経営学実地研究 報告
地域活性化「出雲崎プロジェクト 天領の里」
観光経営学部 特任教授大内 斎之
観光経営学部 4年笹田 倫子
プロジェクト参加者 観光経営学部 2年兒玉あすか
観光経営学部 2年森山 寛子
1.はじめに
全区津々浦々で「地域活性化」の言葉が、飛び交う中で果たして特効薬があるのか。どこもかし も「地域活性化」というものの、「言うは易く行うは難し」と言わざるを得ない。それは、それぞ れの地域には地域なりの事情があり、「十人十色」と同じように「十ヶ所十色」であるかのように、 ケースバイケースであるからと思わざるを得ない。そこで、目線を変えることでなにか見出すもの があるのではないか、なにかこれまで見えなかったものが、みえるようなヒントがどこかに隠され ているのではないか。いろんな角度から地域をあらためて見直してみる。そんな取り組みを実践し たのがこの「出雲崎プロジェクト 天領の里」である。今回この経営学実地研究1(以下、実地研究) として取り組んだのは、新潟県三島郡出雲崎町の「道の駅 越後出雲崎 天領の里」(以下、天領 の里)であった。参加した学生は、4年生の笹田倫子、2年生の兒玉あすか、同じく2年生の森山 寛子の3人である。学生は現地に出向いて、施設等を見学し、関係者にインタビューし、利用者に アンケートを行って、学生目線で問題点を掘り起こして、その当該地域及び当該施設の将来像を探 ることを目指したのである。 さて、この実地研究は、新潟経営大学(以下、経営大学)に新潟県三島郡出雲崎町の天領の里の 支配人が足を運び、調査研究を藪下学部長に直接「活性化策を学生目線で見出して欲しい」と要請 したことが発端となった。経営大学は、これまで胎内市などにおいて実地研究で実績をあげている 2。こうした直接関係者からの要請でスタートした研究は、5月から半年間という短い期間の中で 行われた。 本稿3の目的は、実地研究において学生がなにをどのような点にポイントをおいて問題点を洗い 出し、将来につながるような提案を行ったのかを報告することにあり、また実地研究で培ったノウ ハウを次年度以降にもつなげていくための課題を抽出することにある。2.出雲崎町の概要と観光
新潟県は、上越、中越、下越と地区が3つに分類されているが、出雲崎町は、新潟県の中越地方 に位置しており、日本海に面し、長岡市と柏崎市に隣接している。面積は44.38㎢で、人口は4,364人4である。年齢3区分でみると、生産年齢人口5・年少人口6の減少が続き、老年人口7も2000年をピー クに減少している8。新潟県の老年人口は、2018年31.9%9となっているが、出雲崎町はさらに上回 り40.39%10と、10ポイント高くなっているのである。 産業別比率でみると出雲崎町は、第一次産業が9.7%、第二次産業が32.3%、第三次産業が57.8% となっており、中でもサービス業が全体の28.7%、卸売・小売業・飲食店の占める割合が、全体の 19.4%となっている。出雲崎町は第三次産業を中心とした町であることがわかる。 町のホームページによれば、観光スポットと町があげているのは「海水浴」、「ゴルフ場」、「出雲 崎漁港」、「良寛堂」、「良寛記念館」、「良寛めぐり」、「良寛と夕日の丘公園」、「天領の里」「出雲崎 石油記念館」、「芭蕉園」、「妻入りの街並み」である。詳細については町のホームページを参照して もらいたいが、観光スポットの名称を見ただけでも歴史的な施設が多いことが一目瞭然であり、若 者向けというよりも高齢者向けという印象である。
3.大学生による出雲崎町のイメージ調査
2章においては、出雲崎町の老年人口が新潟県の平均に比べ10ポイント高く、40.39%で10人の うち4人が65歳以上という、出雲崎町が高齢の町であることが明らかとなった。そして町のホーム ページからは観光スポットをのぞいてみると、良寛に関する施設が充実しているものの、若者向け というより高齢者向けの施設が多くあることが印象的だ。 それでは実際に、20歳代前後の経営大学生に出雲崎町に対して、どのようなイメージを持ってい るのかイメージ調査を試みた。調査方法は、模造紙の真ん中に出雲崎と書いて、「自然・地理」、「観 光」、「生活・習慣」、「歴史・伝統」と4分割にして、思いついたことを制限なく、1年生、2年生、 3・4年に書いてもらった。