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コーチングの本質とは何か? 書籍を契機とした本質観取の実践と方法

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Academic year: 2021

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31 [ 論⽂/特別寄稿 ]

What is an essential insight on coaching?

——The new method to insight essences based on a book and discussions

in Essential Management Science

西條剛央

(早稲田大学大学院 客員准教授) Takeo Saijo

(Waseda University Graduate School, Visiting Associate Professor)

本論文では、「コーチング」という専門用語が、共通了解が得られていない我が国の状況を打開するために、 1 冊の書籍を通して「コーチング」の本質観取を実施し、コーチングの本質を構造として提示した。また、 それをワークショップやオンライン上のディスカッションを経て精査し、さらに了解の強度の高いものにバ ージョンアップした。また、その本質が実践においてどのように適切な行動を導き得るのか、その有効性を 論じた。最後に、本質行動学に基づくこの新たな本質観取の有効性と限界を論じ、本論文の研究枠組み自体 を新たな本質観取の研究モデルとして提示した。 キーワード:本質行動学、コーチング、構造構成主義、本質観取、質的研究法

This paper’s purpose is to implement Essential Insight on “coaching” based on a book selected and to improve and update through discussions in a class of an MBA and in an online school : Essential Management School focusing on “Essence” and “Management”. Next, it is clarified that the essences showed in this paper have a lot of effectiveness in real coaching. Finally, this article is positioned as a methodological research model of Essential Insight based on a book and discussions in Essential Management Science.

Keywords : Essential Management Science, Coaching, Structural Constructivism, Essential Insight, Qualitative Research Method

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32 1.問題 本論文は、本質行動学に基づきコーチングの本質を明らかにするものである。本質行動学(Essential Management Science)とは、物事の本質、、を明示的に把握することにより、より適切な行動、、を導くという、 その名に実践への接続を内在させている新たな学問的枠組みである1 1. 1 従来の現象学に依拠する本質観取の限界 本質行動学の基礎的な方法は「本質観取」となる。本質観取は現象学の祖フッサールによって生み出され た方法概念であり、西をはじめとした現象学者がその意義を最大限引き継ぎつつも、フッサールの理路に限 界があることも認め、改良を加えているが2、依然として様々な理論的難点を抱えている状況である。 たとえば、従来の現象学は、「体験の内省」を重視するため、現象学者の山竹は「研究者自身がどう感じた のか、自らの主観に生じたことを内省するプロセスが記されていない」ものや、「研究者が自らの内面に問う ことがなければ、現象学的な研究とはいえません」3と持論を述べている。 また人間科学の方法論として本質観取を位置づけている哲学者の西も、「他者のエピソードは、私のなかの 反省的エヴィデンスに支えられることによってこそ、本質観取を行うためのエヴィデンス(証拠・材料)と して機能する」4と述べている。こうした従来の現象学の理路に基づくならば、自分が直接経験していない事 柄については本質観取を実施するための理論的道筋を示すことは困難となる側面があり、また事実、現象学 者によってそうした本質観取の方法が明示的に論じられたことはない。 詳細は別途論じる必要があるが、これは現象学が戦略的独我論を採用し、私の「意識作用」(超越論的主観 性)に依拠することで、「私の経験」が絶対条件となってしまうという制約的限界を反映した半ば必然的帰結 と言える。では、どうすればこうした理論的難点を克服できるだろうか。 1. 2 本質行動学における本質観取 2017 年の西條論文5では、「マネジメントの父」と言われるドラッカーを本質行動学の系譜に位置づける ことが可能であることを論証し、また同年もう一つの論文でドラッカーの著作を用いて組織構造の本質観取 を行い、そこで見出された組織構造の本質を普遍洞察性を備えた「原理」として定式化する方法を示した6 しかし、本質観取は、ドラッカー以外の著作をテクストとして実践することも可能である。本稿ではその 方法を提示する。 特に、ここで示す方法は、自分がその言葉が指し示す内容について直接体験していない場合、あるいは、 その言葉を耳にしたことはある程度で、その意味や言葉の使い方がわからないといった場合にも有効となる。 そもそも自らの体験に基づいて本質観取しようにも、いわばそれを吟味するための経験(データ)が足りな い場合、様々な使われ方をするその言葉に通底し、その言葉をその言葉たらしめているような中心的意味を 言い当てることや、本質を言い当てられたかどうかを判定することは不可能になってしまうのだ。 しかしこうした理論的難点は、フッサールの普遍学の構想を現象学以上に徹底することによって体現した 「構造構成主義」(Structural Constructivism)をメタ理論とすることによりすべて超克可能になる。そのア ウトラインを手短に素描すれば、構造構成主義においては、現象学が起点とする私の「意識作用」(超越論的 主観性)ではなく、「立ち現れ」というより原理的な方法概念を探究の出発点するため、書籍を読むといった 間接経験であっても、その人に立ち現れていることには変わらないことになり、理論的な問題が生じること

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33 なく本質観取を実施することが可能になるのだ。 本論において、この方法を構造構成主義によって理論的に正当性をもった形で提示できれば、本質観取の 射程をさらに広げ、より汎用性の高い方法論に昇華することができるだろう。 2.目的 本論では、「コーチング」という専門用語を取り上げ、書籍を通してその本質を観取し、それをワークショ ップやオンライン上のディスカッションを経て、コーチングの本質として広く了解され得る構造として提示 することを第1 の目的とする。 また構造構成主義をメタ理論とすることで理論的正当性を担保すると同時に、その方法の有効性と限界を 吟味し、本論文の研究枠組み自体を新たな本質観取の研究モデルとして提示することを第2 の目的とする。 3.方法 3.1 現象学よりも無前提性を徹底した超メタ理論の導入 以上の目的を実現するために、現象学よりも理路の無前提性を徹底することで、さらなる超越論的地平を 拓いた構造構成主義を導入するのだが、この点は少し補足が必要だろう。 現象学の祖であるフッサールは、デカルトが発明した方法的懐疑を徹底し、目の前の机の存在を疑えたと しても、それを疑っている私の意識作用そのものは疑えないと考えた。しかし、さらに方法的懐疑を徹底す るならば、それが「私の」意識作用であるかどうかという点は疑えることがわかる。では疑えないのは何か。 徹底的に疑っていることを含めて、そのように立ち現れていることは疑えない、ということである。 フッサールやその思想を受け継ぐ現象学者は「方法的懐疑の使い方」が間違っている可能性があることを 疑うことはなかったが、実はここで本質的に重要なことは、疑えないかどうかではない。極論すれば懐疑論 者をはじめとして他者が「それすら疑える」と感じたり、強弁する自由は常に残されているためであって、 現象学者が「疑えない」と確信したからといってその確信を「他者」に強いることはできないのだ。現象学 は十分に自覚的ではなかったが、「疑えるかどうか」といった行為の可否を問題にすれば、懐疑可能性を巡る 新たな信念対立を呼び込むことになり、事実、現象学者と懐疑論者(相対主義者)との信念対立が生じてい ることに、この問題の根深さがある。 現象学は、問いの立て方を間違ってしまうことで、適切な「方法的懐疑」の使い方を確立できずにいたの だ。 あらゆる諸学問の原理であるために超メタ理論として要請される問いの立て方としては、一切の前提に依 拠することなく、あらゆる前提を止揚包摂可能な方法概念としてどのようなコトバとして置けば良いのか、 と問わねばならない。構造構成主義においては、その問いに答えるコトバが「立ち現れ」としての「現象」 なのである。そこにて、すべての学問は、その対象が外部世界であれ、幻想や夢を含む内的世界の事象であ れ、「立ち現れ」を探求しているという点では原理的に等価である、ということができるのだ。 大雑把に言ってしまえば、現象学は、(超越論的な意識作用としての)「私の経験」こそ懐疑を逃れ得る底 板になると信じたことから、直接経験されたものではない書籍は、本質観取の検討材料の射程外になってい たのである。それに対して、「立ち現れ」というコトバを、超メタ理論に要請される方法概念として探求の底 板に据えた構造構成主義においては、書籍を読むという行為も立ち現れている、、、、、、、ことに変わりはないことにな るため、書籍に基づく本質観取を正当性のある方法に積極的に位置づけることが可能になるのだ。

