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障害がある四肢の創動運動のための器具開発

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Academic year: 2021

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障害がある四肢の創動運動のための器具開発

滝沢茂男 21 世紀リハビリテーション研究会(21 リハ研)事務局長 要旨 これまで、脳血管障害後遺症の片麻痺や下肢骨折等による下肢障害者は、理学療法士による他 動運動で身体状況の改善を図ってきた。しかし理学療法士の人的資源に限りがあり、その結果と して拘縮を残し、歩行困難で寝たきりになる事が多い。我々はこの状況を変えるため研究を進め ている。2000 年 3 月米国ロスアンジェルスのCSUN学会で統合されたシステム構築に向けた器 具開発を世界に発信した。これまでの臨床結果報告を中心とした研究発表のみならず、その効果 を生みだした概念を明確にするために行った。開発器具を利用した創動運動とタキザワ式リハビ リテーション(以後リハ)はインペアメントレベル(解剖学的機能損傷)からの改善を実現した。 リハビリエイド(現バイオフィリア研究所)有限会社はクッション、上肢機能訓練器、下肢機能 訓練器、軟下肢装具/補装具、新四輪型ソリ付き歩行器を開発した。このように高い有効性を持つ リハを可能にする機器開発について述べた。個別の器具に関する発表を基礎に、器具群を統合し、 運用するという視点から考察したことにより、開発器具群がシステムを構築する要素であり、新 たな概念に基づいたリハを実現する根幹を成すこと、タキザワ式リハが新たな概念に基づいたリ ハであることを明確にした。障害のある一方の四肢を、器具を利用し患者自身が残存している機 能すなわち他の機能の残っている健側の四肢の誘導により、自分の力で他動運動させる事を創動 運動(Motivative exercise)と命名した。高齢下肢障害者のための創動運動実施プログラムであ るタキザワプログラムによるリハを進める上でのポイントは、患者に無理をさせず、訓練時の体 調や能力に合わせた訓練、又訓練室において、器具を利用し、マットを用いることなく、座位又 は立位で訓練を行う事である。ポイントと、実施状況について報告した。報告した器具及びリハ の普及と、この課題の解決により、2025 年の日本で要介護老人 520 万人の内 230 万人が寝たきり と予測されているが、寝たきりの 30%69 万人に日常生活自立の可能性がある。寝たきりにならな い人数はさらに多数になる。21 リハ研は、障害があっても高齢者が自立する事こそ、21 世紀高齢 社会が希望に満ちた社会になりうる唯一の方法であるので、それを実現する努力を進める。 キーワード:脳血管障害後遺症、片麻痺、下肢骨折、寝たきり、歩行再獲得、創動運動、タキザ ワ式

1. 器具による創動運動の実現

本年 3 月米国ロスアンジェルスで開催されたCSUN学会において、器具開発に係る論文を発 表した。21 世紀リハビリテーション研究会は、1987 年以来、研究を続け、昨年まで臨床結果報告 や個別器具の開発報告を国内各種学会や国際学会において継続してきたが、この度初めて統合さ れたシステム構築に向けた器具開発を世界に発信したのである。 この発表は日本医科大学医療管理学教室木村哲彦教授(前国立リハビリテーションセンター病 院長)の指導により、これまでの臨床結果報告を中心とした研究発表のみならず、その効果を生 みだした概念を明確にするために行った。個別の器具に関する発表を基礎に、器具群を統合し、 運用するという視点から考察したことにより、開発器具群がシステムを構築する要素であり、新 たな概念に基づいたリハビリテーション(以後リハ)を実現する根幹を成すことが明確になった。 本誌 1998 年 6 月 6 日号に発表した滝沢恭子理学療法士の経験に基づいたリハが新たな概念に基づ いたリハであることを明確にした。 これまで、脳血管障害後遺症の片麻痺や下肢骨折等による下肢障害者は、理学療法士による他 動運動で身体状況の改善を図ってきた。しかし理学療法士の人的資源に限りがあり、その結果と して拘縮を残し、歩行困難で寝たきりになる事が多い。開発器具を利用した創動運動はこの状況 の改善を可能にした。

