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障害のある人の刑事弁護 ─事例報告を中心に

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Academic year: 2021

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山田:障害のある人の刑事弁護 3 本報告では、弁護士の立場から、特に「障害 のある人の刑事弁護」の事例について、報告を 行った。以下、報告の内容をまとめる。ただし、 事例については、個人情報保護の観点から、概 要を述べるにとどめる。

被疑者・被告人に障害がある場合

の弁護活動

近年、障害のある人(ここでは特に知的障害、 発達障害、精神障害を中心とする)が、刑事手続 における被疑者・被告人となっているケースに 注目が集まっている。また、刑務所入所時の検 査結果等(2)から、その人数も非常に多いのでは ないかと指摘されているところである。 実際、著者自身が2017年9月末時点までに受 任した刑事事件においては、およそ4割を超え る方に、(事件前後を問わず)知的障害・発達障 害・精神障害等の確定診断が出ている。多くの 障害のある人が刑事手続にのせられていること は明らかだろう。 では、なぜ障害のある人が多いのか。障害が あること自体が、犯罪行為を誘発する直接的要 因となっているわけではない。つまり、障害が ある人が犯罪を犯しやすいということでは決し てない。それでも、前記のような状況になって いるのは、①取調べにおいて自白をとられやす いなど、刑事手続において有効な防御をする機 会が奪われている、②障害があることゆえの生 きづらさを抱え、犯罪行為に至らざるをえない ような心理的・環境的な要因がある、という2 つがあるのではないかと考えられる。そして、 この2点については、いずれも弁護人がフォロ ーできるし、フォローすべき点である。弁護人 としては、①障害があっても本人の防御権が十 法と心理,2018,18,1,3-5 特集 「治療的司法・正義」の実践と理論

障害のある人の刑事弁護

事例報告を中心に

山田恵太

(1) 近年、障害のある人、特に知的障害、発達障害、精神障害等のある人が、刑事手続における被疑 者・被告人になっている事案について、注目が集まっている。刑務所に障害のある人や高齢の人が 多くいるという問題が明らかとなったことを発端として、そのような人たちを刑事裁判の段階から 支える「入口支援」にも目が向けられているのである。そして、その 1 つとして、弁護士と社会福祉 士等のソーシャルワーカーが連携し、ソーシャルワーカーに「更生支援計画」と呼ばれる支援計画を 作成してもらった上で、これを捜査や公判の場面で被疑者・被告人に有利な証拠として扱う活動が 行われている。本報告では、このような更生支援計画を作成する活動の紹介に加え、実際に更生支 援計画を作成してもらい、公判において立証し、これが量刑上有利に斟酌された事例について報告 した。あわせて、福祉的支援を考える上で、身体拘束中の被疑者被告人に対する意思決定支援のあ り方の問題が存在することなど、今後の課題についても報告した。 キーワード 障害のある人の刑事弁護、入口支援、更生支援計画、東京 TS ネット、意思決定支援 ⑴ アリエ法律事務所・弁護士 ⑵ 懲役刑を科された場合、刑務所内では作業をすることが 義務づけられる。その際、作業の種類を決定し、また、 その他の処遇上の参考とするため、刑務所に収容された 人 に 対 し て は CAPAS(Correctional Association Psychological Assessment Series)という集団式 の能力検査が実施される。集団式で実施され、IQ に類似 する能力検査値が統計的に算出される。2016 年矯正年 報においては、この能力検査値が「49 以下」「50 ∼ 59」「60 ∼ 69」とされた人の数は、新受刑者 20,467 人のうち、4,246 人であり、その割合は約 20%になる。

(2)

4 法と心理 第 18 巻第 1 号 分に保障されるように活動し、②仮に事件を起 こしてしまっている場合には、その要因を探り、 そこに変化を与えられるように動いていくこと になる。 ②の点について、刑事事件で被疑者・被告人 となってしまう障害のある人には、従前、十分 な支援が届いていなかった例が多い。著者の受 任したケースで、障害があると分かった人のう ち、事件の発生時点において、従前に診断を受 けて福祉サービスも受けていたという人は約13 %、診断があるが福祉サービスを利用していな かった人は約35%、診断がなく福祉サービスも 利用していなかった人は約52%となっている。 このように、福祉サービス等を利用することが できていなかった人が大半なのである。もちろ ん、障害があるからといって、福祉サービスを 必ず利用しなければならないわけではない。し かし、本人たちの生活をみれば、生活に困窮し ていたり、困りごとがあっても相談できる人が いない環境で暮らしていた人がほとんどである。 そこには、福祉サービスを利用するか否かとい う選択肢すら与えられず、最終的に犯罪に至る までに追い込まれてしまったという実態がある。 そこで、このような障害のある人に対して、 捜査・公判の段階から、本人と話をして、様々 な支援に繋げていく活動が広がっている。この ような活動は、福祉的支援を必要とする被疑 者・被告人に対する支援、いわゆる「入口支援」 の1つとして、全国的に広がりつつある。

