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〈論文〉企業の所有構造と経営権の配分の決定

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(1)生駒経済 論叢. 第3巻. 第1号2005年7月. 企業 の所 有構造 と経 営権 の配分 の決定. 小 概要. 林. 磨. 美. 大 企 業 の 多 くに は大 株 主 が 存 在 し,経 営 介 入 な どを 通 じた大 株 主 に よ る実 質 的 な経 営. 権 行 使 が 観 察 さ れ て い る。 本 稿 で は企 業 の 創 業 者 が どの よ う な条 件 の も と で外 部 大 株 主 を形 成 す るの か を調 べ た 。 創 業 者 に比 べ て大 株 主 の ほ うが 経 営 能 力 が 高 い と して,創 業 者 に よ る 株 式 売 却 を通 じた 経 営 権 の移 譲 は,大 株 主 の 資 金 が豊 富 な 場 合 に よ り生 じや す い こ とが 示 さ れ た。 ま た大 株 主 が 経 営 権 を掌 握 す る場 合,株 式 の過 半 数 超 を取 得 す る こ と が示 され た 。 こ こ で の結 果 は企 業 の 経 営 権 の配 分 と フ ァ ン ドの 規 模 の 関 係 や 株 式 売 却 に お け る セ グ メ ンテ ー シ ョ ン につ い て の 示 唆 を与 え る。. キ ー ワ ー ド 経 営 権,株. 式 の所 有 構 造,大. 株 主,セ. グメンテーシ ョン. 原 稿 受 理 日2005年4月30日. Abstract. Many. substantially which. take. the. by. improving. fund ling have rights ing. Key. the. and price. words. selling. to. the. a block. by. of the. size. the. for. of the. the. the. shares. Furthermore,. fund. to. the. not. to. between for. the. that. an. investor. becomes shares.. the. allocation. segmentation. outside. that. with. the. under. is better. We show. investor of. which. situation form. investor. the. a half. and. shareholders. founder.. the. relationship. investor's. the. the. rights. than. or. to. than. large. consider. whether. firm. more. by. We. control. block.. purchasing. implications the. of. owned. firms.. decides. of the. the. are. the. firm. relinquish. purchasing. blockholder some. of. of. performance. tends for. corporations. controls. founder. blockholder. founder. of large. rights,. Ownership. structure,. Blockholder,. the. a larger a control-. Our. results. of. control. of the. stock.. Control. at. Segmentation. sell-.

(2) 第3巻. 1.は. 第1号. じ. 現 代 の企 業 像 と してBerleandMeans(1932)が. め. に. 描 い た,分 散 した 多 数 の 株 主 に よ る. 株 式 所 有 と専 門 的経 営 者 に よ る経 営 とい っ た 「 所 有 と経 営 の 分 離 」 は,最 近 の実 証 分 析 に よ り覆 さ れ つ つ あ る。LaPortaetal.(1999)ら. は大 企 業 の 株 式 所 有 構 造 を 国 際 比 較 す. る こ と に よ り,世 界 的 に見 て 所 有 と経 営 が 完 全 に分 離 して い る現 代 企 業 は 稀 で あ り,証 券 市 場 が 十 分 発 達 した 英 米 に お い て さ え,株 式 所 有 は少 数 の 大 株 主 に集 中 す る傾 向 に あ る こ と を 明 らか に した。 さ ら に近 年 で は,企 業 の 創 業 者 や 経 営者 と い っ た,企 業 内部 者 で はな い第 三 者 が 大 株 主 と な って 積 極 的 に経 営 に介 入 し,実 質 的 な 経 営 権 を掌 握 す る こ とが 観 察 さ れ て い る(1)。しか しな が ら,ど の よ うな 条 件 の も とで 企 業 は そ の よ うな 外 部 大 株 主 を 形 成 す る の か と い う こ とに つ い て の 分 析 は少 な い。 よ っ て 本 稿 で は 企 業 を 所 有 し経 営 す る創 業 者 が どの よ うな 条 件 の も とで 外 部 大 株 主 を 形 成 す る か を 考 察 す る。 外 部 大 株 主 が 経 営 介 入 す る例 と して は,年 金 基 金 な どの 機 関投 資 家 に よ る 投 資 先 企 業 へ の 積 極 的 な 経 営 介 入(こ れ を ア ク テ ィ ビズ ム と い う)や,投. 資 先 企 業 の 立 て 直 しや 経 営 サ. ポ ー トを 通 じて 価 値 上 昇 を狙 う プ ラ イ ベ ー ト ・エ ク イ テ ィ ・フ ァ ン ドや ベ ンチ ャー ・キ ャ ピ タル と い っ た大 型 フ ァ ン ドに よ る実 質 的 な経 営 支 配 な どが あ る(2)。これ らの 外 部 大 株 主 に は企 業 経 営 に関 す る豊 富 な 知 識 や 経 験 が 昂 る の で,介 入 に よ っ て企 業 価 値 を 向上 さ せ る 経 営 能 力 を有 す る と考 え られ て い る。 こ こ で は 企 業 の 所 有 者 で あ る 経 営 者(owner-manager)が,優. れた経 営能 力 を持 つ外 部大 株 主 を形成 す る ことで事実 上 の経 営権 を そ れ に. 移 譲 す る か,外 部 株 主 を形 成 せ ず に 自力 で 経 営 を 続 け るか とい った 選 択 に直 面 す る状 況 を モ デ ル 化 し考 察 す る。 特 に 株 式 取 得 に 際 して外 部 投 資 家 に 借 り入 れ 制 約 が あ る条 件 の も と で,創 業 者 が 外 部 大 株 主 を 形 成 し経 営 権 を委 譲 す る 条 件 を 調 べ る。 そ の た め に,外 部 大 株 主 を形 成 す る創 業 者 は大 株 主 に売 却 した 残 りの 株 式 を 保 有 しつ づ け る設 定 の も とで 分 析 す る。 主 要 な結 果 は次 の と お りで あ る。 均 衡 に お い て は 投 資 家 の 株 式 取 得 の た め の 資 金 が 大 き い ほ ど,こ れ の経 営 能 力 が 創 業 者 に 比 べ て そ れ ほ ど高 くな くて も創 業 者 は投 資 家 に株 式 を. (1)外 部 大 株 主 に よ る経 営 介 入 につ いて の 理論 分 析 に はKahnandWinton(1998),Maug (1998)な どがあ る。 (2)米 国 を 中心 とす る ア クテ ィ ビズ ム につ い て,そ の実 際 と実証 分 析 の サー ベ イ はKarpoff (1998)に 詳 しい。 また ベ ンチ ャー ・キ ャピタル に よる投 資先企業 へ の経 営介入 の実際 につ いて はKaplanandStromberg(2004)に 詳 しい。 -2(2}一.

