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資料 Ⅱ-2 養護学校における知的障害を伴う自閉症児を教育する場合の自立活動の目標と内容の解説 Ⅰ 自立活動の目標 1 幼稚部教育要領自立活動 1 ねらい個々の幼児が自立を目指し, 障害に基づく種々の困難を主体的に改善 克服するために必要な知識, 技能, 態度及び習慣を養い, もって心身の調和的発達

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■ 養護学校における知的障害を伴う自閉症児を教育する場合の自立活動の目標と内容の解説 Ⅰ 自立活動の目標 1 幼稚部教育要領 自立活動 1 ねらい 個々の幼児が自立を目指し,障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服するために 必要な知識,技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基礎を培う。 2 小学部・中学部学習指導要領 第1 目 標 個々の児童又は生徒が自立を目指し,障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克 服するために必要な知識,技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基 盤を培う。 自立活動のねらい及び目標は,学校生活全体を通して,幼児児童生徒が障害に基づく種々の困難を 主体的に改善・克服するために期待される知識,技能,態度及び習慣を養い,心身の調和的発達の基 盤を培うことによって,自立を目指すことを示したものである。 ここで「障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服する」とは,幼児児童生徒の実態に応じ, 学校生活の諸活動において,その障害によって生ずるつまずきや困難を軽減しようとしたり,また, 障害があることを受容したり,つまずきや困難の解消のために努めたりすることを明記したものであ る。なお,「改善・克服」については,順序性等を示しているものではない。 また,「調和的発達の基盤を培う」とは,一人一人の幼児児童生徒の発達の遅れや不均衡を改善し たり,発達の進んでいる側面を更に伸ばすことによって遅れている側面の発達を促すようにしたりし て,全人的な発達を促進することをいう。 このような自立活動のねらい及び目標を達成するために教師が指導し,自閉症児(本校に在籍する 知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)が身に付けることが期待される事項を整理してまとめたもの を,今回,研究開発学校における研究成果の一端として示すこととした。 Ⅱ 自立活動の内容 現行の盲学校,聾学校及び養護学校の幼稚部教育要領及び小学部・中学部学習指導要領において, 自立活動の内容は,人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素と,障害に基づく種々の 困難を改善・克服するために必要な要素を,五つの区分に分類・整理して示されている。 本校では,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同 じ。)の自立活動の指導に当たって,その障害の特性から,現行の学習指導要領等に示されている5区 分 22 項目のほかに,新たに「社会的適応」と「自律的活動」という区分を設定するとともに,「環境 の把握」の区分の中に「危険な状況の認知と回避に関すること。」という1項目を新たに加え,7区 分 28 項目とした。なお,社会的適応の区分には,「日常生活における円滑な活動の遂行に関するこ と。」,「日常生活における感覚の特性を理解した適切な対応に関すること。」という項目を新たに 設けた。また,自律的活動の区分には,「身近な人への支援の依頼に関すること。」,「自己の心情

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の理解と対応に関すること。」及び「日常生活に必要な計画と遂行に関すること。」という項目を新 たに設けた。なお,現行の学習指導要領等に示されている自立活動の内容の区分の2番目に示されて いる「心理的な安定」の名称については,自閉症児に対する自立活動の指導の意図をより適切に表現 するため,区分の名称を「心理的適応」に変更して示した。 この新たに追加した区分と項目は,本校における教育実践を通じた研究から導き出したものである が,これらについては,次年度の教育実践を通じた研究を通して,その適否を更に検証していくこと にしている。また,自立活動の解説において,現行の5区分 22 項目については,自閉症の障害の特性 に関係する内容をできる限り例示するように努めた。 1 健康の保持 1 健康の保持 (1) 生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。 (2) 病気の状態の理解と生活管理に関すること。 (3) 損傷の状態の理解と養護に関すること。 (4) 健康状態の維持・改善に関すること。 「1 健康の保持」では,生命を維持し,日常生活を行うために必要な身体の健康状態の維持・改 善を図る観点から内容を示している。 (1) 「(1) 生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。」は,体温の調節,覚醒と睡眠など健康 状態の維持・改善に必要な生活のリズムを身に付けること,食事や排泄などの生活習慣の形成,衣 服の調節,室温・換気,感染予防のための清潔の保持など健康な生活習慣の形成を図ることを意味し ている。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同 じ。)の中には,明け方に覚醒してしまう,いつもと場が異なると食べられない,学校のトイレで は排泄することができない,日常のスクールバス利用時にあるきっかけにより異なる停留所で下車 しようとするなどという,生活リズムや生活習慣の形成に困難を示す者が見受けられる。こうした 自閉症児の場合には,健康維持の基盤の確立を図るために,一日の生活リズムを調べ,特に家庭等 との密接な連携の下に,具体的な指導内容を設定して指導を行うことが大切である。また,ある きっかけにより,日常とは異なった行動を示す自閉症児の場合には,あらかじめカード等を用いる などして,手順や順序性等についての理解を十分促し,突発的な行動が生じた場合でも,カード等 の提示による説明により,こうした行動がおさまるように指導することが大切である。 また,生活習慣の形成は,正しい日課に即した日常の生活の中で指導することによって養うこと ができるものである。そのため,家庭等との密接な連携の下に指導を行うとともに,必要に応じて 家庭に対する支援活動を積極的に行うことが重要である。 なお,生活のリズムや生活習慣の形成に関する指導を行う際には,対象の幼児児童生徒の一日の 生活リズムを調べる必要がある。一般的には,特に,覚醒と睡眠のリズム,食事及び水分摂取の時 間や回数・量,食物形態,摂取時の姿勢や介助方法,口腔機能の状態,排泄の時間帯や回数,方 法,排泄のサインの有無などに加えて,呼吸機能,体温調節機能,服薬の種類や時間,発熱,てん かん発作の有無とその状態,嘔吐,下痢,便秘など体調に関する情報も入手しておくことが大切で ある。特に,自閉症児の場合には,どのようなきっかけで覚醒と睡眠のリズムが乱れているのか, どのような偏食や偏った水分摂取があるのか,さらには,てんかん等に関する医学的所見に関する

