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中国高齢者の生活保障制度の構築 (特集 新興諸国の高齢化と社会保障)

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中国高齢者の生活保障制度の構築 (特集 新興諸国

の高齢化と社会保障)

著者

沈 潔

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

188

ページ

8-11

発行年

2011-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004239

(2)

新興諸国の

高齢化と

社会保障

新興諸国の

高齢化と

社会保障

  日々激しい変化を続ける中国に おいて、高齢者問題はますます深 刻になっている。二〇〇九年末に は六〇歳以上の高齢者人口が一億 六七〇〇万人に達し、総人口の一 二 ・ 五 % を超えた。今後の中国は、 ﹁高齢化 ・ 老齢化 ・ 空巣化 ︵ コン チャ オ ホ ウ ァ ︶﹂ と い う ベ ク ト ル に 向 かって進んでいくと予測されてい る。   本稿では、中国の市場化改革と 高齢化および高齢者に置かれた状 況との相関関係を分析し、その背 景のもとで構築された高齢者生活 保 障 シ ス テ ム の 課 題 を 指 摘 す る。 また、市場化改革と共に、高齢者 政策決定のプロセスのなかで見ら れ た 多 元 主 義 的 な 側 面 を 議 論 す る。

一.

者の状況

  中国の﹁高齢化﹂について中国 老齢工作委員会が提示したデータ によると、二〇〇一∼二一〇〇年 までの一〇〇年間で高齢化は三つ のピーク期を迎える。第一のピー ク 期 は、 ﹁ 急 速 な 高 齢 化 段 階 ﹂ で ある。すなわち、二〇〇一∼二〇 二〇年までの間に、高齢者が毎年 およそ五九六万人ずつ増加し、二 〇二〇年には高齢者人口が二億四 八〇〇万人になる。第二のピーク 期は、 ﹁加速高齢化段階﹂である。 二〇二一∼二〇五〇年まで高齢者 が毎年六二〇万人ずつ増加し︵一 九六〇年代の第二次ベビーブーム の 影 響 ︶、 人 口 が 減 少 に 転 じ る 人 口減少社会に突入する。二〇三〇 年までに高齢者人口は二億七〇〇 〇万人に達し、〇∼一四歳の少年 人口と等しくなる。二〇五〇年に は 高 齢 者 人 口 は 四 億 人 を 超 え る。 第三のピーク期は﹁重度高齢化段 階﹂である。二〇五〇∼二一〇〇 年までの間に、高齢者は少年人口 の二倍にあたる四億三七〇〇万人 に増える。   こうした高齢化の主な要因とし て、一九五〇∼一九七〇年代まで の間に起こったベビーブーム増加 の一途をたどる人口を抑制するた め に 一 九 七 九 年 に 導 入 さ れ た 一 人っ子政策の影響が考えられる。   ﹁ 老 齢 化 ﹂ と は、 中 国 語 の 意 味 合いから解釈すれば、いわゆる八 〇歳以上の後期高齢者の増加を指 すこととなる。二〇〇九年の統計 によると八〇歳以上の高齢者は一 八九九万人に達し、六〇歳以上高 齢 者 人 口 の 一 一・ 四 % を 占 め る。 さらに中国老齢工作委員会の予測 で は、 ﹁ 重 度 高 齢 化 段 階 ﹂ に お け る 後 期 高 齢 者 の 占 め る 割 合 は 三 〇 % ま で に 拡 大 す る。 ﹁ 老 齢 化 ﹂ の傾向は、一九八〇年代以後、国 民生活水準の向上や医療の進歩に よって平均寿命が著しくのびたこ とと関連する。二〇〇九年末の時 点 で の 中 国 の 平 均 寿 命 は 七 三 歳、 また八〇歳以上の高齢者の要介護 率は約二〇 % で、今後、高齢者ケ アの問題は重要となってくる。   ま た、 ﹁ 空 巣 化 ﹂ と い う の は、 近年、中国の社会学者たちがよく 用いる用語である。いわゆる独り 暮らし、または老夫婦のみの世帯 の急増を意味する。現在、このよ うな高齢者世帯は高齢者がいる世 帯の五〇 % を超え、上海、北京な どの都市部はすでに七〇 % を超え たという。   ﹁ 空 巣 ﹂ 高 齢 者 世 帯 が 出 現 し 始 め たのは一九九〇年代初頭の都市部 で あ る が 、 そ の 後 、 都 市 化 と 核 家 族化の進行や農村での若者の出稼 ぎ に 伴 い 、﹁ 空 巣 ﹂ 高 齢 者 世 帯 の 急 増 が 注 目 さ れ る よ う に な っ た 。﹁ 空 巣﹂高齢者世帯を生み出した社会 的 な 原 因 は 、 子 ど も が 都 会 や 海 外 な ど に 出 稼 ぎ に で た こ と 、 経 済 の 急 速 な 発 展 に 伴 い 、 中 流 生 活 を 志 向する若い世代が住居を持つこと が 可 能 に な っ た こ と 、 高 齢 者 に 自 立 で き る 経 済 力 が 付 い た こ と に よ っ て 、 な る べ く 自 立 し て 子 ど も に負担をかけたくないという意識 が 芽 生 え た こ と 、 ま た 世 代 間 の 価 値 観 の 違 い か ら 、 三 世 代 同 居 が 難 し い こ と な ど が 挙 げ ら れ る 。

