軽微および甚大な環境コストと環境税政策
1藤 垣 芳 文
1.はじめに
本稿の目的は,簡単な動学モデルを構成し,これを用いて数値計算を実行することで,排 出をともなう生産活動や消費活動に対して環境税政策がどう影響し,環境コスト抑制に対し てどのような形で効果を及ぼすのかを見ることにある。構成するモデルは,環境税の基本的 機能を見るのに必要な,最低限の要素だけを含む。この最も単純な動学モデルを,環境コス トが「軽微」なケース,および「甚大」なケースに当て嵌めてみると,それぞれのケースに おいて特徴的な,環境税が有する機能面での性質を,鮮明な輪郭で浮かび上がらせることが できる。 生産や消費に使用される資源のなかに,使用後に廃棄物となって環境中に排出され,経済 全体に負荷をかけるものが存在する場合を考えてみよう。この場合の社会的最適性は,生産 や消費からの便益だけでなく,廃棄物による経済全体への負荷も合わせた,全体としての純 便益を最大化することによってもたらされる。こうしたなかで,環境コストが「軽微」であ るとは,生産や消費に使用される資源に制限を加えなくても,それを再配置するだけで,社 会的最適性が達成できるようなレベルの廃棄物の負荷のことをいう。一方,「甚大」な環境 コストとは,資源の使用量を存在量よりも低いレベルにまで制限しなければ社会的最適性を 達成できないところにまで膨らんでしまった負荷のことをいう。 環境税政策は,本文中に示すような例外はあるが,どちらのケースにおいても基本的には 効果をもたらす。しかし,その効果が招来する結果は,二つのケースにおいて大いに異なっ ている。シミュレーションという手法を用いると,こうした分析ないし分析に先立つ実験的 検証を,大変に見通しよく進めることができる。 あらためて指摘するまでもないが,本稿でシミュレーションにもとづく分析方法をとる目 的は,現実経済の実態としての動きをモデル化し,それを分かり易く描写しようというとこ ろにあるわけではない。むしろ基本的な相互関連を明確化したいくつかの経済変数が,それ 自体の脈絡のなかで展開していくときに,結果としてどのような状況に行き着くか,その点を, 1 2017年3月中旬からの半年間,筆者は成蹊大学教員研修規則が定める中期研修により研究に専念する 機会を得た。本稿に含まれるすべての内容はこの期間中に行った研究の成果である。貴重な機会を与 えられたことに対して,ここに記して謝意を表したい。大づかみにではあれ,概念的に探り出すところにある。本稿で構成される基本モデルが現実 離れして単純すぎる印象を与えることは確かなところであるが,そこから現実的な脈絡を連 想させる一連の展開が獲得できるのであれば,一種の“実験”の試みとして,この基本モデ ルに求められた相応の目的は達成されると考えることにしたい。 本稿の構成は次の通りである。 まず第2節において,本稿で想定する経済の特徴を整理する。生産と消費に利用される資 源には廃棄物の排出がともない,それから環境コストが生み出される。この節では,第一に, こうした状況での社会的最適条件の特徴づけをおこない,第二に,この条件を市場均衡にお いて達成するしくみとして環境税政策を位置づける。 第3節において環境税政策をシミュレートするための動学モデルを構成し,第4節において, 環境コストが軽微なとき,および甚大なときの各ケースについて,いくつかのシミュレーシ ョンを実行する。 最後の第5節では,そこまでで得られた結果を整理し,その文脈にそって,環境税政策が 引き金となって生まれるさらなる展開の可能性の一つ,生産主体による排出削減行動を取り 上げる。第4節と第5節では力学系の分岐理論の簡単な応用も試みる。
2.基本的な枠組み
2.1 本稿で想定する経済の特徴 以下の分析で取り上げる経済には多数の生産者と消費者がいるものとする。ただし,すべ ての生産者は同質的とし,以下では生産者全員をあたかも単一の主体であるかのように扱う。 同様に,すべての消費者も同質的とし,消費者全員を一つのまとまった主体として扱う。 生産者は,利潤最大化を目的として,生産要素 L, Z (典型的には,Lとして労働を,Zとし てエネルギー資源を想定する)を投入して,生産物 X を生産する。生産者の生産関数を (2.1) とおく。ZX は生産に投入される資源 Z を表す。 消費者は,予算制約下の効用最大化を目的として,生産要素 L, Z の初期保有分 l0, z0 を生 産者に提供して得た所得およびその他の収入を予算に,生産物 X と資源 ZC を購入する。こ こでいうその他の収入としては,生産者から配当として分配される利潤,政府から還付金と して分配される税収が含まれる。m を X, ZC 以外の財(実際のところは,本稿において,そ のような財の存在は仮定しない。したがって均衡においては m = 0 である)の消費額として, 効用関数を(2.2) とおく。以下では,このように貨幣単位で計測される実体としての効用の存在を仮定する。 資源 Z の使用には廃棄物(残渣,二酸化炭素,排熱など)がともない,それが原因となっ て経済全体が負担しなければならないコストが生み出されるとする。以下ではこのコストを 環境コストと呼ぶ。資源 Z の生産への投入量を zx ,消費量を zc ,これらがもたらす廃棄物量 をそれぞれ gx ,gc ,そして,環境コスト Ec を (2.3) とする。