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「総合的な学習の時間」の指導法を探るー教職学生の学習経験と指導観を手がかりとしてー

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1.はじめに

 本研究では、教職学生が「総合的な学習の時間」をどのように認識しているのかについて、 学生への意識調査から分析を行う。特に、教職学生の学習経験と指導観に着目し、「総合的 な学習の時間」の指導法を教授する際に想定される課題としてどのようなものがあるのか、 実証的データにより検討する。  「総合的な学習の時間」は、小学校・中学校では1998年の学習指導要領改訂、高等学校で は1999年の改訂により生まれ、小学校・中学校では2002年から、高等学校では2003年から実 施された。それから20年ほどが経過し、「総合的な学習の時間」に対する社会や学校現場に よる捉え方もずいぶん変化した。  まずは、大橋(2019)の整理により、「総合的な学習の時間」に対する認識のされ方がど のような経緯を辿ってきたのかについて確認する。「総合的な学習の時間」の船出は、決し て順風満帆だったとは言い難い。なぜなら、導入された時期に、『分数ができない大学生』(岡 部・戸瀬・西村 1999)の刊行や、OECD(経済協力開発機構)の国際学力テストで日本 の順位の低下が報じられ、いわゆる「学力低下」批判が繰り広げられたからである。特に施 策されたばかりの「教育内容の 3 割削減」「学校週 5 日制」、それらとリンクして生まれた「総 合的な学習の時間」は、「学力低下」の 1 つの要因と見なされた。さらに、1998年の学習指 導要領の施行を待たずに発表された「確かな学力の向上のための2002アピール「学びのすす め」」(文部科学省 2002)や、2003年の学習指導要領一部改訂で提示された学習指導要領の「歯 止め規定」(学習指導要領の内容は最高水準であること)の廃止といった一連の施策の変更は、 文部科学省が「学力低下」の要因を1998年の学習指導要領の改訂にあることを認めたかのよ うに広く受け止められた。その後の2008年の学習指導要領改訂では、「総合的な学習の時間」 は教育課程上「第 1 章総則」の中の位置づけから独立した章になり、その位置づけが明確に なるものの、教育課程における時間数は縮減された。このように「総合的な学習の時間」は、

「総合的な学習の時間」の指導法を探る

 

―教職学生の学習経験と指導観を手がかりとして―

尾 場 友 和

1.はじめに 2.調査の概要と教職学生の属性 3.「総合的な学習の時間」の学習経験 4.教職学生の指導観 5.おわりに

(2)

当初、教育の世界で順調に浸透しなかった。また学校現場においても、「総合的な学習の時間」 と他教科の役割の違いを位置づけることの困難さや、取り扱う内容が各学校に委ねられたこ とにより、その成果が教師の力量に左右され易いなど、様々な課題が指摘されたのである。  ところが、2010年頃から「総合的な学習の時間」の積極的な活用を進める動きが生じる。 その契機として考えられるのが、2007年の改正学校基本法で明記された学力の 3 要素(①基 礎的基本的な知識・技能の習得②その知識・技能を活用した思考力、判断力、表現力等③主 体的に学習に取り組む態度)である。これらへの対応として、「総合的な学習の時間」が着 目され、2017年の学習指導要領改訂に先だった教育審議会答申(2016)では、「総合的な学 習の時間」と①学力向上、②カリキュラム・マネージメント、③アクティブ・ラーニングの 関連性が高いと評された。こうして「ゆとり教育」から「確かな学力」へと社会の潮流が変 化する中、「総合的な学習の時間」は、紆余曲折を経ながら教育課程における地位を高め、 学校現場でその意義が認知されつつある。  さて、そのような経緯を踏まえて、「総合的な学習の時間」の指導法を学ぶ学生に引き付 けて考えた場合、そこでの課題は、学生間の「総合的な学習の時間」に対する知識や経験の 差異であろう。なぜなら、「総合的な学習の時間」の学校における実践は、「どのような資質・ 能力を育成するのかということや、総合的な学習の時間と各教科等との関連を明らかにする ということについては学校により差がある」(文部科学省2017:6)。それゆえ、教職課程を 履修する学生間においても「総合的な学習の時間」の経験値に差があり、学生がどの程度「総 合的な学習の時間」を認知し、経験的に理解しているか、把握することは、「総合的な学習 の時間」の指導法に関する講義を進めていく上で重要になってくる。  そこで本稿では、教職学生への質問紙調査から、高校時代における「総合的な学習の時間」 の取り組み状況等を彼らの認識を基に分析し、その実態に迫る。その上で、「総合的な学習 の時間」の指導法を講義する際の特有の課題について明らかにしたい。  以下では、調査概要等を確認(第 2 節)した後、教職学生による高校時代の学習経験や指 導観(第 3・4 節)について分析を行う。それらの結果を踏まえ、本検討で得られた知見(第 5 節)を最後に提示する。

