イ ネ い も ち 病 の 生 態 と 防 除 に 関 す る
Q&A
平 成 25 年 3 月 11 日 佐 賀 農 業 技 術 防 除 セ ン タ ーQ&A の 項 目
( カ ッ コ の 中 は キ ー ワ ー ド )Ⅰ . い も ち 病 の 特 徴 編
Q1 い も ち 病 は 、 ど の よ う な 病 原 菌 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ ま す か ? ( か び の 一 種, 胞 子 で 増 え る ) Q2 い も ち 病 に は 、 い ろ い ろ な 呼 び 方 が あ る の で す か ? ( 葉 い も ち, 穂 い も ち , 枝 梗 い も ち , 穂 首 い も ち ) Q3 葉 い も ち の 病 斑 に は 、 い く つ か の 型 ( タ イ プ ) が あ る の で す か ? ( 進 展 型 病 斑, 停 止 型 病 斑 , 胞 子 形 成 ) Q4 い も ち 病 の 第 一 次 伝 染 源 ( 最 初 の 発 生 源 ) は ど こ で す か ? ( 保 菌 種 籾 が 主 要 な 発 生 源, 菌 は 田 ん ぼ で は ほ と ん ど 越 冬 し な い ) Q5 い も ち 病 菌 の 伝 染 の サ イ ク ル は 、 ど の よ う に な っ て い ま す か ? ( 保 菌 種 籾, 葉 い も ち , 穂 い も ち ) Q6 い も ち 病 は ど の よ う な 気 象 条 件 で 発 生 が 多 く な り ま す か ? ( 降 雨, 結 露 , 葉 面 の ぬ れ , 胞 子 の 発 芽 ) Q7 感 染 し や す い 日 を 判 定 す る 「ブ ラ ス タ ム 」と は 、 ど の よ う な プ ロ グ ラ ム で す か ? ( ぬ れ 時 間 の 推 定, 感 染 し や す い 日 を 判 定 , 葉 い も ち は 感 染 か ら 発 病 ま で 約 1 週 間 ) Q8 い も ち 病 が 発 生 し や す い 年 と は ? ま た 、 近 年 の 発 生 状 況 は ? ( 冷 夏 長 雨 の 年 に 多 発 生, 1993、 2008、 2011 年 な ど に 多 発 生 ) Q9 田 植 え 時 期 別 の 葉 い も ち の 発 生 パ タ ー ン を 教 え て く だ さ い 。 ( 早 期 ・ 早 植 え ・ 普 通 期 水 稲, 初 発 生 時 期 , 発 生 ピ ー ク 時 期 ) Q10 「 葉 い も ち 」 に よ る 被 害 に つ い て 教 え て く だ さ い。 ( ず り こ み 症 状, 枯 れ る , 穂 い も ち の 発 生 に つ な が る ) Q11 「 穂 い も ち 」 の 感 染 、 発 病 に よ る 被 害 に つ い て 教 え て く だ さ い 。 ( 収 量 に 影 響 を 及 ぼ す 感 染 は 出 穂 約 3 週 間 後 ま で , 穂 い も ち は 直 接 被 害 に 結 び つ く )Ⅱ . い も ち 病 の 薬 剤 防 除 編
Q12 種 子 消 毒 の ポ イ ン ト は ? ( 健 全 な 種 籾, 塩 水 選 , 種 子 消 毒 の 徹 底 , ベ ン レ ー ト 水 和 剤 と 慣 行 薬 剤 の 混 用 ) Q13 防 除 薬 剤 の 種 類 を 教 え て く だ さ い 。 ( 異 な る 系 統 の 薬 剤 に よ る 体 系 防 除, 薬 剤 耐 性 菌 , QoI 剤 , MBI-D 剤 ) Q14 防 除 薬 剤 の 予 防 効 果 や 治 療 効 果 に つ い て 教 え て く だ さ い 。 ( い も ち 病 菌 が イ ネ に 侵 入 す る の を 阻 止, イ ネ に 侵 入 し た 後 の 活 性 を 阻 害 ) Q15 育 苗 箱 に 粒 剤 を 処 理 す る 場 合 に 、 何 か 気 を つ け る こ と は あ り ま す か ? ( 薬 剤 の 系 統, 長 期 残 効 型 , 適 正 な 施 用 量 ) Q16 田 ん ぼ で の 「 葉 い も ち 」 の 防 除 は 、 い つ 頃 行 う の が 効 果 的 で し ょ う か ? ( 早 期 発 見 ・ 早 期 防 除, 進 展 型 病 斑 が み ら れ る 場 合 は 早 急 に 防 除 ) Q17 田 ん ぼ で の 「 穂 い も ち 」 の 防 除 は 、 い つ 頃 行 う の が 効 果 的 で し ょ う か ? ( 穂 ば ら み 期 ・ 穂 揃 い 期 の 防 除, 上 位 5 葉 が 穂 い も ち の 伝 染 源 , イ ネ を 注 意 深 く 観 察 ) Q18 い も ち 病 以 外 の 病 害 虫 防 除 は 、 ど の よ う に し た ら よ い で し ょ う か ? ( 紋 枯 病, カ メ ム シ 類 , 調 査 に 基 づ く 防 除 の 判 断 )Ⅲ . い も ち 病 を 多 発 生 さ せ な い よ う な イ ネ づ く り 編
Q19 田 植 え 時 に 、 い も ち 病 対 策 と し て 農 薬 以 外 で 何 か 工 夫 で き る こ と は あ り ま す か ? ( 捕 植 苗 の 除 去 ・ 処 分, 胞 子 の 飛 散 に よ っ て 発 病 が 広 が る 範 囲 ) Q20 品 種 に よ っ て い も ち 病 の 発 生 量 に 差 が あ り ま す か ? ( い も ち 病 に か か り や す い, い も ち 病 に 弱 い ) Q21 施 肥 と い も ち 病 の 発 生 と の 関 係 は ? ( 窒 素 肥 料 を 多 用 す る い も ち 病 が 多 発 生 し や す い, 適 正 な 施 肥 ))Ⅳ . 防 除 対 策 の ま と め 編
