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とともに 目 標 値 を 設 定 しそれを 達 成 するために 努 力 することが 重 要 であると 思 われます (3) 乳 質 改 善 指 導 の 流 れ 乳 質 改 善 全 体 の 流 れを 下 図 に 示 した 乳 房 炎 の 発 生 に 最 も 影 響 を 及 ぼすことは 搾 乳 手 順

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搾乳衛生について

1 はじめに 東海酪連管内4県の中で、長野県の乳質は低下しており他県にペナルティーを配分している状況です。乳質の悪さは直 接のペナルティはもちろん、乳房炎が原因の場合はそれによる乳量減少も大きな損失になります。乳質向上に取り組み 、 乳房炎が減ったら乳量が2割増えたという例もあります。"安全安心信州ミルク"という消費者の信頼を裏切らないために も、また、酪農家の所得アップのためにも、改めて乳質向上に取り組み「汚名」を返上していきましょう。 ここでは、搾乳手順の基本を確認し、搾乳衛生指導の主なポイントについて解説します。 2 衛生的乳質コントロールの目標 搾乳衛生を適正に実施し乳房炎の発生を低減化する目標数値は次のとおりです。 ①体細胞数 ・個体乳 20万/ml未満 ・バルク乳 20万/ml未満 ※安定して10万/ml前後を推移すること ②細菌数 ・バルク乳 10万/ml以下 3 乳質改善指導の取り組み方法 (1) 問題農家の選定 指導対象とする農場は、バルク乳の体細胞数が 20 万/mlを超え、潜在性乳房炎牛の多いことが予想される酪農家 で、酪農家自身に改善意欲があることが前提です。また、その地域や組合において中核的な農場であれば、改善指導への 取り組みの波及効果が期待できます。重要なことは粘り強く農家と係わり、1回のみの取り組みとせず、定期的な取り組 みにより課題を1つ1つクリアする長期的な視野に立った支援です。 (2) 地域酪農サポートチームの結成 現在、県下の各地域で畜産関係機関(共済組合、農協、普及センター、家畜保健衛生所など)が協力し酪農サポートチ ームによる牛群ドック事業に取り組んでいます。牛群ドック事業は代謝プロファイル検査、飼料給与診断、牛群検定成績 などを総合的に分析し酪農家に飼養管理技術等の改善を求める事業ですが、指導の中で乳質が問題となる例は少なくあり ません。乳質の問題についても、搾乳衛生のみならず飼養環境や栄養管理など様々な要因が関係することから、牛群ドッ ク事業と連動して実施することより、より効率的で酪農家の理解も得られやすいと思われます。この場合、サポート-ム は、共通認識をもって連携すること、事前検討によりバルク乳成績や牛群検定成績などから予め問題点を整理し、酪農家 表1 参考:平成23年度地域別乳質結果 乳 脂 肪 無 脂 乳 固 形 分 乳 蛋 白 体 細 胞 数 細 菌 数 ( t ) ( % ) ( % ) ( % ) ( 万 ) ( 万 ) 東 信 3 5 ,4 7 4 .6 3 . 9 8 8. 8 1 3. 3 6 2 3. 0 5 .5 南 信 3 4 ,2 5 8 .0 3 . 9 3 8. 7 5 3. 3 2 2 2. 6 6 .8 中 信 2 5 ,6 3 7 .3 3 . 9 1 8. 7 2 3. 2 8 2 2. 1 6 .2 北 信 1 1 ,5 1 6 .4 3 . 9 5 8. 7 5 3. 3 2 2 5. 3 8 .0 畜 試 3 7 9 .4 3 . 9 4 8. 6 9 3. 1 9 6. 0 3 .0 全 農 八 ヶ 岳 2 ,2 3 3 .1 3 . 7 7 8. 8 5 3. 3 6 1 4. 0 5 .0 全 体 10 9 ,4 9 8 .6 3 . 9 4 8. 7 7 3. 3 2 2 3. 0 6 .0 販 売 乳 量 加 重 平 均 地 区 資料提供:全農県本部酪農

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とともに目標値を設定しそれを達成するために努力することが重要であると思われます。 (3) 乳質改善指導の流れ 乳質改善全体の流れを下図に示した。乳房炎の発生に最も影響を及ぼすことは、搾乳手順と搾乳衛生です。このため搾 乳立会が必要となります。さらに、乳房炎原因菌は菌種毎にとにその起源、防除方法などが異なるため、細菌検査は必須 検査です。 (4) 搾乳立会 搾乳立会により搾乳手順、搾乳衛生、搾乳システム、環境などを観察しチェックリストを用い、可能な限り記録し、こ の野帳を基に指導書を作成します。チェックリストの事例(表2)に示しました。また、搾乳作業におけるユニット装着 のタイミングや搾乳時間を個体毎に記録することは、搾乳衛生を評価する上で非常に重要なポイントとなります。さらに、 搾乳牛全頭の分房乳または4分房の合乳を採取し細菌検査を行い病原菌の傾向を把握します。いずれにしても、これらの モニタリングはチームで分担して行なう必要がありあます。 (5) 現地検討会 農家指導においては立会調査結果、全頭細菌検査結果、バルク乳細菌培養成績、牛群検定成績等を分析し、危害要因と 重要管理点などをまとめた指導書を作成します。酪農家とサポートチームは指導書を基に、今までの乳質の現状の再確認、 問題点と改善点の提示し、作業手順の再構成、重要管理点の設定などを協議し決定します。 (6)モニタリングの継続 検定による個体乳及びバルク乳の体細胞数の推移を確認し、必要に応じて、再搾乳立会、定期的なバルク乳の培養な どを行いましょう。 4 泌乳生理と搾乳の基本的な考え方 正しい搾乳手順と搾乳衛生のキーワードは、「きれいで早く終わる」ということです。そのためには、ミルカーはメ ンテナンスされており正常に稼働することが前提となり、搾乳する前の乳頭を清潔にすること、牛の泌乳生理にあわせて 搾乳し、いかに短時間でたくさんの牛乳を搾るかが重要となります。 図1 乳質改善への取り組みフロー

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(1)乳房の構造と生乳生成 乳房は互いに独立した四つの分房に分かれており、靭帯によりハンモック状に保定されています。左右分房間には乳 量差はなく、前後では約4対6の割合と言われています。生乳は絶えず作られており、搾乳により乳房内圧が下がると乳 腺胞での生乳生成が活発になり、時間とともに再び内圧が高まってくると抑制されます。 乳槽は乳腺槽と乳頭槽に分かれています。1分房の乳槽容積は、乳腺槽が100 - 400ml、乳頭槽は35 - 45ml に 過ぎず、4分房合わせても2リットル 弱にしかなりません。生成された生乳の大部分は、無数にある乳腺胞の腺胞腔や 乳管内にとどまっています。 (2)泌乳生理の基本-「搾乳は牛と人との連携作業」 搾乳を考える上で重要なことは、乳腺槽以外にとど まっている生乳はミルカーの吸引力だけでは吸い出せ ません。吸引力だけで取り出せる生乳は、大乳管と乳 槽に貯留している40%程度の部分にすぎず、残りの約 60%は乳腺胞と小乳管にあり、搾乳刺激により牛自ら が排出を促さなければ搾乳できません。 搾乳刺激に より脳下垂体後葉からオキシトシンが放出され血液を 介して乳腺組織へ運ばれ、乳腺の平滑筋細胞(筋上皮 細胞)を収縮させることで乳腺胞に貯留していた生乳 が乳腺槽に降下します。搾乳刺激を感じる部分は乳頭 に集中しているので、乳頭を十分に刺激することが泌 乳生理のスイッチとして重要です。 (3)搾乳時間と残乳の関係 乳頭刺激が脳下垂体に伝達されるまで 15 秒、オキシトシンが放出され乳房に達するまで 35 秒必要といわれていま す。血中オキシトシン濃度は2分後にピークに達し、5~6分後にはもとの値に戻るので、乳頭刺激から5分以内に搾乳 を終了しないと残乳が多くなります。泌乳生理を無視した搾乳は乳頭へ過度の負担をかけることとなり、乳量の損失だけ でなく乳房炎の原因につながります。 (4)オキシトシンの分泌 図2は、泌乳ホルモンであるオキシトシンの放出を示した曲線です。泌乳の刺激は乳頭にだけ感じる部分があります。 乳 頭 に 刺 激 を 与 え る と 1 分 く ら い で オ キ シ トシンがピークに達し、5分くらいで下がり ます。よってこの時間内に搾乳ができれば5 分程度で搾り終わることができます(A)。 また、前搾り不足で搾乳刺激が不十分でユニ ットの装着のタイミングが早すぎる場合は、 ホ ル モ ン の 分 泌 が な い の で 強 引 に 搾 る こ と に な り 過 搾 乳 で 痛 み を 感 じ た り し て 相 対 的 に搾乳時間が長くなります(B)。さらにユ ニット装着のタイミングが遅くなると、オキ シ ト シ ン が 分 泌 さ れ て い る 間 に 搾 乳 が 終 わ 図 2オキシトシン(泌乳ホルモン)の分泌曲線 乳頭 刺激 1分 2分 3分 4分 5分 6分 7分 8分 9分 10分 A 適切な準備と装 着での乳の流れ B 早期の装着 or準備不足の 乳の流れ C 装着遅 延の乳の流れ 搾 乳 ス ピ ー ド オキ シトシン オキ シトシン オキ シトシン オキ シトシン の量 の量 の量 の量 オキシトシン の分泌 乳腺槽 乳頭槽 フルステンベルグのロゼット 筋上皮細胞 脳下垂体後葉から分泌され るオキシトシンが作用

