり, 曖昧さの程度は m の関数であらわすことができる。この関数を f(m)として,その性質を調べてみ る。 まず m=1 のとき,試行の結果は確実で偶然の入り込む余地はないので,曖昧さは全くない。つ まり, m=1 のとき f(m)=f(1)=0 (1) とならなければならない。次に,n コの等確率な結果をもつ別の独立な試行 B があり,m>n とする と,曖昧さは明らかに試行 A のほうが大きい。つまり, m>n のとき f(m)>f(n) (2) が成り立つ必要がある。要するに f(m)は単調増加関数ということになる。さらに,試行 A と B を 同時に行う複合試行 AB を考えると,試行 AB は mn コの等確率な結果をもつことになるが,曖昧さ の程度は試行 A と B の曖昧さの程度の和に等しいとみなすことがごく自然であろう。つまり, f(mn)=f(m)+f(n) (3) が成り立つ。 上の(1)〜(3)の条件を満足する関数は,対数関数しかないことは容易に思いつくであろう。す なわち,f(m)=log m となる。 ところで,曖昧さが発生する最小の m は 2 であるので,このとき f(m)が 1 になると工学的応用 場面ではきわめて便利であると考えられる。それには対数の底を 2 にすればよい。つまり,f(m) =log2m とする。この場合の単位を特にビット(bit)とよぶ。 これを使っていくつかの具体的試行について,情報量を計算してみよう。 コインを投げる試行 log2m=log22=1(ビット) サイコロを振る試行 log2m=log26≒2.58(ビット) これまでは,等確率な結果をもつ試行を例にあげてきたが,不等確率な結果をもつ試行につい て も 情 報 量 は 計 算 で き る 。 い ま , あ る 試 行 の 結 果 が n 個 あ り , そ れ ぞ れ の 出 現 確 率 を p1,p2,・・・,pi,・・pnとすると,この試行のもつ情報量は -Σpilog2piで求められる。

(2)

2.練習効果と疲労効果 これから行う実験のように,人間の心理的機能を調べる場合には、ある課題(刺激)を与えて、 その成績(反応)を測定するという方法をとるのが一般的である。ところが,ここに考慮しなけ ればならない問題がある。それは、練習効果と疲労効果である。ともに高等動物特有の現象と考 えられる。初めての課題でも、繰り返し行うとだんだん慣れてくる。これが練習効果である。習 熟ともいう。練習効果は成績を向上させる。今回の実験でも、一人の人に条件を変えて,ほぼ同 様の課題を複数回行ってもらうので,当然のことながら練習効果があらわれる。しかし,われわ れが調べたいのは設定した条件と成績の関係であるから,練習効果が入り込むことは好ましくな い。 一方、疲労効果は、長時間課題を行っていると諸機能が低下してくる状態を指す。疲労効果は 成績を低下させる要因になる。したがって、これも今回の実験には好ましくない。 人間を被検体とする実験では、練習効果と疲労効果を常に意識する必要がある。これが人間以 外を被検体とする実験と最も異なる点である。本実験における練習効果と疲労効果の取り扱いは 後述する。 【人間の情報処理特性】 人間の情報処理特性に関しては,これまでに2つの基本的法則が見いだされている。 Hick の法則 刺激のもつ情報量をH(ビット),刺激に対する反応時間をRTとすると, RT=aH+b (ただし,a,bは定数)・・・・・・(イ) Hは各刺激の出現確率を piとするとき,-Σpilog2piで与えられる。各刺激が等頻度のとき 最大となり,その場合は log2n(n は刺激の種類の数)で与えられる。 Fitts の法則 ターゲットまでの距離をD,ターゲットの大きさをSとすると,ターゲットまでの移動時間M Tは以下の式であらわされる。 MT=alog(D/S+0.5)+b(ただし,a,bは定数) この式は,H=log(D/S+0.5)とおくと,式(イ)と同じになる。 要するに,どちらの法則も,人間の情報処理時間は課題のもつ情報量と直線関係があることを 示している。

(3)