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情報の入手についても怠らないようにすることが大切である。 (2) 「(2) 病気の状態の理解と生活管理に関すること。」は,自分の病気の状態を理解し,その改善 を図り,病気の進行の防止に必要な生活様式についての理解を深め,それに基づく生活の自己管理 ができるようにすることを意味している。 幼児児童生徒が自分の病気を理解し,病気の状態を改善したり悪化しないようにしたりするた め,自分の生活を自ら管理することのできる力を養っていくことは極めて大切である。こうした力 も,幼児児童生徒の発達の状態等を考慮して,その時期にふさわしい指導を段階的に行う必要があ る。この場合,専門の医師の助言を受けるとともに,保護者の協力を仰ぐことも忘れてはならな い。 (3) 「(3) 損傷の状態の理解と養護に関すること。」は,病気や事故などによる神経,筋,骨,皮 膚等の損傷の状態を理解し,それを適切に養護することによって,症状の進行を防止できるように することを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合には,病気や事 故による損傷の状態を理解することに困難を伴うことが多く,特に幼児の場合には,大人が適切に 養護することが必要である。痛みや出血に過敏に反応する自閉症児や,その逆に反応を示さない自 閉症児もいるものである。したがって,こうした自閉症児に対しては,身体部位についての概念形 成の指導をしたり,ロールプレイを利用した場面を設定して教師が演じたりするなど,損傷の状態 についての理解を促すとともに,自分の損傷の状態を人に様々な手段で伝達できるように指導して いくことが大切である。 このように,多様な損傷のそれぞれに応じて幼児児童生徒が自分の損傷の状態を理解し,自分の 生活を自分で管理できるようにするなどして,自分の身体を養護する力を養っていくことは極めて 大切である。 こうした力も,幼児児童生徒の発達の状態等を考慮して,その時期にふさわしい指導を段階的に 行っていく必要がある。 また,これらの指導は,医療との関連がある場合が多いので,必要に応じて専門の医師の助言を 得ることが大切である。 (4) 「(4) 健康状態の維持・改善に関すること。」は,障害があることにより,運動量が少なく なったり,体力が弱くなったりすることを防ぐために,日常生活における適切な健康の自己管理が できるようにすることを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の中には,多動による 安全管理の問題や社会性の未成熟により,社会資源を適切に利用することができずに,家庭内で過 ごすことが多くなってしまう者がいる。そのために,運動量が限られてしまったり,運動すること を嫌うようになったりすることにより,体力の低下が懸念される例も見受けられる場合もある。こ うした自閉症児に対して健康状態の維持・改善を図るには,適切な運動量を確保できるように計画 し,食に関する指導とも関連させながら,適切な日課を組み立てて取り組み,日常生活における自 己の健康管理が適切に行えるようにすることが必要である。

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2 心理的適応 2 心理的適応 (1) 情緒の安定に関すること。 (2) 対人関係の形成の基礎に関すること。 (3) 状況の変化への適切な対応に関すること。 (4) 障害に基づく種々の困難を改善・克服する意欲の向上に関すること。 「2 心理的安定」では,心理的な安定を図り,対人関係を円滑にし,社会参加の基盤を培う観点 から内容を示している。 本校では,自閉症児(本校に在籍する自閉症の幼児児童。)が,心理的不適応の状態を理解し,そ れを改善するための態度や習慣を身に付けることができるようにするという意図をより適切に表現す るため,区分の名称を,「心理的な安定」から「心理的適応」に変更して示している。 (1) 「(1) 情緒の安定に関すること。」は,情緒の安定を図ることが困難な幼児児童生徒が,安定 した情緒の下で生活できるようにすることを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同 じ。)の中には,情緒が未分化な段階にある者も見られることから,生活や遊びを通して人とのや りとりを成立させ,情緒を豊かにしていくことが大切である。また,このことについては,保護者 との連携を密にして取り組むことが有効である。自閉症児は,成長とともに周囲への関心も広がっ ていくが,いろいろな情報の中から必要なものを選択して処理することが難しい場合が多い。その ため,状況の理解が不十分となり,情緒が不安定になることがある。こうした状況において,情緒 の安定を図るには,安心できる場の設定や情緒の安定につながる活動を,学校と家庭との連携を図 りながら,両者の場において十分工夫して行うことができるようにすることが必要である。また, こうした指導の工夫とともに,認知発達を促す指導を行ったり,自閉症児の受け取る情報をできる だけ絞り込んで教師等が提示したりするなどの指導の工夫を行うことも大切である。 障害のある幼児児童生徒が,生活環境など様々な要因から,心理的に緊張したり不安になったり する状態が継続し,集団に参加することが難しくなることがある。このような場合は,環境的な要 因が心理面に大きく関与していることも考えられることから,睡眠,生活リズム,体調,気候,家 庭生活,交友関係など,その要因を明らかにし,情緒の安定を図る指導とともに,必要に応じて環 境の改善を図ることが大切である。 また,障害があることや過去の失敗経験などにより,二次的に生じる自信欠如や情緒が不安定に なる場合には,自分のよさに気付くようにしたり,自信がもてるように励ましたりして,活動への 意欲を促すように指導することが重要である。 情緒の安定を図る指導に当たっては,障害の状態や発達段階等を考慮し,問題となる行動の要因 やその意味を把握することが大切である。また,実際の指導では,問題が生じた場面で直接指導す ることもあるが,日常的な場面で計画的に指導することが大切である。 (2) 「(2) 対人関係の形成の基礎に関すること。」は,対人関係の基礎となる自他の区別をするこ と,人の心情を理解した対応の方法を身に付けること,集団に参加し,役割を自覚して行動するこ とを意味している。 例えば,人の存在を意識することが困難な自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼 児児童。以下,この項において同じ。)に対しては,関心のある遊びや事物を介して,次第に人の

