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近畿地方における突風率の推定法 利用統計を見る

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近畿地方における突風率の推定法

Estimation methods of the gust factor in the Kinki region, Japan

林  里 江∗ 安 達 隆 史

HAYASHI Rie ADACHI Takashi

要約: 気象庁では、10 分間内の風速変動を細かく観測して、0.25 秒毎の「瞬間風速」の 10 分間内での最大値を「最大瞬間風速」と呼ぶ。また、その「瞬間風速」の平均値を「10 分間平均風速」と呼ぶ。これらの、「最大瞬間風速」を「10 分間平均風速」で除した値を 「突風率」(またはガストファクター)と呼ぶ。従来、この「突風率」は 1.8 程度といわれ ているが、気象条件や地形によって変わることが指摘されている。この「瞬間風速」が 大きい場合は突風災害が起きることがあるので、「突風率」を推定して、突風予測に結び つけることができれば理科教育と防災に役立てることが出来る。このような目的をもっ て近畿地方を対象領域として、1 年間の気象データを収集・解析し、「突風率」を推定す る次の実験式を得た。y = −0.0316 x + 2.26 (5 5 x 5 24) ただし、y は「突風率」、x は m/s 単位の「10 分間平均風速」である。 キーワード: 突風、突風率、ガストファクター、最大瞬間風速、強風災害

I

はじめに

この研究は、著者の林 (2007) が、環境科学コース (地学分野) の平成 18 年度卒業研究として行った 「近畿地方における突風率の研究」の成果を教育実践総合センター研究紀要の論文として取りまとめ たものである。内容は理科教育の教材という意味もあるので、解析作業の再現が可能であるように、 データ処理手順を詳しく述べ、解析図も多く掲載した。 朝日新聞によると、2006 年 9 月 17 日、台風 13 号の突風により宮崎県延岡市では、約 1800 棟の建 物が損壊し、3 人死亡、140 人以上が重軽傷をおい、JR 日豊線の特急「にちりん 9 号」が脱線した。 この日豊線の脱線事故では、事故が起きる 30 分前の風速計の値は 20.5 m/s であったため徐行運転を していたところ、突然 40 m/s の突風が吹き脱線した。宮崎地方気象台は、倒木の折れ口にねじれた 跡があるなどの現地調査から、竜巻特有の痕跡が確認できたとして、この突風の原因は竜巻だったと 断定し、竜巻の大きさを測る一般的基準「藤田(F)スケール」に被害状況をあてはめ「F2」程度と 推定し、風速 50 ∼ 69 m/s の突風が吹いた可能性があるとしている。 これ以前にも、2005 年 12 月、山形県の JR 羽越線が突風により脱線、転覆する事故が起きている。 この羽越線脱線事故では、脱線地点から約 900 メートルの位置に設置されていた風速計は事故発生 当時、最大風速を 3 分間隔でしか測定されていなかったことが明らかとなっていて、JR 東日本によ ると、同社の風速計は風速 20 m/s 以上になった場合にだけ 2 秒間隔で風速を計測し、それ以外の場 合は、時間を 3 分ごとに区切り、その間の最大風速だけを記録している。この事故が起きた当日、風 速が 20 m/s に達したのは午後 5 時 9 分、7 時 16 分、7 時 29 分の 3 回だけで、事故が発生した「午後 7 時 14 分」の数分前までは 20 m/s に達していなかったために、事故発生時の正確な風速データは記 録されていない。 ∗ ソフトサイエンス課程環境科学コース学生、現在、岐阜県中津川市立福岡中学校,理科教育講座