Q22 防 除 対 策 の 要 点 を ま と め て く だ さ い 。 ( 防 除 対 策 10 か 条 )Ⅰ . い も ち 病 の 特 徴 編
Q1 い も ち 病 は 、 ど の よ う な 病 原 菌 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ ま す か ? ※ 目 次 に 戻 る A1 イ ネ い も ち 病 菌 は 、「か び の 一 種 」で あ り 、子 の う 菌 類( シ ノ ウ キ ン ル イ )と い う グ ル ー プ に 分 類 さ れ ま す 。 「か び の 一 種 」で す の で 、 胞 子 で 増 え ま す 。 胞 子 の 長 さ ( 大 き さ ) は 0.01~ 0.02mm で あ り 、 肉 眼 で は 見 え ま せ ん が 、 顕 微 鏡 で 拡 大 す る と 確 認 で き ま す ( 写 真 1, 2) 写 真 1 い も ち 病 菌 の 胞 子 ( 1) 写 真 2 い も ち 病 菌 の 胞 子 ( 2) Q2 い も ち 病 に は 、 い ろ い ろ な 呼 び 方 が あ る の で す か ? ※ 目 次 に 戻 る A2 イ ネ い も ち 病 は 、発 生 す る 部 位 に よ っ て 、症 状 や 呼 び 方 が 異 な り ま す 。葉 に 発 生 す る い も ち 病 を 葉 い も ち ( 写 真 3, 4, 5)、 穂 が 侵 さ れ る ( ダ メ ー ジ を 受 け る ) 場 合 を 総 称 し て 穂 い も ち ( 写 真 6, 7) と い い ま す 。 さ ら に 、穂 い も ち で は 発 生 部 位 に 応 じ て 、穂 首 部 が 侵 さ れ た も の を 穂 首 い も ち( 写 真 8)、 枝 梗 が 侵 さ れ た も の を 枝 梗 い も ち ( 写 真 8) と 呼 ん で い ま す 。 写 真 3 葉 い も ち ( 1) 写 真 4 葉 い も ち ( 2) 写 真 5 葉 い も ち ( 3) 写 真 6 穂 い も ち ( 1)写 真 7 穂 い も ち ( 2) 写 真 8 枝 梗 い も ち と 穂 首 い も ち Q3 葉 い も ち の 病 斑 に は 、 い く つ か の 型 ( タ イ プ ) が あ る の で す か ? ※ 目 次 に 戻 る A3 葉 い も ち の 病 斑( ビ ョ ウ ハ ン:病 原 菌 が 葉 の 内 部 に 入 っ て 、葉 に 生 じ た 症 状 ) は 、大 き さ 、形 、色 、性 質 な ど か ら 、進 展 型( 急 性 型 )、停 止 型( 慢 性 型 )、褐 点 型 な ど に 分 け ら れ ま す ( 写 真 9)。 進 展 型 病 斑 は 、円 形 な い し 楕 円 形 で 、周 縁 が や や 不 鮮 明 な 灰 緑 色・暗 緑 色 を し て い ま す( 写 真 9)。「 葉 い も ち の 病 斑 は 、最 盛 期 に は 、1 回 に 約 1~ 5 万 個 の 胞 子 を つ く る( 形 成 す る )」 と の 報 告 が あ り ま す 。 こ の こ と か ら 、 進 展 型 病 斑 が み ら れ る 場 合 に は 、 特 に 注 意 が 必 要 で す 。た だ し 、停 止 型( 慢 性 型 )と 呼 ば れ る 病 斑 で あ っ て も 、胞 子 を 形 成 し て い ま す 。 そ の 後 の 天 候 と 病 気 の 進 み 具 合 を 、 注 意 深 く 観 察 す る 必 要 が あ り ま す 。 写 真 9 葉 い も ち の 病 斑 の 型 ( タ イ プ ) Q4 い も ち 病 の 第 一 次 伝 染 源 ( 最 初 の 発 生 源 ) は ど こ で す か ? ※ 目 次 に 戻 る A4 い も ち 病 菌 が 寄 生 し て い る イ ネ の 種 籾 、す な わ ち 保 菌 種 籾 が 、主 な 最 初 の 発 生 源 と な り ま す 。保 菌 種 籾 が 、育 苗 箱 で 発 生 す る 苗 の 葉 い も ち に つ な が り ま す 。さ ら に 、こ れ ら の 苗 の 田 植 え や 取 り 置 き 苗 に よ っ て 、い も ち 病 菌 が 田 ん ぼ に 持 ち 込 ま れ ま す 。県 内 の 田 ん ぼ に お い て 、収 穫 間 近 の 水 稲 の 、み か け 状 健 全 な 籾 を 採 取 し 、保 菌 し て い る 割 合 を 調 べ た 結 果 を 示 し ま す ( 表 1)。 毎 年 、 少 な い 割 合 で あ っ て も 保 菌 籾 が 見 つ か る 点 に ご 注 目 く だ さ い 。こ れ ら の 籾 が 、必 ず し も 種 籾 と し て 流 通 す る わ け で は あ り ま せ ん が 、い も ち 病 の 最 初 の 主 要 な 発 生 源 と な り ま す 。 な お 、い も ち 病 に よ る 被 害 わ ら も 、乾 燥 状 態 で 冬 を 越 す と 翌 年 の 発 生 源 に な り 得 ま す 。 し か し 、「 雨 に う た れ る 」「 被 害 わ ら を 田 ん ぼ に す き 込 む 」よ う な 条 件 で は 、第 一 次 伝 染 源 と は な り ま せ ん 。こ の こ と か ら 、佐 賀 県 で は 、い も ち 病 菌 が 田 ん ぼ で 越 冬 し て 翌 年 の 発 生 源 と な っ て い る 事 例 は 、 ほ と ん ど な い と 考 え ら れ ま す 。 枝 梗 い も ち 穂 首 い も ち 停 止 型 ( 慢 性 型 ) 進 展 型 ( 急 性 型 ) 褐 点 型