搾乳刺激

脳下垂体後葉から分泌され るオキシトシンが作用

搾乳刺激

図2 乳房の構造と泌乳

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らず、乳の出が悪くなます。それでも搾るとミルカーを長く装着することになるので搾乳時間は延び過搾乳となります (C)。過搾乳は乳が出ないのに付けるので乳頭の先が痛んできます。それが、乳房炎を起こしたり乳頭口が渋くなった りする原因となります。初産牛の乳頭先端と経産牛の乳頭先端を触ってみるとその違いがよくわかります。 初産の分娩後に、乳頭刺激とミルカー装着のタイミングをきちんとすることで、泌乳生理にあった搾乳により乳量が増 え、4本同時に外すこともできるようになります。しか し乳量が増えたときに、ミルカーの配管が今のままで大 丈夫かという問題はあります。流れる乳量が増えるため、 配管の口径が問題になってくるからです。 オ キ シ ト シ ン の 泌 乳 作 用 の 相 反 す る 作 用 と し て ア ド レナリンの放出による“興奮と緊張”があります。怒ら せたり、不安にさせたりすると、交感神経からアドレナ リンが分泌されます。そうするとオキシトシンの作用を 抑制し乳量が下がります。搾乳時、初産牛でうるさい牛 がいますが、これは搾乳作業が牛にとって不快であるた めです。アドレナリンはいつも牛を怒っている人が来た だけでも分泌されます。日頃から牛への接し方も乳質改 善の重要な要素です(図5)。 (5)なぜ牛乳は搾れるのか? 図●は牛乳が搾られる原理を示した。ミルカー搾乳は手搾りとは逆に、ライナーが開いている時に搾られる。ライナー ゴムの内側と外側の真空圧が同じになると、ライナーゴムの弾力で広がる。そして真空で乳頭口より牛乳を吸い出します。 ライナーが潰れる時には乳頭も潰れることになる。 図5 不快、苦痛などの刺激による乳汁流下の抑制 図4 ある農家で見られたロープ保定による強制搾乳

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ライナーの硬さ、口径も体細胞数の問題と関連します。 ライナーが古くなると 、伸びた時に乳頭に付きませ ん。 そのまま引っ張ると、ライナー内がふるえて乳頭が傷む。 圧がかかって潰れた時には、潰れ方が良くないので乳頭 を傷めます。 ライナーの交換は、搾乳 1200回目或いは90日目に 行います。ライナーは毎回洗浄され、酸性洗剤、アルカ リ洗剤、塩素にさらされるため、どちらかを目処に交換 するのが原則である。そこで、搾乳立会では必ず、ライ ナーゴムの交換時期、ひび割れがないか、洗浄の状態な どを確認します。 (6) どうして牛乳は上がってくるのか? パイプラインミルカーで搾られた生乳は、なぜミルクチ ューブを上がってくるのか?正解は「すっているから上が っていく」である。バキュームポンプによって吸っている が、クローにブリードホールを付け、そこから空気を吸い 込み牛乳を塊にして上に吸っている。この穴が詰まると搾 乳できなくなるため、ブリードホールは目詰まりしないよ うに常に確認が重要である。 図●はミルクラインの断面図です。ミルクラインの役割 は、牛乳をレシーバージャーまで流すことと、牛乳を搾る ための真空圧を供給することである。このため、真空の部 分がなくなると、牛乳を搾るための真空圧は供給できなく なるため、ひどい場合にはユニットは落下する。ユニット は真空で乳頭に付いているため、一時的にも真空が供給されなくなると落下してしまう。つまり、牛乳を搾るという意味 では、真空の部分が大事であり、クローに真空圧を供給するため、このミルクラインの断面積が非常に重要となる。この 部分の断面積は配管の3分の2くらいは欲しい。そのため、配管が細い場合には、牛乳が多量に流れた場合に真空を供給 できなくなり搾乳真空圧の変動、ライナースリップの発生による乳頭への傷害とともに、ユニットが脱落してしまう場合 がある。 5 基本的な搾乳方法を確認しておこう! (1)搾乳システムの点検と殺菌 搾乳に入る前、搾乳システムの殺菌は重要です。前回の搾乳後に殺菌したとしても、次の搾乳までに汚染された空気に 触れ、残った細菌が増殖して搾乳システム全体が細菌数を多くします。搾乳前の殺菌は、すでに搾乳システムが汚染され ていては搾乳前の準備作業がすべて意味のないものになるので、搾乳システムの殺菌は搾乳前に正しく行わなければなら ない。 特に、初乳を搾乳するバケットミルカーは十分に整備されていなければなりません。また、初乳の搾乳と乳房炎牛を 搾乳するバケットミルカーが兼用されている場合が多いので、厳重な洗浄・殺菌が必要です。 図6 なぜ牛乳は搾れるのか? 図7 牛乳が上がる原理

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(2)搾乳に必要な器具 まず効率的かつ衛生的な搾乳のためには、搾乳用ワゴンがあると便利です。搾乳用ワゴンに準備する主なものを図6 に示しました。 (3)搾乳準備から開始時の確認ポイント 搾 乳 前 と 搾 乳 開 始 時 に 確 認 し て お く 主 な ポ イ ン ト は 次 のとおりである。 ①搾乳前に搾乳システムの洗浄・殺菌状態 ②クロー、ライナーやチューブ類の状況 ③バケットミルカーの状況 ④真空圧、調圧器の調子、パルセーター音の確認 ⑤使いやすい搾乳カート等があるか ⑥ゴムまたはビニール手袋の装着 ⑦使用するユニットは3台/人まで! ⑧ユニットを牛の傍らに持ってきてから作業開始 ⑨作業を分担しない ⑩乳房炎牛は最後に搾る 特に、ゴム手袋等を着けることにより、手の殺菌洗浄が容易となり、乳房炎の発生防止とともに搾乳に対しての衛生意 識が向上します。また、搾乳する牛の順序は、初産牛→2産目牛などの若齢牛→健康な経産牛の順で行い、最後に体細胞 の高い牛や乳房炎牛をまとめて搾乳します。特に、黄色ブドウ球菌感染牛は最後に搾乳しなければなりません。また、ハ イポイントの位置を確認し、1スロープ単位で初産牛、健康牛、乳房炎牛の順番を決めて搾乳します。牛乳配管の中の乾 燥による洗浄不良を避けるため、処理室に近い(ローポイント)牛から搾乳を開始することが原則です。 (4)搾乳手順 搾乳手順によって乳房炎の 70%まではコントロールできると言われています。最も重要なことは、いつでも清潔で、 乾燥した、良い搾乳刺激を与えられた乳頭から搾乳することです。これは、牛群規模の大小や搾乳機器にかかわらず大事 なことです。 現在推奨されている繋ぎ牛舎における搾乳を次に示します。この作業を厳格に行うことが生乳の生産性を向上させ、乳 房炎を予防することにつながります。 <基本的な搾乳手順の流れ> ① ユニットの移動 ② 前搾り ③ ストリップカップによる異常乳の確認 ④ 乳頭の洗浄・殺菌 ⑤ 乳頭の乾燥 ⑥ ユニットを正しく装着する ⑦ ユニットを正しく離脱する ⑧ ポストディッピング

