家庭科と自立活動から食教育を進めるための指導目標と学習内容 : 小学校特別支援学級高学年児童へのアプローチ
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 家庭科と自立活動から食教育を進めるための指導目標と学習内容 ― 小学校特別支援学級高学年児童へのアプローチ ―. 大橋 裕子・岡田みゆき* 北海道教育大学大学院教育学研究科(院生) *. 北海道教育大学旭川校家庭科教育研究室. Instructive Objectives and Contents for Nutritional Education in Home Economics and Independent Activities for Special Support Classes ― A Program for Upper Grade Children in Special Needs Education Classes of Elementary Schools ―. OHASHI Yuko and OKADA Miyuki* Graduate School, Hokkaido University of Education *Department of Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education. 要 旨 現在,増加傾向にある発達障害児は生涯にわたって食生活の課題や自立の問題がある。そこ で本研究では,小学校特別支援学級に在籍する高学年児童を対象に,食に関する指導目標と学 習内容について示すことを目的とした。分析は,小学校家庭科教科書と文部科学省「食に関す る指導の手引」の記述を対象とし,関連事項を整理した。結果は以下の通りであった。 ・小学校家庭科の学習内容からは,食事の役割や1食分の献立を考え,自分で食事をつくるた めの基礎的・基本的な知識および技能を身に着けることを重点としていた。 ・文部科学省「食に関する指導の手引」では,児童が自分の食を管理するための知識を習得す ることを重点としていることが明らかとなった。 ・文部科学省の特別支援学校における「食に関する指導の手引」では,栄養のバランスの大切 さと,子ども自身が日常の食生活を見直す力を育むことを重点としていた。. 1.研究の目的. も国民の重要な課題となっている。文部科学省は, 大人と同様,子どもにおいても生涯にわたって健. 食は人間が生きていく上で基本的な営みの一つ. 全な食生活を送ることができるように,学校現場. であり,健康的な食生活を送ることはいつの時代. でも積極的に食育に取り組むことが重要である. 377.
(3) 大橋 裕子・岡田みゆき. (文部科学省,2016)と方向性を示している。平. れ,緊要の課題となっている。. 成17年に食育基本法が施行されて10年が経過する. 知的障害児に対する栄養教育の実践研究とし. 現在においても,食に関する正しい知識や技能,. て,伊藤(2005abc)は代表例教授法を用いた授. あるいは興味・関心を子どもたちに育む必要性. 業モデルを開発し,視覚的・聴覚的教材を用いる. (内閣府,2016)が改めて問われている。. ことで,栄養に関する知識の習得が認められ,食. とりわけ,特別な支援を必要とする児童・生徒. 生活における自立的行動が可能になったと結論づ. においては健常者以上に偏食傾向や過食および食. けている。特別支援学校高等部における食に関す. 行動の偏りがあり(篠崎・古川,1993) ,肥満や. る技能の習得について,村上・梅原(2009)は,. 糖尿病による生活習慣病の疾患率増加などの深刻. 1日の食事づくりを一人で3回にわたって繰り返. な問題を抱えている(伊藤,2005)。西村(1983). し料理することで,調理技能習得の過程や食生活. は,発達障害者の多くは,幼児期という早い段階. の課題を明確に把握することができると結論づけ. から食生活に偏りが見られることを述べている。. ている。. また,松葉(1983)や高橋他(2015)は,障害児. 通常学級の児童に対する栄養教育の研究とし. および障害者の栄養素摂取量における偏りがある. て,矢野(1998)は小学校家庭科食物領域に関す. こと,田中(1998)は通常学級と特殊学級におい. る知識や技能の習得において,繰り返し学習する. て食べ物の好き嫌いを比較すると,特殊学級の児. こ と が 大 切 で あ る こ と を 述 べ て お り, 小 島 他. 童は通常学級の児童よりも好き嫌いが多いことを. (2013)は小学校家庭科の授業でお弁当を教材と. 