Q5 い も ち 病 菌 の 伝 染 の サ イ ク ル は 、ど の よ う に な っ て い ま す か ? ※ 目 次 に 戻 る A5 い も ち 病 菌 は 、「 保 菌 種 籾 」→ 「苗 で の 葉 い も ち 」→ 「田 ん ぼ で の 葉 い も ち 」→ 「田 ん ぼ で の 穂 い も ち 」→ 「 保 菌 種 籾 」 と い う 年 間 サ イ ク ル で 伝 染 し ま す ( 写 真 10→ 11→ 12→ 13 →10・ ・ ・ )。 ま ず 、 重 症 籾 は 塩 水 選 で 除 去 さ れ ま す が 、 正 常 に 念 実 し て い る 籾 で も 保 菌 し て い る 場 合 が あ り(Q4 の 表 1)、① 保 菌 籾 の 播 種 は( 写 真 10)、② 育 苗 箱 や 取 り 置 き 苗 で の 葉 い も ち の 発 生 に つ な が り ま す( 写 真 11)。さ ら に 、③ 苗 で の 葉 い も ち は 、田 ん ぼ で の 葉 い も ち の 発 生 源 と な り( 写 真 12)、④ 田 ん ぼ で の 葉 い も ち の 発 生 は 、穂 い も ち を 引 き 起 こ し ま す ( 写 真 13)。 こ れ が 、 ま た ① 保 菌 籾 へ と つ な が り ま す ( 写 真 10)。
葉 い も ち
穂 い も ち
① 保 菌 籾 (イ メ ー ジ ) ④ 葉 い も ち と 穂 い も ち ③ 葉 い も ち 表1 県内各地から採取した水稲籾のいもち病菌保菌籾率 年次 圃場数 調査総籾数 保菌籾数 保菌籾率 粒 粒 % 平成17年産 42 2100 10 0.48 平成18年産 45 2250 22 0.98 平成19年産 30 1500 1 0.07 平成20年産 35 1750 1 0.06 平成21年産 38 1900 2 0.11 平成22年産 33 1650 3 0.18 平成23年産 31 1550 4 0.26 注)県内の早期、早植え、普通期水稲からランダムに圃場を抽出。各圃場か ら、みかけ状健全な水稲の穂を10本ずつ採取し、それぞれの穂から5粒ずつ、 合計50粒の籾について、素寒天培地を用いて保菌率調査を実施。 ② 苗 で の 葉 い も ち 写 真 11 写 真 10 写 真 12 写 真 13Q6 い も ち 病 は ど の よ う な 気 象 条 件 で 発 生 が 多 く な り ま す か ? ※ 目 次 に 戻 る A6 連 続 し た 雨 、曇 天 、も や 、霧 、日 陰 な ど の 条 件 で は 、イ ネ の 葉 面 の 「ぬ れ 」が な か な か 消 え ず ( 写 真 14, 15)、 い も ち 病 が 発 生 し や す く な り ま す 。 こ れ は 、 い も ち 病 菌 の 胞 子 が 発 芽 し て イ ネ の 中 に 入 っ て い く た め に は 、 雨 な ど に よ る 「 ぬ れ 」 が 必 要 と な る た め で す 。 そ こ で 、 イ ネ の 葉 面 に 水 滴 が 付 い て い る 時 間 が 長 い ほ ど 、 イ ネ が い も ち 病 に 感 染 し や す く な り ま す 。 ま た 、 乾 燥 し た 地 方 で あ っ て も 、 日 温 度 格 差 が 大 き く 、 夜 露 の お り る ( 結 露 し や す い ) 場 所 で は 、 本 病 が 発 生 し や す く な り ま す 。 ま た 、 い も ち 病 の 発 生 は 、 気 温 20~ 25℃ の 条 件 で 最 も 多 く な り ま す 。 い も ち 病 菌 の 胞 子 の 発 芽 、 イ ネ の 中 に 入 っ て か ら の ま ん 延 の 適 温 は 25℃ 前 後 で す 。 し か し 、 最 終 的 な 病 斑 の 大 き さ 、胞 子 を つ く る 量( 形 成 量 )な ど は 20℃ の 方 が 25℃ よ り 多 く な り 、さ ら に 、 気 温 は イ ネ の 体 質 ( 抵 抗 力 ) に も 影 響 を 与 え ま す 。 こ れ ら の こ と か ら 、 い も ち 病 の 発 病 適 温 は 20~ 25℃ と な り ま す 。 な お 、 各 年 の 気 象 経 過 と い も ち 病 の 発 生 に つ い て は 、Q8 を ご 参 照 く だ さ い 。 写 真 14 イ ネ 葉 面 の 「ぬ れ 」と 葉 い も ち (1) 写 真 15 イ ネ 葉 面 の 「ぬ れ 」と 葉 い も ち (2) Q7 感 染 し や す い 日 を 判 定 す る 「ブ ラ ス タ ム 」と は 、 ど の よ う な プ ロ グ ラ ム で す か ? ※ 目 次 に 戻 る A7 ブ ラ ス タ ム ( BLASTAM) で は 、 ま ず 、 ア メ ダ ス の 降 雨 ・ 風 速 ・ 日 照 の デ ー タ を 用 い て 葉 面 の「 ぬ れ の 時 間 」を 間 接 的 に 推 定 し ま す( 越 水,1983)。こ れ と 気 温 と を 組 み 合 わ せ て 、 葉 い も ち に 感 染 し や す い 日 ( 感 染 好 適 日 ) を 判 定 し ま す ( 表 2)。 い も ち 病 の 感 染 に は 夜 露 や 降 雨 が 関 係 し ま す が 、ブ ラ ス タ ム で は 、葉 面 の ぬ れ を 降 雨 に よ る も の に 限 定 し て い ま す 。 葉 い も ち は 、 感 染 ( 肉 眼 で は 気 づ か な い ) か ら 、 発 病 ( 肉 眼 で 分 か る ) ま で に 約 1 週 間 か か り ま す 。 ブ ラ ス タ ム で 感 染 好 適 日 が 出 現 し た 場 合 、「 そ の 約 1 週 間 後 に 、 葉 い も ち が 初 発 生 ( 増 加 ) す る か も し れ な い ぞ ! 」 と 注 意 す る 必 要 が あ り ま す 。 