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存在を意識できるように指導することが必要である。また,相手を意識して視線を合わせて話すこ とが困難な場合には,教師が必要な場面で自閉症児の目線に顔を合わせて呼名してから話し始める など,自閉症児が相手を意識することができるように働き掛けることが大切である。 さらに,人の心情を理解することが困難な自閉症児の場合には,適切な規模の集団に参加するよ うにしたり,共同活動を取り入れたりして,相手の喜び,悲しみ,怒りなどの人の心情に気付くこ とができるような場や活動を設定して指導することも大切である。 (3) 「(3) 状況の変化への適切な対応に関すること。」は,場所や場面への心理的抵抗を軽減し たり,変化する状況を理解したりして,適切な行動の仕方を身に付けることを意味している。 場所や場面が変化することにより,心理的に圧迫を受けて適切な行動ができなくなる幼児児童生 徒の場合には,教師と一緒に活動しながら徐々に慣れるよう指導することが必要である。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合には,場所や場 面が変化することに対応できず,動きが止まってしまったり,場合によってはパニックを起こした りすることがある。あらかじめ,対象児に分かるような手段を用いて予定を確認するカードを提示 したり,対象児にとって最も身近な存在である教師が一緒に活動して徐々に場所や場面に慣れるよ うに指導したりすることが大切である。 また,予告されない避難訓練の実施などの突発的な出来事に遭遇したときや,運動会当日のチー ムの変更など,当初の予定が急に変更された場合などには,自分がどのような行動を取ったらよい か分からなくなったり,心理的に混乱して,人に説明を求めるなどの適切な対応を行うことが難し くなったりする場合がある。したがって,予定を変更する場合には,その日の予定と適切な行動の 仕方を,あらかじめ本人が理解し納得できるように指導を工夫することも大切である。 (4) 「(4) 障害に基づく種々の困難を改善・克服する意欲の向上に関すること。」は,自分の障害 の状態を理解したり,受容したりして,積極的に障害に基づく種々の困難を改善・克服しようとす る意欲の向上を図ることを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同 じ。)の場合には,周囲の人々から外見的には障害がないように見られることが多い。そのため に,自閉症児にも周囲の人々にもいろいろな問題が生じることがある。したがって,周囲の人々が こうした表面的な見方にとらわれてしまうことがないように,家庭等との連携を図りながら,日ご ろから障害についての正しい理解認識を促すとともに,自閉症児本人が,自分の個性や能力を周囲 から認められていることを認識し,自己有用感を抱けるように指導していくことが大切である。 障害に起因して心理的な安定を図ることが困難な状態にある幼児児童生徒の場合,社会で活躍し ている障害者の生き方や考え方を参考にしたりするなどして,心理的な安定を図り,障害を改善・ 克服して積極的に行動しようとする態度を育てるように指導することも大切である。 このように,障害に基づく種々の困難を改善・克服する意欲の向上に関しては,その障害が進行 性の場合,中途障害の場合,先天性の場合など様々であり,またその障害の状態を理解したり,受 容したりすることについても,自分の障害を十分に理解している場合,理解できていない場合,心 理的に動揺している場合など様々なことが考えられる。実際の指導に際しては,一人一人の実態に 応じて心理的な側面からのかかわりや,具体的な内容を指導して自信をもつことができるようにす るなど様々なことが考えられるが,いずれにしても,幼児児童生徒の心理状態を把握し,そこから 出発するといった指導者の心構えが必要である。

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3 環境の把握 3 環境の把握 (1) 保有する感覚の活用に関すること。 (2) 感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。 (3) 感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること。 (4) 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること。 (5) 危険な状況の認知と回避に関すること。 「3 環境の把握」では,感覚を有効に活用し,空間や時間などの概念を手掛かりとして,周囲の 状況を把握したり,環境と自己との関係を理解したりして,的確に判断し,行動できるようにする観 点から内容を示している。 この中で「(5) 危険な状況の認知と回避に関すること。」については,本校の教育実践を通じて新 たに付け加えた項目である。これは,現行の自立活動に示されている内容の項目を組み合わせた指導 内容を設定した自立活動の指導を行うことにより,達成することができるとも言えるが,自閉症児 (本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)を教育する場合においては,日常的に直面す る基本的,かつ極めて重要な指導課題であり,常に優先的に考慮されるべき内容であるので,今回, 特に新たな項目として設定することにした。 (1) 「(1) 保有する感覚の活用に関すること。」は,保有する視覚,聴覚,触覚などの感覚を十分 に活用できるようにすることを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の中には,視覚面に関 して,見え方に問題がある場合があり,課題を提示する角度を工夫するなどの配慮をすることで効 果を上げることもある。また,聴覚面についても,ホールのような場所での人の声の反響音などに 過敏に反応し,耳を押さえたり,その場から遠ざかろうとしたりする行動を取る自閉症児が見受け られる。これらは,感覚過敏による行動としてとらえられる場合もあるが,心理的適応と密接に関 連する場合もあるので,自閉症児の実態を的確にとらえ,こうした行動が生起している要因を十分 把握しながら指導を行っていくことが大切である。 (2) 「(2) 感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。」は,保有する感覚器官を用いて状況を 把握しやすくするよう各種の補助機器を活用できるようにしたり,他の感覚や機器での代行が的確 にできるようにしたりすることを意味している。 状況を把握する上で,音声による情報より,視覚を通して得る情報の方が理解しやすい自閉症児 (本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合,より的確に状況を把握することが できるよう,絵や文字カード等の視覚教材を提示して情報を伝達するなど,個々の実態を踏まえた 指導を適切に工夫することが大切である。 なお,指導に当たっては,個々の幼児児童生徒の障害の状態や発達段階,興味・関心等に応じ て,将来の社会生活等に結び付くように補助及び代行手段の活用を図ることが大切である。 (3) 「(3) 感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること。」は,いろいろな感覚器官や その補助及び代行手段を総合的に活用して,情報を収集したり,環境の状態を把握したりして,的 確な判断や行動ができるようにすることを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同