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34 しかしながら、本論文は一冊の書籍をもとに本質観取を行う試みであり、それがどの程度機能するか、そ の有効性と限界を確かめる必要があることから、本質行動学における新たな本質観取の試論として位置づけ なければならない。 3.2 本質観取を行うテクストの選定 ここではあえて筆者にとって、その言葉の内実をこういうものだと直観できない「コーチング」という言 葉を例に本質観取を行っていく。この本質観取を実施する以前に、私はコーチングという言葉を時折耳にし ていたが、コーチングに関する本を読んだり、コーチングの研修を受けたりした経験はなかった。あえて言 えば「なんとなく上から目線で偉そうだな」という印象がある程度で、「コーチングってたまに耳にするけれ ど何なのだろう」と素朴に思っていた。 先にも述べたように、そうした場合には、自身のその言葉を巡る経験に基づいて本質観取を行うことは実 質的に不可能になる。自分の経験を反省しようにも、経験が乏しすぎて、そこからこれがこの言葉の本質だ と確信をもって言えるようなものを取り出すことができないためだ7 実際に「コーチング」という概念は、比較的新しい外来語であり、現状では日本人なら誰もが知っている 一般名詞にはなっていない。そうした場合、一般の人1000 人に対して、コーチングとは何かと質問したと ころで、日本人のコーチングという言葉に対して持っているイメージや理解の傾向を知ることはできても、 コーチングの本質には辿り着けないだろう。 同じ理由で、こうした一般的ではない概念について本質観取を行う際には、その言葉をよく知らない人た ちを集めて、西が実施しているような「本質観取ワークショップ」8を行ったところで、自身が経験していな い、あるいは経験が浅い言葉に対しては、自分の体験を内省することを基軸とする従来の現象学の本質観取 は、残念ながらほとんど、あるいはまったく機能しないのだ(あるいはコーチングを経験したことがある人 とない人は話が噛み合わず、まっとうに機能しないであろうことは容易に想像できる)。 またコーチングはビジネスの文脈で「専門用語」として日本に入ってきた経緯があるように思われる。し たがって、専門家にも了解される本質を取り出すためには、学術的な発展経緯を踏まえてコーチングという 用語の本質を明らかにする必要があり、そのためには、一般の人のその言葉に関する素朴な経験をもとにす るだけでは、広く了解が得られる「本質」を提示することは極めて困難となる。 そうした場合、その言葉について専門家が論じている書籍を活用することが、広く了解が得られる本質を 観取するために役立つ可能性があると考えられる。 では、どのような本を選べばよいのだろうか。その際に、知識としても直接経験しているという意味でも その言葉に精通していながら、特定の流派に依拠したり信奉したりしているわけでもなく、歴史的経緯や業 界全体を俯瞰する視点を持ちつつ、広く共通了解されるその言葉の定義を求める姿勢によって書かれたもの は本質観取を実施するテクストとして適している可能性が高い。 そこでここでは、たまたま本棚にあった『人の力を引き出すコーチング術』9の「はじめに」において「『結 局、コーチングっていうのはどういうことなのよ?』という質問に、あなたが答えられるようになることが この本の目的である」10と明記されていたことから、コーチングの本質観取の初発点として相応しい一冊と 思われたため、これをテクストとして本質観取を実施していくこととした。

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35 3.3 ワークショップとオンラインサロンによる本質の精緻化 ただし、1 冊の本に基づく本質観取は、理論上はその著者のコーチングという言葉に関する経験や理解に 基づくものにならざるを得ず、特に今回の場合、筆者自身がその言葉に関する経験が乏しいことから、そこ で書かれていることが本質たり得るかを批判的に吟味し、精査していくことは難しい。 したがって、書籍をもとに把握した仮説性の高い本質を、了解の強度の高いものへと昇華していくために は、ワークショップのような開かれた議論ができる場で、多くの人と意見交換しながら洞察を深めていくこ とが有用と考えられる。 その際に、議論のたたき台として仮説的に提示している本質がいかにして得られたものなのか、「本質の構 造化に至る根拠」(本論文の前半部分)も含めて読み込んだ上でディスカッションに参加してもらうことで、 その言葉を巡る直接的な経験が乏しい人も、論考を通し間接的経験を増やした形でそのディスカッションに 加わることが可能になる。 したがって、本論文では書籍を通した本質観取と、その本質が構造化されるまでの根拠となる過程を示し た論考をMBA の本質行動学(組織心理学)の授業でシェアした上でオープンディスカッションを行い、本 質の精査を行う。 さらに本質とマネジメントに関心がある数百人の受講生が集い、コーチングを仕事としている人たちも参 加しているオンラインサロン“エッセンシャル・マネジメント・スクール”にその論考を投稿し、実践者を まじえた忌憚のない意見をもらうことで、コーチングの本質をさらに了解の強度の高いものにしていくこと とした。 このように本論文では、書籍に基づく本質観取により得た本質を、ワークショップとオンラインサロンと いった開かれた場で精査することによって精緻化するといった、新たな本質観取の方法を試みる。 4.一冊の書籍に基づく本質観取 4.1 テクストに定義的なことが書かれていたとしても鵜呑みにしない それではいよいよ原口の『人の力を引き出すコーチング術』を用いて本質観取を行っていく。 1章は「コーチングの定義は難しい」11という見出しから始まり、その後「現在、さまざまな研修機関や 教育機関で、『コーチング』と称してセミナーや講座を行っているが、その中身が統一されているかというと、 これがそれぞればらばらだったりする。言葉もばらばらであれば、定義もばらばらだったりするのだ。この 事実もまた、『コーチングとは何ぞや』という質問への答えを出しにくくしている」12と日本のコーチングを 取り巻く現状が論じられている。 その上で、原口はコーチングとは、「よりよいコミュニケーションを行えるようにする」という目的に対し て、「役に立つ技術」を集めて作り上げた、「コミュニケーションスキルアップの体系」であり、「寄せ集め」 と持論を述べている13 しかし、ここで注意しなければならないのは、明確に「コーチングとは○○である」と定義的に書かれて いたとしても、それが本質を捉えた記述とは限らないということだ。実際に、コーチングとはここで挙げら れている「コミュニケーションスキルアップの体系」とも言えるのだろうが、そうした体系は他にもいくら でも考えられるため、それをしてコーチングの本質を言い当てていると言うことはできない。他の類似した 言葉との十分な差異化ができなければ、それをそれたらしめている本質とは言えないためだ。 そもそも本に書かれている定義を鵜呑みにするだけなら、最初から辞書を調べればよいということになる。