(3) 企業 の所 有構造 と経 営権の配分 の決定(小 林) 売 却 し経営 権 を委 譲 す る こ とで外 部 大 株 主 を形 成 す る。 ま た 経 営 権 を掌 握 す る大 株 主 は 創 業 者 か ら過 半 数 超 の 株 式 を 取 得 す る こ とが 示 され る。 この 結 果 は 投 資 す る フ ァ ン ドが 大 型 で あ る ほ ど企 業 の 経 営 権 は創 業 経 営 者 か ら フ ァ ン ド に移 譲 さ れ る と い う事 実 と整 合 的 で あ る と考 え られ る。 ま た 後 半 の 結 果 は,創 業 者 が 自分 よ り優 れ た経 営 能 力 が あ る外 部 第 三 者 に事 実 上 の 経 営 権 を移 譲 す る こ とを 目的 と して 株 式 売 却 を行 う な らば,同 時 に企 業 に 対 す る 支 配 権 も手 放 さな けれ ば な らな い こ とを 示 唆 す る。 拡 張 問 題 と して,先. の設 定 に お け る大 株 主 を 経 営 能 力 が あ る投 資 家 と し,異 な る種 類 の. 投 資 家 と して,経 営 能 力 を 持 た な い 投 資 家 が存 在 す る と考 え る。 この 場 合,創 業 者 が 経 営 能 力 を 持 つ 投 資 家 に大 口 の 株 式 を 売 却 す る こ とで 経 営 権 を移 譲 し,残 りの株 式 を経 営 能 力 が な い 投 資 家 に売 却 す る こ とで 全 株 式 を 手 放 す,と 解 釈 して も先 の 設 定 か ら得 られ る結 果 は影 響 を 受 け な い。 ま た,こ の設 定 の も とで は経 営 能 力 が あ る投 資 家 と そ うで な い投 資家 と に 異 な る価 格 で 株 式 を売 却 す る,い. わ ゆ る セ グ メ ン テ ー シ ョ ン(segmentation)が. 生. じて い る こ と に な る㈲。 企 業 が ブ ロ ッ ク取 引 で き る の は 資 金 が豊 富 で 経 営 介 入 す る 能 力 (あ る い は 経 営 能 力)が. あ る 投 資 家 に 限 られ る の で,企 業 統 治 お よ び 企 業 金 融 論 に お け る. セ グ メ ンテ ー シ ョ ンを め ぐ る議 論 の 焦 点 の ひ とつ は,そ れ が 経 営 介 入 な ど の 手 段 を 使 って 直 接 的 に企 業 価 値 に影 響 を与 え られ な い投 資 家 の 利 益 を 損 な って い な いか ど うか と い う こ と に な る。 実 際,経 営 能 力 が あ る投 資 家 と創 業 者 と は相 対 で 契 約 が 書 け る の で,こ れ らが 共 謀 す る こ とで そ の他 の 投 資 家 の利 益 が 損 な わ れ る こ とが 懸 念 され る。 先 の結 果 を この 設 定 の も とで 解 釈 しな お す こ とで 次 の 結 果 を得 る。 経 営 能 力 が あ る投 資 家 の 株 式 取 得 資 金 が比 較 的大 き い な ら ば,セ グ メ ンテ ー シ ョ ン に よ って 経 営 能 力 が な い投 資 家 の利 益 が損 な わ れ る こ と はな い こ とが 示 さ れ る。 一 方,経 営 能 力 が あ る投 資 家 の 資 金 が そ れ ほ ど大 き くな け れ ば,セ グ メ ン テ ー シ ョ ン は経 営 能 力 が な い投 資 家 の利 益 を 損 な う こ と に な る。 この 結 果 は,企 業 が 経 営 支 援 を 仰 ぐ こ と 目的 と して 比 較 的 規 模 が 小 さい フ ァ ン ドに身 売 りす る よ うな 状 況 にお い て は,セ グ メ ン テ ー シ ョ ンが 問 題 にな り う る こ とを 示 唆 す る。 本 論 文 の 構 成 は次 の とお りで あ る。 ま ず 第2節2.1で. 創 業 者 が 株 式 を外 部 に 売 却 す るか. 否 か に つ い て の一 般 的 な モ デ ル を 提 示 す る。 次 に2.2で こ の モ デ ル の 解 釈 を述 べ た 後,2.3 で フ ァー ス トベ ス トを導 出す る。 次 に第3節 で は フ ァー ス トベ ス トが 達 成 で き な い条 件 の も とで,均 衡 に お け る創 業 者 の 選 択 と最 適 な契 約 を 導 出 す る。 第4節. で は 第2節 で 提 示 し. (3)セ グメ ンテ ー シ ョ ンはIPO(initialpublicoffering)に お い て観 察 され る事 実 で あ る (HanleyandWilhelm(1995)お よびBrennanandFranks(1997))。 -3(3)一.