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じ。)に対しては,一つの活動を一つの場所で行うようにするため,更衣,学習や集会等の場所を それぞれ別に設定して,活動と場所を一致させることにより,自閉症児にとって分かりやすい生 活・学習環境としたり,予定を確認するカードを利用したり,終了時間をタイマーを使用して意識 したりできるような手段を講じたりすることで,自閉症児がより円滑に状況把握ができるように指 導していくことが大切である。 このように,指導に当たっては,幼児児童生徒が視覚,聴覚,触覚など保有するいろいろな感覚 器官やその補助及び代行手段を総合的に活用して,周囲の状況を把握することが大切である。その ために,日常生活や学習上のあらゆる場面で,補助及び代行手段を活用し,イメージや概念を,環 境の構造や状態と対応させた形で整理して分かりやすくし,状況に応じて適切に活用できるように 指導することが重要である。 (4) 「(4) 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること。」は,ものの機能や属性,形, 色,音が変化する様子,空間・時間などの概念の形成を図ることによって,認知の手掛かりとして 活用できるようにすることを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同 じ。)の場合には,大小・長短などの比較の概念や,前後・左右などの位置や空間の概念,昨日・ 今日・明日などの時間の概念の形成に困難性を示すことが少なくない。したがって,学習を進める 際には,タイルや模型,写真,映像等の教材・教具を用いたり,自閉症児の興味・関心を引き出すよ うな学習内容を設定したり,個別指導や体験的活動を採り入れたりするなどの工夫を行いながら指 導していくことが大切である。 また,自閉症児の中には,足し算・引き算が可能であっても,数量の概念が身に付きにくかった り,読み書きが可能であっても,時間の概念が身に付きにくかったりするなどの発達に著しい偏り が見られる場合があることから,対象児の実態を的確に把握し,教科の指導との関連を図りなが ら,概念の形成にかかわる指導を進めていくことも大切である。 (5) 「(5) 危険な状況の認知と回避に関すること。」は,日常生活において周囲の状況を的確に把握 するとともに,危険の度合いを認知し,深刻な事態になる前に危険を回避する行動が取れるように することを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同 じ。)の中には,高所を平気で渡り歩いたり,深さや流れの速さなどを全く意に介せずに海や川に 入ろうとしたりする者がいる。また,歩道を歩いているとき,急に車道に飛び出そうとする者がよ く見られる。このような「怖さが分かっていない」実態を示す者に対しては,理解が十分にできな い場合であっても,まずルールとしての危険回避の方法を身に付けることが大切である。例えば, 大きなトランポリンは必ず大人と一緒に跳ぶことや,道路はいつも必ず右側を歩くことを身に付け ることができるよう,個々の自閉症児の実態に即して指導を行うことが大切である。次に,その ルールの意味を,一人一人の自閉症児の実態に即して理解できるよう指導することが大切である。 言語理解力のある自閉症児であれば,例えば,「おへそより高い所には上らない。落ちると足が痛 くなるから。」など,言語を活用した指導が有効な場合が多い。そのときには,危険の度合いの判 断基準を,できるだけ数値や視覚的なイメージでとらえることができるよう,言語化して対象児に 伝えるようにすると,理解を促しやすいものである。 また,言語理解力が十分身に付いていない自閉症児に対しては,個別に伝達方法を工夫しなけれ ばならない。例えば,人形劇を通じて問題の深刻さを伝えるような工夫を行う必要がある。