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近畿地方における突風率の推定法 このように強風には、数秒から数十秒という非常に短い時間だけ吹く突風があり、気象庁によれ ば、この突風は 10 分間平均風速の 1.5 倍 ∼ 3 倍に達することがある。しかし、季節、広域的な地形、 及び風速の影響がどの程度あるかは報告されていない。そこで、広域の地形区分毎に、10 分間平均 風速から突風を推定する方式を開発するために、気象庁の地上風データを収集・解析した。対象地域 は手始めに近畿地方(岬のデータを補充するために室戸岬を追加)とした。 また平均風速に対する突風の比率である突風率は、「最大瞬間風速÷ 10 分間平均風速」と定義さ れ、本来は両者がほぼ同時の観測値である。しかるに、近藤(2000)は、簡便のためか、ある 1 日の 期間の突風率を「日最大瞬間風速÷日最大風速」で求めている。この日最大瞬間風速は、最大瞬間風 速の 1 日の中の最大値で、日最大風速は、10 分間平均風速の 1 日の中の最大値である。 表 1 日最大瞬間風速と日最大風速の起時がずれた観測例 しかし、表 1 に示すように、日最大瞬間風速の起こった時刻が、日最大風速が観測された時間帯 (10 分間)の中に常に入っているとは限らない。従って、この近藤(2000)のような解析では、通常 の定義の突風率としては誤差が生じてしまう可能性がある。その誤差の程度は調べてみないとわか らないが、当研究では、むしろそのような誤差を防ぐために、手間がかかるが、同時性を保つために 次のような解析を行った。既存の大量のデータを扱いながら上記の同時性を保ったことは、当研究の 独自性のひとつである。 具体的には、アメダスでの 10 分間平均風速と、10 分間平均風速と瞬間風速の両方が観測されてい る気象台・測候所(特別地域気象観測所を含む)のデータを利用する。まず、地上風データにある毎 日の最大瞬間風速とそれが起きた時刻を記録し、次にその時刻を含む 10 分間の平均風速をアメダス データから読み取り、両者の比で突風率を計算する。 10 分間平均風速から最大瞬間風速を推定する方式を開発するのであるが、10 分間平均風速と突風 率の関係を解析して、数式化し、突風率推定式とする方法を採る。この時刻合わせの膨大な作業には 注意力と根気が必要である。 開発する推定式の利用方法には、次の 4 つ程度が考えられる。 1. 気象庁では、10 分間平均風速の予報をしているので、上記の推定式を適用することで最大瞬間 風速値を予測し、最大瞬間風速が大きくなると予測された地点では、建物の補強や人の避難に より、台風や竜巻などによる強風災害を未然に防ぐことができる。 2. 最大瞬間風速を観測していない地点で、推定式を使って過去の 10 分間平均風速から最大瞬間風 速を過去 10 年分といった長期間にわたって推定し、強風の頻度を調べれば、頻度の高い地域付 近では土木や建築工事を強化し、災害を防ぐことが出来る。 3. 10 分間平均風速が次第に強くなってきた場合、即座に最大瞬間風速に換算できるので、列車運

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4. 推定値よりも実測値の方が、説得力があるので、最大瞬間風速が大きくなると推定された地点 に、瞬間風速の測定器を設置させる根拠になる。瞬間風速の監視網が密になることで、不幸に も災害が起きたとしても事後解釈に役立ち、間接的に防災に役立つとも考えられる。

II

研究方法

1

研究対象地点

全国を研究対象とするのが理想であるが、一括処理するにはデータが多すぎるので、手始めに、近 畿地方(大阪府・京都府・奈良県・兵庫県・滋賀県・和歌山県)を取り上げた。ただし、岬の地点を 補充するために室戸岬(高知県)を加えた。 近畿各地の気象台・測候所(以降、特別地域気象観測所を含むものとする。)12ヶ所(大阪・京都・ 舞鶴・奈良・和歌山・潮岬・神戸・豊岡・姫路・洲本・彦根・室戸岬)の地上風データとアメダスデー タを解析した。各気象台・測候所の地面の海面上の高さ・風速計の地面からの高さ・地形区分は表 2 のとおりである。後述するが、気象庁では、風速計の極近くに地物は存在しないように観測されてい るので、地形区分は広域的なものである。 表 2 観測所の詳細(大阪・京都・奈良・豊岡を平地、神戸・姫路・洲本・和歌山・舞鶴・彦根を海 岸、潮岬・室戸岬を岬と分類した。)

2

使用測器

気象庁 HP によれば、気象台・測候所やアメダスで使用されている風車型風向風速計は、流線型を した胴体に垂直尾翼と4枚羽根のプロペラが取り付けられている。垂直尾翼により風が吹くとプロ