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2. タキザワ式リハプログラムによる創動運動

障害のある一方の四肢を、器具を利用し患者自身が残存している機能すなわち他の機能の残っ ている健側の四肢の誘導により、自分の力で他動運動させる事を創動運動(Motivative exercise )と命名し発表した。 創動運動で他動運動に代替し、苦痛のない足関節可動域拡大訓練を継続し、下肢障害を改善し、 高齢下肢障害者を寝たきり状態から歩行獲得までの改善を実現した。言い換えればインペアメン トレベル(解剖学的機能損傷)からの改善を実現した。このように高い有効性を持つリハを可能 にする機器開発について述べた。 高齢下肢障害者のための創動運動実施プログラムであるタキザワプログラムによるリハを進め る上でのポイントは、患者に無理をさせず、訓練時の体調や能力に合わせた訓練、又訓練室にお いて、器具を利用し、マットを用いることなく、座位又は立位で訓練を行う事である。ポイント と、実施状況について報告した。

3. 機器開発報告

リハビリエイド有限会社はクッション、上肢機能訓練器(写真 1)、下肢機能訓練器(写真 2)、 下肢機能訓練器(写真 3)、軟下肢装具/補装具(写真 4)、新四輪型ソリ付き歩行器、シャワー 椅子兼用歩行器 ストッパー付き段差越え利用図を開発した。 クッションは日本国内において褥瘡(床擦れ)予防、体位変換用のクッションとして 1998 年に テクノエイド協会(厚生省指定法人)カタログに掲載され福祉用具として流通が始まった。訓練 室に出られない症例ではややもするとすでに関節拘縮をきたしている例も多く、良肢位を保持す ることが最も大切である。誰にでも使いやすく、柔軟性に富み、復元力が良いクッションとして 開発した。 サイズ

仕様

は横 43cm 縦 10cmx1cm 奥行き 23cmx25cm であり、材質は外袋:木綿 内部:ウレタ ンである。これをそれぞれの部位に挿入することで、拘縮の予防と改善、褥創予防を行なう。 さらに日本に於ける特有の生活スタイルに正座姿勢がある。

このクッションを日常生活で利

用することにより、ひざの痛み、腰痛の原因になるような姿勢をとらず、正座時に正しい

姿勢で正座することができる。

正しい姿勢で正座することにより、長い生活習慣の中で身に付 いてしまう、腰痛や膝痛を誘発する無理な座位姿勢を防止できる。 写真 1 は矢崎化工製造のイレクターパイプで組み立てた軽便な訓練機で、訓練室に上肢機能訓 練器が設置されていない場合に利用できる。持ち運びが可能で、特別養護老人ホーム及び老人保 健施設において、すでに 1 年以上利用されている。 サイズは横 60cm 縦 205cm 奥行き 90cm であり、材質はイレクターパイプ利用接着である。ロー プ滑車フックは市販品であり、加重 100kg対応である。

写真 2

はスプリング式下肢機能訓練具であり、サイズは横 22cm 縦 25cm 関節の可動域は上下方 向で背屈 30 度から底屈 0 度である。主に足関節の創動運動を行うため、両足を揃え両足で器具を 踏むように足を動かす。

写真 3

はキャスター式下肢機能訓練具であり、サイズは横 22cm 縦 25cm、関節の可動域は伸展、 屈曲を前後方向で行い機器による物理的な限界はない。膝・足関節を前方で伸展し、後方で屈曲 する。膝・足関節の創動運動を行う。

写真 2、3 共に腰掛けた姿勢により両足で行うことによ

り、健側下肢の補助で、痛み等を勘案しながら漸増的訓練ができる。

また体幹の良肢位が保持され躯幹筋が強化される。 訓練具の使用により創動運動が実現され、すでに本誌において記述したごとく高い効果を上げ た。訓練時にこの訓練具を用いた訓練の関節可動域について、慶応大学の遠藤らは、1999 年世界 理学療法学会において、3 次元動作解析装置ローカス・Dを用いた分析により、次ページ表 1 を報 告している。 その結果、この訓練具を用いた下肢に対する創動運動は理学療法士による下肢に対する他動運 動に似ているとされた。

写真 4

はゴムで引き上げる軟下肢装具で、医師の採型指示の下に交付する補装具である。片麻 痺など、歩行をする上で障害となる尖足や内反尖足拘縮、又腓骨神経麻痺による下垂足の患者に

