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ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析 : ドメインとリスクマネージャー

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白鴎大学論集Vol.8No.1(1993)241−270

研究ノート

ディスカウント型紳士服

 専門店チェーンの経営学的分析

一ドメインとリスクマネジメントー

柳 川 高 行

1.問題設定 2.郊外型紳士服専門店の現状  2−1.郊外型専門店  2−2.郊外型紳士服専門店 3.郊外型紳士服専門店の本質的特質  3−1.百貨店とのコスト比較  3−2.分析枠組  3−3.百貨店のドメイン  3−4.郊外型紳士服専門店のドメイン   3−4−1.郊外型紳士服専門店のドメイン   3−4−2.多店舗展開とリスクマネジメント 4.結ディスカウント型紳士服専門店チェーン 5。補論 事例研究 株式会社ゼビオ キーワード 郊外型紳士服専門店,ドメイン,リスクマネジメント,返品と委託 販売制,買い取り制,多店舗展開,規模の経済,売れ残りリスクの 極小化,ディスカウント型紳士服専門店チェーン

(2)

柳川 高行

1.問題設定

 毎週土曜日の朝に放映されるN H K総合テレビ番組『くらしの経済』のユ993 年2月6日放送は,「どう決まる?洋服の値段」というタイトルで,いわゆ る「郊外型紳士服専門店」と百貨店との価格差がなぜ生じるのかを大きく報 道した(〔1〕)(仕1)Q  郊外型紳士服専門店の登場は,従来の紳士服の価格設定に対する消費者の 不信感を生じさせ,とりわけ百貨店の価格は高すぎるのではないか,という 価格不信を強めた(〔2〕)(仕2)。  紳士服市場は最近まで,小売店同士が棲み分けていた「安定的市場」であっ たが,ここ数年の郊外型専門店の急成長と全国展開とにより,「流通革命」 が生じ市場構造の大変革が起こりつつある。紳士服市場における流通チャネ ル問の主導権争いは,郊外型紳士服専門店の急成長により,「中小紳士服店」, 「都心型専門店チェーン」(醐「スーパーの紳士服売り場」,「百貨店の紳 士服売り場」(庄4)は軒並み大打撃を受けており,王者百貨店を始め,都心型 専門店,スーパーは値下げを余儀なくされつつある(〔3〕,〔4〕,〔5〕)。 現在は,郊外型紳士服専門店チェーン同士の競合(〔6〕,〔7〕)の時代 に入ったと言うことができよう。  本研究ノートは,紳士服市場における流通革命の担い手である「ディスカ ウント型紳士服専門店チェーン」の本質的特質を,従来の紳士服流通の代表 的小売業である「百貨店の紳士服売り場」の基本的特質と比較することを通 して明らかにすることをその狙いとするものである。

2.郊外型紳士服専門店の現状

2−1.郊外型専門店  「郊外型専門店」或は「ロードサイド型専門店」と呼ばれる小売店は1970 年代に,従来の都心部の駅ビル,商店街,ショッピングセンターとは異なり,

(3)

ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析 主として都市郊外 の幹線道路沿いに 大駐車場を備えた 専門店として誕生 してきた(〔8〕, 〔9〕,〔11〕)。 その業態別店舗構 成に関しては,図 一1を参照のこと (〔9〕)。その 売上高の推移に関 しては表一1を参 照のこと(〔8〕〉。 図一1 郊外型専門店業態別店舗構成

謬撒醜.︶望じヒ娼幻

紳軌P 度数分店

一誰懲羅

  リラ%   、こト3

κ以鉱階蕪

書店 (レンタル ビデオ) 18.6% 2,017店 (出所:〔9〕13ページ) 表一1 郊外型専門店の推移  ベピー・  子供服0.3%32店   婦入服    0.2%27店  靴 10.1% 1,100店     スポーツ用品     3.9%420店     玩具3.5%       362店 (単位:億円,店) 80年    85    86    87 88 89 ディスカウントストア 売上高 ※1987年以前は調査結果なし 14,451 15,833 ホームセンター 売上高 店舗数 3,162 670 10,514 1,500 12,489 1,594 13,684 1,764 16,897 2,166 18,676 2,596

郊外型書店

店舗数 78 828 1,373 1,844 2,315 ショッピングセンター 総店舗数 内郊外型 836 225 1,163 392 1,227 414 1,295 445 1,344 488 1,429 532 小売業販売額(除く自動車小売業) 589,090 945,110 957,540 994,870 1,040,580 1,084,880 百  貨  店 売上高 店舗数 57,225.5  236 68,320.1  255 71,467.4  258 74,910.0  254 79,966.6  255 86,056.5  258  (注)80年の小売業販売額は自動車小売業を含む数値 (資料) 日経流通新聞「ディスカウントストア調査」,日本D I Y協会,日本出版販売    ㈱,日本S C協会,通産省,日本百貨店協会       (出所:〔8〕27ページ) 郊外型専門店が誕生し急成長してきた要因としては,①モータリゼーショ ンの進展がまずあげられる(〔9〕,〔ll〕)。図一2に見られるように, 1977年度に52%だった乗用車普及率は89年度には77%にまで上昇している。

(4)

柳川 高行 特に農家では90%程度まで達し,地方においては乗用車は日常生活にとり不 可欠である(〔9〕)。 %      図一2 乗用車普及率の推移  100 90 80 70 60 50  40

   7? 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89

  (資料)経済企画庁調査局「家計消費の動向」。       年度    (注)○は全世帯,△は農家▲は非農家。        (出所:〔11〕37ページ) 郊外型専門店の誕生と急速な成長の要因はさらに②都心部の地価高騰に伴 う都心部から周辺部の人口移動による新商業圏の形成(〔8〕,〔9〕, 〔11〕〉がある。地価上昇率の推移に関しては図一3,大都市周辺地域での 人口増加率に関しては表一2をそれぞれ参照のこと。        図一3 地価上昇率の推移 (%) 40 30 20 10

0

110  ノ  4 / 4 ’ ■ 角 ハ  日 全国平均三大圏平均 一一……地方平均  ノ’ 」 ノ ノ

 ’717273747576777879808182838485868788899091(年)

(資料) 国土庁「公示地価」。      (出所:〔11〕37ページ) 120

(5)

ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析  郊外型専門店の誕生と急成長の第三の要因 としては,③1974年の大店法の制定により, 既存の商業集積地域への大型店の新規出店が 著しく困難になったことがある(〔9〕)。 表一2 人口増加率ランキング 2−2.郊外型紳士服専門店  「郊外型紳士服専門店」,「ロードサイド 紳士服専門店」とは,都市郊外の幹線道路沿 いに位置し,売場面積150坪程度で駐車スペー ス20∼50台を備えた紳士服専門店で,スーツ (資料)「住民基本台帳人口移動報

       告年報」。

を中心とする重衣料の比率が高い。業界トッ  (注)1990年と1985年との比較。

       (出所:〔11〕38ページ)

プの青山商事が,1974年4月に聞いた広島の 西条店がその草分けとされ,それ以後76年に大三紳士服,78年にコナカ,は るやま商事グループ,79年にアオキインターナショナル等が相次いで参入し, 80年代を通じて全国での出店ラッシュが続いた(〔11〕)。郊外型紳士服専 門店12社の概要については,表一3を参照し,紳士服市場全体に占める郊外 型紳士服専門店のシェアの急増については,図一4を参照のこと。  表一3 郊外型紳士服専門店 大手12社の概要   (単位:百万円,年月は西暦) 県 名 増加率