(4) 第3巻. 第1号. た モ デ ル を 異 な る設 定 の も とで 解 釈 す る。 第5節 で 結 論 を 述 べ る。. 2.モ. 2.1基. デ. ル. 本 モデ ル. こ こで は 企 業 の所 有 経 営 者 で あ る創 業 者 に よ る企 業 の経 営 権 と株 式 の 所 有 構 造 の決 定 を 考 察 す る。 こ の経 済 に は 投 資 先 企 業 の 大 株 主 に な り事 実 上 の 経 営 権 を 掌 握 す る こ と に よ っ て,企 業 価 値 を上 昇 させ る 能 力 が あ る投 資 家 が 存 在 す る。 創 業 者 は 自社 株 式 を100パ ー セ ン ト保 有 しな が ら自力 で 経 営 を続 け る か,ま. と ま った 数 の 株 式(blockofthestake)を. そ の よ うな 投 資 家 に割 り当 て る形 で 売 却 す る こ と で 外 部 大 株 主 を 形 成 して 事 実 上 の経 営 権 を委 譲 す るか を 選 択 す る。 以 下 で は 呼 称 の 簡 単 化 の た め,創 業 者 か ら株 式 を 取 得 す る投 資 家 を 大 株 主 と称 す る。 こ こ で は 創 業 者 と大 株 主 は共 に リス ク中立 的 で あ る と仮 定 す る。 モ デ ル は3時 点(第0,1,2期)か ま ず 第0期. らな り,時 間 割 引率 は考 慮 しな い 。. で創 業 者 は 大 株 主 に株 式 を割 り当 て る形 で 売 却 す るか ど うか を 選 択 す る。 株. 式 を 売 却 す る場 合 に は 売 却 す る 株 式 の 比 率1一 φ(∈[0,1])お る。 簡 単 化 の た め,こ. よ び 売 却 価 格Pを. こで 考 え る経 済 に は 同 等 の経 営 能 力 を持 つ 複 数 の 投 資 家 が 存 在 す る. と し,そ. の ひ と つ に 対 し て 創 業 者 は(φ,P)を. offer)と. して 提 示 す る もの と考 え る。 第1期 に は経 営 権 を もつ 主 体,す. 式 売 却 が な け れ ば 創 業 者 が,株 U(∈[0,1])を. 交 渉 力 の な い 契 約(take-it-or-leave-it な わ ち 第0期. に株. 式 売 却 が あ れ ば 大 株 主 が私 的 に 費 用 を 負 担 して 経 営 努 力. 投 入 す る。 投 入 す る努 力Uに 対 し,創 業 者 が 負 担 す る費 用 は βひ2/2で あ り,. 大 株 主 が 負 担 す る そ れ はkU2/2で 2期 に キ ャ ッシ ュ フ ロ ーVを. あ る とす る。 企 業 の プ ロ ジ ェ ク トは確 率oで 成 功 して 第. 実 現 す る が,確 率1-Uで. 失 敗 しキ ャ ッ シ ュ フ ロー は ゼ ロに. な る とす る。 た だ しプ ロ ジ ェ ク トが 失 敗 して も企 業 を経 営 す る主 体(経 営 者)は (0<b<の. 決定す. を 享 受 で き る も の と す る(4)。す な わ ち 創 業 者 が 第0期. 私的便 益. で 株 式 を売 却 しな け れ. ば 創 業 者 が,株 式 を売 却 す れ ば大 株 主 が これ を得 られ る もの とす る。 第2期. にキ ャ ッシュ. フ ロ ー が 実 現 した 後,企 業 は 清 算 され る。 な お こ の企 業 に は ほか の プ ロ ジ ェ ク トが な く, 第2期 で 実 現 す る キ ャ ッ シ ュ フ ロー の 期 待 値 が企 業 価 値(株 価)に. 等 し くな る とす る。. 創 業 者 お よ び大 株 主 の努 力 費 用 に関 して 次 の仮 定 を 置 く。. (4)こ こで考 え る私的便 益 とは経営 者が企業経 営か ら得 られ る人的資 本の蓄積 を金 銭評価 した もの に相 当 し,経 営者個人 しか それを享受で きな いもの とす る。 なお成功 した場合 の企業価値 にはこ れが含 まれて いる もの と解釈 する。 -4(4)一.

(5) 企 業の所有構造 と経営権 の配 分の決定(小 林) 仮 定1β>k. 仮 定1は 大 株 主 の ほ うが 創 業 者 よ り も低 費 用 で 同 じ成 功 確 率 を 達 成 で き る こ と を示 す 。 この こ とは 経 営 者 と して は大 株 主 の ほ うが 創 業 者 よ り も能 力 が 高 い こ とを 示 唆 す る。. 2.2モ. デ ル の解 釈. 企 業 が ま と ま った 数 の 株 式 を 積 極 的 に経 営 介 入 す る投 資 家 に売 却 す る こ とで外 部 大 株 主 を形 成 す るケ ー ス は広 く観 察 され て い る。 特 に未 公 開(未 上 場)企 業 が大 量 の株 式 を 第 三 者 に売 却 す る場 合 に は 売 却 先 を 慎 重 に選 択 す る こ と が 報 告 さ れ て い る。 例 え ばKaplan andStromberg(2004)は. 創 業 間 もな い 企 業(ベ. ンチ ャー 企 業)に. ピ タル の 選 択 に つ い て,ま. たBrennanandFranks(1998)はIPOの. よ る ベ ン チ ャー ・キ ャ 際 に 公 募 とは 別. に機 関 投 資 家 を は じめ とす る特 定 の専 門 的 な 投 資 家 に対 して 企 業 が ブ ロ ック を 割 り当 て る 形 で 売 却 す る こ とを 報 告 して い る。 第2.1節 で 提 示 した 設 定 は次 の よ う な い くつ か の 状 況 を モ デ ル 化 して い る と解 釈 す る こ とが で き る。 まず,先. の モ デ ル に お け る創 業 者 が ベ ンチ ャー 企 業 の 創 業 経 営 者 で あ り,大. 株 主 が ベ ン チ ャー ・キ ャ ピタ ル で あ る と解 釈 す る場 合,創 業 者 が 自力 で経 営 を続 け るか, ベ ンチ ャー ・キ ャ ピ タ ル に株 式 を 売 却 す る こ と に よ っ て経 営 ノ ウハ ウ の提 供 を受 け るか を 決 定 す る 問 題 で あ る と考 え る こ と が で き る。 一 般 に ベ ンチ ャ ー ・キ ャ ピ タル は投 資 先 企 業 の経 営 に積 極 的 に 介 入 す る こ と に よ って 企 業 価 値 を 向 上 させ る。 ベ ンチ ャー ・キ ャ ピ タル に よ る経 営 介 入 に は,事 実 上 の 経 営 者 交 替 か ら創 業 経 営 者 に対 す る助 言 まで,そ の 程 度 に は 幅 が あ る。 先 の モ デ ル は,ベ. ンチ ャー ・キ ャ ピタ ル が 投 資 先 企 業 の大 株 主 に な る こ とで. 専 門 的 な経 営 者 を 送 り こめ ば創 業 者 よ り も低 費 用 で プ ロ ジ ェ ク トの 成 功 確 率 を上 昇 させ ら れ る状 況 を 表 して い る と解 釈 で き る(5)。 ま た こ の モ デ ル の 大 株 主 を経 営 に 関 す る専 門 知 識 を 有 す る大 株 主 で あ る と考 え る こ と も で き る。 この 場 合,大 株 主 は機 関 投 資 家 や 経 営 に 関 す る ノ ウハ ウ を 持 つ 富 裕 な個 人 投 資 家 で あ り,ま と ま った 数 の 株 式 を 取 得 す る こ と に よ って 創 業 経 営 者 に対 して ア クテ ィ ビズ ム の形 で 経 営 に介 入 で き る も の と解 釈 で き る(6)。外 部 大 株 主 に よ る介 入 に よ り費 用 係 数 が β か ら κ に 下 が る こ と に な る。 外 部 株 主 の 介 入 に は経 営 者 に 対 す る助 言 や 規 律 づ け,さ. ⑤. ら. また は,創 業経 営者 が企 業をベ ンチ ャー ・キ ャピタルか らの助言 に完全 に従 う形で事実上 の経 営権 を移譲す ることよって経営努力費用 の係数 がβか らκに下が る と解 釈 して もよい。 (6)米 国 におけ るア クテ ィビズム には,投 資先企業 に取 締役 を派遣 した り,株 主総 会で の投票 権を 行 使 した りす る ほか に,こ こで い う創業 者 に対 して個 人 的な形 で交渉す る(Carleton,Nelson, andWeisbach(1998))と い った手段 があ る。 -5C5}一.