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36 しかし、辞書とは一般的にどういう意味で使われるかを言い当てたものであり、その言葉が本質を言い当て られているとは限らない。また、辞書や専門書に書かれている定義らしきものが、実際に人々にどのように 経験されているのかといったそのコトバに関する“経験の意味の本質”を言い当てている保証もない。 もちろん、その事柄の本質を捉えることを目的に書かれた書籍や論文で提示されている「定義」は参考に はなるだろう。しかし、よほど本質観取の感度の高い人が、自覚的にその言葉をその言葉たらしめている中 心的意味を言い当てようとして考え、論じ尽くしたものでない限り、誰もがこれぞ本質と了解してしまうほ どの強度で書かれていることは稀と言ってよい。 経験上、最も本質的な洞察に溢れているのは、マネジメント領域であれば、筆者がたびたび取り上げてき たマネジメントの発明者と呼ばれるドラッカーが挙げられる(ドラッカーの著作を用いた本質の抽出とそれ による原理の定式化は西條論文(2017b)14を参照)。そして歴史の淘汰を経ても残っている哲学者の著作が あり、そうした著作群は本質的洞察の宝庫と言える。しかしそうしたテクストを用いたとしても、本質を明 晰な形で取り出せるかどうかは読み手の力量にもかかっている。いずれにしても、今回の「コーチング」と いう言葉のように、ドラッカーや哲学者が真正面から取り上げることがなかった言葉は、他のテクストを頼 るほかない。 また書籍をもとに本質観取を行う場合、批判的に吟味を重ねた後に、「その本に書かれている定義が、やは り本質を言い当てていると確信できたためこれを採用しよう」ということはあり得るわけだが、自分自身の その言葉に関する間接的経験も乏しい状況では、その定義が本質を言い当てられているかを判断するのに十 分な材料がないことになる。そうした状態で定義を鵜呑みにしても、自己了解を伴う本質観取を行ったこと にはならず、自己了解を伴わなければ、それを多くの人々に了解してもらえるほどの説得力をもって示すこ とは、不可能ではないにせよ、相当困難なことになる。 4.2 その言葉に関する間接的な経験を増加させる ではどうすればよいのか。一部の技法に特化して書かれた本ではなく、全体を俯瞰して書かれたような本 であれば、そのテーマに関する様々な技法や流派に共通して見られる方法について言及されていることは珍 しくない。あるいは、ここで取り上げた『人の力を引き出すコーチング術』のように、その言葉がどのよう な歴史的経緯を経て生まれてきたのか概観しているものも有効だろう。まずはそうした情報を通じて、その 言葉に対する、間接的な“経験”を増加させることが必要になる。言い換えれば、“その言葉の使われ方に関 する経験”を増やしていくのだ。 先に触れたように、構造構成主義においては、“立ち現れている”という意味では読書も立派な経験という ことになる。実際に我々は、多くの本を読むことを通して、あるいはテレビを見たり、ネットの記事を読ん だり、様々なメディアを介して、この言葉はこういう文脈でこのように使われているんだなといったように 「その言葉の使い方」を倣い覚えている。 本質観取とは、その言葉をその言葉たらしめているような中核的意味を広く了解してもらえるよう言い当 てる営みである。ここではそれを特定の言葉にフォーカスし、意識的、自覚的に実践していくことになる。 本質観取のための材料として書籍を読むという明確な目的意識を持つことで、本の選定や読み方の精度を上 げることができる。 この論文では、本論の読者にも筆者が経験した「読書を通した“コーチング”という言葉を巡る経験の増 加」を追体験してもらうために、原口の『人の力を引き出すコーチング術』のポイントになる箇所を適宜引

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37 用しながら要約していく。ただし、紙面的にも著作権的にもごく一部の引用に限定せざるをえないため、本 論の引用や解釈が妥当なものかを確かめる意味でも、詳しい内容は直接書籍を当たってもらいたい。 また本論では一冊の書籍に基づく本質観取の有効性と限界を批判的吟味するために、あえてコーチングに 関する他の書籍は読まずに進める。では内容に入っていこう。 4.3 コーチングの本質の仮説生成 4.3.1 コーチングの誕生について15 原口によれば、コーチングを生み出したのは、教育の専門家でもあり、テニスプレイヤーでもあった W・ティモシ ー・ガルウェイであったという。では、ガルウェイによってコーチングはどのように生み出されたのか。 教育者として学習理論を研究していたガルウェイは、普通の方法、つまり「正しいラケットの持ち方や振り方、腕の 動かし方などを伝えて、その通りにやるように」レッスンしていた。しかし、うまくいかなかったことから、ガルウェイは 自分がテニスをして見せることで「できるというイメージ」を理解させ、その後はやってみて、うまくいかなかった部分 は対話しながら修正していくという新たな試みをしたところ非常に有効だった。ガルウェイはこの繰り返しによって できるようになっていくその過程を「自然習得力」と呼び、この発見こそが、「コーチングの誕生した瞬間だった」。 この方法は、ビジネスの世界に普及していき、「ビジネス組織改革のコーチング」は、「ビジネスコーチング」と呼 ばれるようになった。 4.3.2 パーソナルコーチングの誕生について16 1980 年代に入ると、トマス・レナードにより、個人の生活を対象として、成果ではなく、幸せや豊かさといったクラ イアントの価値観を満たす「パーソナルコーチング」が生み出された。それはトマス・レナードの職業であったファイ ナンシャルプランナーのスタイル、つまり「クライアントの現在の状況と将来のイベントをもとに、収入計画や支出計 画、あるいは投資計画などをデザインする」という方法が、パーソナルコーチングの考え方の基礎となった。そこか らコーチとクライアントの「セッション(対話)」、「現状の棚卸し」と「未来のゴールセッティング」、それにもとづく「行動 変容」といった現在のコーチングの基本的なスタイルが生み出されたという。 4.3.3 2 つのコーチングの共通点 ガルウェイは、「できるというイメージ」を理解した後は実際にやってみて、うまくいかなかった部分は自 分と対話して修正するという繰り返しによって「できる」ようになっていくことを「自然習得力」と呼んだ が、これは、トマス・レナードの言葉で言うところの「未来のゴールセッティング」とそれにもとづく「行 動変容」に重なる。つまり、双方とも、“どうなりたいのかというゴールイメージを共有した上で、それに近 づくためのクライアントの行動変容を手伝っている”と言える。 ここで思い浮かんだのが、「セルフマネジメント」という言葉だ。筆者は、マネジメントという用語を「望 ましい状態を実現していくこと」と定義しているが 17、それに倣えば、「セルフマネジメントを援助するこ と」、つまり「クライアントが望ましい状態(ゴールイメージ)を実現していくための手伝いをしていくこと」 がコーチングの本質と言える可能性があると考えた。 これはこの時点で仮説的なものに過ぎないが、こうした暫定的な視点を持つことは、それに囚われさえし なければ、コーチングの本質を究めていく上で、その視点の妥当性も含めた精査に役立つと考えられる。