指摘している。つまり,発達障害者の食の問題は. して用い,視覚的な教材を使った授業の効果につ. 小学校入学前から大人になるまでの生涯にわたっ. いて報告している。. て偏食による栄養素摂取量のアンバランスさが課. これらの先行研究から,長いスパンで繰り返し. 題となっている。. 学習することや視覚や聴覚などを手がかりとした. 一方, 特別な支援を必要とする児童・生徒には,. 教材を使うこと,実際に自分で調理経験を積み重. 生活の自立の問題(橋本,1985)があるため,学. ねることによって障害のある児童・生徒も通常学. 校では教育活動全体を通じて適切な指導が求めら. 級の児童・生徒と同様に食の管理能力を高めるこ. れ,自立を目指した教育活動を行う領域の自立活. とや調理を含めた食に関する知識・技能を高める. 動という学習が設けられている。しかしながら,. などの栄養教育が可能であることがわかる。とり. この自立活動の目標や内容は示されている(文部. わけ,発達障害児は健常児よりも,繰り返し行う. 科学省,2009a)ものの,教科書等がないため,. ことや体験を通して学ぶことが必要である。その. 具体的な学習内容は各学校に任されている。つま. ため,家庭科の学習が始まる小学5年生の家庭科. り,子ども一人ひとりの生活の課題に沿ったプロ. と自立活動の双方向の学習から,食生活の改善に. グラムを作成する(文部科学省,2009b)必要が. 関する取組を早急に行う必要があると言える。. ある。とりわけ,特別支援学級の児童の生活課題. このように,特別支援学級在籍児童のための食. である食生活を改善するプログラムが求められる。. 教育の必要性について論述してきたが,実際に食. さらに,近年,特別支援学校や特別支援学級に. 教育プログラムを開発するにあたり,何に留意す. 在籍する幼児・児童・生徒が増加傾向(文部科学. ることが必要なのかを検討すると,まず,小学校. 省,2016)にあり,平成28年度から障害者差別解. 家庭科の各学年で育む食教育の指導目標や学習内. 消法が施行されたところである。このような時代. 容を見直す必要がある。そして,文部科学省「食. の中で,障害のある子どもの自立や社会参加に向. に関する指導の手引」(文部科学省,2007)の小. けた主体的な取組を支援(文部科学省,2016)す. 学校高学年における指導事項および特別支援学校. る食教育のカリキュラム作りは学校教育に求めら. における指導事項を参考に,系統性や連続性のあ. 378.
(4) 家庭科と自立活動から食教育を進めるための指導目標と学習内容. る食教育の学習内容を構成する必要があると言え. の働き,文化鍋を用いた炊飯方法やだしのとり方. る。. を含めた味噌汁の作り方など,日本の伝統的な食. そこで,食教育プログラムを開発するための基. 事における基本的な知識を学ぶ内容が挙げられる。. 礎資料として,本研究では,小学校家庭科教科書. 次に,小学6学年では,朝食に合うおかずを考. (文部科学省検定教科書,2015)と文部科学省「食. えて作ることや1食分の栄養バランスのよい献立. に関する指導の手引」からの関連記述を分析する. を考えて調理するなど,5学年で学習したことを. ことを通して,それらの特徴を明確にし,特別支. 発展させた内容になっている。また,6年生の最. 援学級在籍児童のための食生活の課題解決に向け. 後の学習では,2年間で培った知識や技能を家庭. た食に関する指導目標と学習内容を示すことを目. で実践するために,家族とのパーティを計画する. 的とする。. ことやこれからの生活を考えるなど,今後の家庭 生活における実践をまとめとしている。. 2.研究の方法. これらの結果より,小学校家庭科の学習内容は 2年間通して食事の役割や様々な食品を組み合わ. 研究方法としては,小学校家庭科教科書と文部. せながら1食分の献立を考えること,自分で食事. 科学省「食に関する指導の手引」の食に関する指. を作るために調理用具の使い方や調理方法におけ. 導目標と学習内容における分析を通して,本目的. る基礎的・基本的な知識および技能を身に付ける. に迫ることとした。そのため,小学校家庭科教科. ことを重点としていることが明らかとなった。. 書の学習内容と文部科学省「食に関する指導の手 引」 の高学年と特別支援学校における食育の観点, 食に関する指導目標,学習内容について検討し, 表に整理して分析と考察を進めた。 分析と考察から明らかとなった,食教育の特徴. ⑵ 小学校家庭科と文部科学省「食に関する指導 の手引」との関連 ①小学校家庭科と文部科学省「食に関する指導の 手引」における小学校高学年との関連. を踏まえ,特別支援学級在籍児童を対象にした食. 