宇都宮大学教育学部教育実践紀要 第6号 別刷 2 0 1 9 年 8 月 9 日
山野 有紀・天沼 実
マレーシア短期海外英語研修報告
マレーシア短期海外英語研修報告
†
―研修および教育学部参加学生に対するアンケート調査の結果から―
山野 有紀
*・天沼 実
*宇都宮大学教育学部
* This paper reports Utsunomiya University’s three-week overseas English program held in Malaysia. The program was conducted with the collaboration of Sarawak University. The aims of this program are not only to enhance students’ communicative ability in English but also to cultivate an intercultural communicative competence by experiencing multi-cultural society as well as comprehending Sustainable Development Goals (SDGs). In this paper, first the correlation between the program and the new course of study published by Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology of Japan in 2017 is examined. Then, the contents of the program are explained. Finally, the results of the questionnaire conducted to ten students of the school of education participated in this program are analyzed. The results show that after the program the students’ self-evaluations on their English language abilities, especially on their oral communication skills, as well as their comprehension on multicultural and multilingual community improved and their motivation to use English language for communication increased. In addition, it was found that all the participants realized the importance of the school visit in another country and most of them appreciated the meaning of SDGs. It is thus indicated that this program can be effective in improving students’ English language learning and teaching, their intercultural communicative competence and understanding of SDGs.キーワード:短期海外英語研修,新学習指導要領,小学校外国語教育,教員養成,相互文化理解,SDGs 1.はじめに 平成29年3月に公示された新学習指導要領におい て,特に小学校外国語教育は大きな変革を求められ ることとなった。具体的には,小学校 3 年生・4 年 生の中学年における領域としての「外国語活動」, 小学校高学年における教科としての「外国語科」の 導入とそれぞれ年間 35 時間と 70 時間の実施が示さ れた。移行期間となった平成30年4月からは,栃木 県内を含めた日本の自治体や学校において,小学校 3年生からの外国語活動の授業時数を先取りし指導 を始めるなどの取り組みが実施されている。このよ うな中,大学の小学校教員養成課程においても,上 記新学習指導要領に基づく外国語教育の指導者養成 プログラムの充実は喫緊の課題となっている。 本稿はその課題に処するべく,宇都宮大学教育学 部の教員養成課程に在籍する学生を支援し参加を促 したマレーシア短期英語研修について,以下のとお り報告するものである。まず,新学習指導要領に示 されたこれからの外国語教育と本研修との関連につ いて示す。次に,研修内容について説明する。最後 に,研修に参加した教育学部の学生 10 名に対して 行ったアンケート調査結果から本研修の成果につい て分析および考察を行う。
