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2 Houghton 1989 A B RNA Science 2 λgt11 A B 2 NS3 A B C Hepatitis C virus HCV 1992 HCV A B C HCV A B 1999 HCV HCV HCV 3 HCV a JFH1 4 HCV

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I.はじめに  1960 年代に,血清学的に異なる肝炎は少な くとも二種類あることが判明し1),現在まで“肝 炎”を起こすという枠組みで分類される肝炎ウ イルスは A 型から E 型まで 5 種類が知られて いる。ピコルナ(RNA,エンベロープ無),ヘ パドナ(DNA,エンベロープ有),フラビ(RNA, エンベロープ有)など,それぞれが全く異なる ウイルスである。A 型と E 型は急性で一過性 であり,B 型と C 型は持続感染するウイルス として知られ,A 型と B 型に有効なワクチン が開発されている。D 型肝炎ウイルスは B 型 をヘルパーウイルスとして要求する特殊なウイ ルスである。B 型と C 型肝炎ウイルスは持続 感染の過程で,肝細胞がんを誘発するがんウイ ルスでもある。B 型肝炎は成人に対して比較的 自然治癒し易く,それに対して C 型肝炎ウイ ルス(HCV)は高率に持続感染(感染者の八 割)に移行し,自然治癒し難い。RNA ゲノム をもつウイルスで高率に持続感染するものは少 なく,逆転写酵素を持たない RNA ウイルスが どのようなメカニズムで長期的に持続感染を可 能にしているのか完全に説明されていない。  20 世紀半ばから医療技術が発展すると共に, 輸血による肝炎が問題視されるようになった。 A および B 型肝炎ウイルスの発見や売血による 献血をやめることによって輸血後肝炎は低減し たが,逆に非 A 非 B 型肝炎の存在が浮き彫りと なった。輸血後の非 A 非 B 型肝炎の原因因子 の感染性がチンパンジーで立証され,有機溶媒 に対する感受性や感染性因子の大きさから,エ ンベロープをもつ 80 nm 以下の小型の RNA ウ イルスが病原体であると推測された。小型の エンベロープをもつ RNA ウイルスはフラビウ イルス科かトガウイルス科に限定され,A 型と B 型肝炎ウイルスと全く異なる性質をもつこと

C 型肝炎ウイルスの感染戦略と病原性発現機構

森 石 恆 司

山梨大学医学工学総合研究部微生物学 要 旨:C 型肝炎ウイルス(HCV)は一旦感染が成立すると他のウイルス性肝炎に比べ自然治癒 し難く,高率に持続感染に移行し,持続的な肝炎から肝線維化を経て,肝細胞がんに至る。多くの 基礎研究よって様々な抗ウイルス剤が開発され,昨年から抗 HCV プロテアーゼ薬が実際使われ始 めており,現行のインターフェロン/リバビリン療法のみより高い著効率が期待されている。しか しながら,副作用や耐性ウイルスの問題は完全に解決された訳ではない。ウイルス感染増殖機構を 詳細に理解し,病原性発現のメカニズムを明らかにすることが有効な治療法開発に繋がる。しかし ながら,それら分子機構に多くの謎が残されたままになっている。HCV に限らずウイルスは宿主 機能や宿主因子を利用して感染を成立させ,その過程で宿主に障害(疾病)を引き起こす。本稿で は,HCV の増殖や病原性発現に関連する宿主蛋白質を紹介し,HCV の感染増殖機構および病原 性発現機構について考察したい。 キーワード C 型肝炎ウイルス,肝炎,肝がん