1

埼  玉 109.0

2

千  葉 107.7

3

神奈川

107.1

4

滋  賀 105.8

5

奈  良 105.4

6

茨  城 104.3

7

沖  縄 103.6

8

愛  知 103.5

9

栃  木 103.4 10 宮  城 103.3 会 社 名 本  社 社 長 資本金 売上高 純利益 設立 決算期

1

青山商事 広島県福山市 青山五郎 49,744 86,846 11,222 64.5 91.3

2

アオキインターナショナル 神奈川県横浜市 青木拡憲 22,891 54,113 4,428 76.8 91.3

3

はるやま商事 岡山県岡山市 治山正次 258 44,588 2,384 55.4 90.3

4

ゼビオ 福島県郡山市 諸橋廷蔵 8,592 34,974 1,630 73.7 90.8

5

コナカ 神奈川県横浜市 湖中彦一 60 33,447 1,799 73.11 89.8

6

大三紳士服 東京都台東区 金子公一 30 27,570 1,145 59.9 89.7

7

フタタ 福岡県福岡市 二田義松 8,G88 26,313 543 58.1 91.1

8

トリイ 愛知県名古屋市 鳥居功治 4,990 21,678 716 62.3 90.8

9

アレックスウェル 大阪府大阪市 井出益夫 638 15,267 159 71.1 90.3 10 メンズショップサム 東京都新宿区 川崎貴文 165 12,958 251 72.5 89.8 11 ゴトー 静岡県沼津市 後藤成夫 373 11,547 660 75.8 90.8 12 ラフォックス 愛知県名古屋市 古川一成 100 10,236 62 85.3 90.2 (資料)流通会社年鑑1991,会社四季報未上場版他。 (出所:〔11〕35ページ)

(6)

柳川 高行 図一4    85年

    ぴ一鵬磁

    ・_ノ 郊外型紳士服専門店(ロードサイド紳士服)のマーケットシェアの推移   90年

…消陥

 (資料) 「衣料品生産実体調査報告書」,「チャネラー91。5月号」。        (出所:〔11〕36ページ)  郊外型紳士服専門店は80年代を通じて,中小専門店・スーパー・百貨店・ 都心型専門店チェーンのシェアを奪いつつ急速に成長してきた。図一5,図一 6に明らかなように,上場5社ベースでみた1986∼1990年の5年間の「売上     図一5 郊外型紳士服専門店上場5社,売上高の推移   (百万円) 90.000 80,000 70。000 60,DO O 50,000 40,000 30,000 20,000 10。000  (注)       6

       /

       ,’        1       びゆ      デご        ρ” ,一”         .一・4         ρノメヒニ.一一ゆニニニニー一        ’ノ    ,一甲々9     ..,D・一ト  がφ麟一:二二二.__・・一一“’ 一,    .一。・’・・一〇一’−一’

   86    87   88   89   90年度

口は青山商事,塵はアオキ,△はゼビオ,◇はフタタ,◆はトリイ,Oは5社 平均。      (出所:〔i1〕35ページ)

(7)

ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析 図一6 郊外型紳士服専門店上場5社,経常利益の推移  (百万円) 22,000 20。000 18,000 16,000 14。000 12,000 10,000 8。000 6,000 4,000 2,000

  0

.、一一一り調ぎ調饗 9_._・一・一・ぐ’一’一 ._.二1‡∵_慧一。二          口 ’一一二5一一一一亡一一一一一一”一一一も          ロロ   ,』・一一+  ‘唱冒’二=離一一◇ (注)

  86   87   88   89    90年度

□は青山商事,■はアオキ,△はゼビオ,◇はフタタ,◆はトリイ,Oは5社 平均。      (出所:〔11〕36ページ) 高年平均成長率」は28%,「経常利益年平均成長率」は実に63%になってい る。第一位の青山商事の92年度の経常利益は三越を上回った。 (〔11〕)。  後述するマネジメントの特質の故に,都心型専門店,百貨店,スーパーと 比較した場合表一4に明瞭なように,郊外型紳士服店の粗利益率の高いのが 際立っている(注5)。 表一4 各業態の経営比較 (%) ロードサイド5社 都心型専門店5社

百貨店6社

スーパー6社 売 上 高 100.O 100.0 100.0 100.O 粗利 益 47.7 41.9 30.9 31.O 販管 費 33.7 37.7 (宣伝費) 7.6 3.8 一 一 (人件費) 8.7 13.3 (貸借料) 4.4 8.2 一 一 営業利益 14.1 4.2 一 一 (注) 百貨店,スーパーは衣料部門。   対象企業は,ロードサイド5社が青山商事,アオキ,ゼビオ,フタタ,トリイ。   都心型専門店5社はタカキュー,銀座山形屋,エフワン,コックス,マルフル。   百貨店6社は三越,高島屋,大丸,松坂屋,伊勢丹,東急百貨店。スーパー6社   はダイエー,イトーヨーカ堂,西友,ジャスコ,ニチイ,ユニー。        (出所:〔11〕40ページ)

(8)

柳川高行  〔11〕によれば,郊外型紳士服専門店のマネジメントの特質は表一5のよ うにまとめられている。   表一5 郊外型紳士服専門店(ロードサイド紳士服)ビジネスの経営特質 ・完全買取り,大量発注    高粗利益率 ・ドミナント出店      広告宣伝費の削減 ・販売方法のマニュアル化一人件費の削減 ・郊外での出店        低出店コスト ・回転差資金         大量出店 (出所:〔11〕40ページ)

3.郊外型紳士服専門店の本質的特質

郊外型紳士服専門店(以下R Sと略記する)は,従来の紳士服の製造と流 通の構造を大きく変革し,紳士服の低価格販売を構造的に可能にする「マネ ジメント・システム」を生み出してきた。本章では,従来の紳士服流通の代 表例として百貨店(以下D P Sと略記する)を取り上げ,R SとD P Sの本 質的特質の違いを明確にする試みを行う。分析に用いる中核的概念は,「ド メイン」と「リスクマネジメント」である。 3−1.百貨店とのコスト比較 N H Kの「くらしの経済」(1993年2月6日放送)で示された流通コスト の比較は,図一7の通りであった。(〔1〕)。        図一7 D P SとR Sのコスト比較        百貨店 65,000円       郊外型 40,000円(例)

ン一ン賃代

ジカ

一たジエ

 レ 

マゼ製

売・N

 ノ

小アマ縫生

20,000円 20,000円 20,000円 5,000円 18,000円∼20,000円程度 9・ ? 5,000円

(9)

       ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析  日経流通新聞の記事(〔15〕)  表一6青山商事とD P Sとのコスト比較 によれば,R S第一位の「青山商 事」とD P Sとの小売価格の内訳 は表一6のように整理することが できる。  R SとD P Sとの工場出荷価格 が,10,400円の差があることは, D P Sブランドの方が,生地が高価であり,縫製にも手間をかけており,ブ ランド元へのロイヤルティー支払いもあるからであり,R Sの紳士服とD P Sのそれとの品質は決して同一とは言えない。ここで重要な点は,R Sの低 価格販売を可能にしている要因は,①上述の製造原価の差に伴う品質の差に 加えて,②アパレルマージンの極端な安さ(D P Sと22,620円の差がある) と,③低い小売店経費(D P Sの2/3強),の3要因である。さらに注意 すべき点は,青山商事に関しては,小売マージンで明らかなように,低価格 販売ではあるが決して「薄利多売」ではないということである。 青山商事 D P S 小売値段 36,800円 80,000円 工場出荷価格 14,800円 25,200円 アパレルマージン 1,780円 24,400円 小売店経費 12,218円 17,600円 小売マージン 8,002円 12,800円