中国高齢者

生活保障制度

構築

(3)

二.

る課題

  高齢者の生活保障におけるさま ざまな課題のなかでは、高齢者を 対象とする社会保障制度が整備さ れていないという問題、そして高 齢者の貧困および格差問題に注目 を引いた。つまり著しい 経済発展の成果をいかに 高齢者福祉の推進に繋げ る か と い う 課 題 で あ る。 以下その問題の構造を分 析してみよう。 ⑴ 基礎養老年金制度構築 の課題   二 〇 〇 九 年 末 の 時 点 で 、 六 〇 歳 以 上 の 高 齢 者 人 口 は す で に 一 億 六 七 〇 〇 万 人 に 達 し て い る 。 し か し 、 基 礎 年 金 養 老 制 度 の 恩 恵 を 受 け る 高 齢 者 人 口 は 七 〇 〇 〇 万 人 に 足 ら ず 、 す な わ ち 約 九 〇 〇 〇 万 人 が 無 年 金 、 無 保 険の 状 況 に 置 か れ て い る 。   ここで基礎養老年金制 度の状況を事例にみてみ る。   都市部の基礎養老年金 制度の改革として一九九 七年七月、国務院は﹁関 于建立統一的企業職工基本養老保 険 制 度 的 決 定 ﹂︵ 企 業 職 員・ 労 働 者の統一的な基本養老保険制度の 確立に関する決定︶を公布し、 ﹁個 人口座への積立と賦課方式による 社会プールからの拠出 ︵基礎年金︶ の二本建てで構成された年金改革 案を都市部において全面的に導入 した。   その運用状況は図 1に示す通り である。年金加入者の推移を見る と、基礎養老年金制度を導入する 前の一九九五年では九五〇一万八 〇〇〇人であったが、一九九七年 七月にスタートした新しい年金制 度に企業が抵抗を示したため一九 九八年には一時的に八四七五万八 〇〇〇人に減少した。その後、政 策の調整によって年々増加し、二 〇〇〇年に一億四四七万五〇〇〇 人、二〇〇六年に一億四一三〇万 人、二〇〇八年に一億六五八七万 人にぼった。受給者数の増減は一 九 九 五 年 に 二 三 五 八 万 三 〇 〇 〇 人、一九九八年に一〇八六万六〇 〇〇人に激減した。二〇〇〇年に 三 三 八 〇 万 六 〇 〇 〇 人 に 急 増 し、 二〇〇六年に四六三五万人、二〇 〇八年に五三〇三万六〇〇〇人に なった。   一 方 、 高 齢 者 人口 の 約 七 割 を 占 め る 農 村 部 で は 、 公 的 年 金 制 度 は ほ と ん ど 整 備 さ れ て い な い 。 一 九 八 六 年か ら 農 村 養 老 保 険 制 度 の 導 入 に 関 す る 検 討 が 始 ま り 、 一 九 九 一 年 に ﹁ 県 級 農 村 社 会 養 老 保 険 基 本 方 案 ﹂ が 発 布 さ れ る と 普 及 段 階 に 入 っ た 。 し か し 、 保 険 料 徴 収 に 対 す る 抵 抗 感 が 強 く 、 加 入 者 の 伸 び に 悩 ん だ 。 一 方 、 経 済 水 準 が 比 較 的 高 い 農 村 部 で は 、 郷 鎮 企 業 従 業 者 も 含 め た 任 意 加 入 、 積 立 方 式 に よ る 農 村 養 老 保 険 の 加 入 率 が上 が る 傾 向 も あ る 。 表 1の よ う に 一 九 九 七 年 の ピ ー ク 期に 全 国 二 九 〇 〇 県 の う ち 二 一 二 三 県 に 同 制 度 が 導 入 さ れ 、 加 入 者 は そ の 時 点で 八 二 〇 〇 万 人 に の ぼ っ た 。 そ の 後 、 脱 退 者 が 大 量 に 出 現 し 、 二 〇 〇 八 年 に 再 び 増 加し た と い う 曲 折 が あ る 。 一 方 、 年 金 受 給 者 数 が 二 〇 〇 七 年 以 後 、 急 増 し 、 二 〇 〇 九 年 末 に は 一 五 五 六 万 人 の 農 民 が 年 金 を 受 け る こ と が で き た 。   農村養老保険制度は、スタート した段階では個人納付保険料を柱 に、県、郷鎮の地方自治財政がそ れを主として補い、国家が一部負 担 す る と い う の が 原 則 で あ っ た。 しかし、長い間、国家財政は農村 養 老 保 険 向 け に 支 出 さ れ な か っ た。 再 分 配 機 能 を も っ て い な い、 自助努力が基本理念であった。   農村養老保険制度の普及のうえ で阻害となった要因は、ひとつめ は定期的な納付が困難な農民が多 いことで、これは定期的な現金収 入がないという理由による。二つ めの理由は農村からの出稼ぎ労働 者が年々増え、都市に残るか、故 郷に帰るかという不確定な要素が 多いため成り行きを見ながら決め る人が多いことである。   農村養老保険加入率低下の問題 を解決するために、二〇〇九年に 個 人 積 み 立 て を 加 え、 中 央 政 府、 地方自治体の負担で月五五元︵約 七〇〇円︶を支給する﹁農村基礎 表1 農村部における基礎養老年金加入者数の推移 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 年 金 加 入 者(万 人) 8,200 8,025 8,000 6,172 5,995 5,462 5,428 5,378 5,442 5,374 5,171 5,595 8,691 保 険 金 残 高(億 元) NA NA NA 196 216 233 259 285 310 354 412 499 681 年 金 受 給 者(万 人) NA NA NA NA NA NA 198 205 302 355 392 512 1,556 (出所)中華人民共和国人力資源和社会保障部「社会保障事業発展統計公報」より作成(http://w1.mohrss.gov.cn/gb/zwxx/node_5436.htm)。 年金加入者 年金受給者 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1998 1995 20,000 15,000 10,000 5,000 0 図1 都市部における職工基本養老年金加入者・受給者の推移 (出所)中国労働社会保障部編『労働と社会保障統計年鑑』各年より。