総  説

〒 409-3898 山梨県中央市下河東 1110 番地 受付:2012 年 9 月 1 日 受理:2012 年 11 月 10 日

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が推定された。カイロン社の Houghton 博士 の研究グループは,1989 年に非 A 非 B 型肝炎 を引き起こすウイルスとしてフラビウイルスに 似た RNA ゲノムを単離し,Science に報告し た2)。彼のグループは今では古典的な方法で あるλgt11 による発現スクリーニング系を使 い,高い感染性を示す非 A 非 B 型肝炎チンパン ジーの血漿からライブラリーを作製し,患者血 清と反応する蛋白質を発現するファージクロー ンを単離同定した2)。このウイルスの遺伝子産 物(NS3 蛋白質領域)に対してほとんどの非 A 非 B 型肝炎患者の血清が反応したことから,こ のウイルス遺伝子が原因ウイルスのゲノムであ るとして C 型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus, HCV)と命名された。1992 年には第二世代の 抗 HCV 抗体のスクリーニング系が開発され, 輸血後非 A 非 B 型肝炎(C 型肝炎)は激減する ことになり,疫学的に HCV が非 A 非 B 型肝炎 の主な原因ウイルスとして証明された。さらに, 1999 年に HCV の核酸検出系が導入され,先進 国で輸血や血液製剤による新規 HCV 感染はほ ぼ征圧されている。しかしながら,先進国以外 で制圧されたと言えず,既 HCV 感染者が全世 界人口の 3%に上ることから,有効なウイルス 排除方法など治療法の確立が切望されている。  ウイルス蛋白質の酵素活性や立体構造から抗 ウイルス活性を示す化合物をスクリーニングで きるが,感染実験系無しにその評価は難しい。 HCV 研究の最大の問題点は,チンパンジーし か感染実験動物がいないこととウイルスの細胞 培養系がないことであった。1999 年に感染性 粒子を放出しないウイルスゲノム複製細胞系を ドイツのグループが確立し3),それを使って多 くの製薬会社が抗ウイルス剤のスクリーニング を開始した。2005 年に遺伝子型 2a のウイルス 株(JFH1 株)を培養細胞で完全な感染サイク ルを再現できる技術も確立されたが4),特殊な ウイルス株と細胞株によるセットでしか培養が 可能となっておらず,高ウイルス量を示すイン ターフェロン耐性ウイルス遺伝子型の信頼でき る培養系は確立されていない。実験動物の開発 においては,免疫不全マウスにヒト肝臓細胞を 移植することにより患者血清由来の HCV の感 染実験が可能となってきた5)。しかしながら, 免疫不全動物である点と高価であるなど問題点 も多い。HCV に唯一感受性を示すヒト以外の 動物であるチンパンジーを感染実験に供するこ とは倫理的に許可されておらず,HCV 感染に よる病原性の発現機構は未だ多くの謎に包まれ たままである。  HCV に感染すると高率に慢性化し,脂肪肝 や肝硬変を経て最終的には肝細胞がんを高率に 発症する。現在,リバビリンとペグインター フェロンの併用療法によって,約半数の感染者 からウイルスを排除することが可能となり,さ らに抗ウイルス剤の登場により,より高いウイ ルス排除率が期待されている。しかしながら, 耐性ウイルスの出現や副作用を考えると満足の いく治療法確立にはまだ時間を要すると考えら れる。耐性ウイルス出現を考えた場合,副作用 の問題をクリアできれば宿主因子を標的にした 抗ウイルス薬開発という選択肢も考えられる。 HCV 感染機構と病原性発現機構をより理解す るために,必須宿主因子の同定と機能解析に関 する研究を筆者らを含め多くの研究グループが 行ってきた。本稿で,HCV の感染,増殖,そ して病原性発現に関与する宿主因子について概 説したい。 II.ウイルス構造蛋白質と非構造蛋白質  蛋白質の殻と中のウイルス核酸を合わせてヌ クレオキャプシドといい,それが共通の基本構 造である。ウイルスを分類するときに,その ゲノムが DNA か RNA か,それが一本鎖か二 本鎖か,また環状か直鎖かで分類される。更 に,そのウイルスゲノムを包む蛋白質の殻が立 方対称からせん対称かでも分類される。ウイル スによっては,ヌクレオキャプシドが宿主細胞 由来の脂質二重膜(エンベロープ)で更に包ま れているものもあれば,そうでないものもあ る。フラビウイルス科の HCV は,立方対称の