2.調査の概要と教職学生の属性

 本稿で使用するデータの概要を示す。調査は2019年 7 月に関西地方にある大学 2 校で、そ 表1 調査協力者の属性(%)(n=63) 出身校の設置 者 出身校の教育 課程等 中学校時代、 学校の成績は 良かった 公立 82.5 普通科 47.6 とても そう思う 12.7 私立 17.5 専門科 41.3 そう思う 23.8 計 100.0 総合学科 9.5 どちらとも 言えない 28.6 定時制・通信制等 1.6 あまりそう 思わない 27.0 計 100.0 全くそう 思わない 7.9 計 100.0

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れぞれの大学の教職課程を履修する学生に回答を依頼する方法で行った。いずれの大学も非 教員養成系学部から構成される一般大学で、中学校と高等学校の教員養成課程を有する共通 点がある。  つぎに、調査協力者(計63名)の属性について簡単に確認しておく(表 1 )。まず協力者 の出身高校を設置者別で見ると、公立校が82.5%、私立校が17.5%、教育課程別では普通科 が47.6%、専門科が41.3%、総合学科が9.5%、定時制・通信制等が1.6%となっていた。これ らのデータから、調査協力者は全国平均よりも公立校出身者が多く、しかも専門科で学んだ 学生が比較的多いと言える1)。さらに、調査協力者の学力について尋ねた中学校時点での学 力に対する自己認識(「中学校時代、学校の成績は良かった」)では、「どちらとも言えない」 が28.6%、「あまりそう思わない」が27.0%、「そう思う」が23.8%のように、中間層にボリュー ムゾーンがあった。こうしたことから本協力者は、中間層に厚みを持ちながらも上位や下位 の学力層もおり、多様な学力層から構成されている。

3.「総合的な学習の時間」の学習経験

 さて、ここからは調査協力者が高校時代に「総合的な学習の時間」で、どのような学習を 経験したのかについて見ていくことにする。なお、専門科出身者の中には、「総合的な学習 の時間」の代替として「課題研究」を履修していることが考えられる。そのため、そうした 協力者については、「課題研究」での経験ついて回答を求めた。  本項では、学習指導要領が取り扱う内容として例示する現代的な諸課題(国際理解、情報、 環境、福祉、健康)、地域や学校の特色に応じた課題、生徒の興味関心に基づく課題、職業 や自己の将来に関する課題と関連した質問項目を用意し、それらの学習に対する高校時代の 取り組み状況について回答を求めた(表 2 )。  その結果、「とてもよく取り組んだ」「まあ取り組んだ」の合算で高い順に見ると、「職業 や自己の将来に関連する学習」が87.3%で最も高く、次いで「生徒の興味や関心に関連す る学習」が54.0%、「地域の町づくりや伝統文化など地域や学校の特色に関連した学習」が 52.4%、「情報社会に関わる様々な問題に関する学習(情報)」が50.8%のように、生徒の身 近なテーマを課題とした学習を経験しているようである。一方、「健康な生活や健全な心身 の維持に関する学習(健康)」が30.1%、「身近な自然環境やそれに起きている環境問題に関 する学習(環境)」が38.1%、「身の回りの高齢者など支援が必要な人に関する学習(福祉)」 が30.1%、「外国のことや日本とのつながりに関する学習(国際理解)」が28.5%のように、 社会的な問題に関する項目では学習への取り組みが低くなっていた。  こうしたことから教職学生が経験した学習内容は、自らの進路や関心によって設定され、 グローバルや高齢化社会といった現代社会が直面する課題は少なく、その内容に偏りが生じ ている。それゆえ指導法の講義では、これらの課題を扱った学習にどういう意義があるのか、 どのような探究活動がありうるのか丁寧に指導する必要があるだろう。 1)学校基本調査(2018)によれば、国立校が0.3%、公立校が63.8%、私立校が30.5%、教育課程別では普 通科が67.3%、専門科が19.9%、総合学科が4.8%、定時制・通信制等が8.0%となる。