中国高齢者の生活保障制度の構築

(4)

二 二 七 四 万 八 〇 〇 〇 人 を 超 % を る と 警 鐘 を 鳴 ら し た。 ま た、 い こ と も 指 摘 さ れ る。 ︵ 中 国 貧 困 率 の 一 般 的 な 測 定 方 法 一 世 帯 平 均 所 得 の 三 〇 ∼ 三 以下にある家庭の割合を求め ︶ 最低生活保障ライン以下の高齢者 は都市部において約二〇 % 、農村 部においては二七 % を占める。つ まり高齢者の四人に一人は貧困者 となる。   高齢者に関する貧困問題のなか で、もうひとつ注目される現象は 女性高齢者の貧困問題である。た と え ば、 調 査 デ ー タ か ら 見 れ ば、 都市の男性の高齢者で貧困状態に ある人は六・三 % にすぎないのに 対し、女性の場合は二三・四 % で ある。農村でも貧困高齢者は、男 性 が 一 七・ 一 % で あ る の に 対 し、 女 性 は 二 〇・ 四 % に 達 し て い る。 ︵全国老齢工作委員会 [二〇〇四] 、 王徳文[二〇〇五] ︶   また、経済保障、健康、社会地 位などにおいても、女性が男性よ り不利な状況におかれている。   高齢者貧困および格差の要因に ついて研究者らはいくつかの視点 を提起している。   高 齢 者 の 貧 困 の 現 状 に つ い て、 つぎのようにまとめられる。現金 収入がない或いは少ないため、衣 食など最低限の生活が保障されて いないという絶対的貧困。医療保 障がないため、 大病、 難病にかかっ て 貧 困 に 落 ち る と い う﹁ 因 病 致 貧 ﹂。 住 宅 の 商 品 化 に よ っ て も た ら さ れ た﹁ 住 ま い の な い 貧 困 ﹂。 高 齢 者 差 別、 高 齢 者 虐 待 問 題 に よ っ て も た さ れ た 貧 困。 文 化 的、 精神的な支援の欠如による精神的 な貧困等である。中国の高齢者世 帯の貧困は、おもに社会保険制度 の不備や家族扶養文化の急速な崩 壊 に よ る と 指 摘 さ れ て い る。 ︵ 白 樺[二〇〇二] 、王徳文 [二〇〇五] ︶   また、その要因として以下の点 が指摘できる、第一に都市と農村 の間に存在する二重構造によって もたらされた農村地域高齢者の貧 困問題。第二に急速な産業構造改 革や社会構造改革のなかで、高齢 者が排除されて貧困生活に陥った こと。第三は経済発展を優先した 社会保障制度の改革により、生活 保障における新たな不平等が生じ たことである。