実 際 の 例 を み て み ま し ょ う 。 平 成 23 年 の 場 合 、 6 月 17~ 19 日 に 県 内 各 地 で ブ ラ ス タ ム に よ る 感 染 好 適 条 件( 好 適 日 )が 出 現 し ま し た( 表 2)。こ の 時 点 で 、「約 1 週 間 後 か ら 危 な い ぞ ! 」と 予 測 で き る わ け で す が 、事 実 、約 1 週 間 後 と な る 6 月 下 旬 か ら 7 月 上 旬 に か け て 、 早 期 水 稲 に お い て 葉 い も ち の 発 生 が 急 激 に 増 加 し ま し た 。 ブ ラ ス タ ム に つ い て は 、 以 下 に 示 す 4 つ の 注 意 事 項 を 考 慮 し て 利 用 す る 必 要 が あ り ま す 。ブ ラ ス タ ム の 情 報 は 、 農 業 技 術 防 除 セ ン タ ー の ホ ー ム ペ ー ジ で 6~ 8 月 に 公 開 し て い ま す 。 毎 週 、 情 報 を 更 新 し ま す の で 、 ご 活 用 く だ さ い 。
ブラスタム(BLASTAM)情報の使用上の注意 1.BLASTAMは、気象条件(アメダスデータ)のみによって葉いもちの発生を予測するシステムである。しかしな がら、実際の圃場における葉いもちの発生には、気象条件の外にも、菌の多少(密度)、イネ品種による抵抗 性や体質、薬剤防除条件などが大きく関与している。したがって、BLASTAMは、あくまでも葉いもち発生予察の 参考資料の一つとして扱う。 2.BLASTAMは、葉いもちを対象としている。葉いもちが初発するまでには、イネが移植後ある生育量(繁茂) に達するまでの一定期間が必要であること等から、ブラスタムの適用期間は移植20日後を起点とした35日間と されている(6月15日移植の場合、7月5日~8月10日)。ただし箱施薬が行われた圃場で、薬剤の効果が持続期 間にはBLASTAMは適用できないので注意する。 3.葉いもちは、菌が進入してから発病するまで約1週間かかるため、BLASTAMで感染(準感染)好適条件が現 れた場合、その約1週間後から初発あるいは病斑数が急激に増加することが予想される。 4.BLASTAMでの感染(準感染)好適条件の出現回数が多い場合、葉いもちの発生面積が急増し、発病程度も激 しくなることが予想される。 表 2 BLASTAMに よ る 葉 い も ち の 感 染 好 適 条 件 の 出 現 状 況 ( 平 成 23年 の デ ー タ か ら 一 部 抜 粋 ) 佐賀 川副 白石 嬉野 伊万里 唐津 前原 太宰府 久留米 松浦 佐世保 6月10日 - - - - - - - - - - - 11日 - - - - - - - - - - - 12日 - - 10 - - - - - - - 10 13日 - - - - - - - - - - - 14日 - - - - - - - - - - - 15日 - - - - - - - - - - - 16日 - - - - - - - - - - - 17日 - - 10 - 10 10 10 4 10 10 10 18日 - - - - 10 10 10 - - - - 19日 4 10 10 10 10 10 - - 10 10 10 20日 - - - - - - - - - - - 21日 - - - - 10 - - - - - 10 22日 - - - - - - - - - - - 23日 - ? - - - - - - - - - 24日 - - - - - - - - - - - 25日 - - - - - - - - - - - 26日 - - - 2 - 2 3 - 3 - - 27日 - - - - - - - - - - - 28日 - - - - - - - - - - - 29日 - - - - - - - - - - - 30日 - - - - - - - - - - - 注) 1:準好適条件(前5日間の平均気温は20℃未満だが、湿潤が10時間以上) 2:準好適条件(前5日間の平均気温は25℃を越えているが、湿潤が10時間以上) 3:準好適条件(湿潤期間中の平均気温は15~25℃でないが、湿潤が10時間以上) 4:準好適条件(湿潤期間中の気温は比較的低いが、湿潤が10時間以上) 10:好適条件(湿潤時間が長く気温も適当で、葉いもちの感染好適条件が出現した) -:好適あるいは準好適条件の出現なし ?:判定不能
Q8 い も ち 病 が 発 生 し や す い 年 と は ? ま た 、 近 年 の 発 生 状 況 は ? ※ 目 次 に 戻 る A8 い も ち 病 は 、冷 夏 長 雨 の 年 に 多 発 生 す る 傾 向 が あ り ま す 。遠 い 昔 の 江 戸 時 代 を 例 に と っ て も 、 天 明 の 大 飢 饉 (1782~ 1788) は 、 冷 害 に 加 え 、 い も ち 病 が 大 発 生 し た こ と が 大 き な 原 因 で あ っ た と 考 え ら れ て い ま す 。 図 1 に 、1989 年( 平 成 元 年 )以 降 の 佐 賀 県 に お け る こ の 病 気 の 発 生 を 示 し ま す 。1993 年 は 、冷 夏 長 雨 よ る 冷 害 に 加 え 、全 国 的 に い も ち 病 が 大 発 生 し 、米 不 足 が 生 じ て 中 国 や タ イ な ど か ら 米 が 緊 急 輸 入 さ れ ま し た 。 近 い と こ ろ で は 、2008 年 や 2011 年 に は 長 雨 等 に よ っ て 、 い も ち 病 の 発 生 が 多 く な り ま し た 。 な お 、 図 1 に は 、 便 宜 上 、 月 間 降 水 量 を 示 し て い ま す が 、長 雨 の 年 は い も ち 病 が 発 生 し や す い の で 、田 ん ぼ で の 発 生 に 注 意 し 対 策 を 徹 底 す る 必 要 が あ り ま す 。 