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ヌクレオキャプシド内にメッセンジャー RNA として機能できる(プラス鎖)の一本鎖 RNA ゲノムをもち,エンベロープに包まれたウイル スである。そのエンベロープの脂質二重膜の表 面にはウイルス糖蛋白質 E1 と E2 の 2 つのス パイク蛋白質が埋め込まれている。そのゲノ ム RNA は 5’ と 3’ の非翻訳領域に挟まれた一 つの巨大な蛋白質のコード領域で構成されて いる。HCV のゲノムは真核細胞の mRNA と 異なり,CAP 構造やポリ A 配列を持たない。 ゲ ノ ム RNA の 5’ 領 域 に あ る IRES(Internal ribosome entry site)を介して,キャップ非依 存的に翻訳され,3000 アミノ酸からなるポリ プロテインとしてウイルス蛋白質は発現する。 そのポリプロテインは,宿主およびウイルスの プロテアーゼによって 10 個のウイルス蛋白質 に切断される(図 1)。このポリプロテインの アミノ末端側の領域に,ウイルス粒子を構成す る構造蛋白質(コア蛋白質とスパイク蛋白質と して機能する E1 および E2 糖蛋白質)が,残 りの領域にはウイルス粒子には取り込まれない 非構造蛋白質(Nonstructural protein, NS)が 分布する6)。コア蛋白質はヌクレオキャプシド を構成する殻の蛋白質である。また,E1 と E2 はエンベロープに存在し,受容体結合と膜融合 に関与する。非構造蛋白質はウイルスゲノム複 製に機能している複合体の成分であり,ウイル ス粒子の組み立て(アッセンブリー)にも関与 している。NS2 は自身の C 末端直後を切断し, NS3 はそれ以外の非構造蛋白質領域の切断す るプロテアーゼとして機能し,NS3 はヘリカー ゼとしての機能も併せ持つ。NS3 の下流に位 置 す る NS4A は NS3 の 共 役 因 子 と し て 機 能 し,また,NS4B はゲノム複製に重要な膜のリ モデリング(多重膜構造物形成)を誘導する。 NS5A は分子機能は正確に分かっていないが, 免疫回避やウイルス粒子形成に関与しており, その下流の NS5B は RNA 依存性 RNA ポリメ ラーゼとして機能する。ウイルスは偏性細胞寄 生性の複製体であり,ウイルス感染を成立させ 図 1. HCV 蛋白質 ウイルス前駆蛋白質は宿主およびウイルス由来のプロテアーゼによって切断され,各ウイルス蛋 白質が成熟する.コア蛋白質と二つのスパイク蛋白質はウイルス RNA とともにウイルス粒子を 構成し,非構造蛋白質は宿主因子をともなって複製複合体を形成してゲノムの複製に機能する.

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るために自身の核酸や蛋白質だけではなく,宿 主由来の多くの成分の関与が必要である。 III.HCV の生活環と宿主蛋白質   上 述 の よ う に フ ラ ビ ウ イ ル ス 科 に 属 す る HCV はヘパシウイルス属に分類され,他のフ ラビウイルス科ウイルスとは異なる伝播経路を もつ。ヘパシウイルス属の他に,フラビウイル ス属とペスチウイルス属があり,日本脳炎ウイ ルス,デングウイルス,ウエストナイルウイル スに代表されるアルボウイルス(節足媒介性) か,糞口感染の家畜ウイルスが知られる。それ らウイルスと異なり,HCV はベクターを介さ ず,主に血液によって伝播される。汚染血液の 輸血,注射針の使い回しなどによって感染し, 体内に侵入した HCV は肝臓に至ると,肝細胞 表面のウイルス受容体に結合し,肝細胞内へ侵 入する。図 2 に HCV の感染サイクルの概略を 示した。  複数の宿主因子が,ウイルス侵入に関与し ていることが分かっている。HCV 粒子は細 図 2. HCV の感染サイクル HCV は細胞表面のグリコサミノグリカン(GAG)によって捕捉・濃縮され,親和性の高い CD81 や SRBI 受容体と結合し,CLDN1 や Occludin によってエンドサイトーシスが誘導される. エンドソーム内の低 pH 環境下でエンベロープ蛋白質の構造が変化し,細胞膜とウイルス膜が融 合して,ウイルスのヌクレオキャプシドが細胞質へ放出される(脱殻).ウイルス遺伝子から前 駆体蛋白質が翻訳され,各ウイルス蛋白質が成熟する.ウイルスの非構造蛋白質は宿主因子と共 に複製複合体を構成し,ウイルスゲノム複製に寄与する.コア蛋白質は脂肪滴に移行し,その近 傍のウイルス複製複合体から供給されるウイルスゲノムを包み込み,小胞体内腔へウイルス粒子 は出芽する.出芽したウイルスはゴルジ装置を通り,細胞外へ放出される.また,一部の成熟コ ア蛋白質は核やミトコンドリアへ移行し,肝細胞の脂肪化や腫瘍化の病原性因子として機能する.