三.

政治体制的な要因

  中国における高齢化や高齢者問 題には、単なる人口高齢化、社会 構造変動の問題だけではなく、市 場経済改革や社会主義政治体制的 な要因などが関係する。   社会主義計画経済期の年金・医 療保険制度では、社会主義国家の 理念および国有制度との結びつき が強く、独自性が極めて強い。当 時の年金制度の特徴として以下の 三点を挙げることができる。第一 は保険料が個人納付なし、財政方 式が積立式ではなく、賦課式であ ること。それは、一種の企業・国 家保障制度とみられる。第二は養 老金の受給条件と給付水準は納付 し た 保 険 料 に よ る も の で は な く、 勤続年数と定年直前の標準賃金に よって決められたことである。国 に対する忠誠心、社会に対する貢 献 度 が ひ と つ の 基 準 と な っ て い た。第三は就職すれば自動的に保 険制度によってカバーされる点で ある。年金・医療保障において都 市部のカバー率は九〇 % 以上に確 保され極めて高い。給付が確定給 付型となっている。   ところが、市場経済化が進むな か、社会主義計画経済期の生活保 障制度はなり立たなくなった。一 九九〇年代に本格的に展開された 年金、医療保険制度の改革におい て保険料は、個人納付なしから政 労使三者の拠出による構成へと改 められた。納付は個人が給与の四 ∼八 % 、企業が給与の二〇 % を保 険者である政府に払い込む形式で ある。保険者である政府は、個人 負担の四∼八 % と合わせて、企業 負担の二〇 % 中の三 % を個人別の 個 人 口 座 に 積 み 立 て る。 そ し て、 残りの一七 % の企業負担金につい

(5)

て は 社 会 プ ー ル 基 金 に 積 み 立 て る。定年退職後、社会プール基金 から基本年金︵前年度当該地域月 収 入 の 二 〇 % ︶、 個 人 口 座 か ら 上 乗せ分︵当該口座に積み立てた総 額の一二〇分の一︶を給付する。   同じ時期に新設された農村養老 保険制度も、個人口座の積立方式 を採択し、 個人の納付保険料と県、 郷鎮の補助金をすべて個人口座に 積み立てるという方式であった。   二〇〇〇年代初頭までの社会保 障制度の改革の特徴としては、国 家責任を縮小し、個人・市場の責 任 を 拡 大 し た こ と が 挙 げ ら れ る。 こうした市場経済システムのなか で社会保障の効率性や個人責任を 追求するあまり、社会保障制度に 公平性や統一性を欠くという問題 が 露 呈 し 始 め た。 ま た 医 療 改 革、 年 金 改 革 に 伴 い、 医 療 費 の 高 騰、 失業率の増加、高齢者の貧困など さ ま ざ ま な 社 会 問 題 が 立 ち 現 れ た。   一 方、 社 会 保 障 改 革 の 進 展 に よって中央トップにおける各利害 関 係 の 権 力 や 緊 張 関 係 が 顕 在 化 し、政策決定の過程で多元主義的 な 側 面 が 見 ら れ る よ う に な っ た。 特に二〇〇三年の S A RS 流行を 契機に、社会保障における国家責 任や社会的公正が重視しなければ ならないなどの言説が主流となっ た。その言説の主旨は、現在中国 が抱えている格差や貧困問題など の原因は行き過ぎた市場原理主義 にあり、公共サービス領域におけ る政府の関与は縮小させるべきで はなく、むしろ一層強化すべきで あるというものである。   それにつながる成果として、二 〇〇七年一〇月に開催された第一 七回全国代表大会の政府報告のな かで、城︵都市︶と郷︵農村︶を カバーする生活保障システムの構 築と整備が当面の重要課題として 取 り 上 げ ら れ た こ と が 挙 げ ら れ る。具体的には、基礎年金、基礎 医療、最低生活保障制度を充実さ せ な が ら、 社 会 保 険・ 社 会 救 済・ 社会福祉サービスを整備していく 仕組みであり、つまり﹁公正な分 配、都市・農村の格差の縮小、全 国民を視野においた社会保障の統 合 ﹂ を 目 指 す こ と で あ る。 ま た、 胡錦涛政権は二〇二〇年までに農 民 を 含 む 国 民 全 体 を 対 象 と す る ﹁ 普 恵 型 ﹂︵ 低 水 準 の 国 民 皆 医 療、 皆保険︶生活保障制度を実現する とも明言し、 経済成長に偏った ﹁経 済発展﹂から人間本位の﹁科学的 発展﹂へ転換しなければならない と強調し、 ﹁民生﹂ ︵国民生活︶施 政理念を体系的に論じた。   そ れ は 高 齢 者 保 障 生 活 制 度 の 構 築 の 過 程 で 、 国 家 責 任 体 制 か ら 個 人 責 任 体 制 へ と 移 行 し た 後 、 再 び 国 家 責 任 体 制 を 強 化 し た う え 、 国 家 ・ 社 会 ・ 個 人 責 任 の 連 携 体 制 へ 組 み 込 む と い う プ ロ セ ス が あ っ た 。