前搾りからユニット装着までの時

間は

60

90

図6 搾乳ワゴンと必要な道具の例

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1)搾乳ユニットを牛の所に持ってきてから搾乳作業開始 ①ユニットの持ち運び方とかけ方(図7) 搾乳終了後のユニットの持ち方とかけ方はきわめ て重要です。ユニットを持ち運ぶ時と懸けると時は、 生乳のライナーから牛乳がたれないようにクローの 上下関係を乳頭へのティートカップ装着時と同じ状 態で保持することが重要です。乾いた乳頭に乾いた ライナーを装着することが、ライナースリップを軽 減し、乳房炎の新機感染を減らすことにつながりま す。 ②搾乳作業を分担しない 前搾りからディッピングまでの一連の搾乳作業を 一 人で行う ことが 原則で す。例 えば、前 搾りや 乳頭 清 拭をする 人とテ ィート カップ を装着す る人が 異な る ような搾 乳の仕 方だと 、ティ ートカッ プの装 着が 乳頭刺激開始から 60-90 秒に行うことが難しくなる た めです。 また、 搾乳終 了のタ イミング を逸す るこ と にもつな がり、 結果と して過 搾乳の原 因にも なり ます。 搾乳作業 は常に 一定の 時間内 に、一定 の手順 で行 う ことが原 則です 。その ために は、前の 牛の搾 乳を 終 わらせる のを見 計らっ て、次 の牛の作 業を進 行さ せ るやり方 では装 着タイ ミング を一定に するこ とが 難しくなります。常に搾乳する牛の所にユニットを 持ってきてから搾乳を開始することが重要です。一 人で使用するユニットは、原則として2台が適当と 考えられます。 2)前搾り(図8) 前搾りは次の4つの意味をもつ。 ①オキシトシン(泌乳ホルモン)の放出を促すた めに搾乳刺激を与える。 ②異常乳を発見する。 ③乳頭乳槽に貯留している異常乳を排出させる 。 ④乳頭口の生乳の通りをよくする。 乳頭清拭前に、各乳頭を4回以上ずつストリップ カップに前搾りをします。また、乳頭清拭前に前搾りする理由は、清拭した清潔な乳頭を再び手で汚さないためです。前 搾りで一番重要なことは、乳頭の付け根を親指と人差し指でしっかり把握し乳頭全体に確実な刺激を与えることです。こ 図7 ユニットの持ち方・掛け方 図8 前搾り

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のことにより、オキシトシン分泌のピークをさらに早く、そして高く導くことが出来ます。つまり、泌乳開始時の生乳の 流量を高め、短時間に搾乳することが可能となり、乳頭に負荷をかけずに搾乳することにつながります。前搾りを4回ず つ行う理由は、乳頭乳槽内の異常乳や細菌を排出させるためには、最低4回以上の搾出が必要だからです。前搾りの際に 乳房の状態、ブツの発見や生乳の清浄をよく観察できるように、牛舎内を明るくすることは搾乳環境の基本的整備事項で す。前搾り乳を床や尿溝に捨てることは、牛の周囲に乳房炎原因菌を汚染させることになるので行ってはいけません。 3)乳頭清拭 消毒液に浸した 一頭一枚のタオルで乳頭のみを 約30秒かけて清拭します。 乳頭清拭 の目的は、乳頭の汚れを落と し乳頭に 付着している細菌 数を減らすためです。清拭は搾 乳者から遠い方の 乳頭から行い、乳頭の側面だけ でなく乳頭口部分 を念入りに清拭することが大切 です。環境性乳房 炎が多い場合に主な原因は、乳 頭口が汚いことが要因となります。 清拭に用 いたタオルは必ず別のバケツ に入れ、 決して取り出した 同じバケツには戻してはいけま せん。日頃より乳房の毛刈りや毛焼きなどを行い、 乳 房を 常に 清潔 に保 つこ とで、 搾乳 前の 清拭 作業 は非常に楽になります。 殺 菌 効果 を十 分 に発 揮す るため に は、 使用 す る 殺 菌剤 の濃 度と お湯 の温 度は重 要で す。 一般 的な 殺 菌剤 とし て使 用さ れて いる次 亜塩 素酸 ナト リウ ムは200ppmに調整するため、6%液で300倍、 10%液で500倍に希釈して使用します。また、次 亜塩素酸ナトリウムは43℃以上になると殺菌効果 が低下するため、必ず35~40℃の温湯で希釈する こ とが 大切 です 。ま た、 清拭用 タオ ルは 、お 湯の 温度が低下しないようにジャークーラーや蓋付のポリバケツや発泡スチロールなどに入れて使用すると効果的です。 4)ペーパータオル又は脱水布タオルで乳頭を拭き余分な水分をとる 乳頭を洗浄殺菌した後、パーパータオルや脱水布タオルで乳頭の水分を拭き取る作業は、乳頭の細菌数をさらに減少さ せ、ライナースリップを防止する効果があり、乳房炎の新規感染を減らすために重要な作業です。なお、脱水布タオルを 使用する場合には、1頭1布で交換し清浄なタオルを使用します。最近、乳頭清拭タオル専用の除菌洗浄剤を用い洗濯機 で洗浄脱水したタオルを用いる方法が効率的で普及しています(参考資料)。 5)乳頭刺激開始から約60~90秒後にティートカップを装着する。 ティートカップの装着は、前搾り開始から約60~90秒後に行う。早すぎる装着はオキシトシンがまだ十分に放出させ てなく、乳房内圧も高まっていないので、搾乳開始時に乳頭にかかる真空度が高く過搾乳状態となり、乳頭先端の損傷を 引き起こす。遅すぎる装着は、オキシトシンの分泌が低下してからの装着となり、流量の低下を招き搾乳時間の延長につ 図 10 ユニットの装着 図9 乳頭の消毒・清拭

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ながる。結局過搾乳状態となり、乳頭先端の損傷を引き起こ す。 ティートカップ装着時には、空気の流入を最小限にするよ う注意しなければならない。空気の流入が多量に生じた場合、 牛乳配管の真空度に非周期的変動を引き起こすため、他の牛 の乳頭先端真空度に変動を起こし、泌乳のリズムに乱れを生 じさせる。これは、人為的にライナースリップを生じさせて いることと同じである。特に、搾乳システムの余裕排気量不 足している場合には、空気流入による真空度の変動はさらに 大きくなり、それが乳房炎の原因になる。空気流入を最小限にする正しいティートカップの装着方法を図12に示します。 また、装着時にクローの持ち方や、シェル(カップ)の持ち方が悪く、捻って装着してしまうと、ショートパルスチュ ーブの捻れや、乳頭の捻れが起こり、搾乳されなかったり、過搾乳や残乳の原因となります(図11)。 6)ユニットの調整 ティートカップを乳頭に装着したら、ユニットが牛に正しく付くようにするため、ロングミルクチューブを牛の体に沿 って肩部から抜けるようにフックやヒモなどで調整します。ユニットが乳房の真下に位置し、やや前方に引っ張られるよ うにします。なお、ロングミルクチューブは、リフトロスによる真空圧の低下を少なくするため適度な長さに調整してお きます。ユニット調整が上手くいけば搾乳スピードが速くなり、ライナースリップの発生が少なくなります。