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近畿地方における突風率の推定法 ペラが風上に向くように回転し胴体の向きからは風向が、プロペラの回転数からは風速がわかる仕 組みになっている。 さらに、気象台・測候所の測器の設置環境は、最寄りの建物や樹木からその高さの 10 倍以上の距 離を置いて設置することなど、平らな開けた場所に独立した塔や支柱を建て、地上 10 m の高さに設 置することが標準となっている。しかし、開けた場所の確保が困難な場合は、地面から測風塔を建て たり、屋上に設置台や支柱を設け、塔または設置台からは支柱によりさらに 2 m 以上の高い位置に測 器を取り付け、風の乱れが観測にできるだけ影響のないようになっている。 今回使用したデータは、すべて気象庁の観測値であるので、上記の条件に当てはまる設置環境にあ るものとみなす。

3

使用データと解析方法

気象庁が元を提供し、(財)気象業務支援センターが一般向けに販売している「気象庁月報」 (CD-ROM)を使用した。これに記録されている 2005 年の春∼2006 年の冬までの近畿各地にある 12ヶ所 の地上気象(気象台・測候所)観測と、地域気象(アメダス)観測データを用いた。まず、それぞれ 季節ごとの特徴をみるために春の代表として 2005 年 4 月、夏の代表として 7 月、秋の代表として 10 月、冬の代表として 2006 年 1 月のデータの解析を行った。次に、各地点での 2005 年 3 月から 2006 年 2 月の各月の月最大風速を読み取り、折れ線グラフで表した(図 1)。そこから、特に風の強い 2005 年の 9 月と 12 月もデータ解析を行い、9 月を秋の代表、12 月を冬の代表とした。 図 1 地点別・月ごとの月最大風速 (2005 年 3 月 ∼2006 年 2 月、10 分間平均風速の月最大値) 地上気象観測からは、毎日の最大瞬間風速・風向・起時、アメダスからは、その最大瞬間風速が 観測された時刻を含む 10 分間の平均風速を読み取り、それぞれの季節の代表月ごとに表にまとめた (表 3)。最大瞬間風速÷ 10 分間平均風速(最大瞬間風速が起こった時刻のもの)で突風率を計算し さらに表に付け加え、10 分間平均風速と突風率の関係を調べるためにグラフを作成する(図 2)。各

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地点についてのグラフを作成したら、季節別・地形区分ごとにグラフを重ね、地形との関係・特徴を 調べた。解析データ数は、地点数 × 月数 × 30 日(もしくは 31 日)= 12 × 4 × 30 = 1440 個、10 分間 平均風速と最大瞬間風速を別々に数えるならば、この 2 倍の 1440 × 2 = 2880 個 になる。グラフの 数は、4ヶ月 × 12 地点= 48 個、さらに地形区分ごとに重ねたものは 4ヶ月 × 3 地形区分= 12 個 なの で、全部で 48 個 + 12 個= 60 個 である。 表 3 気象庁月報のデータをまとめた表の例(2005 年 4 月 大阪) 次に、表 3 で示した 10 分間平均風速の値が小さい順に並べ替え、風速階級ごとに突風率頻度を数 えて、新たに表を作成する(表 4)。この表は、4ヶ月 × 12 地点 なので 48 枚作成した。すべての地点 と各月の表を作成したら、○1地点を固定して、月を全部重ねる。○2さらに、地形分類ごとに重ねる。 ○3季節を固定して、地形分類ごとに重ねる。○4地点、月、全部重ねる。○1の作業でできた表の数は 12 枚、グラフの数は 12 個、○2では 4 枚と 4 個、○3では 16 枚と 16 個、○4では 1 枚と 1 個で合計は表 33 枚、グラフ 33 個である。 それぞれ○1∼○4で作成した表のそれぞれの風速階級での突風率の最大値と最多値(2 以上)を読み 取り、グラフを作成し、風速階級と突風率の関係を表す直線を引く(表 5、図 3)。線の引き方は、安 全面を考えてすべての点が直線より下になるようにし、なおかつ出来るだけ点の近くを直線が通る ようにした。また、直線は平行か右下がりになるようにする。これは、粗度が 0.3 m の平坦地で、大 気安定度が中立状態で、10 m 高度における突風率の理論値は 1.8 程度となるため、無理のない範囲 で出来るだけその値に近づけるようにするためである。このとき、風速が 5 以上のものを対象とし、