この環境コストは,廃棄物が廃棄された時点において,そしてその時点においての み,発生する環境コストであり,これを「フローとしての環境コスト」と呼ぶ。それに対して, 廃棄物がストックとして積み重なり,このストック全体から環境コストが発生する場合は「ス トックとしての環境コスト」と呼ばれるが,本稿の文脈においては両者に本質的な差異はな い。 本稿全体において,(2.1), (2.2), (2.3) の関数 F, U, C, gx, gc は,それを定義する各変数に ついて単調増加的かつ連続的微分可能であり,F, U は凹関数,C, gx, gc は凸関数であること を仮定する。 2.2 社会的最適性の条件 まずはじめに,この経済において最適な状態を実現するための条件をみる。生産関数と資 源制約の下に社会の純効用(すなわち効用マイナス環境コスト U - Ec )を最大化する生産物 X と資源 Z の消費の組合せを見出すための条件がそれであり,その条件式は (2.4) (2.5) を解くことで求められる。ラグランジュ乗数を λ1, λ2, λ3 と置けば,この制約付き最適化問題 のラグランジュ関数は (2.6)
であり,内点解を仮定すると,最適化のための1階必要条件は次のように求められる。 (2.7) (2.8) (2.9) (2.10) 2.3 市場における生産者と消費者の主体的均衡と需給均衡条件 次に,この経済には財 X, L, Zx, Zc を取引する完全競争市場が完備していて,生産者と消費 者はこれらの市場で,利潤最大化および効用最大化を目指して,それぞれに生産量,投入量, 消費量を決めると想定する。その結果として定まるそれぞれの財の需給が均等化するように, 各財の市場価格が成立するものとする。 生産者が直面する選択問題は,各財の需給均衡条件まで含めての条件付き最適化(利潤最 大化)問題として表現すれば,次のように表すことができる。 (2.11) ただし,ここに,Π は生産者の利潤であり,px, w, pz は,それぞれ,生産物 X ,生産要素 L , 資源 Z の市場価格,zc は消費者の資源 Z の需要量(=消費量)である。 内点解を仮定すると,生産者の利潤最大化のための1階の必要条件は (2.12) (2.13) と求めることができる。ここで,MPVZx と MPL は,それぞれ,資源 ZX と生産要素 L の限界 生産力価値である。 もう一方の消費者の選択問題は
(2.14) である。 内点解を仮定すると,効用最大化の必要条件は次のように求められる。 (2.15) (2.16) (2.13) と (2.16) から,市場均衡においては,消費者にとっての資源 Zc の限界効用と,生産 者にとっての資源 Zx の限界生産物価値とは,一致することがわかる。 2.4 環境税,すなわち市場における社会的最適化条件の達成手段 社会的最適化の条件 (2.7), (2.8), (2.9) , (2.10) と,市場における均衡条件 (2.12), (2.13), (2.15), (2.16) とを比較してみると,両者には確かに食い違いが認められる。したがって市 場均衡は社会的最適な状態ではない。ところで,その食い違いはどの程度であるのか。 (2.7) - (2.10) のラグランジュ乗数(社会的最適状態での製品,生産要素,資源のシャドー プライス)と, (2.12) - (2.16) の市場価格とを比較してみると,その食い違いが次のようであ ることを確認できる。 (2.17) ここで MECzx と MECzc は,それぞれ,資源 Z の生産への投入分 zx の限界環境コストと,消 費分 zc の限界環境コストである。(2.17)の最後の二つの関係式は,廃棄物をともなう資源 Z に関して食い違いが生じていること,社会的最適性の観点からは,資源 Z の生産使用におけ る限界生産物価値と消費使用における限界効用(以下では,これらを,簡単に「使用者価格」 と呼ぶことにする)は乖離すべきこと,その乖離幅は各使用での限界環境コストの差額に等 しくあるべきこと,を明らかにしている。すなわち,資源 Z の生産と消費における使用者価 格を,それぞれ,pzx , pzc とおくと,社会的最適性のためには (2.18)
であることが求められる。 (2.18) は,環境コストに関する公共的視点が求められる条件式であり,生産者と消費者が 私的に解くことのできる条件式ではない。そこで,この経済に政府が存在すると仮定して, (2.18) が成立するように,資源 Z の生産と消費での使用量の配分を決めるとしよう。政府は, この配分を生産者と消費者に強制することはしない。その代わりに,政府は,この配分の下 に発生する(と予想される)限界環境コストを,資源 Z の使用に対する環境税率 t として, 資源価格 pz に上乗せするものとする。生産および消費の使用者価格は,この税率分だけ減価 して,λ3 に均等化する。すなわち, (2.19) である。(2.19) の課税後価格を (2.17) に代入すると,社会的最適なシャドープライスと環境 税によって修正された市場価格とは完全に一致することがわかる。
3.環境税の動学モデル