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胞表面のグリコサミノグリカン(GAG)に捕 捉され,エンベロープ蛋白質を介して親和性 の高い蛋白性の受容体と結合し,エンドサイ トーシスによってエンドソーム内に取り込ま れると考えられている。受容体候補分として, CD817),SR-BI8)が報告されている。ウイルス エンベロープ蛋白質が CD81 や SR-BI に結合 後,Claudin- 1と Occludin がそれら複合体を 細胞内への侵入を促すと考えられている7,9)。ま た,細胞表面への結合から膜融合までの過程に, Niemann-Pick C1-like 1 cholesterol absorption receptor の関与も指摘されている10)。ウイル スー受容体の複合体がエンドサイトーシスに よって取り込まれた後,エンドソーム内の酸性 環境によってエンベロープ蛋白質の構造変化が 起こり,ウイルス膜とエンドソーム膜が融合 し,ヌクレオキャプシドが細胞質へ放出される。 IRES 依存的に翻訳されたポリプロテインの構 造蛋白質領域は宿主由来プロテアーゼによっ て,一方,非構造蛋白質領域は NS2/3 プロテ アーゼによって切断される。キャプシド蛋白質 であるコア蛋白質はシグナルペプチダーゼに よって E1 から切り離された後,C 末端の膜貫 通領域内が更にシグナルペプチドペプチダーゼ (SPP)によって切断され,177 個のアミノ酸残 基からなる蛋白質に成熟し,界面活性剤耐性膜 画分(DRM)に移動する。SPP の切断過程は ウイルスゲノム複製に重要であり,SPP で切断 されない変異コア蛋白質は DRM に移行せず, 感染性ウイルス粒子も産生されない11)。また, 成熟コア蛋白質の一部は脂肪滴,ミトコンドリ ア,そして,核にも移行するが,特にウイルス 粒子が構築される場として脂肪滴が重要になっ てくる12)。感染細胞内では,小胞体膜に由来 する多重膜構造物が形成され13),その膜内腔 で非構造蛋白質とともに形成されたウイルス複 製複合体によってゲノム RNA が複製される。 −鎖ウイルス RNA を鋳型に複製した+鎖ウイ ルス RNA は NS5A を介してコア蛋白質へ受け 渡され,最終的にヌクレオカプシドは形成され る14)。その多重膜構造物やウイルスエンベロー プ膜の成分にコレステロールが比較的多く含ま れ,その結果,DRM として認識されると考え られる。膜貫通アルゴリズムによる構造予測や 糖鎖付加実験により,膜貫通領域が一つあるい は二つのトポロジーを保持したオリゴマー分子 として E1 蛋白質は存在し,E1 蛋白質の細胞 質のループ領域とコア蛋白質がオリゴマーを形 成する15)。E1 と E2 蛋白質はヘテロダイマー を形成し,さらに,E1 の細胞質領域にヌクレ オカプシドが結合して集合したウイルス粒子は 小胞体内腔に出芽し,ゴルジ体を経て細胞外へ 放出されると考えられる。  感染細胞内で形成される多重膜構造物内で, ウイルス非構造蛋白質と宿主因子が参画し,ウ イルスゲノム複製複合体を形成する。これま でに,HCV の複製に関与する宿主蛋白質性因 子として,VAP-A16),VAP-B17),miR12218),免 疫抑制剤と高い親和性を示す受容体蛋白質で あるイムノフィリンに分類される Cyclophilin (Cyp)19,20)や FKBP821),Hsp9021)な ど が 報 告 されている。Hsp90 は二量体を形成し,コシャ ペロン群との相互作用を経て,基質となる蛋白 質(クライアント蛋白質)を ATP 依存的に立体 構造を改変し,基質の生物活性を維持する。我々 は NS5A と結合する宿主因子として,FK506- 結 合蛋白質(FK506-binding protein, FKBP)ファ ミリーのイムノフィリンである FKBP8 を同 定 し た21)。FKBP8 は FKBP に 分 類 さ れ る が, FK506 との結合に必須なアミノ酸残基が変異し ているため FK506 と結合できない。FKBP8 の ノックダウンや,FKBP8 と結合できない1ア ミノ酸変異を NS5A に導入すると,HCV の複 製が著しく減弱する21,22)。通常,FKBP8 はミ トコンドリア外膜に局在しているが,NS5A と 結合して多重膜構造内へリクルートされる22)。 さらに筆者らは,butyrate-induced transcript 1 (B-ind1) が,NS5A,FKBP8, そ し て Hsp90 と結合することを明らかにした(図3A)23)。5 回膜貫通蛋白質である B-ind1 は Hsp90 のコシャ ペロンである p23 との相同性領域および Hsp90 との結合に必要な F-X-X-W(X は任意のアミノ