い も ち 病 が 発 生 し や す い 気 象 条 件 に つ い て は 、 Q6 に も 紹 介 し て い ま す の で 、 あ わ せ て ご 参 照 く だ さ い 。 Q9 田 植 え 時 期 別 の 葉 い も ち の 発 生 パ タ ー ン を 教 え て く だ さ い 。 ※ 目 次 に 戻 る A9 佐 賀 県 に お け る 葉 い も ち は 、早 期 水 稲 で は 6 月 上 ~ 下 旬 に 初 発 生 し 、7 月 上 旬 頃 に ピ ー ク と な り ま す 。早 植 え 水 稲 で は 6 月 下 ~ 7 月 上 旬 に 初 発 生 し 、7 月 下 旬 頃 に ピ ー ク と な り 、普 通 期 水 稲 で は 7 月 上 ~ 下 旬 に 初 発 生 し 、8 月 上 旬 頃 に ピ ー ク と な り ま す( 図 2)。 た だ し 、 図 2 は 、 10 年 間 の 平 均 的 な パ タ ー ン で す 。 気 象 条 件 な ど に よ っ て 、 初 発 生 時 期 や 増 加 時 期 は 年 に よ っ て 異 な り ま す 。 こ の た め 、 的 確 な 防 除 対 策 を と る た め に も 、 日 頃 の 田 ん ぼ の 観 察 が 大 切 で す 。 0 10 20 30 40 50 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 発 生 株 率 ( % ) 図1 普通期 水稲におけるいもち病の年次別発生と8月の気象条件 (横軸の数値は、西暦の下2桁を示す) 葉いもち(8月下旬) 穂いもち(10月上旬) ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲:九州北部の8月の降水量が平年より多かった年 ▽:九州北部の8月の平均気温が平年より低かった年 0 5 10 15 5月下旬 6月下旬 7月上旬 7月下旬 8月上旬 8月下旬 9月上旬 発 生 株 率 ( % ) 早期水稲 早植え水稲 普通期水稲 図2 葉いもちの発生株率の推移(2003~2012年の平均)
Q10 「 葉 い も ち 」 に よ る 被 害 に つ い て 教 え て く だ さ い 。 ※ 目 次 に 戻 る A10 イ ネ の 分 げ つ 期 に 、葉 い も ち が 多 発 生 す る と 、新 た に 出 て く る 葉 、さ ら に そ の 上 位 葉 が 、次 々 に 短 く な り 、株 全 体 の 背 が 低 く な り ま す 。こ れ を ず り こ み 症 状 と 言 い ま す( 写 真 16, 17)。さ ら に 発 生 が ひ ど く な る と 、株 全 体 は 茶 色 に な っ て 枯 れ 、欠 株 と な り ま す 。 ま た 、こ の よ う な 多 発 生 に な ら な く て も 、葉 い も ち の 発 生 は 、穂 い も ち の 発 生 に つ な が り 、 大 き な 減 収 要 因 と な り ま す (Q11)。 写 真 16 ず り こ み 症 状 (1) 写 真 17 ず り こ み 症 状 (2) Q11 「 穂 い も ち 」 の 感 染 、 発 病 に よ る 被 害 に つ い て 教 え て く だ さ い 。 ※ 目 次 に 戻 る A11 穂 い も ち に よ る イ ネ の 被 害 ( 収 量 低 下 ) は 、 出 穂 3 週 間 後 ま で の 感 染 で 影 響 が 大 き く 、 こ れ を 過 ぎ る と 被 害 は ほ と ん ど み ら れ ま せ ん ( 図 3)。 穂 い も ち は 、 感 染 ( 肉 眼 で は 気 づ か な い ) か ら 、 発 病 ( 肉 眼 で 分 か る ) ま で に 約 10 日 か か り ま す 。こ の た め 、 出 穂 約 30 日 ま で の 穂 い も ち の 発 病 が イ ネ の 被 害 に 影 響 し 、穂 い も ち の 被 害 査 定 を す る の は 出 穂 25 ~ 30 日 後 が 適 期 と さ れ て い ま す ( 勝 部 ・ 越 水 ,1970; 岩 手 県 農 業 研 究 セ ンタ ー,2003)。 佐 賀 県 に お け る 、 穂 い も ち の 発 病 と イ ネ の 被 害 と の 関 係 を み て み ま し ょ う ( 図 4)。 例 え ば 、 穂 い も ち の 発 病 穂 率 ( 穂 い も ち に か か っ た 穂 数 の 割 合 ) が 10% で イ ネ の 減 収 率 が 約 10% 、 発 病 穂 率 20% で 減 収 率 が 約 20% と な っ て い ま す 。 こ の よ う に 、 穂 に 発 生 す る 穂 い も ち は 、 イ ネ の 減 収 に 直 接 結 び つ く 深 刻 な 症 状 で す 。 ☆ 図 4 穂 いもち発 病 度 ・発 病 穂 率 とイネ減 収 率 との関 係 (品 種 ヒノヒカリ, 2007 年 佐 賀 県 農 業 試 験 研 究 センター) 糊熟期の穂いもち発病穂率(%) 5 10 20 30 ☆ 糊熟期の穂いもち発病度 2.2 4.4 8.8 13 ★ イネの減収率(%) 5 10 20 30 ★ 図 3 穂 い も ち の 感 染 時 期 と イ ネ の 被 害 率 と の 関 係 (模 式 図 ) (勝 部 ・越 水 ,1970) 注 ) 図 の 縦 軸 は 、 収 量 へ の 影 響 が 最 も 大 き い時 の値 を 100 とした相 対 値 である。
Ⅱ . い も ち 病 の 防 除 対 策 編