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 では、彼らは「総合的な学習の時間」のこうしたテーマに対し、どのように取り組んでい たのだろうか。次に先ほどと同じ表 2 の中から学習活動の形態を示す質問項目(下部 5 項目) について見てみよう。先ほどと同様に「とてもよく取り組んだ」「まあ取り組んだ」の合算 で高い順に見る。「みんなの前で発表するような学習」が57.1%と最も高く、「グループで調べ、 分析し、まとめるような学習」が50.0%、「学校の外で体験、観察実験、調査するような学習」 が42.8%、「他の授業で学んだことと関連するような学習」が41.3%、「(個人で)物事を調べ、 分析し、まとめるような学習」が39.7%、「コンピュータを使って表を作ったりレポートを 作成する学習」が38.7%となっていた。これらの結果からは、多くの場合、グループで何か を調べ学習をし発表するのが、「総合的な学習の時間」の 1 つの型になっていると推測できる。 表2 高校時代の学習経験(%)(n=63) 外国のことや日本とのつなが りに関する学習(国際理解) 情報社会に関わる様々な問題 に関する学習(情報) 身近な自然環境やそれに起きてい る環境問題に関する学習(環境) 身の回りの高齢者など支援が 必要な人に関する学習(福祉) 健康な生活や健全な心身の維 持に関する学習(健康) 地域の町づくりや伝統文化など地 域や学校の特色に関連した学習 生徒の興味や関心に関連する 学習 職業や自己の将来に関連する 学習 他の授業で学んだことと関連 するような学習 (個人で)物事を調べ、分析 し、まとめるような学習 グループで調べ、分析し、ま とめるような学習 学校の外で体験、観察実験、 調査するような学習 みんなの前で発表するような 学習 コンピュータを使って表を作っ たりレポートを作成する学習 とてもよく 取り組んんだ 7.9 12.7 11.1 9.5 11.1 17.5 17.5 49.2 12.7 15.9 21.0 19.0 31.7 22.6 20.6 38.1 27.0 20.6 30.2 34.9 36.5 38.1 28.6 23.8 29.0 23.8 25.4 16.1 19.0 30.2 30.2 31.7 30.2 20.6 23.8 7.9 30.2 27.0 16.1 22.2 12.7 17.7 23.8 7.9 14.3 19.0 12.7 15.9 12.7 1.6 12.7 17.5 16.1 14.3 15.9 12.9 28.6 11.1 17.5 19.0 15.9 11.1 9.5 3.2 15.9 15.9 17.7 20.6 14.3 30.6 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 まあ 取り組んんだ どちらとも 言えない あまり取り 組まなかった 全く取り 組まなかった 計

