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海外投資家が売り越しに転じた理由としては 海外及び国内それぞれの要因が指摘できる 海外要因としては 米国の経済指標が寒波の影響もあって予想を下回るものが相次いだこと 米量的緩和縮小に伴う新興国からの資金流出やシャドーバンキング問題などを抱える中国経済の減速などに対する懸念から新興国不安が高まったこと

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Academic year: 2021

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2014 年 3 月 12 日

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海外投資家の日本株投資について

市場調査部シニアエコノミスト 武内浩二 03-3591-1244 koji.takeuchi@mizuho-ri.co.jp

海外投資家の売買を占う上で何に注目すべきか

○ 海外投資家は、米国経済指標の悪化や新興国不安、アベノミクスや日銀の追加緩和に対する期待の 後退などを背景に、年明け以降2カ月連続で日本株を売り越した。 ○ ただし、昨年の海外投資家の日本株保有残高の増加を踏まえれば、一部の投資家が利益確定の売り を行った結果にすぎず、海外投資家が日本株に対して弱気に転じたとまでは言えないであろう。 ○ 今後の海外投資家の動きを占う上で、円建てダウ平均の動きをみることが有効であり、米国景気の 動向や日米金融政策の行方が注目される。

1.売り越しに転じた海外投資家の日本株売買

海外投資家による2013年の日本株の買い越し額は15兆円を越え、年間買い越し額としてはこれまで の最高だった2005年の10兆円を大きく上回った。安倍政権誕生期待から買い越し基調が始まった2012 年10月から2013年末までの累計買い越し額では17兆円を越える。しかし、2014年に入り、海外投資家 は一転して売り越し基調となっている。1月の売り越し額は1兆円を上回り、2月も小幅ながら2カ月連 続の売り越しとなった(図表1)。1月の売り越し額は月間としては2008年3月以来の水準であり、海外 投資家の日本株に対するスタンスの変化を指摘する見方も増えている。 図表1 日本株の投資主体別売買動向 図表2 各指導者に対する投資家信頼感 ▲40 ▲30 ▲20 ▲10 0 10 20 30 12/10 13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 国内金融機関(信託+銀行+生損保) 事業法人 投資信託 個人 海外投資家 (千億円) 買 い 越 し 売 り 越 し (注)二市場一・二部等。 (資料)東京証券取引所 (年/月) 楽観-悲観 前回比 楽観的 悲観的 分からない 独 メルケル首相 50 6 70 20 14 日 安倍首相 36 -17 61 25 13 英 キャメロン首相 31 8 53 22 23 中 習国家主席 26 7 52 26 25 米 オバマ大統領 -12 -1 41 53 7 仏 オランド大統領 -60 -6 12 72 20 (注) Bloombergのユーザー(投資家、アナリスト、トレーダー)を対象とするアンケート     調査(2014年1月調査)。前回調査は2013年9月。質問項目は各国の指導者が     当該国の投資環境に与える影響を楽観的に見ているか、悲観的に見ているか。 (資料) Bloomberg 1

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海外投資家が売り越しに転じた理由としては、海外及び国内それぞれの要因が指摘できる。海外要 因としては、米国の経済指標が寒波の影響もあって予想を下回るものが相次いだこと、米量的緩和縮 小に伴う新興国からの資金流出やシャドーバンキング問題などを抱える中国経済の減速などに対する 懸念から新興国不安が高まったことなどである。国内要因としては、安倍首相の靖国神社参拝を契機 に高まった右傾化懸念や最近のTPPに関する議論などを受けてアベノミクスに対する期待が後退し ている可能性、金融政策の効果や物価目標達成に自信を示す黒田総裁の発言などを受けた日銀の追加 緩和期待の後退などが挙げられる。海外要因については、米国経済は寒波の影響が一巡すれば回復基 調に回帰する見込みである。また、新興国不安は当面燻り続ける可能性はあるが、今のところリスク シナリオの範疇を出ていないことを踏まえれば、海外投資家の日本株買いが続くという見方を修正す るものではないであろう。気がかりなのは国内要因である。グローバル投資家による主要国の指導者 が投資環境に与える影響を尋ねた投資家信頼感アンケートでは、安倍首相の直近の評価が大きく後退 している(図表2)。日銀については、2月の金融政策決定会合における貸出支援制度の拡充を受けて、 投資家の見方に変化が見られ始めている可能性はあるが、昨年後半に比べて早期の日銀による追加緩 和決定を予想する見方が減っているのは事実であろう。