表2は小学校家庭科における学習内容と文部科. に関する指導目標,学習内容を精選し,提示する。. 学省「食に関する指導の手引」における小学校高 学年との関連について示し,さらに,学習内容に. 3.結果と考察. ついては表1の学習内容の番号とリンクさせて記 載した。. ⑴ 小学校家庭科における食に関する学習内容. まず,「食に関する指導の手引」の中の小学校. 表1は,小学校家庭科教科書における食に関す. の食に関する指導に係る全体計画では,各学年の. る学習を2学年間の題材名,記載頁,学習内容に. 食に関する指導目標が①食事の重要性,②心身の. 分けて整理した。なお,分析対象とした教科書は,. 健康,③食品を選択する能力,④感謝の心,⑤社. 2008(平成20)年公示の小学校学習指導要領に基. 会性,⑥食文化の6つの観点から示されているた. づいて作られた平成26年に文部科学省の検定を受. め,この6つの観点を参考に明記した。次に,食. けた小学校家庭科教科書である。教科書の本文に. に関する指導目標については,「食に関する指導. 加えて,表,図,写真,イラストなど,本文とは. の手引」の中の高学年の食に関する指導の目標例. 別の記載事項も学習内容の項目対象とした。. から抜粋した。そして,学習内容については, 「食. まず,小学5学年では,安全に調理を行うため. に関する指導の手引」の家庭科の指導の進め方に. のスキルを身につける学習内容が多く,ガスコン. おける記述と表1の小学校家庭科の学習内容と関. ロの使い方や調理用具の紹介など,基礎的な内容. 連のあるものから抽出して整理した。. が挙げられる。他には,五大栄養素や3色食品群. 表2より,小学校家庭科と「食に関する手引」. 379.
(5) 大橋 裕子・岡田みゆき. とでは,学習内容について関連が多いことがわ. 働きを調べて発表することや栄養素を考えて食事. かった。また,心身の健康における栄養バランス. をとるために話し合う活動など,具体例を挙げて. や栄養素に関する記述が多く,例えば,五大栄養. 記述している。それらは,自分の食を管理する力. 素や3色食品群とそのはたらき,1食分のバラン. を育む授業の必要性について述べており,つまり,. スのよい献立を考える学習が挙げられる。とりわ. 児童自らが食を管理するための知識を習得するこ. け,手引の中の授業の進め方においては,栄養バ. とを重点としていることが言える。. ランスに関わる学習について,五大栄養素の名称, 表1.小学校家庭科教科書における食に関する学習内容の記載事項 学年 小学校 5学年. 小学校 6学年. 題材名. 頁. 学習内容. 2.はじめてみよう クッキング. 9 9 9 10 11 11 11 12-13 13 13 12 14 15 16-17 16. ①ガスコンロの安全な使い方 ②湯の沸かし方 ③日本茶の入れかた ④調理の手順と調理用具を知る ⑤手の洗い方 ⑥調理をする時に気をつけること ⑦計量のしかた ⑧ゆでる(たまご,青菜) ⑨青菜の洗い方 ⑩まな板の取り扱い方 ⑪包丁の持ち方,取り扱い方 ⑫後片付けのしかた ⑬野菜やいも類のゆで方 ⑭ゆで野菜サラダを作る(計画,実習) ⑮野菜の切り方(輪切り,半月切り,短冊切り). 7.食べて元気に. 42 43 44 45 45 46-47 47 48-49 48 49. ⑯食事の必要性 ⑰五大栄養素のはたらき ⑱3色食品群とそのはたらき ⑲日本の伝統的な食事(和食,郷土料理)について ⑳茶碗,汁椀,はしの置き方 ㉑ご飯のたき方(計画,実習) ㉒茶碗とはしの持ち方 ㉓みそ汁のつくり方(計画,実習) ㉔だしのとり方 ㉕材料の切り方(いちょう切り,さいの目切り). 2.いためてつくろ う朝食のおかず. 69 70-71 72-73 72 72. ㉖朝食の役割 ㉗朝食にあうおかずをつくる(計画,実習) ㉘いためる(たまご,野菜) ㉙フライパンの使い方 ㉚材料の切り方(せん切り,うす切り,ななめ切り,くし形切り). 4.くふうしようお いしい食事. 96-97 98 100-101 101 102. ㉛1食分のバランスのよい献立を考える ㉜栄養のバランスを確かめる ㉝おかずをつくる(計画,実習) ㉞調理の時間配分や手順のくふう ㉟楽しく,おいしい食事のくふう(食事のマナー). 7.共に生きる生活. 106-107 108. ㊱家族のためにパーティを計画する 例)サンドイッチ ㊲これからの生活を考える. ※学習内容の項目は小学校家庭科教科書の開隆堂を参考に,本文や挿絵のみならず,図や表,写真も含む. 380.