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だが、学習成果を発表するものの、その成果に至る過程において、教科で学んだことを生か す横断的な学習や探求的な学習で欠かすことのできないと思われるコンピュータを使用した 学習については、その経験が乏しい。こうしたことから、教職学生の中には形式的な学習過 程により「総合的な学習の時間」を経験している可能性がある。それゆえ、学生自身に自ら の「総合的な学習の時間」の経験を相対化させ、様々な学習過程のあり様を認識するように、 指導法の講義の中で促す必要があるだろう。  さて、こうした学生間による「総合的な学習の時間」の学習経験の違いには、どのような 特徴があるのだろうか。ここでは協力者の学力の観点から、その関連を見ていく。  表 3 は高校時代の学習経験と学力との関連について、「とてもよく取り組んだ」を 5 、「ま あ取り組んだ」を 4 、「どちらとも言えない」を 3 、「あまり取り組まなかった」を 2 、「全 く取り組まなかった」を 1 として平均値を算出し、それぞれの項目の平均値の差により比較 したものである。なお、中学校時の学力は、「中学校時代、学校の成績は良かった」の項目 で「とてもそう思う」「そう思う」と回答したものを「上位」、「どちらとも言えない」を「中 位」、「あまりそう思わない」「全くそう思わない」を「下位」とし、便宜上分類した。  まず学習した分野毎に見てみると、「外国のことや日本とのつながりに関する学習(国際 理解)」(「上位」3.13、「中位」2.56、「下位」1.95)、「身近な自然環境やそれに起きている環 境問題に関する学習(環境)」(「上位」3.52、「中位」3.11、「下位」2.36)、「地域の町づくり や伝統文化など地域や学校の特色に関連した学習」(「上位」3.26、「中位」3.89、「下位」2.91)、「生 徒の興味や関心に関連する学習」(「上位」3.74、「中位」3.83、「下位」2.68)、「他の授業で学 んだことと関連するような学習」(「上位」3.57、「中位」3.06、「下位」2.64)の項目で有意差 があり、いずれも学力「下位」では、学習に取り組んだ経験が乏しくなっていた。  特に、「外国のことや日本とのつながりに関する学習(国際理解)」では、ポイントの高い 表3 高校時代の学習経験と学力との関連(n=63) 外国のことや日本とのつながりに関する学習(国際理解) 情報社会に関わる様々な問題に関する学習(情報) 身近な自然環境やそれに起きている環境問題に関する学習(環境) 身の回りの高齢者など支援が必要な人に関する学習(福祉) 健康な生活や健全な心身の維持に関する学習(健康) 地域の町づくりや伝統文化など地域や学校の特色に関連した学習 生徒の興味や関心に関連する学習 職業や自己の将来に関連する学習 他の授業で学んだことと関連するような学習 (個人で)物事を調べ、分析し、まとめるような学習 グループで調べ、分析し、まとめるような学習 学校の外で体験、観察実験、調査するような学習 みんなの前で発表するような学習 コンピュータを使って表を作ったりレポートを作成する学習 中位 下位 上位 3.13 3.52 3.52 3.09 3.48 3.26 3.74 4.52 3.57 3.78 3.73 3.35 3.91 3.09 2.56 3.67 3.11 3.06 3.11 3.89 3.83 4.33 3.06 3.06 3.22 3.17 3.61 3.50 1.95 2.86 2.36 2.36 2.64 2.91 2.68 4.00 2.64 2.32 2.64 2.68 2.82 2.14 ** ** * *** * *** * * * 米 カイ二乗検定の結果をp<0.05=*、p<0.01=**、p<0.001=***で示した。以下同様。

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群と低い群では1.18ポイントの差があり、同様に「身近な自然環境やそれに起きている環境 問題に関する学習(環境)」では1.16ポイント、「生徒の興味や関心に関連する学習」では1.15 ポイントの差があった。  また、学習経験の差は、学習形態の点でも学力層によって生じている。具体的には、「他 の授業で学んだことと関連するような学習」(「上位」3.57、「中位」3.06、「下位」2.64)、「(個 人で)物事を調べ、分析し、まとめるような学習」(「上位」3.78、「中位」3.06、「下位」2.32)、 「グループで調べ、分析し、まとめるような学習」(「上位」3.73、「中位」3.22、「下位」2.64)、 「みんなの前で発表するような学習」(「上位」3.91、「中位」3.61、「下位」2.82)、「コンピュー タを使って表を作ったりレポートを作成する学習」(「上位」3.09、「中位」3.50、「下位」2.14) の項目で有意差があり、いずれも学力「下位」層では、学習経験が乏しいことがわかった。  特に「(個人で)物事を調べ、分析し、まとめるような学習」の項目では、ポイントの高 い群と低い群で1.46ポイントの差があり、1 人で主体的に何かに取り組む経験が学力の違い により大きく異なっていることがわかった。  この結果から、「総合的な学習の時間」の受講者には、豊かな学習経験のある学生とそう でない学生とが混在しており、その経験値において差があった。このことは中学時代の学力 と関連しているが、今回の調査は高校時代を対象としており、学力の輪切りにより彼らの出 身高校も一様でないことを鑑みれば、この差は学校間における実践の差異とも考えられる。 それゆえ指導法に関する講義では、学生間で高校時代に経験した「総合的な学習の時間」の 内容や学習方法の共有を確実にし、講義に対するレディネスを揃えることが重要だと言える。

