火山灰中アパタイトの植物機能活用による有効利用
著者
南條 正巳
火山灰申′アパタイトP植物機能活ffIJ・こよ卑有効利用′
(Utilization of apatite in volcanic ash using functions of plants)(研究課題番号- 12690055) 平成1 2 -平成1タ年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(21) 研究成果報告争ノ
平成16年3月
研究代表者 南保/正巳
(東北大学大学院農学研究科o教授y′火山灰中アパタイトの植物機能活用による有効利用
(Utilization of apatite in volcanic ash using functions of plants)
(研究課題番号12660055) 平成1 2 - 1 5年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))
研究成果報告書
平成16年3月
研究代表者 南保 正巳
(東北大学大学院農学研究科・教授)
目 次 1.はしがき・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 2.研究組織- - - ・ ・ ・ ・ - - ・ ・ ・ ・ - - - - - ・ - ・2 3.交付決定額(配分額) - - - ・ - ・ - - ・ - - - ・ - -2 4.研究発表 (1)学会誌等----・--∴---・--3 (2)口頭発表- - ・ ・ - - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ - ・ ・ - ・ - - ・3 5.研究成果(概要と個別成果) (1)概要・ ・ - - ・ ・ ・ 4 (2)新鮮テフラ中におけるアパタイトの存在・特性・植物による利用 (南候正巳 シンポジウムNo.17,第1 7回国際土壌科学会議 CD-ROM, 151-1 -151-10,2002) - - ・ - - - - ・ - - - ・7 (3)火山灰土壌のユニークな性質 (南催正巳 Global EnvironmentalResearch 6(2): 99-112, 2002) - - 1 7 (4)新鮮火山灰に含まれるアパタイトと土壌一植物系における主な活性成分との短期 間における反応性 (中丸康夫・南傭正巳・山崎慎一,土肥誌71(1):55-62, 2000) ・ ・ - 3 1 (5)キマメ,ヒヨコマメによる新鮮火山灰中のアパタイトの利用
(中丸康夫・南候正巳・山崎慎一, soil S°i. PlantNutr. 46(3): 591-600, 2000)
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 39
(6)雲仙普賢岳火砕流堆積物(1990-1995)に含まれるアパタイトとそのソバによる利
用
(南傭正巳・江測ゆう子・菅野均志, phosphorus Research Bulletin 16: 1-10,
2003) - - ・ ・ ・ - - - ・ ・ ・ ・ ・ - - - - ・ - ・49
(7)リン欠乏土壌におけるリン酸肥料とアブラナ科作物根の完全な接触
(南候正巳・柴田由佳・和田暢子, soil S°i. Plant Nutr. 48(6): 847-853, 2002)
1.はしがき 世界の大きなリン資源はモロッコ,米国フロリダ州,ロシアコラ半島に偏在している. これらに比べれば,他の産地の規模は大きくない.これまで,先進国を中心に食料増産の ために多量のリン資源がリン酸肥料として農地に投入されてきた.その結果, 1970-1980 年代のオイルショック頃からリンに関しても資源の寿命が論議されてきた.一時期には良 質リン鉱石の寿命は数十年との試算もなされ,リン供給の将来が懸念された.近年になっ て先進国の耕地土壌のリン肥沃度は上昇し,逆に水系の富栄養化への懸念も出てきて,リ ン酸肥料の消費量は指数関数的上昇傾向から横這い状態に変化してきた.その結果, 1980年代のリン資源の推定量でも,今後も現在の横這い状態が続けば,今後200年程度は リンを使用することが可能であり,リン資源問題はやや媛和されたかに見える. しかし,発展途上国のリン使用の伸びはこれからである可能性もある.また, 200年と いう期間はリン利用率向上の技術開発の困難さを考えると必ずしも長い期間とは思えな い.