† Yuki YAMANO*, Minoru AMANUMA*: The report of Utsunomiya University’s short-term English program in Malaysia
Keywords: Short-term English program, The new course of study, foreign language education at primary school, pre-service teacher education, Intercultural communicative competence, Sustainable Development Goals * School of Education, Utsunomiya University (連絡先:[email protected])
2.新学習指導要領の小学校外国語教育と本研修 2017 年度に公示された新学習指導要領では,学 習者の「生きる力」の育成を目指し,そのカリキュ ラム構築の基盤をカリキュラムリデザインセンター のフェデルらによって提唱された「4 次元の教育」 に よ る CCR Framework(Center for Curriculum Redesign, 2015)という国際的教育カリキュラムの 考え方に置いた。具体的には,「知識・技能」(学び により理解・できるようになること)・「思考力・判 断力・表現力等」(理解していること・できること をどう使うか)・「学びに向かう力・人間性」(より よい人生を生きるために,主体的に学びを人生や社 会に生かそうとする力の涵養)という三つの柱が定 義され,これまでの伝統的な教科の枠組みを超えて, 知識をつなぎ,活用できる,21 世紀型学習者の育 成を目指すことが示されている。言い換えると,21 世紀を生きる子どもたちのために,「主体的・対話 的で深い学び」と学校の学びを社会につなげ,それ ぞれの個性を生かし多様な人々と協働する「教科横 断的カリキュラムマネジメント」による学びの実現 が求められていることが示された(文科省,2019)。 特に,上記の多様な人々との協働は,「様々な社会 的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可 能な社会の担い手となることができるようにする」 (文部科学省,2017a,p.15)ためと言及されている。 外国語教育においては,上記教育の実現のために, 次の通り,教科の見方・考え方が示された。 「外国語で表現し,伝え合うために,外国語や その背景にある文化を,社会や世界,他者との 関わりに着目して捉え,コミュニケーションを 行う目的,場面,状況等に応じて,情報や自分 の考えなどを形成,整理,再構築すること。」(文 部科学省,2017b,p.11) 上記に基づき,特に小学校中学年における外国語 活動では,「知識及び技能」が「コミュニケーショ ンに関する事項」と「言語や文化に関する事項」と で構成されており,英語学習を通して主体的にコ ミュニケーションを図ることの楽しさや大切さを体 験的に学ぶとともに,日本と外国の言語や多様な文 化について理解することが重視されている。実際に 外国語教育においては英語の学びを基本としながら も,多様な言語と文化について知り,人々とコミュ ニケーションをとることの重要性が,新学習指導要 領に基づく文科省による補助教材 “Let’s try!” ¹ に 具現化されている。さらに高学年向けの補助教材 “We can!” ² では,日本の文化や海外の文化生活に ついて考え表現したり,相互文化理解を促す学習活 動が多く取り入れられている。上記の教育実践のた めには,小学校教員養成課程において,学生自らが 外国語を通して多言語多文化に触れる学習とコミュ ニケーションの機会を持ち,その重要性を体験的に 学ぶ必要があると言える。ここまでに述べた新学習 指導要領に求められている学びが本研修における目 標とそれに基づく学びと強い関連性を持つことを次 に述べる。 本研修は,本学とマレーシアのボルネオ島にある サラワク大学の共同により2017年度より実施され, 以下を到達目標としている。 「英語の総合的技能・運用能力を高めることに加 えて,キャンパス内での寮生活を通じて,英語 圏の国で生活する力を身につけることが目標で ある。また,各学生の専門領域(地域デザイン 科学,国際学,教育学,工学,農学)の見地から, 現地でより深い交流をすることも望まれる。」 また今年度は,上記に加え,持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals(SDGs))に関す