4.教職学生の指導観

 これまで見たように、教職学生による「総合的な学習の時間」の学習経験は、一様ではな い。それゆえに「総合的な学習の時間」の意義や価値に対する意識においても学生間で差異 の可能性がある。そこで本節では、教職学生が生徒にどのような能力を身に付けて欲しいと 考えているのか、いわゆる指導観について尋ねた(表 4 )。  まずは、教職学生が「総合的な学習の時間」で生徒のどういった領域に取り組む能力を育 成したいと考えているかについて見ていく。  ここでも「とてもそう思う」「そう思う」での合算で高い順に見ると、「職業や自己の将来 に関連する解決できる力」が92.1%、「生徒の興味や関心に関連する解決できる力」が88.8% と約 9 割の学生が肯定的に回答しており、次いで「情報社会に関わる様々な課題を解決でき る力」と「健康な生活や健全な心身の維持に関する課題を解決できる力」が82.5%、となっ ていた。このことから、教職学生は生徒自身の生活に近い領域における課題解決能力の育成 に指導の力点を考えているようである。  だが、「地域の町づくりや伝統文化など地域や学校の特色に関連した課題を解決できる力」 が79.3%、「身の回りの高齢者など支援が必要な人の課題を解決できる力」が74.6%、「外国 のことや日本とのつながりかかわる課題を解決できる力」が61.9%のように、社会的な課題 に対する解決能力の育成という視点では、身につけて欲しいと思う割合が低くなっていた。

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このことから、教職学生は、学習が社会とどのように関連しているのか、あまり認識してい ないと言えるだろう。  次に、生徒の学ぶ資質や能力に関する質問項目を見ていこう。先ほどと同様に上位の合算 を高い順に見ると、「課題に対して解決できる力」が88.9%と最も高く、次いで「これまで 学んだ学習を結びつける力」が87.3%、「主体的に学習に取り組む力」が82.5%、「難しい課 題に対し探求し続ける力」が81.0%となり、いずれの項目においても 8 割以上が肯定的な回 答をしていた。こうしたことから、教職学生の多くが、主体的に課題解決に向けた学ぶこと に対する意義を感じており、それを生徒に学んで欲しいと考えている。  では、こうした指導観は、先に見た学力の関連から教職学生間で違いがあるのだろうか。 そこで、表 5 では表 3 と同様に平均値の差の検定により、教職学生の指導観と中学校時の学 力の関連について検討した。その結果、高校時代の学習経験では学力により多くの項目で差 があったものの、教職学生が生徒に望む能力についてはいずれの項目においても統計学上の 表4 教職学生の指導観(%)(n=63) 外国のことや日本とのつながり かかわる課題を解決できる力 情報社会に関わる様々な課題 を解決できる力 身近な自然環境やそれに起きて いる環境問題を解決できる力 身の回りの高齢者など支援が必 要な人の課題を解決できる力 健康な生活や健全な心身の維持 に関する課題を解決できる力 地域の町づくりや伝統文化な ど地域や学校の特色に関連し た課題を解決できる力 生徒の興味や関心に関連する 課題を解決できる力 職業や自己の将来に関連する 課題を解決できる力 主体的に学習に取り組む力 課題に対して解決できる力 難しい課題に対し探求し続け る力 これまで学んだ学習を結びつ ける力 とても そう思う 28.6 38.1 25.4 38.1 33.3 31.7   57.1 68.3 50.8 55.6 39.7 44.4 33.3 44.4 49.2 38.1 49.2 47.6   31.7 23.8 31.7 33.3 41.3 42.9 27.0 15.9 15.9 20.6 12.7 15.9   6.3 4.8 14.3 11.1 11.1 9.5 9.5 1.6 7.9 3.2 4.8 4.8   4.8 1.6 3.2 0.0 7.9 3.2 1.6 0.0 1.6 0.0 0.0 0.0   0.0 1.6 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0   100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 そう思う どちらとも 言えない あまりそう 思わない 全くそう 思わない 計

