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[特集 今図書館を考える]韓国の大学図書館

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Academic year: 2021

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(1) 近畿大学産業理工学部かやのもり 21(2014). 河 知延. 私 が 韓 国 の 延 世 大 学( Yonsei University )に 入学したのは1990年のことであった。その頃. いてもパソコンを持ち込むことが許可されており、学生はフリーのWiFiを使い学習. 閲覧、編集、メディア製作や鑑賞までできるようになっている。いくつかの閲覧室にお. 取り組み、ネットサーフィングなど自由に使えるだけでなく、マルチメディアの資料の. メディア・センター(212席)にパソコンが配置されており、学術情報検索や課題の. 中心に位置し正門が広々と開けていた母校には. ~. 人前後の人数を収容し、液晶パネルとAV 機器. また、小グループによる学習を促す設備が充実していた点も印象的であった。いずれ. している様子が見られた。. はまだ学生運動が盛んであったために、ソウルの. 度々全国から学生が集まり、集会が開かれ、戦闘 警察(治安維持業務の補助のために民間人の兵役. も 擦 り ガ ラ ス の 壁 に 仕 切 ら れ、. が設置されたたブースであったが、中央図書館にはセミナー・ルーム( 部屋)が、学. 者から選抜、任用された警察)との衝突が繰り広 げられていた。大多数の一般の学生は催涙弾の強. 10. 術情報館には協業コーナー( ブース)、プレゼンテーション・ルーム( 部屋) 、セミ. 5. 烈な刺激臭をハンカチで防ぎ、衝突の様子を横目 で 見 な が ら い そ い そ と 大 学 校 舎に 入 っ て い く の が 年次になった1993年. 16. 17. 4. ナー・ルーム( 部屋)が設置されていた。夏休みであったにも関わらず使用者は多く、. DVDで勉強を. などで賑わって. ることは望まし い こ と で あ る。 書籍資料だけで なくマルチメ. 年ぶりに訪れてみた。最初に目についた点はIT 化がかなり進んだことであった。か. れらの活用や創. 実しており、そ. 2. 3. 7. ブースの中を覗くと、英語の教材で一緒に勉強をしているグループや資格講座のような. に文民政府が樹立したことでパッタリと学生運動. しているグルー. 日常的だったが、私が. は 無 く な り、 学 生 運 動 の 集 会 の 場 と な っ て い た. プ、課題の議論. 「 中 央 図 書 館( 写 真. 韓国の殆どの大学生は、学生生活の最も多くの時間を図書館で費やす。当時の図書館. しみながら、地下 階と屋上にある簡易食堂と喫茶コーナーで食事や休憩を取ることが 常であった。当時の図書館は大学生にとっての個人的な学習の場でもありコミュニケー ション、情報収集の場でもあったと言える。. つては警備員が壇上で一人ずつ学生証を目で確認していたが、現在ではチップが組み込. 出を促す図書館. ディア資料も充. まれた学生証で情報管理が一本化され、図書館の入退室や貸し出し、閲覧室やセミナー. のあり方は近畿. 本稿の執筆依頼を受け、近年の大学図書館の姿を目で確認しようと母校の図書館を. ルームの予約をすることができるようになっていた。パソコンやLANが使える環境も. 2. 大学でも取り入. 3. かなり充実していた。学部の建物ごとに設置されている電算室に加えて図書館において. 20. 制度が整ってい. いた。グループ. 時から閉館. は今とは違い閉架式であったために、殆どの学生は図書の閲覧のためでなく自主勉強の. 階までの全閲覧スペースは、図書館開館時間である. 学習を促す設備. 階から. ために図書館を利用していた。図書を閲覧するにはその検索や閲覧申請が煩わしく、レ. それでも. 時間である 時まで常に学生でいっぱいであり、専門科目や資格、国家試験の勉強に勤. 6. と利用しやすい. を行うグループ. 参 照 )」 の 周 り は 閲 覧 の 場. 3. 1. ポートや卒業研究といった特別な理由がない限り、閲覧はあまり利用していなかった。. 所取りをするための学生の列に取って代わった。. 経営ビジネス学科 6. れるべき課題で. 写真2 中央図書館と三星-延世学術情報館を連結するラウンジ 出所)筆者撮影. 韓国の大学図書館 6 1. も大幅にIT環境の整備をしていた。中央図書館とは豪華なラウンジ(写真 参照)で. 両方の建物共. あると考える。. 写真1 延世大学中央図書館と三星-延世学術情報館の外観 出所)延世大学校ホームページ(www.yonsei.ac.kr). 3 23. 繋がれ隣接している 階建ての「延世 ― 三星学術情報館」 (以下、学術情報館)には 階のインフォメーション・コモンズ(338席、写真 参照)、および、 階のマルチ. . (23). . [特集 今 図書館を考える].