2.海外投資家は日本株に対して弱気に転じたのか

では、多くの海外投資家が日本株に対して弱気に転じているのであろうか。まずは、1月以降の売り 越し額に対する評価を考えてみたい。通常は海外投資家の動向を見る際には、株式のネット売買額、 すなわちフロー面での動きが注目される。しかし、投資家の売却額の意味を考える場合には、それま での保有資産の時価変動も含んだ資産額の増減に対して、いくら売ったかをみるべきであろう。日銀 の資金循環統計をみれば、海外投資家の日本株保有残高の変動をみることができる(図表3)。また、 図表3 海外投資家の日本株保有残高増減額 図表4 日経平均の価格帯別海外投資家売買動向 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 2010年 2011年 2012年 2013年 時価変動額等 取引差額 日本株保有残高前期差 (兆円) (注)2013年第4四半期は東証発表の売買差額及びTOPIXの変化率をもとに推計。 (資料)日本銀行、東京証券取引所、Bloomberg 推計値 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 16000 15500 15000 14500 14000 13500 13000 12500 12000 11500 11000 10500 10000 9500 9000 8500 (兆円) (円) (注)海外投資家による日経平均の価格帯別日本株ネット取得額。    期間:2012年11月第2週~2013年12月(1月の調整までの上昇局面) (資料)日本経済新聞、東京証券取引所 平均取得額 13,199円 2

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保有残高の変動から額面ベースでの取引差額を除いた部分は概ね時価変動額と捉えられる1。資金循環 統計における2012年第4四半期から2013年第3四半期までの変化をみると、取引額が13兆円、残高が59 兆円増加している。したがって、価格の上昇による増加分は約46兆円であり、海外投資家の日本株保 有残高の増加の大部分がキャピタルゲインによってもたらされたものであることが分かる。2013年第4 四半期の増加分を東証が発表している売買額とTOPIXの変化率から推計すると約17兆円であり、59兆円 にこれを加えると、2012年10月から2013年末までに増えた海外投資家の日本株保有額は約76兆円にな る。76兆円と比較すると、1月の売り越し額1兆円という規模は、上述のような内外の要因を材料とし て一部の海外投資家が利益確定の売りを行った結果にすぎないと捉えられ、海外投資家が日本株に対 して弱気に転じたとまでは言えないであろう。 さらに、海外投資家による日経平均の価格帯別売買差額をもとに、2012年10月から2013年末までの 海外投資家の平均取得額を試算すると、日経平均で13,199円になる(図表4)。この価格は、同期間に 海外投資家が取得した日本株の保有コストと捉えられるが、2014年に入ってからの安値14,008円でも この保有コストを上回っており、こうした点からも益出しの売りが中心であったことが窺える。

3.海外投資家の売買に影響を与えているのは何か

年初来の海外投資家の売りが必ずしも日本株に対するスタンスの変更を示していないとしても、今 後、買い越しに転じていくのか、しばらくは売り越し傾向が続くのか、それとも様子見か、見極める のは困難である。勿論、今後起こりうる様々な事象やファンダメンタルズなどを予想して海外投資家 の動きについて予測をたてることは可能であるが、ここでは、そのヒントを得るべく、金融指標の動 きが海外投資家の売買動向に影響を及ぼしているかを検証したい。 海外投資家は、日本株も含めたグローバルな株価全体に影響を及ぼす米国株の動きを基準に一定の ウェイトに沿って日本株を売り買いしているのかもしれない。また、ポートフォリオ評価をドル建て で行うとすれば、ドル円相場の動きをみながら売買を行っている可能性もある。さらに、日本株の動 き自体が海外投資家の売買に影響を与えている可能性も否定はできない。そこで、米ダウ平均、ドル 円、日経平均、さらにその組み合わせである円建てダウ平均、ドル建て日経平均の5指標と海外投資家 の売買との関係を調べてみることとする。 海外投資家の売買との関係をみるまえに、まず、日経平均と他の4指標との推移を比較しておこう。 2001年~2014年2月までの日経平均と各金融指標の週次データをグラフで表したのが図表5である。 2000年代半ばまでは日経平均と米ダウ平均の動きが似ており、2010年代に入ってからは、それまでと 比較してドル円相場との関係が強まったようにみえる。ドル建て日経平均と日経平均は似通った動き をしていることが多いが、2009年以降大きな乖離がみられる。一方、期間を通じて最も安定した関係 を保っているようにみられるのは、円建てダウ平均である。因みに、同期間における日経平均を被説 明変数、各指標を説明変数とした単回帰における決定係数は、米ダウ平均が0.28、ドル円が0.22、ド ル建て日経平均が0.65、円建てダウ平均が0.75であり、日経平均と円建てダウ平均には統計上も一定 の関係がみてとれる。また、期間を2012年以降に限定すれば、4指数とも決定係数は0.95以上に上がる。 3

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4 図表5 日経平均と各金融指標との比較 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 日経平均(左目盛) 米ダウ平均(右目盛) (年) (円) (ドル) 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 0 20 40 60 80 100 120 140 160 日経平均(左目盛) ドル円(右目盛) (年) (円) (円) 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 日経平均(左目盛) ドル建て日経平均(右目盛) (年) (円) (ドル) 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 日経平均(左目盛) 円建てダウ平均(右目盛) (円) (円) (年) (資料)Bloomberg この結果を踏まえて、次に海外投資家の売買と日経平均を含めた各金融指標との関係をみるために グレンジャーの因果性テストを行った。2001年~2013年までの週次データによるテスト結果が図表6 の上段の図である。米ダウ平均、ドル円、円建てダウ平均と海外投資家の売買についてグレンジャー の意味での因果関係(先行・遅行関係)が認められる。したがって、この結果からは、3つの指標が海 外投資家の売買に影響を与えている可能性が指摘できる。ここで、上述のように日経平均と米株や為 替の動きが期間によって関係が変化していたことを踏まえ、米ダウ平均、ドル円、円建てダウ平均の3 指標に関して、期間を変えて再び同様のテストを行った。期間は2001年以降4年ずつに区切り、最後の 期間は直近の2014年2月末から遡って4年間とした。結果をまとめたものが、図表6の下段の表である。 円建てダウ平均がテストを行ったすべての期間においてグレンジャーの意味での因果関係が認められ たのに対し、米ダウ平均やドル円相場については、期間によってグレンジャーの意味での因果関係が 認められる場合と認められない場合があった。直近に関しては、ドル円相場と円建てダウ平均のみグ