本節では,「投入ベース」の環境税を簡単な動学モデルとして定式化し,次いで,生産関数, 効用関数,環境コスト関数のそれぞれの具体的関数形を定め,モデル内のパラメータ数値を 固定することによって,シミュレーションを実行するための準備作業を行う。 3.1 環境税モデル 生産関数,効用関数,環境コスト関数を,前節と同様に (2.1),(2.2),(2.3)として,任意 の時点 t ≧ 0 について,製品 X の生産への資源 Z の投入量を z(t) ,生産要素 L の投入量を x l(t),資源 Z の消費量を z(t),生産要素 L の市場価格を w(t) ,資源 Z の市場価格を pc z(t) と 置く。 以下では,これら変数の時間変化率が,次の力学系によって定義されることを仮定する。 (3.1) (3.2) (3.3)(3.4) (3.5) ここに MPVZx と MPVL は,ZX と L の限界生産力価値であり,MUZc は ZC の限界効用である。 また,τX は資源の生産投入 ZX に対する環境税の税率,τC は資源の消費 ZC に対する環境税 率であり,各投入の限界環境コストに等しくなるようにその税率が決められるものとする。2 (3.6) さらに,定数 δ は環境税政策の強度を表すパラメータとし,その数値が高いほど環境税政 策の強度は大きいものとする。すなわち,δ = 0 は環境税政策が実施されないことを意味し, δ = 1 は環境税政策が限界環境コストにちょうど等しい税率で実施されることを意味する。3 変数 λi ≥ 0, i = 1,..., 5, は,それぞれの変数の調整係数である。 そして最後に,l0 , z0 は,要素 L ,資源 Z の初期賦存量である。 3.2 背後に置かれた想定 この力学系の背後にある市場調整の特徴としては,次のような想定が置かれている。 (1) 製品 X は市場に供給されると,即時にそれに等しい需要が生まれ,消費者の提示する需 要者価格(これは消費者の製品 X の限界効用に等しく pX = ∂U/∂x = MUX である)で売れ ていく。すなわち,各時点 t において製品 X の需要と供給は相等しく x(t) = F(l(t), z(t)) x である。 (2) 製品 X については遅延なしに需給均衡が成立するのに対して,生産者の生産については 調整に時間がかかると想定する。すなわち,生産者は,資源 Z の投入の限界生産物価値 2 定義式 (3.6) では,環境税率は,各主体が投入する資源の量に連動して,時間的に変動することが想 定されている。しかし,このモデルの平衡点はあらかじめ計算可能であるので,この平衡点での限界 環境コストから定率の環境税率を算定し,それをモデルに代入して使用することもできる。生産関数, 効用関数,環境コスト関数はすべて必要な凸性の条件を満たすので,どちらの方法を用いても,同じ 平衡点に行き着く。モデルの操作可能性という点で定率環境税の方が簡素で利点があるが,序論でも 述べた通り,本稿の基本モデル自体は現実への適用を目的として構成されたものではないので,操作 面での簡単さについては視野外に置く。すなわち,時間的変動として環境税率を定める (3.6) を,以 下では一貫して採用する。 3 政策強度 δ には中間的な数値,たとえば δ = 0.5 あるいは δ = 1.2 なども許容されるとする。
( pX MPZx ) が,それの単位あたり調達費用 (これは,環境税がかからないときは Z の市 場価格 pz に等しく, 環境税がかかるときは環境税率が上乗せされた課税後価格 pZ + τX に 等しい) よりも大きいとき,しかもそのときにかぎり,投入量 zX を増加させる。→ (3.1) 式。 (3) この環境税が,資源の売手価格に上乗せされる( pX + τX )と考えると,環境税は資源の 売手への課税になる。しかし,資源の限界生産物価値から差し引かれる( pX MPZx - τX ) と考えると,買手への課税になる。同じことは (3.2) の環境税率 τC についてもいえる。 すなわち,投入ベースの環境税は,売手に課されても,買手に課されても,同等である。 (4) もうひとつの要素投入 L についても,同様の調整が進められる。すなわち,生産者は, 生産要素 L の限界生産物価値 ( = pX MPL ) がその単位あたり調達費用(生産要素 L には 廃棄物がなく環境税はかからないから,この調達費用は L の市場価格 w そのものに等し い)よりも大きなとき,しかもそのときにかぎり,投入量 l を増加させる。→ (3.3) 式。 (5) 資源 Z の(消費者にとっての)消費の調整は,生産者にとっての生産要素投入決定と同 様にして進められる。すなわち,消費者は,資源 ZC の限界効用が,その単位あたり購 入費用 (これは,環境税がかからないときは Z の市場価格 pZ に等しく,環境税がかかる ときは市場価格に環境税率が上乗せされた pZ + τC に等しい) よりも大きいとき,しかも そのときにかぎり,消費量 zC を増加させる。→ (3.2)式。 (6) このようにして,生産要素と資源 L, Z の生産投入量と消費需要量が決まると,それが要 素市場の需要となって供給(初期賦存量)と相まみえる。需要が供給を超過すれば,そ の価格は上昇し,逆の場合には下落する。生産要素と資源 L, Z の価格調整はこれらの需 給均衡が成立するまで継続する。→ (3.4) 式,(3.5) 式。 以上の力学系モデルに関する最大の問題は,第一に,調整がすべて行き着いたときの平衡 点において,前節でまとめた社会的最適性条件が成立することが保証されるかどうか,そし て第二に,その平衡点が漸近的に安定であるかどうか(すなわち,調整の繰り返しの結果と して,経済の状態は,この平衡点に確実に到達するかどうか),この二点である。 本稿では,いくつかの理由により,これら二つの問題に関して厳密な数学的結論と証明を 与えることはしない。その代わりに,典型的なタイプの関数を具体的に仮定して数値計算す ることで,これらの問題についての,いわば実験的な確認作業を行う。本来的に述べれば,
