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「働き方改革」?(PDF:504KB)

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日本労働研究雑誌 1

提 言

「働き方改革」?

唐津  博

 「働き方改革」が一大スローガンとなっている。 第 3 次安倍改造内閣には「働き方改革担当相」が 配置され,内閣官房に「働き方改革実現推進室」 が設置された。「働き方」は,人はなぜ働くのか, 働く目的は何か,ということと深く関わっている。 内閣府の「国民生活に関する世論調査」(平成 28 年度)によれば,「働く目的は何か」との問いに 対して,「お金を得るため」と答えた者の割合が 53.2%,「生きがいをみつけるため」が 19.9%, 「社会の一員として務めを果たすため」が 14.4%, 「自分の才能や能力を発揮するため」が 8.4%と なっている。この割合には,性別,年齢別,従業 上の地位別,職業別などで,それぞれ異なった特 徴があり,働くことは,働く者の属性や置かれた 立場等で,さまざまに意義づけられる。「働き方」 (どのような形態で,どのように働くか,雇用労働か, 独立自営か等)は,個々人の生活のあり方,生き 方や人生観を反映するものでもある。では,個々 人の自由な生き方が尊重されるはずの現在,なぜ, 「働き方改革」なのか。  「働き方改革」は,平成 19 年に公表された内閣 府「子どもと家庭を応援する日本」重点戦略検討 会議「働き方の改革分科会」における議論の整理 (中間報告案)に遡ることができる。すなわち,日 本社会は,少子化・高齢化が進行し,本格的な人 口減社会,労働力人口の減少という局面にあるが, 本格的な少子化に対処するためには,労働者個人 やその家族のニーズに対応した「働き方」を検 討・議論し,「働き方改革」の方向性や支援のあ り方を考えなければならない,と。その後,非正 規雇用労働者の増加とその経済的基盤の脆弱さ, 正規雇用労働者の負荷の高まり(過密労働化,長 時間労働),育児と職業生活の両立の困難さへの 社会的関心が高まり,人々の仕事と生活に関わる 多様なニーズを満たすワーク・ライフ・バランス による「働き方改革」を,ということになる。  「働き方」は働く側(大半は雇用労働者)の問題 のはずだが,働かせる側(企業)目線の「働き方 改革」はこうである。すなわち,経済のグローバ ル化によって厳しい国際競争にさらされている日 本企業が,今後も生き残るためには従来の長期雇 用モデルとは異なる,新たな雇用管理の仕組みを 講じる必要がある。ワーク・ライフ・バランス実 現のための制度や措置(短時間勤務・在宅勤務制度 や長時間労働の是正)は,企業にとってコストで はなく,組織の生産性向上,持続可能性に寄与す る先行投資なのであり,「働き方改革」は,企業 側に生産性,収益性の向上をもたらす,と。経済 成長を最優先の政策課題とする立場からも,「働 き方改革」にメリットがあるようである。  ところで,労使関係(雇用労働)を規制対象と する労働法は,個々人の「働き方」を規制するも のではない。例えば,労基法は,最低労働条件基 準を設定し,使用者を名宛人としてその遵守を義 務付ける。社会経済的に優位な立場にある使用者 による「働かせ方」を,一定基準に枠づけて労働 者の「働き方」の適正さを実現しようとしてい る。国家は,使用者による「働かせ方」を規律・ 制約するという限度で,私的関係である労使関係 に介入するのであり,労働者の「働き方」に干渉 するものではない。また,そのような干渉は否定 すべきものであろう。  政府が唱道する「働き方改革」が,「働かせ方」 の改革というのであれば,強く支持したい。現在 の雇用労働者の「働き方」が抱える問題,例えば 長時間労働や家庭生活を犠牲にした「働き方」 は,そもそも,労基法等の労働法規制を蔑ろにし てきた「働かせ方」(雇用管理のあり方)に起因す るものにほかならないからである。 (からつ・ひろし 中央大学法学部教授)

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