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も適用となる。1998 年給付が実施され 1999 年日本義肢装具学会において表 2 に示すように利用の 実際が発表された。 種類 機器利用範囲 理学療法士範囲 スプリング式 足関節背屈角度は0度から約37度 背周訓練で底周10度から背周37度程度 ローラー式 ひざ関節屈伸角度は屈曲10度から118度程 度 理学療法士の運動で0度から140度程度 〈表1〉 下肢機能訓練器による運動範囲 〈表2〉軟下肢装具利用状況 年齢 性別 利用者 症例 68歳 男性 海老名市老人保健施設入所者 脳町内出血後、片まひ 84歳 女性 茅ケ崎市老人保健施設適所者 脳梗塞〈こうそく〉 52歳 男性 座間市在宅 筋緊張性ジストロフィ 75歳 女性 座岡市在宅 多発性脳梗塞 わずかな段差も越えられなかったが、装具の使用により楽に足が上がり段差が越えられた。 利用状況 医師の処方の下に給付を受けた結果、訓練時歩行が楽になり、つえ歩行可能で要介助の状態で六カ月後に退 所となった。 歩行の改善が見られたので医師の処方により給付を受け、つえ歩行、階段昇降も可能となった。 両側に本装具を使用した結果、転倒もなくなり屋内外の歩行ができるようになった。

写真 1 上肢訓練器 写真 3 下肢訓練機(バネ式)

写真 2 下肢訓練機(キャスター式) 写真 4 軟下肢装具

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歩行器とシャワー椅子兼用四輪型歩行器は 1998 年 4678 号で特集した。このシャワー椅子兼用歩 行器は介護保険施行後、購入対象物品として指定されており、横浜市、神戸市において概算払い の後に 9 万円が還付された。 歩行能力が著しく低下していても平行棒内歩行が可能な患者にとり、従来の 4 輪型歩行器では 走り過ぎて、歩行がついていかず、危険な事があるが、こうした患者に適応がある。患者は枠の 中に入らない姿勢で、平行棒を持って歩く要領で利用する。 適応する疾患は、大腿骨頚部骨折後、慢性関節リュウマチ、パーキンソン、上肢機能の保たれて いる脳卒中の患者や軽い失調歩行、変形性股関節症の手術施行後などである。 患者は、利用の際にソリの摩擦の調節により走り過ぎず、安心して歩ける。日本家屋は部屋の 仕切に段差を設置してある。前述の疾患を持つものにとって、こうした日本家屋の特異性は、退 院後の日常生活自立の阻害要因とされている。本器は、退院後の患者にとって、部屋の仕切に段 差を設置してある日本家屋内使用の利便性に優れており、この日常生活自立の阻害要因である段 差をスムーズに越えられる事によって、日常生活動作のレベル維持向上に有益な事が、東京大学 を中心とした多くの大学病院による治験により認められている。さらに、施設利用における介護 者の省力化効果について報告されている。大腿骨頸部骨折術後の患者の自立による財政支出削減 の可能性についても報告されている。この他に利用した機器は一般品である。

4.リハ実施状況

1)訓練時には決して無理をさせず、痛みや強い疲労感の残らないようにリハを行う。リハ開始後 5 年を経過した慢性期でも改善した例があるので、患者になおる自信となおす意欲を持たせながら、 根気よく行う。脳卒中を例としたリハは表 3 のスケジュールで出来るだけ早期から始める。 2)ベッド上では褥創予防、関節の拘縮と変形の予防を主とし、図 1 を利用した良肢位保持、体位 変換を行う。同時に筋力増強と関節可動域保持を目的に徒手によるROM訓練を行う。 3)座位を保持するために、ギャジベッドで徐々に起こしていき、座位が取れるようにする。 4)座位が取れるようになり、車椅子で訓練室に出せる人は訓練室でその全身状態に合わせて訓練 を進めるが、訓練室に於いてはマットを敷いての徒手による ROM 訓練は行わない。この点が他動 運動によるリハとの顕著に異なっている。 5)訓練の初期より上肢には

写真 1

、下肢には

写真 2、3

などの器具を利用する。立位可能となる ように、座位バランス、体幹や上下肢筋力の増強、膝関節や足関節の可動域の増大を図り、自分 で痛みなどを勘案しながら漸増的に訓練を行う。器具利用により、残存している筋力、特に脳卒 中では健側の筋力を利用し患側の創動運動を行う。 6)立位可能となったら平行棒や肋木を利用して訓練を行う。回復し得ない機能については

写真 4

のような補装具、福祉用具を利用する。 7)訓練メニューの変更は筋力テスト、関節可動域テスト及び全身状態や訓練状況などを観察しな がら、医師の指示の下、無理なく、少しずつでも運動量を増やすように行う。