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4 身体の動き 4 身体の動き (1) 姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。 (2) 姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。 (3) 日常生活に必要な基本動作に関すること。 (4) 身体の移動能力に関すること。 (5) 作業の円滑な遂行に関すること。 「4 身体の動き」では,日常生活や作業に必要な基本動作を習得し,生活の中で適切な身体の動 きができるようにする観点から内容を示している。 (1)「(1) 姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。」は,日常生活に必要な動作の基本となる 姿勢保持や上肢・下肢の運動・動作の改善及び習得,関節の拘縮や変形の予防,筋力の維持・強化 を図ることなどの基本的技能に関することを意味している。 姿勢には,臥位,座位,立位などがあり,あらゆる運動・動作の基礎になっている。姿勢を保持す ることは,広い意味での動作の一つである。これらの姿勢保持と上肢・下肢の運動・動作を含めて 基本動作というが,この基本動作は,姿勢の保持,姿勢変換,移動,四肢の粗大運動と微細運動に 分けることができる。 障害によって身体の動きに困難のある幼児児童生徒は,基本動作が未習得であったり,誤って身に 付けてしまったりしているために,生活動作や作業動作を十分に行うことができない。そこで, 個々の幼児児童生徒の運動・動作の状態に即した指導を行うことが大切である。 このような指導を行う場合には,必要に応じて医師等の専門家との十分な連携を図ることが大切 である。 (2)「(2) 姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。」は,姿勢の保持や各種の運 動・動作が困難な場合,様々な補助用具などの補助的手段を活用してこれらができるようにするこ とを意味している。 姿勢保持や基本動作の習得・改善を促進し,日常生活動作や作業動作の遂行を補うためには,幼 児児童生徒の運動・動作の状態に応じていろいろな補助的手段を活用する必要がある。また,この 補助的手段の活用に関する指導内容には,各種の補助用具の工夫とその使用方法の習得も含まれて いる。 補助用具には,座位姿勢安定のためのいす,作業能率向上のための机,移動のためのつえや歩行 器及び車いす,白杖などがある。このほか,よく用いられる例としては,持ちやすいように握りを 太くしたり,ベルトを取り付けたりしたスプーンや鉛筆,食器やノートを机上に固定する装置,着 脱しやすいようにデザインされたボタンやファスナーを扱いやすくした衣服,手すりなどを取り付 けた便器や便所などがある。また,表現活動を豊かにするために,コンピュータの入力動作を助け るための補助具も重要なものである。 補助具には,種々のものがあるが,それらが人間に代わって諸動作を行うのではなく,使用する のは幼児児童生徒自身である。したがって,すべてを補助用具に頼りきるのではなく,それを主体 的に使いこなせられるように指導することが必要である。一方,幼児児童生徒の運動・動作の状態 によっては,将来,補助用具の必要性が予想される場合もあるので,このような場合には,早い時 期からそのための指導を行うことも必要である。

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補助的手段の活用によって,姿勢の保持や運動・動作が少しでも改善されれば,幼児児童生徒の 障害に基づく種々の困難の改善・克服のための意欲を向上させたり,積極的に心理的安定を促進し たりする際にも,望ましい結果を生むことになる。 なお,杖,車いす,白杖等の活用に当たっては,必要に応じて専門の医師及びその他の専門家の 協力や助言を得ることが大切である。 (3)「(3) 日常生活に必要な基本動作に関すること。」は,食事,排泄,衣服の着脱,洗面,入浴な どの身辺処理及び書字,描画等の学習のための動作などの基本動作を身に付けることができるよう にすることを意味している。 日常生活に必要な基本動作を身に付けることは,幼児児童生徒の自立にとって,極めて重要なこ とである。これらを身に付けるには,姿勢保持,移動,上肢の諸動作といった基本動作が習得さ れ,改善されていること,すなわち,座位,立位を保持しながら,上肢を十分に動かせることがそ の基礎になるのである。つまり, ① 安定した座位を確保しながら,両腕を体の前へ伸ばせること。 ② 身体の正面で両手を合わせられ,指を握ったり開いたりできること。 ③ 身体のほとんどの部位へ指先が届くこと。 ④ 手の動きを目で追うこと。 というような動作が可能であれば,さらに次の段階の指導を工夫することによって,日常生活の諸 動作の多くを行うことができるようになる。その上で,これらの動作を実際の日常生活で使えると ころまで習慣化していくことが大切である。 運動・動作が極めて困難な幼児児童生徒の場合には,日常生活に必要な運動・動作のほとんどを 介助に頼って行っている場合が多いので,実際場面で実用品を使った動作の習得や日常生活の模擬 動作の練習を行うことは難しい。このような幼児児童生徒の場合には,介助を受けやすい姿勢や, 手足の動かし方を身に付けることを目標として,指導を行うことが必要である。 (4)「(4) 身体の移動能力に関すること。」は,自力での身体移動や歩行,歩行器や車いすによる移 動など,日常生活に必要な移動能力の向上を図ることを意味している。 移動とは,自分で自分の身体を操作し,目的の場所まで行くことで,興味・関心を広げる上でも 重要な手段であり,自立するために必要な動作の一つである。一般に,首のすわりから始まって, 寝返りから座位へと続く,いわゆる初期の運動・動作の発達の到達が歩行である。 歩行能力の向上を目指すには,安定性,独立性,持久性を目指した指導を行う必要性がある。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の中には,触覚過敏の 影響などから,つま先立ち歩きが習慣化している者や,飛び跳ねるようにして歩く者が少なくな い。このような自閉症児に対しては,足底の感覚過敏の改善を図ったり,習慣化からくる不適切な 筋緊張等を緩和させたりするなどして,歩行の安定や持続性を高める指導を行うことが必要であ る。 障害の状態により,筋力が弱く,歩行に必要な緊張が得られない場合には,歩行器を用いた歩行 を目標に掲げて指導を行ったり,歩行が困難な場合には車いすによる移動を目標に掲げたりするな ど,日常生活に役立つ移動能力を習得するように指導する必要がある。 運動・動作が極めて困難な場合には,寝返りや腹這いによる移動だけでなく,それらも含めた基 本動作すべての習得・改善を目指しているのであるから,その指導経過から幼児児童生徒に適した 移動の方法を選択し,それを中心に能動的な探索活動や学習活動に活用できるように指導すること