【実 験】 Ⅰ.Hick の法則の検証 1.目 的 人間の基本的情報処理特性である Hick の法則を検証し、人間の情報処理のメカニズムについ て考察する。Hick の法則は、刺激のもつ情報量をH(ビット),刺激に対する反応時間をRTとする と, RT=aH+b (ただし,a,bは定数) であらわされる。Hは各刺激の出現確率を piとするとき,-Σpilog2piで与えられる。各刺激 が等頻度のとき最大となり,その場合は log2n(n は刺激の種類の数)で与えられる。要するに、 人間の情報処理時間は課題のもつ情報量と直線関係があることを示している。 2.方 法 1)使用機材(図1参照) ・ パーソナルコンピュータ ・ 刺激提示器(7 セグメント LED) ・ 反応スイッチ 図1 反応時間の測定装置 2)被験者 健康な大学生 名(男 名;女 名;年齢 〜 歳) 3)刺激条件 表1に示す4つの刺激条件が用意されている。刺激提示器には、1選択(単純反応)では0 (零)、2選択では4または5、4選択では3から6までのいずれか、8選択では1から8までの いずれかの数字が提示される。選択反応(2、4、8選択)では各刺激の出現頻度は等しくして いるので、刺激情報量はそれぞれ1、2、3ビットとなる。なお、1選択の情報量は0ビットで ある。

PC

反応スイッチ 刺激提示器

(4)

表1 4つの刺激条件 選択肢(刺激の種類の数) 1 2 4 8 刺激(数字) 0 4,5 3,4,5,6 1〜8 刺激情報量(ビット) 0 1 2 3 注)2,4,8選択においては、各刺激の出現頻度は等しい。 4)被験者の課題 各刺激条件において、刺激提示器に表示された数字に対応する反応スイッチ盤上のボタンを正 確、かつ素早く押すことが被験者の課題である。各ボタンには数字ラベルが貼付されており、刺 激数字と対応している。1選択ではボタン0を利き手の人差し指で押す。2選択ではボタン4、 5をそれぞれ左右の人差し指で押す。4選択ではボタン3から6をそれぞれ左手中指、同人差し 指、右手人差し指、同中指で担当する。8選択では左右の親指以外の8指を使う。ボタン1は左 手小指、ボタン8は右手の小指で担当することになる。測定中は指は軽く担当するボタンに触れ ておく。 5)試行順の決定 各被験者は4つのすべての刺激条件において測定することが望ましいが、時間の制約から、 2つの刺激条件において測定を行う。試行順は表2に従う。各被験者はランダムに選ばれた刺激 条件をランダムに決められた順で試行することで練習効果を最小限に抑える。一人の被験者につ いて連続して測定を行うと疲労効果があらわれるので、被験者Aの4選択条件が終わったら、次 は被験者Bの2選択条件というようにローテーションを行う。 表2 試行順 【表中の数字は刺激条件(選択肢数)を示す】 試行順 被験者 1 2 A 4 2 B 2 8 C 8 1 D 1 4 E 4 2 F 1 8 G 8 1 H 2 4 I 4 2 J 2 8 K 8 1 L 1 4 M 4 2 N 2 8

(5)

6)手順 ・ 被験者は反応スイッチの前に座る。 ・ 実験者は反応時間測定システムに適当な刺激条件等を設定し、測定を開始する各刺激条件 においては、練習→本測定の順に行う。 ・ 測定中、被験者は刺激提示器に注意を集中し、できるだけ、正確に、速く反応することを 心がける。予測でボタンを押すことは厳禁である。正しい反応の場合、刺激は即座に消滅 する。ボタンを押したのに刺激が消滅しない場合は、間違った反応であるので、素早く正 しいボタンを押す。刺激は、練習で16回、本測定で16回現れる。刺激の出現間隔時間 は約3秒である。 ・ 本測定が終了したら、実験者はコンピュータディスプレイに表示される測定結果をデータ シートに書き写す。 3.結果の処理 結果の処理では、回帰分析(補足2)などの統計学の手法を使うので、表計算ソフトを利用 が望まれる。

(6)

4.データシート 実験日( ) 1選択 2選択 4選択 8選択 被験者 正答数 誤答数 無答数 尚早数 処理数 中央値 平均値 標準偏差 被験者 正答数 誤答数 無答数 尚早数 処理数 中央値 平均値 標準偏差 被験者 正答数 誤答数 無答数 尚早数 処理数 中央値 平均値 標準偏差 被験者 正答数 誤答数 無答数 尚早数 処理数 中央値 平均値 標準偏差 被験者 正答数 誤答数 無答数 尚早数 処理数 中央値 平均値 標準偏差