(6) 第3巻. 第1号. に は外 部 大 株 主 が 選 出 した 新 規 経 営 者 と創 業 者 との 交 替 と い った 手 段 が あ る こ とが 知 られ て い る。 特 に 経 営 者 の 交 替 が あ る場 合,創 業 者 は 企 業 の 株 式 を 一 部 保 有 しつ つ も経 営 に 関 与 しな くな る と い う点 で,「 物 言 わ ぬ 株 主(silentblockholder)」. 2.3フ. に な る。. ァー ス ト ・ベ ス ト. 仮 定1よ. り,創 業 者 が 大 株 主 に株 式 を売 却 す る こ とが 社 会 的 に望 ま し くな る こ とが 分 か. るの で,本 節 で は そ れ を 確 認 し,最 適 な株 式 所 有 構 造 と株 式 売 却 価 格 を導 出 す る。 創 業 者 が 大 株 主 に1一 φ の 割 合 の 株 式 を 価 格Pで. 売 却 す る場 合,プ. ロ ジ ェ ク トの 成 功 確. 率 ひを所 与 とす る創 業 者 の期 待 利 得 πFは 次 の よ うに な る。. πF一 φひy+(1一. 右 辺 第1項. φ)P(1). は株 式 売 却 後 に 創 業 者 が 保 有 す る株 式 か ら得 られ る期 待 利 得 で あ り,第2項. は. 株 式 売 却 益 で あ る。 株 式 を売 却 す れ ば 企 業 の事 実 上 の経 営者 は大 株 主 に な るの で,プ ロ ジ ェ ク トが 失 敗 す れ ば創 業 者 は な に も得 られ な い こ と に注 意 す る。 次 に大 株 主 の 期 待 利 得 を 導 出す る。 経 営 努 力Uを 投 入 す る こ と に よ って プ ロ ジ ェ ク トは 確 率Uで. 成 功 し,キ ャ ッ シ ュ フ ロ ーVを. 主 の期 待 利 得 は(1一 φ)UVに. な る。 プ ロ ジ ェ ク トは 確 率1-Uで. 実上の経営者なので私的便益 賄 取 得 の た め に(1一. πM=(1一. φ)Pを. =πF+7ZM=UV+(1-v)ゲ. られ る。経営努力 には費樗. 失 敗 す るが,大 株 主 が 事. がかか り,ま た株式. 支 出 す る こ と か ら 大 株 主 の 期 待 利 得 πMは 次 式 で 与 え ら れ る 。. φ)UV+(1-v)b-2-(1一. こ こ で 社 会 的 余 剰 をsと. 生 み 出 す の で,取 得 した 株 式 か ら得 ら れ る大 株. kv2. φ)P(2). す る と次 式 の よ うに な る。. んひ2S 2(3). こ れ がUに. 関 し て 凹 関 数 で あ る こ と か ら,創. 業 者 が 大 株 主 を 形 成 した 場 合 の 社 会 的 余 剰 を. 最 大 に す る最 適 な努 力 水 準 ガ は一 階 条 件 よ り. ガ ー γ云 わ(4). -6(6)一.

(7) 企 業 の 所 有 構 造 と経 営 権 の配 分 の 決 定(小. 林). に な る 。 こ こ で 次 の 仮 定 を 置 く。. 仮 定2b<V<b+κ.. こ の 仮 定 は ガ が 内 点 解(ガ こ と で 社 会 的 余 剰S*は. ∈(0,1))に. な る こ と を 保 証 す る 。 こ れ を(2)に. 代入 す る. 次 式 で 与 え られ る。. S・ 一(V-b)2+b(5)2k. -・方 ,創. 業 者 が 株 式 を 外 部 に 売 却 せ ず 自 力 で 経 営 を 続 け る 場 合,期. 待 利 得 は次 の よ う に. な る。. π。-UV+(1一. の わ一 留2(6). これ を 最 大 化 す る努 力 水 準Upは 一 階 条 件 よ り. vo=V-bC7). とな る。 創 業 者 が 自力 で 経 営 す る場 合 の社 会 的余 剰 は創 業 者 の 期 待 利 得 と等 しい の で,こ の 場 合 の 社 会 的 余 剰S。 は(7)を(6)に. 代 入 す る こ とで,次 の よ う に な る。. π・(U・)≡S・ 一(yヂ+b(8). 仮 定1よ. りS*>Soで. あ る こ と は 明 らか な の で,創. 業 者 が 株 式 売 却 し大 株 主 を 形 成 す る. こ と に よ って フ ァー ス トベ ス トが 達 成 され る こ とが 確 認 で き る。 次 に,フ. ァ ー ス トベ ス トを 達 成 す る(u)を. 導 出 す る。 株 式 を 購 入 した 投 資 家 は πM. を最 大 に す る努 力 水 準 を 選 択 す る。 πMはUに. 関 して 凹 関数 で あ る こ と か ら,こ れ を最 大. にす る努 力 水 準UMは. ・M-(1一. こ れ と(1),(2)式. 一 階 条 件 よ り次 の よ う にな る。. φ1γ 一 δ(9). と か ら第0期. に お け る 創 業 者 の 最 大 化 問 題Qoは. れ る。. -7C7)一. 次 の よ う に与 え ら.

