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金属微粒子の局在表面プラズモンによるアップコンバージョン発光の増強

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Academic year: 2021

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金属微粒子は,可視域から近赤外域において 鮮やかな色調を呈することから,ステンドグラ スなどの着色材料として用いられている。金属 微粒子のこの特異な光学特性に関しては1900 年代初頭から盛んに研究が行われ,局在型の表 面プラズモンがその起源であることは現在では よく知られている。プラズモンとは,自由電子 の集団振動が量子化されたものであり,局在型 の表面プラズモンは,金属微粒子等の閉じた表 面に特有の局在化したプラズモンである。金属 微粒子の局在表面プラズモンは,ある特定の波 長の光によって共鳴的に励起され,金属微粒子 近傍に非常に大きな増強電場を形成する。ま た,その共鳴波長は,金属微粒子のサイズと形 状に強く依存するため,構造設計により共鳴波 長を可視領域の任意波長にチューニングするこ とができる。基礎物理学的にも,応用物理学的 にも興味深いこれらの光学特性に関して,近年 盛んに研究が行われている。 本講では,局在表面プラズモンによる電場増 強を,アップコンバージョン発光材料へ応用し た例について紹介する。アップコンバージョン 発光材料とは,中間準位を介した多光子過程に より,入射光子エネルギーよりも大きいエネル ギーを持つ光子を放出する発光材料である。例 え ば,本 講 で 紹 介 す る Er3+ ド ー プ Al2O3 は,1.26eV(980nm)のエネルギーを持つ2 つの光子を吸収し,1.84eV(675nm)あるい は2.25eV(550nm)のエネルギーを持つ1つ の光子を放出する。このようなアップコンバー ジョン材料は,(i)近赤外光を可視光に変換で きる,(ii)励起波長である980nm における生 体の透過率が非常に高い,ことからバイオイ メージング等への応用が期待されている。多光 子過程であるアップコンバージョン発光の場 合,通常の1光子過程のダウンコンバージョン 発光の場合と比較して,より大きな発光増強を 局在表面プラズモンによって得ることを期待で きる。例えば,2光子過程のアップコンバージ ョン発光では,その発光強度は励起光電場強度 の2乗に比例する。従って,局在表面プラズモ ンにより励起光電場強度が10倍になれば,ア ップコンバージョン発光の強度は最大で100倍 になることを期待できる。本講は表面プラズモ ンによる電場増強が,このような多光子過程に 対して特に有用であることを紹介するものであ る。 図1は作製したサンプルの模式図である。シ 〒657―8501 兵庫県神戸市灘区六甲台町1―1 TEL 078―803―6441 FAX 078―803―6441 E―mail : imakita@eedept.kobe―u.ac.jp

Department of Electrical and Electronic Engineering,Graduate School of Engineering,Kobe University

Kenji Imakita,Minoru Fujii,and Shinji Hayashi

Enhancement of up―conversion photo―luminescence by localized surface

plasmons in metal nano particles

今 北 健 二,藤 井 稔,林 真 至

神戸大学大学院工学研究科電気電子工学専攻

金属微粒子の局在表面プラズモンによる

アップコンバージョン発光の増強

研究最先端

33

(2)

150nm

SiO

2

substrate

Ag islands

Er

3+

doped Al

2

O

3 600 900 1200 1500 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 Ag mass thickness Ag island films 16nm 13nm 10nm 7nm Absorptance Wavelength (nm)

500

600

700 1400

1600

0

20

40

60

80

100

120

140

x5

13nm

16nm

10nm

7 nm

bare

Ag mass

thickness

excited

at 978nm

Er conc. 4.2 at.%

4

I

13/2 4

F

9/2 4

S

3/2 2

H

11/2

Wavelength (nm)

Intens

ity (arb. units)