東京 TS ネットの活動

このような障害のある被疑者・被告人に対し て、適切な支援を準備する活動の1つとして、 著者も運営に携わっている東京TSネットの取 り組みがある。 東京TSネットの活動の柱となっているのが、 「更生支援コーディネート」である。この活動に おいては、福祉的支援が必要と思われる被疑 者・被告人について、弁護士からの依頼に基づ き、担当支援員(更生支援コーディネーター)が派 遣され、留置場・拘置所での面会、関係機関と の調整、更生支援計画の作成、裁判で情状証人 として出廷などを行っている。 更生支援計画は、「被疑者・被告人となった 障害のある方の障害特性を踏まえた上で、その 方が同じ行為を繰り返さないために望ましいと 考えられる生活環境や関係性、必要な支援内容 について具体的に提案するもの」であり、現在、 様々な地域でその作成が積極的に進められてい る。そして、このような具体的な計画が作成さ れることで、刑事手続きの後、さまざま支援に 結びつき、安心した生活を送ることができる人 が増えてきている。 また、弁護人としても、更生支援計画書を立 証の1つとして活かすことができる。更生支援 計画は、刑事裁判の量刑を決めるにあたって、 2つの意味を有する。まず、更生支援計画のう ち、障害の存在、障害特性、生活上の困難等の 事件の背景の分析を行っている部分については、 行為責任に関する事情として量刑上有利に扱う ことができるということである。特に、行為責 任が重視される現在の量刑判断の中では、この 部分は重要となる。また、一方で、本人のより よい生活のための今後の福祉的支援に関しては、 再犯可能性にかかる一般情状として有利に扱う ことができる。特に執行猶予か否かの判断が分 かれるようなケースでは、この点の立証が重要 となってくるだろう。 このように、弁護人としても、更生支援計画 は、量刑上非常に重要な証拠としてみることと なる。

事例報告

本報告においては、2つの事例を報告した。 いずれも、障害のある被告人について、更生支 援計画を作成し、その後の支援に結びついた事 例である。 1つ目は、40代男性のケースである。罪名は 窃盗であった。裁判を通じて、知的障害がある ことが判明し、更生支援コーディネーターによ って、就労支援を中心とした具体的な支援を考 えていただいた。ご本人も、最初は障害がある といわれたことを受け入れることができていな かったが、コーディネーターと面談を重ねたこ

(3)

山田:障害のある人の刑事弁護 5 とで、支援を受けることに前向きになっていっ た。結果として、この男性は執行猶予判決を受 け、計画で決めていた事業所と繋がり、現在も そこに通って安定した生活を送っている。 2つ目は、80代女性のケースである。罪名は 現住建造物等放火で、家族からの身体的虐待、 経済的虐待を受けており、自殺目的で火を付け たというものであった。ご本人は、もともと双 極性障害の診断を受けていたが、福祉サービス の利用はしていなかった。逮捕されたことを期 に、行政の担当部署にも虐待ということで介入 していただくことができた。その後は、コーデ ィネーターが間に入って調整をしていただき、 更生支援計画を作成していただいた。刑事裁判 の結果は、執行猶予となった。現在は家族と分 離された環境で、落ち着いて生活をされている。 報告した2事例は、いずれも、福祉的支援が 入ることでご本人の生活が非常に大きく変化し、 なおかついずれも刑事裁判において、その支援 があることが量刑を決めるにあたっても重視さ れていた。

まとめ

このように、情状弁護を通して、本人に必要 な支援・今後の生活を考える活動が広がってき ている。ただ、このような活動を行うにあたっ ては、弁護人の一方的な押しつけになりがちで あることには注意が必要である。あくまでも生 活をしていくのは本人であり、弁護人はそれを サポートする存在にすぎない。中心にいるのは、 本人である。このことをしっかり意識するため にも、弁護人1人ではなく、専門家と連携して いくことが不可欠であると考える。 また、障害のある人の刑事弁護・支援には課 題も多い。1つ目は、受入先が少ないというこ とである。このことは、特に罪名が性犯罪や放 火罪のケースについては、この傾向が顕著であ る。この点については、理解を求めていく必要 があるだろう。2つ目は、障害に気付くことの 難しさである。弁護士は障害について専門的な 知識を有しているわけではなく、ともすると目 の前にいる被疑者・被告人の障害を見逃しがち である。弁護士会内部での研修を継続的に行う などの取り組みが必要である。3つ目は、刑事 司法という特殊な場面における意思決定支援の 難しさである。弁護人と本人も決して対等な関 係とはいえず、その中で本人の本当の希望を探 ることは難しい。この点についても、今後考察 をしていきたい。

On the legal defense for the person with the disability Keita YAMADA (Allié Law Office)

An increasing number of people with disabilities and older persons are being accommodated in the prison. With regard to this serious situation, this study aimed to explain the author’s practice of defense in the crimi-nal trial for these people. The important point is providing care not punishment. It is the matter connected with the decision-making support to the suspect defendant person with mental retardation, developmental disability, and mental illness. Author’s activities for these people involved trying to establish welfare system through legal procedures. The author concludes that these practices in the process of criminal trial represent advocacy for creating therapeutic justice in Japan and it is important for social workers to prepare a rehabili-tation plan in collaboration with lawyers by seeking corroboration for the needs of welfare support to obtain a second chance in life.

Key words Detective defense for disabilities, Diversion support, Rehabilitation plan, Tokyo TS Net, Decision making support

参照

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