こうした作業は,さらなる論理的,実証的展開への準備作業であって,一般化と厳密化への 取り組みや,仮定した具体的関数の実証的妥当性についての検討を,さらに進めるべきとこ ろである。そうではあるが,本稿では,実験的試みとしてのシミュレーションを実行し,そ うして得られた結果に簡単な分析を加えることだけに目指すところをとどめる。 3.3 数値計算のための準備作業 (1)生産関数,効用関数,環境コスト関数の特定化 生産者の生産関数には,コブ・ダグラス型の一次同次関数を仮定して,次のようにおく。 (3.7) 一方,消費者にとっての効用関数は,これもまたコブ・ダグラス型として, (3.8) とする。 最後に,廃棄物の増加にともなって環境コストは加速度的に(マルサス的に)増加すると 想定して,環境コスト関数を次のように仮定する。 (3.9) ここに,μX は生産に投入された資源 ZX の廃棄物排出率,μC は消費に振り向けられた資源 ZC の廃棄物排出率,θ は環境に備わる自然浄化率である。 このように環境コスト関数を特定化すると,生産と消費に振り向けられる資源 ZX, ZC が生 み出す限界環境コストは,それぞれ, (3.10) と計算される。 本稿では,生産と消費の部門別の排出率パラメータ μX ,μC が同じ数値のとき,排出は「対 称的」であるという。また,これらのパラメータが部門別に異なった数値の場合,排出は「非
対称的」であるという。 (2)パラメータの数値の特定化 生産関数 (3.7),効用関数 (3.8),環境コスト関数 (3.9) には,複数個のパラメータが含ま れている。また,生産要素 L と資源 Z は,任意時点において,それぞれ総量として l0, z0 の利 用が可能である。また,環境税政策は一定幅の非負区間に収まる強度 δ をもって実施される。 これらのパラメータの組を,順に,生産パラメータ,消費パラメータ,環境パラメータ,初 期賦存パラメータ,政策強度パラメータと呼ぶことにする。本稿では,これらパラメータの 数値を次のように固定する。 生産パラメータ { b → 0.3 } 消費パラメータ { α → 2, β → 0.5 } (3.11) 環境パラメータ { μX → ρ1, μC → ρ2 , φ → ρ3 , θ → 0 } 初期賦存量 { l0 → 3, z0 → 3 } 政策強度パラメータ { δ → ρ4 } (3.11) のパラメータには未定数( ρ1, ρ2, ρ3, ρ4 )も含まれている。以下で扱うシミュレーショ ンは,主として,これら未定のパラメータを変化させたときの環境税モデル (3.1) - (3.5) の 平衡点の変化を,数値計算によって追跡し,その特徴を探るものである。 (3)関連資料の参照先について 数値計算のためのプログラムは Wolfram 社製ソフトウエア Mathematica の最新版を用いて 作成した。このプログラムと実行結果は,本稿に紹介するには分量が過大なため,他の場所 にまとめて掲示することにした(sun.econ.seikei.ac.jp/~fujigaki/)。本稿では,得られた結果の うち,とくに興味深いものを選び,できるだけ見やすく図表にまとめて,簡潔に提示するよ うに努めた。より詳細な情報はこの URL を参照されたい。 さて,準備作業はここまでとして,次節からはシミュレーションで得た結果を紹介する作 業に入る。
4.「軽微」および「甚大」な環境コストと環境税政策の効果
仮定によって,資源 Z の使用は廃棄物排出を通して環境コストを生む。しかし,一方で, それは製品 X と資源 Z の実物消費を通して効用を生む。経済学の限界原理によれば,環境コ スト増加分が効用増加分に満たないときには資源 Z の使用量は増加されるべき(初期賦存量の総量がすでに使用中であるのならば,その使用量が維持されるべき)ことは自明の事柄で ある。 しかし,この逆の主張は必ずしも正しいとはいえない。すなわち,環境コスト増加分が効 用増加分を超える場合であっても,必ずしも資源 Z の使用量を削減することが望ましいとは 限らないケースがある。資源 Z の総使用量を減らすことなく,その投入先を(市場価格を適 切に規制することで)再配置することによって,それにともなう効用減少分を超えるほどに, 環境コストを減らすことができる場合がそうである。本稿ではそのような状況を「軽微な環 境コスト」のケースと呼ぶ。 それに対して,資源 Z の再配置だけでは必要な環境コストの削減ができなくなった状況, すなわち資源 Z の総使用量を初期賦存量よりも少ないレベルに抑制しなければならなくなっ た状況を,「甚大な環境コスト」のケースと呼ぶ。 4.1 軽微な環境コスト・対称的な排出率 はじめに,環境コストが軽微,かつ資源投入部門の排出率が等しい(対称的な)場合を取 り上げる。 (3.16) において未定数となっていたパラメータを,次のように固定して数値計算を実行す る。 (4.1) { μX → 0.3, μC → 0.3 , φ → 1 , θ → 0 },{ δ → 0 or 1 } ここでは,生産の排出率 μX と消費の排出率 μC が同じ数値 0.3 で,対称的に設定されている。 このケースで数値計算して得られた結果を消費空間 (X, ZC) 上のグラフとしてまとめた図が [図 4.1a, b]である。