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38 4.3.4 類似の概念との違いに着目する 本質観取を行うにあたって、“類似概念との違いに着目すること”が本質の輪郭をより明確にしていくため に役立つことがある。なぜなら本質観取とは“それをそれたらしめているような中心的意味”を明らかにす ることでもあるため、他の類似した概念との違いに焦点化することは、その言葉ならではのポイントを明確 にするのに有用な手段になり得るためである。 先に触れたように、『人の力を引き出すコーチング術』は読者が「コーチングとは何か」に答えられるよう になることを企図して書かれており、「コーチングではないもの」である類似概念との差異を意図的に検討し ている箇所があるため、以下紹介していこう18 まず、「先生(ティーチャー)は、生徒に対して情報や方法を教える人のことであり、この関係は一方的で 上から下へと知識が流れる」として、教師に代表されるような「ティーチング」との違いを述べている。 またコーチングとコンサルティングとの違いとしては、「コンサルタントは、基本的に独自のノウハウを教 えるティーチャー(教師)」であり、「主として業績を挙げたり、組織風土を改善したりする仕事のときには、 コーチ的な関わり方をすることもあるだろうが、最終的には、業績という成果に対して行動するので、その 目的はかなり違う」としている。こうしてティーチングやコンサルティングと対比させた上で、コーチング とはあくまでクライアントの「自発的な行動の支援」を行うことと述べている。 またカウンセリングとの違いについては、カウンセリングは、マイナスの状態の人を通常の状態に戻すこ とであるのに対して、コーチングは「普通の状態からさらにパフォーマンスを引き出そう」とするものであ り、力点が異なると論じている。 また、パーソナルコーチングと自己啓発セミナーとの違いについては「自己啓発セミナーは、セミナーに 参加者を依存」させる傾向があることを指摘し、コーチングが目指すのは、純粋に「自然習得力」を持った 「自立した人間」であり、コーチはあくまで「援助者」であることを強調している。以上のように「コーチ ング」の本質を浮き彫りにするために、「コーチングではないもの」として類似概念との違いを論じている点 も、本質観取を実施するために相応しいテクストと言える。 4.3.5 コーチングの本質の仮説的定義の提示 このように、テクストを元に他の類似した概念との差異にフォーカスしながら、その本質を明らかにして いこうとすることで、「自然習得力」「自発的な行動の支援」「援助者」「自立した人間」といった言葉がキー ワードとして浮かんできた。これらは先に示したコーチングの本質とは「セルフマネジメントを援助するこ と」、すなわち「クライアントが自ら望ましい状態を実現していく援助をしていくことがコーチングの本質で ある」という仮説と矛盾しない。実際、先のコーチングの定義を念頭に、それらのキーワードを重要なポイ ントがわかる形で、「コーチングとは、クライアントが自ら望む状態を実現していくために、“自然習得力” をもった“自立した人間”の“自発的な行動”を援助することである」と定義することも可能である。 そのためさしあたり、「クライアントが望ましい状態を実現していく援助をしていくこと」つまり「セルフ マネジメントを援助すること」がコーチングの本質であるという仮説は妥当なものと言える。ここから、コ ーチングの本質——最も重要な中核となるポイント——をあらためて「コーチングの本質とは、クライアントが 望ましい状態を実現していく援助をしていくことにある」と定義することが可能である。 したがって、そのままリフレイズする形で、コーチングとは何かという問いに対して一言で答えるならば、 「コーチングとは、クライアントが望ましい状態を実現していく援助をしていくことである」となる。

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39 また原口は、「コーチングは手段であって目的ではない」あるいは「あくまでコーチングは手段であり、ツ ールにすぎない」19としており、「実用の学」20としてのコーチングを強調していることから、「方法」とい うキーワードが浮かんできた。実学であり、方法である点を考慮して、コーチングとは何かに答えるなら、 「コーチングとは、クライアントが望ましい状態を実現していく援助をしていくための方法である」と言う ことができる。 4.4 ビジネスとしてのコーチングの普及 4.4.1 ガルウェイのAT&T における成功 次に、先に示したコーチングの本質に関する仮説的定義が、その書籍で示されている実践例と矛盾せず一 貫した説明が可能であるか検討するために、『人の力を引き出すコーチング術』第2 章の「ビジネス現場のコ ーチング、理想と現実」21で示されている事例を検討していく。まずはテクストに基づき、コーチングの創 始者、ガルウェイのAT&T の事例をみていこう。 AT&T はアメリカを代表する通信企業であるが、独占的状態が問題となり、規制緩和の流れがこの業界に まで及んだ時に、ガルウェイに声がかかった。ガルウェイが実際に行ったオペレーターサービス部門の改革 は次のようなものだった。 まず、オペレーターサービス部門は、顧客からの問い合わせに対応する部門だが、それまではひたすらマ ニュアル通りに動くことが良しとされていた。しかし、規制緩和によって会社が競争に晒されるようになっ てからは、オペレーターたちにも顧客満足度を上げることが求められるようになり、行動指針がマニュアル を守ることから創造的に考え、リスクを恐れずに新しい接客サービスに取り組むことに変わった。しかし、 オペレーターたちは変わらなかったという。 ガルウェイは、現場はどうすれば変われるかがわからなくて、思考停止に陥ってしまったことから、目指 すべきイメージがあれば、自分から変わっていくように方向づけてあげることができ、接客のあり方を変え ることができると考えた。また彼の見立てでは、オペレーターたちは自分たちの仕事に飽き飽きしていた。 人間は飽きると仕事をルーチンでこなすようになり、そこには発見も変革もなくなってしまう。そのため、 それを打開するために、結果として、オペレーターたちが自分自身で仕事を面白く学習できるようになるた めのインナーワークを導入した。 まず彼は、オペレーターたちに「聴くこと」を教えた。利用者の声を聞き分けて、「温かさ」「親しさ」 「苛立ち」などの項目別に、一から一〇までの数字に置き換えさせたのだ。そうすることによって、それ まで漫然と聴いていた利用者の声にも、さまざまな声色や響き、感情が表現されていることがわかるよう になり、オペレーターたちの仕事への面白みが増した。 さらに、対応するときには、例えば、ストレスレベル一〇の声には、温かさ一〇の声で、というふうに、 相手の声に合わせた声で対応する練習をしてもらった。 (『人の力を引き出すコーチング術』74 頁) このインナーワークの結果はすぐに現れて、まずオペレーターがロボットのような機械的な対応から人間 的な対応に変わったことにより、応対指数の結果が期待以上に向上した。またオペレーターたちの退屈とス トレスの度合いは平均で40 パーセント軽減し、さらに仕事を楽しめている率は 30 パーセント向上した。