(6) 家庭科と自立活動から食教育を進めるための指導目標と学習内容. 表2.小学校高学年の食に関する際の指導目標と小学校家庭科教科書における学習内容との関連 食育の6つの 観点. 食に関する指導目標. 学習内容. 1.食事の重 要性. ・日常の食事に興味,関心を持つ ・朝食をとることの大切さを理解し,習慣 化している ・楽しく食事をすることが人と人とのつな がりを深め,豊かな食生活につながるこ とがわかる. ⑯食事の必要性 ㉖朝食の役割 ㉗朝食にあうおかずをつくる(計画,実習) ㊱家族のためにパーティを計画する. 2.心身の健 康. ・栄養のバランスのとれた食事の大切さが わかる ・五大栄養素と食品の三つの働きがわかる。 ・食事が体に及ぼす影響や食品をバランス よく組み合わせて食べることの大切さを 理解し,一食分の献立を考え調理をする ことができる。. ⑯食事の必要性 ㉖朝食の役割 ⑰五大栄養素のはたらき ⑱3色食品群とそのはたらき ㉛1食分のバランスのよい献立を考える ㉜栄養のバランスを確かめる. 3.食品を選 択する能力. ・食品の安全・衛生について考えることが できる。 ・食品の衛生に気を付けて,簡単な調理を することができる。 ・衛生的に食事の準備や後片付けをするこ とができる. ①ガスコンロの安全な使い方 ⑥調理をする時に気をつけること ⑩まな板の取り扱い方 ⑪包丁の持ち方,取り扱い方 ⑫後片付けのしかた. 4.感謝の心. ・生産者や自然の恵みに感謝し,残さず食 ㊲これからの生活を考える べることができる ・食事にかかわる多くの人々や自然の恵み に感謝し,残さず食べることができる。. 5.社会性. ・協力して食事の準備や後片付けを進んで 実践する ・楽しい食事を通して,相手を思いやる気 持ちをもつことができる ・食事の準備や後片付けをよりよく実践し ようとする. ⑫後片付けのしかた ㉞調理の時間配分や手順のくふう ㊱家族のためにパーティを計画する ㊲これからの生活を考える. 6.食文化. ・特産物を理解し,日常の食事と関連付け て考えることができる ・食文化や食品の生産,流通,消費につい て理解を深める ・外国の食文化を通して,外国のつながり を考えることができる. ③日本茶の入れかた ⑲日本の伝統的な食事(和食,郷土料理)について ⑳茶碗,汁椀,はしの置き方 ㉒茶碗とはしの持ち方. ※学習内容の番号は表1の小学校家庭科教科書との関連. ②小学校家庭科と特別支援学校における文部科学 省「食に関する指導の手引」との関連. 学校の食に関する指導に係る全体計画の中の指導 目標から抜粋した。学習内容に関しては,自立活. 表3は小学校家庭科における学習内容と特別支. 動における食に関する指導の進め方と特別支援学. 援学校における文部科学省「食に関する指導の手. 校の食に関する指導に係る全体計画の中の教科と. 引」との関連について示している。. の関連性から提示した。そのため,家庭科の学習. 食育の観点については,特別支援学校の食に関. 内容と関連するものは表1の番号で示している。. する指導に係る全体計画においても表2と同様の. さらに,バランスのとれた1食分の食事を選択す. 6つの観点で示されていることから,これを使用. る学習と日常食の簡単な調理をする学習は,中等. した。食に関する指導目標については,特別支援. 部の内容として記載しているが,それらは小学校. 381.