(2) [特集 今 図書館を考える] . に、資料室に閲覧箇所が設置されているだけでなく、大部屋の閲覧室(個別の仕切りが. な文化体験・学習空間となることで知識情報活用能力を高め情報格差を解消させる場に. 館の機能として、国の知識インフラの核心的な基盤になること、および、国民の自発的. . 付いた机を配置、写真 参照)も充実している。中央図書館には一般閲覧室(992席). なることなどが改訂の目標とされた。この改訂によって大統領直轄の図書館情報政策委. 時間閲覧室(. され 年中利用できるなど利便性が向上されていると感じた。学部や専攻を超えた人脈. 場として活用されている点はかつてと変わらず、卒業生や一般にも開示(手続きが必要). 最も驚いた点は全面的な開架式に変わったことである。韓国の大学図書館の改革は、. という。自主勉強の場になっていた図書館を本来の「学問の広場」に変えることを目. 準比較研究によると、米国やカナダ、日本に比べて韓国の大学生の一人当たり蔵書数が少. の数値は総合計画後には改善されている。表 で分かるように、総蔵書数や購読中の雑誌. 10. 国. 利用者一人当たり 利用者一人当たり 利用者1千名当たり 総蔵書数(冊) 購読中雑誌数(種) 司書数(人) 米国 449.69 1.81 13.24 カナダ 256.27 1.23 9.29 豪州 40.34 2.49 5.45 日本 87.81 0.86 3.92 韓国 45.09 1.18 0.62. 出所)韓国教育学術情報院(2008)「国内外大学図書館統計現況分析および水準比較」 『韓国教育学術情報院研究資料』RMC2008-28、52頁(韓国語)。. 表2 韓国における大学図書館現況の変化. 費のうちに占める電子資料購入費の比率が急伸長しており、近年における電子資料への偏. 表1 国別大学図書館の現況(2008年度). 覧室や倉庫の管理者ではなく. 出所)韓国教育学術情報院(2008)「上掲書」、および、韓国教育学術情報院(2013) 「2013大学図書館統計分析資料集」 『韓国教育学術情報院研究報告』CR2013-16、各頁を基に作成。. 学問と教育活動を多様な資料 でサポートする資料専門家で あり利用教育を担当する教育 者であることを要求したので ある。このような動きが影響. 写真4 中央図書館の一般閲覧室 出所)筆者撮影. 数、司書数、および、在学生一人当たり資料購入費も順調に伸びている。また、資料購入. 20. 利用者一人当たり総蔵書数(冊) 45.09 利用者一人当たり購読中雑誌数(種) 1.18 利用者1千名当たり司書数(人) 0.62 在学生一人当たり資料購入費(千ウォン) 87 資料購入費に対する電子資料購入費率(%) 38.9. 全体 54 2 1.11 97 57.8. 2008. を及ぼし、韓国の大学図書館. 題化、および、完全開架制へ. は1990年代の半ばには主. と 急 速 に 改 革 し て い っ た が、 ちょうど私が大学を卒業した 後からであった。. 写真3 三星-延世学術情報館のインフォメーション・コモンズ 出所)延世大学校ホームページ(www.yonsei.ac.kr). 2. 2013 4年制大学 61 2 1.18 113. 区 分. 韓 国 は1963 年 に 初 め て「図書館法」が制定されて 以 来、 時 代 の 要 望 に 沿 っ て 複 数 回 の 改 訂 が 行 わ れ た が、 大きな転換点となったのは. 改訂であったとされる。図書. 2007年に施行された全面. . いる。彼らは大学図書館の本質的機能について持続的に問題を提起したことで、その. 2. 後の司書業務の開発やシステム化、主題化に影響を及ぼしたとされている。司書が閲. 標に掲げ、大学側を相手に. なく、米国の1/ にすぎず、司書数に至っては1/ 以下であることが分かる。これら. 表1で示すように、総合計画以前である2008年に実施された国内外大学図書館の水. になり、さらに、大学図書館の人的資源の力量が強化されたと評価されている。. 費などの量的な成長を遂げ、学術情報資源の流通体系を構築したことで共同活用が可能. 2013年までの間に実施された。それによって、大学図書館は図書所蔵数や資料購入. 1. 5. カ年の総合計画の基で第. 次 大 学 図 書 館 発 展 総 合 計 画 が 樹 立 さ れ、2009 年 か ら. 員会が発足し、 年ごとに図書館発展総合計画を樹立し施行すること、地域を代表する. や大学院閲覧室(386席)の他に、. 時間利用できる. 席)があり、. (24). 年間の啓蒙運動を展開していたことが記録として残って. 1980年代末に展開された釜山大学校の学生による図書館改革運動がその発端である. 5. 学術情報館にも一般閲覧室(766席)や法学図書館(282席)が設けられている。. 75. 図書館を設立し情報格差を解消することなどが盛り込まれた。これらの法改訂に伴い、. 24. それらの閲覧室はパソコンで空席の状況が確認でき予約ができる。図書館が自主勉強の. 24. 4. 作りの場にもなっているのだろう。. 1.