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40 先のコーチングの本質を踏まえれば、ガルウェイは聴くことの訓練によって、オペレーター自身で仕事を 楽しくし、モチベーションを向上させるためにセルフマネジメントを行っていくための援助を行った、とい うこともできる。ここからこのガルウェイのAT&T の事例も、「クライアントが望ましい状態を実現してい く援助をしていくこと」という先に提示したコーチングの本質に沿っていると言える。 4.4.2 アメリカ社会におけるコーチングの急速な普及22 こうしてガルウェイはAT&T でのコンサルティングを成功させた後、スポーツで有効なコーチという役割 は、ビジネスでも役立つのではないかと考えて、それまでのインナーワークのコンサルティングではなく、 コーチングの考え方を広めることにシフトした。これによって、「コーチ」は、スポーツのパフォーマンスを 向上させる人、という意味だけでなく、ビジネス界で「コーチング」を広める人、あるいはプロのコーチン グができる人という意味として使われるようになり、コーチやコーチングという考え方は、瞬く間にアメリ カで受け入れられて、「コーチング」というひとつのビジネスになっていった。 4.4.3 コーチングの本質は「コーチング型マネジメント」の事例にも適合するか? 『人の力を引き出すコーチング術』の第2 章では「ジャック・ウェルチの GE 革命」23や、「コーチング型 マネジメントにより存続を危ぶまれるようになった日産を再建したカルロス・ゴーンの事例」24が紹介され ており、それを踏まえて原口は「ガルウェイもウェルチもゴーンも、会社や組織を変える際には、ただ単に 押しつけるのではなく、社員が自分で考えて行動するように導いていった」25と述べている。これらのコー チング型マネジメントの事例も、「クライアントが自ら望ましい状態を実現していくことを援助すること」と いうコーチングの本質で言い当てられることがわかる。 4.5 「聴く」「語らせる」「質問する」という3 つの基本の本質とは? 原口は、『人の力を引き出すコーチング術』の第3 章で、「聴く」「語る」「質問する」という 3 つのコミュ ニケーションの動作を通じて、どういう態度がコーチング的であり、どういう態度がそうではないのかを説 明している。ここでは、原口の説明を踏まえながら、先に見出したコーチングの本質を踏まえ、この3 つの コミュニケーションに共通する本質を捉えてみる。 4. 5.1 「聴く」ことについて26 原口はまず「“聴く”は、相手を受け入れる姿勢のことであり、観察することなのだ」としている。つまり、 「言葉だけではなく、身ぶりや手ぶり、視線や表情など、相手の全体を見て、そこから私たちはメッセージ を読み取ろうとする」のであり、「コーチングで言う“聴く”とは、相手を理解しようとすること」であると 述べている。 「聴く」というと簡単そうだが、私達は純粋に「聴く」ということに慣れていないため、研修などでは「ず っと話を聴いているとついアドバイスしてあげたり、質問を入れたりして、相手の話の腰を折ってしまうこ とがよく見受けられた」と言う。そのため「わかる、わかる」「つまりこういうことだろ?」と自分にひきつ けてしまいがちだが、そうではなく、相手のことを理解する姿勢を保ち、相手の言いたいことを受け止め続 けることが大事であるとしている。相手の言うことを「しっかりと聴いている」と伝えるために「うなずき」 「笑顔」「アイコンタクト」「あいづち」といったしぐさや身振りなどが有効であり、「他人への関心がないと

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41 ころに、聴くことはあり得ない」として、うまく「聴く」ことを機能させるためには、その人のことを知り たいとその人自身に関心を持つことが必要であると述べている。 4.5.2 「語らせる」ことについて27 次に原口は、コーチングにおける「語り」を取り上げながら、「気づき」や「自己理解の促進」を意図的に 起こすのがコーチングであると述べている。「理解を促進する」という点では、先の「聴く」とは相手を理解 しようとすることという見解と重なるところがあることからも、“自己理解の促進”はひとつのキーワードに なる可能性がある。 一方で、原口は「気をつけたいのは、物語ることの力というのは、その内容が真実であるか否かを問わず、 語られることで信念や意識に影響を与えてしまう」として、「コーチとして話を聴く上では、クライアントの 話が、ネガティブになったら修正が必要である」と注意を促している。 4.5.3 言葉を引き出すために「質問する」28 次に原口は、コーチングにおける「質問する」という行為を「ビジネスの場面などでも、よほど慣れてい なければ、なかなかスムーズには語れない」ことから、「語ることを手助けする」ことに位置づけている。そ して「答えを考えるなかで、課題がより明確になり、行動に結びつけられる」として、コーチング的な質問 として以下の例を挙げている。 一.心の準備はできていますか? 二.あなたが今、気になっていることは何ですか? 三.それがどのようになればいいと思いますか? 四.それが解決したら、どんな気持ちになりますか? 五.解決するための課題は何ですか? 六.課題はいくつありますか? 七.まず、どこから手をつけますか? 八.いつ始めますか? 九.いつまでに終わらせますか? 十.それを達成したあなたが手に入れるものは何ですか? (『人の力を引き出すコーチング術』139-140 頁) これらの質問は、まさに先に出てきたキーワード「自己理解の促進」のための質問であることがわかる。 以上、原口の解説を通して、「聴く」「語らせる」「質問する」というコーチングの基本となる3 つの動作に ついて、コーチングとはどういう態度に基づくものなのか確認してきたが、これら3 つの共通本質とは何か、 つまりコーチングにおいてこれらの「聴く」「語らせる」「質問する」といった行動が何のためになされるの かと問えば、クライアントの「自己理解の促進」のためと言うことができよう。以下に、ここまでの議論を もとに筆者が作成した図を示す。

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42 4.6 人をよりよい方向に導くためのスキルとして3 つのコーチングの考え方 『人の力を引き出すコーチング術』の第4 章「コーチングを実践するには?」において、原口は「自己成 長を促す」というより高次元の成果を得るためのスキルとして、「想像させる」「提案する」「決定させる」と いう3 つのコーチングの考え方を紹介している。したがって次にこの 3 つの考え方を概観した上で、3 つの スキルの共通本質を洞察していく。 4.6.1 「最終状態をイメージすること」について29 原口は、「最終状態をイメージすることで、自ずとその方向に向かおうとする」ことから、「想像させる」 ということが目標設定を早めると述べている。また、「一度、夢やビジョンが形になると、人はそれを実現さ せたいと思う傾向がある」ことから、コーチングでは、その実現したくなってしまう性質を利用して、想像 させたり、視覚化させたりすることで、体験を先取りさせると言う。 4.6.2 「提案すること」について30 次に、コーチングでは相手の意志が最も尊重されるとして、必ず提案される側が、自分で決めることを前 提として提案をすると述べている。また「提案の際には、相手の考え方や価値観、好きなことや嫌いなこと、 そういったことをきちんと把握しておいた方が、提案は効果的になる」としている。少し長くなるが、コー チングにおける提案の具体的なイメージを掴んでもらうために、以下原口が挙げているコーチングにおける 提案の事例を紹介する。 妻「あなた、そういえば、人前に出る仕事が増えてきたから、ちゃんとしたスーツを買わないと、って言 ってたわね」 夫「ああ、そうなんだよ」 妻「やっぱりスーツって値段で見た目が違うのかしら?」 夫「そうだねぇ。よくわからないな」