(7)

Ⅱ.Fitts の法則の検証 1.目 的 人間の基本的情報処理特性である Fitts の法則を検証し、理解を深める。Fitts の法則は、 ターゲットまでの距離をD,ターゲットの大きさをSとすると,ターゲットまでの移動時間MT は以下の式であらわされる。 MT=alog2(D/S+0.5)+b(ただし,a,bは定数) この式は,H=log2(D/S+0.5)とおくと,Hick の法則式と同じになる。要するに、 人間の情報処理時間は課題のもつ情報量と直線関係があることを示している。 2.方 法 1)使用機材(図2参照) ・パーソナルコンピュータ ・タッチパネル付きディスプレイ 図2 動作時間の測定装置 2)被験者 健康な大学生 名(男 名;女 名;年齢 〜 歳) 3)刺激条件 表3に示す4つの刺激条件について測定を行う。 表3 4つの刺激条件 サイズ(S,mm) 刺激情報量(ビット) 2 2.5 3 3.5 距離(D,mm) 4)被験者の課題 ディスプレイ上に2つの矩形のターゲットが表示される。2つのターゲット内を交互にでき るだけ速く正確に、利き腕の人差し指で打点することが被験者の課題である。 5)試行順の決定 各被験者は4つのすべての刺激条件において測定することが望ましいが、時間の制約から、 2つの刺激条件において測定を行う。試行順は表4に従う。各被験者はランダムに選ばれた刺激 条件をランダムに決められた順で試行することで練習効果を最小限に抑える。一人の被験者につ

(8)

いて連続して測定を行うと疲労効果があらわれるので、被験者Aの 3 ビット条件が終わったら、次 は被験者Bの 2.5 ビット条件というようにローテーションをする。 表4 試行順 試行順 被験者 1 2 A 3 2.5 B 2.5 3.5 C 3.5 2 D 2 3 E 3 2.5 F 2.5 3.5 G 3.5 2 H 2 3 I 3 2.5 注)表中の数字は刺激条件(刺激情報量)を示す。 6)手順 ・ 被験者はタッチパネルの装着されたディスプレイの前に座る。 ・ 実験者は動作時間測定システムに適当な刺激条件等を設定して、測定を開始する。各刺激 条件においては、練習→本測定の順に行う。 ・ 被験者は練習において 5 秒間、本測定において 15 秒間,ターゲットの交互打点課題を行 う。課題実行中、被験者はディスプレイに常に正対し,できるだけ速く正確に打点するこ とを心がけるが、正確さをやや優先させる。 ・ 練習のあとは、エラー率に注目する。エラー率が 10%以上の場合は、次の本測定では正確 性を期すようにすること。本測定においてもエラー率が 10%以上の場合は、10%以下にな るまで本測定を繰り返す。 ・ 本測定が終了したら、実験者はコンピュータディスプレイに表示される測定結果を をデータシートに書き写す。 3.結果の処理

結果の処理では、回帰分析(補足2)などの統計学の手法を使うので、表計算ソフトを利

用が望まれる

(9)

4.データシート 実験日( ) 情報量( bits) サイズ( mm) 距 離( mm) 情報量( bits) サイズ( mm) 距 離( mm) 情報量( bits) サイズ( mm) 距 離( mm) 情報量( bits) サイズ( mm) 距 離( mm) 被験者 動作時間(中央値 ms) 動作時間(平均値 ms) エラー率(%) 打点回数 被験者 動作時間(中央値 ms) 動作時間(平均値 ms) エラー率(%) 打点回数 被験者 動作時間(中央値 ms) 動作時間(平均値 ms) エラー率(%) 打点回数 被験者 動作時間(中央値 ms) 動作時間(平均値 ms) エラー率(%) 打点回数 被験者 動作時間(中央値 ms) 動作時間(平均値 ms) エラー率(%) 打点回数

(10)