今後,土地利用型の作物生産を持続するためには植物機能,土壌微生物機能,畜産廃 棄物の再利用,地表に於ける自然のリン循環機能の解明,施肥法,肥料の形態などの多く の可能性を検討,組み合わせしていく必要がある. わが国は火山国であり,活火山はその分布に粗密の違いがあるものの,南から北まで散 在し,間断的に活動を繰り返している.火山活動は破壊的だが,休息期には火山灰から多 くの植物養分が放出される. アパタイト(リン灰石)は安山岩質∼流紋岩質火山灰に少量含まれ,植物の必須多量元 素であるリンとカルシウムを放出し,特にリンは火山灰被災地の植生・農業回復に重要で ある.しかしながら,その溶解性はpH,キレート物質の有無などに大きく影響される. だが,新鮮火山灰中にはリンを固定する活性Al, Feがあまり多くない.したがって,ア パタイトの植物・作物に対する有効性はpH等の土壌条件や植物根の放出物,吸収能力な どに影響されると考えらる. ここでは主として, (i)植物のキレート物質放出機能を活用して植物にアパタイトを有 効利用させるための作物の検索と栽培条件を解明を試みた. (ii)また,火山灰被災地の地 力回復のために行われる客土や埋没土混合を想定して,その中に含まれる活性Al, Feと の反応によりアパタイトが無効にならないかどうか調べた. 本研究を進める当たり,多大な研究費の助成を受ける機会に恵まれ,文部科学省と独立 行政法人日本学術振興会の関係諸氏並びに,この研究を進めるに当たりご協力を頂いた 東北大学大学院農学研究科事務担当者および同植物生産科学講座土壌立地学分野高橋 正助教授をはじめとする諸氏に厚く謝意を表する. 南傭 正 巳 (平成1 6年3月) -
1-2.研究組織
研究代表者:南傭正巳(東北大学・大学院農学研究科・教授)全研究計画 研究分担者:なし (研究協力者:山崎慎一) ( '' ( '' ( /y ( ク ( '' 菅野均志) 中丸康夫) 江測ゆう子) 柴田由佳) 和田暢子)3.交付決定額(配分額)
(金額単位:千円) 直接経費 亊I ィニ N 合計 平成12年度 テc 0 テc 平成13年度 鉄 0 鉄 平成14年度 都 0 都 平成15年度 田 0 田 3,400 3,400-2-4.研究発表
(1)学会誌等
新鮮火山灰に含まれるアパタイトと土壌一植物系における主な活性成分との短期間におけ る反応性
中丸康夫・南備正巳・山崎慎一,土肥誌71(1): 55-62 (2000)
Utilization of apatite in fresh volcanic ash by Pigeonpea and Chickpea
Y. Nakamaru, M. Nanzyo, and S. Yamasaki, Soil Sci. Plant Nutr. 46(3): 591-600 (2000)
Unique properties of volcanic ash soils
M. Nanzyo, Global Environmental Research 6(2): 991112 (2002)
Occurrence and properties of apatite in fresh tephras and their utilization by plants
M. Nanzyo, The 17th World Congress of Soil Science. Queen Sirikit National
Convention Center, 14-21, August 2002, CDIROM, Bankok, Thailand
Complete contact of Brassica roots wi也phosphorus fertilizer in a phosphorus-deficient soil M. Nanzyo, Y. Shibata, and N. Wada, Soil S°i. Plant Nutr. 48(6): 847-853 (2002)
Apatite in the pyroclastic now deposit (199011995) of the Unzen volcano, Japan, and its
utilization by buckwheat
M. Nanzyo, Y. Ebuchi and H. Kanno. Phosphorus Research Bulletin 16: 1-10 (2003)
(2)口頭発表 未耕地非アロフェン質ボク土中におけるコマツナの根系発達に対する各種リン資材の影響 南保正巳・和田暢子・菅野均志第, 46回粘土科学討論会講要, p.254-255 (2002) 東北大学農学部講義棟 リン欠乏土壌中における植物根のアルギン酸ゲルーDCPDに対する応答 南保正巳・柴田由佳, 46回粘土科学討論会講要, p.256-257(2002) 東北大学農学部講義棟 雲仙普賢岳新火砕流堆積物に含まれるアパタイトの形態・溶出特性・植物による利用 南保正巳・江測ゆう子・菅野均志, 46回粘土科学討論会津要, p.258・259(2002) 東北大学農学部講義棟