[図 4.1 a] [図 4.1 b] [図 4.1a]は環境税が課されない (δ = 0) とき,[図 4.1b]は課される (δ = 1) ときである。図 に描かれた曲線 CPF は消費可能性フロンティア,A は初期点,Ω は平衡点での消費,U は Ω を通る無差別曲線である。[図 4.1a]と[図 4.1b]のそれぞれにおいて,平衡点 Ω を通るよ うに引かれた二本の線分の傾きは,実線が社会的限界代替率,破線が私的限界代替率を表し ている。 ここでは[図 4.1 a, b]を区別した述べ方をしているものの,解曲線の形状と消費平衡点の 数値のごく小さな誤差を除いて,これら二つの図は完全に一致している。つまるところ,こ のケースにおいては,環境税を実施する意味が認められないことは明らかである。 数値計算の本筋からは外れるが,設定した数値の特殊性によってこの結果が導かれたわけ ではないことは以下のようにして示すことができる。まず第一に,軽微な環境コストと対称 的排出率が前提されているから,zX + zC = z0 および μX = μC = μ が成立する。よって,τX = τC = μ・ C (ここに,C = envCost),zX = z0 - zC である。第二に,環境税モデル (3.1) - (3.6) の平衡点では, すべての変数の時間変化率は 0 であり,したがって,(3.1), (3.2) によって,次が成立する(MP は限界生産力,アスタリスク記号 * は平衡点での数値を表す)。 (4.2) 仮定によって製品 X の限界効用 MUX は市場価格 pX に等しいから,結局のところ, (4.2) は次
を意味する。 (4.3) こうして,対称的排出率と軽微な環境コストの前提が成立する場合には,環境政策強度パラ メータ δ の数値いかんを問わず,平衡点において,限界代替率と限界変形率とは,かならず 一致するということがいえる。 4.2 軽微な環境コスト・非対称的な排出率 次に,軽微な環境コスト,かつ非対称的な排出率の場合を考える。パラメータを次のよう に固定する。 (4.4) { μX → 0.4, μC → 0.2 , φ → 1 , θ → 0 },{ δ → 0 or 1 } 生産での排出率 μX が,消費におけるそれ μC よりも,大きな数値として設定されている。シ ミュレーションの結果をまとめたグラフが[図 4.2 a, b]であり,[図 4.2a]が環境税政策が 実施されていないとき,[図 4.2b]が実施されているときである。 [図 4.2 a] [図 4.2 b] [図 4.2 a]の平衡点 Ω0 では,社会的限界代替率(実線)と私的限界代替率(破線)が交差 しているのに対して,[図 4.2 b]の Ω1 では,そこを通る社会的および私的限界代替率は互い
に重なり合っている。 生産と消費の排出率が非対称的だから,環境税を通して要素 Z の市場価格を修正し,それ によって資源 ZX, ZC の投入消費比率を再配置することで,環境コスト総量を削減できる。環 境税が実施されることで,消費者の効用は U0 から U1 に減少するが,その効用減少分を超え て,環境コストの削減を実現できる。 この点を別の視点から説明するために,もう一組のグラフを補足しておく。[図 4.3 a]は, 環境税政策の強度を δ = 0 から δ = 1.2 まで増加させていったときの平衡点での製品生産量 X , 資源投入量 ZX と消費量 ZC およびその合計 ZX + ZC の変化を描いている。政策強度 δ が高まる につれて,排出率の高い生産部門の X と ZX が減少していき,排出率の低い消費部門の ZC が 増加していく。ZX + ZC = 3 は一定である。[図 4.3 b]は平衡点での環境コストと粗効用(実 物消費の効用)の変化を,[図 4.3 c]は平衡点での純効用の変化を描いている。純効用は政 策強度が δ = 1 のときに最大化されていることを確認できる。 こうして,軽微・非対称のケースにおいては,環境税政策はたしかにその効果を発揮して いることを確認できる。 [図 4.3 a] [図 4.3 b]
[図 4.3 c] 4.3 甚大な環境コスト・非対称的な排出率 最後に,甚大な環境コストの場合を考える。このケースにおいては,排出率が対称的か非 対称的かの違いは得られる結果に本質的影響を与えない。そこで,ここではパラメータを次 のように固定する。前のケースに比べて,環境パラメータ φ の数値は1から2に高められてい る。 (4.5) { μX → 0.4, μC → 0.2 , φ → 2 , θ → 0 },{ δ → 0 or 1 } [図 4.4 a]は環境税政策が実施されないとき,[図 4.4 b]は実施されるときである。[図 4.4 c]は環境税政策の強度変化にともなう粗効用,環境コスト,および純効用の変化を表す。[図 4.5]は,環境税政策が δ = 1 の強度で実施されたときの,製品, 生産要素, 資源のそれぞれの 市場価格 pX, w, pZ の時間的変化(平衡点へといたる過渡的変化)を表す。