四.おわりに

  これまで見てきたように、高齢 者生活保障制度の構築の過程でい くつかの変容が起こってきたこと がわかる。   改革開放以来 、中国は政治体制 へ の 衝 撃 を 極 力 避 け 、 経 済 成 長 と い う目標を追求することで現行政治 体制の正統性を証明しようとして き た 。 し か し 、 生 存 権 と い う 理 念 が 抜 け 落 ち た 社 会 保 障 制 度 は 、 や は り 破 綻 を 免 れ な い 。 そ の よ う な 訳 で 、 政治に対し正面からの変革を迫る の で は な く 、 高 齢 者 生 活 と い う 身 近 なニーズや要望の面から変化を推 し 進 め て い っ た の で あ る 。   また、官僚主義的な政策決定の 過程が改められ、多元主義的な性 格が強まった点も注目される。以 前は、党と政府が一体化し、党に よる代行という政策決定体制が形 成されており、政策決定の過程は 上から下へと言ったトップダウン 方式で不透明だった。しかし二〇 〇三年の S A RS 危機以後のプロ セスでは、福祉政策の決定過程に 多 元 化 の 側 面 が 見 ら れ る よ う に なった。政治的パフォーマンスが 部分的に見られたが、一応、国民 による政策策定への関与を拒否で きなくなったと思われる。 ︵ し ん   け つ / 日 本 女 子 大 学   人 間 社会学部︶ ︽参考文献︾ ① 白 樺[ 二 〇 〇 二 ]﹁ 及 早 解 決 貧 困高齢者問題﹂ ︵﹃老齢問題研究﹄ 五期︶ 。 ② 郭 平 編[ 二 〇 〇 九 ]﹃ 二 〇 〇 六 年中国城郷老年人口状況追跡調 査数据分析﹄中国社会出版社。 ③ 全国老齢工作委員会 [二〇〇四] ﹁城郷貧困高齢者に関する調査﹂ ︵﹃老齢問題研究﹄一〇期︶ 。 ④ 全国老齢工作委員会編[二〇〇 九 ]﹃ 全 国 養 老 服 務 政 策 文 献 滙 編﹄華齢出版社。 ⑤ ︱ ︱[ 二 〇 〇 六 ]﹁ 中 国 人 口 老 齢 化 発 展 趨 勢 予 測 研 究 報 告 書 ﹂ 華齢出版社。 ⑥ 王 徳 文[ 二 〇 〇 五 ]﹁ 中 国 老 年 人 口 貧 困 的 数 量・ 成 因 与 政 策 ﹂ ︵﹃中国老齢研究﹄五期︶ 。 ⑦ 中 国 老 齢 科 学 研 究 中 心 [ 二 〇 〇 三 ]﹃ 中 国 城 郷 老 年 人 口 一 次 抽 様 調 査 数 据 分 析 ﹄ 中 国 標 準 出 版 社 。

中国高齢者の生活保障制度の構築

参照

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