3−2.分析枠組

 RSとDPSの本質的特質の違いを考察する分析枠組としては,①「企業 の事業領域・活動分野」を表す概念である「ドメイン(domain)」,とりわ け「現在のドメイン」と,②「リスクマネジメント」概念を中核的概念とし て用いる。  ここでドメインとは,①「誰の」(who中心顧客層)の②「どんな二一 ズに」(what顧客機能)に,③「どのように」(how独自能力・技術ノウハ ウ)競争優位的に奉仕するのか,の3次元で考察されるのが一般的である(注6)。 以下の考察の中心は,中心顧客層の二一ズに適応する為の独自能力(how) の実体をなすマネジメントの本質的違いに着目して分析をすすめることとす る。

(10)

柳川高行 3−3.百貨店のドメイン  D P Sのドメインの内容は,①対象顧客層は,百貨店ブランドで表示され る品質への感応度の高い消費者層であり,②顧客二一ズは,高品質のファッ ション商品としてのスーツ・高い接客のサービス・豪華な買物環境等の二一 ズの束である。  D P Sのドメインの部分的ドメインをなす紳士服衣料販売活動に関して, ③対象顧客層の二一ズを充足させる為のD P S固有の技術,マネジメントの 仕組みについて,以下詳細に検討しよう。伝統的な紳士服の流通の基本構造 は,図一8の通りである・      図一8 既製紳士服流通の基本構造  この流通構造において中心的役 割を担っているのはD P Sではな くて,アパレルメーカーであるこ とが重要である。アパレルメーカー は,①商品企画を行い,生地を発 注し,②その生地を自家・協力工 場で縫製加工し,販売面では,③ DPS店頭の品揃えを決定し,④ 販売員を派遣し(派遣店員制〉, 紡績・織物メーカー

アパレルメーカー

自家工場 協力工場 販売店︵百貨店等︶

消費

者       (出所:〔1茸39ページ) ⑤返品可能な「委託販売」を行っており(庄7)(仕8),「売れ残りリスク」を負担 していて,⑥一定率の返品リスクと派遣店員の人件費にD P Sの小売マージ ンを加えた「小売価格」の決定を行っている。(〔11〕)。  上述したようにアパレルメーカーは,商品企画とマーチャンダイジング, 販売員の教育と管理,小売価格の決定という「販売のマネジメント」も自か ら担い,「売れ残りリスクマネジメント」も担っている。これに対し,DP Sは,売り場をアパレルメーカーに「貸し」,豪華な物的販売環境の形成と 維持及び,美術展・その他のイベントにより行う「集客活動」のみを自から の任務とする「非自立的な」「不完全な」小売類型であると言えよう。  主要なマネジメント機能をアパレルメーカーが握っているこのような,ア

(11)

       ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析 パレルメーカー・D P S間のマネジメント機能の偏在をもたらした最大の要 因は,最終的なリスク負担をアパレルメーカーが負っていることである。返 品可能な「委託販売制」とは,要するに売れ残りリスクを小売店が負担せず, メーカーが負担するリスク負担のシステムである。リスク負担者がそれと裏 表の関係にあるマネジメント機能を自から手中にすることは当然であるとい える。  しかしながら重要な問題が残されている。アパレルメーカーは,本当に売 れ残りリスクを負担しているのだろうか。あるアパレルメーカーのデータに よれば,紳士服スーッの場合,返品率が30∼40%になることもしばしばあり, 実際に売れる60∼70%分で利益がとれるように納入価格を設定している (〔16〕15ページ)。小売価格に予め売れ残りリスクが上乗せされていて, 売れ残りリスクの実質的負担者は紳士服を購入する消費者であることが決定 的に重要である。売れ残りリスクを消費者に転嫁することが,伝統的紳士服 流通における「リスクマネジメント」なのであった(庄9)。  1993年2月期の東京地区百貨店の紳士服・洋品の売上高は前年同月比15.7 %減であり(〔17〕〉,同年3月のそれは19.7%減(〔18〕)であった。 3−4.郊外型紳士服専門店のドメイン 3−4−1.郊外型紳士服専門店のドメイン  R Sのドメインの内,①対象顧客層は,価格感応度の高い一般大衆であり, ②顧客二一ズは,品揃えが豊富で,立地のよい所で(〔17〕26ページ),大 衆価格の制服・作業着としての紳士スーツを買いたいというものである。③ 対象顧客層の二一ズを充足させる為のR S固有の技術,マネジメントの仕組 みについて,以下詳細に検討しよう。  R Sのマネジメントの基本的特質は,構造的な低価格販売に求められてい ,る。R S妬.1の青山商事を典型例として以下取り上げることとする。低価格 販売を可能にしている要因には,次のものがある。  〔1〕仕入価格の構造的切り下げ

(12)

榔川高行  ①原則的に「買取り制」の導入により,返品リスクの仕入価格への上乗せ   を排した(〔19〕,〔20),〔21〕)。〔20〕によれば,上乗せされる   返品リスクは2割であり,その分仕入れ価格が低下する。  ②大量出店を前提とする「大量発注」による製造原価の削減による仕入れ  価格の切り下げ(〔11〕, 〔12〕, 〔20〕, 〔21〕〉。これは生産にお   ける「規模の経済」の追求である。  ③直接仕入れで問屋の中間マージン(製造原価の2∼3割〉を削減するこ   とにより(〔20〕)仕入価格を切り下げる。 〔2〕販売コストの削減  ①郊外立地の為,賃料に減価償却費を加えた設備費負担が軽いこと(〔11〕,   〔12〕,〔19〕),〔20〕)Q  ②ドミナント出店の為に物流と広告宣伝費の効率化がもたらされる。   (〔11〕, 〔12〕)。これは物流と広告における「規模の経済」の追求   である。  ③若手社員が多く,マニュアル化が徹底しており人件費の低減が可能なこ   と(〔11〕,〔19〕)Q 3−4−2.多店舗展開とリスクマネジメント  上述のマネジメントシステムにより郊外型紳士服店の粗利益は,2−2の 表一4のように他業態に比較して著しく高い。しかしながら,次の図一9及 び図一10に明らかなように郊外型紳士服専門店上場5社の「売上高経常利益 率」と「粗利益」にも大きな違いが生じている。この違いが何によって生じ ているのかを最後に考察し,R Sの本質的特質を究明することとしよう。  図一9から明瞭に読み取れるように店舗数と売上高経常利益率はほぼ正比 例の関係にある。このことは,「多店舗展開」,「チェーンストア展開」に より総売り場面積の拡大が「規模の経済」を生み出していることを意味して いる。規模の経済は相異なる2つの作用因の合成物である。まず第一に,大 量出店による総売場面積の拡大は,より一層の大量発注を,可能にし,商品

(13)

ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析

08642086

G乙11111

売上高経常利益率︵%︶ 800 一」L−6QO 冗 上

同400

億 円

)200

0

    図一9 5社の規模の格差(1989年度) 20●・、 211 632 イ売上経常利益率(左軸)  ’●、甲、    12       、、●、 期末店舗数(右軸)       110  79 64

7

  ● 126 340 46 66 売上高(左軸) 経常利益(右軸) 284 33 224 181 250 200 期末店舗数︵店   0      0   ︻﹂      0   1        1 50

0

14 13 150   経

100常

  利   益 50 億   円   )

0

青山商事 アオキインター ゼビオ  フタタ   トリイ      ナショナル ※注/アオキインターナショナルは決算期変更前の1989年8月期 ※出所/有価証券報告書,各社資料より野村総合研究所作成         (出所:〔12〕35ページ) (%)60 50 40 30 20 10

0

図一10 粗利, 営業利益とも他社をリー ド 52 [二ニコ粗利率 49 46 46 45 麗コ営業利益率( 39 19 13 11 ・9

4

3

青山商事アオキインター フタタ  トリイ     ナショナル         (出所:〔20〕71ページ) タカキュー ゼビオ

(14)