(8) 第3巻. maxip[(1一. S.t.[(1一. φ1圃. γ+(1一. φ)Vb2k]2‐+b-(1一. た だ し 目 的 関 数 は(1)式 πM(UM)≧0,す. φ)P. φ)P>_0.. に(9)式. を 代 入 し た 創 業 者 の 期 待 利 得 で あ り,制. 約式 は. な わ ち 大 株 主 の 参 加 制 約 で あ る。 こ こ で 創 業 者 は 大 株 主 の参 加 制 約 が 等. 号 で 成 立 す る 水 準 に(φ,P)を. 決 定 で き る の で,創. 社 会 的 余 剰 と 等 し く な る 。 よ っ て,創 う な(u・)を. 第1号. 業 者 は 大 株 主 の 努 力 水 準UMが. 提 示 す る 。 こ こ で(4)と(9)と. 株 比 率 は φ=0で. 業 者 の 目 的 関 数 は(3)式. か ら,UM=U*を. で 表 され る. ガ に 等 し くな る よ 満 たす創 業者 の持 ち. あ る こ と が 分 か る 。 こ れ を 創 業 者 の 目 的 関 数 に 代 入 す る こ と に よ っ て,. 最 大 化 問 題Q。 の 最 適 解 は 次 の よ う に な る 。. (φ ∼P・)一(o,(V-b2k)2+の(1・). フ ァー ス トベ ス トで は大 株 主 が100パ ー セ ン トの 株 式 を 取 得 す る こ と が分 か る。 こ の こ と は企 業 の 事 実 上 の経 営 者 と な る大 株 主 が 企 業 を 完 全 に 所 有 す る こ と に よ って フ ァー ス ト ベ ス トが 達 成 され る こ と を 示 して い る。 さ ら に,創 業 者 が 提 示 す る売 却 価 格 で100パ ー セ ン トの 株 式 を取 得 す る た め に は,大 株 主1ま少 な く と も(V-b2k)2+わ. 以 上 の資金 を持 つて. い る必 要 が あ る。 こ こで 株 式 取 得 の た め の 借 り入 れ が で き な い と い う仮 定 を 置 く と,手 元 資 金 が(V-b2k)2髄. 下 回 る大 株 主 に株 式 を 売 却 す る な らば フ ァー ス トベ ス トカa達成 で. き な い こ とが 分 か る。 以 下 で は大 株 主 の 資 金 制 約 の も とで の創 業 者 の最 大 化 問 題 を考 察 す る。. 3.大. 株 主 の 資 金 制 約 下 に お け る創 業 者 の 決 定. 大 株 主 の 手 元 資 金 を1と して,次. の仮 定 を置 く。. 仮 定3(y-b)2+b>、>b2k. こ の仮 定 の も と で は 大 株 主 は フ ァー ス トベ ス トの価 格 で 全 株 式 を 取 得 で き な い 。 本 節 で は. 8(8).

(9) 企業 の所 有構造 と経 営権の配分 の決定(小 林) 大 株 主 の 資 金 制 約 の も とで の創 業 者 の 最 大 化 問 題 を 次 の 手 順 で 解 く。 ま ず 第3.1節 で は 創 業 者 が 株 式 を大 株 主 に売 却 す る 場 合 の 最 大 化 問題(subproblem)を. 解 く。 第3.2節 で は 第. 3.1節 で 導 出 した 創 業 者 の 期 待 利 得 と創 業 者 が 自力 で 経 営 した 場 合 に 得 られ る 期 待 利 得 と を比 較 す る こ とで,創 業 者 の第0期. に お け る選 択,す. な わ ち 株 式 を 売 却 す る こ とで 外 部 大. 株 主 を 形 成 す る か否 か を調 べ る。. 3.1大. 株 主 を 形 成 す る場 合 の株 式 所 有 構 造 と売 却 価 格 の 導 出. 大 株 主 は 自分 の 手 元 資 金 以 下 で しか 株 式 を購 入 で き な い の で,制 約 式 は次 の よ う にな る。. 1≧(1一. φ)P(11). よ って 大 株 主 に 資金 制 約 が あ る場 合 の 創 業 者 の 最 大 化 問題 は フ ァー ス トベ ス トを 導 出 した 最 大 化 問 題Qoに. こ の制 約 式 を 加 え た もの(こ れ をQ,と. maxφPφ[('一. φ1γ 一b]V+(1+φ)P. S.t.[(1一 φ)γ一 わ2k]2+b(1一 1>_(1一. す る)に な る。. φ)P≧ ・. φ)P. これ を 解 くこ とに よ り次 の補 題 を 得 る。. 補 題1創. 業 者 が 第0期. に株 式 を 売 却 して 大 株 主 を 形 成 す る場 合,大 株 主 の手 元 資 金 の範. 囲 に よ って 異 な る契 約 が 書 け る。 (i)大. 株 主 の資金 が. (V-b 2κ)2+b>・. 〉(γ 語+b(12). の範囲であれば,最 適な株式所有構造 と売却価格は次のようになる:. 緬. 一(V+2kV(∬-b)・b+V2妥. -9(9)一. 、一 δ))(13). 一 一.

(10) 第3巻. 第1号. (--)大 株 主 の 資 金 が. CV-b)2>. _1>b(14)8k. の 範 囲 で あ れ ば,最 適 な 株 式 所 有 構 造 と売 却 価 格 は 次 の よ う に な る:. 鵬)一(V-b2V,2VIV+b)(15). (証 明 の 概 要)大. 株 主 の 参 加 制 約 お よ び 資 金 制 約 の ラ グ ラ ン ジ ュ係 数 を そ れ ぞ れ λ,μと. して 最 大 化 問 題Q1を. 解 く。 こ の と き両 方 の 制 約 式 が 等 号 で 成 立 す る場 合 が 補 題1(i). の ケ ー ス に,参 加 制 約 が 強 い 不 等 号 で,資 金 制 約 が 等 号 で 成 立 す る場 合 が 補 題1(--)の ケ ー ス に相 当 す る。(終. 大 株 主 の 持 ち株 比 率 はuで. り). あ らわ され る。 補 題1(i),伍)と. か ら,. ..V十b11 >1一 φ1>1一 φ・=2V>2(16). で あ る こ とが 分 か る。 よ っ て た だ ち に 次 の命 題 を得 る。. 命 題1創. 業 者 が株 式 を 売 却 す る こ と に よ って 外 部 大 株 主 を形 成 す る場 合,事 実 上 の 経 営 者 と な る大 株 主 は過 半 数 超 の 株 式 を 取 得 す る こ と に よ って 企 業 の支 配 権 を掌 握 す る。. この 命 題 は事 実 上 の経 営 権 移 譲 を 目的 と して 外 部 大 株 主 を 形 成 す る場 合,創 業 者 は 企 業 に対 す る支 配 権 を 放 棄 す る こ とを 示 して い る。 す な わ ち企 業 が 発 行 す る のが す べ て普 通 株 式 で あ る とす る仮 定 の も と で は,大 株 主 が 提 示 す る経 営 上 の 意 思 決 定 に 対 して 創 業 者 は事 後 的 に抗 う こ とが で き な い。 企 業 経 営 に事 後 的 に介 入 で き な くな る とい う点 で,経 営 権 を 移 譲 した創 業 者 は物 言 わ ぬ 株 主 に な る こ と が分 か る。. 3.2株. 式 売却 に関わ る創業者 の決定. 次 に 創 業 者 が 第0期. に株 式 を売 却 して 大 株 主 を形 成 す るか,株 式 を売 却 せ ず に 自力 で 経. 営 を続 け る か の選 択 につ い て調 べ る。 10(10)一.