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も必要である。 なお,障害の状態や発達段階によっては,学校外での移動や,交通機関の利用の際に,一人で移 動することが困難になる場合もある。このような社会的な場面における移動能力を総合的に把握し て,実際の場面の中で有効に生かされるよう指導することが大切である。 (5)「(5) 作業の円滑な遂行に関すること。」は,作業に必要な基本動作を習得し,その巧緻性や持 続性の向上を図るとともに,作業を円滑に遂行する能力を高めることを意味している。 作業に必要な基本動作を習得するためには,姿勢保持と上肢の基本動作の習得が前提として必要 である。つまり,自分一人で,あるいは補助的手段を活用して座位保持ができ,机上で上肢を曲げ たり伸ばしたり,握ったり放したりする動作ができなければならない。 また,作業を円滑に遂行する能力を高めるためには,両手の協応,目と手の協応の上に,正確さ などの巧緻性や速さ,持続性などの向上が必要であり,さらに,その正確さと速さを維持し,条件 が変わっても持続して作業を行うことができるようにする必要がある。 障害の状態によっては,身体の動きの面で,関係する教科等の学習との関連を図り,作業におけ る基本動作の習得や巧緻性,敏捷性の向上を図るとともに,目と手の協応動作における作業の姿勢 や持続について,自己調整できるよう指導することが大切である。 5 コミュニケーション 5 コミュニケーション (1) コミュニケーションの基礎的能力に関すること。 (2) 言語の受容と表出に関すること。 (3) 言語の形成と活用に関すること。 (4) コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。 (5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること。 「5 コミュニケーション」では,場や相手に応じて,コミュニケーションを円滑に行うことがで きるようにする観点から内容を示している。 (1) 「(1)コミュニケーションの基礎的能力に関すること。」は,幼児児童生徒の障害の種類や程 度,興味・関心等に応じて,表情や身振り,各種の機器などを用いて意思のやりとりが行えるよう にするなど,コミュニケーションに必要な基礎的な能力を身に付けることを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合には,自分の気 持ちや要求を,適切に相手に伝えることができず,コミュニケーションが成立しにくいことがあ る。また,何を求められているのかが理解できないということもある。このような場合には,話し 言葉によるコミュニケーションにこだわらず,本人にとって可能な手段を講じて,より円滑なコ ミュニケーションを図る必要がある。なお,周囲の者は,自閉症児の表情や身振り,しぐさなどを 細かく観察することにより,その意図を十分に理解することが重要である。したがって,双方向の コミュニケーションが成立することを目指し,特に自閉症児に対しては,そのために必要な基礎的 能力を育てることが大切である。 (2) 「(2)言語の受容と表出に関すること。」は,話し言葉や各種の文字・記号等を用いて,相手の 意図を受け止めたり,自分の考えを伝えたりするなど,言語を受容し表現することができるように

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することを意味している。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合には,話し言葉 が身に付いていないことも少なくない。このような自閉症児の場合には,話し言葉にこだわること なく,障害の状態や発達段階等に応じて,身振りや写真・絵カード,文字,音声伝達装置などを 使って,自分の意思を何らかの形で相手に伝える方法を身に付けるように指導するとともに,それ を受け止める側についても,各種のコミュニケーション手段を理解するよう努める必要がある。 このように,意思が伝わるためには,伝える側が意思を表現する方法をもち,それを受ける側も その方法を身に付けておく必要がある。言語を受容したり,表出したりするための一般的な方法は 音声言語や文字であるが,障害の状態や発達段階等に応じて,身振りや表情,指示,具体物の提示 等,非言語的な方法を用いる必要がある場合もある。 いずれの場合も,幼児児童生徒の障害の状態や発達段階等に応じて適切に行うことが大切であ る。 (3) 「(3)言語の形成と活用に関すること。」は,コミュニケーションを通して,事物や現象,自己 の行動等に対応した言語の概念の形成を図り,体系的な言語を身に付けることができるようにする ことを意味している。 コミュニケーションは,相手からの言葉や身振り,その他の方法による信号を受容し,それを具 体的な事象や現象と結び付けて理解することによって始まる。したがって,言語の形成について は,言語の受容と併せて指導内容・方法を工夫することが必要である。その際には,語彙の習得, 文法体型の習得に努めるとともに,それらを通して言語の概念が形成されることに留意する必要が ある。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合には,複数の修 飾語が付いた言葉や抽象的な言葉の理解が困難であったり,話し言葉を用いることができず,限ら れた音声しか表出できなかったりするなど,言語の形成と活用に困難を示す傾向が見られる。この ような自閉症児の場合には,より具体的で簡潔な言葉で話し掛けたり,身振りや具体物,写真・絵 カード,文字などの視覚的な情報を併せて提示したりして,言語理解を促していくことが大切であ る。また,自発的な発声・発語に重点を置いたり,身振り等自分の意思を相手に伝えることができ る手段の活用に重点を置いたりするなどして,言語の積極的な活用を促し,双方向のコミュニケー ションが成立するように留意しながら指導する必要がある。 (4) 「(4)コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。」は,話し言葉や各種の文字・記 号,機器等のコミュニケーション手段を適切に選択・活用し,コミュニケーションが円滑にできる ようにすることを意味している。 自閉症児の障害の状態や発達段階等に応じて,話し言葉以外にも様々なコミュニケーション手段 を選択・活用し,それぞれの実態に応じて,周りの人々との円滑なコミュニケーションができるよ うにする必要がある。 例えば,音声言語の表出は困難であるが,文字言語の理解ができる幼児児童生徒の場合には,筆 談で意思を伝えたり,文字板,ボタンを押すと合成音の言葉が出る器具,コンピュータを使って意 思を表出したりすることもできる。しかし,音声言語による表出が難しく,しかも,上肢の運動・ 動作に困難が見られる幼児児童生徒の場合には,このような器具や補助用具を操作することが難し くなることから,下肢や舌,顎の先端等でそれらを操作できるようにするなどの工夫が必要にな る。また,発音・発語に困難があり,文字の習得が十分でない幼児児童生徒の場合には,具体物や