る学びも取り入れることとした。 本研修が行われたマレーシアは,マレー系(約 69%)・中国系(約23%)・インド系(約7%)によ る3200万の人口を有する多民族国家で,特にマレー 系には,上記の中国系及びインド系を除く Iban 族 などの先住民族などの他民族が含まれている(外務 省,2019)。マレー語,中国語,タミール語等,多 様な民族の言語や文化を尊重する相互文化理解が促 されており,その中で,英語は第2言語として,ニュー ス等のテレビプログラム等,日常的に使用されてい る。マレーシアの文科省のナショナルカリキュラム でも,英語教育は幼稚園から開始することが示され ている。サラワク州は上記の多民族・多文化と多言 語を象徴する州である。 事実,サラワク大学でも,国内外から多様な民族・ 文化・言語を持つ学生たちが集い,多様性(diversity) と共存・協働のための有機的統合(unity)を重視 した教育を,基本的には全て第2言語である英語で 学んでいる。学部は多岐にわたり,芸術学部,認知 科学・人材開発学部,コンピューター・情報技術学 部,経済ビジネス学部,自然資源・工学部,医学部, 社会学部,言語コミュニケーション学部や,大学予
備学校,大学院等,ボルネオの自然や環境,資源開 発等のための研究所があり,SDGsに関する学びに 適しているといえる,ボルネオ島唯一の国立大学で ある。特に,サラワク大学における教育の特徴のひ とつとして,上記にも示したとおり,1992 年に開 設以来,マレーシアで初めて,外国語教育以外の全 ての授業を英語で教授することを実践した点があげ られる。 このサラワク大学において,本学の学生はそれぞ れの専門分野領域に繋がる「バディ」と呼ばれる多 様性豊かな現地の学生と交流し,現地での生活全般 の支援をうけながら,学びをすすめた。すなわち, 同世代の専門領域を学ぶマレーシアの学生と,英語 でのコミュニケーションを通して,相互文化理解を 尊重する多言語・多文化・多民族社会を実体験しな がら,専門領域とSDGsに繋がる学びの機会を得た のである。特に教育学部の学生においては,現地の 私立幼稚園・小学校訪問における英語の授業観察の 機会にも恵まれ,まさに新学習指導要領の小学校外 国語教育実践のための学びの契機となりうる機会を 持つことができた。次章では,本研修内容について 詳細を述べる。 3.研修内容 今回の研修は,前章に示した到達目標の達成のた めに構築されたプログラムに基づき,平成31年2月 7日より24日まで実施された。本学の学生の参加者 は,1年生から3年生までの全30名で,教育学部か らは10名が参加した。それぞれの専門分野は英語3 名,特別支援4名,保健体育2名,理科1名であった。 また,教育学部からの引率として本稿の著者2名が 参加した。サラワク大学においては,前章でも説明 した,それぞれの専門領域に近いバディが本学の学 生 2 名もしくは 3 名のグループに対して 1 名ずつ担 当としてつき,支援したり交流をしたりしながら, サラワク大学での寮生活を含めた学生生活と学びを すすめた。主な研修内容について以下に述べる。 (1)大学における英語授業 (2.5時間(150分)×12回=30時間) サラワク大学コミュニケーション学部の教員によ る英語の4技能5領域(listening, speaking (interaction, speech), reading, writing)の統合的学習活動を中 心としたアクティブラーニングを取り入れた 30 時 間の集中英語授業である。内容としては,SDGs お よびマレーシアにおける多民族・多文化理解に繋が るテーマ学習による授業であった。 (2)教育学部生の分野別領域学習(現地学校訪問) (4時間×3回=12時間) 分野別領域学習は全3回で,①現地学校訪問,② サラワク大学における日本語授業見学,③サラワク 大学言語コミュニケーション学部訪問である。 特に今回は,本学教育学部学生の実践的学びのた めに実施した現地学校訪問について,以下に詳細を 述べる。 学校訪問は,サラワク州中心部にある私立学校法 人Lodge Group of Schoolsが統括しているインター ナショナルスクール・幼稚園・小学校にて行われた ものである。学校は全ての教育課程において2学期 制となっており,1月から5月までが1学期,6月か ら11月までが2学期である。1学期の終わりに一週 間の休暇と2学期修了の後に年度末の長期休暇があ る。学校訪問は 2019 年 2 月 13 日に実施され,時期 としては新学年となり 1 ヵ月が経過したところで あった。 今回の訪問では,インターナショナルスクールで の小学校課程の英語教育,幼稚園での体験的学習活 動,マレーシアのナショナルカリキュラムによる小 学校の授業を見学することができた。インターナ ショナルスクールの小学校課程においては,本学の 学生が 2 つのグループに分かれ,それぞれ小学校 2 年生と6年生の英語の授業観察の機会を得た。その 詳細を以下に記す。 インターナショナルスクールでは,Primary の 1 年生から 6 年生までと Secondary の 7 年生から 13 年 生までがCambridgeのインターナショナルカリキュ ラムに基づいた教育プログラムで学んでいる。 小学校2年生の英語のクラスでは,punctuation(句 読点)の学びを行っていた。先生が黒板に書いた文 に入れるにふさわしい句読点を,/,(カンマ)/. (ピ リオド)/ ?(クエスチョン・マーク)/ ! (エクス クラメーション・マーク)/のうちから選ぶ活動で あった。児童の主体性を重視し,児童の考えや答え を促しながら,インタラクティブに授業活動を行っ ており,特にその学びの中で,自分の考えをクラス で発表するのに躊躇している児童に先生が何度も繰 り返していたのが以下の言葉である。“Don‘t be afraid of making mistakes. It’s natural and very important. You cannot study English without it.