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43 妻「あなたはどんな人を見るとちゃんとした人、って思うの?」 夫「そうだなぁ。スーツなんかはいいか悪いかはよくわからないけど、シャツとネクタイがパリッとして いると、格好いいと思うなぁ。憧れるね」 妻「あなたも格好よくなれそう?」 夫「そうだなぁ、でも、今は持っていないんだなぁ。そういうシャツとネクタイ」 妻「イメージはあるの?」 夫「うん。ある研修で講師の人がブルーと白のストライプのネクタイをつけていてね。格好いいなぁと思 ったんだ。俺もああいうネクタイが欲しいなぁ」」 妻「そうね。きっとあなたにも似合うと思うわ」 夫「ありがとう。ああいうのが今は欲しいね」 妻「ところであなた、今週末は予定あるの?」 夫「いいや、何もないよ」 妻「思いついたついでに、買いに行くというのはどうかしら? ちょうど××デパートでバーゲンをやっ ているのよ。あそこのデパートは紳士物がいいというので評判だから」 夫「そうだな。イメージしたら、なんだか欲しくなってきたよ。うん、じゃあ、行くかぁ。こういう機会 でもないと、行かないしなぁ」 妻「決まりね。二人でいいものを買ってきましょうね」 (『人の力を引き出すコーチング術』155-157 頁) 原口は、こうしたやりとりを例示した上で、あくまで夫に寄り添って、その成長を助ける目的を持ちなが ら、本人の意志を尊重して提案することによって、モチベーションを上げることができることを示し、「自分 の価値観や都合を押しつけない提案が、コーチングで有効な提案の方法なのである」と説明している。 4.6.3 「決定させる」ということについて31 次に『人の力を引き出すコーチング術』では、掲げた目的がどんなに具体的になり、いくらやる気を起こ しても、最初の一歩を踏み出すためには、本当にやるということを「決定」しなければならないとして、原 口はクライアントに「行動をする本人が決定して、実行することを私に約束する」という宿題をやってもら っていると述べている。その効用としては、自分で決めて宣言したものであればプライドもあるため、「やろ う」という意欲も高まることや、決めることで迷いがなくなり、集中力を発揮して、高いパフォーマンスを 出すことができるとしている。 4.6.4 コーチングの3つの代表的スキルの本質とは? 以上、「想像させる」「提案する」「決定させる」というコーチングを代表する3 つのスキルは、「自己成長 を促す」という高次の成果を得るためのものであり、それは「自ら望ましい状態を実現すること」と符合す る(図2 はこれまでの議論を踏まえて筆者が作成した)。以上のことからも「コーチングの本質は、クライア ントが自ら望ましい状態を実現していくことを援助することにある」という本質洞察は、この書籍に基づく 限り妥当なものと言える。

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44 4.7 コーチングの本質構造モデルver.1 の提示 以上の議論を踏まえ、図1 の「聴く」「質問する」「語らせる」というコーチングの 3 つの基本の共通本質 である《自己理解の促進》、図2 の「想像させる」「提案する」「決定させる」というコーチングの3 つの代表 的スキルの《クライアントにとって望ましい状態を実現していくこと》という共通本質を重ねあわせた結果、 コーチングの役割の本質とは【クライアントの自己理解を促進し、望ましい状態を実現していくセルフマネ ジメントの援助をすること】と言えることが明らかになった。これをコーチングの3 つの基本と代表的スキ ルの本質に基づくコーチングの本質構造モデルver.1 とする。

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45 5.オープンディスカッションによる本質の精査と精密化 次に、『人の力を引き出すコーチング術』という1冊の書籍の分析を通して確認された「コーチングとはク ライアントの自己理解を促進し、望ましい状態を実現していくセルフマネジメントの援助をすること」とい う本質が広く了解を得られるものであるか、また改善すべき点はないか、オープンディスカッション形式で 確認していくことにした。 方法としては、ここまでの議論と上に提示した「コーチングの本質構造モデルver.1」を中心に論文として まとめ、約80 名が参加した本質行動学に関する MBA の集中講義で配布した。受講生は、本質とは物事の 重要なポイントを言い当てたものであり、真理ではないこと、関心に応じて掴まれるものであるといった、 本質行動学における「本質」に関する基本的な考え方は事前に学んでいた。 確認したところ、約半数はコーチングの授業を受けるなど何らかの形でコーチングを経験していること、 残りの半数はコーチングという言葉は聞いたことはあるがよくわからない状態であることがわかった。 そして、授業中に40 分ほど時間をかけて本論文のここまでの部分にあたるものを各自黙読してもらい、 「コーチングの本質とは、クライアントの自己理解を促進し、望ましい状態を実現していくセルフマネジメ ントの援助をすること」というコーチングの仮説的本質に関して、様々な意見を出してもらった。 すると、まず「コーチングとは何だかんだ言ってクライエントをよい方向に導こうとする側面があるので はないか」という指摘があった。それに対しては、「確かにコーチングに導くという要素はあると思うが、そ れがコーチングの“本質”と言えるかが重要であり、“導く”というキーワードは、どちらかといえば、リー ダーシップの本質といえるのではないか。それに対して、コーチングとはあくまでクライアントが主体で、 相手の意志を尊重しながら、それを援助することが本質ということになるのだと思う」と論文を踏まえた見 解を示すと、「その説明で納得できました」と了解が得られた様子であった。ここでは期せずして、書籍では 触れられていなかった「導く」というリーダーシップの本質との対比を通して、コーチングをコーチングた らしめている重要なポイントをより明確にするという作業になったと考えられる。 またディスカッションを通して与えるというより「引き出す」というキーワードも浮かんできた。その観 点からすると、「セルフマネジメントの“援助”をする」という表現は、与えるというニュアンスが強いので はないかという指摘もあった。それについては、確かに「サポートする」、「支援する」、「手伝う」といった 表現のほうが妥当な可能性があると見解を述べた。 そうした議論を重ねた後に、ある受講生から「本質を引き出す」というキーワードが上がった。これは、 非常にコーチングの本質を言い当てているように思われた。 これに対して、マネジメントにおける“適材適所の本質”という観点からすると、人間の本質は“関心” と“能力(強み)”という2 つのポイントが重要であることから32、それを援用すれば「クライアントの本質 である関心と強みを引き出す」とより具体的に言い換えることができる。これは、コーチングの役割本質の 一端を言い当てていると思われた。 そこで、こうしたオープンディスカッションを通して得られた洞察を加味して、コーチングとは、「クライ アントの本質である関心や強みを引き出すために、自己理解を促進し、クライアントにとって望ましい状態 を実現していくセルフマネジメントのサポートをすること」と修正した(修正点は下線部)。