Q12 種 子 消 毒 の ポ イ ン ト は ? ※ 目 次 に 戻 る A12 Q4, 5 で 述 べ た と お り 、 い も ち 病 の 主 な 発 生 源 は 、 保 菌 籾 で す ( 写 真 10, 19)。 こ の た め 、健 全 な 種 籾 を 用 い て 塩 水 選 を 必 ず 行 う と と も に 、種 子 消 毒 を 徹 底 す る こ と が 重 要 で す 。 な お 、 ベ ン レ ー ト 水 和 剤 を 慣 行 の 薬 剤 ( テ ク リ ー ド C フ ロ ア ブ ル な ど ) に 混 用 す る 種 子 消 毒 は 、「 苗 い も ち 」だ け で な く 、「 育 苗 期 の 感 染 」に ま で 高 く 安 定 し た 効 果 を 示 し ま す 。 い も ち 病 の 常 発 地 帯 で は 、 お す す め の 処 理 方 法 で す 。 写 真 18 穂 い も ち 写 真 19 保 菌 種 籾 ( イ メ ー ジ ) Q13 防 除 薬 剤 の 種 類 を 教 え て く だ さ い 。 ※ 目 次 に 戻 る A13 表 3 に 、育 苗 箱 お よ び 田 ん ぼ で 使 用 す る 主 な 防 除 薬 剤 を 示 し ま す 。育 苗 箱 と 田 ん ぼ で 同 じ 系 統( グ ル ー プ )の 薬 剤 を 連 続 し て 使 用 す る と 、薬 剤 耐 性 菌 が 発 生 し や す く な り ま す ( 薬 が 効 か な く な る )。 こ の た め 、 異 な る 系 統 の 薬 剤 で 、 体 系 的 に 防 除 を 行 い ま し ょ う 。 特 に 、ス ト ロ ビ ル リ ン 系 薬 剤(QoI 剤 )お よ び メ ラ ニ ン 生 合 成 阻 害 D 系 統 薬 剤( MBI-D 剤 ) は 耐 性 菌 を 生 じ や す く、佐 賀 県 で も そ の 発 生 が 確 認 さ れ て い ま す ( 表 3 の ※ )。 こ の た め 、 両 系 統 の 育 苗 箱 施 用 剤 は 使 用 せ ず 、 田 ん ぼ で の 防 除 に お い て も 1 作 1 回 の 使 用 に と ど め ま し ょ う 。 ま た 種 子 に よ る 耐 性 菌 の 広 が り を 防 ぐ た め 、 こ れ ら 2 つ の 系 統 の 薬 剤 は 、 種 子 生 産 圃 場 で の 使 用 を 控 え る 必 要 が あ り ま す 。 表3 主ないもち病防除薬剤 系統(グループ) 成分名(商品名) 抵抗性誘導剤 注1) プロベナゾール(オリゼメート剤、ビルダー剤)、チアジニル(ブイゲット剤)、イソチアニル(ルーチン、スタウト剤) ※ストロビルリン系(QoI剤) メトミノストロビン(オリブライト剤)、アゾキシストロビン(アミスター剤)、オリサストロビン(嵐 剤) メラニン生合成R系統(MBI-R剤) トリシクラゾール(ビーム剤)、ピロキロン(コラトップ剤)、フサライド(ラブサイド剤) ※メラニン生合成D系統(MBI-D剤) カルプロパミド(ウィン剤)、ジクロシメット(デラウス剤)、フェノキサニル(アチーブ剤) 抗生物質 カスガマイシン(カスミン剤) 有機リン系(ジチオラン系) イソプロチオラン(フジワン剤)、IBP(キタジンP剤) 「ピリミジン系」+「MBI-R剤」 フェリムゾン・フサライド(ブラシン剤)、フェリムゾン・トリシクラゾール(ノンブラス剤) 「抗生物質」+「MBI剤-R剤」 カスガマイシン・フサライド(カスラブサイド剤) 注1)根から吸収され、イネ自体の自然免疫力(病害抵抗性)を高めることで、効果を示す。Q14 防 除 薬 剤 の 予 防 効 果 や 治 療 効 果 に つ い て 教 え て く だ さ い 。 ※ 目 次 に 戻 る A14 予 防 効 果 と は 、い も ち 病 菌 が イ ネ に 侵 入 す る の を 阻 止 す る 効 果 の こ と で す 。予 防 効 果 の あ る 液 剤 や 粉 剤 を 、 葉 い も ち 対 象 に 散 布 し た 場 合 、 効 果 が 確 認 で き る ま で に 約 1 週 間 か か り ま す 。効 果 が あ っ た 場 合 は 、散 布 時 に 最 上 位 展 開 葉 で あ っ た 葉 位 の 病 斑 が あ ま り 出 現 し ま せ ん 。た だ し 、散 布 時 に 潜 伏 中 で あ っ た 病 斑 に 対 し て は 効 果 が な い の で 、そ の 分 に つ い て は 散 布 後 1 週 間 以 内 に 病 斑 が 増 加 し ま す 。 治 療 効 果 と は 、い も ち 病 菌 が イ ネ に 侵 入 し た 後 の 活 性 を 阻 害 す る 効 果 の こ と で す 。「 病 斑 の 拡 大 を 抑 え る 」「 潜 伏 し て い る 病 斑 が 現 わ れ る の を 阻 害 す る 」「 病 斑 上 の 胞 子 形 成 を 阻 害 す る 」な ど の 効 果 の 総 称 で す 。発 病 し て し ま っ た イ ネ を 治 療 し て 健 全 に す る と い う 意 味 で は あ り ま せ ん 。( 以 上 、 石 黒, 1990 な ど ) 薬 剤 に は 、「 予 防 効 果 中 心 の も の 」「 治 療 効 果 中 心 の も の 」 に 加 え 「 こ れ ら の 混 合 剤 」 「 予 防 効 果 と 治 療 効 果 を 兼 ね 備 え た も の 」が あ り ま す 。い ず れ の 薬 剤 で も 、安 定 し た 防 除 効 果 を 得 る た め に は 、葉 い も ち の 初 発 直 前 か 初 発 時 の ま だ 発 病 が 少 な い 時 期 に 散 布 す る こ と が 重 要 で す (Q16 も 参 照 )。 Q15 育 苗 箱 に 粒 剤 を 処 理 す る 場 合 に 、 何 か 気 を つ け る こ と は あ り ま す か ? ※ 目 次 に 戻 る A15 ま ず 、育 苗 箱 に 処 理 す る 粒 剤( 育 苗 箱 施 用 剤 )の 特 徴 を 理 解 す る こ と が 大 切 で す 。