(11) 企業 の所有 構造 と経営権 の配分 の決 定(小 林) 外 部 大 株 主 を 形 成 す る場 合 の期 待 利 得 が 自力 で 経 営 す る場 合 の そ れ 以 上 に な る 場 合 の み 創 業 者 は 第0期 で 株 式 売 却 を 選 択 す る こ と に な る。 よ って 補 題1で 得 た 最 大 化 問 題Q1の 最 適 解 の も とで の創 業 者 の 期 待 利 得 を導 出 し,そ れ が 外 部 株 主 を形 成 しな い 場 合 の 創 業 者 の期 待 利 得 πo((8)式)を ま ず 補 題1(i)の. 上 回 る場 合 の み 株 式 売 却 が 選 択 さ れ る こ と に な る。. ケ ー ス に お け る創 業 者 の 期 待 利 得 は,最 適 解(φ1,P1)を(1)式. に. 代 入 す る こ と に よ って 次 の よ う に な る。. だバ2κ(1‐b)[V-b-2k(1-b)]+・. これ を(8)式. 命 題2大. と比 較 す る こ と に よ り次 の 命 題 を得 る。. 株 主 の 資 金 が(12)式. を 満 た す 範 囲 で あ る場 合,第0期. に お け る創 業 者 の 決 定. は次 の よ うに な る。. (i)β. ≧43kな. (..--)43k>β. らば. 創 業 者 は 株 式 を 売 却 して 外 部 大 株 主 を 形 成 す る・. 〉 ん な らば. 創 業 者 は 株 式 を 売 却 せ ず 自分 で 経 営 す る・. こ こ で んが β に 比 べ て 小 さ い ほ ど,創 業 者 よ り大 株 主 の ほ うが 高 い 経 営 能 力 を有 す る こ と に 注 意 す る。 命 題2は 力 が β ≧43kを. 灘. 大 株 主 が 比 較 的 大 き い手 元 資 金 を 持 つ な らば,大 株 主 の 経 営 能. す ほ ど粉. 高 い場合 には株 式 続. を放 棄 す る こ と を 示 して い る・ 町. 却 して 自 らの 企 業 に 対 す る騰. 大 株 主 の経 営 能 力 が さ ほ ど高 くな い(43k>β. 〉 κ). 場 合 は た と え 大 株 主 の ほ うが 創 業 者 よ り優 れ て い る と して も,創 業 者 は 株 式 を100パ ー セ ン ト保 有 した ま ま で 経 営 を 続 け る こ と に な る。 同 様 に,補 題1(ii)の. ケ ー ス で の創 業 者 の 期 待 利 得 は次 式 で与 え られ る。. ,.CV-b)2 πF・=4κ+1. これ を(8)と. 比 較 す る こ と に よ り次 の 命 題 を 得 る。. -11(11)一.

(12) 第3巻 命 題3大. 株 主 の予 算 が(14)式. 第1号. を 満 た す 範 囲 で あ る場 合,第0期. に お け る創 業 者 の決 定. は次 の よ う に な る。 (i)β. ≧2kな. らば,創 業 者 は 株 式 を 売 却 して 大 株 主 を形 成 す る。. (--)2k>a?3kで. あ る胎. 創 業 者 力a大株 主 を 形 成 す る か 否 か は大 株 主 の 手 元 資. 金 の大 き さ に依 存 す る。 (---1)大. CV. 株主 の 資金が. ^b)2+b>_1>(V‐b)2(2k‐a)+b8k-Oka. を満 た す 場 合,創 業 者 は 外 部 大 株 主 を 形 成 す る。 (且一2)大 株 主 の 資 金 が. (V‐b)2(2k--a) 4んβ. 十b>1>b. で あ る場 合,創 業 者 は株 式 を売 却 せ ず 自力 で経 営 す る。 (lll.)43k〉 β>kで. あ る胎. 創 業 者 は株 式 を 売 却 せ ず 自力 で 経 営 す る。. 命 題3を 命 題2と 比 較 す る こ と に よ り,大 株 主 の手 元 資 金 が 小 さ い ほ どそ の経 営 能 力 が 創 業 者 を 大 き く上 回 ら な け れ ば創 業 者 は 外 部 大 株 主 を 形 成 しな い こ と が分 か る。 特 に 命 題 2(i)と. 命 題3(i),(ii)と. にはβ≧昔κ備. を 比 較 す る と,大 株 主 の 資 金 が 十 分 大 き い場 合(命 題2). たされる限 り創業者は外部大株主を形成 したのに対 して,大 株主の資. 金 が 小 さ い場 合(命 題3)で. は2k>β. ≧43kの. 範 囲 で は必 ず し も大 株 主 が 形 成 され る と. は 限 らな い。 こ の結 果 の 解 釈 は次 の とお りで あ る。 売 却 価 格 を 所 与 とす る と,手 元 資 金 が 小 さ い ほ ど 大 株 主 が 取 得 可 能 な 株 式 の 割 合 が 小 さ くな る。(9)式. よ り大 株 主 の 持 ち 株 比 率 が 小 さ く. な る ほ ど株 式 取 得 後 の 大 株 主 の経 営 努 力 水 準 が下 が る こ と に な る の で,企 業 価 値(株 価) は 下 落 す る。 この こ と は創 業 者 が そ の 保 有 株 式 か ら得 られ る期 待 利 得 が 小 さ くな る こ とを 示 唆 す る。 一・ 方,企 業 価 値 を 上 昇 させ た け れ ば そ の 分 多 くの株 式 を大 株 主 に 売 却 しな け れ ば な らな い の で,創 業 者 は売 却 価 格 を 下 げ な けれ ば な らな い。 しか し売 却 価 格 の 引 き下 げ. 一12(12)一.