(7) 大橋 裕子・岡田みゆき. 家庭科の学習内容と関連していることがわかる。 このことから,特別支援学級在籍児童には個別の. ③小学校特別支援学級の高学年において食教育を 育むための指導目標と学習内容. 支援があると高い目標の学習にも取り組めること. 表1,表2,表3で整理した食育の観点や食に. が多いため,一部中学部の内容も抽出して整理し. 関する指導目標および学習内容を踏まえ,小学校. た。. 特別支援学級において食教育を育むための食に関. 表3から,栄養バランスの大切さに加え,給食. する指導目標と学習内容を表4に示す。. の献立や自分の体によい食べ方,健康の自己管理. 列に,文部科学省が示す,食育の6つの観点を. について考える学習など,子ども自身が自分の食. 柱においた食に関する指導目標を,行に,特別支. 生活を振り返る学習内容は,特別支援学校におけ. 援学級における学習内容と交流学級における学習. る手引の特徴として挙げられる。また,食べ物の. 内容を配置した。. 名前を理解させることや食事のマナー,好き嫌い. 食に関する指導目標は,表2および表3の指導. なく残さず食べる内容は障害のある児童の課題解. 目標から抽出した。. 決に必要な学習であり,これらの学習内容につい. 特別支援学級では,個別で学習する家庭科と自. ても明記していることがわかった。このように,. 立活動の時間の他,交流学級での家庭科の授業も. 特別支援学校における手引は,子ども自身が日常. 含まれている。そのため,学習内容は特別支援学. の食生活を見直す力を育むことを重点としている. 級と交流学級の2つの学習形態に分けて設定し. ことが明らかとなった。そして,表2で見られた. た。また,特別支援学級での学習内容について,. 小学校家庭科との関連については,表3でも同様. ○は5学年で学習するもの,●は6学年で学習す. であることがわかった。. るものとして学年別に記載した。また,太字表記 表3.特別支援学校の食に関する際の指導目標と学習内容. 食育の6つの観点. 食に関する指導目標. 学習内容. 1.食事の重要性. ・食 事の重要性,食事の喜び,楽しさの理 解をする. ・食べ物の名前を知る ・食事を楽しむ(⑯,㉟,㊱). 2.心身の健康. ・心 身の健康や健康の保持増進の上で望ま ・給食の献立を知る しい栄養や食事のとり方を理解し,自ら ・自分の体によい食べ方を知る 管理していく能力を身につける ・適切な健康の自己管理について考える ・食べ物の働きを知る(⑰,⑱) ・バ ランスのとれた1食分の食事を選択す る(⑰,⑱,㉛,㉜) ・日常食の簡単な調理をする(⑧,⑬,⑭, ㉑,㉓,㉗,㉘,㉝). 3.食品を選択する 能力. ・正 しい知識,情報に基づいて,食物の品 ・安全に調理する(①,⑥,⑩,⑪) 質及び安全性等について自ら判断できる ・いろいろな食べ方を知る(⑧,⑬,⑭,㉘) 力を身につける. 4.感謝の心. ・食 物を大切にし,食物の生産等に関わる ・好き嫌い(偏食)なく残さず食べる 人々へ感謝する心を育む. 5.社会性. ・食 事のマナーや食事を通じた人間関係形 ・食事のマナーを知る(㉟) 成能力を身につける. 6.食文化. ・各 地域の産物,食文化や食に関わる歴史 ・はしの使い方を知る(㉒) を理解し,尊重する心をもつ ・郷土食を知る(⑲). ※学習内容については,文部科学省「食に関する手引」の中の自立活動における食に関する指導の進め方と食に関 する指導の全体計画を参考に整理し,特別支援学級の実態に応じて中学部の内容も一部含めた ※学習内容( )内の番号は表1の小学校家庭科教科書との関連. 382.