柳1川 高行 1単位当りの製造原価をより一層低下させ,同一価格で販売している商品の 場合,多店舗展開の拡大に応じて商品1単位当りの粗利は増大することにな る。これは粗利面での規模の経済である。第2に大量発注と買い取り制とは, 売れ残りリスクをR Sが負担する仕組みであるが,売れ残りが発生する限り において,それは粗利益を減少させずにはおかないのである。多店舗展開を 行なえば行なう程,売れ残り商品を店舗間を回遊させ,値引き販売を行い最 終的に売り切ってしまおうとする行動が可能となり(ωo),大量発注・買い取 り制によって生じる売れ残りリスクの極小化が可能になっていく。売れ残り リスクの小売店負担と,消費者への転嫁は,多店舗展開という規模の経済性 の追求により初めて回避されることとなり,リスク極小化が計られることと なる。これは多店舗展開による総売場面積の拡大という規模の経済によるリ スクマネジメントと言えよう。

4.結 ディスカウント型紳士服専門店チェーン

 R Sの特徴としては,「低価格販売」と「郊外立地」の2点がよく挙げら れるが,R Sの孤11企業,青山商事の「洋服の青山」は1992年5月下旬東京 都練馬区に出店し(〔22〕),同年10月8日都心立地1号店を「銀座」に出 店した。この銀座出店は「郊外立地」から「都心立地」への原則的変化とし て大きな注目を集めた(〔22〕,〔23〕,〔24〕)。  この立地の変化が意味することは,郊外立地による出店コストの低減と車 による店舗アクセスとは,短期間での急速な多店舗展開を可能にする成長戦 略であったという点であり,R Sの本質的特質は,郊外立地よりもむしろ, 製造・販売コストの低減と売れ残りリスクの極小化を同時に可能する「チェー ンストア型多店舗展開」にあることを象徴的に示しているといえよう。郊外 型紳士服専門店という名称は,今後「ディスカウント型紳士服専門店チェー ン」と呼ぶことの方が本質的特質から見てより適切ではないかと筆者は考え ている。

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ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析  〔25〕によれば,R Sは現在オーバーストアの状態になっており,価格競 争力牒刻化し(年問単価が5∼8%下落),青山商事・アオキインターナショ ナルの上位2社以外は,既存店売上げが前年割れに陥っている。ディスカウ ント型紳士服専門店チェーンは,成長の踊り場を迎えつつあり,競争優位 (competitive advantage)を如何にして形成するか,新しい成長戦略をどう 立案するのか,という大きな戦略的課題をかかえていると思われる。

      〔灘1難〕

(付記)  本研究ノートは,「柳川研究室discussion paper No.10」としてまず執 筆され,1993年4月15日のゼミナールの時問に柳川ゼミの学生諸君と貴重な ディスカッション行ない,その後大幅な加筆修正を行い成立したものである。 貴重な意見を述べ,筆者の思考に刺激を与えてくれたゼミの学生諸君へ記し て感謝するものである。 (注1) この番組が,いかに大きな社会的インパクトを有したかは,日本百貨店協会がN   H Kに抗議文を送った点に象徴的に表れている。このことに関しては,〔26〕を参   照のこと。   〔26〕「百貨店・郊外型専門店の紳士服値比べ 誤った印象与えた 百貨店協,N      H Kに抗議文 「品質の違い触れず」「委託制を悪者扱い」」,日経流通新      聞,1993年2月25日。 (注2)危機感を持った百貨店各社は,相次いで郊外型紳士服のスーツとの品質の差を強   調した新聞広告を出してきた。このことに関しては,次を参照のこと。   〔27〕「百貨店各社  「紳士スーッ質が違います」」,日経流通新聞,1993年3月      25日。    日本百貨店協会の抗議に対しN H Kは1993年3月13日放映の「くらしの経済」冒   頭で,誤解を与えた部分について解説,陳謝した。このことに関しては,次を参照   のこと。   〔28〕「N H K,百貨店側に回答 紳士服の値段,本当に高いと「誤解与えた」      番組の冒頭,解説し陳謝」,日経流通新聞,1993年3月16日。 (注3)平成不況下における消費不振と郊外型専門店に客を奪われて「都市型衣料専門店」

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榔川 高行   が業績悪化している。そのことを象徴的に示しているのが「タカキュー」の不振と   業績悪化である。最近のタカキューの業績とリストラクチャリングに関しては,    〔29〕,〔30〕, 〔31〕,〔32〕,〔33〕, 〔34〕を参照のこと。    タカキュー1は,1989年2月期に過去最高の経常利益87億円を計上して以来,一貫   して減益が続き,ピーク時11%であった売上高経常利益率は92年2月期はわずか1.   3%であった。売上高でも90年に青山商事に抜かれ,紳士服専門店のトップの座を   明け渡した(〔32〕)。1992年8月期に18億700万円の経常欠損(〔33〕),93年   2月期137億円の当期損失(〔34〕)であった。タカキューの業績悪化の要因は,   ①車社会の進展と住宅の郊外化と都心部の交通渋滞による店舗へのアクセスの悪化    (〔29〕),②都心部の地価高騰に伴う店舗の敷金・保証金・賃料の上昇による販   売問接コストの上昇(〔29〕,〔30〕),③人手不足を背景にした人件費上昇によ   る販売コストの上昇(〔29〕),④不良在庫の増大(〔34〕),⑤財テクの失敗    (〔29〕,〔34〕)であった。リストラクチャリングは,①不採算店の閉店(〔30〕,    〔31〕),②郊外型店舗の新規出店(〔31〕),③商品ブランドの絞り込み(〔31〕),   ④本部人員の削減(〔33〕),⑤ジャスコとの戦略提携(〔32〕,〔33〕),⑥買   い取りと大量発注(〔30〕)とであった。    〔29〕「企業戦略 タカキュー 郊外ヘシフト 採算回復狙う 都心の小型店舗不      振響く」,日本経済新聞,1991年6月16日。    〔30〕「低迷続くタカキュー 復活かけて『荒療治』 ブランド半減,明確化 不      採算店,92年度も51店閉鎖」,日経流通新聞,1992年3月3日。    〔31〕「企業戦略 タカキュー 収益力の向上へ 店舗・商品見直し 郊外店重視,      D B縮小も」,日本経済新聞,1992年6月1日。    〔32〕「タカキューとジャスコ提携 郊外S C時代へ相乗り 再建狙い戦略同盟      出口社長,若さ生かし決断」,日経流通新聞,1992年8月29日・    〔33〕「検証企業ストラテジー タカキュー 出資受けメルス金利軽減 チェーン      運営習得がカギ」,日経流通新聞,1992年12月8日。    〔34〕「今2月期137億円赤字 タカキュー 再建へ経営に大ナタ 不良在庫173億      円処分,特金120億円解約 低コスト出店展開J,日本経済新聞,1993年2      月16日。 (注4) ファッションを中心とする衣料は,百貨店売上げの4割を占める主力商品である   が,1993年3月現在紳士服や輸入ブランド衣料の売上げが特に不振である。その理   由は百貨店価格に対する「不信感」の強まりである。このことに関しては〔2〕を   参照のこと。    同記事によれば,売れ行き不振の中でも百貨店は,「アウトレットストア」や    「オフプライスストア」又,青山商事のような「製造型小売業(SPA)」等のディ   スカウント店は脅威とはならないと見ているというアンケート結果がでている。    大手アパレルメーカー,オンワード樫山と青山商事の間で,樫山が青山のプライ