ティートカップ装着の注意

(全国乳質改善協会「乳房炎の防除で乳質アップ」) 図12ティーとカップ装着の方法 図13 ミルクチューブ調整 図 14 ロングミルクチューブの調整が不適切でユニ ットがねじれる 図 11 捻れは 乳頭4本 同時に搾乳 が終了し ない原因 となり過搾乳や3本乳の原因となり得る

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7)ユニットの離脱 オ キ シ ト シ ン が 多 く 分 泌 さ れ て い る 5 分 以 内 で搾乳を終了させることが、乳頭に負担をかけず に最大乳量を搾る秘訣です。搾乳終了のタイミン グは、ブリードホールからの空気の流入音が止ん だ 時 又 は ク ロ ー に 出 て く る 生 乳 が 一 筋 の 糸 状 に なってクロー内壁を伝う時です。このタイミング で 常 に 注 意 を 払 う た め に も ク ロ ー は 透 明 で 中 が 見えること、一人で使用するユニットを通常2台 とすることが理想的です。ティートカップの離脱 は、真空を解除してからゆっくりと4本同時に離 脱するのが原則です。シャットオフバルブを閉じ、完全に真空を遮断して2~3秒(一呼吸)待って、乳頭先端真空度が 大気圧に戻り、ユニットの自然落下に合わせて離脱します。 真空を遮断しないか、遮断する否や引くようにティートカップを離脱することは、乳頭先端に高い真空度がかかること となり、乳頭に損傷を与えることになります。また離脱する瞬間に空気の流入が生じるため、ライナースリップと同じ現 象を生じさせることとになります。また、ユニット離脱後にクローに残った生乳を牛乳配管に送るためにエアーを入れる 行為は、人為的ライナースリップを引き起こす原因となるので行ってはいけません。 8)ポストディッピング 乳房炎の感染は、乳頭における乳房炎原因菌の生 菌数と深い関係があります。ディッピングの目的は、 乳 頭 皮 膚 及 び 乳 頭 管 に 付 着 し た 生 乳 中 の 細 菌 を 殺 菌し、搾乳から搾乳までの間、乳頭表面、乳頭口周 囲及び乳頭管への細菌の定着・増殖を抑制すること にあります。したがって、ティートカップ離脱直後 に効果の認められている薬剤を使用し、ディッパー を用いて乳頭全体をディッピングします。搾乳後の 乳頭口は、しばらく開いた状態であるばかりでなく、 乳 頭 管 に あ る ケ ラ チ ン 層 の 感 染 防 除 機 能 も 低 下 し ています。搾乳後は、ディッピングの効果を高める ため、しばらく起立させておく工夫が必要です。 ⑤ プレディッピング法による乳頭清拭 プレディッピング法は、環境性乳房炎の防除において効果があると報告されています。特にパーラー搾乳等で搾乳衛生 と効率化のために利用されていますが、多くのタイストール牛舎でも利用されるケースが増えています。しかし、不適切 な実施により搾乳衛生が悪化したり、使用する殺菌剤が生乳へ移行し残留を招いたりする危険性も指摘されており、実施 に当たっては、塗布した薬剤をしっかり拭き取るなど厳重な注意が必要です。 プレディッピングの方法は、ストリップカップに前搾り後、有効ヨウ素0.1%液でプレディッピングを行い、30秒間の コンタクトタイム(殺菌時間)をとった後、ペーパータオルで十分に拭き取るとされています。しかし、プレディッピン グ前の乳頭が糞や敷料で汚れている場合は、薬剤の殺菌効果が落ちるためタオル等で汚れを拭き取った上でプレディッピ 図 16 ポストディッピングの適切な方法 図15 ユニットの離脱方法

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ングを実施します。コンタクトタイムを取りすぎても良く拭き取れなくなるので、30秒を守り良く拭き取ることが大切 である。スプレー式は、ループ状のもの以外は乳頭全体をカバーできないので好ましくありません。ノンリターンディッ パーが推奨されます(図17)。 プレディッピングを導入しても泌乳生理を阻害しないことが重要であり、プレディッピング後30秒間のコンタクトタ イムをとることと、乳頭刺激後60~90秒でユニットを装着するという原則は必ず守ることが重要です。 図18はバケツとタオルを用いた乳頭清拭法からプレディッピングを用いた乳頭清拭法を取り入れて、搾乳作業を見直 した3農家におけるプレディッピングへの変更前後での乳頭清拭時間を比較したものです。プレディッピングへの変更に より乳頭清拭作業の効率性が上がり、ユニット装着のタイミングが早くなり、過搾乳に注意することで泌乳生理にあった 搾乳作業に改善されました。 図17 プレディッピング法(方変法ミネソタ法

図18 プレディッピング実施農家での搾乳効率の変化

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ルキングパーラーにおける搾乳手順と搾乳衛生 パーラーにおける搾乳手順と搾乳衛生は、基本的にはタイストール牛舎の搾乳方法と同じである。しかし、パーラーの 形式が個別退出か集団退出かにより搾乳方法が違ってくる。ここでは、広く普及している集団退出のパーラーにおける搾 乳方法について解説する。 例えば片側6頭で両側12頭のパーラーで2名で片側ずつ搾乳すると、まず、パーラーに入ってきた順に3頭を1グル ープにする。前から順番に前搾り、プレディッピングを3番目まで行う。その後、1番前の牛に戻りパーパータオルでふ き取りユニットを装着する。これを3番目の牛まで繰り返す。その後、4番目以降から3頭を1グループとして第2グル ープに移動し同様に行う。片側全ての牛にユニットを装着し終わったら、第1グループの自動離脱のタイミングを観察す る。クローに生乳が出ていない状態にもかかわらず自動離脱装置がうまく働かない場合は手動で離脱する。 6 搾乳立会における搾乳手順の確認ポイント 正しい搾乳手順の実践は、乳房炎の発生を減少させ、乳量を高め、乳質を高める最も安価な近道です。搾乳立会時に 「タイミング良く、衛生的な搾乳」が行われているか、搾乳手順を確認するとともに、牛の状態、ミルカーの稼働状況 も確認します。 そのため、搾乳立会においては、記録が重要であるため、農家の了承を得たうえで、搾乳作業をビデオまたはカメラ で撮影します。また、ユニットの着脱のタイミングや搾乳時間を計測するストップウォッチ、乳頭口を確認する手鏡、 配管等の口径を測定するノギス、ふき取り検査キット、乳汁サンプリングキット、PLテスターなどが必需品となりま す。 図20 プレディッピングを採用したパーラーにおける搾乳法(変法ミネソタ法) (MASTITIS CONTROL:十勝乳房炎協議会(2006)より)

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次に、搾乳立会において特に注意して確認すべき事項をあげます。 (1)前搾りからミルカー装着までは約1分以内です。そのタイミングを確認する。 ・ 前搾りの未実施、不十分 ・ 乳頭や乳頭周辺が汚れており、清拭に時間がかかる。 ・ 乳頭を拭き終わったら、その牛に装着するはずのユニットを遠くにおく。 ・ 「乳頭清拭」と「ミルカー装着」の搾乳作業の役割分担がある。 ・ 先までどんどん拭いていく。 (2)ライナースリップの発生は乳房炎に直結 します。乳頭口に細菌が侵入する可能性があり ます。 ライナースリップは搾乳中に乳頭とライナ ーゴムの間から空気が入り込む現象をいう。「ズ ル~、ズル~」と音がすれば分かりますが、多 くの場合殆ど音が聞こえません。 ライナースリップが生じると、空気流入によ り乳頭先端の急激な真空圧の変動を引き起こす。 ライナースリップによる空気流入のため、生乳 はエアゾール状の小滴“ドロップレッツ”とな って逆流し、クローを介して他の分房や、搾乳 中の他の牛のライナーに入って乳頭口に激しく 激突して乳頭先端を傷めたり、乳房炎原因菌の感染の機会を増やすことになります。 ライナースリップの原因として、次のことがあげられます。 ・ 乳房全体を水洗いする。 ・ 乳頭が濡れていてもミルカーを装着してしまう。 ・ ミルカー装着時、空気の流入が多い。 ・ ミルカー装着後、ユニットの位置を調節していない。 ・ 1スロープあたりの使用ユニット台数が多すぎる。 (繋ぎ飼い牛舎は注意!:牛乳配管口径2inch、1%勾配でユニット3台まで ・マシンストリッピングをしている。 ・分房ごとに搾り切りが違うので、1本ずつミルカーを外している。 ・ミルカー離脱の際、真空が切れるのを待たないでひったくる。

30

40

50

60

70

80

38

2台

2台

1台

1台

1台

1台

42

3

2

2

2

2

2

46

3

3

3

3

2

2

50

4

4

3

3

3

3

54

5

5

4

4

4

3

1スロープ当たりの配管の長さ(m)

内径

(mm)

最大使用可能ユニット数

図21 ドロップレッツの発生機序

(14)

(3)次のような状況はミルカー離脱のタイミングが遅れ“過搾乳”による乳頭傷害を起こします。 ・ 搾乳中、何度もバケツの洗浄液を交換に行くので忙しい(ミルカーの観察ができない!) ・ 一人で多くのユニットを使っている(みるかーの観察ができず手回りが遅い!) ・ 搾乳終了間際にミルカーを蹴落とす、蹴落とそうとする牛がいる ・ 5分以上ミルカーがついている ・ 射乳が終わったのに外そうとしない(気がつかない? 搾りきろうとする?) ハイラインミルカーを使用している場合、乳頭にかかる真空圧は、搾乳中、乳頭からの射乳量が多いと低下します。 また、ミルククローからパイプラインまで牛乳を引っ張り上げるために真空圧を消費されます。適切なシステムであると 射乳時には、クローにおける搾乳真空度は35~42kPaになります。大部分の乳頭口は40kPaで完全に開きます。それ でも、その程度の真空圧に乳頭を長い間さらすと、乳頭はうっ血してしまうためパルセーターが吸引とマッサージを繰り 返し乳頭への真空圧の負担を和らげます。 しかし、乳量が少なくなると真空圧が高 くなり、乳頭に過剰の血液が集まってうっ 血がひどくなります。長い間、この状態が 続くと、乳頭口は炎症を起こし細菌が繁殖 し乳房炎原因菌の巣になったり、更にひど くなると菌の侵入をバリアする乳頭管のケ ラチン層を破壊してしまいます。しかも、 かさぶたが出来るとポストディッピングの 効果も低下します。 ユニットのライナーゴムの口径の大きさ によって、過搾乳の程度は異なります。口 ケラチン層 乳頭括約筋

ケラチン層とフルステンベルグの

ロゼットは細菌の侵入を防御する

過搾乳で乳頭口が損傷

菌の侵入を助長

乳房炎!

乳頭 槽 乳頭 槽 フルステンベル グのロゼット 乳頭口 図 23 乳頭口の構造と過搾乳による乳頭口周辺の損傷

ライナースリップは大問題!

空気吸引

乳頭が痛い 搾乳時間が長くなる 乳頭が痛い 乳が上がる 生乳の飛沫が乳頭直撃 (時速50~60km)

生乳の逆流

細菌を含んだ生乳の飛 沫が乳頭に侵入

乳頭口の障害

ライナースリップ

個体の栄養(免疫)、飼養環境など

乳房炎

図22 ライナースリップの発生と乳房炎の発生機序

(15)

径の大きいライナーは過搾乳になると“はい上がり現象”が起き、乳頭の根元を締め付けてしまい、組織(筋肉、脂肪な ど)によってライナーに栓をする形になります。その結果、乳頭槽内も過剰の真空圧にさらされ、乳頭口を乳汁が出入り するきわめて深刻な状況になります。そのため、はい上がり現象を抑えるために重いミルククローを利用する場合がある が、今度はライナースリップの問題が生じます。 一方口径が小さいライナーは、過搾乳時にティートカップ内に入っていない乳頭の側面が大気圧に押されて乳頭の中間 が細くなり、ミルククローの重みも相まって乳頭槽内に陰圧がかかります。しかし、ミルククロー内圧程ではなく、口径 の大きいユニットよりダメージは少ないですが、ライナースリップが生じやすくなります。 (4)その他にこんな状況が見られませんか? ・ 一頭一布をしていない・・・・・・・・・・・・汚れや細菌を牛群に広げます。 ・ 搾乳手袋をはめない・・・・・・・・・・・・・手を洗っても細菌が落ちにくい。 ・ ディッピングが遅いか、付き方が悪い・・・・・乳頭口への細菌の侵入を防げない。 ・ 搾乳中、何にでも触れるけど手を洗わない・・・手に様々な細菌が付着し乳房炎の原因となる。 ・ 複数の搾乳者の搾乳方法が違う・・・・・・・・統一性がないため牛のストレスとなる。 ・ 搾乳後、ミルクフィルターが汚れている・・・・乳頭清拭の不完全、ユニットの脱落が多い。 搾乳衛生で重要なのは、できるだけ短時間で搾乳し、かつ乳頭に細菌を侵入させないために、基本に忠実に丁寧な搾乳 手順で行うことです。 (5) ミルクラインの牛乳の流れを確認しましょう。 牛乳が配管口径の半分以下の所をいつも安 定して流れる(層状流)だけの太さと勾配が 必要です。勾配はレシーバージャーに向かっ て少なくとも5/1,000以上(10mで5cmア ップ)とし、ハイラインの場合、配管の高さ は床から2m以内です。一般に、空気流速が 2~4m/秒を超えると生乳の表面に波が立 ち始め、スラグ流が発生する。スラグ流が発 生すると、牛乳配管内の真空度を2kpa以上 低下させ、乳頭先端真空度の変動をもたらし ます。 なお、現在、殆どの農場に設置されたミル カーでは配管はステンレス製であるため流れ を確認できない。唯一レシーバージャーの手前が透明な樹脂であるため、搾乳中この部分で牛乳の流れを確認します。

搾乳方法が

正し く

な い

搾乳時間が長く なる

搾乳は乳頭口から

細菌が侵入する 絶

好のチャ ンス

乳頭口が傷む

細菌は目に見えないので 、正し

い方法で侵入を 防ぐしかない

細菌の侵入

を防げない

乳房炎

図24 牛乳配管中の生乳の流れ方 (生産獣医療システム、搾乳システムの利用と管理、1998)

(16)

(6)自動離脱装置を用いる場合の落とし穴 搾乳自動離脱装置は搾乳終了時にある一定の乳汁流量になると自動的にユニットを乳頭から外す装置で労働軽減や過 搾乳防止を目的に普及が進んでいます。自動離脱装置が乳頭から外れるタイミングは機種によって異なりますが、問題と なるのは、自動離脱装置に任せっきりとなり、クローに殆ど牛乳が流下しなくなっても離脱装置が作動せず過搾乳となっ ている事例がみられます。標準的な設定流量はおよそ毎分200cc~500ccが多いようですが、離脱するタイミングが設定 値と異なっていたり、ばらついたりすると過搾乳や牛に対するストレスの原因になったりします。特に、最近は、乳頭に 負担をかけず早期に離脱することが乳頭損傷による乳房炎の発生予防につながることが理解されてきたことから、農家に よっては離脱乳量を 600cc~1000cc で作動させ搾乳時間を短縮させている農家もあり、搾乳時間は乳頭への負担は少な くてすみます。こうした場合、少なくとも12時間後にはまた搾乳をするため、乳房炎でなければ残乳は気にする必要は ありません。 7 搾乳衛生のモニタリング方法 月3回のバルク乳質検査成績や毎月の牛群検定成績やを用いて牛群全体の乳房炎の発生状況を把握します。バルク乳で あれば体細胞数 20 万/ml以下にコントロールされていればとりあえず良好といえますが、農家によっては体細胞数の 多い牛の乳を廃棄して出荷している場合(「バルキング」ともいいます)があり、体細胞数が適正であるからといって一 概に搾乳衛生が良好とは判断できません。牛群検定成績では、体細胞数はリニアスコアとして表示されていますが、スコ ア2以下にコントロールされているべきです。スコアー3以上の個体については、ミルクステーションで体細胞測定(セ ルカウンター)の実施、PL検査などで分房検査を行う必要があります。また、乳房炎の疑いがある場合には、担当獣医 師へ治療を依頼するとともに、必要に応じて細菌検査を家畜保健衛生所等へ依頼しましょう。原因菌の特定は、今後の乳 房炎対策に貴重な情報です。特に伝染性乳房炎の場合には早急に必要な対策を実施すべきです。 いずれにしても、体細胞数については、「どの牛、どの分房、どんな菌」まで確認しないと、本末転倒本来の検査の意 味がありありません。 バルク乳質検査では総菌数を検査しています。総菌数は通常 10万/ml 以下にコントロールされているべきです。増 加する要因としては、搾乳衛生の不適、ミルカーの洗浄不良、バルクの保冷状況、そして乳房炎発生が考えられます。多 くの場合、洗浄不良が原因で総菌数が変動します。また、乳房炎による総菌数の上昇は、主にレンサ球菌やプロトテカの 乳房炎で増加します。 表2 リニアスコアと乳房炎の目安