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近畿地方における突風率の推定法

図 2 突風率と 10 分間平均風速の関係を表すグラフの例(2005 年 4 月 大阪)

表 4 突風率頻度表の例(2005 年 4 月 大阪、突風率階級は階級の上限値のみを記してある。表の 見方は、たとえば 10 分間平均風速が 3 m/s で突風率階級が 2.399 の場合、突風率が 2.2 以上 2.4 未満 の時が 2 回ということである。)

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4 以下のものは考えないことにした。この理由は、風速が小さいときに突風率が大きくなっても、そ れほど強い風が吹かないので、災害の点ではあまり影響がないためである。さらに、風速が弱くな ると突風率が非常に大きくなる理由が、理論的にまだよくわかっていないためである。風速が 2 m/s 未満の微風時で、風速が小さくなるほど風向変動幅が大きくなる傾向がみられるという安達(1985) の研究があって、上記の現象と深い関係があると思われるが今後の研究課題とする。また、結果を1 本の直線で表すのが難しい場合は、適応範囲を指定して 2 本の直線で表すことにする。 グラフ上で直線を引いたら、この直線の関数(y = ax + b)をもとめる。1 枚 × 2 本 = 2 直線、2 直 線 × 全 33 個 = 66 直線 についての関数をもとめる。 表 5 風速階級ごとの突風率頻度(平地 [大阪・京都・奈良・豊岡] の全季節を重ねた数表、青:最大 値 赤:最多値)

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近畿地方における突風率の推定法 図 3 各風速値での突風率の最大値と最多値をグラフにし直線を引いた図(平地 [大阪・京都・奈良・ 豊岡] の全季節、青:最大値、ピンク:最多値、−:最大値直線、−:最多値直線)

III

解析結果と考察

1

地点別・季節別の解析

地点別の突風率と 10 分間平均風速の関係を表すグラフを図 4∼15 に示す。それぞれ季節を代表し て 4、7、9、12 月に分けてある。 図 4 大阪

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図 5 京都

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近畿地方における突風率の推定法

図 7 豊岡

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図 9 姫路

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近畿地方における突風率の推定法

図 11 和歌山

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図 13 彦根

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近畿地方における突風率の推定法 図 15 室戸岬 それぞれの地点で、月(季節)による大きな違いはみられなかった。しかし、地形区分ごとに見る と図 4∼ 図 7 の平地では 10 分間平均風速は比較的小さく、10 分間平均風速が小さくなればなるほど、 突風率の値が大きくなっている。図 8∼ 図 13 の海岸では、10 分間平均風速は大きい時もあるが、全 体的に突風率は一定して 2.0∼3.0 と大きくない。しかし、洲本の観測地点は海岸であるが、グラフの 形をみると平地のものに近いようにも思える。図 14、15 の岬では、10 分間平均風速が 20 ∼ 30 m/s の時もあるが、突風率は海岸同様、一定して 2.0 付近である。

2

全季節の重ね合わせ

図 16∼18 に、全季節をまとめた図を示す。

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図 16 近畿地方の全地点・全季節をまとめた図

図 17 地形分類ごとに全季節まとめた図(青:最大値、ピンク:最多値、−:最大値直線、−:最

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近畿地方における突風率の推定法

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図 18b  各地点全季節まとめた図(続き)(青:最大値、ピンク:最多値、−:最大値直線、−:最 多値直線)

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近畿地方における突風率の推定法

3

地形分類

図 19a∼c に、季節ごと、平地、海岸、岬といった地形分類でまとめた図を示す。さらに、図 20 に、  地形区分ごとの最多値を示す。 図 19a  季節ごと地形分類でまとめた図(平地) 図 19b  季節ごと地形分類でまとめた図(海岸)

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図 19c  季節ごと地形分類でまとめた図(岬)(青:最大値、ピンク:最多値、−:最大値直線、−: 最多値直線)