(13) 企業 の所有構造 と経営権 の配 分の決定(小 林) は創 業 者 の 株 式 売 却 益 を 減 らす こ と に な る。 こ の よ う な メ カ ニ ズ ム に よ っ て,大 株 主 の手 元 資 金 が 小 さ い ほ ど株 式 売 却 か ら得 られ る創 業 者 の 期 待 利 得 は減 少 す る の で,創 業 者 自身 に よ る経 営 を選 択 す る こ とに な る。. 4.株. 主 保 護 と企 業 価 値. 前 節 ま で は 株 式 売 却 後 も創 業 者 は φ の 割 合 の株 式 を 保 有 し続 け る と考 え て き た 。 しか し株 式 を 売 却 した 創 業 者 は経 営 に 関 与 しな い 「物 言 わ ぬ 株 主 」 と な る こ と か ら,こ の 設 定 を 第0期. に 創 業 者 が 企 業 価 値 を 高 あ る能 力 が あ る投 資 家(大 株 主)に1一. φ を,そ の よ う. な 能 力 が な い 投 資 家 に φ を 売 却 す る,と 解 釈 して も問 題 な い 。 後 者 の よ うな 投 資 家 は企 業 経 営 に 関 す る専 門 知 識 が な い,ま た は 投 資 先 企 業 の 情 報 を 知 らな い(uninformed)た め に企 業 価 値 に対 す る影 響 力 を もた な い と考 え られ る。 積 極 的 に経 営 関 与 で き る投 資 家 を 「行 動 的(active)」. で あ る と表 現 す る の に 対 して,影. 「受 動 的 な投 資 家(passiveinvestors)」. 響 力 を 持 た な い 投 資 家 は しば しば. と呼 ばれ る(7)。本 稿 の モ デ ル を 創 業 者 が 第0期. に. 株 式 を す べ て外 部 に売 却 す る と解 釈 す る場 合,受 動 的 な 株 主 の 利 益 が 保 護 され て い る か ど うか が 問 題 とな る。 よ り詳 細 に は,株 式 売 却 に よ っ て 行 動 的 な 投 資 家 が レ ン トを得 られ る な らば,創 業 者 に よ る株 式 売 却 の 決 定 は 受 動 的 な 投 資 家 の利 益 を犠 牲 にす る こ とで 創 業 者 と行 動 的 な投 資 家 を利 す る こ と に な る。 これ は創 業 者 が 行 動 的 な投 資 家 に経 営 移 譲 をす る 代 わ り に レ ン トを 与 え る形 で 共 謀(collusion)す. る こ とで 受 動 的 な 投 資 家 の 利 益 を 損 な. う状 況 で あ る と解 釈 す る こ とが で き る(8)。 前 節 ま で の設 定 を,行 動 的 な投 資 家 と受 動 的 な 投 資 家 とに 創 業 者 が 株 式 を 売 却 す る状 況 で あ る と解 釈 しな お す と次 の通 りに な る。 第0期 関 与 す る能 力 が あ る行 動 的 な投 資 家 に価 格Pで. に 創 業 者 は 自社 株 式 の う ち1一 φ を 経 営 売 却 し,残. りの φ を受 動 的 な投 資 家 に 売. 却 す る。 こ こで,受 動 的 な 投 資 家 に は経 営 介 入 す る能 力 が な い こ とか ら,創 業 者 は これ に 株 式 を 売 却 す る際 に レ ン トが 発 生 しな い 価 格 を 設 定 す る こ と に よ って 株 式 売 却 か ら得 られ る期 待 利 得 を最 大 化 す る こ とが で き る。 受 動 的 な投 資 家 に レ ン トを 許 さな い価 格 はUV, す な わ ち行 動 的 な投 資 家 が 投 入 す る努 力 が 実 現 す る企 業 価 値 で あ り,こ れ か ら得 られ る創. (7)「 受動 的」 に対 して 「 能 動的」 とい う訳 語をつ け るのが一般 的 だが,activeshareholdersと い う用語 が 「 行動 的な株主」 と訳 され る ことが多 いので ここで は これ に従 う。 (8)企 業 の創業者(内 部者)と 外部 大株 主 との共謀 につ いて の一 般 的なモ デル はTirole(2001) を参 照の こ と6ま たベ ンチ ャー ・キ ャピタル とベ ンチ ャー企業経営者 との共謀 について の理論 的 な分 析 と してDessi(2004)が あ る。 -13(13)一.

(14) 第3巻 業 者 の 期 待 利 得 は前 節 ま で の そ れ,す. 第1号. な わ ち行 動 的 な投 資 家 に 株 式 を 売 却 後 に φ を第2. 期 の 終 わ りま で 保 有 す る こ と に よ って 得 られ る期 待 利 得,に 等 し くな る こ と が分 か る。 以 上 の 解 釈 の も とで,創 業 者 が株 式 を 売 却 す る際 に 行 動 的 な 投 資 家 と受 動 的 な 投 資 家 に 対 して異 な る価 格 を設 定 で き る と仮 定 す れ ば,前 節 ま で の設 定 の も と で得 られ た 結 果 を そ の ま ま用 い る こ と が で き る。 こ こで は創 業 者 が株 式 を外 部 に 売 却 す る際 に 受 動 的 な 株 主 の 利 益 が保 護 さ れ て い るか 否 か を調 べ る た め に,前 節 と同 様,株 式 を 取 得 す る こ とで 経 営 権 を 掌 握 す る投 資 家 の手 元 資 金 の大 き さ に分 け て議 論 す る。 まず 行 動 的 な 投 資 家 の 資 金 が(12)式 お よ び 命 題2の. の 範 囲 で あ る場 合 を考 察 す る。 これ は補 題1(i). ケ ー ス に相 当 す る。 この 場 合,補. 題1(i)よ. り創 業 者 が 株 式 を 売 却 す る. 際 に行 動 的 な 投 資 家(前 節 で は大 株 主)の 参 加 制 約 が 等 号 で 満 た さ れ る よ うな 契 約 を書 く こ とが で き る の で 行 動 的 な 投 資 家 に は レ ン トが発 生 しな い。 よ っ て次 の命 題 を得 る。. 命 題4行. 動 的 な投 資 家 の 資 金 が十 分 大 き い場 合,創 業 者 が行 動 的 な 投 資 家 と受 動 的 な 投 資 家 に対 して 異 な る売 却 価 格 を設 定 す る こ とは 受 動 的 な 株 主 の 利 益 を 保 護 す る。. 一・ 般 に企 業 が 株 式 を 外 部 に売 却 す る 際. 行 動 的 な 投 資 家 と受 動 的 な 投 資 家 と に異 な る価. 格 で 株 式 を 売 却 す る,い わ ゆ る セ グ メ ンテ ー シ ョ ンが 観 察 され る。 命 題4は,手 大 き い行 動 的 な 投 資 家 は レ ン トを要 求 しな い の で,セ. 元 資金 が. グ メ ンテ ー シ ョ ンが発 生 して も これ. が 受 動 的 な 投 資 家 の利 益 を犠 牲 に しな い こ と を示 して い る。 手 元 資 金 が 大 き い投 資 家 は十 分 多 くの 株 式 を 取 得 可 能 で あ る。 よ っ て(9)式 ベ ル の経 営 努 力 を 投 入 で き るの で,レ. よ り取 得株 式 の 価 格 が 十 分 大 き くな る レ. ン トが な くて も経 営 権 の 委 譲 を 受 け入 れ る こ と に な. る。 一方. ,行 動 的 な 投 資 家 の 予 算 が(14)式. (11)お. を 満 た す 程 度 の 大 き さ で あ る よ うな,補. よ び命 題3に 相 当す る ケ ー ス を考 察 す る。 こ の場 合,補 題1(--)よ. 題1. り大 株 主 が 外. 部 に株 式 を 売 却 す る 際 に大 株 主 の参 加 制 約 が 強 い 不 等 号 で 満 た され る契 約 しか 書 け な い。 す な わ ち 行 動 的 な 投 資 家 は事 実 上 の 経 営 権 を 掌 握 す る 際 に レ ン トを得 る こ と にな る。 よ っ て 次 の命 題 を得 る。. 命 題5行. 動 的 な 投 資 家 の 資 金 が そ れ ほ ど大 き くな い場 合,創 業 者 が 行 動 的 な 投 資 家 と受 動 的 な 投 資 家 に対 して 異 な る売 却 価 格 を設 定 す る こ とは 受 動 的 な投 資 家 の利 益 を 損 な う。 14(14).