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写真,絵カード,簡単な記号などを利用してコミュニケーションを図り,文字や語彙の習得を促す ことが大切である。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の中には,音声言語は 身に付いていないが言葉の意味は理解できる者や,音声言語はあってもそれを適切に用いることが 難しい者がいる。発音・発語に困難があり,文字の習得が十分でない場合には,身振りや具体物, 写真・絵カードなどを利用してコミュニケーションを図る指導を行う必要がある。また,音声言語 の表出は困難であるが,文字言語の理解ができるなどの場合には,文字板,ボタンを押すと合成音 の言葉が出る器具などを選択して用いることができるように指導することが大切である。さらに, 音声言語はあるが適切な話し言葉を用いることが難しい場合には,言語の受容・表出の指導を適切 に行うように努め,併せて言語の意味理解を深めて文法に則した表現を促す指導を行うことが必要 である。 (5) 「(5)状況に応じたコミュニケーションに関すること。」は,場や相手の状況に応じて,主体的 なコミュニケーションを展開できるようにすることを意味している。コミュニケーションを円滑に 行うためには,伝えようとする側と受け取る側との人間関係が重要である。 例えば,経験の不足などのため,相手の立場や気持ちなどに応じて,それにふさわしい表現を用 いて話したりすることができにくい場合には,相手や状況に応じて ,適切なコミュニケーション手 段を選択して伝えたりすること,自分が受け止めた内容に誤りがないかどうかを確かめたりするこ となど,主体的にコミュニケーションの方法等を工夫することが必要である。こうしたことについ ては,実際の場面を活用したり,場を再現したりするなどして,どのようなコミュニケーションが 適切であるかについて具体的に指導することが大切である。 また,日常生活における友人との会話,目上の人への対応,対話や会議,電話の応対などにおい て適切な言葉の使い方ができるようにしたり,コンピュータを活用してコミュニケ-ションができ るように指導したりすることも大切である。 例えば,自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合は,初めての場 所や活動内容であったり,相手が初対面であったりすると,その場に応じたコミュニケーションを とることが難しくなることがある。また,急に予定が変更されたり,活動の順序が変わったりする と混乱して,コミュニケーションがとれなくなることがある。そのような場合には,事前に場所や 活動内容,相手等の情報を自閉症児に伝えたり,場を共有できる人が付き添ってその状況を伝えた りするなどして,自閉症児が安心してコミュニケーションがとれるようにすることが大切である。 6 社会的適応 6 社会的適応 (1) 日常生活における円滑な活動の遂行に関すること。 (2) 日常生活における感覚の特性を理解した適切な対応に関すること。 新たに設定した「6 社会的適応」では,場や状況に応じて適切に行動する力を養い,社会参加を 円滑にする基盤を培う観点から内容を示している。 「心理的適応」の区分においても社会参加の基盤を培う観点から内容が示されているが,自閉症児 (本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の中には,心理的適応や対人関係以外に,感 覚刺激への特異な反応や特定の場や状況への固執性から,集団活動への参加に困難を示す者がいる。 したがって,これらの内容に対応する区分として,「社会的適応」を新たに設けるようにした。

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(1)「(1) 日常生活における円滑な活動の遂行に関すること。」は,社会的な規範であるルールやマ ナーにのっとって,日常生活における活動を円滑に遂行することを意味している。 自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同じ。)の 中には,特定の物や手順等へのこだわりがあることによって,日常生活における円滑な活動の遂行 が困難になってしまう場合が見られる。また,こだわりがあることによって,活動を最後までやり 遂げることができない場合も見られる。このような自閉症児に対しては,社会的に不変の一定の ルールやマナーを身に付ける指導を行うなどして,日常生活における活動を円滑に遂行できるよう にしていくことが有効である。 現実の生活環境や生活の流れの中では,こうしたルールやマナーを遵守することにより,適切に 日常生活における円滑な活動を遂行できるようになる場面が数多くある。したがって,特定の物や 手順等にこだわりがある自閉症児に対しては,生活上の決まりである社会的に不変の一定のルール やマナーを,毎日の日常生活の流れの中で繰り返し指導することが大切である。また,個々の自閉 症児の実態を考慮した学習課題を選定し,活動内容や手順を工夫して,一つの活動を最後までやり 遂げることができるように指導することも大切である。なお,初期の発達段階にある自閉症児に対 しては,簡単なルールのある遊びの活動を設定し,その遊びの活動に必要なルールやマナーの習得 を基礎に,日常生活において必要となるルールやマナーの習得へと発展させていく指導の工夫も必 要である。 (2)「(2) 日常生活における感覚の特性を理解した適切な対応に関すること。」は,自分の障害の特 性等を理解し,円滑な日常生活の営みを阻害する感覚の特異性を自ら改善するよう努めたり,自分 の不得手な感覚刺激を適切に回避したりすることにより,適切に自己の行動を管理できるようにす ることを意味している。 自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同じ。)の 中には,特定の感覚刺激に過敏であったり,この逆に感覚刺激を感じていないように思われたりす る者が見受けられ,このことが影響して生活上の不適応行動として現れているのではないかと推測 される場合がある。しかし,もともとその根底には自閉症の障害特性としての感覚の特異性がある としても,それだけで不適応行動のすべてを説明しきれるものではなく,その感覚の特異性を理由 にした生活経験の偏りが,特定の感覚刺激に対する極端な反応を更に助長しているように見受けら れることが少なくない。 したがって,感覚の特異性への対応としては,①感覚の特異性そのものの改善を図ることと,② 一定の感覚の特異性の存在を前提としながらも,不適応行動の原因となる刺激そのものを取り除い たり回避したりすることが挙げられる。 前者においては,弱い刺激を短時間又は少量経験することから始めて,徐々に量的拡大にも慣れ ていくようにするという一般的指導手法が自閉症児には有効な場合がある。また,関連情報をこう した自閉症児に理解できるような形で示し,感覚の特異性の発現を抑制しようとする指導の工夫も 大切である。だれでも,予備知識のない新規な刺激を突然受けた場合には,非常に驚き警戒する。 しかし,それが何であるか事前に分かっていれば,驚いたりむやみに怖がったりすることは少ない ものである。 後者においては,刺激を軽減する環境面の工夫がまず大切である。このことが,自分で行うこと ができれば更に良い。しかし,刺激の発生量自体を自分の都合に合わせて調節できるような環境 は,むしろ少ないものである。したがって,できるだけ不快刺激は事前に回避できるようにするこ