5. タキザワプログラムによる創動運動実施結果

結果について、老人介護力強化病院(湘南健友会長岡病院、介護職員比率 4:1、患者 4 名に対し て職員 1 名)において実施した結果は日本臨床整形外科医会会誌に発表済みであり、表 4 に纏め た。1988 年からの推移を対比した。 (以下表中に記載してあり無くとも良い) 1988 年の時点では入院患者 215 名中、歩行可能な者は 10 名にすぎず、これらの患者の内訳は他医 療機関からの紹介が 133 名、老人ホ-ム等の施設からの転入院 82 名であった。1988 年から 1993 年まで、寝たきり老人の内で訓練の適応があると評価された 94 名について、タキザワ式リハを行 なった。その他 28 名に対し、ベットサイドにて、褥創や関節拘縮予防の良肢位保持と可動域訓練 を行なった。疾患別では、パ-キンソンを含む脳血管障害 92 名、骨、関節疾患 22 名、内臓疾患 14 名、痴呆 9 名、その他 5 名と、脳血管障害が最も多く、これらの疾病をいくつも重複してもつ 患者は 70 名であった。リハの結果、杖歩行が可能となった者 2 名 2。%、歩行器歩行 12 名 12。%、 平行棒内歩行 37 名 39。%であり、計 51 名 54。%が補助器具により歩行可能となった。1994 年末の

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入院者は 225 名で、訓練室及びベッドサイドで 193 名に訓練を行った。年齢は最高年齢者 99 才、 最若年齢者 47 才、平均年齢 81 才で、性別は女性 137 名 71%、男性 56 名 29%であり、入院時、 全員が歩行不能であった。疾患別では、脳血管障害はパ-キンソンを含めて 143 名、骨、関節疾 患 63 名、内臓疾患 71 名、痴呆 14 名、その他 28 名である。疾患の重複が多く%表記は省略した。 これらの内、リハを行った者は、127 名で、杖歩行が可能となった者 7 名 5。%、四輪型歩行器歩 行 3 名 2。%、新型歩行器歩行 11 名 8。%、平行棒内歩行 29 名 23%であり、計 50 名 39。%が補助器 具により歩行可能となり、さらに単独歩行が可能となった者も 9 名 7。%と合わせて 59 名 46。%が 歩行可能となった。なおベッドサイド訓練は 66 名に行った。 6. 希望に満ちた社会の実現に向けて いわゆる、日本の寝たきり老人病院(老人介護力強化病院)に於いて、ADLの向上のため、 何らかの形で歩行するまでに機能訓練を行っている施設は、現在かなり少なく、我々の渉猟し得 た範囲では、老人介護力強化病院に於けるリハに関する報告は見あたらなかった。 兵庫県新国内科医院において、同じリハを導入した。大分県岡本病院、岡山県倉敷リハビリテ ーション病院、川崎医科大学付属川崎病院において導入の予定である。研究会として、滝沢理学 療法士の指導無しで、同じだけの効果を得られるよう努力していく。 また同時に現在まで、リハによって歩行可能となり日常生活動作も向上して退院しても、転倒 をおそれ寝ていることが多く、リハにより向上した機能が低下し、再び歩行不能の状態になる場 合が多い。簡単で無理のないタキザワ式リハ訓練プログラムを介護者に指導し、退院後も定期的 な筋力と関節可動域評価の下に、適切なリハを継続して行えるようにすることが大切である。 患者がリハによってADLが向上し、自立して退院できるようになっても、受け入れ側の事情 から退院が困難であることも現実である。寝たきり老人病院に於ける実績のように、リハの普及 により寝たきり老人の 30%が歩行を獲得し得た時に日常生活自立にいかに結びつけるかが今後の 課題である。 報告した器具及びリハの普及と、この課題の解決により、2025 年の日本で要介護老人 520 万人 の内 230 万人が寝たきりと予測されているが、寝たきりの 30%69 万人に日常生活自立の可能性が ある。寝たきりにならない人数はさらに多数になる。障害があっても高齢者が自立する事こそ、 21 世紀高齢社会が希望に満ちた社会になりうる唯一の方法である。 問い合わせ(http://www.biophilia.info/postmail/postlistmail.html) (初出:2000 年 5 月 17 日時事通信「厚生福祉」4833 号 p2-5 に加筆)

参照

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