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ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析    ベートブランド商品の取引を中止したことから激しく対立し,郊外型紳士服専門店    と大手メーカーとの緊張関係が生じつつある。その背景には,メーカーに対する百   貨店の無言の圧力があるとも言われている。このことに関しては,次を参照のこと。    〔35〕「オンワード樫山 青山商事に警告 紳士スーッ半値販売に抗議」,日本経      済新聞,1993年3月18日。    〔36〕「樫山対青山商事火を噴く“商法”対立 取引中止VS「半額スーッ」」,       日経流通新聞,1993年3月23日。    〔37〕「樫山・青山商事の対立関連業界に波紋 紳士服流通の特殊事情を露呈」,       日経流通新聞,1993年3月25日。    〔38〕「マーケティング オンワード樫山 紳士服量販店と取引中止 百貨店に値      頃ブランド」,『日経ビジネス』,1993年4月19日号,38−41ぺ一ジ。    〔39〕「産業 青山商事vsオンワード樫山のスーツ戦争 樫山をダシにした青山      の安売り哲学」,『週刊東洋経済』1993年4月17日号,74−75ページ。 (注5)郊外型紳士服専門店の粗利益率の高さは,他のロードサイドビジネスと比   べても極立っている。次の表を参照のこと。     主要ロードサイドビジネスの業容比較(91年度)(1社あたり)   (百万円,%) H C大手8社 紳士服大手3社 カr洋品大手2社 売    上    高 48,491(100.0) 77,894(100.0) 90,786(100.O) 粗         利 11,348(23.4) 37,676(48.4) 19,598(21.6) 主な費用 人  件   費 3,759(7.8) 7,202(9.2) 4.944(5.4)

広告宣伝費

995(2.1) 5.506(7.1) 1,145(1.3) 資   本  費 1,961(4.0) 5,510(7.1) 2,199(2.4) ネ ッ ト 金利 89(0.2) 4,150(13.0) 54(O.1) 経   常   利  益 1,808(3.7) 14,275(18.3) 5,730(6.3) 在 庫 回 転 率  (回) 9.5 5.0 21.42 売場面積/1店舗(坪) 337 122 110 売上高/1店舗(百万円/店舗) 924 353 480 売 場 効 率(百万円/坪) 2.5 2.9 4.2       (注)( )内は対売上比:%,資本費は減価償却費と地代家賃を集計。        (各社の有価証券報告書を集計)        (出所:〔40〕)    〔40〕「産業のトピックス ホームセンター∼成熟色強まり2極分化が進展」,三      和銀行,『経済月報』,1993年4月号,第674号,14−15ページ。 (注6) 「ドメイン」或いは「戦略ドメイン」を,顧客層(who),二一ズ(what),独自   能力(how)の3次元で考察することに関しては,次を参照のこと。    〔41〕嶋口充輝,1984年,『戦略的マーケティングの論理』,誠文堂新光社,230−      232ページ。    〔42〕嶋口充輝,1986年,『統合マーケティング』,日本経済新聞社,73−88ペー       ジ。

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柳川 高行    〔46〕嶋口充輝・石井淳蔵,1987年, 『現代マーケティング』,有斐閣,197−206      ページ。 (注7)委託販売制は,百貨店側にとってはリスクなしで幅広い品揃えができるというメ    リットのある半面,アパレルメーカーが「売場情報」を独占して商品企画力を高め,    「価格決定権」を握ることを生み出してきた。大手アパレルは,派遣店員の人件費    と返品リスクを予め織り込んで価格決定を行ない,売上高営業利益率は平均7∼8    %と大手百貨店(2,3%)をはるかに上廻っている。このことに関しては,〔44〕    を参照のこと。    〔44〕「利益改善 百貨店の挑戦く上> 買い取りへ取引形態変更 価格決定権を      奪回」,日本経済新聞,1993年3月18日。    委託販売制のメリットについて,伊藤元重が〔45〕において次のように指摘して   いる。書店の場合,返品制のお陰で書籍が店頭在庫として消費者の目に触れる所に   商品を置けるというメリットがある。百貨店の場合にも100万種以上の商品があり   その商品全てにリスクを負うのは不可能であり,問屋又メーカーがリスクを分担す   るのが経済的にも合理的なのであると述べている。    〔45〕『異説・日本経済 通説の誤謬を撃つ』,1992年,日本経済新聞社,「11日      本の流通機構,実は効率的」,200−218ページ。 (注8) 住友銀行調査〔46〕によれば,百貨店の仕入方法は,所有権が商品納入時に百貨   店に移るか否かによって「買取仕入」と「売上仕入(消化仕入)」とに分かれ,下図   のように分類している。衣料品は買収仕入に分類されているが,特徴の箇所の説明   にあるように,実質的には売れ残りは返品されると考えられる。

       百貨店の仕入れ方法

種 類 特         徴 仕入総額に占める割合 取扱い商品 百貨店のマー ジン率 買取仕入 商品が問屋から百貨店に納入された際,その所有権が 衣料品,身の回 百貨店に移る(すなわち,百貨店が買取る)仕入形態。 り品,家庭用品 売れ残りのリスクは基本的に百貨店が負うが,当初の 5∼7割 等 約定が曖昧なものが多く,売れ残った商品が問屋メー カーに返品されるケースも少なくない。 売上仕入 商品仕入売上げが実現した時点で計上する仕入形態。 食料品,衣料品 硝化仕入) したがって百貨店側には在庫負担は発生しない。商品 ¢晦外ブランド, 管理や企画販売は全て問屋が行う。 3∼5割 DCブランド, 高級家具,絵画, 化粧品等 小 (資料)業界各社からのヒアリング    〔46〕「百貨店業界の近況」,金丸宗男稿,住友銀行,『経済月報』,第396号,      1992年11・12月号,17−46ページ。 (注9) メーカー・問屋に依存した「委託販売制」から部分的に脱却し,「自主マーチャ

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       ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析    ンダイジング」,「自主編集売り場の構築」といったキーワードで示されるように   販売のマネジメントとリスクマネジメントを百貨店が担おうという動きが現在少し    ずつ進行中である。このことに関しては,〔44〕の他に次を参照のこと。    〔47〕「特集百貨店 暖簾商法の綻び」,『日経ビジネス』,1991年9月2日号,      12−25ページ。    〔48〕「編集長インタビュー 山中鎮氏〔東武百貨店社長〕 ダメな会社ほど後方      が強い 商人感覚忘れず現場に活路を」,『日経ビジネス』,1992年5月12       日号,68−71ページ。    〔49〕「海図なき巨艦時代 東武百の船出4 自社販売に明暗」,日経流通新聞,      1992年7月2日。    〔50〕「リストラ元年 14 小田急百 自主編集売り場を拡張」,日経流通新聞,      1992年12月17日。 (注10) 委託販売制を前提とする百貨店における売れ残り商品(店頭の余剰在庫)は市場    に再び出廻ることは殆どなく,アパレル側が引き取り処分する。このことに関して    は,次を参照のこと。    〔51〕「売れ筋Special和製「アウトレット」名前が先行」,日経流通新聞,1993      年4月17日。 引用・参照文献・資料リスト(引用順) 〔1〕「特集 N H Kが暴露した百貨店「紳士服」定価のカラクリ」,『週刊新潮』,19    93年2月18日号,134−137ページ。 〔2〕「百貨店が危ない 消費不況直撃,売り上げ急減 紳士服,価格不振に揺らぐ」, ●    日経流通新聞,1993年3月16日。 〔3〕「紳士スーッ3万8千円 三越 高島屋値下げで客寄せ 専門量販店に対抗」日本    経済新聞,1993年2月22日。 〔4〕「タカキュー 紳士服安売り店展開 在庫品,他店からも仕入れ」,日本経済新聞,    1992年10月28日。 〔5〕「2万円台スーッで巻き返し ダイエー,年内にも 中国で委託生産安売り店に対    抗」,日本経済新聞,1993年3月31日。 〔6〕「紳士服戦争火ぶた切る 青山商事・アオキ,郊外で出店攻勢 全国制覇めざし激    突」,日経流通新聞,1990年11月13日。 〔7〕「郊外型紳士服店 A A戦争が激化 青山商事 アオキ 相手地盤に攻勢」,日経    流通新聞,1991年5月31日。 〔8〕宇佐川恵太郎 1992年,「選別が始まる郊外型専門店」,三井信託銀行調査部,    『調査通信』,Vol.108,1992年4月号,23−37ページ。 〔9〕渡辺淑乃,1990年,「産業動向 ロードサイド業界」,新日本証券,『証券調査』