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とが大切である。自閉症児が,自ら言葉やシンボルカードなどを使用して,拒否や不参加の意思表 示を穏やかにできるようになると,適応力は格段に増すものである。しかし,刺激の発生量を軽減 できないし,回避もできない場合もある。このような場合には,刺激を遮断する方法を身に付ける ことが有効である。例えば,騒音のある場所では,耳栓やイヤーマフの使用が有効な場合もある。 7 自律的活動 7 自律的活動 (1) 身近な人への支援の依頼に関すること。 (2) 自己の心情の理解と対応に関すること。 (3) 日常生活に必要な計画と遂行に関すること。 新たに設定した「7 自律的活動」では,状況に応じて自律的に行動する力を養い,より質の高い 生活を行えるようにする基盤を培う観点から内容を示している。 自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の中には,不安定になった自己の 心情や,場や状況の雰囲気の変化等に,自律的に対処することが著しく困難で,円滑な日常生活を行 えなくなってしまう者がいる。したがって,これらの内容に対応する区分として「自律的活動」を新 たに設けるようにした。 (1)「(1)身近な人への支援の依頼に関すること」は,自己解決が困難な状況を理解したり,その解 決に身近な人の支援が必要となる場合もあることを理解したりして,適切な行動の仕方を身に付け ることを意味している。 自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合には,新奇な場面や,特 にすべきことを指示されない場面などで,「今どういう状況なのか,何をしなければいけないの か,何ができるのか」等を適切に判断して行動することが難しく,不適応な状態に陥ってしまうこ とがある。社会の中で生活していく上では,このような状況を自ら克服し,解決していく必要があ り,想定される幾つかの場面を意図的に設定しながら,身近な人に,状況に応じて適切な支援を依 頼するコミュニケーションの技能等を習得できるよう指導することが大切である。 (2)「(2)自己の心情の理解と対応に関すること」は,自己の感情が亢進する状態等を理解したうえ で,その改善を図り,感情の亢進等を防止するために必要な手だてについての理解を深め,それら を活用した生活の自己管理ができるようにすることを意味している。 自閉症児(本校に在籍する知的障害を伴う自閉症の幼児児童。)の場合には,情緒が不安定に なったり不快刺激を受けたりしたとき,自分で感情をコントロールして気持ちを切り替えたり,刺 激を排除したりすることが苦手で,そのことが原因でパニックに陥ることも見られる。このような ときには,静かな場所へ行って気持ちを静めたり,音楽を聴いたり,イヤーマフを要求したりする など,気持ちを切り替えたり刺激を排除したりするために,効果的な手段を習得し,自ら実際の場 面で使えるよう指導していくことが大切である。

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(3)「(3)日常生活に必要な計画と遂行に関すること。」は,日常生活に必要な基礎的事項を取り上 げて予定表を作成したり,それに基づいて活動したりして,円滑な日常生活を送るために,適切な 行動の仕方を身に付けることを意味している。 円滑な日常生活を送るためには,目的を達成するために必要となる活動を自ら選択して決定し, 活動の手順を組み立て,計画的に遂行していく必要がある。例えば,自閉症児(本校に在籍する知 的障害を伴う自閉症の幼児児童。以下,この項において同じ。)の場合には,登校時に一日の学習 活動の流れを確認する場面を意図的に設定したり,活動を行う前に手順を示したりするなどして, 本人が納得したうえで活動に取り組むことができるように働き掛けることが大切である。 また,好きな遊びや活動に集中すると,なかなか自分からやめたり,そのことから抜け出したり することができなくなり,自分で気持ちを切り替えて次の活動に移ることが困難な者に対しては, 次の活動場所の写真や教室名を記したカード等を使用して予定を再確認し,次の活動への円滑な移 行を促すことが有効である。自閉症児にとっては,視覚的に情報をとらえることができ,次に何を するのかが理解しやすくなるので,単に遊びや活動を中断させられたとして興奮することなく,当 面の見通しに裏付けられた適切な対応が可能になるからである。 さらに,様々な学習場面において,複数の物,活動や課題の中から,自分の好きな物,活動や課 題を選択する場面を意図的に設定して,自己選択・自己決定の基礎的な力を養っていくことも重要 である。

参照

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