Let’s try!” その言葉かけに励まされ,間違いを恐れ ず挑戦していく児童と,それを称賛しながら,しっ かりとフィードバックをしていく教員の姿。これは, これからの日本の小学校外国語教育の指針となるべ き姿であろう。その学習の後,見学した本学の学生 による日本紹介を行った。学生は折り紙や,持参し た扇子に筆ペンで児童の名前を書写したり,日本の アニメについて紹介したりして,児童からの賞賛を 受けた。特に2年生の英語の教科書には日本文化紹 介があることもあり,指導していた先生も積極的に 関わってくださり,最後には教室の掲示物に見学者 の名前を日本の漢字で書いていってほしいという要 望をいただき,それぞれが名前を書いて,感謝の挨 拶とともに授業見学を終了した。 小学校6年生のクラスでは,現地公用語であるイ ギリス英語(BrE)とアメリカ英語(AmE)の発 音とつづり字の関係の違いを学習していた。具体的 には,まず,少数の具体例に触れながら生徒と対話 を進める中で,BrE と AmE では発音と文字の対応 関係に一部違いがあること,さらにその違い方には パターンがあることに気づかせる。次いで表の空所 を 埋 め る ワ ー ク シ ー ト を 用 い て theatre, colour, apologise 等のより多くの例について対応する AmE 式つづりを類推して書く練習に移り,一般的なパ ターンに関する知識の定着と語彙の拡大をはかると いう流れである。このワークシート作業の間,本学 学生はアシスタントとして生徒間を巡回し対話しな がらアドバイスをする活動を行った。学生により積 極さの度合いはさまざまであり,自分より流暢に英 語をつかう小学生を前にして戸惑っている者も少な くなかったため,引率者が積極的に関わり方の例を 示すなどした。なお,担当教員の勧めにより,引率 者がこのセッションのまとめを行うこととなり,小 学生を対象とした英語での授業を短時間ながらも実 演した。これに引き続き,それぞれの学生が自己紹 介と生徒からの質問を受ける機会を与えられたが, 突然のことで学生たちは戸惑いつつも,自分の得手 やキャラクターを活かした工夫で,生徒たちと英語 で対話するという貴重な経験を活かすことができた ようである。その後は,記念撮影を行い,見学を終 了した。 上記のインターナショナルスクールでの授業見学 の後,場所を移動し,幼稚園での体験的活動を要と した英語によるテーマ学習やライムで英語の音韻認 識を高める学びと,同じ敷地内にあり,ナショナル カリキュラムで学習を行っている小学校での授業を 見学の機会を頂いた。その際,幼稚園および小学校 の全児童を前に,学生が自己紹介をする機会も設け ていただき,双方向での交流の機会を得ることがで きた。 (3)本研修の学びの統括である発表活動 (3時間×2+4時間=10時間) 上記の発表は以下のとおり,3回実施された。 ①前半のまとめの発表 マレーシアの州について,前半7日間の研修にお ける学びを取り入れながら,3名ごとのグループに なり,それぞれ異なる州を担当の上,調べたことを まとめて発表するものであった。 ② 後半のまとめの発表 全研修における英語授業のまとめとして,SDGs のいずれかの目標に関わる発表を3名ごとのグルー プに分かれて発表するものである。 ③大学主催Closing Ceremonyでの発表 全体的な学びの振り返り日本文化紹介とサラワク 大学でのついての発表で,最も大きなものである。 前述した2つの発表は,コミュニケーション学部に おける学びの統括として,前半と後半の最後に各1 回ずつ行われるものであるが,これは,サラワク大 学における本研修の全行程の学びの総括として研修 最終日に大学主催の Closing Ceremony において発 表するものである。特に本セレモニーにはサラワク 大学の副学長やコミュニケーション学部の学部長も 出席の上,本学学生やバディ,引率者はもちろん, サラワク大学の短期教育プログラムに世界の様々な 国から来ている他大学の学生も参加するもので,相 互文化交流も兼ねた,大学ホールでの盛大な発表会 となる。 (4)発表準備学習 (2.5時間×2=5時間,4時間×3回=12時間) 上記3-(3)における発表のための文献情報収集, それに基づく発表のためのパワーポイントスライド 作成,発表のためのスクリプト準備,日本の文化紹 介発表のための練習等に関わる学習活動である。こ れは必要に応じてバディも介入し,ディスカッショ ンをしながら準備をすすめた。 (5)スポーツ・バディと交流を深める課外活動 研修期間中,サラワク大学の学生バディと行うス ポーツ活動(カヤック・プールなど)や学内外を探