-3-未耕地非アロフェン質黒ボク土におけるアルギン酸ゲル-リン酸ca親和性作物の検索 南傭正巳・柴田由佳,日土肥講要48集, p.130(2002) 名城大学天白キャンパス 雲仙普賢岳新火砕流堆積物に含まれるリンの形態と特性 南備正巳・菅野均志・江測ゆう子,日土肥講要48集, p.20(2002) 名城大学天白キャンパス アパタイトのシュウ酸処理に伴うシュウ酸カルシウム被膜の形成 南傭正巳・中丸康夫・山崎慎一,日土肥講要46集, p.280(2000) 弘前大学農学生命科学部
5.研究成果(概要と個別成果)
(1)概要 川新鮮テフラ中におけるアパタイトの存在・特性・植物による利用 火山灰中には普通1-3 gP205 kg-1程度のリンが含まれ,流紋岩質∼安山岩質火山灰では その多くがアパタイトである.玄武岩質火山灰にもアパタイトは少量検出されるが多くの 場合はその他の形態である.アパタイトはこれまで酸に溶解するリンとしてまたはモリブ デン酸と反応させて発色させて検出されてきた.しかし,近年では走査型電子顕微鏡とエ ネルギー分散型Ⅹ線分析機器が進歩し,時間をかければ粘土サイズのアパタイトを同定す ることも可能になった.その結果,アパタイトは独立した粒子として存在するだけでな く,他の鉱物に包有される形態のものも多いことがより明確になった.この結果はケイ酸 塩メルトからのアパタイトの晶出が他の鉱物に比べて早期に起こることを示唆している. また,土壌の可給態リン含量の測定にしばしば弱酸性溶液が使われるが,火山灰中のアパ タイトはその弱酸性溶液に可溶であることが示された.しかし,アパタイトの溶解はpH 依存性が大きく,通常の耕地土壌の弱酸性pH領域では溶けにくい.したがって,弱酸性 溶液を用いる可給態リン評価法ではアパタイトを含む土壌の可給態リン含量を過大評価す ることになる.火山灰中のアパタイトを利用するためには根圏のpH低下機能,キレート 剤放出機能などを備えた植物・作物を検索する必要がある. 【ⅠⅠト火山灰土壌のユニークな性質 火山灰土壌はわが国では土壌改良が進む以前には問題土壌のひとつであった.その原因 の一つは活性Al, Feによるリンの固定である.しかし,世界を広く見ると,火山灰土壌 は間断的に供給される火山灰で数十年∼数百年ごとに土壌が若返る.このため,特に土壌 温度の高い熱帯では肥沃度ランクが高い場合が多い.その理由の一つに火山灰に少量存在 するアパタイトも含まれると推測される.アパタイトの溶解も温度が高ければ促進され る.さらに,低地ではリンを固定する活性Al, Feはあまり生成しない.その場合にはア パタイトのリン供給源としての役割は大きくなると推定される.-4-【ⅠⅠIl.新鮮火山灰に含まれるアパタイトと土壌・植物系における主な活性成分との庫期間に おける反応性 新鮮火山灰に含まれるアパタイトと風化後に生成する土壌成分との反応性を調べた.ア パタイト試料は1991年に噴出したフィリピン・ビナツボ火山灰の0.2-0.044 mm画分から 比重2.8以上の画分を分離することにより調製した.アパタイトと反応性の土壌成分とし てアルミナゲル,シリカアルミナゲル,ゲ-タイト,鉄ゲル,および黄色土,グライ土, 非アロフェン質黒ボク土,鹿沼土の粘土画分(以上,活性Al, Fe) ,クエン酸,シュウ 酸を選択した.そして,これらとアパタイトの反応性をpH条件を変えて検討した.さら に,反応後のアパタイト粒子の形態と元素組成を走査型電子顕微鏡,エネルギー分散型Ⅹ 線分析により調べた.
各種活性Al, Feとアパタイトの反応性は活性Al, Feの種類よりもpH条件に大きく依存 した.すなわち,終点pH4.5以上では今回検討した活性Al, Feとの反応性は概して低いの に対してpH4.5より下がると反応性が増大した.しかし, pH4.5以上の領域を詳細に見れ ば,活性Alよりも活性Feの方が若干反応性が大きい傾向であった.少なくとも短期間に アパタイト表面にリン酸Al,リン酸Feの厚い被服物が形成されるようなことは認められ なかった. クエン酸,シュウ酸はこのpH領域においては活性Al, Feよりもアパタイト溶解能が強 かった.これらの有機酸はカルシウムイオンをキレート結合し,リン酸イオンを溶出した ためと推察された.また,クエン酸処理後のアパタイト粒子表面には溶出に伴う凹凸の増 加が確認された.