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レンジャーの意味での因果関係が認められた。こうした結果から、海外投資家の売買動向を占う意味 で、安定的に先行指標として有効なのは円建てダウ平均はである可能性が高いといえる。 では、この意味について考えてみたい。まず、多くのグローバルな投資家は株式資産への投資資金 を一定のウェイトに沿って各地域に分散して投資を行っている。このため、日本株への投資も株式資 産全体の変動に対するウェイト調整によって実施されるケースが多いことが想定される。仮に株式資 産への投資額が増加して全体の額に対して日本株がアンダーウェイトとなれば、日本株投資を増やし、 株式資産への投資額が減少して全体の額に対して日本がオーバーウェイトとなれば、日本株を売却す ることになる。ここで、米国株価は影響度及びウェイトの高さから世界全体の株式投資額の代替変数 図表6 海外投資家日本株売買差額と各金融指標のグレンジャーの因果性テスト ◎:1%水準で有意 ○:5%水準で有意 ×:有意性が認められない (注) 二市場一・二部等合計の海外投資家の日本株売買差額と日米株価や為替との関係についてグレンジャーの因果性テストを行った結果。     サンプルは2001年~2013年までの週次データ。括弧内の数値はF値。 (資料)東京証券取引所、Bloomberg 海外投資家の 日本株売買差額 円建てダウ平均 ドル建て日経平均 米ダウ平均 日経平均 ドル円相場 ×(1.02) ×(1.07) ×(2.36) ◎(7.99) ◎(13.06) ×(1.80) ×(1.43) ×(0.41) ◎(5.22) ×(2.40) 2001年 ~2013年 2001年 ~2004年 2005年 ~2008年 2009年 ~2012年 2010年3月 ~2014年2月 米ダウ平均 ◎ ○ × × × ドル円相場 ◎ × ◎ × ◎ 円建てダウ平均 ◎ ○ ○ ○ ◎ (注) 二市場一・二部等合計の海外投資家の日本株売買差額とダウ平均、ドル円、円建てダウ平均の関係     について、期間を変えてグレンジャーの因果性テストを行った結果。     ◎:1%水準で有意。○:5%水準で有意。×:有意性が認められない。 (資料)東京証券取引所、Bloomberg 5

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と捉えられる。また、域分散資に関しては為替の影響を考慮する必要がある。日本への投資の場合は、 ドル円相場が基準となろう。すなわち、円安ドル高になれば、日本株がアンダーウェイトとなるため に日本株投資を増やし、円高ドル安になれば、日本がオーバーウェイトとなるために日本株を売却す ることになる。これらの結果として、米国株に為替の影響を加えた円建てダウ平均と海外投資家の日 本株投資との間に一定の関係がみられたのであろう。 ただし、そもそも日本株に対する見方の変化から日本株自体のウェイト自体を引き上げたり、引き 下げたりする場合もある。ただし、そうしたケースでも、日本への期待が高まる局面では大規模な金 融緩和などが影響することで、為替が円安に進み、円建てダウ平均を引き上げる形で海外投資家の買 いを促してきた可能性が考えられる。黒田総裁による異次元緩和前後の円安局面における海外投資家 の買いなどがそうしたケースに当たろう。

4.おわりに

本稿では、今後の海外投資家の動きを占う上で、円建てダウ平均の動きをみることが有効であるこ とを示した。しかし、先行きの円建てダウ平均を予想するためには、結局、米株とドル円相場の見通 しを考える必要がある。米株にとって重要なのは米国景気の行方であり、ドル円相場の行方を占う重 要な要素は日米の金融政策である。勿論、日本株の水準を規定するベースとなるのは企業業績の動向 であり、アベノミクスへの評価が海外投資家の動きを左右する場合もあろう。ただし、過去の動きか ら得られる示唆としては、海外投資家の日本株投資の動向を占う上で注目すべきなのは、米国景気や 日米の金融政策の予想や結果に基づいて円建てのダウ平均がどのように動くのかということになる。 1 日本銀行は資金循環統計で、資産・負債の増減を記録した「金融取引表」(フロー表)、保有される資産・負債 の残高を示した「金融資産・負債残高表」(ストック表)、これら2つの乖離分を記録した「調整表」を作成して いる。「調整表」は、価格変化などによって生じたある期間の金融資産の保有損益の推定にも利用することがで きる。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 6

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