索し交流を深める授業後の課外活動である。 (6)学外における課外活動 (1日×3+1泊2日×2=5日間) マレーシアボルネオ島のサラワク州における豊か な自然環境に基づく生物多様性や多民族共生の体験 的理解を促す学外活動,首都クアラルンプールにお ける学外課外活動である。具体的には,サラワク州 のマタン・ワイルドライフセンター訪問,ブルック ギャラリー訪問,クチン市内観光,サラワク文化村 訪問,クアラルンプール市内観光である。 上記が全 18 日間のマレーシア英語研修の詳細で ある。次章にて,本研修に参加した 10 名の教育学 部学生を対象に実施した事前および事後アンケート 結果について考察する。 4.学生のアンケート調査結果にみる本研修成果 本研修においては,事前事後でアンケート調査を 行った。本章では,特に次の質問項目による事前お よび事後の結果分析を行う。 (1)英語の4技能についての自己評価 事前アンケートにおける英語の4技能の自己評価 と研修後の 4 技能の伸張についての自己評価を 5 件 法による選択式質問項目調査を行った。結果は次の 通りである。 5 である。これは必要に応じてバディも介入し,デ ィスカッションをしながら準備をすすめた。 (5)スポーツ・バディと交流を深める課外活動 研修期間中,サラワク大学の学生バディと行う スポーツ活動(カヤック・プールなど)や学内外 を探索し交流を深める授業後の課外活動である。 (6)学外における課外活動 (1日×3+1泊2日×2=5日間) マレーシアボルネオ島のサラワク州における豊 かな自然環境に基づく生物多様性や多民族共生の 体験的理解を促す学外活動,首都クアラルンプー ルにおける学外課外活動である。具体的には,サ ラワク州のマタン ワイルドライフセンター訪問, ブルックギャラリー訪問,クチン市内観光,サラ ワク文化村訪問,クアラルンプール市内観光であ る。 上記が全 18 日間のマレーシア英語研修の詳細 である。次章にて,本研修に参加した 10 名の教育 学部学生を対象に実施した事前および事後アンケ ート結果について考察する。 4.学生のアンケート調査結果にみる本研修成果 本研修においては,事前事後でアンケート調査 を行った。本章では,特に次の質問項目による事 前および事後の結果分析を行う。 (1)英語の4技能についての自己評価 事前アンケートにおける英語の4技能の自己評 価と研修後の4技能の伸張についての自己評価を 5件法による選択式質問項目調査を行った。結果 は次の通りである。 図1. 英語の4技能の自己評価の平均値の推移 図1の通り,研修前には,オーラルコミュニケ ーション(リスニング・スピーキング)およびラ イティングのproductive skills についての自己評 価は,それぞれの技能について,「2. あまり自信 がない」,「1. 自信がない」という否定的な項目を 選択する学生が多く,全体的に自己評価が低く, 英語に対して自信がない傾向が顕著であった。し かし事後調査において,特にオーラルコミュニケ ーション技能の伸張に対する自己評価に関して, 英語の聞く力・話す力が身に付いたかどうかつい ては,全員が「5. とてもそう思う」,「4. そう思 う」という肯定的な回答をしており,本研修にお ける学びが学生の英語でのコミュニケーション技 能の自己評価の伸張を促しているといえる。 (2)英語使用および英語学習への動機付け 次に英語学習への動機付けの高さと英語学習へ の意義について事前と事後で行った5件法による 選択式アンケート項目に対する回答結果を示す。 質問は次の3つで,①英語でのコミュニケーショ ンへの動機付けの高さ,②英語を使った長期留学 や国際インターンシップ参加への興味,③英語は 自分の将来に役に立つかどうかという,英語学習 への動機付けの高さと学習意義を問うものである。 平均値の推移の結果は次の通りである。 図2.英語の動機付け・英語学習の意義の推移 図2から,研修前より「英語で世界の人々とコ ミュニケーションをとってみたい」という英語を 通したコミュニケーション志向が強く,留学や国 際インターンシップにも興味があり,英語は将来 役に立つという認識も高いことがわかる。研修後 には,さらに上記の英語コミュニケーションおよ び英語学習への動機付けが高まり,英語が将来役 に立つという認識を強めていることがわかる。特 図1. 英語の4技能の自己評価の平均値の推移 図1の通り,研修前には,オーラルコミュニケー ション(リスニング・スピーキング)およびライティ ングのproductive skillsについての自己評価は,そ れぞれの技能について,「2. あまり自信がない」,「1. 自信がない」という否定的な項目を選択する学生が 多く,全体的に自己評価が低く,英語に対して自信 がない傾向が顕著であった。しかし事後調査におい て,特にオーラルコミュニケーション技能の伸張に 対する自己評価に関して,英語の聞く力・話す力が 身に付いたかどうかついては,全員が「5. とてもそ う思う」,「4. そう思う」という肯定的な回答をして おり,本研修における学びが学生の英語でのコミュ ニケーション技能の自己評価の伸張を促していると いえる。 (2)英語使用および英語学習への動機付け 次に英語学習への動機付けの高さと英語学習への 意義について事前と事後で行った5件法による選択 式アンケート項目に対する回答結果を示す。質問は 次の3つで,①英語でのコミュニケーションへの動 機付けの高さ,②英語を使った長期留学や国際イン ターンシップ参加への興味,③英語は自分の将来に 役に立つかどうかという,英語学習への動機付けの 高さと学習意義を問うものである。平均値の推移の 結果は次の通りである。 5 である。これは必要に応じてバディも介入し,デ ィスカッションをしながら準備をすすめた。 (5)スポーツ・バディと交流を深める課外活動 研修期間中,サラワク大学の学生バディと行う スポーツ活動(カヤック・プールなど)や学内外 を探索し交流を深める授業後の課外活動である。 (6)学外における課外活動 (1日×3+1泊2日×2=5日間) マレーシアボルネオ島のサラワク州における豊 かな自然環境に基づく生物多様性や多民族共生の 体験的理解を促す学外活動,首都クアラルンプー ルにおける学外課外活動である。具体的には,サ ラワク州のマタン ワイルドライフセンター訪問, ブルックギャラリー訪問,クチン市内観光,サラ ワク文化村訪問,クアラルンプール市内観光であ る。 上記が全 18 日間のマレーシア英語研修の詳細 である。次章にて,本研修に参加した 10 名の教育 学部学生を対象に実施した事前および事後アンケ ート結果について考察する。 4.学生のアンケート調査結果にみる本研修成果 本研修においては,事前事後でアンケート調査 を行った。本章では,特に次の質問項目による事 前および事後の結果分析を行う。 (1)英語の4技能についての自己評価 事前アンケートにおける英語の4技能の自己評 価と研修後の4技能の伸張についての自己評価を 5件法による選択式質問項目調査を行った。結果 は次の通りである。 図1. 英語の4技能の自己評価の平均値の推移 図1の通り,研修前には,オーラルコミュニケ ーション(リスニング・スピーキング)およびラ イティングのproductive skills についての自己評 価は,それぞれの技能について,「2. あまり自信 がない」,「1. 自信がない」という否定的な項目を 選択する学生が多く,全体的に自己評価が低く, 英語に対して自信がない傾向が顕著であった。し かし事後調査において,特にオーラルコミュニケ ーション技能の伸張に対する自己評価に関して, 英語の聞く力・話す力が身に付いたかどうかつい ては,全員が「5. とてもそう思う」,「4. そう思 う」という肯定的な回答をしており,本研修にお ける学びが学生の英語でのコミュニケーション技 能の自己評価の伸張を促しているといえる。 (2)英語使用および英語学習への動機付け 次に英語学習への動機付けの高さと英語学習へ の意義について事前と事後で行った5件法による 選択式アンケート項目に対する回答結果を示す。 質問は次の3つで,①英語でのコミュニケーショ ンへの動機付けの高さ,②英語を使った長期留学 や国際インターンシップ参加への興味,③英語は 自分の将来に役に立つかどうかという,英語学習 への動機付けの高さと学習意義を問うものである。 平均値の推移の結果は次の通りである。 図2.英語の動機付け・英語学習の意義の推移 図2から,研修前より「英語で世界の人々とコ ミュニケーションをとってみたい」という英語を 通したコミュニケーション志向が強く,留学や国 際インターンシップにも興味があり,英語は将来 役に立つという認識も高いことがわかる。研修後 には,さらに上記の英語コミュニケーションおよ び英語学習への動機付けが高まり,英語が将来役 に立つという認識を強めていることがわかる。特 図2.英語の動機付け・英語学習の意義の推移 図2から,研修前より「英語で世界の人々とコミュ ニケーションをとってみたい」という英語を通した コミュニケーション志向が強く,留学や国際イン ターンシップにも興味があり,英語は将来役に立つ という認識も高いことがわかる。研修後には,さら に上記の英語コミュニケーションおよび英語学習へ の動機付けが高まり,英語が将来役に立つという認 識を強めていることがわかる。特に,留学や国際イ ンターンシップというさらなる英語研修への意欲も 強まっていることが明らかである。 (3)多言語多文化理解について 多言語多文化理解に関する研修前後の意識の変化 などについては,事後アンケートでの「多言語・多 文化の社会,歴史および自然について学ぶことがで きた」かどうかについて次の5件法「5. とてもそう 思う,4. そう思う,3. どちらでもない,2. あまり