リカ基板上にスパッタリングにより,Er3+ を ドープした Al2O3薄膜を堆積し,その後 Er3+の 発光を活性化させるため900度で熱処理を行っ た。Er3+ の濃度は4.2原子%である。熱処理後, 真空蒸着法により,厚さが7,10,13,16nm の 銀薄膜を堆積し,さらに300℃ で熱処理するこ とによって銀のアイランド膜を形成した。図2 は作製した銀のアイランド膜の AFM 像であ る。銀アイランド膜の質量厚さ(=熱処理前の 銀薄膜の厚さ)が(a)7,(b)10,(c)13,(d)16nm と増加するに従って,銀アイランドの平均粒径 は(a)104,(b)147,(c)219,(d)313nm と 増 加 し た。また,銀アイランドの平均高さは(a)16, (b)28,(c)52,(d)91nm と増加した。 図3は,作製したサンプルの消光スペクトル の銀アイランド膜厚依存性である。銀アイラン ド膜の質量厚さが厚くなるとともに消光スペク トルはブロードになり,そのピークは単調に長 波長側にシフトしていることがわかる。消光 ピークが長波長側にシフトするのは,銀アイラ ンドのサイズ増加に伴って,局在表面プラズモ ン共鳴波長が長波長側にシフトするためであ る。 図4は,励起波長980nm における Er3+ ドー プ Al2O3の 発 光 ス ペ ク ト ル で あ る。波 長520 図1 サンプル模式図 図2 銀のアイランド膜の AFM 像。質量厚さは(a) 7,(b)10,(c)13,(d)16nm である。 図3 銀のアイランド膜の消光スペクトルの銀アイラ ンド膜厚依存性 図4 銀アイランド膜上の Er3+doped Al2O3の発 光スペクトルの銀アイランド膜厚依存性 34

(3)

nm,550nm,660nm,1550nm に 発 光 ピ ー ク を確認できる。これらは,Er3+ の2 H11/2→4I15/2,4 S3/2→4I15/2,4F9/2→4I15/2,4I13/2→4I15/2の 遷 移 に 対 応 する発光ピークである。前者3つのピークは,2 光子過程によるアップコンバージョン発光であ り,後者の1550nm の発光は1光子過程によ るダウンコンバージョン発光である。すべての 発光ピークにおいて銀アイランド膜の質量厚み の増加とともに発光強度が増強していることが わかる。銀アイランドによる発光増強度は,可 視域のアップコンバージョン発光に対し,最大 で213倍,近赤外域のダウンコンバージョン発 光に対し,最大で8倍であった。近赤外域のダ ウンコンバージョン発光の増強度よりも可視域 のアップコンバージョン発光の増強度のほうが 1桁以上も大きい。これはダウンコンバージョ ン発光の強度が励起電場強度の1乗に比例する のに対し,アップコンバージョン発光の強度 が,励起電場強度の2乗に比例するためであ る。 なお,一般的に,局在プラズモンによる発光 増強は,励起電場の増強だけではなく,発光体 の輻射電場の増強にも依存することが知られて いる。これらの要因を切り分けるために,励起 波長を488nm に変え,同様の実験を行ったと ころ,輻射電場増強によるアップコンバージョ ン発光の増強度は,最大でも5倍程度であるこ とが明らかになった[1]。この結果は,励起電 場の増強効果のほうが,輻射電場の増強効果よ りもアップコンバージョン発光の増強に対して 支配的であることを示している。実際,図3の 消光スペクトルと図4の発光スペクトルを比較 すると,発光波長における消光係数は発光強度 とあまり相関がないことがわかる。例えば,550 nm 付近に注目すると,銀の質量厚さが7から 13nm まで増加した場合,消光係数の変化は 10% 程度である。一方,発光スペクトルに注 目すると,発光強度は銀の質量厚さの増加とと もに1桁程度も増強していることがわかる。 以上,本研究では,(i)銀微粒子の局在表面 プラズモンによって Er3+ ドープ Al2O3の可視域 アップコンバージョン発光の強度が2桁以上も 増加すること,(ii)その発光増強は,主に励起 電場の増強に起因すること,を明らかにした。 これらの結果は,金属微粒子の局在表面プラズ モンが,多光子過程からなる光学遷移の増強に 対して特に有効であることを示唆している。

[1]Takeho Aisaka,Minoru Fujii,and Shinji Hayashi, Appl.Phys.Lett.92,132105(2008).

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参照

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