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柳川 高行   1990年8月号,13−22ページ。 〔10〕『活況見せるロードサイドビジネスー郊外型店舗集積実態調査報告書一』,財団法   人茨城県中小企業振興公社 中小企業情報センター,!992年3月。 〔11〕日本興業銀行調査部・産業調査部,「競合の時代迎えるロードサイド紳士服ビジネ   ス」,『I B J』,1991年12月号,34−49ページ。 〔12〕「Industry Report急拡大を続ける郊外型紳士服専門店」,『NOMURA SEARCH』,   1991年2月号,34−36ページ。 〔13〕「郊外型紳士服専門店の現状と展望一優勝劣敗の時代近づく県内ロードサイドエリ   アの紳士服専門店一」,群馬経済研究所,『調査月報』,1992年3月号,14−27ペ   ージ。 〔15〕「企業研究 青山商事“危うさ”はらむ高収益」,日経流通新聞,1992年1月21日。 〔16〕「特集価格破壊の衝撃 カテゴリーキラーが生産も変える」,『日経ビジネス』,   1993年3月22日号,10−24ページ。 〔17〕「百貨店に消費者そっぽ 魅力回復手探り 価格決定権なく限界も」,日本経済新   聞,1993年3月17日。 〔18〕「百貨店売上高3月,最大の11.4%減 東京地区 春物衣料振るわず」,日本経済   新聞,1993年4月15日。 〔19〕「Up−and−coming Company青山商事」,野村総合研究所,『NOMURA SEARCH』,   1992年10月号,24−27ページ。 〔20〕「戦略研究 青山商事」,『日経情報ストラテジー』,1993年1月号,70−74ペー   ジ。 〔21〕「新規上場企業紹介 青山商事株式会社」,東京証券取引所調査部, 『証券』,19   91年2月号,61−67ページ。 〔22〕「紳士服安売り店 郊外型返上都心に迫る 低価格人気追い風」,日本経済新聞夕   刊,1992年6月1日。 〔23〕「変わる消費 安売り店躍進 上」,日本経済新聞,1993年1月26日。 〔24〕「マーケティング 青山商事 飽和の郊外紳士服店都心出店が大当たり」,『日経   ビジネス』,1992年12月14日号,43−45ページ。 〔25〕「業界研究 拡大続けるロードサイドビジネスー淘汰期迎える紳士服専門店一」,   先久隆三稿,日興リサーチセンター, 『投資月報』,1992年12月号,Vo1.43,No・   12,28−39ページ。 〔26〕「百貨店・郊外型紳士服専門店の紳士服値比べ 誤った印象与えた 百貨店協,N   H Kに抗議文 「品質の違い触れず」「委託制を悪者扱い」」,日経流通新聞,19   93年2,月25日。 〔27〕「百貨店各社 「紳士スーツ質が違います」」,日経流通新聞,1993年3月25日。 〔28〕「N H K,百貨店側に回答 紳士服の値段,不当に高いと「誤解与えた」 番組の   冒頭,解説し陳謝」,日経流通新聞,1993年3月6日。

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      ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析 〔29〕「企業戦略タカキュー郊外ヘシフト採算回復狙う 都心の小型店舗不振響く」,   日本経済新聞,1991年6月16日。 〔30〕「低迷続くタカキュー 復活かけて『荒療治』 ブランド半減,明確化 不採算店,   92年度も51店閉鎖」,日経流通新聞,1992年3月3日。 〔31〕「企業戦略 タカキュー 収益力の向上へ 店舗・商品見直し 郊外店重視,D B   縮小も」,日本経済新聞,1992年6月1日。 〔32〕「タカキューとジャスコ提携 郊外S C時代へ相乗り 再建狙い戦略同盟 出口社   長,若さ生かし決断」,日経流通新聞,1992年8月29日。 〔33〕「検証企業ストラテジー タカキュー 出資受けメルス金利軽減 チェーン運営習   得がカギ」,日経流通新聞,1992年12月8日。 〔34〕「今2月期137億円赤字 タカキュー 再建へ経営に大ナタ 不良在庫173億円処分,   特金120億円解約 低コスト出店展開」,日本経済新聞,1993年2月16日。 〔35〕「オンワード樫山 青山商事に警告 紳士スーツ半値販売に抗議」,日本経済新聞,   1993年3月18日。 〔36〕「樫山対青山商事火を噴く“商法”対立 取引中止VS「半額スーッ」」,日経流   通新聞,1993年3月23日。 〔37〕「樫山・青山商事の対立関連業界に波紋 紳士服流通の特殊事情を露呈」,日経流   通新聞,1993年3月25日。 〔38〕「マーケティング オンワード樫山 紳士服量販店と取引中止 百貨店に値頃ブラ   ンド」,『日経ビジネス』,1993年4月19日号,38−41ぺ一ジ。 〔39〕「産業 青山商事vsオンワード樫山のスーツ戦争 樫山をダシにした青山の安売り   哲学」,『週刊東洋経済』1993年4月17日号,74−75ページ。 〔40〕「産業のトピックス ホームセンター∼成熟色強まり2極分化が進展」,三和銀行,    『経済月報』,1993年4月号,第674号,14−15ページ。 〔41〕嶋口充輝,1984年,『戦略的マーケティングの論理』,誠文堂新光社,230−232ペ   ージ。 〔42〕嶋口充輝,1986年,『統合マーケティング』,日本経済新聞社,73−88ページ。 〔43〕嶋口充輝・石井淳蔵,1987年,『現代マーケティング』,有斐閣,197−206ページ。 〔44〕「利益改善 百貨店の挑戦く上> 買い取りへ取引形態変更 価格決定権を奪回」,   日本経済新聞,1993年3月18日。 〔45〕『異説・日本経済 通説の誤謬を撃つ』,1992年,日本経済新聞社,「11日本の流   通機構,実は効率的」,200−218ページ。 〔46〕「百貨店業界の近況」,金丸宗男稿,住友銀行, 『経済月報』,第396号,1992年   11・12月号,17−46ページ。 〔47〕「特集百貨店 暖簾商法の綻び」,『日経ビジネス』,1991年9月2日号,12−25   ペーンo 〔48〕「編集長インタビュー 山中鎭氏〔東武百貨店社長〕 ダメな会社ほど後方が強い

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柳川 高行   商人感覚忘れず現場に活路を」, 『日経ビジネス』,1992年5月12日号,68−71ペ   ージ。 〔49〕「海図なき巨艦時代 東武百の船出4 自社販売に明暗」,日経流通新聞,1992年   7月2日。 〔50〕「リストラ元年 14 小田急百 自主編集売り場を拡張」,日経流通新聞,1992年   12月17日。 〔51〕「売れ筋Speciai和製「アウトレット」名前が先行」,日経流通新聞,1993年4   月17日。

5、補論 事例研究 株式会社ゼビオ

5−1.間題設定

 福島県郡山市に本拠地を置く東証二部上場の企業,株式会社ゼビオは,紳 士服専門店の第4位の売上高を有しているが,紳士服市場の成熟化に対応し 積極的な事業構造の変革,いわゆるリストラクチャリングを本格的に行なっ ている。本補論では,ゼビオにおけるリストラクチャリングを取り上げ,ディ スカウント型紳士服専門店チェーンの成長戦略の一事例として分析すること をその狙いとしている。