なお、2年生は3グループに分けて3枚にした。なお、ひとグループ 4~5人である。 写真1は、1年生が書いた出雲崎町のイメージシートである。全体を見回してみると、第一印象 として、空白が目立っている。記述が少ない中で『観光』は、「天領の里」、「道の駅っぽい」、「温泉」、 「看板を見た(ことがある)」と記述されているが、それ以外はなかった。「自然・地理」からイメー ジするものとしては、「海と山がある」、「標高高そう」、「どこにあるの?」が書かれている。『歴史・ 伝統』からイメージするものは、『城がありそう』があげられた。『生活・習慣』からイメージされ るものは、「名産品がわからない」、「若者いなさそう」、「熊食いそう」、「米がおいしそう」、「鱈で んぶ」が書かれている。よく共感したキーワードとして、「天領の里」、ほぼ全員が共感したキーワー ドが「どこにあるの?」であった。 このイメージ調査からわかることは、1年生にとって出雲崎町は遠い存在であることがわかる。 それを表わす言葉として、「どこにあるの?」である。この言葉を書いた学生が、県内出身者か県 外出身者がどうかは定かではないが、出雲崎町の場所がわからない学生がいるというのが、現状で あることは間違いのない事実である。また、『生活・習慣』では、「若者がいなさそう」と書かれて おり、なぜこのようなイメージがあるのかについては、不明だが高齢地域というイメージがあることがわかる。 写真2は2年生が書いた出雲崎町のイメージシートである。1年生のイメージ調査と同様に、空 白が目立つことが特徴である。書いたイメージを見ると、『観光』についてのイメージは「ジェロ」 と書かれている。「ジェロ」は、2008年にデビューしたアメリカ合衆国・ペンシルバニア州ピッツバー グ出身の演歌歌手である。デビュー曲の「海雪(うみゆき)」がヒットして一躍黒人演歌歌手とし て有名になった。このデビュー曲の中に出てくる「出雲崎」が縁で、出雲崎町の観光大使に就任し た。現在は無期限の活動休止になっている11。『自然・地理』のイメージでは、「天気予報(NHK) 写真1 1年生が書いた出雲崎町のイメージ (調査日2019年5月29日 筆者撮影) 写真2 2年生⑴のイメージマップ (調査日2019年6月7日 筆者撮影)
でしか見ない」、「海」、「もやもやしてそう」、「はじっこ」が書かれている。『歴史・伝統』では、「神 社がありそう」、『生活・習慣』に、「限界集落」、「人いなさそう」があった。 写真3は2年生の2枚目のイメージシートである。写真1の1年生の一枚目と写真2の2年生の 2枚目に比べれば、イメージする言葉が多く書かれている。このグループには、社会人学生(40歳 代~60歳代の3人)が入っていることがこうした結果になったと思われる。書かれている内容を拾っ てみると、『観光』についてのイメージは、「バイク乗り」、「ポケストップ」、「道の駅(?)」、「温 泉(?)」、「恋人岬」と書かれていた。また『自然・地理』に、「海」、「糸魚川のとなり」、「海風が 強い」、「町が段になっている」とあった。他に、『歴史・伝統』では、「紙てまり」、「ジェロ」、「良 かんさん」、「寺社」、「細長い家」、「まちや」、『生活・習慣』には、「魚がおいしい」、「そばがおい しい」、「若者が集まりそう」、「ゆったり」、「おだやか」、「小さい」、「港町」、「住民にやさしい移民 制度(結婚すると土地がもらえる)」があげられた。 このグループはキーワード数が他のマップと比べて、多くのイメージを出雲崎にもっていること がわかる。実際に書いた学生に聞き取りをしたわけではないので、推測の域を脱し得ないが「バイ ク乗り」、「恋人岬」と具体的なイメージが書かれているので、実際に行ったことがある学生がいる のではないかと思われる。しかし、その反面「糸魚川のとなり」と『自然・地理』に記述されてい ることから、出雲崎町の位置関係については誤った認識をもっている学生がいることがわかった。 写真4は、2年生の3枚目のイメージシートだが、空白が目立つ結果となった。それぞれ記述さ れていることを拾ってみると、『観光』には、「天嶺の里」、『自然・地理』に「海」、「夕日」、『歴史・ 伝統』に「良寛」、『生活・習慣』に「街並み」、「漁師」があった。 写真3 2年生⑵のイメージマップ (調査日2019年6月7日 筆者撮影)
これまでの調査とこの調査のちがいは、出雲崎町と海を結びつけている学生がいることである。 なぜ、出雲崎町と海をイメージしているのかについては、インタビューをしているわけではないの で、不明である。 写真5は3・4年生の合同のイメージシートである。『観光』のイメージについては、「何も思い つかない」、「あまり行ったことない」、「ジェロ」、『自然・地理』のイメージについては、「出雲崎 漁港」、「釣り人多い」、「がけ」、『歴史・伝統』のイメージについては、「良寛」、「昔ながらの街並み」、 「油でん」、『生活・習慣』のイメージについては、「魚が美味しい」があった。共感が多かったキー ワードは、「ジェロ」、「あまり行ったことない」であり、特に多かったのが「良寛」であった。 写真4 2年生⑶のイメージマップ (調査日2019年6月7日 筆者撮影) 写真5 3・4年生のイメージマップ (調査日2019年6月7日 筆者撮影)
3-1 小括 一年生のイメージシート1枚、2年生のイメージシート3枚、3・4年生のイメージシート1枚 の5枚のイメージシートを見てきた。この5枚のイメージシートからわかることは、一部の学生か ら「出雲崎といえば天領の里」の認知があることがわかった。しかし、「何があるのかわからない」、 「場所がどこかがわからない」、「名産品がわからない」といったような出雲崎町を地理的に、①イメー ジが出来ない、②特徴がつかめない――といった記述が多くあった。また社会人学生がいたグルー プのイメージを除くとしても、他の4枚のイメージシートでは空白が目立だったことから、出雲崎 町のイメージが20歳前後の学生には浸透していないことがわかった。それは、「石油」や「芭蕉園」、 「妻入りの街並み」といった観光スポットから考えても、高齢者向けの観光施設であることが影響 していることと無関係ではないと思える。 ちなみに出雲崎町自体が掲げているイメージ12は、①良寛さんが生まれ町、②松尾芭蕉が奥の細 道で有名な句を詠んだ町、③近代石油産業の発祥の町、④紙風船生産日本一の町、⑤夏はサザエ、 冬は鱈が美味しい町としている。
4.天領の里
今回の実地研究は、出雲崎町全体を調査範囲とするには広範囲であること、また限られた時間で あることから、町全体ではなく天領の里に絞って実地研究を行った。この章では、その実地研究の 対象となった天領の里について概説する。 天領の里は国道402号線の海岸線沿いにあり、1994年4月1日に出雲崎町の観光拠点としてオー プン13し、同時に道の駅14としても登録された15。建物は実物に近い北前船の展示や江戸時代の街並 みを再現した時代館・日本で最初に石油掘削の機械方式の成功を収めたことを記念する石油記念館 と出雲崎産だけではなく新潟県内の様々な土産物取りそろえる物産館、それに海の幸が食べること 写真6 イメージ調査で書きこむ1年生(2019年5月19日 筆者撮影)ができるレストランが物産館の2階にある。時代館・石油記念館の入場料は、大人(高校生以上) 500円、子供(小・中学生)400円である。その他の施設は無料である。この他、建物の外には日本 海に向かって102mの木造ブリッジである「夕凪の橋」があり、デートスポットとなっている。また、 天領の里周辺の観光地として、江戸時代後期の僧侶として有名な良寛にまつわる資料を取りそろえ た良寛記念館、全国でも珍しい「妻入り」形式で軒を連ねる、約3.6㎞の「妻入りの街並み」がある。 写真7 天領の里 (出典 新潟県HP) 写真8 2階のレストランからは海が一望できる(2019年5月8日 筆者撮影) 写真9 時代館には千両箱の重さを体験できるコーナーもある(2020年7月27日 筆者撮影)
4-1 現状 ここまでは、経営大学生のイメージ調査、天領の里の施設の紹介について述べきた。ここでは、 町が明らかにした天領の里の年間の入場者数と月別の平均入場者数をもとにして、天領の里の現状 について述べていく。 天領の里は1994年4月1日に町の観光拠点としてオープンした。そして2008年4月1日から町営 の施設から指定管理者による民間に移管したのである。町が明らかにした平成27年度から平成30年 度の年間総入場者数は、平成27年度(2015年)が、174,973人、平成28年度(2016年)が185,997人、 平成29年度(2017)が186,470人、平成30年度(2018年)が179,919人であった(表1参照)。なお平 成31年度は集計が9月までとなっているために、過去4年間の集計数を採用する。「積雪量が入込 数に影響する」16と支配人が話すように、年度で多少のばらつきがあるが、概観すると年間で18万 人前後が訪れていることがわかる。 ちなみに天領の里から15㌔あまり離れた長岡市(旧寺泊町)の魚市場の年間入場者数は、平成29 年度新潟県観光入込統計17によれば、1,755,500人となっており、天領の里のおよそ10倍である。 天領の里は海沿いにあるために、年間の入場数をみても雪や天候に左右されることが明らかに なったが、それでは月別の入場数からなにがわかるのであろうか。 平成27年度から平成30年度の月別平均入場数(表2参照)を見てみると、4月が8,880人、5月 が13,251人、6月が9,218人、7月が11,251人、8月が18,056人、9月が10,813人、10月が10,965人、 11月が8,779人、12月が4,130人、1月が3,514人、2月が3,932人、3月が8,228人となっている。 この月別平均入場数からわかることは、5月から1万人を超える入場者数となり、ピークは海の シーズンの8月で、1万8千人超となり、その後は徐々に少なくなり、11月には1万人に届かなく なる。そして、冬シーズン到来となる12月には5千人を切り、1月、2月はオフシーズンで3千人 図1 年度別入場者数(資料出典 出雲崎町 筆者作成) 9 4-1 現状 ここまでは、経営大学生のイメージ調査、天領の里の施設の紹介について述べきた。ここでは、 町が明らかにした天領の里の年間の入場者数は月別の平均入場者数をもとにして、天領の里の現状 について述べていく。 天領の里は 1994 年 4 月 1 日に町の観光拠点としてオープンした。そして 2008 年 4 月 1 日から町 営の施設から指定管理者による民間に移管したのである。町が明らかにした平成 27 年度から平成 30 年度の年間総入場者数は、平成 27 年度(2015 年)が、174,973 人、平成 28 年度(2016 年)が 185,997 人、平成 29 年度(2017)が 186,470 人、平成 30 年度(2018 年)が 179,919 人であった(表 1参照)。なお平成 31 年度は集計が 9 月までなっているために、過去 4 年間の集計数を採用する。 「積雪量が入込数に影響する」16と支配人が話すように、年度で多少のばらつきがあるが、概観す ると年間で 18 万人前後が訪れていることがわかる。 ちなみに天領の里から 15 ㌔あまりの長岡市(旧寺泊町)の魚市場の年間入場者数は、平成 29 年 度新潟県観光入込統計17によれば、1,755,500 人となっており、天領の里のおよそ 10 倍である。 天領の里は海沿いにあるために、年間の入場数をみても雪や天候に左右されることが明らかにな ったが、それでは月別の入場数からなにがわかるのであろうか。 表 1 年度別入場者数(資料出典 出雲崎町 筆者作成) 平成 27 年度から平成 30 年度の月別平均入場数(表2参照)を見てみると、4 月が 8、880 人、5 月が 13,251 人、6 月が 9,218 人、7 月が 11,251 人、8 月が 18,056 人、9 月が 10,813 人、10 月が 10,965 人、11 月が 8,779 人、12 月が 4,130 人、1 月が 3,514 人、2 月が 3,932 人、3 月が 8,228 人となっ ている。 この月別平均入場数からわかることは、5 月から1万人を超える入場者数となり、ピークは海の シーズンの 8 月で、1 万8千人超となり、その後は徐々に少なくなり、11 月には1万人に届かなく 165,000 170,000 175,000 180,000 185,000 190,000 平成27年度(2015年度) 平成28年度(2016年度) 平成29年度(2017年度) 平成30年度(2018年度)
年度総入場者数
台まで落ち込む状況となっている。このような結果からこの天領の里は、海水浴シーズンが最盛期 で、冬場は閑散としており、季節色のつよい施設であることが浮かびあがった。 こうした冬について嶋野支配人は、「冬の対策はしていない」とし、なんら冬の対策はしていな いと話している。また集客数を増やす対策については、「毎年のようにゴールデンウィークにイベ ントをやるが、駐車場が満杯になってお客さんからお叱りを受けたことがあった、どこでもイベン トをやるようなゴールデンウィークにやる意味はない」18として、闇雲のイベントを実施すればい いのではなく、開催時期を考えたイベントの差別化が必要であると、これまで行ってきたイベント のやり方に否定的な考え方を示し、今後の集客対策について再考する必要性を説いた。 4-2 来場者のアンケート調査 年間入場者数、月別平均入場者数を明らかにし、天領の里が季節色の強い施設であることがわかっ たが、それでは利用している人たちは、この天領の里をどのように捉えているのかを調べるために、 来場者にアンケート調査を行った。アンケートを実施した期間は2019年10月10日~11月24日で、回 答者数は計32人であった。アンケートは面接方式とし、予め用意していた質問に対し、どの回答項 目が近いのか回答者が選ぶ形式とした。また、アンケート実施日は平日と休日にそれぞれ1回ずつ 行った。 質問項目は、①住んでいる地域②性別③年齢④来場人数⑤関係⑥日時⑦滞在時間⑧天領の里を初 めて知った経緯・方法⑨訪問目的⑩今までの訪問回数⑪購入品や利用したサービス⑫時代館の入場 料・満足度⑬道の駅満足度⑭「天領の里」ネームのわかりやすさ⑮意見・要望と設定した。 まず、来場者の満足度は、①大変良かった②まあまあ良かった③普通④あまり良くなかった⑤全 く良くなかった、の5段階でどれが一番回答に近いのか来場者に回答してもらった。結果は、①大 変良かったが6人、②まあまあ良かったが13人、③普通が5人、④あまり良くなかったが1人、⑤ 全く良くなかったが1人という結果になった。半数以上の人が良いと答える結果になった。 図2 平成27年度~30年度の月別平均入場者数(資料出典 出雲崎町 筆者作成) 10 なる。そして、冬シーズン到来となる 12 月には5千人を切り、1 月、2 月はオフシーズンで3千人 台まで落ち込む状況となっている。このような結果からこの天領の里は、海水浴シーズンが最盛期 で、冬場は閑散としており、季節色のつよい施設であることが浮かびあがった。 表 2 平成 27 年度~30 年度の月別平均入場者数(資料出典 出雲崎町 筆者作成) こうした冬について嶋野支配人は、「冬の対策はしていない」とし、なんら冬の対策はしていな いと話している。また集客数を増やす対策については、「毎年のようにゴールデンウィークにイベ ントをやるが、駐車場が満杯になってお客さんからお叱りを受けたことがあった、どこでもイベン トをやるようなゴールデンウィークにやる意味はない」18として、闇雲のイベントを実施すればい いのではなく、開催時期を考えたイベントの差別化が必要であると、これまで行ってきたイベント のやり方に否定的な考え方を示し、今後の集客対策について再考する必要性を説いた。 4-2 来場者のアンケート調査 年間入場者数、月別平均入場者数を明らかにし、天領の里が季節色の強い施設であることがわか ったが、それでは利用している人たちは、この天領の里をどのように捉えているのかを調べるため に、来場者にアンケート調査を行った。アンケートを実施した期間は 2019 年 10 月 10 日~11 月 24 日で、回答者数は計 32 人であった。アンケートは面接方式とし、予め用意していた質問に対し、ど の回答項目が近いのか回答者が選ぶ形式とした。また、アンケート実施日は平日と休日にそれぞれ 1 回ずつ行った。 質問項目は、①住んでいる地域②性別③年齢④来場人数⑤関係⑥日時⑦滞在時間⑧天領の里を初 めて知った経緯・方法⑨訪問目的⑩今までの訪問回数⑪購入品や利用したサービス⑫時代館の入場 料・満足度⑬道の駅満足度⑭「天領の里」ネームのわかりやすさ⑮意見・要望と設定した。 まず、来場者の満足度は、①大変良かった②まあまあ良かった③普通④あまり良くなかった⑤全 く良くなかった、の 5 段階でどれが一番回答に近いのか来場者に回答してもらった。結果は、①大 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月
また来場者の意見については、何か天領の里を利用していて感じたこと、要望などの意見を聞い た。回答としては、「夏の暑い時、屋根のある施設が欲しい」「時代館と物産館が建物内で繋がって いないため、人の流れが悪い」「昔、遊具があったのに今はない」「冬が寂しい」「おしゃれなカフェ がほしい」「建物内にフリースペースの場所がほしい」との要望が聞けた。 この来場者の満足度と天領の里についての意見をまとめると、半数以上の人が良いと答えていた が、施設に関してもの足りなさを訴える意見が多く聞かれた。まとめると施設の利用は満足してい るものの、一方で更に便利になるような施設を望んでいることがわかった。ところで意見を述べた 人々の大半が、天領の里のリピーターであり、よく訪れている来場者であることがわかった。リピー ターならでの意見、要望だと感じた。一方でこうしたリピーターからの意見として、「駐車場が広 いし、トイレがあってご飯が食べられるのは良い」「天領の里を訪れることが毎回楽しみ」との声 があった。来場者アンケート調査から、わかったことはある程度満足していながら、更なる改善を 望む声があり、また天領の里には多くのリピーターという固定客がいることがわかった。こうした リピーターがいるために、年間の入場者数が安定していることの裏付けとなっていることがわかっ た。
まとめ
これまでに経営大学生によるイメージ調査、過去4年間の入場者数、過去4年間の月別平均入場 者数、来場者へのインタビューを行い、天領の里を浮き彫りしてきた。調査内容については各自の レポートで網羅されているので、各執筆者の明記はしてこなかったが、今後についての提起につい ては、各学生でいろんな意見が出された。そこでこのまとめでは、この実地研究に参加したそれぞ れの学生に、こうした実地研究を通して感じたことや問題提起、今後についてそれぞれの意見を列 挙することにする。 まず、経営大学生に対するイメージマップ調査では、出雲崎町に対する知名度が低いことわ かった。最も知られていたのは、天領の里ではあるが、ネームの認知度はあるものの、「どこ にあるのかわからない」、「何があるのかわからない」という具体的な内容については知名度が なかった。また、マップ上に空白が多いことから、連想されるイメージの少なさが読み取れる。 次の支配人へのインタビュー調査では、天領の里の内部状況が明らかになった。天領の里は イベントを数多く実施しているものの、集客につながるイベントではなく、経営学でいう効果 のあるイベントであるとは言い難かった。支配人が考える、今の出雲崎を変えたいという熱い 気持ちが他の従業員へ浸透せず、一人の力ではどうにも動かせないことがわかった。 来場者へのアンケート調査では、質問を通し、来場者の声を聞くことができた。来場者の天 領の里の満足度は高いが意見、要望が多いという現場の声がわかった。 出雲崎町が抱える問題は、現在老年人口割合が高いこと、将来的にさらに老年人口が増えて いくことがある。しかし、どこの自治体でも高齢問題をかかえており、出雲崎町だけの問題ではない。 現在、出雲崎町が特に力を入れて取り組んでいるのが移住・定住支援である。2019年10月25 日に出雲崎移住・定住支援サイト「GOODLIFE! IZUMOZAKI」が開設された。写真3にもあっ たように、移住推進をしている町である。例えば、子育て支援事業であれば子供の医療費を小 学校から高校まで補助、小中学校入学祝い金の支給、高校生通学費の助成などさまざまな支援 がある。こういった出雲崎町への移住情報を県内外人が集まる天領の里でアピールできればよ いのではないだろうか。そこで、交流人口増加の拠点として天領の里をリニューアルすること を提言する。 天領の里が担う役割は、出雲崎町との人々の交流人口の増加を手助けする空間だ。移住者の ターゲットは、移住先を探している人や子育て世代である20代~30代の若者であり、その層に 対して出雲崎町の認知度を高める必要がある。しかし、現時点で天領の里は「寂しい感じがす る」「遊具が少ない」「おしゃれなカフェがあればいいのになあ」と意見があったように、若者 の層にはターゲットを置いていない。人々が最も訪れる天領の里が出雲崎町のイメージアップ の力を最も持っている、大きな可能性を持つ場所であるのだ。(4年 笹田倫子) 私が一番集客策として可能性を感じるのは、紙風船である。紙風船を製造しているのは、全 国出雲崎町だけなのである。それにもかかわらず、出雲崎町の名産品として知っている人は、 私の周辺にはほとんどいない。紙風船はかわいいという印象があるが、それをどこで作られて いるのかも知らないのが現状である。私はこの紙風船をランタンとして使い、つなん雪まつり 19のように紙風船を空に上げるイベントを開いてみたいと思う。カラフルな紙風船が空を覆い つくすことで、若い女性が写真を撮りたくなるような景色を作り出すことができるのではない か。そうすれば、紙風船のPRにもなる。もう一つは、街並みを活かすことである。街並みを 撮影場所として売り出す方法について考えてみたい。昨今のコスプレ人口とブームにより、メ ディアで「コスプレ旅館20」というものが紹介されるまでになった。滝や和室が撮影場所とし ての需要を得ているのなら、妻入り21の街並みにも需要があるのではないだろうか。街並みだ けではなく、出雲崎町は歴史ある建物や施設を多数有している。タイムスリップをイメージし たイベントも可能ではないだろうか。そのイベントの日のプレゼントを用意することや、コン テストの開催やその日限定のものづくり体験を企画する等が考えられる。それぞれの施設に協 力を仰ぎ、新しい客層を獲得することも不可能とは言い切れないはずだ。(2年 兒玉あすか) 出雲崎町は海岸近くに位置し、石油発祥の地や良寛の里として歴史を感じられる町である。 少子高齢化、人口減少に直面している町で、このまま何も対策を講じなければさらに人口減少 に歯止めがかからず、過疎化が進む懸念があるが、住みやすく、子供を育てやすい環境なので、 新潟で一番住みやすい町を目指してほしいと思う。産業は第3次産業が大半を占めているので、 観光に力を注いでいくべきだと思う。漁港があり、新鮮な魚介類が水揚げされ、地元の宿泊施
設ではそれらを仕入れて、お客さんにおいしい料理を提供している。海水浴、釣りなどのマリ ンスポーツを楽しめる環境にあるので、観光に力を注いで産業を盛り上げてもらいたいと思う。 天領の里は海岸のドライブには重要な休憩施設であり、ここに温泉施設があればもっと集客が 可能になると思う。(2年 森山寛子) 学生の目線はある意味で、斬新である。実現可能なことなのか、不可能なのかは二の次でいいと 考える。それ以上に数多くの奇抜なアイディアを出すことが次につながり、次のアイディアを呼び 起こす呼び水になると思う。この報告書の中でも一部既述しているが、出雲崎町の少子高齢化、過 疎化は深刻な問題である。しかし考えてみれば、この出雲崎町の活性化への取り組みは、全国津々 浦々が抱えている悩みと合致することに気がつくのである。それだけにこの出雲崎町の実地研究は 意義深い。
実地研究を終えて
さまざまな課題が残った。来年度に課題を引き継いでいきたいと考える。課題は6点に集約でき る。①調査する期間が短かった。本格的な調査期間は、およそ5ヶ月程度であった。②時間の足り なかったことと関連するが、アンケートの標本数が足りなかった。適正な標本数は検討の余地があ るにしても、今回の標本数32本は少ないと認めざるを得ない。③学生同士のよるブレーンストーミ ングがほとんどなかった。現地調査を行った後にそれぞれ感じたことをそれぞれ出し合い、その中 から問題点や将来像について提起するというプロセスをとる必要があると考える。④町民とのふれ あう機会がほとんどなかった。町の人たちの意見を拝聴する場を設けて、なにがいま問題になって いるのか、今後どのような要望、展開を期待しているのかを実際に聞き取り調査をする中で、考え ることがなかった。⑤町長との面会と聞き取り調査が必要であった。与えられた実地研究が町の方 針にも関わることなので、町長への聞き取り調査は必要だと考える。町としての基本方針を前提に 実地研究をすることが必要ではないかと思う。⑥単年度での実地研究の限界を感じる。学生たちは 平日に授業があり、休日や休み期間もそれぞれの予定を持っている。にもかかわらず観光施設の視 察やさまざまな関係者との面会や聞き取り調査等を考えると、実地研究を単年度限定で行うことの 限界を感じるのである――以上が実地研究の反省と今後に向けての課題である。謝辞
最後に、新潟経営大学の学生の経営学実地研究のために、出雲崎町の関係者の方々にはお世話に なりました。特に仕事時間にもかかわらず、聞き取り調査にご協力をただいた天領の里の嶋野仁支 配人には大変お世話になりました。この場をかりて感謝申し上げます。注 1 3学科に分かれて設置されている様々な授業のなかでも、学科を超えて、人や社会を豊かに、幸せにするた めの理論についてより実践的に学ぶことができる科目である 2 聞き取り調査 天領の里嶋野仁 日時:2019年10月10日 午前11時~12時 場所:天領の里多目的室 3 本稿は、笹田倫子が卒業論文として、他の2人はレポートで報告してもらった原稿を、筆者が加筆訂正を行っ たものである 4 2019年3月31日現在住民基本台帳 5 15歳以上65歳未満(50.27%) 6 15歳未満(9.34%) 7 65歳以上(29.89%) 8 http://www.town.izumozaki.niigata.jp/kurashi/topics/2020013000017/file_contents/senryaku.pdf( 出 雲 崎 町 ホームページ2020年2月14日更新) 9 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/fukushihoken/1356906072585.html(新潟県ホームページ 2020年2月14日 更新) 10 前掲出雲崎町ホームページ 11 http://jero.jp/pc/(ジェロ・オフィシャルウエブサイト 2020年2月14日更新) 12 出雲崎町が発行している観光パンフレット「道の駅 越後出雲崎 天領の里」の最終ページからの引用 13 前掲嶋野聞き取り調査 14 道の駅とは、平成5年から始まった第11次道路整備五箇年計画の施策の一つとして位置づけられ、整備され てきた複合多用型休憩施設である。主な機能として、「休憩機能」「情報発信機能」「地域連携機能」がある。 休憩機能とは、24時間無料で利用できる駐車場とトイレがあることである。情報発信機能とは、道路情報、 地域の観光情報、緊急医療情報を提供することがある。地域連携機能とは、文化教養施設、観光レクリエーショ ン施設などの地域振興がある。道の駅の登録の方法は、道路管理者との協力体制が整っている必要があるこ とと、施設の構成、提供サービス、設置者、案内などの運用方針について一定の水準を満たせば登録される こともあり,登録のハードルはそう高くないように思われる。いまや全国都道府県に設置してあり、2020年 1月20日現在、1160駅が登録されている(https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/outline.html国土交通省 ホームページ 2020年2月) 15 前掲嶋野聞き取り調査 16 前掲嶋野聞き取り調査 17 1位「道の駅あらい」で、2,937,850人、2位「にいがたふるさと村」1,755,500人、3位「寺泊魚の市場通り」1,734,050 人、4位「高田城百万人観桜会(4月)」1,327,000人、5位「弥彦神社」1,270,790人となっている。年から(に いがたの地域を活性化を応援するブログ 統計資料は新潟県観光企画課「平成29年新潟県観光入込客統」 更 新2020年2月16日更新) 18 前掲嶋野聞き取り調査 19 https://www.okushinetsu.com/skyrantan/?gclid=Cj0KCQiAyp7yBRCwARIsABfQsnSUZD3ImY7alwSvfouG xHJbRU0X4fTT5eflmjWeedZqp9X-cAN-h_saAqVFEALw_wcB(奥信越の魅力が満載の観光情報サイト 2020年2月16日更新) 20 https://isikawasou.com/cosplay.html(旅館石川荘ホームページ 2020年2月16日更新) 21 https://www.town.izumozaki.niigata.jp/kanko/spot/tsumari.html(出雲崎町ホームページ 2020年2月16日 更新) 参考文献 松尾隆策、山口三十四(2019)『道の駅の経済学』勁草書房