香川県における訪花性ハナアブ類の季節消長と花利用様式
田井謙一郎,市野隆雄
SeasonalpatternOfnowerutilizationinhoverflies(Diptera:$yfPhidae)
inKagawaPrefbcture,Japan
Ken’itirOuTAI,1払kaoITINO
A periodical丘eld sampling of hoverilies and other nower−Visitinginsects was carIied outin1997at a
SeCOndaryoakfbrestinKagawa,SouthJapan・Atotalof247individualsof22syrphidspecieswereco11ected
魚ommidMaytomidNovember ThesyrphidfaunawascharacterizedbythedominanceofgenusEbistr叩he
The seasonalpopulationnuctuationinsyrphidswasa脆ctedbyflowenngphenologyofplants,havingtwo
Peaksin sprlngandautumnTheprlmaryreSOurCeflowers fbrsyrphidswereDeutziasieboldinaandEYigeYOn
annulsinsprlng,andA5teryOmenaandA5terageratOidesinautumn
Most of the syrphid species tended to visit flowers with open nectar or very shorZ tubes and become the
dominate visitors there although some small−Sized hovernies visited and crawledinto deepflowersInless
abundantbutprefbrredplant species,laIge−Sizedhoverfliesmonopolizedwhile sma11−Sizedoneswere dominant Onabundantplants小ThismaybeinterpretedasaconsequenceofinteISPeCificcompetitionfbrnowerresources KeyWords:nowerlngPhenology,Oakwoods,POllination,SyrPhidfly, 本植物で株数が500株以上の場合,植物1種あたりの訪花 昆虫採集時間を15分間と決めて採集を行った.訪花を受 けていた植物については,植物種名,開花株数を記録し た小 閑花植物株数は100株までは直接カウントし,それ 以上は平均的な開花状態にある1m2内の株数を数え全面
積あたりに換算した.また,樹高5m以上の高木へのハ
ナアブ等の訪花も見られたが,採集が困難であったため, 基本的に調査対象から除外した.ハナアブ類の個体の大きさについては3段階に分け,体長が12m以上のものを
大型,8∼12mmを中型,8mm以下のものを小型とした.
緒 日本産ハナバチ類の日本各地における種類構成,季節 消長,訪花性については一・連の定量的な調査がおこなわ れてきている(1).しかし,ハナパテと同様に重要な送粉 着であるハナアブ類については年間を通じた定期調査は これまでほとんど行われていない(2) 本研究では,訪花性ハナアブ類の季節消長および花と の相互関係を明らかにする.材料および方法
調査地である香川県木田郡三木町ニノ坂は標高300∼400m,周囲をコナラ(e〟e′C〟55errαね),アベマキ
(e〃grC〟‡Vα′血わ〟わ)などの落葉広葉樹林に囲まれ,その 間にモザイク状にヒノキ(Cゐα∽αeC汐α′よ50如〟5d乃dJ)の 植林地が分布する谷あいの部落である. 調査は部落の水田と周囲の広葉樹林との境界に沿ってはしる農道沿いに約15kmの範囲で行った.1997年5月12
日から11月18日まで,一サ月あたり3∼4回,晴れた日
の10時から14時の間,調査地内の開花植物を訪れたハナ アブ類およびその他の訪花昆虫類を基本的により好みせ ず見つけ採りした.開花植物が木本植物の,あるいは草 結果および考察 ハナアブ類の種矩構成および季節消長調査期間の間に採集されたハナアブ科は22種247個体,
被訪花植物は10科26種であった.付録1に各種訪花昆虫
の採集個体数を採集日ごと,植物ごとに示した.
ハナアブ採集個体数の内訳は,ホソヒラタアブ(卑∼−
‡Jr叩力eあα才知Jd)84個体,カオグロオビホソヒラタアブ
(砂5f′叩カeo∽聯乃!f∫)55個体,ハナアブ(か加地明海
tenaxr)37個体,ハナアブ科(Syrphidae)sp1,26個体が
上位4種であった.ハナアブ類全体の個体数と開花植物 株数はほぼ同じような季節変動パタ、−ンを示した(図1).香川大学農学部学術報告 第52巻(2000) 72 プ別の訪花割合を図2に示した.ハナアブ類はコウゾリ ナ(Pわr∫j触′αCわfde5),ヤナギタデ(呵γgO乃〟椚朗j椚e∫), マルバウツギ(伽〟緩fαjよeみoJd加α),ハハコグサ(G乃呼ゐα− J∼〟別々汐OJe〟C〟∽),イナカギク(A5Jgrαge′αわ王政5)の5 種の植物上で存在率が50%を越え,ウツボグサ(Pr〃托eJJd 棚如血)とコメナモミ(∫よege∫あgcたjαgJαあrど5Ce那)の2 種ではハチ類(主にハナソ1チ類)の割合が50%を越えて いた.これはハナバチ類とハナアブ類で花の好みの違い があることを反映していると思われる.ハナバチ類が比 較的長い口吻をもつのに対七,ハナアブ類はなめ型口器 なので,筒状花であるウツボグサなどでは個体数が少な かったものと思われる.ウツボグサにはコマルハナパテ (β0∽あ〟∫αrどdg乃5)やトラマルハナバチ(放抑血揖d偏那胡) が多く,コメナモミにはニホンミツバチ(木南α閃朋) のみが訪れて−おり,ハナバチ媒植物種間での訪花ハナバ チ相の違いも認められた(付録1).コメナモミは皿状 花であるにも関わらず,訪れるハナアブ類の個体数は少 なかった. ハナアブ科の体サイズ別訪花植物 ハナアブ類をその体サイズから3段階に分け,各サイ
ズのハナアブによる7種の植物への訪花割合を図3に示
した.この7種はもっともハナアブ類による訪花が多
かったものであり,このうちコウゾリナとヤナギタデ以いずれも8月を境として二山型となり,8月にほとんど
開花植物が存在しなかったことがハナアブ類の個体数減少につながっていると考えられた.しかし,細かく見る
と,5月から7月ではハナアブ類の個体数のピ・−ク(5
月)と,開花植物株数のピ・−ク(7月)とが異なってい
た.この理由として,5月には木本植物であるマルバウ
ツギ(エk〟托よα5ieあ0〟fα乃α)25株が開花しており,開花植
物株数に比べてハナアブ類の個体数が多くなったものと考えられる(付録1).−L方,7月にはヒメジョオン
(gr吻邪明朗肌皿)が多数開花していたが,植物株数の割
にハナアブ類の訪花頻度は低かった(付録1).
秋にはヨメナ(A∫㍑′γ0肌e乃α),イナカギク(A5Je′・
αge7αfoよ血5)の開花に伴いハナアブ類の個体数が増加した.他に重要な餅源植物が認められなかったことから,
本調査地におけるハナアブ類にとって秋の主な食料源はこの2種の植物だと考え.られる(付録1).ただし,11
月にはビワ(かわ抽′γαノ叩0乃よcd)が3株開花しており,
かなりの数のハナアブ類が飛来していたが,高所のため,
ハナアブ類を採集できたのはわずか3本の当年枝だけ
だった.一・股的に木本植物での採集には限界があり,今
後,実験方法を改良する必要がある.
各種植物の訪花昆虫相昆虫の訪花頻度の高かった植物種ごとに,昆虫グル・−・
ハナアブ個体数
6月 7月 8月 9月 10月 11月 図1 ハナアブ個体数および開花植物株数の季節消長コウゾリナ ヤナギタデ マルバウツギ ハハコクサ イナカギク ヨメナ ヒメジョオン ウツボグサ コメナモミ 田ハナアブ科 ロハチ目 臼その他の昆虫 20 訪花個体数割合(%) 図2 訪花頻度の高い植物上位9種における訪花昆虫個体数のグループ別割合 田大型(12ミリ以上) マルバウツギ 口中型(8∼12ミリ) イナカギク 田小型(8ミリ以下) ハハコグサ コウゾリナ ヒメジョオン ヤナギタデ 20 40 60 80 100 訪花個体数割合(%) 図3 ハナアブ訪花頻度の高い植物上位7種へのハナアブ類の体サイズ別訪花割合
香川大学農学部学術報告 第52巻(2000) 74 外の5種は皿状花であった.ヨメナ,マルバウツギ,イ ナカギクには大型のハナアブ類が50%以上の割合で存在 していた.−・方,ハハコグサ,コウゾリナ,ヒメジョオ ン,ヤナギタデでは中型,小型の個体が大半を占めた. ハナアブ類昆虫のなかにはひとつの花に1個体という ようなかたちでなわばりをもつものがあり,このような 場合,体サイズが大きいものほど強いという強弱関係が 成立することが知られて−いる(3).ヨメナ,マルバウツギ, イナカギクは花当たりの訪花ハナアブ数が多いことから 見て,ハナアブ類にとって魅力のある餅源だと考えられ る(付録1).これらの植物は小型のハナアブ類にも訪 花可能であることから,この3種植物上において大型の ハナアブが優先していたのは大型個体が小型個体を排除 していた可能性が高い.一・方,ヒメジョオン,ハハコグ サもハナアブ類にとっては良い餌源だと尽われるが,こ
の両者の開花時期である5月から7月には全体の開花数
が非常に多かったため(付録1),ハナアブ間で競争が 起こるに至らず,よって小型ハナアブが多く見られたと 考えられる.コウゾリナやヤナギタデで小型ハナアブが 多かったのは,この2種の花蜜が花筒の奥に存在し,大 型の種類が採餌活動を行いにくかったためだろう. 摘 要 四国の瀬戸内地方に典型的な二次林(コナラ,アベマキ群落)周辺において1997年5月から11月まで月3∼4
回の訪花昆虫の定期採集を行い,10科26種の植物からハ ナアブ科22種247個体を得た.ヒラタアブ属(砂よ5か′叩ゐe) が種数,個体数ともに最も多く,優先していた. ハナアブ類個体数の季節消長は開花植物数の消長に大 きく左右され,春と秋に2つの山が認められた.春の主 要な訪花植物はマルバウツギとヒメジョオン,秋はヨメ ナとイナカギクであった. ハナアブ類はハナバチ類と異なり,皿状花に集中的に 訪れ,そこでの優先グル・−・プとなる傾向にあった.しか し,小型のハナマブは皿状花ではない相物種にも訪れて いた.植物種によって,大型のハナアブ類が優先するも のと,中型,小型個体も訪れるものとがあったが,これ は花資源をめぐる種間競争の結果として理解することが 可能であった. 謝 辞 ハナアブ類の一・部を同定していただいた池崎善博氏 (長崎市)に感謝いたします.また調査にあたってご協 力いただいた香川大学農学部応用昆虫学研究室の学生, 院生諸氏に感謝いたします.引 用 文 献
(1)伊宝真理子,山根爽−・:茨城県御前山山麓における野生ハ ナバチ相とその生態学的調査ル 茨城大学教育学部紀要(自 然科学),34,57−74(1985). (2)KÅT・0,M”,MIURA,R‥Floweringphenologyandinsectcom− munity at a threatened naturallowiand maTSh at Nakaikemiin Tsuruga,JapanContribution fiOm the BiologlCalLabora− tory,KyotoUniveISity,29,1−48(1996).
(3)KIKUTI,T:Studies on the coation amonginsects visiting nowers,2Dominancerelationshipin the so−Calleddronefly gIOuP.Sci,RepTbhokuUniv.SeI,4(Biol‖),28,47−51(1962)
付録1 採集日ごとの各植物種における訪花昆虫相
調生田 開花植物種 植物株数 訪花昆虫体 3415263152241211−7616465121131771733332523211111215713112232213521224125 個
数 12−May ‘)8血由b肋〝き 25 Vb几JC8血血虎わ〃a 匂痛か叩血れ出血相加 白兎ねわ爪γ旧!8〝8ズ ざわ爪OJ竹加古由仁dbr other fliss Othorb08S8ndwaps ⊥8肋γr叩〟めa血〟ざW〟由 抽伽〟ざ8叩‘此〟侶飴 伽血糊加〃Jgr08p由Jo爪aね 肋朋血抽β船頭潤 Oth8rb(〉¢Sandwap$ ○廿帽rtlil)5 肋ねわ爪γ血細〃aズ 如80おco〝伯8 角呵押=叩畑傭ざC血山ざ 触拍仏所′由ね〃dズ Oth(汀fli()S 匂)鹿〝印加如〝eaは 動地血町由肋鳩 和郎d8S¢○′dね8 0thl)rtlil)S 肋ねわ爪γ血お〃飢 占わ血打印加由〟oaね 匂始血叩加=晦和明通血仇離 軸の血α〉′P/飴貯 Oth8rflies Othorb00Sandwap$ 動地ぬ町由励愉 β○椚b〟ざd/yo/写〟ざ 軸のぬざCO付〟aβ 匂始〝qp加〝/伊■○即ぬナウ椚a拍 モp鹿打印加如〟○きね Sわ〝TOJ面血=ぬ00Jo′ Othorb㈹Sandw8P$ 匂始相即血れ鮎血はね 仙購仙加逓触両削 ぎわノ刀○/九かI8血coわ′ 印血糊加由〟8■ね /ね〃〟〃C山さaαTざ 500 PぬJ癒月毎/苫Cノ○ノ由5 30 α侍血m血p卯/c〟仰 23 伽即めa仇〟m爪〟ぬepざ 1000 19−May ‘ね血由加肋〝a 25 月わJ鹿〟タ侶doノぬざ 30 」す甲○血∂即 1 伽血m如○〝/Clノ仰 25 ⊥8C〟CきざrOわ〝/ね′8 300 α間血娩仰〝M眈明S lOOO 由卸′の∬J〝〟〟ざ 30 26・May G〝如a〟l〝I肌仙加騨 1500 18甲○由ヱ8甲 1 β8〟Jヱ由由bo肋〝∂ 7 動地血町血軌愉 〟b甜血血膵船頭肌 510〝IOJ血加=地肌戒′ 触力由摺¢わ加ざ 30 匂7鹿打叩加〝呼rO叩血わ爪きね α血伽○〝血〟爪 30 飢ね伽〟ざ叩l戚頭侶鹿 帥ね血爪′血ね〝〟 白々e/○〝〟I〝〟〟さ 20 仙矧m血血‖加ゆ朋 Co叩○ざ〟aさ即 20 放ねわ椚γはね〃丘Y 抽A/¢鵬/¢dぬ〃a 印血打印加〟/prO叩庵わ爪8は 占わ鹿打画8如伽■ね ぎわ〝IO伽さ血¢○わ′ 由/卵′胡†dJm〟〟ざ 250 伽血伽○〟ノc仰 4 Co所々O血○印 3 日c〟CJさ!○/○〟/ね帽 30 〟8鹿野Od8〝〟c〟血は 6 帥坤○〝帥叩ぬわ爪β細 励如血叩ぬ肋旭 励如血叩由肋Ⅷ 匂鹿坤○〃卸○印面わ爪■ね 匂始㈲叩血hお血はね 帥〝印加〃†タrO画ざわ椚■檜 匂)鹿打印加〃㊥′○叩鹿わ爪aね β○〝Iム〟さ仙8胤ざ 命血糊加血さ〟08ね 司叩頭血如卜即− 動地血町血勧愉 匂通加叩加=海関明通血爪鋸 β○〝I血ノ写伽J写〟ざ β○椚ムIJざ腑ク朋 6・Jun 18■・Jun 蝕血m血po〝/¢〝仰 50 帥′∽訂I〃〟〟ざ 2500 23−Jun Oお山仰血p〝Iね〝爪 70 8 由画仰山/∫ 2500 匂〉血打印加ね〟タβ抽 斗仰血ぬ○即丁 励如血叩血肋愉 匂始打印加〝帥叩虎JO椚aね (お椚ね○/細田ね飴 α虚血爪血po〝/c〟爪 100 帥〝印加〝匂′○叩由わ爪8は β○/刀β〟ざ朗ね〝ざ香川大学農学部学術報告 第52巻(2000) 76 調査日 開花植物播 植物株数 3・Jul 白々さrO〃a〝〝〟〟ざ 2000 訪花屋虫 伽鹿〝Cp加〝/♂′08p/SJク爪さは Sわ〝70Jカわa血co/○′ 什○爪きC血s′8ざ○〃/C(ノS C甘化Ⅵ〝ほ旧 l/肋加ゎ8ね Oth8「b()8Sandwaps β○〝Iム〟ざ8/由〃ざ 伽ノS〝op加加〟8aね 軸ね8′印加′由爪8CrO卵ざr訂 伽ノs打印加〝ノダ「08pJSJo爪8r∂ ざro/〃○/血竹a血co/0′ Cさわ〝血aタ OJ〟○′如8ざa〃d岬一S 5ro爪ク/血∽a血co/0/ 5帥ae′印加/溜爪aC〝g∂SJ8r 和血脚叩加/ぼ爪aC′Ogaざータ′ 肋伽ムaね Cさわ〝血a8 0thQrb8eSandwaps 伽爪∂C万〟ざγeSO〃/c〟ざ 5Jク爪OJカ〟ほ(〟scク/0′ ○肋e′加8ざ8〃d〝8pざ 和厄8/ppわ/凋爪きC′○占愴Sr針■ Oth8rヒ伯色Sandwaps β○/刀ム〟ざa/ぬ〃S 和〟a∂′○〆IO/旧〟旭打関都満′ ざわ爪○/わ加点d悸COJo′ Ceわ〃ノ〝a8 数
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調査日 開花植物種 植物株数 訪花昆虫 〟聯血琵両れ帽鹿 帥!′印加ね〝8aは 印加8√印加I/ね/m川〟はぎ打J 仲仕c8侶〃a Oけ沌rfl始$ OthorbQ8$andwaps 紳ノぬ∂5pβ 亡p鹿J「印加由〝eaね 〟聯5p鹿ヱ即8摘 み伊カノぬさ叩2 山妙叫油血血仰膵q血叩/8SJ「伯山SU 白兎ねわ爪γ盾ね〝aズ 5JO〝70/わ加点鵬COわ′ ∼鹿c8用〝∂ 句叩血(ね旧印∂ β○〝1血β㌦ゾ∂J等〟∫ a抽∽血鋸 缶政殉抽出知他紙 み血聞′qP/JO′ね/m抑〟はS〝丁 〟聯5p/ざヱ○〝∂は C8わ〃血∂8 白油柑叩血日出血相拍 句/岬〟/由○叩∂ 白描r∂/○爪′周一8〃8ズ 郎鹿cや躇〝8 Sわ椚○/伽〝a dぼC()/¢′ Oth8r”i◎S 数