5−2.企業概況

 ゼビオの会社概要,沿革,店舗は次の通りである(〔1〕)(平成4年12 月現在)。 (1)会社概要(平成4年9月現在) 社   名/ゼビオ株式会社      (XEBIO CO.,LTD。〉 本社所在地/〒963福島県郡山市朝日三丁目7番35号 暦0249(38)1111㈹ 創   業/昭和37年8月

会社設立/昭和48年7月5日

代表者/代表取締役社長諸橋廷蔵

資 本 金/85億9,279万円

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      ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析 事業内容/紳士服,婦人服,スポーッ洋品・用具,雑貨の販売 従業員/1,604名(正社員720名・パート社員884名) 平均年令/25.8歳(男性28.0歳・女性22.9歳〉 取引銀行/富士銀行・福島銀行・東邦銀行 売 上 高/489億2,100万円(92年3月期) 財務指標/92年3月期       経常利益…………・…一・55億7,700万円       純利益………・・…・…26億2,829万円       流動比率・一………・・……・・149.8%       固定比率……・・…………・・…・・… 50。7%       自己資本比率……・…………・・… 53.2%       使用総資本経常利益率…・・……・10.4%

店舗/149店舗

役 員/常務取締役・経営管理室長・…   常務取締役・総務部長…・・………・・…・   取締役・ゼビー事業本部長・……   取締役・メンズ事業本部長・…………・   取締役・スポーッ事業本部長…   取締役・営業企画部長…・………・   取締役・店舗開発部長………   取締役・本宮流通センター所長…   常勤監査役………・……・・・……・…   監査役・………り・…・………   監査役…・・…一………。θ…の……’…●  革(平成4年12月現在〉  山下 依馬 佐藤 ・杉山 境田 ・蛭田

光明信春雄雄

忠宏隆泰俊正

       大和田美明       …荒川二三男       ・・黒子  正        羽根田憲一        ・・…・大場 隆雄 (2〉沿 1973年7月/株式会社サンキョウの経営する6店舗のすべての営業の権利義       務一切,主たる資産および負債を譲り受け,株式会社サンスー       ツを設立。

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柳川 高行      辺 1979年8月/本社を福島県郡山市に移転すると同時に称号を株式会社サンキ      ョウに変更 1979年11月/福島市にファッション&スポーツをテーマとした初の大型店を      開店。 1983年11月/郊外型スポーッ店のトップスポーツ並木店を開設。 1984年10月/郊外型メンズ店のサンキョウ安積店を開設。 1985年11月/郊外型カジュアル単独店のメンズキャパ桑野店を開設。 1986年12月/メンズカジュアルとレディスカジュアルを複合したエブリデイ      若松店を開設。 1987年11月/C I導入にともない社名をゼビオ株式会社と変更。同時に店名      を,従来のサンキョウはゼビオ(複合大型店)とゼビオメンズ,      トップスポーツはゼビオスポーツ,エブリデイをセビーと改称      した。 1988年4月/東京店頭市場に株式公開。 1988年7月/福島県郡山市朝日三丁目7番35号に新本社を竣工。同所に本店      を移転。 1988年12月/北陸3県(富山県,石川県,福井県)に進出。 1989年4月/群馬県藤岡市,伊勢崎市に店舗開設。店舗網は13県に拡大。 1990年5月/東京証券取引所・市場二部に株式上場。 1991年11月/北海道札幌市厚別にメンズ・カジュアル・スポーッの大型複合      店開設。 1992年10月/北海道旭川市・函館市に大型複合店開設。 1992年12月/宮城県仙台に1フロアー1,000坪の大型複合店開設。 (3) 店舗類型と店舗数 a)紳士服専門店(XEBIO MEN’S)  郡山市朝店他福島県内は12店,北海道2店,岩手県3店,山形県1店,宮

城県8店,茨城県2店,栃木県2店,新潟県4店,富山県2店,合計36店

b)紳士服・カジュアル衣料複合店(複合店)

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ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析

 福島県1店,北海道3店,宮城県1店,山形県1店,合計6店

c)カジュアル衣料店(XEBY)  郡山市並木店他福島県内9店,北海道1店,青森県10店,岩手県8店,秋 田県8店,宮城県5県,山形県6店,茨城県1店,栃木県2店,群馬県2店, 新潟県14店,富山県2店,石川県2店,福井県2店,合計72店 d)スポーッ洋品店(XEBIO SPORTS〉  郡山市並木店他福島県内9店,北海道5店,青森県1店,岩手県3店,秋 田県2店,宮城県4県,山形県4店,茨城県1店,新潟県7店,群馬県2店, 石川県2店,長野県2店,合計42店 5−3.リスクライチャリングと経営戦略  企業の本業部門が成長率の鈍化を迎え,当該事業市場が「成熟化(maturi− ty〉」した場合に,企業は「脱成熟化(de−maturity)」を目指し自社の事業 構造の意識的組み替えを意味する「リストラクチャリング(restructuring)」 を遂行することが1980年代の日本企業に共通に見られる現象となった。  リストラクチャリングの具体的内容は,①本業部門の再活性化及び,②新 事業の創造のいずれか一方或いは両者の同時遂行であった。本業部門の再活 性化の典型的成功事例はアサヒビールのスーパードライによるドライビール 市場の創造であった(〔2〕,〔3〕,〔4〕,〔5〕)。新事業創造の典 型的成功事例はヤマト運輸による宅配便市場の創造であった(〔6〕, 〔7〕, 〔8〕,)。本業部門の再活性化及び新事業創造の同時的遂行における典型 的成功事例は,腕時計・産業用機器・情報用機器・電子機器の総合メーカー へと変身をしたシチズン時計がある(〔9〕,〔10〕,〔11〕)。  リスクラクチャリングのシナリオこそが経営戦略であり,経営戦略の具体 的内容は,①戦略ドメインの再定義,②経営資源の複数事業間の再配分と事 業毎の経営資源の蓄積,および③個別事業毎の競争優位の形成とその合成体 としての企業の競争優位の形成,の三者から成りたっている。

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柳川 高行 5−4.ゼビオのリストラクチャリングと経営戦略  現ゼビオ社長諸橋廷蔵氏は,1962年(昭和32年)に福島県いわき市に月賦 式紳士服店「サンキョウ」を創業し,1973年に「サンスーツ」を設立し,79 年に本社を福島県郡山市に移し,89年C Iを導入し社名を「ゼビオ」に変更 し,現在に至っている(〔1〕,  ゼビオの業績推移は右図の通り であり,紳士服の売上高構成比は 23%(92年3月期〉に過ぎなくな り,スポーツ洋品・用具のそれは 35%,カジュアル衣料が42%にま で成長しており,ゼビオを「紳士 服専門店」と呼ぶのは不適切な事 業構成となっている(〔12〕, 〔13〕)。  ゼビオのリストラクチャリング の為の経営戦略は,本業部門であっ た紳士服部門を相対的に縮小し, カジュアル衣料・スポーッ用品と いう新事業部門に注力していくこ 〔15〕)。 100 75

0

5

25 %  0 14 12 % 10 ゼビオの業績推移 部門別売上高推移 刀ジュアル衣料 スポーツ田 ︿ビジネス衣料

売上高経常利益率推移 スポーツ用品・用具 ︸ ﹁その他  88/889!890/891/392/3 (注)91年3月期は決算期変更のため7カ月決算

(出所:〔12〕) とであった。紳士服縮小を図った理由は,①オーバーストア・売り場面積過 剰現象(〔14〕),②商品回転率の低下。昭和60年代は年問3.5から4回転 していたが(〔14〕),92年3月期で年問2回転半で(〔2〕),相当量の 持ち越し在庫がでるようになっている(〔14〕)。③回転差資金がまるで出 る状況ではなくマイナスになりかねない状況である(〔12〕, 〔14〕),と いった紳士服の事業構造の認識があったからである。  リストラクチャリングの象徴的行動は,1992年12月9日北海道旭川市に出 店した,国内最大級のスポーツ専門店「スーパースポーッゼビオ」であった (〔12〕,〔13〕)。これまでの「ゼビオスポーッ」の約5倍の2,480㎡の