【補 足】 1.ラテン方格法 4人の被験者にS1,S2,S3,S4に対して,C1,C2,C3,C4の4つの条件下で ある実験を行いたいと考えたとしよう。 もし,表5に示すように,すべての被験者にC1,C2,C3,C4の順で実験を行ったとす ると,得られた結果には,順序効果が含まれているおそれがある。つまり,C1という条件では 被験者はいつも課題に不慣れなまま反応しなければならなかったかもしれないし、C4という条 件では慣れが進んでいたり,あるいは疲れてしまった状態で反応しなければならなかったかもし れない。 このような偏りが実験結果に混入することを避けるには,各被験者にランダムな順序で実験条 件を割り当て,しかも各順序において各実験条件が1回ずつ入るようにすればよい(表6参照)。 一般にn種の文字C1,C2,・・・・・・,Cnをn×nの正方行列の形にしかも各行各列にちょう ど一種類ずつあらわれるようにしたものをn×nラテン方格という。 表5 練習効果を考慮しない試行順 試行順 被験者 1 2 3 4 S1 C1 C2 C3 C4 S C1 C2 C3 C4 S3 C1 C2 C3 C4 S4 C1 C2 C3 C4 表6 練習効果を考慮した試行順(ラテン方格法の利用) 試行順 被験者 1 2 3 4 S1 C3 C1 C2 C4 S2 C1 C2 C4 C3 S3 C2 C4 C3 C1 S C4 C3 C1 C2 2.相関分析と回帰分析 いくつかの変数の相互の関係を知る手法としては,相関分析と回帰分析が知られている。相関 分析は,関心のある1組の変数の間に何らかの関連があるかどうかを知りたいときに用いられる 手法である。例えば,喫煙と心臓病,音楽に対する感受性と科学的才能,無線受信と太陽黒点の

(11)

活動などに,何らかの関連性があるかどうかを知りたいときがそうである。

変数間の相関の程度は相関係数とよばれる測度であらわされる。2組の事象X,Yに関してn 人の被験者のデータを(x1,y1),(x2,y2),・・・・,(xn,yn),それぞれの事象におけるデータの平均値 を xmean,ymeanとおくと,相関係数rは次式で求められる。

r=Σ(xi-xmean)(yi-ymean)/(Σ(xi-xmean)2Σ(yi-ymean)2)1/2

相関係数はー1から+1の値をとり,絶対値が1に近いほど,2組の変数間の関連が強いとい うことになるが,一般には -0.2〜0.2 ほとんど関連しない 0.2〜0.4(-0.4〜-0.2) やや関連がある 0.4〜0.7(-0.7〜-0.4) かなり関連がある 0.7〜1.0(-1.0〜-0.7) 非常に強い関連がある がひとつの目安となる。また,図3はさまざまなXとYの関係における相関係数を示したもので ある。 図3 データの散布度合と相関係数 相関係数を2変数間の直線的関連性の強さの測度とするのは純粋に数学的な解釈であって,こ れらの変数の間に何らかの因果関係があるという意味は全く含まれていないことに注意を要する。 さて,XとYの間に強い正の相関(または負の相関)がみられる場合には,Xが大きくなれば Yも大きくなる(または小さくなる)ことから,一方の値を知って,他方の大まかな値を予測す

(12)

ることができる。このような予測の問題を取り扱う手法を回帰分析とよぶ。

XからYを予測する最も簡単な方法として,一次式 Y=aX+b によってYの値を予測することが考 えられる。未知の定数a,bを定めるには最小二乗法を用いる。それによると,定数a,bは次 式で求められる。

a=Σ(xi-xmean)( yi-ymean)/Σ(xi-xmean)2 b=ymean−axmean

このようにして求められた一次式は回帰直線方程式とよばれる。回帰分析には,ここで説明し た直線回帰以外に,多重線形回帰や非線形回帰といった手法もある。

参照

関連したドキュメント

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

うのも、それは現物を直接に示すことによってしか説明できないタイプの概念である上に、その現物というのが、

問についてだが︑この間いに直接に答える前に確認しなけれ

る、関与していることに伴う、または関与することとなる重大なリスクがある、と合理的に 判断される者を特定したリストを指します 51 。Entity

また適切な音量で音が聞 こえる音響設備を常設設 備として備えている なお、常設設備の効果が適 切に得られない場合、クラ

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた