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手続的権利強化の2009年ロードマップとEU指令2012年13号・権利告知書 : 手続的権利保護の共通最小限基準-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

手続的権利強化の

年ロードマップと

EU 指令

号・権利告知書

―― 手続的権利保護の共通最小限基準 ――

Ⅰ は じ め に

年発足の欧州連合(以下,「EU」と呼ぶ)は,

の EU 理事会の決議「被疑者・被告人の刑事手続における手続的権利の強

化のためのロードマップ EU 理事会決議」(以下,「

年 EU 理事会決

議」と呼ぶ)において,付属文書として 項目の措置(measure)からな

る「被疑者・被告人の刑事手続における手続的権利の強化のためのロード

マップ」(以下,「

年ロードマップ」と呼ぶ)を,被疑者・被告人の

手続的権利の強化のための EU レベルでの将来の行動の基礎として承認し

!

。先に,久岡康成「起訴状の役割及び訴因の機能と防禦 ―― Accusation

の性質と理由の告知を受ける権利(ECHR

§ (a))と

年 EU 指令を

参考に ――

"

」において言及した

年 EU 指令は,この

年ロード

マップの第 項目「措置B 権利および弾劾(Charge)についての情報」

の具体化である「刑事手続における情報に対する権利についての EU 指令

号(Directive

/ /EU)」(以 下「

年 EU 指 令」と 呼 ぶ)

(2)

である

!

。加盟国が

年 月 日までに,刑事手続における手続的権利

保護の共通最小限基準として,被疑者・被告人に対し,その有する手続的

権利の告知と弾劾(Accusation)の理由である事実とその法的性質の告知,

事件の資料に対する権利を保障していることを加盟国に対して求め,その

ための権利告知書(Letter of Rights)の参考モデルを示している。

この

年ロードマップは,さらに欧州理事会により

日に公布された自由,安全および司法の領域における立法および運用計画

のための戦略的指針を定める EU の第 次の五カ年計画(

)で

あるストックホルム・プログラム(Stockholm Programme)

"

の一部とされ

ている。刑事手続における手続的権利保護の共通最小限基準の持つ意義

と,

年ロードマップの実現がそのための有力な手段であることが,

EU において重ねて確認されたということができる。

年ロードマップや

年 EU 指令は,被疑者の基本権

#

および EU

における刑事司法の刑事司法協力

$

の視点から既に一定研究されている。本

稿は,手続的権利保護の視点から,前稿久岡「起訴状の役割及び訴因の機

能と防禦 ―― Accusation の性質と理由の告知を受ける権利(ECHR

§

(a))と

年 EU 指令を参考に ――」に引き続き,

年ロードマップ

年 EU 指令につき,若干の検討を試みるものである。まず,

年ロードマップと

年 EU 指令および権利告知書の大要を確認するこ

とにしたい。

年ロードマップと

年 EU 指令および権利告知書

年 EU 理事会決議と

年ロードマップ

年ロードマップを被疑者・被告人の手続的権利の強化のための将

来の行動の基礎として承認した

年 EU 理事会決議(

日)は,前文,決議,付属文書たるロードマップからなっている。以下大

要を紹介する。

(3)

〔前文〕 ⑴ EU においては,欧州人権条約は,この決議の目的との関わりでは公判 前および公判中を含む刑事手続における被疑者・被告人の人権の保護のため の共通の基礎である。 ⑵ さらに欧州人権条約は,欧州人権裁判所によって解釈されて,加盟国が 相互の刑事司法システムに信頼を持ち,それを強化するための重要な基盤で ある。同時に EU の側では欧州人権条約基準の完全実施を確保するための, そして適切な場合には,適用可能な基準の整合的な適用の確保や現存する基 準の引き上げのためのさらなる行動をとる余地がある。 ⑶ EU は,その市民の居住する国以外の国における旅行,学習,労働の拡 大から利益を得る,移動と居住の自由の領域の構築に成功した。しかしなが ら,域内の境界の廃止と移動と居住の自由の権利の行使の拡大は,不可避的 な結果として,彼らの居住する国以外の加盟国の刑事手続に関与させられる 人の数の増加を導いた。このような状況の中で,被疑者・被告人の手続的権 利は,公正な裁判を受ける権利の保障のために特別に重要である。 ⑷ 実際,EU レベルにおいて市民の安全の高度な保障のために様々な措置 が講じられたが,人が刑事手続で被疑者となり被告人になった場合に生じ得 る特別な問題に取り組む同等な必要が存する。 ⑸ このことは,刑事手続の公正さを確保するための,手続的権利に関する 特別な行動を要求する。この行動は,立法とその他の措置を含むものである が,EU とその加盟国は彼らの権利を保護し保障するという市民の信頼を高 める。 ⑹ 年 タ ン ペ レ 欧 州 理 事 会 は,相 互 承 認 原 則(principle of mutual recognition)の実施の関連において,またその上に相互承認原則の適用の促 進のために必要と考えられる共通最小限基準(common minimum standards) がある手続法の側面について,加盟国の基本的法的原理を尊重しつつ,検討 が着手されるべきであると決定した(総括 )!。

⑺ また, 年のハーグ・プログラム"は,司法協力の礎石(cornerstone) たる相互承認(mutual recognition)の一層の実現は,加盟国の保護措置の現

(4)

在の水準の調査に基づき,それらの法的原理の尊重する,刑事手続における 手続的権利の同等の基準の発達を意味すると述べている(参照Ⅲ ..)。 ⑻ 相互承認は加盟国の権限ある機関が他の加盟国の刑事司法システムを信 頼することを前提とする。EU 域内の相互信頼を増強するためには,欧州人 権条約を補完して,加盟国内で適切に実施され適用されている手続的権利の 保護のEU 基準が存在することが重要である。 ⑼ 最近の研究は,立法と他の措置を通しての,手続的権利についてのEU の行動への広範な支持が専門家の間であること,および,加盟国の司法機関 の間で増強された相互信頼の必要があることを示している⑴。これらの意見 は欧州委員会によっても反響された⑵。ストックホルム・プログラムにたい するコミュニケにおいて⑶,欧州委員会は,防禦の権利の強化は加盟国の間 の相互信頼とEU への公衆の信頼を維持するために必須であるとの意見を述 べた。 ⑽ EU の文脈の中での,手続的権利についての過去数年の議論は,具体的 な成果を導かなかった。これに対して,訴追を促進する施策についての司法 および警察協力の領域では多大な前進が実現した。今や,これら施策と個人 の手続的権利の保護との間のバランスを改善する時である。市民がEU の中 で旅行,学習,労働もしくは生活をすることを決定する場合はいつも,手続 的保障の強化と刑事手続における法の支配の尊重に努力がなされるべきであ る。 ⑾ これらの問題の重要性と複雑性を勘案するとき,全体的な一貫性を確保 しつつ,ステップ・バイ・ステップ方式でこれらに取り組むことが適切と解 される。将来の行動について述べれば,各措置に付加価値を与える方法で問 題を特定し取り組むことを可能にするために,一時に一分野で,焦点を当て た注意を個々の各措置に対し払うことが可能になる。 ⑿ この決定の付属文書(ロードマップ)にある措置の目録の非網羅性を考 慮に入れて,EU 理事会は,この目録に記載されたもの以外の手続的権利の 保護の問題に取り組む可能性をもまた考慮すべきである。 ⒀ この分野での如何なる新たなEU 立法行為も,欧州人権裁判所により解

(5)

釈された欧州人権条約によって設定された最小限基準を満たさねばならな い。 〔決議〕 .刑事手続における被疑者・被告人の権利の強化のために,EU レベルで の行動が取られるべきである。この行動は,立法とその他の措置からなる。 .EU 理事会は,「被疑者・被告人の刑事手続における手続的権利の強化の ためのロードマップ」(この後はロードマップと称する)を将来の行動の基 礎として承認し,この決議の付属文書で示す。このロードマップに含まれる 権利は,他の権利によって補完されうるものであるが,基本的な手続的権利 と考えられ,これらの権利を尊重する行動に現段階での優先性が与えられる べきである。 .欧州委員会に,ロードマップの中で示されている措置に関する提案を提 出し,措置Fで述べられているグリーン・ペーパーの提出を考えることを検 討するよう要請する。 .EU 理事会は,ロードマップに関連して提示された全ての提案を検討し, それらを優先的な事項として取り扱うことを約束する。 .EU 理事会は,適用可能な規程にしたがって,欧州議会との全面的な協 力のもとに行動し,欧州理事会と十分に協力する。

⑴ 特に参照,the ‘Analysis of the future of mutual recognition in criminal matters in the European Union’, report of November by the Université Libre de Bruxelles.

⑵ 例えば参照,the ‘European Parliament, recommendation of May to the Council on development of an EU criminal justice area’, / (INI), point(a).

⑶ ‘An area of freedom, security and justice serving the citizen’, COM( ) / (point . . ).

(6)

〔付属文書〕被疑者・被告人の刑事手続における手続的権利の強化のための ロードマップ このロードマップに示される権利の順序は,例示的(indicative)なもので ある。以下に提供されている説明は提案されている行動の例示を与えること に役立つものにすぎず,将来の措置の範囲や内容を規制することを意図する ものでない。 措置A:翻訳と通訳 説明(short explanation) 被疑者・被告人は何が生じているかを理解できなければならず,また自分の 考えを理解してもらうことができなければならない。手続の中で用いられる 言語を話しもしくは理解できない被疑者・被告人は,通訳者もしくは基本的 な(essential)手続書類の翻訳を必要とする。聴覚障害のある被疑者・被告 人のニーズには特別な配慮(particular attention)がまた払われるべきである。 措置B:権利および弾劾(charge)についての情報 説明 犯罪について嫌疑を受けまたは起訴された(accused)人は,その人の基本的 な権利についての情報を,口頭もしくは適切な場合は書面で,例えば権利告 知書の方法で得るべきである。さらにその人はまたその人に対する弾劾 (accusation)の性質と理由(nature and cause)についての情報を迅速に受け 取るべきである。告発(charge)された人は,適切なときに,その人の防禦 の準備に必要な情報を得る権利がある(entitled to the information)べきであ る。このことは刑事手続の正当な進行を害するべきものではないと解され る。

措置C:法的助言と法律援助 説明

(7)

言(弁護士による)に対する権利は,手続の公正さを確保するための基本的 な権利である。法律援助に対する権利は,法的助言に対する前述の権利への 効果的な接近を確実にすべきである。 措置D:親族,雇用主および領事当局との連絡 説明 自由を剝奪された被疑者・被告人は,迅速に少なくとも親族,雇用主のよう な者に自由の剝奪について知らしてもらう権利について敏速に告知されるべ きである。このことは刑事手続の正当な進行を害するべきものではない。こ れに加えて,その人自身の国以外の国でその人の自由を剝奪された被疑者・ 被告人は,権限ある領事当局に自由の剝奪について告知してもらう権利につ いて告知されるべきである。 措置E:弱者たる被疑者・被告人に対する特別な保護措置 説明 手続の公正さを護るために,例えば,年齢,精神的または身体的状態のため に,手続の内容や意味を理解できずもしくはついて行けない被疑者・被告人 に対して,特別な配慮が示されることが重要である。 措置F:未決拘禁についてのグリーン・ペーパー 説明 人が公判廷での審判の前または公判手続の間に拘禁される期間は,加盟国の 間でかなり異なる。過度に長期の未決拘禁期間は,人間にとり有害であり, 加盟国間の司法協力を害し,そしてEU が立脚する価値を表さない。この関係 における適切な措置がグリーン・ペーパーにおいて検討されるべきである。

年 EU 指令および権利告知書

EU 指令は, 項目の前文と, カ条の条文および付属文書た

る権利告知書 通からなっている。以下大要を紹介する。

(8)

年 EU 指令の前文 前文 ないし 項は,ロードマップの決議に至る経緯を説明し,さらに ロードマップにしたがった措置として,この情報に対する権利の 年EU 指令までに,通訳および翻訳に関するEU 指令 / が発されたことを説 明している。 すなわちEU は, 年のフィンランドのタンペレ(Tampere)での欧州 理事会の欧州理事会議長国総括において,判決その他の決定の相互承認原則 は,民事刑事の司法協力の礎石であるとした。そして, 年 月 日に EU 理事会において相互承認原則を刑事で実施するための措置に関するプロ グラムを採択した。それによれば,刑事における判決の相互承認原則の実施 は,加盟国が相互の刑事司法システムを信頼することを前提とする。被疑 者・被告人の権利の保護と相互承認原則の実施を促進する共通最小限基準 は,相互承認の程度を決する要素の一つである。相互承認は法律規定のみな らずその適用の信頼が司法機関および全ての関係者にあることにより実効的 になる。( ないし 項) EU 基本権憲章 条と欧州人権条約 条は公正な裁判の権利を明記してい る。基本権憲章 条 項は防禦の権利を保証している。EU 基本権憲章 条 と欧州人権条約 条は,自由と人身の安全の権利を明記している。いかなる 制限も人権条約 条によって許され,欧州人権裁判所の判例法から推論され る制限を越えてはならない。しかし,EU の全ての加盟国は欧州人権条約の 当事国であるが,欧州人権条約のみでは,他の加盟国の刑事司法システムへ の十分な程度の信頼を提供するものではないということを,経験は示してい る。相互信頼の強化は,EU 基本権憲章および欧州人権条約から生ずる手続 的権利の保護と保証についての詳細な規則を要求する。( ないし 項) EU 機能条約 条 項は,判決の相互承認などを推進する,加盟国に適用 可能な最小限のルールの樹立を規定した。同条項は,刑事手続における個人 の権利を,最小限のルールが樹立さるべき分野の一つに挙げている。共通の 最小限のルールは,全加盟国の刑事司法システムへの信頼を増進させ,そし て,相互信頼の風潮の中でより効果的な司法協力を導く。そのような共通の

(9)

最小限のルールは,刑事手続における情報の分野でこそ樹立されるべきであ る。( ないし 項) 年 月 日,EU 理事会はロードマップの決議を採択した。ロード マップはステップ・バイ・ステップ方式をとり,措置Aないし措置Eが挙げ る権利に関する措置をとることを要求している。 年 月 日欧州理事 会は,ロードマップをストックホルムプログラムの一部とした。欧州理事会 は,ロードマップが網羅的なものでないことを認め,欧州委員会にさらなる 最小限の権利がないかを吟味し,無罪の推定などの他の問題を判断するよう 求めている。( ないし 項) ロードマップに基づく措置の最初の具体化として,措置Aにしたがった, 刑事手続における通訳および翻訳の権利に関する EU 指令 / が発布さ れた。( 項) 前文 ないし 項は,この情報に対する権利についての 年 EU 指 令の性格と適用につき説明する。 すなわち,この情報に対する権利についての 年 EU 指令は,ロード マップの措置(B)に関連し,加盟国間の相互信頼の強化の見地から,権利 および被疑者・被告人に与えられる弾劾(accusation)についての情報の分野 に適用される共通最小限規準である。この EU 指令は,EU 基本権憲章こと にその , ,及び 条の権利の上に定立され,そして欧州人権裁判所に よって解釈された欧州人権条約 条および 条の上に定立された。この指令 における弾劾(accusation)の語は,欧州人権条約 条 項の告発(charge) の概念と同じである。なおこの指令に先立って,欧州委員会は, 年 月 日のストックホルム・プログラムの行動計画への声明の中で,権利につい ての情報に対する権利と告発(charge)についての情報についての権利に関 する提案を 年に行うと表明している。 この指令は,被疑者・被告人に対して,法的地位,市民権もしくは国籍に かかわらず適用さるべきである。若干の加盟国では,裁判所以外の機関が, 交通違反のように,相対的に軽い違反(offence)にたいし制裁を科す権限を 有している。そのような場合,その制裁が軽微な違反への制裁であり,上訴

(10)

の権利もしくは権限ある裁判所に付託される可能性がある限りで,この指令 の下の権利の全てを要求されないこともありうる。( ないし 項) 前文 ないし 項は,この情報に対する権利についての 年 EU 指 令が定める権利一般について説明する。 すなわち,欧州人権裁判所の判例法から推認される,手続的権利について の情報に対する権利は,この指令で明確に確立されるべきである。権限ある 機関は,国内法に従い,被疑者・被告人に迅速にかれらの権利を,口頭また は書面で,告知するべきであり,これは手続の公正さを守るために必須であ る。この告知は,少なくとも警察による最初の取調までに行われなければな らない。この指令は最小限度のルールを定めたものであり,EU 基本権憲章, 欧州人権条約,国内法等から認められる他の手続的権利が告知されることを 妨げない。 前文 ないし 項は,逮捕または拘禁されている被疑者・被告人の情報 に対する権利について説明する。 すなわち,この指令の逮捕されもしくは拘禁されている被疑者・被告人へ の言及は,欧州人権裁判所で解釈される欧州人権条約 条⑴⒞の意味におい て被疑者・被告人が自由を奪われている状況への言及と理解されるべきであ る。被疑者・被告人が逮捕もしくは拘禁されている場合は,情報は「権利告 知書(Letter of Rights)」の方式で与えられるべきである。それは,逮捕の適 法性,拘禁の審査(review),一時的な釈放の可能性に関わる基本的な情報を 含んでいるべきである。権利告知書の起草を助けるために,この指令の付属 文書 に模範を付する。権利告知書には,加盟国で適用される他の手続的権 利を記することができる。( ないし 項) 被疑者・被告人が逮捕または拘禁について他の者に知らせてもらう権利に 関する特別な条件やルールは,加盟国の国内法で定められるべきである。ま た,この指令は,収容施設にいる人々の安全に関する国内法の規定を害しな い。加盟国は,必要な場合は EU 指令 / の規準に従い,被疑者・被告 人に翻訳または通訳で情報を提供しなければならない。この指令で被疑者・ 被告人に情報を告知するにあたり,若年や心身の状況により情報の内容や意

(11)

味を理解できない場合は,権限ある機関は特別な配慮をその者に払わなけれ ばならない。( ないし 項) 弾劾された(accused)者は,防禦の準備を可能にし手続の公正を確保する ために必要な,弾劾に関する全ての情報を与えられねばならない。被疑者・ 被告人が犯したとされる行為につき与えられる情報は,迅速に,少なくとも 警察などによる正式の取調(interview)の前に,捜査の進行を害することな く,与えられなければならない。事実の記載は,犯したとされる犯罪行為 (criminal act)に関する時間と場所,可能性のある法的等級を,手続の公正 さの確保と防禦の権利の実効的な行使のために十分に詳細に与えられねばな らない。手続の進行の中で,弾劾の詳細が被疑者・被告人の地位に実質的に 影響を与えるよう変化した場合は,手続の公正さの確保と防禦権の実効的な 行使のために必要なときは,被疑者・被告人に伝達されなければならない。 ( ないし 項) 前文 ないし 項は,資料,証拠について説明する。 すなわち,書類,適切な場合は写真,録音や録画は,それらが国内法に よって被疑者・被告人が逮捕もしくは拘禁の適法性を実効的に争うのに必要 な場合は,被疑者・被告人もしくは弁護人に利用できなければならない。こ の指令の目的のため,被疑者・被告人に有利不利を問わず重要な証拠へのア クセスは,事件ファイルの中等にある,書類,適切な場合は写真,録音や録 画のような資料へのアクセスを含むべきである。権限ある機関により保有さ れている素材証拠(material evidence)につき,他者の生命や基本的権利,重 要な公的利益の保護のためとして国内法の規定によりアクセスが拒否される ことがあるかも知れないが,その拒否は被疑者・被告人の防禦の権利と衡量 されねばならない。そのようなアクセスを制限する規定は,厳格にかつ欧州 人権条約と欧州人権裁判所のその解釈のもとにある公正な裁判の原則にした がって解釈されなければならない。( ないし 項)

事件の資料に対するアクセス(access to the materials of a case)の権利は, 個人のデータ,保護証人の居所の保護の国内法の規定を害しない。また,こ の指令による事件の資料へのアクセスは無償であるべきであるが,複写料や

(12)

送料を規定することはできる。( ないし 項) 資料を保有する機関は,この指令により資料が提供されたときは,それを 記録すべきであり,それ以上の追加的義務を負わない。また,被疑者・被告 人もしくは弁護人は,国内法により,この指令による情報の提供や事件の資 料の開示についての権限ある機関の過誤や拒絶を争う権利を有すべきであ る。しかしながら,この権利は,加盟国が特別な上訴手続等を定める義務を 導くものでない。( ないし 項) 前文 ないし 項は,この指令の実施に関わる事項につき説明する。 すなわち,司法の独立と加盟国による相違へ留意しつつ,加盟国は関連す る当局者の教育につき立法を行うべきである。加盟国は,この指令の遵守の ために全ての措置をとるべきである。被疑者・被告人に簡明で理解しやすい 言葉により情報を提供するなどの,実務的な若干の規定の実施は,権限ある 機関の教育や簡明で理解しやすい言葉による権利告知書の起草などの非立法 的な措置を含め,様々な方法で実現されうる。この指令において定められた 逮捕についての権利の書面による告知の権利は,EU の枠組み決定 / / JHA( . . )による欧州逮捕令状の執行のために逮捕されたものにも 準用されるべきである。加盟国によるこの権利告知書の起草を助けるため, 付属文書Ⅱに一つの模範が提供されている。( ないし 項) この指令は最小限度のルールを設定したものである。加盟国は,この指令 の権利につきより高い水準にしたり,明示的にすることができる。しかし保 護の水準を,欧州人権条約と欧州人権裁判所の解釈による基準以下にするこ とはできない。この基準は基本権を尊重し,EU 基本権憲章により認められ た原理を遵守する。特に,この指令は,自由に対する権利,公正な裁判の原 則および防禦の権利の推進を目指すものである。この指令の欧州人権条約に 保障される権利に対応する規定は,欧州人権裁判所の判例法で解釈されるよ うに,解釈されるべきである。( 項ないし 項) この指令の目的は,加盟国の一方的な立法で達成できるものではなく,規 模と効果においてEU レベルでより達成できるので,EU 条約第 条に定め られている補完性の原理と相当性の原理にしたがって,EU は各措置を採択

(13)

する。この指令は,この目的の達成に必要な範囲を越えるものでない。自由, 安全,司法領域に関する連合王国およびアイルランドの地位についての EU 条約および EU 機能条約第 議定書第 条により,両加盟国はこの指令の 採択及び適用に参加する意志を表明した。デンマークの地位についての EU 条約および EU 機能条約第 議定書 条および第 条により,デンマーク はこの指令の採択及び適用に不参加の意志を表明し,この指令より拘束され ずもしくはその適用に服さない。( ないし 項) 年 EU 指令の条文 年 EU 指令の条文は, カ条からなっている。その大要は以下のよ うである。 第 条および第 条は,この指令の主題と範囲の規定である。 すなわち,この指令は被疑者・被告人の,刑事手続における権利および彼 らに対する弾劾(accusation)についての情報に対する権利に関する規則を定 めている。また,欧州逮捕令状の対象になっている者の情報に対する権利に ついて定める。また,この指令は,人が権限ある機関により嫌疑されもしく は訴追されてから,量刑や上訴を含め最終の結論まで適用される。最初は裁 判にかからない軽微な制裁については,上訴等で裁判所の前に現れた場合の 手続にのみ適用される。(第 ないし第 条) 第 条は,被疑者・被告人の権利についての情報に対する権利についての 規定である。加盟国は,被疑者・被告人が少なくとも以下の手続的権利に関 する情報を,それらの権利を実効的に行使するために,迅速に提供されるこ とを確保しなければならない。(第 項)

⒜ 弁護士へのアクセスの権利(the right of access to a lawyer)

⒝ 無償で法的助言を得る資格と当該助言を得る条件(any entitlement to free legal advice and the conditions for obtaining such advice)

⒞ 第 条にしたがって,弾劾につき告知される権利(the right to be informed of the accusation, in accordance with Article )

⒟ 通訳および翻訳に対する権利(the right to interpretation and translation) ⒠ 黙秘する権利(the right to remain silent)

(14)

また加盟国は,第 項により提供される情報が,簡明で理解しやすい言葉 で,弱者たる被疑者・被告人の特別な必要をも考慮に入れて,口頭又は書面 で与えられることを確保しなければならない。(第 項) 第 条及び第 条は,逮捕または拘禁されている被疑者・被告人について の,権利告知書(letter of rights)についての規定である。 第 条は,逮捕または拘禁されている被疑者・被告人の権利告知書につい て,一般に定める。 加盟国は,逮捕または拘禁されている被疑者・被告人が迅速に権利につい て記された書面を提供されることを確保すべきである。彼らはその権利告知 書を読む機会を与えられ,自由を奪われている間それを保有することを許さ れるべきである(第 項)。この権利告知書は,第 条に定められた権利に 加えて,それらが国内法のもとで適用されているときは,以下の権利につい ての情報も包含すべきである(第 項)。

⒜ 事件の資料(materials of the case)にアクセスする権利

⒝ 領事館の職員および誰か(consular authorities and one person)に知ら せてもらう権利 ⒞ 緊急医療援助へのアクセスの権利 ⒟ 被疑者・被告人が司法官憲の前に伴われるまでに自由を奪われている 最大限の時間または日数 権利告知書は,また,逮捕の適法性を争い,拘禁の審査(review)を獲得 し,一時的な釈放を請求する,国内法の下での,可能性についての情報を包 含すべきである(第 項)。 権利告知書は簡明で理解しやすい言語で起草されねばならない。参考とな る模範の権利告知書が付属文書Ⅰに用意されている(第 項)。被疑者・被 告人が理解できる言語で記された権利告知書を受領することを確保すべきで ある。適切な言語での権利告知書が利用できないときは,理解できる言語に より口頭で権利を告知されるべきであるが,そのばあいも,彼らが理解でき る言語による権利告知書が不当な遅延なく与えられねばならない(第 項)。 第 条は,欧州逮捕令状による手続における権利告知書について定める。

(15)

加盟国は,欧州逮捕令状の執行によって逮捕された者が,執行国において EU枠組み決定 / /JHAを適用する法による権利についての情報を含む しかるべき権利告知書を遅滞なく提供されることを確保しなければならない (第 項)。権利告知書は簡明で理解しやすい言語で起草されねばならない。

参考となる模範の権利告知書が付属文書 に用意されている(第 項)。 第 条は,弾劾につき告知される権利(right to information of the accusation) についての規定である。 加盟国は,被疑者・被告人が犯したと嫌疑または訴追されている犯罪行為 (criminal act)についての情報を提供されることを確保しなければならない。 その情報は迅速に提供されねばならず,手続の公正さと防禦の権利の実効的 な行使を確保するために必要なほどに詳細でなければならない(第 項)。 加盟国は,逮捕または拘禁されている被疑者・被告人が,犯したと嫌疑また は訴追されている犯罪行為を含めて,逮捕または拘禁の事由(cause)を告知 されることを確保しなければならない(第 項)。加盟国は,遅くとも弾劾 の本案(the merits of the accusation)が裁判所に提出されるときに,犯罪の 性質と法的分類並びに被弾劾者による関与の性質を含む,詳細な情報が弾劾 につき提供されることを確保しなければならない(第 項)。加盟国は,手 続の公正さを確保するために必要な場合は,被疑者・被告人が迅速にこの条 文によって与えられる情報の変化を知らされることを確保しなければならな い(第 項)。

第 条は,事件の資料(materials of the case)にアクセスする権利につい ての規定である。 刑事手続の如何なる段階にあるにせよ,人が逮捕および拘禁されている場 合は,加盟国は,権限ある機関が所持する当該事件に関連する書類が,国内 法によって,逮捕もしくは拘禁の適法性を実効的に争うのに必要な場合は, 被逮捕者もしくは弁護人に利用できることを確保しなければならない(第 項)。加盟国は,被疑者・被告人に有利不利を問わず,手続の公正さの確保 および防禦の準備のために,少なくとも全ての素材証拠(material evidence) へのアクセスが被疑者・被告人もしくはその弁護人に許されることを確保し

(16)

なければならない(第 項)。第 項を害することなく,第 項で言及され た資料へのアクセスは,しかるべき時に(in due time),防禦の権利の実効的 な行使を許すためにそして遅くとも裁判所の判決のための弾劾の本案の提出 に基づいて,許可されなければならない。さらなる素材証拠が権限ある機関 の所持になったときは,それを許すのが適当と考えられるときに,それへの アクセスが許されるべきである(第 項)。 第 項および第 項からの離脱(derogation)の方法により,それが公正 な裁判の権利を害しないならば,ある種の資料(materials)へのアクセスは, 以下の場合は拒絶されうる。すなわち,そのアクセスが生命や他者の基本的 権利への重大な脅威となるか,あるいは,そのような拒絶が,アクセスが進 行している捜査を害したり,刑事手続が行われている加盟国の国家安全を重 大 に 害 す る よ う な 場 合 の よ う に,重 要 な 公 的 利 益 の 保 護 の た め 完 全 に (strictly)必要な場合である。加盟国は,国内法の手続に従って,この項に よる素材証拠への拒絶の決定が司法機関により行われ,もしくは少なくとも 司法機関による審査(review)に服することを確保しなければならない(第 項)。この条文で言及されたアクセスは無料(free of charge)で提供される べきである(第 項)。 第 条は,照合と救済についての規定である。 加盟国は,第 条ないし第 条にしたがって情報が被疑者・被告人に提供 されるとき,当該加盟国の法で定められた記録手続を用いることが認められ ることを確保すべきである(第 項)。加盟国は,被疑者・被告人もしくは 弁護人が,国内法の手続により,この指令による情報の提供に対する権限あ る機関のあり得る過誤や拒絶を争う権利を有することを確保すべきである (第 項)。 第 条ないし第 条は,研修(training),不切り下げ(non-regression), 国内執行(transposition),報告(report),効力発生(entry into force),名宛て 人(addressees)についての規定である。

司法の独立と EU 全域での加盟国における司法組織の相違を侵害しない範 囲で,加盟国は,裁判官,検察官,警察官等に,この指令の目的に関する適

(17)

切な研修を提供する責任があることを要請すべきである(第 条)。この指 令のなかのいかなるものも,EU 基本権憲章,欧州人権条約,国際法および より高度の保護を定めている加盟国法の他の関連する規定のもとで認められ ている権利や手続的保護措置の制限や,それからの離脱になるように解釈さ れるべきでない(第 条)。 第 条は国内執行(transposition)について定めている。すなわち,加盟 国は 年 月 日までに,この指令を遵守するために必要な法律,規程, 行政規定を発効させなければならない(第 項)。加盟国は,それらの措置 のテキストを委員会に送らなければならない(第 項)。加盟国がそれらの 措置を採択するときは,それらはこの指令への言及を含むか,もしくはその 正式の公表の機会にそのような言及を伴わなければならない。これらの言及 の措置は加盟国により決定さるべきである(第 項)。また,欧州委員会は, 必要な場合は立法的提案を伴う,この指令を遵守するために加盟国が取った 必要な措置の程度を評価する報告を, 年 月 日までに,欧州議会と欧 州理事会に提出すべきである(第 条)。そして,この指令はEU 官報に公 布後 日で効力が発生し(第 条),この指令は条約により加盟国を名宛 て人とする(第 条)。 ⑶ 付属文書たる権利告知書 通 付属文書Ⅰ 権利告知書の参考モデル このモデルの唯一の目的は,加盟国当局を国レベルでの権利告知書の起草 において支援することである。加盟国はこのモデルの使用を束縛されない。 権利告知書を準備するとき,加盟国は,加盟国の国内法規と調整したり,さ らに有用な情報を付け加えたりするため,このモデルを修正してもよい。加 盟国の権利告知書は逮捕もしくは拘禁の場合は与えられなければならない。 このことは,しかしながら,加盟国が刑事手続の他の段階で被疑者・被告人 に書面に記された情報を提供することを妨げるものでない。 あなたは,逮捕または拘禁されているとき,以下の権利を持っています。

(18)

A.弁護士の援助/法律援助 あなたは,弁護士と秘密に話す権利を持っています。弁護士は警察から独 立しています。もしあなたが弁護士と連絡を取るにおいて援助が必要なと き,警察に求めれば,警察はあなたを援助します。しかるべき場合には,援 助は無料になります。さらなる情報は警察に求めてください。 B.弾劾についての情報 あなたは,なぜあなたが逮捕または拘禁されているか,そしてあなたは何 をしたと嫌疑され訴追されて(accused)いるかを,知る権利があります。 C.通訳および翻訳 もし,あなたが警察やその他の権限ある機関によって話されている言語を 話したり理解できないときは,あなたは,無料の,通訳によって助けてもら う権利があります。通訳人は,あなたがあなたの弁護士と話すのを助けます が,その接見の内容の秘密を保持しなければなりません。あなたは,少なく とも逮捕を許しまたは拘禁をした裁判官の命令,チャージ(charge)または 起訴状および判決を含む必須的な文書の関連する部分の翻訳をしてもらう権 利があります。あなたは状況によっては,口頭での翻訳または要約を提供さ れるときもあります。 D.黙秘権 警察若しくは他の権限ある機関によって質問を受けている間,あなたは述 べられている犯罪につき質問に答える必要はありません。あなたの弁護士が それにつき決定するのを助けます。 E.書類へのアクセス あなたは逮捕または拘禁されているとき,あなた(またはあなたの弁護士) は逮捕または拘禁を争うのに必要とする基本的(essential)書類にアクセス する権利があります。もし事件が公判に付されたら,あなた(またはあなた の弁護士)は,有利不利を問わず素材証拠にアクセスする権利があります。 F.逮捕または拘禁の第三者への告知/領事館または大使館への告知 あなたは逮捕または拘禁されているとき,あなたは,例えば家族または雇 い主のような第三者に,あなたの拘禁を告知してほしいかを警察に告げるべ

(19)

きです。しかるべき場合に,第三者にあなたの拘禁を告知してもらう権利は 一時的に制限されることがあります。その場合は,警察がこれをあなたに告 げます。

もしあなたが外国人の場合は,領事または大使館(consular authority or embassy)にあなたの拘禁を告知してほしいかを警察に言いなさい。また, あなたが領事または大使館(consular authority or embassy)と公式に連絡をと りたいときは,警察にそれを言いなさい。 G.緊急医療援助 あなたは逮捕または拘禁されているとき,緊急医療援助を受ける権利があ ります。そのような援助の必要があるときは,警察に知らせなさい。 H.自由剝奪の期間 逮捕の後,あなたは,最長で…〔適用され得る時間数または日数を入れる〕 の期間,自由を剝奪されたり拘禁されることがあります。その期間の終わり に,あなたは釈放されるか,さらに拘禁されるかを決める裁判官による聴聞 を受けるかのどちらかになります。あなたの弁護士,裁判官に,あなたの逮 捕を争い,拘禁の審査を受け,また一時的な釈放を請求する可能性があるか 聞きなさい。 付属文書Ⅱ 欧州逮捕令状により逮捕された者に対する権利告知書の参考モデル このモデルの唯一の目的は,加盟国当局を国レベルでの権利告知書の起草 において支援することである。加盟国はこのモデルの使用を束縛されない。 権利告知書を準備するとき,加盟国は,加盟国の国内法規と調整したり,さ らに有用な情報を付け加えたりするため,このモデルを修正してもよい。 あなたは,逮捕または拘禁されているとき,以下の権利を持っています。 A.欧州逮捕令状についての告知 あなたは,その基礎の上にあなたが逮捕された欧州逮捕令状の内容につい て告知してもらう権利を持っています。

(20)

B.弁護士の援助 あなたは,弁護士と秘密に話す権利を持っています。弁護士は警察から独 立しています。もしあなたが弁護士と連絡を取るにおいて援助が必要なと き,警察に求めれば,警察はあなたを援助します。しかるべき場合には,援 助は無料になります。さらなる情報は警察に求めてください。 C.通訳および翻訳 もし,あなたが警察やその他の権限ある機関によって話されている言語を 話したり理解できないときは,あなたは,無料の,通訳によって助けてもら う権利があります。通訳人は,あなたがあなたの弁護士と話すのを助けます が,その接見の内容の秘密を保持しなければなりません。あなたは,欧州逮 捕令状についてあなたが理解できる言語で翻訳をしてもらう権利がありま す。あなたは状況によっては,口頭での翻訳または要約を提供されるときも あります。 D.同意可能性 あなたは,あなたを追及している国に引き渡されることに同意してもよい し,しなくてもよいです。あなたの同意は手続を早期化するでしょう〔加盟 国の可能な追加;この決定を後の段階で変更することは困難または不可能で す〕。さらなる情報はあなたの弁護人か当局に求めてください。 E.聴聞 もしあなたがあなたが引き渡されることに同意しないときは,司法当局に より聴聞される権利があります。

年ロードマップ・

年 EU 指令の採択に至る経緯

EU 理事会決議前文( 項)の,「手続的権利についての過去数

年の議論は,具体的な成果を導かなかった」との指摘は,その議論の中

で,「欧州の刑事手続における被疑者・被告人の手続的権利の保護につい

てのグリーン・ペーパー」(以下,「

年グリーン・ペーパー」と呼ぶ)

に基づく

!

,「

EU 全域共通の刑事手続における一定の手続的権利について

(21)

の EU 理事会枠組決定のための欧州委員会提案」(以下,「

年枠組決

定提案」と呼ぶ)が

!

,EU 理事会で採択にいたらなかったことを指してい

る。そこで以下,

年枠組決定提案を経て,

年ロードマップ,

年 EU 指令 EU の採択に至る,EU における手続的権利保護の共通最小限

基準の追及の経緯を確認することにする。

.刑事における相互承認原則の採用と

年枠組決定提案

⑴ 相互承認原則と相互信頼

マーストリヒト条約(

月 日発効),すなわち EU 発足時

の欧州連合条約(以下,「EU」条約と呼ぶ)の前文は,「自由,民主主義,

人権と基本権の尊重,法の支配の原則に対する忠誠を確認する」(EU 条

約前文,

年)と宣言していたが,手続的権利保護の具体的規定はな

かった。発足当時の EU の活動領域は,経済分野・共同体(EC)事項,

共通外交・安全保障,および司法・内務協力(Justice and Home Affairs)の

いわゆる三本柱構造であった。司法・内務協力の柱の内容として,難民保

護,移民問題,域外国境管理,警察協力と並んで,「民事・刑事司法協力」

の項目はあったが,その内容として手続的権利保護はまだ浮かんでいな

い。なお,この三本柱構造のうち経済分野・共同体(EC)事項は経済分

野で超国家的性格のものとされたが,司法・内務協力は共通外交・安全保

障と共に加盟国間政府協力,加盟国の合意が必要な事項であった

"

EU 条約(マーストリヒト条約)を改正したアムステルダム条約(

年 月 日発効)は,その 条において,自由・安全・司法の領域(Area

of Justice, Freedom and Security)の建設が EU の目的であることを明らか

にした。但し,司法・内務協力の第三の柱から,難民庇護,移民問題,域

外国境管理および民事司法協力は欧州共同体(EC)事項の第一の柱に移

されたが,刑事司法・警察協力(Police and Judicial Co-operation in Criminal

Matters)は第三の柱に残された。この制度的枠組みは,EU 拡大にそなえ

た機構改革を行ったニース条約(

年 月 日発効)による EU 条約

(22)

(アムステルダム条約改正後の EU 条約)改正後も変わらなかった

!

しかしながらアムステルダム条約・ニース条約下の EU は,政策的には,

加盟国間の個別的政府間協力の「捜査共助」・「司法共助」や,条約による

国家間の捜査協力・司法協力を越えて,EU に加盟していることによる,

いわば「EU ワイド(EU-Wide)の相互承認(mutual recognition)原則」の

刑事司法協力の実施を目指すことになった。すなわち,欧州理事会の

年タンペレ(フィンランド)欧州理事会議長国総括(Presidency conclusion,

以下「タンペレ欧州理事会議長国総括」と呼ぶ)は

"

,同総括の「B.真の

司法の欧州領域」の「Ⅵ 司法的決定の相互承認」の項目において,欧州

理事会は,「相互承認原則(Principle of mutual recognition)は EU における

『民事刑事における司法協力の礎石(cornerstone of judiciual co-operation)』

たるべきものと承認する」(タンペレ欧州理事会議長国総括第

項)と

し,「欧州理事会は,EU 理事会および欧州委員会に対し,

月ま

でに相互承認の原則を実施する措置の計画を採択することを要請する」

(タンペレ欧州理事会議長国総括第

項)と述べている。

相互承認とは,ある国で下された裁判その他の司法的決定を,国家間に

おいて相互に承認し他の国でそのまま執行することをすることであり,そ

れまでは刑事については特定の国家間の条約で個別の事項につき考えられ

ていた。EU における相互承認原則の採択とは,EU 加盟国間においては

民事刑事の裁判・決定は一般に相互承認され執行されることが原則であ

り,その実施をはかっていくことを確認するものであった。

欧州委員会は,このタンペレ欧州理事会の要請を受け

日に「刑事における決定の相互承認原則の実施措置プログラム」を採択し,

年に公布した(以下,「

年相互承認原則実施措置プログラム」と

呼ぶ)

#

。この

年相互承認実施措置プログラムの序文によれば,刑事に

おける相互承認原則は

年 月のカーディフ欧州理事会で提起され,

さらにアムステルダム条約(

年 月 日発効) 条の自由・安全・

司法の領域(Area of Justice,Freedom and Security)としての EU 建設のた

(23)

めの,

月に EU 理事会と欧州委員会により採択された行動計画

(F)項でも議論されている。

また欧州理事会は,タンペレ欧州理事会で最初の司法・内務関係多年次

計画であるタンペレ・プログラム

年−

年)を採択後,さらに

月にタンペレ・プログラムを引き継ぐ,「自由・安全・司法領

域の強化のためのハーグ・プログラム」(

年−

年)を採択して

刑事司法協力を含む相互承認原則による様々な EU ワイド(EU-Wide)の

司法協力の推進を EU 理事会などに要請した。欧州共通逮捕状

および加盟

国間の引渡(surrender)についての

年の EU 理事会枠組決定は

,「こ

年相互承認原則実施措置プログラム」にもとづく EU

ワイド(EU-Wide)の刑事司法協力の例である。

制度的には加盟国に権限が強く残る第三の柱たる刑事司法・警察協力

の分野で,相互承認原則に基づく刑事司法協力の具体的措置について加盟

国の合意を得るのは容易なことではない。そこで合意を得るために,加盟

国による他の加盟国の刑事司法に対する「相互信頼(mutual trust)」が存

することが必要であるとの認識が生まれてきた。タンペレ欧州理事会議長

国総括第

項は,前示の部分に引き続いて,この相互承認原則実施措置

計画においては「欧州執行命令(European Enforcement Order)の見地,お

よび加盟国の基本的法原理を尊重しつつ,相互承認原理の執行を促進する

ため必要と考えられる共通最小限基準が満たされていると考えられる手続

法の見地から,検討が行われるべきである」と述べている。また,欧州委

員会の

年相互承認原則実施措置プログラムは,序文において,「相互

承認は加盟国間の協力の強化のためのみならず,また個人の権利の保護の

増強のためにも策定されなければならない」と述べ,相互承認の実行の程

度を決める要因の一つとして,「第三者,被害者,被告人の権利の保護の

仕組み(mechanisms)」を挙げている。また,同プログラムは,刑事にお

ける判決の相互承認を含む

の相互承認原則実施のための措置を列挙し

たが,またその序文において,「刑事における判決の相互承認原則の実施

(24)

は,加盟国が相互の刑事司法システムについての信頼を有することを前提

とする。この信頼は,特に,加盟国の自由と民主主義の原理,および人

権,基本的自由および法の支配への尊重の共有に根拠を有する。」(第 段

落)と述べるなどしている。

⑵ 欧州委員会の

年枠組決定提案

欧州委員会

年グリーン・ペーパー

欧州委員会は,被疑者・被告人等の手続的保護の共通最小限基準を,

EU 立法において実現することを目指すことになった。

そのため,欧州委員会は,まず

年に,被疑者・被告人等の手続的

保護の共通最小限基準の実現の協議プロセス(consultation process)とし

て,「欧州の刑事手続における被疑者・被告人の手続的権利の保護につい

てのグリーン・ペーパー」(以下,「

年グリーン・ペーパー」と呼ぶ)

を明らかにした

!

年グリーン・ペーパーは,欧州委員会コミュニケ

「自由,安全,司法の領域を目指して」

年)と

"

,欧州委員会の

相互承認原則実施措置プログラムを踏まえている。前者においては,欧州

委員会は,「個人の権利の保護の最小限基準は,検察官,裁判所,捜査官

の権限を増強する司法協力措置に対する必須の平衡をとる錘(necessary

counterbalance)であった」と述べており,後者において EU 理事会は,「相

互承認は加盟国間の協力を強化するためのみならず,個人の権利の保護の

増強のためにも策定されなければならない」と述べていると指摘されてい

る。

年グリーン・ペーパーの作成にあたっては,求意見書(consultation

paper)による関係者からの意見聴取が行われた。欧州委員会が意見を求

めたのは,①権利告知書の導入,②弱者グループにいかにして配慮を行う

か,③個別的な人権であり,そして最後の③個別的な人権については,無

罪の推定,拘禁の何人かへの告知,法的助言と援助,通訳者・翻訳者,保

釈,自己負罪拒否特権,領事の援助に対する権利,証拠収集・取扱の公正

(25)

性,再審査(review)の権利,未決・帰結の拘禁に対する特別な保障,一

事不再理および欠席審判であった

!

。欧州委員会は,さらに加盟国への質問

書(questionnaire),専門家会議をへて,公正な裁判(Fair trial)の概念に

関わる全ての権利は重要であるとしつつ,現段階で優先性がある五つの権

利を基本的権利として

年グリーン・ペーパーで提起した。すなわち,

①法的援助と代理に対する権利,②被疑者・被告人がその者に対する告発

(charge)を知り手続を理解するための,能力と資格(または免許)のあ

る通訳者及びもしくは翻訳者に対する権利,③特別な弱者の範疇にある者

のための適切な保護,④領事の援助,⑤権利の存在についての知識/権利

告知書である

"

年枠組決定提案

欧州委員会は

年 月

日に,

年グリーン・ペーパーが提起

した五つの基本的権利を単一文書により包括的に立法することを目指す,

法典化の手法による理事会枠組決定の提案(

年枠組決定提案)を EU

理事会に対して行った

#

年枠組決定提案は,

項目からなる理由書

前文と

カ条の枠組決定案と,付属文書Aの権利告知書モデルからなっ

ている。

年枠組決定提案の理由書前文によれば,

年枠組決定提案の概

要は以下のようである。

年枠組決定提案は,

年グリーン・ペーパーについて,書面

通と電子メールや電話による返答,

年 月の公聴会を踏まえて行わ

れた。(理由書前文

項,

項)

年枠組決定提案の基本的目的は,欧州の刑事手続に適用される一

定の手続的権利に関して共通最小限基準を定めることである。EU 条約(ア

ムステルダム条約・ニース条約改正後)第 条は,EU は欧州人権条約で

保障され,加盟国に共通の憲法的伝統から帰結される基本的権利を尊重す

べきであると定めている。さらに,

月には EU 基本権憲章が宣

言されている。(理由書前文 項, 項)

(26)

年枠組決定提案に至る経過としては,相互承認と刑事司法の協力

を結びつける,タンペレ欧州理事会議長国総括第

項および第

項,欧

州理事会の EU 理事会および欧州議会に対する

年 月

日の刑事に

関する最終判決の相互承認に関するコミュニケ,欧州委員会の

年相

互承認原則実施措置プログラムが指摘されている。(理由書前文 ないし

項)

序文の第 項は,タンペレ欧州理事会議長国総括第

項,序文の な

いし 項は,欧州委員会の

年相互承認原則実施措置プログラムにつ

き述べ,引証している。

カ条の枠組決定案のうち保障される権利そのものに関わるのは,第

条ないし第

条であり,

年グリーン・ペーパーが提起した つの

基本的権利を具体化している。すなわち,①法的援助の権利(第 ないし

第 条),②通訳および翻訳の権利(第 ないし第 条),③手続の意味を

理解しまたは対応できない者に対する特別な配慮の権利(第

条および

条),④拘禁されている者が家族等との連絡を持つ権利(第

条)お

よび領事との連絡を持つ権利(第

条),⑤全ての被疑者にその権利を書

面すなわち権利告知書で告知する加盟国の義務である。

付属文書Aは,

年枠組決定提案による権利告知書の例であり,

.法的助言, .通訳人の権利, .関連文書の翻訳の権利, .特別

な配慮, .拘禁されている者が外部との連絡を持つこと,からなる共通

のAの部分と,Bの部分からなり,Bの部分は「その他の権利」であり,

加盟国の国内法で保障される権利が記されることになっていた。

年枠組決定提案は,しかしながら EU 理事会で一致を得ること

ができず,

年 月には採択に失敗した。議論を呼んだのは,①

年枠組決定提案は十分な「法的基礎(competence)」を有しているかとい

う点と,②欧州人権条約の観点からの「付加的価値(added value)」を与

えるかという 点であった

!

。この 点は,実は既に,

年枠組決定提

案の作成段階で

年グリーン・ペーパーに対する反対意見として現れ

(27)

ていた(

年枠組決定提案,序文

項)。すなわち①補完性原則,②

法的基礎,③「共通最小限基準」は基準の切り下げを結果しないかの懸念,

④共通最小限基準は欧州人権条約で既に定められているという議論,⑤こ

の提案の実施は技術的に困難であるという 点の反対意見の中の,②及び

③が,EU 理事会で議論を呼んだ 点であった。そして

年枠組決定

提案は,反対意見 点に対する回答を既にその序文で示していたのであっ

た(第

ないし

項)。すなわち法的基礎については,当時の EU 条約

条⒞を用意し(

項),欧州人権条約の観点からの「付加的価値(added

value)に対してはその実施において差違があり,必要があるという認識

を明らかにしていたのである(

項)。

議論は継続され,オーストリア,ドイツなど時々の議長国による幾つか

の修正提案も行われたが,当時の EU 条約(アムステルダム条約・ニース

条約改正後)によれば,

年枠組決定が議論されたこの刑事司法協力

の分野には当初の EU の第三の柱的性格が残されており,制度上で全員一

致が要求されて採択には至らなかった。採択には至らなかった実質的理由

には,加盟国法への影響や,実施の困難性が懸念されたにもかかわらず

年枠組決定提案が一挙立法の法典化方式を追及したこともあったと

思われる。

年枠組決定提案は,被拘禁者の外部との連絡以外は,拘

禁されている被疑者に限定しない被疑者一般についての提案であった。

しかしながら,政策的には,刑事手続における被疑者・被告人の手続的

権利保護の共通最小限基準の必要性は,欧州理事会の「自由・安全・司法

領域の強化のためのハーグ・プログラム」(

年−

年)で,

年枠組決定提案の

年末までの採択が要請されるなど

!

,広く認められ

ていた。

年ロードマップおよび

年 EU 指令の採択

年ロードマップ

年になって欧州委員会より,来るべきストックホルム・プログラ

(28)

ムに向けて「自由,安全そして市民に奉仕する司法」と題する欧州議会お

よび

EU 理事会に対する欧州委員会コミュニケが送られるとともに(

年 月

!

),欧州理事会議長国スウェーデンにより「被疑者・被告人の

刑事手続における手続的権利の強化のためのロードマップ」(

年 月

日)が提起された

"

。そして

EU 理事会は,リスボン条約の発効直前に,

欧州理事会議長国スウェーデンの提案を受け入れて,

EU 理事会

決議により

年ロードマップを,被疑者・被告人の手続的権利の強化

のための

EU レベルでの将来の行動の基礎として採択した

#

年ロードマップの大要は,本稿の「Ⅱ

年ロードマップと

EU 指令および権利告知書」で先に紹介したところである。

年ロードマップは,EU 理事会の決議という,EU 理事会枠組決定のよう

な拘束力を持たないものである上に,

年枠組決定提案で追求されて

きた単一文書による法典化でなく

$

, 項目についての措置を,ステップ・

バイ・ステップ方式により項目毎に実施しようというものであった。項目

毎のステップ・バイ・ステップ方式の採用により,

年枠組決定提案

の加盟国法への影響という懸念が緩和されたものと思われる。なお,

年になりリスボン条約の発効が確実になり,そのもとでは司法・内務事項

の第三の柱的性格は消え全員一致制は求められなくなることになってい

た。また,刑事手続における被疑者・被告人の手続的権利保護の共通最小

限基準の必要性の認識も,さらに高まっていたものと思われる。

年 EU 指令

リスボン条約の発効後の自由,安全,司法の領域

EU 指令が採択されたのは,

年 月

日であり,リスボン

条約による改正後の

EU 条約のもとである。

EU 指令の理解のた

め,これにつき少し述べる。

リスボン条約(欧州連合条約及び欧州連合の運営に関する条約)は,

日に署名されていたが,

年ロードマップが採択され

(29)

た直後の

月 日に発効した。それは,EU 条約(マーストリヒ

ト条約)のアムステルダム条約,ニース条約に次ぐ改正条約であり,それ

により EU が制度的に完成したとも言われている

!

。リスボン条約改正後の

EU 条約は,EU は,人間の尊厳の尊重,自由,民主主義,平等,法の支

配,ならびに少数派に属する人びとの権利を含む人権の尊重という価値に

基盤を置いて成り立つ(EU 条約第 条)と宣言するとともに,EU 基本

権憲章に定める権利,自由および原則が条約と同じ法的価値をもつことを

認めた(EU 条約 条 項)。また,従来の欧州共同体設立条約は,リス

ボン条約により EU 機能条約(the Treaty on the Functioning of the European

Union)となり,EU の権能,EU 各機関の活動を規律することとなった。

EU 条約によれば,EU の権能の範囲は,授権の原則により定められ,

EU の権能の行使は,補完性および比例性の原理により規律される(EU

条約 条 項)。また EU 機能条約によれば,自由,安全,司法の領域は,

EU と加盟国との間の共有権限に属し( 条 項J),「国境を越える次元

の刑事問題における判決と司法決定の相互承認を推進し,ならびに警察・

司法協力を促進するために必要な範囲で,欧州議会と理事会は,通常立法

手続に従って採択される指令という措置によって,最小限の法規を確立

することができる。その法規は加盟国の法的伝統と体制の違いを考慮に

入れる。その法規は以下の事項に関わる。…⒝ 刑事手続における個人の

権利(以下略)」(

条 項),というものであった。そこでは EU 理事会

と欧州議会による通常の立法手続(

条)により指令(Directive・

条 項)などの立法が行われうる

"

リスボン条約発行後,欧州理事会が,司法・内務分野の多年次プログラ

ムとして,タンペレ・プログラム(

年−

年),ハーグ・プログラム

年−

年)を受け継ぎ採択したのがストックホルム・プログラム

である。すなわち,欧州理事会は,EU 機能条約が認めた自由,安全およ

び司法の領域における立法および運用計画のための戦略的指針を策定する

権限に基づき(

条),「ストックホルム・プログラム−市民に奉仕し市民

(30)

を保護する開かれた安全な欧州」(Stockholm Programme,

)を

採択した(

. . )。そして,ストックホルム・プログラムの第 項

「市民の権利の推進:人権の欧州」の中で,「ロードマップはこれよりス

トックホルム・プログラムを構成する」( ..)と,それへの組み込みが

宣言されている。

年 EU 理事会決議は,

年ロードマップを被疑

者・被告人の手続的権利の強化のための EU レベルでの将来の行動の基礎

として承認する「決議(Resolution)」という,「枠組決定(Framework)」

より法的には拘束力の弱いものであったが,しかし,

年ロードマッ

プは,ストックホルム・プログラムの一部とされることにより,その掲げ

る各措置は,欧州理事会から欧州委員会,EU 理事会,欧州議会へ要請さ

れることとなった。ロードマップの実効性は格段に保証されたのである。

すなわちロードマップの掲げる各措置は,リスボン条約後の EU において

「指令」の形で加盟国宛てに立法されるべきこととなったのである。

年 EU 指令の採択

年 EU 指 令 は,リ ス ボ ン 条 約 後 の EU 機 能 条 約 に 基 づ く 指 令

(Directive・

条 項)として立法されたものである。すなわち,

年 EU 指令の名称に含まれているように,欧州委員会により欧州議会およ

び EU 理事会に提案され,通常の立法手続により欧州議会および EU 理事

会により採択されたのである

!

年 EU 指令の大要は,本稿の「Ⅱ

年ロードマップと

EU 指令および権利告知書」で先に紹介したところである。

年 EU 指令は,その前文⑼で明らかにするように EU 機能条約第

条第 項の「⒝ 刑事手続における個人の権利」を考慮して立法され

たものであるので,

年枠組決定提案におけるように立法権限の法的

根拠を問われることはない。

年 EU 指令によれば,EU 基本権憲章

条と欧州人権条約が存す

るのに,

年 EU 指令を採択する必要は次のようである。EU 基本権憲

条と欧州人権条約 条は公正な裁判の権利を明記し,基本権憲章

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