初産

2産以上

0

1 7

0 .0

0 .0

1

18

3 5

0 .0

0 .0

2

36

7 0

0 .0

0 .0

3

71

14 1

2 .1

2 .5

4

1 42

28 2

2 .6

3 .3

5

2 83

56 5

3 .0

3 .7

6

5 66

1, 13 1

3 .5

4 .1

7

1 ,1 32

2, 26 2

4 .9

5 .4

8

2 ,2 63

4, 52 5

8 .0

8 .4

9

4 ,5 26

14 .1

1 4. 8

乳房炎

要注意牛

健康牛

臨床的な

目安

体細胞 リニアスコ ア

体細胞数

(千/ ml )

乳量損失率 (% )

(社)家畜改良事業団HP,牛群検定成績の活用法より

(17)

総菌数が高い場合には、バルクの培養検査を実施することで、その原因が洗浄不良か、搾乳衛生の不適か、それとも乳 房炎の多発かなどの当たりをつけることができます。 また、バルク乳の培養検査は、乳質や乳房炎で問題のある農家(牛群)を調査するための最初のアプローチや改善後の 判定評価に有用ですので、是非取り入れて実施すべきモニタリング方法です。良好な搾乳衛生や乳房炎管理を実施してい る酪農家では、バルク乳の培養検査で生菌数は常に1000cfu/ml以下です。 (1)バルク乳の培養検査 定期的にバルク乳の細菌培養を実施することは、その時点でのバルク乳中に混在している細菌の種類と量を把握するこ とにより、牛群の乳房炎の問題、搾乳衛生、搾乳システムの洗浄、バルクの洗浄及び冷却機能などが評価できます。また、 乳質改善を実施する際の第1ステップとして、農場の搾乳衛生の概況を把握するうえでの利用や、乳房炎防除対策実施後 において、改善内容が遵守されているかのモニタリングに利用できます。 主な検査項目は、次の8項目である。詳細な検査方法については、簡易に実施できる選択培地が市販されているため、 成書等を参照してください。バルク乳由来細菌の菌数による判定例については、表 に示します。 バルク乳の生菌数が高くなる要因としては、搾乳システムの洗浄不良、バルクの冷却不良を疑う。また、耐熱性菌は搾 乳システムの洗浄不良の指標となる。搾乳システム・バルクの洗浄不良、バルクの冷却に問題がなく生菌数が高い場合に は、搾乳衛生に問題があるか潜在性乳房炎の発生が多いことなどが疑われます。また、経時的にバルク乳をモニターする ことで、牛群におけるStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、Streptococcus agalactiae(無乳性レンサ球菌)な どによる伝染性乳房炎感染牛の存在を確認することができます。培養成績の解釈は、具体的に次のように考えるとわかり やすい。 表3 ルク乳培養検査の対象項目 表4 バルク乳由来細菌の判定表 主に環境由 来(牛床、敷料、糞尿、水など) 大腸菌群(CO) SA以外の ブドウ球菌、主に乳房炎由来(毛、皮膚) 環境性ブドウ球菌(CNS) 伝染性乳房 炎由来 無乳性レンサ球菌(SAG) SAG以外 のレンサ球菌、環境(牛床、糞尿、水など)、乳房炎由来 環境性レンサ球菌(OS) 腐生菌(土 壌菌)で環境中に存在、主に環境(牛床、敷料、糞尿、水など) シュードモナス(PD) 伝染性乳房 炎由来 黄色ブドウ球菌(SA) 恒温槽で63℃30分処理後培養した細菌数 耐熱性菌(LPC) 生きている 細菌数(“総菌数”:死んだ菌も含まれる) 生菌数(SPC) 主に環境由 来(牛床、敷料、糞尿、水など) 大腸菌群(CO) SA以外の ブドウ球菌、主に乳房炎由来(毛、皮膚) 環境性ブドウ球菌(CNS) 伝染性乳房 炎由来 無乳性レンサ球菌(SAG) SAG以外 のレンサ球菌、環境(牛床、糞尿、水など)、乳房炎由来 環境性レンサ球菌(OS) 腐生菌(土 壌菌)で環境中に存在、主に環境(牛床、敷料、糞尿、水など) シュードモナス(PD) 伝染性乳房 炎由来 黄色ブドウ球菌(SA) 恒温槽で63℃30分処理後培養した細菌数 耐熱性菌(LPC) 生きている 細菌数(“総菌数”:死んだ菌も含まれる) 生菌数(SPC) 菌名( cf u/m l) 正 常(目標 )正 常(目標 )正 常(目標 )正 常(目標 ) やや多い 多い 非常に多い 判定 AAAA B C D 生菌数 0~ 50000~ 50000~ 50000~ 5000 ~1000 0 ~30000 > 30000 耐熱菌 数 0~ 500~ 500~ 500~ 50 ~150 ~500 > 500 無乳性 レンサ球菌 0~ 500~ 500~ 500~ 50 ~150 ~250 > 250 環境性 レンサ球菌 0~ 7000~ 7000~ 7000~ 700 ~1200 ~2000 > 2000 黄色ブ ドウ球菌 0~ 500~ 500~ 500~ 50 ~150 ~250 > 250 環境性 ブドウ球菌 0~ 3000~ 3000~ 3000~ 300 ~500 ~750 > 750 大腸菌 群 0~ 1000~ 1000~ 1000~ 100 ~400 ~700 > 700 シュー ドモナス 0~ 1000~ 1000~ 1000~ 100 ~400 ~700 > 700

*菌数:cfu=colony formation unit

(18)

・ 生菌数、耐熱生菌数、大腸菌群数(CO)が目標以下で、伝染性乳房炎原因菌も検出されない場合は、良好な搾 乳衛生と清浄な搾乳システムであることを示しています。 ・ 生菌数が高く、CO、環境性レンサ球菌、環境性ブドウ球菌も多く検出されるが、耐熱性菌は目標より低い場合 は、搾乳システムの洗浄は適切であるものの、生乳中への環境性細菌の汚染があることを示しており、搾乳衛生 の不良、特に、乳頭清拭の不適、搾乳中のユニットの脱落などが疑われます。また、未発見の乳房炎の感染があ り、それがバルク乳に投入されていることも想定されますが、この場合には、バルク乳中の体細胞数が高い値を 示します。 ・ 生菌数、耐熱性菌が高く、COなどの環境性細菌は目標以下の場合には、搾乳衛生は良好であるが、搾乳システ ム、バルクの洗浄不良に問題があることが予想される。 ・ 生菌数、耐熱菌数、COと他の環境性細菌の値がともに非常に高い場合には、搾乳システムの洗浄不良、搾乳衛 生の不良、バルクの洗浄不良などが疑われます。この場合はまず、バルク乳の冷却状態を確認し、再度サンプリ ングして検査することが必要です。 ・ 生菌数のみが異常に高く、耐熱性菌、COなどの環境性細菌は目標以下で、搾乳システムの洗浄にも問題が認め られない場合には、レンサ球菌性乳房炎やPrototheca zopfiiによる乳房炎の可能性がありますので、感染牛の特 定が必要となります。 ・ 伝染性乳房炎の原因菌(SA、SAG)が検出された場合には、感染牛の特定を行い、防除対策を行います。 (2)乳頭清拭前後のふき取りによる細菌検査 搾乳時の乳頭清拭は乳頭表面や乳頭口から汚れや細菌を取 り去り、限りなく無菌に近い状態にすることが、搾乳衛生上の 目的である。そこで搾乳立会時に乳頭清拭の効果を細菌学的に 客観的に評価し農家に提示することにより、搾乳衛生への意識 の向上のきっかけとなると思われる。そこで、搾乳立会時に4 ~5頭について、乳頭清拭前後でふき取り検査やスタンプ検査 を行うことを推奨します。なお、食品衛生の場面で使用される ATP値を測定するルミノメータの利用もよいでしょう。 ※表 の分離菌数の判定基準に基づく判定結果 冷 却 不 良 、 洗 浄 不 良 、 搾 乳 衛 生 不 良 非 常 に 多 い D 非 常 に 多 い D 非 常 に 多 い D