そう思わない,1. そう思わない」により問う選択式 項目と,多言語多文化について「(研修で)学んだ ことや,印象に残っていることなどを教えてくださ い」という記述式質問項目の結果に表れた。 まず選択式項目の結果としては,「5」か「4」の 肯定的な回答が 9 名で,平均値は 4.5 となり,多言 語多文化理解が促されたといえる。また学生全員が 研修における多言語多文化理解の具体的な学びや印 象に残ったことを記述している。詳細は以下の表の 通りである。 表1.研修での学び・印象に残っていること ・Iban の生活と歴史 ・サラワクの歴史 ・ 様々なルーツを持つ人々が同じ環境で共生して いるので,映画の字幕がマレー語,英語,中国 語と3つあるなど,それぞれの文化や宗教に寛 容なことが印象的だった。 ・ マレーシアは多民族国家のため,英語を学ぶ必 要性が日本と比べてかなり高いということ。宗 教に関する考え方が日本と全く異なっている。 ・Sarawak Cultural Village
・ Sarawak Cultural Village での生活が,日本では 体験できないことだったので新鮮だった。 ・ 様々な学生とコミュ二ケーションを取りながら, どのように英語を学んだかや,どのような文化 があるかなどを知ることができた。 上記に記されている Iban とはサラワク州の先住 民族の一つである。さらに2名の学生がサラワク文 化村について言及している。サラワク文化村におい ては,サラワク州に現存する多様な先住民族の文化 体験ができる。これらの結果から学生が多民族多文 化について,体験的学習を行い,理解を深めている ことが伺える。 (4)現地学校訪問について 現地学校訪問における学びについては,事後アン ケートでの「小学校訪問は,専門領域の学びに役立 ちましたか」という質問項目に対する5件法「5. と てもそう思う,4. そう思う,3. どちらでもない,2. あまりそう思わない,1. そう思わない」からの選択 式回答と,「そう思う理由を教えてください」とい う記述式質問項目の結果に表れた。 まず選択式回答項目の結果としては,参加者 10 名全員が「5」か「4」の肯定的な回答を選択し,平 均値は 4.5 となっている。さらにそう答えた理由と して,学生は次の通り答えている。それぞれを専攻 分野別に分類し,以下に提示する。 表2.学校訪問の学びが役立ったと考える理由 (英語分野学生) ・現地の授業を体験できたから ・ 違う国,英語への必要性が違う国の教育を見れ た[ママ]ことは非常に有益でした。特にマレー シアは英語を準公用語として会話の中で使う機 会が非常に多く,日本の英語教育の弱点を知る ことが出来た。また,自分の中に新たな英語教 育の見地を持てた。 ・自分の専門領域に直に関われたから。 (特別支援教育学生) ・貴重な経験ができたと感じたから ・ 英語を英語で教えるということは日本でも取り 入れられてきているが,マレーシアの小学校で は母語を使うことなく授業を行っており,その 教え方が大変参考になったから。 ・ 小学校などの現地の学校のあり方を学ぶ上では 参考になったが専門科目が特別支援系のためそ の観点からの評価は難しいように感じます。し かし,副専攻の観点から見ればとても参考にな りました。 ・授業の組み立て方や工夫を見ることができた。 (保健体育学生) ・体育もみたかったが,いい経験になった。 ・海外の教育に初めて触れることができたから (理科分野学生) ・日本とは違う教育方法をみることができた。 上記から,それぞれの分野の学生がそれぞれの専 門分野の見地から現地学校での学びを捉えようとし た姿勢が伺える。特に,新学習指導要領では小学校 3年生からの英語教育が始まることとなり,小学校 教員を目指す場合には専門分野に関係なく英語教育 に携わる可能性が高い。そのような中で,小学校教 員養成課程に在籍する多様な専門分野の学生がマ レーシアの現地学校を訪問し,専門領域の学びに役 だったという認識を強く持ち,教育に対するメタ認 知的見方をする機会を持てたことは,大きな意義が あるといえよう。 (5)SDGsに関する学び SDGsに関する学びについては,事後アンケート での「持続可能な開発目標について学ぶことができ た」かどうかについて5件法「5. とてもそう思う,4. そう思う,3. どちらでもない,2. あまりそう思わな い,1. そう思わない」から選択回答する質問と, 「SDGs について学んだことを具体的に教えてくだ さい。また今後それを自分の専門領域の学びにどの ようにいかしていきたいか,考えがあれば教えてく ださい。」という記述式質問を実施した。結果は以 下の通りである。 まず選択式項目の結果としては,2 名が「5」,4 名が「4」を選び,合計 6 名が肯定的な回答を選択