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近畿地方における突風率の推定法

4

考察

今回の研究では、実用性を考えたときに安全面も考え突風率の値を高めに設定することとしたた め、直線はすべての点の上を通るようにしてある。 地形分類ごと全季節まとめたものでは、最大値直線の傾きは平地が一番大きく、次に海岸、岬の 順となった。最多値直線では、平地が 2.5、海岸が 1.9、岬が 1.7 と平地の突風率が一番大きくなった (図 20)。そのため、岬では最大値直線と最多値直線の開きがそれほど大きくない。最大値直線と最 多値直線の開きが一番大きいのは海岸である。これは、海岸では大きな突風がたまに吹くということ である。 季節ごと地形分類でまとめたものでは、平地は特に目立った違いはみられなかったが、海岸では 9 月と 12 月の 10 分間平均風速が大きくなっている。岬では、9 月は最多値があまりみられなかった。 どの地形区分でも、季節による大きな違いはみられない。

IV

まとめと今後の課題

色々な区別における風速階級別の突風率頻度表から、読み取った最大値直線と最多値直線を表 6 に まとめた。これらの直線は図 16∼ 図 20 に示されている。

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表 6 グラフ上で表した突風率直線の関数(ただし、y は突風率、x は m/s 単位の 10 分間平均風速 である。) 最大値直線 最多値直線 全合計 y =−0.188 x + 5.64 (55 x 5 22) y = 1.5 (225 x 5 28) y =−0.0316 x + 2.26 (5 5 x 5 24) 平地 (全季節) y =−0.3 x + 5.4 (55 x 5 11) y = 2.5 (55 x 5 9) 海岸 (全季節) y =−0.187 x + 5.63 (55 x 5 20) y = 1.9 (55 x 5 13) 岬 (全季節) y =−0.0696 x + 3.45 (5 5 x 5 28) y = 1.7 (55 x 5 20) 大阪 (全季節) y =−0.1 x + 3.4 (55 x 5 11) y = 2.5 (55 x 5 8) y =−0.6 x + 7.3 (85 x 5 9) 京都 (全季節) y =−0.1 x + 3.6 (55 x 5 7) y =−0.8 x + 8.5 (75 x 5 8) y = 2.5 (55 x 5 6) 奈良 (全季節) y =−0.1 x + 3.4 (55 x 5 7) y =−0.267 x + 4.57 (75 x 5 10) 豊岡 (全季節) y =−0.2 x + 4.5 (55 x 5 10) y = 2.5 (55 x 5 6) 神戸 (全季節) y = 2.7 (55 x 5 9) y =−0.2 x + 4.5 (95 x 5 13) y = 2.1 (55 x 5 10) 姫路 (全季節) y =−0.12 x + 3.1 (55 x 5 10) y = 1.9 (55 x 5 11) 洲本 (全季節) y =−0.4 x + 6.7 (55 x 5 7) y =−0.125 x + 4.78 (75 x 5 11) y = 3.5 (55 x 5 6) y =−0.45 x + 6.2 (65 x 5 8) 和歌山 (全季節) y = 2.7 (55 x 5 10) y =−0.08 x + 3.5 (105 x 5 20) y = 1.9 (55 x 5 13) 舞鶴(全季節) y = −0.288 x + 5.14 (5 5 x 5 13) y = 2.1 (55 x 5 9) 彦根 (全季節) y = 2.7 (55 x 5 10) y =−0.2 x + 4.7 (105 x 5 14) y =−0.0286 x + 2.24 (5 5 x 5 12) 潮岬 (全季節) y = 2.9 (55 x 5 8) y =−0.143 x + 4.04 (85 x 5 15) y = 2.3 (55 x 5 10) y =−0.133 x + 3.63 (10 5 x 5 13) 室戸岬 (全季節) y = −0.0391 x + 2.6 (5 5 x 5 28) y = −0.0263 x + 2.13 (5 5 x 5 24) 平地 (4 月) y =−0.1 x + 3.6 (55 x 5 9) y = 2.5 (55 x 5 7) 平地 (7 月) y =−0.35 x + 4.55 (55 x 5 7) y = 1.9 (55 x 5 6) 平地 (9 月) y =−0.2 x + 4.3 (55 x 5 11) y = 2.5 (55 x 5 6) 平地 (12 月) y =−0.25 x + 4.75 (55 x 5 9) y = 2.5 (55 x 5 9) 海岸 (4 月) y =−0.375 x + 6.58 (55 x 5 13) y = 2.1 (55 x 5 10) y =−0.133 x + 3.43 (10 5 x 5 13) 海岸 (7 月) y =−0.283 x + 5.22 (55 x 5 11) y = −0.05 x + 2.15 (55 x 5 9) 海岸 (9 月) y =−0.16 + 5.1 (55 x 5 20) y = −0.04 x + 2.1 (55 x 5 10) 海岸 (12 月) y =−0.185 x + 5.42 (55 x 5 18) y = 2.1 (55 x 5 13) 岬 (4 月) y =−0.0944 x + 3.67 (5 5 x 5 23) y = −0.0539 x + 2.27 (5 5 x 5 18) 岬 (7 月) y =−0.0632 x + 2.82 (5 5 x 5 24) y = −0.0538 x + 2.27 (5 5 x 5 18) 岬 (9 月) y =−0.0348 x + 2.47 (5 5 x 5 28) y = 2.3 (55 x 5 6) 岬 (12 月) y =−0.1 x + 3.6 (55 x 5 21) y = −0.0579 x + 2.89 (5 5 x 5 24)