プ ロ ト セ カ 乳 房 炎 ? 正 常 範 囲 A 正 常 範 囲 A 非 常 に 多 い D

洗 浄 不 良 正 常 範 囲 A 多 い C 多 い C

洗 浄 は 良 好 、 搾 乳 衛 生 多 い C 正 常 範 囲 A 多 い C

良 好 正 常 範 囲 A 正 常 範 囲 A 正 常 範 囲 A

評 価 環 境 性 細 菌 数 耐 熱 性 菌 数 生 菌 数 冷 却 不 良 、 洗 浄 不 良 、 搾 乳 衛 生 不 良 非 常 に 多 い D 非 常 に 多 い D 非 常 に 多 い D

プ ロ ト セ カ 乳 房 炎 ? 正 常 範 囲 A 正 常 範 囲 A 非 常 に 多 い D

洗 浄 不 良 正 常 範 囲 A 多 い C 多 い C

洗 浄 は 良 好 、 搾 乳 衛 生 多 い C 正 常 範 囲 A 多 い C

良 好 正 常 範 囲 A 正 常 範 囲 A 正 常 範 囲 A

評 価 環 境 性 細 菌 数 耐 熱 性 菌 数 生 菌 数 ※ 表5 バルク乳培養検査による搾乳衛生の評価 Pre Post

(19)

(3)搾乳後にミルクフィルターの確認を! ミルクフィルターを開いて確認すると『搾乳作業の良否判 定』が行えます。なお、農家によっては、ミルクフィルター を洗浄して何回も再利用している場合や、再利用時に殺菌せ ずそのまま使用している場合もあり、生菌数の増加の原因に もなります。原則は毎回新品を使うことです。 参考文献・ホームページ 1)生産獣医療システム 乳牛1:(社)全国家畜畜産物衛生士同協会、1998 2)牛の乳房炎コントロール増補改訂版 ,浜名克巳 監訳:緑書房、2012 3)MASTITIS CONTROL:十勝乳房炎協議会、2006 4)営農改善技術資料第 32 集

良質乳生産のための「農場のトラブルシューティング」~安心、安全、

おいしい乳製品は高品質な生乳から:根室農業改良普及センター、

2004 年 http://www.nemuro.pref.hokkaido.lg.jp/ss/nkc/gijutsu/kankoubutu/nyusitu/index.htm 5)北海道ディリーマネージメントサービスHP:http://e-doto.com/hdms/index.html (参考:技術情報) 乳頭清拭に係る試験成績 成果名:搾乳時の乳頭清拭に清浄布タオルを用いると除菌効果が高い 要 約:搾乳時の乳頭清拭において塩素系アルカリ洗剤で洗濯した清浄布タオルを用いると、ペーパータオルに比べて除 菌効果が高く、2回清拭法により安定した高い除菌効果が得られる。 1 背景・ねらい 消費者の食品に対する安全・安心への関心の高まりに対応し、県産生乳を消費者にアピールするためには、衛生的 な乳質の向上による高品質化に努める必要です。こうした中で、搾乳時の乳頭清拭は、生乳の品質管理及び乳房炎防 除において基本的な技術ですが、農場によって技術的な違いにより衛生度に大きなバラツキが生じています。そこで、 適切な技術の普及と高位平準化を図るため、最近市販された乳頭清拭用布タオル専用の塩素系アルカリ洗剤で洗濯し た布タオルを用い、効果的な乳頭清拭法を検討しました。 5 具体的データ (1)ペーパータオルと清浄布タオルによる除菌効果の比較(試験1)

フィルターソックスで精度の確認

汚れが多い

汚れが多い

=拭き取りがあまい

=拭き取りがあまい

“高めよう!

プロの意識が

良い乳質”

(「信州の牛乳」品質向上スローガン 優秀賞作品 長野市 池田和子さん作)

(20)

畜産試験場の乳用牛群を用い、搾乳時に任意選定した牛(各1分房)を試験対象とした。乳頭消毒は、従来法(前 搾り→次亜塩素酸ソーダ 200ppm 液に浸漬した濡れタオルによる清拭消毒)及びプレディッピング法(ヨード剤 0.1% 液による浸漬消毒→前搾り)の2方法を用いた。乳頭消毒後の清拭資材として、ペーパータオル及び清浄布タオル の2種類を比較した。清浄布タオルは、水道水 43L に塩素系アルカリ洗剤(サンテックス)を 110g 加え、全自動洗 濯機で洗浄脱水処理(洗濯12 分、すすぎ1回、脱水1分)した水分約 50%のものである。清拭手技を統一するため、 ペーパータオルの場合は2枚重ねで、清浄布タオルの場合は1枚を用い、乳頭側面をひねる様に3回拭いた後、ペ ーパータオルは新しいものを2枚重ねで、清浄布タオルは裏面を使って乳頭先端部を数回拭くこととし、この一連 の手技をそれぞれ清拭1回とした。細菌検査は、消毒処置前(Pre)及び乳頭清拭後(Post)の乳頭表面10cm 2 を拭 き取り検査キット(ラスパーチェック:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)で拭き取り、10 倍及び10 2 倍希 釈液をハートインフュージョン寒天培地(日水)に接種し、37℃・24 時間好気培養を行い、乳頭表面1cm 2 当たりの 生菌数(cfu/cm 2

)を求めた。除菌効果は、除菌率((Pre 生菌数―Post 生菌数)/Pre 生菌数)、平均除菌率の変動 係数(CV)及び乳頭清拭後(Post)の生菌数[Log 10 cfu/cm 2 (相乗平均:GMcfu/cm 2 )]より評価した。 その結果、従来法では、ペーパータオルの平均除菌率 93.9%、CV:9.1、Post:2.22(GM:168)、清浄布タオルの 平均除菌率:97.1%、CV:8.1、Post:1.23(GM:17)であった。また、プレディッピング法では、ペーパータオル の平均除菌率:86.6%、CV:15.3、Post:2.77、(GM:592)、清浄布タオルの平均除菌率:95.2%、CV:8.0、Post: 2.06(GM:116)であり、従来法及びプレディッピング法の両方法において、清浄布タオルを用いた場合の除菌効果 が有意に高い傾向が認められた(表1)。 3.87 ±0.48 2.22 ± 0.93 93.9 ±8.5 3.69 ±0.72 1.23 ± 1.22 97.1 ±7.8 3.90 ±0.34 2.77 ± 0.48 86.6 ±13.3 3.95 ±0.64 2.06 ± 1.07 95.2 ±7.6 清浄布タオル ペーパータオル 清浄布タオル PD法 (168) (17) (592) (116) 39 38 (8831) 従来法 35 33 (7486) (4903) (7920) ペーパータオル 生菌数:Log cfu/cm 2 ±SD (相乗平均値) 乳頭消毒方法 清拭資材 試験数 (分房) 清拭前:Pre 清拭後:Post [15.3] [8.0] [変動係数] 平均除菌率 % [9.1] [8.1] A B A B A B A B * *:プレディッピング法  (AvsB:0.1%水準で有意) ( 2 ) 乳 頭 清 拭 に お け る 清 浄 布 タ オ ル 2 回 清 拭 の 組 合 せ 効 果 の 検 討 ( 試 験 2 ) 乳頭消毒として従来法及びプレディピング法を行った後、清浄布タオル2枚を用いた乳頭清拭を2回行う2回清 拭法を組み合わせた場合の除菌効果について、試験1で行った1回清拭による除菌効果と比較した。評価方法は試 験1と同様に実施した。 その結果、従来法とプレディッピング法に2回清拭法を組み合わせた場合、従来法では平均除菌率:98.4%、CV: 4.0、Post:0.56(GM:4)、プレディッピング法では平均除菌率:98.6%、CV:4.1、Post:0.64(GM:5)であり、 1回清拭法と比較して2回清拭法は、変動係数も小さく、有意に高い除菌効果が認められた(表2)。