している一方で,2名がどちらでもないという中庸 を選び,1名が「2」の否定的回答を選択しており, 平均値は 3.8 となっている。さらに上記の選択式項 目を選んだ理由について,学生は自由記述で答えて いる。そこでSDGsの学んだこと・専門領域への活 用について,肯定的・中庸・否定的選択肢を選んだ グループに分類し,以下に提示する。 表3.SDGsについて学んだこと・専門領域への活用 (肯定的選択肢を選んだ学生の記述回答) ・持続可能な生活にするため,私たちがすること ・教育に関して,平等という事を教えたい。(性, 宗教) ・私たちにもできることがあると学んだ ・ 最終プレゼンで,スポーツは健康だけではなく 男女平等とも関連していると発表したが,一つ の事柄に様々な目標があり,何を達成したいの か意識しておくことが大切だと学んだ。教育の 視点から考えると,子どもたちに具体的な課題 を見てもらい解決策を話し合わせることで, SDGsにつなげることができるだろう。 ・ 陸上資源の保護を行っていくことの重要性をボ ルネオ島の自然とふれあう中で改めて感じまし た。また,平等という言葉の重さをこの研修で 学びました。 ・ 地球環境を改善していくための運動(リユース・ リデュース・リサイクル等)は,人間だけでは なく地球上の生物の保護にも繋がる。今回の研 修で実際に自然や生き物と触れ合いSDGsについ て考えるきっかけを得られたことは,教員とし て生徒に話す話の引き出しを広げることに繋 がったと思う。 ・ 最後のプレゼンテーションで自分たちの学びと SDGsの関係について考える機会があり,マレー シアでは貧困地域が目に見えてあることを学ん だ。 (中庸的選択肢を選んだ学生の記述回答) ・ 与えられたテーマをSOGsと関連付けて,考えを 深める大切さ ・ スポーツをすることで,いろんな問題が解決さ れるのではないかと思った。 (否定的選択肢を選んだ学生の記述回答) ・ 特にありません。バディ達もそれほどSDGsに関 心を示しているようには見えませんでした。 上記から,中庸的選択肢を選んだ学生も含めて, 10名中9名の学生がSDGsについて学んだことがあっ たと答えていることがわかる。専門領域への活用に ついては,特に今後のSDGsの教育への具体的な適 用のあり方,SDGsと学びを繋げる重要性について, ボルネオ島の自然環境や生活事情と教育の体験的理 解を基盤として学んでいることがわかる。一方で, 10 名中 1 名の学生は,今回の研修において SDGs に ついて学ぶことができたかどうかについて,「あま りそう思わない」と答え,その理由について,本研 修で学びや生活を支援してくれた現地学生のバディ たちも関心を示していなかったためと答えており, 今後のプログラム構成において,SDGsの学びとの 繋がりを明確にし,現地の学生とも共有できるよう にすべきという課題も示された。 (6)バディとの交流 最後に,現地学生のバディとの交流に関する選択 式回答項目の結果と「研修に参加する中で,1番良 かった点(楽しくて思い出に残っていること)」に 関する記述式回答結果から考察する。 まず,選択式回答では,「今後もマレーシア/サ ラワクやバディたちとの交流を続けたい。」という 問いに対して,全員が肯定的選択肢を選び,特に8 名が「5. とてもそう思う」を選択している。結果と して,平均値は 4.8 となり,全選択式回答結果の中 で最も高い数値を示している。 さらに研修に参加する中で一番良かった点につい ての記述式回答においては,10名中8名の学生がバ ディとの交流と答えている。これは,現地での大学 生活全般をサポートしてくれる学生と同年代のバ ディとの交流の重要性を示している。英語でのコ ミュニケーションと,ジェスチャー等の多様な方略 を駆使しながら,友情を交わす人間同士の関わりが, 本研修の意義を高めていると考えられる。 5.まとめ 本稿はマレーシアサラワク大学で実施された宇都 宮大学短期英語研修の意義と成果について,研修に 参加した教育学部生 10 名を対象に行ったアンケー ト調査結果から考察を行ったものである。本研修成 果として,参加学生の英語のオーラルコミュニケー ション技能の自己評価の伸張,多文化・多言語につ いての体験的理解の促進,現地の学校訪問での学び の重要性,英語学習への動機付けと英語でのコミュ ニケーションの意義への気づきの高まり,SDGsの 教育への具体的な適用のあり方やSDGsと学びを繋 げる重要性に対する気づきを促す可能性があること が分かった。同時に今後の課題として,特にSDGs との本研修における学びの関連性を明確にする必要 があることも示された。上記の結果から,本研修は, 新学習指導要領に基づく大学の小学校教員養成課程 における喫緊の課題である外国語教育の指導者養成 プログラムの充実に十分に貢献しうるものであると 考えられる。これは本研修の意義と重なるものであ
る。 これらを踏まえ,今後は本研修の成果の持続性と 経年観察による研修結果と意義を分析する必要性が ある。さらなる研修成果の検証が求められる。 ※本研修は,平成 30 年度部局長戦略経費の助成を 受けて行われたものである。 注 1. 文部科学省 (2018)『Let’s try! 1・2 』 2. 文部科学省 (2018)『We can! 1・2 』 参考文献
Center for Curriculum Redesign (2015) The CCR Framework. 外務省 (2018) 「マレーシア基礎データ」https:// www.mofa.go.jp/mofaj/area/malaysia/data.html (2019年3月1日参照) 文部科学省 (2017a)『小学校新学習指導要領』 文部科学省 (2017b)『小学校新学習指導要領解説』 文部科学省(2019)『新学習指導要領解説リーフレッ ト』 平成31年3月27日 受理