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近畿地方における突風率の推定法 表 6 に示した関数を利用し、x に 10 分間平均風速を代入することで突風率が求まり、さらに最大 瞬間風速が求まる。近畿地方での最大瞬間風速を知りたいときには、近畿地方全季節まとめたもの (全合計)の直線を用いれば、一番信頼できる。 しかし、季節による大きな違いはみられなかったものの、地形区分ごとでは違いがみられたため、 地形区分ごとや地点ごとでみたほうが、より詳しい値を知ることができる。 また、従来の研究を元にした理論では突風率は 1.8 程度となるが、最多値としてはこのことは確か に当てはまるが、最大値をみると突風率が 1.8 以上になるところは多くあることが今回の研究からわ かった。そのため、データ数が必ずしも十分でないかもしれないことを除けば、各地点での最大値直 線を用いて、最大瞬間風速を予測した方が安全である。むしろ安全側過ぎるかもしれないので、目的 に応じた選択が必要であろう。

今後の課題

今回は手始めに、近畿地方に限定し、また、入手できた最も新しい 2005 年 3 月 ∼2006 年 2 月の 1 年間の気象台・測候所とアメダスのデータを用いて解析したが、全国各地点及び、過去の長期間の データも解析する必要がある。 今回の研究では、突風率推定式を求めることを主目的としたため、各地点や風速によって突風率の 大きさが違ってくる原因・理由についての研究に及ばなかった。今後の課題としたい。

謝辞

当論文の元である林(2007)の卒業研究を進めるにあたり、山梨大学・教育人間科学部・理科教育 講座(地学分野)の准教授の角田謙朗博士及び同じくソフトサイエンス講座(地学分野)の石垣武久 准教授には、多くの御助言と励ましをいただきました。重ねて厚く御礼申し上げます。

参考文献

[1] 安達隆史, 1985:大気汚染濃度予測のための上層風と拡散パラメータの推定法の研究, 技術情報 No.58, 財団法人日本気象協会, 194pp.(国会図書館に寄贈し, 公開) [2] 朝日新聞, 2006 年 1 月 1 日, 9 月 17 日, 9 月 19 日 [3] 林 里江, 2007:近畿地方における突風率の研究, 山梨大学教育人間科学部・平成 18 年度卒業論 文,30pp. [4] 気象庁, 2005・2006:気象庁月報(CD-ROM)平成 17 年 3 月∼ 平成 18 年 2 月, 財団法人気象業 務支援センター [5] 気象庁ホームページ, http://www.jma.go.jp/jma/index.html [6] 近藤純正, 2000:地表面に近い大気の科学, 理論と応用, 東京大学出版会, 324pp.

図 2 突風率と 10 分間平均風速の関係を表すグラフの例( 2005 年 4 月 大阪)
図 5 京都
図 7 豊岡
図 9 姫路
+7

参照

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