表1

ペーパータオルと清浄布タオルによる除菌効果の比較

(平成23年 畜産試験場)

表2

清浄布タオル1回清拭と2回清拭の除菌効果の比較

(平成23年 畜産試験場)

(21)

3.69 ±0.72 1.23 ± 1.22 97.1 ±7.8 3.61 ±0.65 0.56 ± 0.92 98.4 ±3.9 3.95 ±0.64 2.06 ± 1.07 95.2 ±7.6 4.05 ±0.57 0.64 ± 1.04 98.6 ±4.0 乳頭消毒 清拭資材 試験数 (分房) 生菌数:Log cfu/cm 2 ±SD (相乗平均値) 平均除菌率 % 清拭前:Pre 清拭後:Post [変動係数] 従来法 1回清拭(試験1) 38 (4903) (17) [8.1] 2回清拭 32 (4080) (4) [4.0] PD法 1回清拭(試験1) 38 (8831) (116) [8.0] 2回清拭 33 (11172) (5) [4.1] A B a b * *:プレディッピング法 A B AvsB:0.1%水準で有意 avs b:5%水準で有意 ( 3 ) ダ ブ ル デ ィ ッ ピ ン グ 法 と 清 浄 布 タ オ ル 清 拭 の 組 合 せ 効 果 の 検 討 ( 試 験 3 ) プ レ デ ィ ッ ピ ン グ 法 に よ る 乳 頭 消 毒 の 効 果 を 高 め る た め の 変 法 で あ る ダ ブ ル デ ィ ッ ピ ン グ 法 ( ヨ ー ド 剤 0 . 1 % 液 に よ る 浸 漬 殺 菌 → 前 搾 り → ヨ ー ド 剤 0 . 1 % 液 に よ る 再 浸 漬 殺 菌 )に お い て 、清 浄 布 タ オ ル を 用 い た 1 回 清 拭 法 及 び 2 回 清 拭 法 を 組 合 せ た 方 法 を 実 施 し 、試 験 2 の プ レ デ ィ ッ ピ ン グ 法 に よ る 清 浄 布 タ オ ル を 用 い た 2 回 清 拭 法 と 比 較 し た 。 評 価 方 法 は 試 験 1 と 同 様 に 評 価 し た 。 そ の 結 果 、 ダ ブ ル デ ィ ッ ピ ン グ 法 の 清 浄 布 タ オ ル に よ る 1 回 清 拭 法 で は 平 均 除 菌 率 : 9 8 . 8 % 、 C V : 3 . 0 、 P o s t: 1 . 0 8( G M: 1 2 ) 、 2 回 清 拭 法 で は 平 均 除 菌 率 : 9 9 . 4 % 、 C V: 1 . 6 、 P o s t: 0 . 8 2( G M: 7 ) で あ り 、 両 方 法 と も 、 プ レ デ ィ ッ ピ ン グ 法 の 清 浄 布 タ オ ル 2 回 清 拭 法 と 同 等 に 安 定 し た 高 い 除 菌 効 果 が 認 め ら れ た ( 表 3 ) 。 4.05 ±0.57 0.64 ± 1.04 98.6 ±4.0 3.89 ±0.51 1.08 ± 0.90 98.8 ±2.9 4.08 ±0.35 0.82 ± 1.00 99.4 ±1.5 [4.1] PD法 (試験2) 2回清拭 33 (11172) (5) 平均除菌率 % 清拭前:Pre 清拭後:Post [変動係数] 乳頭消毒 清拭資材 試験数 (分房) 生菌数:Log cfu/cm 2 ±SD (相乗平均値) (12) [3.0] 2回清拭 37 (11895) (7) [1.6] 2PD法 1回清拭 31 (7745) ** *:プレディッピング法 **:ダブルディッピング法 * (4)清浄布タオルを用いた乳頭清拭法の作業時間の比較(試験4) 脱 水 清 拭 タ オ ル を 用 い た 各 清 拭 法 に つ い て 、ユ ニ ッ ト 装 着 ま で の 作 業 時 間 を 計 測 し 比 較 し た 。そ の 結 果 、従 来 法 及 び プ レ デ ィ ッ ピ ン グ 法 に お い て は 、清 浄 布 タ オ ル の 1 回 清 拭 法 及 び 2 回 清 拭 法 と も 1 分 3 0 秒 以 内 で 実 施 可 能 で あ る が 、 ダ ブ ル デ ィ ッ ピ ン グ 法 で は 、 そ れ を 超 過 し 、 2 回 清 拭 法 で は 2 分 程 度 か か る 場 合 が あ る た め 、 ユ ニ ッ ト 装 着 の タ イ ミ ン グ が 遅 れ る 可 能 性 が 推 察 さ れ た ( 図 2 ) 。

表3

清浄布タオルを用いたダブルディッピング法の除菌効果

(平成23年 畜産試験場)

01:00

01:30

02:00

分:秒

(22)

2 成果の内容・特徴 (1)乳頭清拭用布タオル専用の塩素系アルカリ洗剤で洗濯した布タオル(以下、「清浄布タオル」という。)を用いる乳 頭清拭法は、ペーパータオルに比べ除菌効果が高い(表1) (2)従来法及びプレディッピング法においては、乳頭清拭に清浄布タオルの2回清拭法を組み合わせることにより、安 定した高い除菌効果が得られる(表2)。 (3)ダブルディッピング法において清浄布タオルを用いる場合には、1回清拭法で行うことによりユニット装着のタイ ミングが遅れることなく、安定した高い除菌効果が得られる(表3、図2)。

1回清拭

2回清拭

1回清拭

2回清拭

1回清拭

2回清拭

※△:やや不適、○:適す、◎:非常に適す

清浄布タオル

清浄布タオル

もみ洗い・前搾り

消毒液に浸した布タオ

ルで乳頭を清拭・殺菌

ヨード剤で乳頭を

再度浸漬殺菌

清浄布タオル

もみ洗い・前搾り

従来法

プレディッピング法

ダブルディッピング法

前搾り

ヨード剤で乳頭を

浸漬殺菌

ヨード剤で乳頭を

浸漬殺菌

作業時間

除菌効果

安定性

3 利用上の留意点 (1)乳頭清拭用布タオル専用の塩素系アルカリ洗剤(商品名:サンテックス)はメーカーの指示している使用量を用い て洗浄・脱水処理(洗濯)すること。 (2)搾乳時に乳房、乳頭の汚染が激しい場合には、あらかじめ手やタオル等で汚れを落とした上で行うこと。 (3)清浄布タオルを用いる場合でも、搾乳手順を適性に行い、搾乳衛生を意識した作業体系で行うこと。 (4)この技術は、試験場または専門技術員とよく相談の上利用すること。

図1

清浄布タオルを用いた乳頭清拭法の特性

(平成

23

畜産試験場)

図2

清浄布タオルを用いた乳頭清拭法におけるユニット装着までの作業時間

(平成23年 畜産試験場)

参照

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