[図 4.4 a] [図 4.4 b]
[図 4.4 c]
[図 4.4 b]から明らかなように,環境税政策が実施される場合,消費の平衡点 Ω1 において 社会的限界効用 と私的限界代替率とは一致するので,この平衡点において社会的最適性の条 件が成立し,経済の純効用は最大化される。この点は[図 4.4 c]からも明らかである。すなわち, 経済の純効用は政策強度 δ が 1 のときに最大化されることを確認できる。しかし,この場合 の平衡点 Ω1 は消費可能性集合 CPF の内側にとどまるので,資源 Z の完全利用は行われない。 こうして,資源 Z の利用にともなう廃棄物排出による甚大な環境コストを,社会的最適水 準にまで抑制するためには,高レベルの環境税率で環境税政策を実施することが求められる。 この政策によって資源 Z の総使用量は大きく抑制され,未利用なままで残されるものが現れ る。[図4.5]において確認できるように,結果的にその市場価格 pZ は最低価格水準にまで落 ち込んでしまう。 4.4 軽微な環境コストは,いつ甚大な環境コストに変質するか 廃棄物に対する環境コストの感応度が高まっていけば,はじめ軽微な環境コストであって も,いずれ甚大化すると考えられる。本稿の環境税モデルでは,この感応度はパラメータ φ によって表現される。 そこで,環境パラメータの数値を (4.6) { μX → 0.4, μC → 0.2 , φ → ρ , θ → 0 },{ δ → 1 } と設定し,環境劣化が進むことを想定して,未定数の φ = ρ の数値が0から次第に増加してい く状況を追跡することにしよう。この一連の数値計算を通して,どの φ のレベルにおいて環 境コストが「軽微」から「甚大」へと変質するかを確認することができる。 このシミュレーションの結果をまとめたグラフが[図 4.6 a, b, c]である。[図 4.6 a, b]か らわかるように,φ → 1.53 を境に,環境コストが軽微から甚大へと変化する。4 [図 4.6 c]に示されているように,パラメータ φ の数値の増加とともに,最初の段階では, 平衡点での消費は,消費可能性フロンティア CPF の上を Ω0 から Ω1 に向かって移動していく。 この段階では,環境コストは軽微である。しかし,φ = 1.53 を境に,平衡点での消費は CPF を離れて,その内部の点 Ω2 に向かって移動を開始する。 この段階にいたって,環境コストは甚大へと変質する。資源 Z には超過供給が現れ始め,[図 4.6 a, b]からわかるように,環境コストの下落とともに,生産と消費そして粗効用は急激な 下落を開始する。経済の生産と消費の活動レベルは, φ = 1.53 を境にして,急激に落ち込んで いくことをこれらのグラフから確認することができる。 4 もちろん (4.6) とは違ったパラメータ数値では,φ = 1.53 とは別の位置で環境コストの変質が生じる。
[図 4.6 a]
[図 4.6 b]
5.甚大な環境コストの下での排出削減行動
5.1 本節のはじめに ここまでの分析によって次の結果を得た。 第一に,対称的排出によって軽微な環境コストが発生しているケースでは,環境税政策を 実施することに意味はなく,状況を放置したままでも最善の社会的最適性の結果が得られる こと。第二に,非対称的排出によって軽微な環境コストが発生しているケースでは,対照的 ケースとは対照的に,環境税を活用することで環境コスト発生の原因となる資源の市場価格 を修正し,それによる資源利用の再配置を通して経済の純効用を高めることができること。 そして第三に,甚大な環境コストが発生しているケースでは,原因となる資源の総使用量を, 初期賦存量よりも低い水準にまで抑制しないことには,経済の純効用を最大化することはで きないこと。そうした環境税政策が実施される場合には,高レベルの環境コストと環境税に よって,経済活動が大きく抑制されること。以上である。 環境税政策が穏やかに機能するのは環境コストが軽微な場合に限られる。環境コストが甚 大化すれば,環境税政策が実施されようがされまいが,いずれにしても経済には深刻な抑制 的圧力が加わる。こうして,環境コストは軽微に維持されることが先ず一番に求められるべ きことであり,環境税政策の基本的役割は,環境コストが軽微な範囲にとどまるように,課 税による市場価格の修正を通して,経済活動を適切にコントロールすることにあるといえる だろう。 しかし,環境コストが軽微なレベルを超えた状況こそ,差し迫って重要な今日的状況なの ではないのか。この状況について本稿の前提の下で述べることができるのは,しかしながら, 上記第三の要約に尽きる。これ以上のことを語るためには,本稿の基本モデルには必要な要 素が欠けている。その不足を補いモデルを拡張する方向として,次の二つの課題を検討する ことが考えられる。 