(15) 企業 の所 有構造 と経営権 の配分 の決 定(小 林) (16)式 が 示 す よ う に,資 金 が 乏 しけ れ ば 取 得 で き る株 式 の割 合 も小 さ くな る の で,(9) と か ら行 動 的 な投 資 家 が 投 入 す る最 適 な 努 力 水 準 は小 さ くな る。 さ らに そ の 努 力 水 準 で達 成 で き る企 業 価 値 が 小 さ くな り,取 得 した 株 式 か ら十 分 な利 益 を得 られ な い の で,行 動 的 な投 資 家 は レ ン トを 得 られ な け れ ば企 業 の 経 営 を 引 き受 け な い。 特 に,行 動 的 な 投 資 家 が レ ン トを得 られ る 場 合 の 最 適 な 努 力 水 準 が 低 くな る こ と か ら,受 動 的 な投 資 家 は レ ン トを 得 られ な い ば か りか 低 い 株 価 に 甘 ん じ る こ と に もな る の で これ の利 益 は損 な わ れ て い る と 考 え て よ い(9?。 この ケ ー ス で は 創 業 者 は 行 動 的 な投 資 家 に経 営 権 を 委 譲 す る こ と に よ って 期 待 利 得 を 高 め られ る の で,契 約 の 際 に行 動 的 な投 資 家 が レ ン トを享 受 す る こ と に合 意 して い る こ と に な る。 い い か え れ ば,創 業 者 と行 動 的 な投 資 家 が 契 約 を通 じて共 謀 す る こ とに よ って,受 身 の 投 資 家 の 利 益 を損 ね て い る と い う こ とが で き る。. 5.結. 論. 本 稿 で は企 業 の 所 有 経 営 者 で あ る創 業 者 に よ る経 営 権 と株 式 の 所 有 構 造 の 決 定 を 考 察 し た 。 こ こで は,自 分 よ り経 営 能 力 が 高 い外 部 投 資 家 に株 式 を売 却 す る こ と に よ って 外 部 大 株 主 を 形 成 し これ に経 営 権 を 委 譲 す る か,自 分 で 経 営 を 続 け るか,と. い う選 択 肢 に 直 面 す. る創 業 者 の意 思 決 定 お よ び 大 株 主 を 形 成 す る場 合 の 最 適 な株 式 売 却 価 格 と所 有 構 造 を 導 出 した。 株 式 取 得 の 際 に借 り入 れ 制 約 が あ る とす る仮 定 の も と で は,創 業 者 が 外 部 大 株 主 を形 成 す る か 否 か は 大 株 主 が 株 式 取 得 に 充 て る資 金 の 大 き さ に依 存 し,資 金 が 大 き い ほ ど そ れ ほ ど大 株 主 の経 営 能 力 が 高 くな くて も経 営 権 を委 譲 す る こ とが 最 適 に な る こ とが 示 され た。 ま た経 営 権 の 委 譲 が あ る場 合,大 株 主 は 過 半 数 超 の 株 式 を取 得 す るの で,創 業 者 は物 言 わ ぬ株 主 と して 存 在 す る こ とが 示 され た。 創 業 者 が 外 部 大 株 主 を形 成 す る状 況 は,経 営 能 力 を 有 す るた め に 事 実 上 の 経 営 権 を掌 握 可 能 な 行 動 的 な投 資 家 以 外 に受 身 の投 資 家 に も売 却 す る こ と に よ って,創 業 者 が全 株 式 を 手 放 す 状 況 で あ る と解 釈 す る こ とが 可 能 で あ る。 先 の 結 果 を この枠 組 み で解 釈 す る こ とで, 創 業 者 が株 式 売 却 を 選 択 す る均 衡 に お い て受 身 の投 資 家 の利 益 が 損 な わ れ な い の は行 動 的. (9)補 題1(i),(ii)の ケー スにお ける大株主(本 節 で の行 動的 な投 資家)の 最適 な努力水準 は (9)式 に(13),(15)を 代入す る ことで得 られ る。 これ らを それ ぞれU1+U2と す ると δ1>UZに な る。 -15(15)一.

(16) 第3巻. 第1号. な 投 資 家 の株 式 購 入 資 金 が 大 き い 場 合 で あ る こ とが 示 され た。 こ れ らの結 果 は フ ァ ン ドの 規 模 と経 営 権 お よび 所 有 構 造 の 関 係 に つ い て 示 唆 を 与 え る。 また セ グ メ ンテ ー シ ョ ン と フ ァ ン ドの規 模 の 関係 につ い て 示 唆 を与 え る もの で あ る。. 参. 考. 文. 献. 1. Berle, A., and G. Means (1932) The Modern Corporation and Private Property (MacMillan, New York, N.Y.). ( 2 ) Brennan, M. J., and J. Franks (1997) " Underpricing, Ownership and Control in the Initial Public Offerings of Equity Securities in the U.K.," Journal of Financial Economics, 45, 391-413. 3) Carleton, W. T., J. M. Nelson, and M. S. Weisbach (1998) "The Influence of Institutions on Corporate Governance through Private Negotiations : Evidence from TIAA-CREF," Journal of Finance, 53, 1335-1362. 4) Dessi, R. (2004) "Start-up Finance, Monitoring and Collusion, " RAND Journal of Economics, forthcoming. Hanley, K. W., and W. J. Wilhelm (1995) " Evidence on the Strategic Allocation of Initial Public Offerings," Journal of Financial Economics , 37, 239-257. ( 6) La Porta, R., F. Lopez-de-Silanes, and A. Shleifer (1999) "Corporate Ownership Around the World," Journal of Finance, 54, 471-517. ( 7) Kahn, C., and A. Winton (1998) "Ownership Structure, Speculation, and Shareholder Intervention," Journal of Finance 53, 99-128. ( 8) Kaplan, S. N., and P. Stromberg (2004) "Characteristics, Contracts, and Actions : Evidence from Venture Capitalist Analyses," Journal of Finance, 59, 2177-2210. ( 9) Karpoff, J. M. (1998) "The Impact of Shareholder Activism on Target Companies : A Survey of Empirical Findings," (mimeo) (10) Maug, E. (1998) "Large Shareholders as Monitors : Is There Trade-off between Liquidity and Control," Journal of Finance, 53, 65-98. (11) Tirole, J. (2001) "Corporate Governance," Econometrica, 69, 1-35. ( 5). — 16 ( 16 )—.

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参照

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