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酸)モチーフを保持しており,Hsp90-FKBP8-hB-ind1 のシャペロン複合体が HCV 複製に重 要な役割を演じている23)。このような宿主シャ ペロン蛋白質によってウイルス複製複合体は自 身の分子構造を維持しながら,ウイルスゲノム 複製効率を高く保っているのかもしない。 IV.HCV の病原性発現機構  一般的に,感染者の年齢と共に肝線維化が進 み,さらに肝硬変へ進行すると,肝細胞がんの 発症率が高まることが知られている。C 型肝炎 患者のアルコール摂取は肝硬変や肝細胞がんの 発症を促進させる。また,HCV の持続感染に よる長期間の炎症が肝がん発症の原因の一つと 考えられている。しかしながら,激しい慢性肝 炎症を呈する自己免疫性肝炎による肝発がんは 稀であり,慢性的な炎症の繰り返しによる遺伝 子異常の蓄積だけではなく,HCV の構成因子 が肝発がんに直接関与しているものと考えられ ている24)。HCV コア蛋白質のみを発現するト ランスジェニックマウス(コア Tg マウス)の 成績から,コア蛋白質の発現が HCV 感染によ る肝脂肪化と肝細胞がんの発症に関与してい ると考えられている25,26)。コア Tg マウスは炎 症と関係なく高率に脂肪肝を発症し,16 ヶ月 齢以降になると肝細胞がんが認められる25,26)。 コア蛋白質は LXRα や RXRα を活性化させて 脂肪酸合成酵素などの遺伝子発現を亢進させ, 脂肪肝を発症させる27)。また,コア蛋白質に よる酸化ストレスの誘導および MAPK 情報伝 達経路の活性化はアルコール摂取や脂肪蓄積に よって相乗的に増強される28,29)。増強された 酸化ストレスが,遺伝子変異を蓄積させるとと もに細胞増殖に関わる MAPK や AP-1 などを活 性化し,発がんに至るという仮説が提唱されて 図 3. HCV 感染による病原性発現機構 HCV コア蛋白質は,LXRα/RXRα によって SREBP-1c 発現を増加させ,脂肪蓄積を促す.それ に加え,TNFα の産生増加によってインスリン抵抗性を誘導し,そして酸化ストレスの亢進によっ て,肝細胞がんが発症する.実際には持続感染による長期間の炎症によってより肝線維化が進み 遺伝子変異蓄積が更新すると思われる.

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いる30)。また,C 型肝炎患者にインスリン抵 抗性を示す 2 型糖尿病の発症率が高いことが知 られており,コア Tg マウスも肝脂肪化を呈す る前にインスリン抵抗性を示す31)。また,イ ンスリン感受性低下の要因の一つと考えられて いる TNFα の産生亢進がこのマウスで観察さ れ,それがインスリン抵抗性を示す一因と考え られた31)。コア蛋白質と相互作用する宿主蛋 白質 PA28γ はプロテアソーム活性化因子とし て報告されたが,その生理的機能は不明であ る。PA28γ 遺伝子をノックアウトするとコア蛋 白質による病原性発現が消失する32,33)。更に 感染性ウイルス粒子放出にも PA28γ が関与し ている34)。PA28γ 発現によるコア Tg マウス肝 臓内の宿主蛋白質の量的変化をプロテインアレ イによって解析し,その結果を蛋白質構造予測 や蛋白質相互作用予測で構築されたネットワー ク解析にかけたところ,PA28γ と膜小胞輸送蛋 白質 VT1A との関連が推定された35)。したがっ て,PA28γ はウイルス粒子の細胞内輸送を調節 しているのかもしれない。病原性および感染性 への関連を考えると,PA28γ の機能解明が今後 の HCV の新規治療法開発に繋がるかもしれな い。図 3 に HCV 感染による病原性発現メカニ ズムの概略を示したので参照されたい。 V.終わりに  脂肪滴は HCV の粒子形成に関与し,小胞体 近傍に局在する複製複合体から供給されたウイ ルス RNA と脂肪滴上のコア蛋白質がヌクレオ キャプシドを形成し,エンベロープ蛋白質を 発現している小胞体膜から小胞体内腔へウイ ルス粒子が放出される。オレイン酸(C18:1) の添加で,脂肪滴形成が誘導されることが知 られており,コア蛋白質による stearoyl-CoA desaturase の発現上昇が脂肪酸の産生のみなら ず,脂肪滴の形成にも関与することが示唆され ている12,33,36)。したがって,脂質成分は HCV の複製や粒子形成に必須な因子であり,脂肪の 生合成や分解を標的とする新規抗 HCV 薬の開 発も可能と思われる。実際,スタチン類の薬 剤やスフィンゴ脂質合成抑制剤などが HCV ゲ ノムの複製にある程度有効であることが報告 されている37)。PA28γ をノックアウトしても マウスは若干の体重減少が認められるだけで, 重篤な異常は全く認められていない38)。将来, PA28γ と HCV コア蛋白質との相互作用,あ るいは PA28γ の機能を調節することにより, HCV 感染による病原性発現,特に肝細胞がん の発症を制御,あるいは遷延化できる治療法の 開発が可能となるかも知れない。 文  献

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参照

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