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差はなかった。それゆえ、高校時代の学習経験が乏しい学生は、意欲があるにもかかわらず、 「総合的な学習の時間」の全体像に対する把握の仕方や自らの学習経験を生かした指導法の 開発などで課題を抱える可能性がある。そのため講義では、経験値によって差が生じやすい 領域を手厚く指導できるように、事前学習の教材を充実したり経験値に応じた学習プログラ ムを開発するなど、指導上、配慮する必要があるだろう。

5.おわりに

 以上、教職学生による「総合的な学習の時間」に対する認識ついて、学習経験と指導観の 観点から質問紙調査の分析を行い、「総合的な学習の時間」の指導法の講義で想定される課 題について検討してきた。  これまでの分析を振り返り、総括すると次の 2 点にまとめることができるだろう。まず第 1 に、教職学生による「総合的な学習の時間」の学習経験は、自分自身の身近なテーマのも のが多く、地球規模で考えるような社会的な問題を扱った学習の経験が乏しいと言うことで ある。また学習方法では、グループで学習しそれを発表するのが 1 つの型のようになってお り、多くの学生がそれを経験しているようであった。だが、こうした経験には中学校時代の 学力によって差があり、特にグローバルな視点や個人で調べたりするような学習方法では、 学力下位層の経験率が低くなっていた。  第 2 に、「総合的な学習の時間」と関連性が強い高いと考えられる領域の指導観については、 生徒の将来のことや興味関心に基づくような項目でポイントが高くなる傾向があるが、そう した傾向は学力階層によって差がなく、教職学生の間で共有している指導観のようであった。  これらの分析結果を踏まえると、教職学生の中には、指導に対する意義や価値意識を認識 するものの、自らの原体験が乏しいあまり、学習全体の把握や具体的な学習方法のイメージ 表5 教職学生の指導観と学力との関連(n=63) 外国のことや日本とのつながりにかかわる課題を解決できる力 情報社会に関わる様々な課題を解決できる力 身近な自然環境やそれに起きている環境問題を解決できる力 身の回りの高齢者など支援が必要な人の課題を解決できる力 健康な生活や健全な心身の維持に関する課題を解決できる力 地域の町づくりや伝統文化など地域や学校の特色に関連した課 題を解決できる力 生徒の興味や関心に関連する課題を解決できる力 職業や自己の将来に関連する課題を解決できる力 主体的に学習に取り組む力 課題に対して解決できる力 難しい課題に対し探求し続ける力 これまで学んだ学習を結びつける力 中位 下位 上位 4.04 4.22 4.04 4.26 4.30 4.17 4.52 4.74 4.35 4.43 4.17 4.35 3.72 4.17 4.00 4.11 4.11 4.17 4.56 4.72 4.39 4.67 4.33 4.33 3.55 4.18 3.64 3.95 3.91 3.86 4.18 4.23 4.18 4.27 3.91 4.18

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を作ることができず、指導法の学習に躓くことが推測できる。そのため、経験値の差によっ て生じやすい領域を事前に把握し、それを補うようなプログラムを開発することが重要だと 言えるだろう。  だが、本分析では調査を 2 大学のみで行ったこと、および回答者が63人であったため、全 体を代表する指標として解釈に用いるには、慎重でなければならない。今後は、本調査をパ イロット調査と位置づけ調査対象を広げる、それと同時に継続的な調査を行うことにより、 より精度の高い分析を行っていくことが重要であろう。今後の課題としたい。

参考文献

文部科学省(2017)『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間』東山書房. 文部科学省(2018)『学校基本調査報告書(平成30年度)』. 文部科学省(2002)「確かな学力の向上のための2002アピール「学びのすすめ」」. 尾場友和(2018)「特別活動と総合的な学習の時間」塩見剛一・成山文夫・西本望・光成研一郎編『教 育のイデア 教職・保育士を志す人のために』昭和堂,pp.47-55. 岡部恒治・戸瀬信之・西村和雄 編(1999)『分数ができない大学生―21世紀の日本が危ない』東洋 経済新聞社. 大橋隆広(2019)「総合的な学習の時間の変遷−「学力論」との関係から−」『広島女学院大学人間 生活学部紀要』第 6 号,pp59-68. 佐藤学(2015)『専門家として教師を育てる-教師教育改革のグラウンドデザイン』岩波書店.

参照

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