生産者や消費者に対して高レベルの環境コストや環境税が及ぶとき,その費用負担が引き 金になって,排出抑制行動,資源代替,省資源技術開発など,それぞれの経済主体が独自に 展開する環境対策を期待できる。その可能性を基本モデルに取り入れること,これが第一の 課題である。 第二の課題は,複数の経済地域の相互関係の中で,地域交易ないし国際貿易が環境に及ぼ す影響を検討することである。地理的に離れた二つの経済が,交易によって相互依存するだ けでなく,広域的な環境問題を通して影響しあう場合には,一方あるいは両方の経済の純効 用を最大化する方法を講じようとすると,単独経済を扱う場合とは比較にならないほどに複 雑で混み入った相互関係の分析が求められるようになる。 自由貿易によって関連し合う全体地域の経済活動が活発化すれば,経済活動にともなう環境コストが拡大することは容易に想像できることである。しかし,場合によっては,それぞ れの地域が比較優位をもつ産業分野において,他地域に較べて環境面でも優れているという ことが起こり得る。こうした場合には,交易がもたらす分業を通して,環境問題は確実に改 善されるだろう。それとは別に,特定の地域だけで限定的に環境政策が実施される場合には, 比較優位にもとづく交易が歪められるだけでなく,環境政策が実施されない地域への排出源 の拡散を招いて,全体地域の環境問題をかえって深刻化してしまう危険(グリーン・パラド クス)も現れてくる。 本稿においては,第一の課題のうちの排出削減行動を基本モデルに取り入れ,その帰結を 探る。第二の交易と環境との関連分析は,本稿の続編での論考において,別途,検討する。 5.2 排出抑制行動 資源使用にともなう排出率を低下させようとして行われる行為を排出削減行動と呼ぶ。本 稿においては,この行為を行うのは生産者だけと仮定する。5 時点 t において生産者が実行する排出削減行動のレベルを σ(t) とする。排出削減行動は, 排出率 μX を低下させ,環境コストを縮小して,生産者に課される環境税を減少させる。その 一方で,排出削減行動には,それ固有の生産要素と資源の投入が必要で,その分,製品 X の 生産量を圧迫する。生産者は,排出削減行動にともなう節税効果と生産物縮小効果という二 つの相反する効果のバランスを考慮して,適正水準の排出削減 σ を選択するものと仮定する。 簡単化のために,レベル σ の排出削減行動は,正値のパラメータを k として,1/σk の割合 だけ排出率を縮約する(減少させる)ものとする。その一方で,生産量を 1/σ の割合で縮小 する(生産関数の生産性を悪化させる)ものとする。この仮定の下では,生産者の排出率, 投入 ZX に対する環境税率,生産関数のそれぞれは,排出削減行動によって,前のモデルと 較べて,次の左辺から右辺のように変更される。 (5.1) (5.2) (5.3) 5 排出削減行動を生産者だけに限定するのは,ここで前提するモデルでは,それを実行する手段を有す るのは生産者だけに限定されるためである。なお,ここで想定する排出削減行動の骨子は,拙著 (2014) において「排出ベースの環境税」に関して提示した方法を「投入ベースの環境税」に適合するように 修正したものである。
ここで,σ ≧ 1 ,k > 0 である。排出削減 σ が生産者の利益 Π に与える影響 ∂Π/∂σ は,環境税 の節税効果と生産物縮小効果の合計として,次のように計算される。 (5.4) 生産者は,この純利益増加分がプラスのとき,排出削減行動 σ のレベルを上げ,マイナスの とき,そのレベルを下げる。 (5.5) ここに,パラメータ λσ > 0 は排出削減レベル σ の変更率の調整速度を表す。本節の残りの部 分では,前節までの (3.1) - (3.5) の環境税モデルを (5.1) - (5.3) を満たすように修正し,あ わせて排出削減レベル σ に関する調整式 (5.5) を新たに加えた力学系についてシミュレーシ ョンを実行し,その結果を分析する。 5.3 数値計算結果と簡単な分析 排出削減行動それ自体も資源 Z の投入をともなうので,これによって環境コスト削減を目 論むことは「毒を以って毒を制する」ようなことである。したがって,どのような排出削減 行動でも有効というわけではなく,効果が発揮されるためには,相対的にわずかな排出をも って,相対的に大きな排出削減が果たされるようなものでなければならない。このこと自体 は利用可能な技術の問題であり,以下では,そのような技術が存在し,生産者はそれを利用 することができる,ということを前提として議論を進める。 パラメータを次のように固定する。 (5.6) { μX → 0.4, μC → 0.2 , φ → ρ , θ → 0 }, { δ → 1 }, { k → 2 } 未定値の環境パラメータ φ を φ = 0 から φ = 2.2 まで増加させていったときの [図 5.1] 平衡点での環境税率 τX, τC の変化, [図 5.2] 平衡点での資源の投入 ZX ,消費 ZC ,合計 ZX + ZC の変化, [図 5.3] 平衡点での排出削減レベル σ と環境コスト C の変化, [図 5.4] 平衡点での粗効用 U ,環境コスト C ,純効用 U - C の変化 を左側のグラフに表す。比較として,同じパラメータ (5.6) の下で,しかし排出削減行動が ない場合のグラフを右側に配置する。