(8) 家庭科と自立活動から食教育を進めるための指導目標と学習内容. 表4.小学校特別支援学級在籍児童を対象とした食教育を進めるための指導目標と学習内容 食に関する指導目標. 特別支援学級における 学習内容. 【1.食事の重要性】 ○食事の必要性がわかる 日常の食事に興味・関心を持 ○朝食の役割を知る ち,食事の重要性を理解する ○●食べ物の名前を知る ●楽しい食事を考える. 交流学級における 学習内容 ・家 族のためにパーティ を計画する. 【2.心身の健康】 心身の健康と望ましい栄養や食 事のとり方を理解し,一食分の バランスのよい献立を考えて調 理に活かすことができる. ・五 大栄養素のはたらき ○五大栄養素のはたらきを知る を確認する ○●3色食品群とそのはたらきについて理解を深 める ○バランスのとれた1食分の食事を選択する ○●1食分のバランスのよい献立を考える ○栄養のバランスを確かめ,バランスのとれた食 事を理解する ○●給食の献立を知る ○●自分の体によい食べ方 ●健康の自己管理について考える学習. 【3.食品を選択する能力】 食品の衛生や安全に気を付けな がら,自ら責任をもって簡単な 調理を行うことができる. ○●ガスコンロの安全な使い方を理解する ○●安全に気を付けて調理する ○●計量のしかたを知る ○ゆでることができる ○野菜の洗い方を知る ○まな板の取り扱い方を理解する ○●包丁の持ち方,取り扱い方を理解する ○●材料の切り方を知る ○いためることができる ○●フライパンの使い方を知る ○●1食分のバランスのよい食事を作る. 【4.感謝の心】 ○●好き嫌いなく残さず食べる 食物を大切にし,生産者や自然 の恵みに感謝して残さず食べる ことができる 【5.社会性】 食事のマナーや調理の準備や後 片付けをよりよく実践すること ができる. ・ガ スコンロの安全な使 い方を理解する ・湯の沸かし方がわかる ・手の洗い方を確認する ・野菜のゆで方を知る ・ゆ で野菜サラダを作る (計画,実習) ・朝 食にあうおかずをつ くる(計画,実習). ・ク ラスのみんなと調理 実習で作った料理を食 べる. ○●調理の手順と調理用具を知る ・茶 碗,汁椀,はしの置 ○●後片付けのしかたを理解する き方を確認する ○●茶碗とはしの持ち方を理解する ・茶 碗とはしの持ち方を ●調理の時間配分や手順を工夫して食事をつくる 確認する ○●食事のマナーがわかる. 【6.食文化】 ●日本の伝統的な食事(和食,郷土料理)につい 各地域の産物や食文化を理解 て知る し,日常の食事と関連付けて考 ●ご飯のたき方(計画,実習)を理解する えることができる ●みそ汁のつくり方(計画,実習)を理解する ●だしのとり方がわかる. ・日本茶の入れる ・ご飯のたき方を知る ・み そ汁のつくり方を知 る ・だしのとり方を知る. ※○は5学年において,●は6学年における学習内容とする ※太字表記は,小学校と特別支援の両方に関連が大きい内容 ※斜字体表記は,特別支援学校の学習内容. は小学校と特別支援の両方に関連が大きい内容. を知ることや好き嫌いなく残さず食べること,自. を,斜字体表記は特別支援学校の学習内容を示し. 立した生活を送るために1食分の食事を作るな. ている。. ど,子ども自身が日常の食生活を見直す力を育む. 特別支援学級における学習内容は,給食の献立. ことを重点とし,それらは,表3の学習内容より. 383.