そ の う え で 、 適 切 な 剤 を 選 び ま し ょ う 。 表 4 に 、「 代 表 的 な 育 苗 箱 施 用 剤 」 を 示 し ま す 。 効 果 が 続 く 期 間 が 特 に 長 い 薬 剤 を 、 表 4 で は 「 長 期 残 効 」 と し て い ま す 。 い も ち 病 の 常 発 地 帯 で は 、 こ れ ら の 長 期 残 効 型 の 育 苗 箱 施 用 剤 を 有 効 に 活 用 し ま し ょ う 。 た だ し 、 長 期 残 効 型 の 剤 を 使 っ て も 、田 ん ぼ で い も ち 病 が 発 生 し て 追 加 防 除 が 必 要 に な る こ と も あ る の で 、 定 期 的 に 田 ん ぼ を 観 察 す る 必 要 が あ り ま す 。 育 苗 箱 施 用 剤 は 施 用 量 が 少 な い と 、効 果 の 持 続 期 間 が 短 縮 さ れ る の で 、適 正 な 施 用 量 で 処 理 し ま す 。ま た 、育 苗 箱 施 用 剤 に は 、い も ち 病 だ け で な く 、ウ ン カ 類 や コ ブ ノ メ イ ガ 等 を 対 象 と し た 商 品 も あ り ま す 。そ れ ぞ れ の 地 域 で 問 題 と な る 病 害 虫 を 把 握 し 、適 切 な 組 み 合 わ せ の 薬 剤 を 選 択 し ま し ょ う 。 表4 いもち病に効果がある育苗箱施用剤の例 系統 薬剤名注1) 成分名(濃度)注2) 効果の持続 有機リン系(ジチオラン系) フジワン粒剤 イソプロチオラン(12%) Dr.オリゼ箱粒剤 プロベナゾール(24%) 長期残効 ビルダープリンス粒剤 プロベナゾール(10%) +フィプロニル(1%) 長期残効 ブイゲットアドマイヤー粒剤 チアジニル(12%) +イミダクロプリド(2%) 長期残効 ルーチン粒剤 イソチアニル(3%) 長期残効 ビームアドマイヤー粒剤 トリシクラゾール(4%) +イミダクロプリド(2%) デジタルコラトップ箱粒剤 ピロキロン(12%) 長期残効 MBI-R剤 + 有機リン系 ピカピカ粒剤 ピロキロン(2%) +イソプロチオラン(8%) +フィプロニル(1%) 注1)具体例として8薬剤を記載したが、ウンカ剤やコブノメイガ剤等との組み合わせによって、他に多くの種類の育苗箱 施用剤がある。 注2) いもち病に効果のある成分にはアンダーラインを引いた。 抵抗性誘導剤 メラニン生合成阻害R系統 (MBI-R剤)
Q16 田 ん ぼ で の 「 葉 い も ち 」 の 防 除 は 、 い つ 頃 行 う の が 効 果 的 で し ょ う か ? ※ 目 次 に 戻 る A16 液 剤 や 粉 剤 な ど の 散 布 剤 を 用 い る 場 合 、「 発 病 の 極 初 期 散 布 > 発 病 の 前 期 散 布 > 発 病 の 中 期 散 布 > 発 病 の 後 期 散 布 」の 順 に 防 除 効 果 が 高 く な り ま す 。こ の こ と か ら 明 ら か な よ う に 、「 葉 い も ち は 、 早 期 発 見 ・ 早 期 防 除 が 大 切 」 で す 。 田 ん ぼ を 見 回 っ て 、 葉 い も ち の 病 斑 が 少 な く て も 、 進 展 型 病 斑 ( 写 真 20) が み ら れ る 場 合 は 、 早 急 に 防 除 を 行 い ま し ょ う (Q3 も 参 照 )。 ま た 、 停 止 型 病 斑 ( 写 真 21) で あ っ て も 胞 子 を 形 成 し て い ま す 。天 候 の 推 移 と 病 気 の 進 み 具 合 を み な が ら 、新 た に 病 斑 が 増 加 す る よ う で あ れ ば 防 除 を 行 い ま し ょ う 。な お 、粒 剤 の 場 合 、薬 剤 が 水 に 溶 け て イ ネ に 吸 収 さ れ て か ら 効 果 を 発 揮 す る こ と に な る の で 、散 布 剤 よ り も や や 早 め に 予 防 的 に 施 用 し ま す 。 ま た 、Q7 で 述 べ た ブ ラ ス タ ム の 情 報 を 、田 ん ぼ を 観 察 す る 時 期 の 目 安 と し て ご 活 用 く だ さ い 。 写 真 20 進 展 型 病 斑 写 真 21 停 止 型 病 斑 Q17 田 ん ぼ で の 「 穂 い も ち 」 の 防 除 は 、 い つ 頃 行 う の が 効 果 的 で し ょ う か ? ※ 目 次 に 戻 る A17 穂 い も ち は 、 直 接 被 害 に 結 び つ き ま す ( Q11)。 い っ た ん 発 病 し て か ら の 防 除 で は 手 遅 れ と な る の で 、予 防 的 な 防 除 が 必 要 で す 。具 体 的 に は 、葉 い も ち の 発 生 が 認 め ら れ た 田 ん ぼ で は 、穂 ば ら み 期 に 穂 い も ち の 防 除 を 行 い ま す 。さ ら に 、葉 い も ち の 発 生 が 上 位 葉 に み ら れ る な ど 穂 い も ち の 多 発 が 予 想 さ れ る 場 合 に は 、穂 揃 い 期 に も 防 除 を 行 い ま す ( 図 5)。 な お 、 穂 い も ち の 発 生 に 大 き く 影 響 す る の は 、 止 葉 、 第 2 葉 お よ び 第 3 葉 に み ら れ る 葉 い も ち の 病 斑 で す 。た だ し 、第 4 葉 お よ び 第 5 葉 か ら 飛 散 し た い も ち 病 の 胞 子 が 、 穂 い も ち の 伝 染 源 に な る こ と も あ り ま す 。こ の こ と か ら 、イ ネ の 上 位 葉 だ け で な く 、下 位 葉 ま で 注 意 深 く 観 察 し 、穂 い も ち 防 除 の 必 要 性 や 防 除 回 数 を 判 断 す る こ と が 大 切 で す 。 図 5 穂 い も ち の 防 除 適 期 並発生 多発生 +10 +15 穂いもち 病害虫名 -10 -5 0 +5 出 穂 期 穂 ば ら み 後 期 止 葉 出 葉 穂 揃 期 乳 熟 期