(3) 近畿大学産業理工学部かやのもり 21(2014). -国の予算でライセンスを獲得し大学の予算負担を軽減する.  学術情報Linked Data事業を拡大し、学術情報の開放と流通を強化. -開放型データを標準化した形態でオープン化、流通させ、ウェブ上で誰でも活用できるようにする。. 重傾向を窺い知ることができる。. 3.大学図書館施設及びデータのオープン化を促進し、地域社会教育・文化施設を拡大する。. カ年計画は成果と課題が分析され上記のような成果は高く評価された。.  優れた海外学術データベースの大学ライセンス購読を現22種から最大40種まで拡大. 次. 2.海外学術資源へのアクセスを拡大、地域別に外国学術誌支援センターを拡充し大学・研究者間の格差を解消する。. この第. -「主題専門司書の養成」課程等、年平均10個の教育課程の開設を支援する. しかし、先進国と比べると韓国内の大学図書館の学術情報インフラは不足しており、大.  現在運用中の外国学術誌支援センターを安定的・効率的に推進し共同利用を活性化. 学間の学術情報の格差による教育、研究環境の不均衡は是正されていないと指摘されて 次大学図書館総合計画. 年間で800億ウォンが投入される予定であるという。韓国の教育部. 4.大学図書館関連法の再改定および体系的な評価を通じて大学図書館の役割強化と成長基盤を造成する。. おり、これを受け、2014年から2018年を期間とする第 が発表された。 が発表した第 次 カ年計画は表 にまとめた通りである。大学の競争力は図書館の競 争力と直結していることを認識しながら長期的で持続的な図書館の支援を国のプロジェ クトとして実施するということである。表 で分かるように、今後の韓国の大学図書館 の方向性は、各図書館内で創造的な利用者を育成し学習を支援できるような設備やデー タベース、特に電子資料や海外の学術データベース、および、司書の役割を構築するこ と、国立大学や首都圏の私立大学に偏重している情報の格差を解消するために情報共有 のプラットフォームを構築すること、および、それらを評価できるような指標を策定し 持続的に分析、支援することへと進むだろうと予想される。また、大学のデータベース や図書館スペースを一般の人が活用できる体制も今後拡大する予定である。 先進国の図書館と足並みをそろえようとする取り組みは韓国では始まったばかりであ る。情報の意味合いが書籍ベースから非書籍を含めて拡大している現在において、大学 図書館の役割は、それらの情報を集積・管理し組織内で利用させるという一方向的で閉 鎖的なものから、様々な情報へのアクセスや共有を促すだけでなく、組織の境界を越え た利用者からの新たな情報創出を促すという、より主体的で双方向的、かつ、オープン なものへと移り変わろうとしているように感じる。.  大学図書館と外部、他の機関や図書館、起業、地域社会との連携を活性化し、共同利用を促進. 2. 中央図書館を見回ったあと、勉強の合間によく利用していた最上階の喫茶コーナーで. 出所)教育部韓国教育学術情報院(2014)「報道資料-第2次大学図書館5カ年( ’ 14~’ 18)総合計画発表」より作成. 3. 休憩を取った。かつてはトッポギ(韓国伝統の辛い餠)やキムパプ(韓国風海苔巻)を.  差別化された大学特性を考慮し、成果中心の大学図書館評価指標および基準を策定. 3. 食べていた場所が今ではお洒落なコーヒー専門店に姿が変わり、挽き立てコーヒーと.  大学図書館振興法の制定を促進する. 5. ケーキを楽しむ後輩達の姿が目に飛び込んできた。○○科目は難しいのか、△△教授の.  図書館利用者にカスタマイズ・サービスを提供できるように司書の力量を強化. 5 5. 2. 授業は面白いのかなど、いつの時代も変わらない彼らの話し声を背に帰路に着いた。. . 1.多様な複合文化空間として役割と機能を拡大し、大学内教育・研究機能の統合サービスを実現する。.  大学図書館が保有する情報資源と人的資源が効率的に学術研究支援機能を遂行できる体制の構築. (25). 1. 表3 韓国における第2次大学図書館5カ年総合計画の内容. -学習共有空間(ラーニングコモンズ)の支援等.  大学で生産される多様な知識情報資源を統合的に管理しサービスするシステムの構築. -機関レポジトリの開発(現在,国内大学の学位・学術論文はdCollectionを通じ総合管理、共同活用されており、講 師から公開の同意を得た講義資料はKOCWを通じて国民に無料で配信している。).

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参照

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