(9) 大橋 裕子・岡田みゆき. 抽出した。とりわけ,1食分の食事を作る点にお. を高め,自分の食を管理するための知識や技能を. いて調理の基礎に関わる学習内容は,小学校家庭. 習得させながら食文化に関する学習内容を取り入. 科の学習内容に多いため表1より抽出した。それ. れることとし,2年間の授業で食に関する知識や. らに該当する学習は,野菜の洗い方や材料の切り. 技能の定着へ迫ることとした。. 方,計量の仕方などが挙げられる。それから,児. 交流学級における学習内容については,調理自. 童が自分の食を管理するための栄養素やバランス. 主を中心に表1から抽出した。クラスメイトと共. のよい食事については,小学校家庭科と特別支援. に学習することで,調理の手順や盛り付けの様々. 学校の手引との関連が強い学習内容を表2,表3. な模範を目や耳にして体験することで,授業中の. より抽出した。それらに該当する学習は,五大栄. 説明や教科書では理解が難しいとされる学習内容. 養素や3色食品群とそのはたらきについて理解を. でも特別支援学級の児童がイメージできる良い機. 深めること,バランスのとれた1食分の食事を選. 会となる。児童がイメージした学習をもう一度,. 択することなどが挙げられる。. 個別学習で実践することで児童の理解を助けるも. 表4から,知識を習得する学習が多いことが明. のと考えられる。児童の理解へつなげるためには. らかとなったが,特別支援学級在籍児童において. 交流学級での学習も必要であると考えられるた. は高い目標となることが予想される。しかしなが. め,2つの学習形態から学習内容を示すこととし. ら,好き嫌いなく残さず食べるという,特別支援. た。. 学級在籍児童の課題を解決するためには重要な学. このように,特別支援学級における食教育は,. 習である。そのため,なぜ残さず食べる必要があ. 小学校家庭科の学習内容を繰り返し行い,子ども. るのか,栄養のバランスについて知識の獲得とそ. 一人ひとりが食に関する基礎的・基本的な知識や. れを理解させるために繰り返し学習する場面を設. 技能を定着させる必要があると考える。そのため,. 定した。その場面は,栄養素のはたらきについて. 家庭科と自立活動の双方向の授業から食教育を進. 理解する場面,1食分の食事を選択する場面,バ. め,将来の自立に向けた食生活の素地を育むこと. ランスのよい献立を考える場面など,似ている学. を目指したい。児童自らが食事に関心を持ち,自. 習内容であるが,学習の難易度を段階別にしてい. 分の食を管理するための知識や技能を習得するこ. ることが挙げられる。それから,児童が自分の食. とで,健康に関心を持ち,正しい食生活習慣を身. を管理するための技能を習得させるために,表1. に付けた社会に生きる一人ひとりとして実践・行. の調理に関わる,調理用具や材料の切り方を知る. 動につなげていく展開が望まれる。. 学習など,調理スキルを育む内容は繰り返し2年 間で学習する内容として設定した。また,5学年 では,安全に調理するための知識や体験から技能. 4.まとめ. の獲得をねらいとした学習内容を中心に,一部複. 本研究は,食教育プログラムを開発するための. 数の調理についても行う機会を設定した。なぜな. 基礎資料として,小学校家庭科と文部科学省「食. らば,特別支援学級在籍の児童は,将来の自立に. に関する指導の手引」の指導目標と学習内容にお. 向けて自ら食を管理するための知識や技能を習得. ける関連について分析し,特別支援学級在籍児童. する必要があり,繰り返し学習することで定着さ. のための食に関する指導目標と学習内容を示すこ. せることをねらいとしているからである。そのた. とを目的とした。. め,複数の調理については6学年の1年間で指導. そのため,現行の小学校家庭科教科書と文部科. するよりも,5学年から2年間で繰り返して学習. 学省「食に関する指導の手引」の記載事項を分析. することで調理の技能が定着すると考えられる。. 対象とし,指導目標と学習内容について関連を検. また,6学年では5学年の学習を基に調理スキル. 討した。そして,それらを基に,小学校特別支援. 384.