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       ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析 売場に,ゴルフ・スキー・野球・サッカーなど主要スポーッ用品とカジュア ル衣料約2万点の品揃えがなされている(〔12〕)。先行しているスポーツ 専門店アルペン(240店舗,91年6月期売上高粗利益率41.4%)とヴィクト リア(136店舗,91年5月期売上高粗利益率38.1%)(〔12〕)との企業問 競争に勝ち抜く「競争優位(competitive advantage)の形成」は,玩具専門 店チェーン米国トイザラスの方法を踏襲する「ディスカウント志向」である (〔2〕〉。ディスカウント志向は,①低価格販売を行い,②粗利益率の低 下する分(現在の36%を26%まで下げる)商品回転率を上げることによりカ バーし,③販売管理費を削減する,という3つの戦略によって具体化される。 (〔12〕,〔13〕)。  商品の低価格販売を可能にする方法として,スポーツ用品の製造子会社カ イザーをスタートさせ,商品全体の30%までをカイザーから仕入れる計画で ある。これは川下の小売業が川上の製造機能を自社内に取り込む「後方統合 (backward integration〉」戦略であり,ストアブランド商品の開発を意味し ていた。さらに10月から「スーパーカード」を発行し,顧客を組織化し,同 カードを来店時に提示すれば一部商品を1割程度値引きしていくことにして いる(〔12〕, 〔13〕)Q  製造機能の取り込みと,スーパーカードによる値引き販売と今後の多店舗 化による一層の商品仕入れ価格の引き下げにより,商品回転率を可能な限り 高め粗利益の低下分をカバーする行動が目指されていると言えよう。商品回 転率を高めるマネジメントの仕組みとして,スーパスポーッゼビオ店ではメー カー・問屋との「オンライン情報ネットワーク」を構築し,リアルタイムで 商品供給元に自社製品の売れ行きが分かるようにした(〔12〕)。売れ残り の商品は店間移動等で対応し在庫の極小化を図り(〔12〕)それによって商 品回転率の向上が目指されている。  商品の低価格販売を可能にするもう一つの方法としては,販売管理費の組 織的削減がある。販売費の削減策としては,まず第一1に店舗を大型化し相対 的に少ない従業員により運営し人件費を切り下げることである。 (〔14〕)。

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柳川 高行 第二に販管費の削減策としては,先述した「スーパーカード」提示客の購買 歴を蓄積しダイレクトメールで効果的販促を行ない,チラシの配付回数を削 減することにより,粗利に占める従来の広告宣伝費の割合4%を2%に引き さげることが計画されている(〔12〕〉。  ゼビオのリストラクチャリングののシナリオとしての経営戦略の特質は. 次の3点に要約することができると思われる。 (1〉 紳士服小売店専業からかなり早い内から脱却し,カジュァル衣料品店   ゼビー,スポーッ用品・用具店ゼビオスポーツと紳士服店ゼビオメンズ   の3業態から成立している「複合経営」を目指していること。 (2)今後はスポーッ専門店を成長部門として育成していくという形で,今   後の経営資源の配分と蓄積の優先順位が明確に示されたこと。 (3) スポーツ専門店事業部門の競争優位の形成は,既存のスポーッ専門店   の「高収益・高コスト経営」に対し,ディスカウントと商品回転率の上   昇を目指す「低粗利・低コスト経営」をマネジメントシステムとして作   り上げることによって行なおうとしていること。 5−5.結  株式会社ゼビオは「脱紳士服専門店」を目指し,スポーツ専門店を中核と する「複合経営」を実施中であるが,そのようなリストラクチャリングを実 施せざ惹を得なかった理由に関しては,会社側の言う紳士服専門店のオーバ ストア状況と商品回転率の低下及び回転差資金の大幅な減少という説明の他 に,ゼビオ自身のかっての経営戦略にその要因を求めることが可能であると 思われる。  紳士服専門店チェーントップの青山商事の店舗数は92年3月末で351店舗 であり(〔16〕),ゼビオの紳士服店数は92年12月現在36店に過ぎない。野 村総研の調査によれば(〔17〕)1989年度の青山商事の売上高営業利益率は 20%であるのに対し,ゼビオの3種類の店舗の平均売上高営業利益率は12% に過ぎない。紳士服専門店に一点集中し多店舗化を目指した青山商事と,1985

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      ディスカウント型紳士服専門店チェーンの経営学的分析 年のカジュアル専門店と,1983年のスポーッ専門店開店以降,3種の事業に 経営資源を分散的に配分してきたゼビオのボートフォリオ・マネジメントの 差が,紳士服事業に関して大きな経営格差を生み出してきたものと解される。 より大きなリスクを負担し一業態へ集中投資を行ない「規模の経済」を追求 した青山商事と,リスクを分散する為に三業態に分散投資を行なってきたゼ ビオとでは,紳士服専門店の採算性に関して大きな格差が生じてきたと解さ れる。現在の所,青山商事の戦略的優位は否定しがたいが,長期的にどちら の選択が正しかったかは,今後の時間の経過を待たねばならない。

      ⊂灘脚離〕

引用・参照文献・資料(引用順) 〔1〕「XEBIO TIMES」,1993年1月1日,000001号,見開き12ページ。 〔2〕石山順也,1987年,『ドキュメント快進撃の軌跡 アサヒビールの挑戦』,日本能   率協会。 〔3〕『ポケット社史 アサヒビール』,1990年,経済界。 〔4〕「Busmess Outlookアサヒビール」,『NOMURA SEARCH』,1990年4月号,80−   89ページ。 〔5〕「インタビュー・樋口廣太郎 アサヒビールはなぜ大変身したのか」,『実業の日   本』,1989年9月1日号,24−27ページ。 〔6〕・柳川高行,1991年,「研究ノート ケーススタディー ヤマト運輸・宅急便一企業   者職能と新事業創造一」,『白鴎大学論集』,第5巻第2号,301−314ページ。 〔7〕小倉昌男,1986年,「わが社の経営戦略一ヤマト運輸株式会社」, (大阪工業会,   中堅企業研究会における1986年12月5日の講演にもとづいて吉原英樹氏(神戸大学)   がまとめたもの) 〔8〕都築幹彦,1991年,「クロネコヤマトの未来戦略一く宅急便>15年の歩みを踏まえ   て一」,社団法人流通問題研究会,『I D R研究資料』,砺113,31−58ページ。 〔9〕パンフレット, 『ThisisCITIZEN』。 〔10〕パンフレット, 『ThislsCITIZENPROFILE’92』。 〔11〕シチズン時計・シチズン商事調査,「腕時計産業およびシチズンの展望」,1992年   1月,全10ページ。 〔12〕「検証企業ストラテジー ゼビオ 「スポーツ」へ大転換」,日経流通新聞,1992

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椥川 高行    年12月20日。 〔13〕「企業戦略 ゼビオ スポーツ・カジュアル軸に」,日本経済新聞,1992年11月15    日。 〔14〕「インタビュー流通 ゼビオ社長 諸橋廷蔵氏 ㊤㊥㊦」,日経流通新聞,1992年    12月8,9,10日。 〔15〕「創業のころ ゼビオ社長 諸橋廷蔵氏」,日本経済新聞,1993年4月14日。 〔王6〕「Up−and−commg Company青山商事」,『NOMURA SEARCE』,1992年10月号,    24−27ぺ一ジ。 〔17〕「戦略研究 青山商事」,『日経情報ストラテジー』,1993年1月号,70−74ペー    ジ。

参照

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