[図 5.1 a] [図 5.1 b]
[図 5.2 a] [図 5.2 b]
[図 5.3 a] [図 5.3 b]
これらの結果から読み取れる主要なポイントを要約すれば,次の通りである。 (1) これらのグラフにおいて,縦に引かれた破線は,それを境に左側では環境コストが軽微, 右側では甚大となる環境パラメータ φ のレベルを表している。この境界値 φ* は,そこ で環境コストの性質が大きく変化する,いわば「臨界点」とも呼ぶべき性格を有する。 (2) 排出削減が行われるケースでは,この臨界点は φ* = 0.94 であるのに対して,排出削減が 行われないケースでは臨界点は φ* = 1.53 である。排出削減行動は,結果的にこの臨界値 を下げる効果を生み出している。いずれのグラフも,排出削減での臨界点に到るまでは, 完全に同一の形状を有する。 (3) [図 5.1 a]からわかるように,排出削減が行われるとき, 臨界点 φ* を境にして,生産に 投入される資源 ZX に対する環境税率 τX は減少に転じる。ここを契機に ZX からの排出削 減が行われるからである。 (4) [図 5.1 b]からわかるように,排出削減が行われないとき,環境税率 τX,τC は,ともに, 臨界点 φ* において変化率の低下はあるものの,税率そのものは増加し続ける。 (5) [図 5.2 a]では,生産に投入される資源 ZX は,臨界点 φ* を境に減少から増加に転じて いる。排出抑制行動での使用のために資源 ZX が振り向けられるようになるからである。 (6) [図 5.2 a]からは,排出削減が行われるとき,環境パラメータ φ の任意の数値の下で, 資源の総需要量 ZX + ZC と初期賦存量 Z0 = 3 は均衡していることがわかる。排出削減行 動が取られることによって,環境コストが抑えられるとともに,資源 Z の不完全利用に よる経済の下降圧力も解消されることになる。 (7) それに対して,[図 5.2 b]からは,排出削減が行われないとき,臨界点 φ* に達すると, 資源の総需要量 ZX + ZC は初期賦存量 Z0 = 3 を下回るようになることがわかる。このケー スでは,[図 4.6 c]で見たように,資源 Z の不完全利用による経済への下降圧力が発生 し継続する。 (8) [図 5.3 a, b]を見ると,排出抑制が行われるケースも,そうでないケースも,臨界点 φ* を境に環境コスト envCost の変化率が減少する。臨界点を境にして,環境税が資源利用
そのものに対して制約を与えるように機能し始めるからである。 (9) [図 5.3 a]からは,排出削減行動が臨界点 φ* から開始されることがわかる。[図 5.3 b] と比較すると,臨界点 φ* を過ぎた後からの環境コストの水準は,排出抑制行動が取ら れる場合に相対的に低いことがわかる。 (10) [図 5.4 a, b]からは,排出削減行動が取られない場合と比較して,排出削減行動が取ら れるときの効用 U および純効用 netU は,ともに相対的に大きいことがわかる。 (成蹊大学経済学部教授) 参考文献 藤垣芳文 (2014), 「簡単な動学モデルによる地域環境問題と越境汚染問題についての一考察」, 『成蹊大学経済学部論集』45, 2,pp. 53-74.
Anderson, D. A. (2010), Environmental Economics and Natural Resource Management, 3rd Edition, Routledge.
Baumol, W. J. and W. E. Oates (1988), The Theory of Environmental Policy, 2nd Edition, Cambridge University Press.
Cropper, M. L. and W. E. Oates (1992), “Environmental Economics: A Survey”, Journal of Economic
Literature 30, pp. 675-740.
DeCanio, S. J. (2003), Economic Models of Climate Change, A Critique, Palgrave Macmillan. Grafton, R. Q., W. Adamowicz, D. Dupont, H. Nelson, R. J. Hill and S Renzetti (2009), The Economics
of The Environment and Natural Resources, Blackwell Publishing.
Oates, W. E. and R. M. Schwab (1988), “Economic Competition Among Jurisdictions: Efficiency Enhancing Or Distortion Inducing?”, Journal of Public Economics 35, pp. 333-354.
Tietenberg, T. and L. Lewis (2009), Environmental & Natural Resource Economics, 8th Edition, Pearson Addison Wesley.