以上の結果から,植物機能を利用して火山灰アパタイトを有効利用する ためには根表面を酸性にする機能,キレート剤分泌機能の強い植物が有望であることが示 唆された. 【ⅠⅤ】キマメ,ヒヨコマメによる新鮮火山灰中のアパタイトの利用 熱帯で栽培される豆科作物のキマメ,ヒヨコマメは根からキレート剤を放出する能力が あるとされる.また,これらの栽培時にアンモニア肥料を施与することによりpHを低下 させることもできる.特に,キマメ栽培においてはアンモニア肥料を施与することにより pHが4以下まで大きく低下し,乾物収量はリン施肥区に近づいた.一方硝酸塩を窒素源 として施与するとpHは中性付近であるにも拘わらず,ヒヨコマメはある程度生育し,梶 からのキレート剤放出の効果ではないかと考えられた. 【Ⅴ】雲仙普賢岳火砕流堆積物(1990-1995)に含まれるアパタイトとそのソバによる利用 ピナツボ火山灰に含まれるアパタイトを用いた検討に引き続き,票仙普賢岳火砕流堆積 物に含まれるアパタイトに関してその溶解特性,存在状態,植物に対するリン供給につい て検討を進めた.裏仙普賢岳火砕流堆積物は垂木台地において主に1993年の火砕流堆積 物を採取した.同堆積物は租粒質でレキが多いが,堆積物の厚さが薄く,根が旧土壌に達 する場合や旧土壌から茎が地表に出る場合には植生の回復は早いと見られた.しかし,堆 積物が厚い場合には植生回復は2001年9月現在でも貧弱であった.その原因として厚い同 火砕流堆積物では多数の植物養分や有効水が乏しいことが考えられ,アパタイトの可給性 もピナツボ火山灰よりも低いと見られた. 同火砕流堆積物の可給態リン含量は数十mgp205 kg・1と少なかったが,粒度分画をする と粒度の小さい画分ほど可給態リン含量が増すこと,租粒画分でも粉砕すると可給態リン
-5-の検出量が増すことなどほどナツボ火山灰と同様であった.細砂の重鉱物画分を用いて走 査型電子顕微鏡とエネルギー分散型Ⅹ線分析によりリン含量に富む鉱物を調べると, Ca /p原子比からアパタイトと考えられる鉱物が単一粒子または他の鉱物の包有物として認め られた.租粒画分を粉砕すると可給態リンの検出量が増した理由は包有状態のアパタイト が粒子表面に露出したためと考えられた.アパタイトに含まれる他の陰イオンは塩素で あった.同堆積物でキレート剤分泌能を持つキマメ,ヒヨコマメ等を栽培すると無リン区 の生育はピナツボ火山灰より貧弱であったが,その理由は同堆積物が租粒質で可給態リン 含量が低いためと推察された. 作物栽培試験の中でソバは租粒質で条件がより過酷な婁仙普賢岳火砕流堆積物でも無リ ンである程度の生育と種子の採取も可能であった.そして,リン以外の施肥を行うことに ょり種子も取ることができた.このようなソバのリン吸収能はキレート剤放出能よりも根 圏のpHを低下させる機能によると見られた. lVIl アプラナ科植物根はリン欠乏土壌中でリン酸1水素カルシウムの結晶を懸濁させた アルギン酸カルシウムのゲルビーズに密に絡みつく.このため,リン固走力の強い黒ボク 土中でも効率よくリン酸イオンを吸収できる.しかし,溶解性の極めて低い火成岩起源の アパタイトからは弱酸性付近でもコマツナはほとんどリンを吸収しなかった.火成岩起源 のアパタイトより溶けやすい堆構成のアパタイトからはある程度リンが吸収された. ■今後の課題 わが国でも栽培される作物であるソバは溶解性の低い火山灰中のアパタイトでもある程 度生育可能であった.それは主に根圏pHの低下によるものであった.また,ソバ体内に はシュウ酸も数mMの濃度で含まれる.したがって,ソバの青刈り鍬込み等を介して火山 灰中のアパタイトを溶解し,植物体中にリンを取り込み循環を図る可能性が示唆された. 火山灰土の生成過程におけるリンの形態変化と循環にはなお,いくつかの課題が残って いる.農地ではリン酸肥料を施与すると土壌と反応してAl型,鉄型に変換されるが,自然 の黒ボク土ではその多くが有機態に変換されるようである.このことはアパタイトから一 旦生物を介していることを示唆する.しかし,生物を介して有機態リン酸に変化してもそ の有機態リン酸がAl, Feと反応して難溶化し安定化している可能性は高い.このような 過程をさらに解明することにより,肥料がAl型に変化する過程を調節できる可能性がない かどうか興味深い点である.
-6-TOUR : Tohoku University Repository コメント・シート 本報告書収録の学術雑誌等発表論文は本ファイルに登録しておりません。なお、このうち東北大学 在籍の研究者の論文で、かつ、出版社等から著作権の許諾が得られた論文は、個別にTOUR に登録 しております。 TOUR http://ir.library.tohoku.ac.jp/