(10) 家庭科と自立活動から食教育を進めるための指導目標と学習内容. 学級在籍する高学年の児童を対象とした,食教育 の柱となる指導目標と学習内容についての方向性 を明らかにした。結果は以下の通りである。 ①小学校家庭科の学習内容からは,食事の役割や 1食分の献立を考え,自分で食事を作るための 基礎的・基本的な知識および技能を身に付ける ことを重点としていることが明らかとなった。. デルの組み立て.日本家庭科教育学会誌,47⑷,318326. 伊藤圭子.(2005b).軽度知的障害児に対する代表例教授 法を用いた栄養教育の開発(第2報):授業モデル開発 と実践および学習過程の分析.日本家庭科教育学会誌, 47⑷,327-334. 伊藤圭子. (2005c) .軽度知的障害児に対する代表例教授 法を用いた栄養教育の開発(第3報):学習の促進要因 の検討.日本家庭科教育学会誌,48⑴,3-9.. それらから,調理用具の使い方やゆでる,炒め. 伊藤淳一. (2005) .知的障害者の肥満,および肥満が関. るなどの調理方法を中心とした調理に関する学. 与 す る 健 康 障 害 の 比 率. 発 達 障 害 研 究,27⑷,307-. 習内容を取り入れて構成した。 ②文部科学省「食に関する指導の手引」では小学 校高学年における食教育は,児童が自分の食を. 315. 小島千明,柴英里,菊地るみ子. (2013) .小学校家庭科 におけるコンビニ弁当と手作り弁当の比較検討.高知 大学教育学部研究報告,73,33-42.. 管理するための知識を習得することを重点とし. 篠崎麻利子,古川宇一. (1993) .発達障害児の思春期に. ていることが明らかとなった。それらから,バ. おける問題行動の調査研究.情緒障害教育研究紀要,. ランスの取れた献立や3色食品群,五大栄養素 における学習内容を中心に取り入れて構成した。 ③文部科学省「食に関する指導の手引」では特別 支援学校における食教育は,栄養バランスの大 切さに加え,子ども自身が日常の食生活を見直 す力を育むことを重点としていることが明らか. 12,27-34. 高橋智,斎藤史子,田部 絢子,石川 衣紀,内藤千尋. (2015) .発達障害者の「食」の困難・ニーズに関する 研究:発達障害の本人調査から.東京学芸大学紀要.総 合教育科学系66⑵,17-72. 田中純子. (1998) .子どもの食生活を考える:食生活と心 身の健康に関する調査を通して.情緒障害教育研究紀 要,17,235-246.. となった。それらから,好き嫌いなく残さず食. 内閣府. (2016) .第3次食育推進基本計画.. べる食事の必要性や,自立した生活を送るため. http://www8.cao.go.jp/syokuiku/about/plan/pdf/. の1食分の食事を作る学習内容を中心に取り入 れて構成した。. 3kihonkeikaku.pdf. (入手日:2016.4.22) . 西村学.障害児の健康づくり-障害幼児の食生活の実態. (1983) .山形大学紀要,教育科学,8⑵,129-143.. 特別支援学級在籍の児童は,将来の自立に向け. 橋本勝朗,佐藤満雄. (1985) .鷹栖養護学校における基. て自ら食を管理するための知識や技能を習得する. 本的生活習慣変容の実態.情緒障害教育紀要,4,. 必要があり,繰り返し学習を行うことによる定着 が必要である。そのため,小学校高学年の2年間 において家庭科と自立活動の双方の側面から,食 に関する知識や調理技能の定着が必要である。 今後の課題として,まず,特別支援学級在籍児 童のニーズに対応した,具体的な食教育プログラ ムを示すことが必要である。次に提示した食育プ ログラムを基に授業実践を行い,課題と成果を検 証していきたい。. 1-8. 松葉清子.(1996).発達に遅れのある子どもたちの食生 活に関する研究.民族衛生,62⑷,218-235. 村上富美子,梅原清子. (2009) .知的障害特別支援学校 児童生徒の日常生活を支える食育:高等部卒業後の食生 活に関する自立をめざして.和歌山大学教育学部教育 実践総合センター紀要,19,121-126. 文部科学省. (2005) .学校における食育の推進・学校給 食の充実. http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/ (入手日:2016.9.25) 文部科学省. (2010) .食に関する指導の手引 (第1次改訂). 京都:東山書房. 引用・参考文献 伊藤圭子.(2005a).軽度知的障害児に対する代表例教授 法を用いた栄養教育の開発(第1報):栄養教育授業モ. 文部科学省. (2009a) .特別支援学校学習指導要領解説自 立活動編.東京:海文堂出版 文部科学省.(2009b).特別支援学校学習指導要領解説総 則等編.東京:教育出版 . 385.
(11) 大橋 裕子・岡田みゆき. 文部科学省.(2007).特別支援について http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/ main.htm.(入手日:2016.4.22) 文部科学省.(2012).特別支援について 1はじめに. http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/ 001.htm.(入手日:2016.4.22) 文部科学省検定教科書.(2015).小学校私たちの家庭科 5・6.東京:開隆堂. 矢野由紀. (1998).小学校家庭科指導内容に関する知識 や技能の習得状況及びその習得と日常経験との関連性 (第1報):食物学習について.日本家庭科教育学会誌, 41⑶,25-32.. (大橋 裕子 大学院生) (岡田みゆき 旭川校教授). 386.
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