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46 6.オンラインサロンを通したコーチングの本質の精査と改良 6.1 本質精査の場としてのオンラインサロン「エッセンシャル・マネジメント・スクール」の活用 次に筆者が代表を務める有料のオンラインサロン(当時の受講者300 名)に、一冊の書籍と MBA の授業 でのオープンディスカッションを通して精査し、修正を反映した論文を投稿した。このオンラインサロンは 「エッセンシャル・マネジメント・スクール」(通称EMS)という名が示す通り、「本質」と「マネジメント」 に関心が高い人が集う場であったことから、コーチングの本質観取に関する意見交換を行う際に有効な場と して機能すると考えたためである。 また特筆すべき点として、そこでは「肯定ファースト」を建設的に議論するためのルール(条件)として 設定しており、建設的なオープンディスカッションを行うに適したコミュニティと考えられた。 その一方で、筆者はそのオンラインサロンの代表であり、その代表が書いた論文に対して意見していいの だろうかと遠慮したり、忖度する心理が働く可能性があると考えたことから、投稿した際には短く論文のポ イントを示すと同時に、以下のようなこの投稿の主旨を明記する文面を付記した。 (筆者がオンラインサロンに論文を投稿した際の文面の一部から引用) 「ここで提示したコーチングの本質は、もちろん絶対的な真理などというものではなく、一冊の書籍とオー プンディスカッションを経て提示された仮説的なものですので、EMS のみなさんのご意見を踏まえて、さ らにバージョンアップされる可能性もあります。 この本質観取は腑に落ちるという方も、いまいち腑に落ちないという方も、その理由とともに、ご意見、 ご感想を聞かせていただけるとありがたいです。 また自分はコーチングの本質——重要なポイント——はここにあると思う、というお考えがある方も、その理 由(根拠)とともにコメントいただければと思います。」 その結果、コメント欄において33 の感想や意見交換が行われた。そのうち、9つが筆者による返答であ り、様々な意見に対して肯定ファーストで接するようにして、上述した主旨を体現するよう、積極的に意見 を受け入れるあり方で返答することを心がけた。 6.2 論文に対する肯定的コメント 論文に関して肯定的な意見としては次のようなものがあった。なお、以下の引用は明らかな誤字以外は、 できるだけ原文のままとした。ただし、オンライン上でのミスコミュニケーションを避けるためにつけたと 思われる「!」や「顔文字」、読みやすくするためになされたと思われる改行については一部省略した。実際 には実名でやりとりしていたが、ここでは匿名の形で表示する。 受講生A 私も5 年前まで会社の人事(人財開発)部署で社内的に人財開発&コミュニケーションのツールとしてコ ーチングを導入した担当者でしたので、今回の西條先生の「本質観取」からのコーチング論を興味深く拝読 させて戴きました。 その際に自分なりにも様々な本を読んだり、実際コーチをなさっている方にお話を聞いたりしましたが、 「コーチングとは何か?」を今回の論文まで深く突っ込んだり、語っている方は意外と少なかった気がしま す。

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47 受講生B 本質観取について、身近なコーチングの読み取りにより、理解が進んだように思えました。コーチングに ついては、企業で一時期コーチングを取り入れるのが流行っていた時にものすごく違和感を感じてました。 よくありがちですが、管理者を呼んで、1 日研修して、トレーニングするっていうやつです。目的や本質が 伝わらない中、手法だけになってしまい、結局組織に定着せず、終わりました。 ティーチングの段階にいる人にコーチングの手法を使って、何もない中で困ったり、精神的に落ちてる時 にコーチングされても、手法だけだとかえって責められてるように感じたり、そもそもお前にコーチングさ れたくないよ!とか。そういう中で、先生の言う本質はその通りだなと思いました。 6.3 論文の足りない点を指摘する意見 こうした論文の意義を肯定的に認める感想もあったが、以下に示すように、建設的でありながらも論文に 対して「足りない」と感じたと思われる点を指摘する「意見」や「疑問」に分類されるコメントのほうが多 かった。 なお、筆者が投稿した記事に常にこれほど多くのコメントがあるわけではなく、むしろ通常よりも多い方 であったことから、論文に高い関心があり、意義を認めている人は一定数おり、またオープンに意見を言っ てよい雰囲気を作れていたように思われる。 その中でもコーチングの本質の精査に直接寄与した意見や、それに関する筆者とのやりとりにフォーカス して以下に示していく。 6.4 コーチとメンターの違い 受講生の一人が感想と共に「『コーチング/コーチャー』と『メンタリング/メンター』の違いは、何だろう なと疑問に感じました」(受講生C)と質問を投げかけると、個人でコーチ業をしている方から以下のような 返答があった。 受講生D コーチとメンターの大きな違いの一つに、「相手(コーチにとってはクライアント/メンターにとってはプ ロテジェ)に、どんな前提をもって関わるか」があると思います。 基本的にコーチは、「自分は何も知らない」という前提をもって、純粋な好奇心からクライアントに関わり

ます。(これは、コーチングのアプローチの主要な一つであるNLP においては、"The Know Nothing State"

と呼ばれるものです)過去の経験や知識に依拠し、「自分はわかっている」という姿勢でいることは、「クラ イアントの未知なる可能性を開く」というコーチングの機能を損なうためです。そして、コーチがクライア ントに渡すのは、助言ではなく問いです。 一方で、メンターは、自分の過去の経験や知識を基にプロテジェを指導するため、「自分は知っている」と いう前提で関わります。メンターがプロテジェに渡すのは、助言が中心になると思います。 イメージしやすいように、一つ例をご紹介しますね。かつて、「20 世紀最高の経営者」と呼ばれたジャッ ク・ウェルチは、エグゼクティブコーチングを受けていたのですが、その全盛期のコーチは20 代の女性だ

ったそうです。これがメンターであれば、あり得ない話でしょうが、コーチの"The Know Nothing State"は、 それほどに強力ということだと思います。