Q18 い も ち 病 以 外 の 病 害 虫 防 除 は 、 ど の よ う に し た ら よ い で し ょ う か ? ※ 目 次 に 戻 る A18 主 な 病 害 虫 の 防 除 適 期 は 、図 6 の と お り で す 。ま た 、ウ ン カ 類 、コ ブ ノ メ イ ガ の 防 除 適 期 は 、飛 来 時 期 に よ っ て 異 な る た め 、年 毎 に 判 断 す る こ と に な り ま す 。各 病 害 虫 の 発 生 状 況 は 、気 象 条 件 や 防 除 履 歴 に よ っ て 異 な り ま す 。こ の た め 、発 生 予 察 情 報 を 参 考 に 、 各 地 域 で 調 査 を 行 い 、 防 除 の 必 要 性 を 判 断 す る こ と が 大 切 で す 。
Ⅲ . い も ち 病 を 多 発 生 さ せ な い よ う な イ ネ づ く り 編
Q19 田 植 え 時 に 、 い も ち 病 対 策 と し て 農 薬 以 外 で 何 か 工 夫 で き る こ と は あ り ま す か ? ※ 目 次 に 戻 る A19 田 ん ぼ の 片 隅 に 残 し て お い た 補 植 用 の 残 り 苗 は 、補 植 が 終 わ っ た ら 速 や か に 除 去・処 分 し ま し ょ う 。 こ れ ら の 苗 を マ ッ ト 状 の ま ま 置 い て お く と 、内 部 は 菌 の 増 殖 に 適 し た 条 件 と な り 、い も ち 病 が 増 え や す く な り ま す ( 写 真 22, 23)。 さ ら に 、 感 染 好 適 条 件 ( Q7) が 1 回 出 現 す る と 、い も ち 病 菌 の 胞 子 は 、発 病 し た 補 植 苗 か ら 、100m 以 内 を 中 心 に 飛 び 散 り ま す が 、 数 百 m~ 1km 離 れ た イ ネ に 新 た な 病 斑 を つ く る こ と も あ り ま す ( 2000, 東 北 農 試 ・ 新 潟 農 試 )。 こ の よ う に 、 発 病 し た 補 植 苗 は 、 周 り の 田 ん ぼ に も 影 響 を 及 ぼ し ま す の で 、 早 急 に 除 去 ・ 処 分 す る 必 要 が あ り ま す 。 ま た 、イ ネ を 密 植 し て 過 繁 茂 に さ せ る と 、結 露 時 間 が 長 く な る た め 、い も ち 病 が 発 生 し や す く な り ま す 。 発 生 を 抑 え る た め に は 、 適 正 な 栽 植 密 度 で 田 植 え を し ま し ょ う 。 並発生 多発生 並発生 多発生 籾枯細菌病 並発生 多発生 図6 紋枯病、穂いもち、籾枯細菌病、カメムシ類の防除適期 0 +5 +10 +15 +20 紋枯病 穂いもち カメムシ類 病害虫名 -15 -10 -5 出 穂 期 穂 ば ら み 後 期 止 葉 出 葉 穂 揃 期 乳 熟 期写 真 22 補 植 用 の 残 り 苗 写 真 23 残 り 苗 に 発 生 し た 葉 い も ち (写 真 22 の 拡 大 ) Q20 品 種 に よ っ て い も ち 病 の 発 生 量 に 差 が あ り ま す か ? ※ 目 次 に 戻 る A20 品 種 に よ っ て 、い も ち 病 に 対 す る 抵 抗 性 が 異 な る た め 、本 病 の 発 生 量 に 差 が 生 じ ま す 。 品 種 の 抵 抗 性 に は 、「 真 性 抵 抗 性 」と「 圃 場 抵 抗 性 」が あ り ま す 。「 真 性 抵 抗 性 品 種 」で は 、初 め の う ち は 全 く 発 病 し ま せ ん 。し か し 、数 年 栽 培 す る と 、い も ち 病 菌 の 系 統( レ ー ス と 呼 ば れ ま す ) が 変 化 し て 、 発 病 す る こ と が あ り ま す 。「 圃 場 抵 抗 性 が 強 い 品 種 」 は 、 い も ち 病 に は か か り ま す が 、 そ の 程 度 が 軽 く て す み ま す 。 佐 賀 県 に お け る い も ち 病 菌 の レ ー ス 構 成( 新 井 ・ 中 島, 2003)な ど を 考 慮 す る と 、本 県 で 作 付 け さ れ て い る コ シ ヒ カ リ 、夢 し ず く 、ヒ ノ ヒ カ リ 、さ が び よ り 、天 使 の 詩 、ヒ ヨ ク モ チ 等 は 、い も ち 病 に か か り や す く 、本 病 に 対 し て 弱 い 傾 向 に あ り ま す 。し た が っ て 、 十 分 な 防 除 対 策 を と る 必 要 が あ り ま す 。 Q21 施 肥 と い も ち 病 の 発 生 と の 関 係 は ? ※ 目 次 に 戻 る A21 窒 素 肥 料 を や り す ぎ る と 、 い も ち 病 が 多 発 生 し や す く な り ま す 。 な ぜ な ら 、 窒 素 肥 料 を 多 用 す る と イ ネ の 抵 抗 力 が 弱 ま り 、イ ネ は 過 繁 茂 に な っ て 株 内 湿 度 が 高 ま り 、い も ち 病 の 胞 子 形 成 や 感 染 が 助 長 さ れ る か ら で す 。 適 正 な 施 肥 を 行 う こ と は 、高 品 質 米 の 生 産 に つ な が る ば か り で な く 、い も ち 病 の 対 策 上 も 重 要 で す 。