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48 こうした類似した概念としてのメンターとの違いにフォーカスしたやりとりを通して、図3 のコーチング の本質の輪郭がよりはっきりとしたように感じられた。そのため筆者は「とても腑に落ちるものがありまし たので、みなさんにも参考になると思います」と返答して他の受講生にも参照してもらいやすいようにした。 6.5 コーチングの肯定的あり方 また研修会社でコーチの研修に多く携わり、自身でもコーチングの講座を提供していて、『人の力を引き出 すコーチング術』の著者の原口氏とも知り合いであるという方(受講生E)から、次のような意見を頂いた。 受講生E 非常に興味深く読ませていただきました。わかりやすい図も考えるヒントになりますね。コミュニケーシ ョンにより、相手の本質を引き出し、よりよく生きるためのサポートをしていくための方法論、ツールのみ ならず、「在り方」かな…と今は考えています(断定はせず考え続けたい)。ツールだけ身につけていても、 コーチング的在り方がなければ、本当に相手をよりよくするサポートはできないだろうと考えているためで す。私が思う、コーチング的在り方は、相手を承認し、相手の可能性を信じるという在り方です。 それに対して、私は以下のように返答した。 筆者 まさにそうですね。「あり方」がなければ、技術も機能しませんしね。ツールというときに、むしろ「あり 方」が前提となっている、あるいは、「あり方」を含んだ方法といえるものなのかもしれません。「私が思う、 コーチング的在り方は、相手を承認し、相手の可能性を信じるという在り方」もすごく腑に落ちます!ちょ っとこの辺も論文には考慮したほうがよいかもと思うので、あらためて考えてみたいと思います。 またやはりコーチングを研修等で行っている女性からも、次のようなご意見を頂いた。 受講生F コーチングとは、在り方のことである。私も、そう学びました、相手が持つ無限の可能性や相手の存在価 値を認め、どんな考えも受け止める姿勢こそがコーチだと。その上での傾聴、承認、質問なんだよと教えら れたので、これは一生の学びだなぁと思っています。また質問とは多かれ少なかれ、相手にプレッシャーを 与えるものだからこそ、傾聴と承認の姿勢こそが大事なんだよとも教わりました。最近、研修をご依頼いた だく機会が増えてきたので、上記については、いつも、お伝えするように心がけています。 これらのコメントを、筆者は「相手を肯定するあり方」こそがコーチングの基礎にあるという意見として 受け取ったことから、「おお、やはりそうですか。あくまで肯定の姿勢が根底にあっての、方法ということな んでしょうね」と返答した。 またこの意見に共感したと思われる「教育に 20 年近く携わる中で、誰から教わるか、というのは間違い なく大事なことで、リーダーであっても、教育であっても、その人の在り方が大事で、どれだけ自分に向き 合えるかで相手にも向き合えるかな、と思います」(受講生B)といったコメントもあった。

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49 6.6 コーチングの本質に関する構造モデルのバージョンアップ こうした一連の意見を踏まえ、「相手を肯定するあり方」がなければ、コーチング技術も上滑りしてしまい 機能しないというのは、筆者にとってもとても腑に落ちるものであったことから、「コーチングの技術が機能 する前提としてのコーチの肯定的なあり方」という概念を生成し、コーチングの本質構造図の下に加えるこ ととした(図4)。 6.7 コーチングの限界を踏まえて使いこなす必要性 また論文を執筆し、コーチングの本質理解が進む中で、コーチングの限界もあるように感じ始めていたた め、先のコーチングの研修依頼を受ける機会が多くなってきたという受講生F への返答の最後に、質問の意 図を汲み取れるよう自分の見解もゆるやかに織り交ぜつつ、次のような質問をしてみた。 筆者 ちなみに、コーチングの限界を感じたことはありますでしょうか? 個人的には根底に愛はありながら も、甘えている人、あるいは舐めている人には、ビシッとした厳しい「男性性」で導くこともまた必要なと きもあるなあと思ったりもします(それも広義のコーチングに入り得るのでしょうかね)。 この投げかけについては次のような返答があった。長文になるがそのまま引用する。 受講生F 限界を感じたこと、あります。大きく分けて二つのパターンがあります。

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50 ひとつは、お相手がイメージが苦手な場合。コーチングって視点を変えることが効果のひとつだと思って いるのですが、自分の思考の殻を抜け出すのが苦手な人は、コーチングにストレスを感じるかもしれません。 実際に、コーチングは苦手だとおっしゃる方も結構いらっしゃいます。 「何の制限もないとしたら、どんな方法が考えられますか?」これは、有名なGROW モデルと呼ばれるモ デルの質問事例の一つなのですが、制限を外すことが出来ない方には、実に答えにくい質問ですよね。答え が出せない体験って、人によっては、つらいと思います。逆に、この手の質問をすごく面白がる人もいます。 人それぞれだなぁと感じます。 また、その人が抱える課題や問題が、コーチングでは掘り下げにくいパターンもあります。コーチングで アプローチできる領域って、どうしても限りがあるので、本人が認識出来ない領域からの答えは、引き出し にくいですよね。少なくても想像可能な範囲からしか答えって出にくい。 私の場合は、ヒプノセラピー(催眠療法)という手法も使っていますが、ヒプノの場合は、本人がまった く意識していない領域からの答えを引き出すことが可能なので、変えたくても、どうしても変えられなくて 苦しんでいる悪癖なども短時間で改善が可能なのです。コーチングでも、時間をかけて、じっくりと掘り下 げていけば、不可能ではないかもしれませんが、時間と労力が必要だと思います。 また先生がおっしゃる通り、男性的なアプローチも、時には必要だと私自身も感じています。そもそも、 本人が自分の状態に気づけない場合には、まず現状を伝えないと始まらないと思うことも、しばしばです。 例えば、どう考えても、非現実的なことを、実現したい夢として語る方がいたりします。その根っこには 現状に対する批判や強い自己否定が隠れていたりするので、そんなケースでは、ご本人に問題の根っこに気 づいていただく必要があるなと思ったりします。 そんな時、コーチング的な在り方としては、ダイレクトな表現は使わずに、事例などを使って伝えるのが ベストなのだろうなと思うのですが、私の場合は、ダイレクトに伝えることもあります。それが功を奏する 場合と、嫌がられる場合があります。 思考は、その人そのものではなくマネジメントが可能な道具に過ぎないのだけれど、指摘を嫌がる人は、 人格そのものを否定されたと受け止める傾向があると感じます。この部分に関しては、私自身のスキル不足 を反省する点でもあるのですが、私自身も含めて、コーチングに携わる方々が、世の中全般に向けて、思考 と人格は、分けて考えなければいけないということを広げる取り組みも必要だなぁと感じています。それが 世の中に広がれば、男性的なアプローチも、コーチングに含めることが可能になるのではないかと思ってい ます。 ここで受講生F さんはコーチングを実施しているなかで「限界を感じたこと」として、二つのパターンを 提示している。第一に「相手がイメージが苦手な場合」であり、「何の制限もないとしたら、どんな方法が考 えられますか?」といったGROW モデルの質問には、制限を外してイメージすることができない方には、 実に答えにくく、ストレスに感じてコーチングに苦手意識を持つこともあると指摘している。 また、第二の限界として「その人が抱える課題や問題が、コーチングでは掘り下げにくいパターン」を挙 げている。特に、本人が認識できない領域からの答えは引き出しにくいと指摘し、それと対比させる形で、 自身が実施しているヒプノセラピー(催眠療法)を挙げて、本人が意識していない領域からの答えを引き出 すことができるため、変えたくても変えられなくて苦しんでいる悪癖なども短時間で改善が可能であると、 各技法の長短(向き不向き)について触れている。

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